【課題】レーザ光の照射条件が限定される状況下であっても、アモルファスシリコン膜の再結晶化をさらに促進させ、より移動度を高めることが可能な薄膜トランジスタの製造方法及び、その製造方法に使用するマスクを提供する。
【解決手段】基板上に成膜されたアモルファスシリコン膜8にレーザ光を照射する処理を含む薄膜トランジスタの製造方法であって、上記アモルファスシリコン膜8のうちチャネル領域52の形成領域を含む領域に上記レーザ光を照射し、上記形成領域を含む領域を加熱溶融させ再結晶化させることにより上記チャネル領域52を含むポリシリコン膜9を形成させるレーザアニール工程と、上記ポリシリコン膜9のうち、上記チャネル領域52以外の領域をエッチングにより取り除く工程と、を含む。
前記レーザアニール工程では、投影レンズを介してマスクパターンを縮小投影して、前記マスクパターンに対応した前記チャネル領域の形成領域を含む領域に前記レーザ光を照射することを特徴とする請求項1に記載の薄膜トランジスタの製造方法。
前記チャネル領域の形成領域を含む領域は、該形成領域と、前記アモルファスシリコン膜が加熱溶融したときに熱を蓄積する蓄積領域とから成ることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の薄膜トランジスタの製造方法。
投影レンズを介して、一定の配列ピッチでマトリクス状に配置されたマスクパターンを縮小投影して、前記マスクパターンに対応した領域にレーザ光を照射させるマスクであって、
前記マスクパターンが、ゲート電極、絶縁膜、アモルファスシリコン膜の順に積層されている被照射物に対し、前記アモルファスシリコン膜のうちチャネル領域の形成領域に向けて前記レーザ光を照射させる第1パターンと、前記レーザ光の照射により発生する熱を蓄積する蓄積領域に向けて前記レーザ光を照射させる第2パターンとを組み合わせたものである、
ことを特徴とするマスク。
前記マスクパターンは、前記ゲート電極の大きさで規定される前記アモルファスシリコン膜への照射可能な領域の範囲内であって、前記チャネル領域の形成領域に隣接し、ソース電極とドレイン電極との下層となる領域を避けるように前記レーザ光を照射させる開口を有していることを特徴とする請求項5又は6に記載のマスク。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明によるTFTの製造方法の第1実施形態を示す工程図である。このTFTは、例えば液晶表示装置等に用いられる。第1実施形態では、本発明の技術的特徴をわかりやすくするため、TFTの製造方法を大きく4つのステップに分けて説明する。
【0012】
ステップS1は、TFTの製造方法において、アモルファスシリコン膜の成膜までの複数の工程を1つのブロックで表している。具体的には、ステップS1は、公知技術を適宜適用することで、一例として、基板にゲート電極、絶縁膜、アモルファスシリコン膜が順次積層されるまでの処理を含む。
ステップS2は、アモルファスシリコン膜のうちチャネル領域の形成領域を含む領域にレーザ光を照射し、その形成領域を含む領域を加熱溶融させ再結晶化させることによりチャネル領域を含むポリシリコン膜を形成させるレーザアニール工程を表している。ここで、チャネル領域の形成領域を含む領域は、その形成領域と、アモルファスシリコン膜が加熱溶融したときに熱を蓄積する蓄積領域とを有する。ここで、蓄積領域にレーザ光が照射されると、照射された領域において、絶縁膜上に積層されているアモルファスシリコン膜の下層領域に熱が蓄積されやすくなる。なお、形成領域にもレーザ光が照射されるので、熱が蓄積されることは言うまでもない。
ステップS3は、ステップS2のレーザアニール工程で形成されたポリシリコン膜のうち、チャネル領域以外の領域をエッチングにより取り除く工程を表している。
ステップS4は、公知技術を適宜適用することで、最終的にTFTの製造を完了するまでの複数の工程を1つのブロックで表している。
【0013】
図2は、
図1に示すTFTの製造方法により製造されるTFTの一実施形態を示す断面図である。
図2に示すTFT1は、基板2上に、ゲート電極3、絶縁膜4、半導体層5の順番に積層されており、さらに、ソース電極6、ドレイン電極7が半導体層5を介して形成されている。
【0014】
ゲート電極3は、例えば、透明ガラスから成る基板2上に一定の配列ピッチでマトリクス状に複数形成されたもので、基板2に形成されたゲート線3a(
図6参照)に電気的に接続されている。このゲート電極3は、液晶パネル内のスイッチング素子を選択的に駆動するためのゲートドライブ回路(図示省略)から走査情報が供給されるようになっている。
【0015】
絶縁膜4は、例えば、リーク電流を抑制するゲート絶縁膜であって、ゲート電極3を覆うようにして被膜されているものである。なお、絶縁膜4は、リーク電流を抑制するものであれば特に限定されない。
【0016】
半導体層5は、アモルファスシリコン膜8及びポリシリコン膜9を含む。詳細には、半導体層5は、ソース領域51、チャネル領域52、ドレイン領域53を備え、チャネル領域52は、絶縁膜4を介してゲート電極3の中央部に相当する位置の上層に設けられている。ソース領域51及びドレイン領域53は、アモルファスシリコンの半導体層の薄膜で構成され、チャネル領域52は、ポリシリコンの半導体層の薄膜で構成されている。図中、ポリシリコン膜9は、チャネル領域52を表している。
【0017】
ソース電極6は、ゲート線3a(
図6参照)に交差させて設けられたデータ線(図示省略)に電気的に接続されており、液晶パネル内の各画素電極に信号を与えるソースドライブ回路(図示省略)から信号が供給されるようになっている。
【0018】
ドレイン電極7は、液晶パネル内の各画素電極にデータ線及びソース電極6を介して提供される信号を供給するものであって、各画素電極に電気的に接続させて設けられている。そして、ソース電極6及びドレイン電極7は、チャネル領域52を介して接続されており、ソース電極6及びドレイン電極7上には、保護膜(図示省略)が形成されている。
【0019】
次に、第1実施形態で特徴的なレーザアニール工程(
図1に示すステップS2)について、以下に説明する。
図3は、本発明によるTFTの製造方法に適用されるレーザアニール装置の一例を示す概要図である。
【0020】
レーザアニール工程(ステップS2)では、
図3に示すレーザアニール装置100を使用して、基板2上に成膜されたアモルファスシリコン膜8(非晶質シリコン膜)にレーザ光を照射してそのアモルファスシリコン膜8を加熱溶融させ再結晶化させることにより、ポリシリコン膜9(多結晶シリコン膜)を形成させるものである。詳細には、レーザアニール装置100は、この基板2に対して、アモルファスシリコン膜8のうちチャネル領域52の形成領域を含む領域にレーザ光を照射し、チャネル領域52を含むポリシリコン膜9を形成する。以下、レーザアニール装置100の構成例について詳述する。
【0021】
ここで、レーザアニール装置100は、構成例として、搬送手段11と、レーザ照射光学系12と、アライメント手段13と、撮像手段14と、制御部15とを備える。また、基板2は、第1実施形態に適用される基板の一例であって、複数のデータ線及びゲート線3a(
図6参照)を縦横に交差させることにより設けられた交差部(図示省略)にゲート電極3(
図6参照)を設けたものである。
【0022】
搬送手段11は、最上層にアモルファスシリコン膜8が形成された基板2を所定の方向に搬送するものであり、例えば、ゲート線3aと搬送方向(矢印A1方向)とが平行となるように基板2を位置決めして載置できるようになっている。
【0023】
搬送手段11の上方には、レーザ照射光学系12が配設されている。このレーザ照射光学系12は、基板2のアモルファスシリコン膜8上へレーザ光Lを照射するものである。
【0024】
ここで、レーザ照射光学系12は、一例としてレーザ121と、そのレーザ121が放出するレーザ光Lの進行方向の順に、カップリング光学系122と、遮光マスク123と、マイクロレンズアレイ124と、を備える。レーザ121は、紫外線のレーザ光Lをパルス発光するもので、例えば、波長が355nmのYAG(Yttrium Aluminum Garnet)レーザである。なお、レーザ121は、YAGレーザに限定されず、例えば、波長が308nmのエキシマレーザ等、他のパルスレーザを採用してもよい。
【0025】
また、カップリング光学系122は、レーザ121から放出されたレーザ光Lを拡張すると共に均一化して遮光マスク123に照射させるものであり、例えば、図示省略のビームエキスパンダ、フォトインテグレータ、コリメータレンズ等の光学機器を含む。
【0026】
さらに、遮光マスク123は、本発明のマスクの一例であって、レーザ照射光学系12に設けられたマイクロレンズ125(
図5参照)を介して、一定の配列ピッチでマトリクス状に配置された同一の開口のマスクパターンを縮小投影して、そのマスクパターンに対応した領域にレーザ光Lを照射させるマスクである。このようなマスクパターンを用いることにより、第1実施形態では、1度に複数個所のチャネル領域52の形成領域を含む領域にレーザ光Lを照射させることができる。詳細は、
図4、5を用いて説明する。
【0027】
搬送手段11は、ゲート電極3、絶縁膜4、アモルファスシリコン膜8が順次積層された後の基板2を所定方向(
図3に示すA1方向)に搬送する。レーザ照射光学系12は、遮光マスク123を使用し、マイクロレンズ125を介してレーザ光Lを選択的に照射させる。この遮光マスク123を使用することにより、本実施形態では、例えば、
図2に示すTFT1が基板2上に複数製造される。
【0028】
図4は、本発明によるTFTの製造方法で使用する遮光マスク及びマイクロレンズアレイの一構成例を示す平面図である。
図5は、
図4のO−O線断面図である。遮光マスク123は、
図2に示す基板2上に照射されるレーザ光Lの照射形状を決めるため、透明な石英基板126上に成膜されたクロム(Cr)又はアルミニウム(Al)等の遮光膜127に開口面積を同じくする複数の開口を有している。
【0029】
詳細には、遮光マスク123は、
図4に示すように、一例として、基板2の搬送方向(矢印A1方向)と交差する方向(Y方向)に、ゲート電極3の配列ピッチw
1で同じ開口面積の開口を一直線に並べて形成している。
【0030】
また、遮光マスク123は、上記搬送方向と同方向(X方向)のゲート電極3の配列ピッチw
2と同じピッチで同一の開口面積の開口128a〜128eを形成している。開口128a〜128eのマスクパターンは、ゲート電極3、絶縁膜4、アモルファスシリコン膜8が順次積層された基板2に対し、アモルファスシリコン膜8のうちチャネル領域52の形成領域に向けてレーザ光Lを照射させる第1パターンと、レーザ光の照射により発生する熱を蓄積する蓄積領域に向けてレーザ光Lを照射させる第2パターンとを組み合わせたものである。この第1及び第2パターンを有する開口128a〜128eのマスクパターンによって照射される領域については、
図6〜
図8を用いて後述する。
【0031】
また、レーザ光Lのn回ショット(nは正の整数)でレーザアニールが行われる場合、一例として、n=5とすると、各開口は、上記搬送方向に配列ピッチw
2で5列設けられる。例えば、
図4に示す一点鎖線で囲まれた開口128a群(以下「開口列129」という)が、1つの列を形成している。そして、他の列も各々同様に開口128b〜128e毎に開口列を形成している。さらに、開口列129が、搬送方向の最上流に位置している。
【0032】
マイクロレンズアレイ124は、複数のマイクロレンズ125を備えたものであり、各開口の像をゲート電極3に対応した領域に縮小投影して合焦させるようになっている。
【0033】
図3に戻り、アライメント手段13は、レーザ光Lを目標位置に適切に照射させるためのものであり、例えば、基板2が搬送方向に対して左右に振れながら搬送された場合、その基板2の動きに追従させて遮光マスク123及びマイクロレンズアレイ124を移動させる。
【0034】
搬送手段11は、搬送面の下側に撮像手段14を設けている。この撮像手段14は、基板2の裏面側から透かして、その基板2の表面に形成されたゲート電極3及びゲート線3a(
図6参照)を撮影するものである。撮像手段14は、例えば、複数の受光素子を搬送方向と交差する方向に一直線に並べて備えた細長状の受光面を有するラインカメラである。そして、このラインカメラは、レーザ光Lの照射位置が目標位置に合致している否かを判定するために用いられる。
【0035】
制御部15は、搬送手段11、レーザ照射光学系12、アライメント手段13及び撮像手段14を統括的に制御する。なお、搬送手段11、レーザ照射光学系12、アライメント手段13、撮像手段14及び制御部15は、電気的に接続されている。
【0036】
詳細には、制御部15は、当該照射対象として、ゲート電極3、絶縁膜4、アモルファスシリコン膜8の順に積層されている被照射物を、遮光マスク123における開口128aの直下の位置から開口128eの直下の位置へと、レーザ光Lを照射する毎に順番に移動させる。換言すると、制御部15は、距離d(配列ピッチw
2)で基板2をステップ移動するようにステップ移動量を制御するものである。これにより、チャネル領域52を含む領域がステップ移動する度にレーザ光Lで照射される。
【0037】
そして、制御部15は、ラインカメラからの画像情報を解析し、遮光マスク123の開口列の中心線とラインカメラの受光面における長手方向の中心線との一致度に基づいて、レーザ光Lの照射位置が目標位置に合致している否かを判定する。合致している場合、制御部15は、1パルス(1ショット)のレーザ光Lの発光指令をレーザ121に出力し、これによりレーザ121は、レーザ光Lを照射するようになっている。合致していない場合、制御部15は、アライメント手段13に指令を出して、目標位置に合致するように基板2を移動させた後、レーザ照射を実行する。
【0038】
次に、
図6〜
図9を参照してレーザアニール装置100によるレーザアニール工程の具体的な処理について、説明する。レーザアニール工程では、基板2をステップ移動させる毎に、所定のチャネル領域52の形成領域を含む領域に対してレーザ照射が実行される。具体的には、レーザアニール工程では、レーザ光Lの照射を列毎に5ショットで実行する場合に、上記レーザ光Lの照射位置のステップ移動量を距離d(配列ピッチw
2)に等しい量となるように設定する。
【0039】
図6は、本発明におけるレーザアニール工程の一例を説明する平面図である。ここで、
図3に示す制御部15は、先ず、矢印A1方向に基板2を移動させて、最初の照射位置に位置決めして停止させる。
【0040】
次に、制御部15は、
図6に示すように、アモルファスシリコン膜8上へのレーザ光Lの照射形状がパターンPになるように開口128aで整形されたレーザ光Lを、ゲート電極3に向けて、最上層のアモルファスシリコン膜8に1ショット照射させる(1回目の照射)。ここで、レーザ光Lのレーザパワーは、そのレーザ光Lの照射条件の一例として、予め電子移動度がピーク値となるレーザパワーを求めて、そのレーザパワーを採用することが好ましい。これにより、レーザアニール工程では、以下に説明する処理を実行することで、アモルファスシリコン膜8にダメージを与えることなく、電子移動度をさらに高めることができる。
【0041】
図7は、
図6においてレーザ光を照射する照射面積の一例を説明する平面図である。マスクパターンに応じて縮小投影されて照射される照射面積(パターンP)は、第1パターンに対応するパターン201(寸法A×Bの領域)及びパターン202(寸法E×Fの領域)と、第2パターンに対応するパターン200(寸法C×Dの領域)とで構成される。ここで、寸法Dの長さは、一例として4μmである。なお、パターン201、202が蓄積領域の一例であり、パターン200がチャネル領域52の形成領域の一例である。
【0042】
また、遮光マスク123において、開口128a〜128eのマスクパターンは、第1パターンと第2パターンの組み合わせにおいて、以下の特徴を有する。このマスクパターンは、ゲート電極3のサイズで規定されるアモルファスシリコン膜8の領域(レーザ照射可能な領域)の範囲内であって、パターン200(形成領域)に隣接し、ソース電極6とドレイン電極7の下層となる領域を避けるようにレーザ光Lを照射させる開口を有している。すなわち、
図7に示すような照射面積にしているのは、
図2に示すソース領域51、ドレイン領域53をポリシリコン化させないため、レーザ光Lの照射を避けることが好ましいからである。これにより、ソース領域51、ドレイン領域53のリーク電流を抑制させることができる。
【0043】
図8は、本発明におけるレーザアニール工程の一例を説明する平面図である。
図9は、本発明におけるレーザアニール工程の手順を示す説明図である。
図9(a)〜(e)は、時系列に5回のレーザショットが実行される様子を模式的に表している。なお、このレーザアニール工程では、アモルファスシリコン膜8にパルスのレーザ光Lを多重(多数回)照射させることで、最終的にチャネル領域52を含むポリシリコン膜9を形成する。
【0044】
図8では、
図6に示すパターンPの領域にレーザ光Lを照射した後の状態を例示している。この場合、アモルファスシリコン膜8の照射部分が瞬間加熱されて溶融し、シリコン分子の結合状態がアモルファス(非結晶)状態からポリ(多結晶)状態に変えられ、チャネル領域52への形成が進行する(
図9(a)参照)。この際、蓄積領域に照射されたレーザ光Lにより、パターン201、202の領域は、最終的にポリシリコン化されるが、第1実施形態では、このような蓄積領域にレーザ光Lを照射することにより、形成領域のみにレーザ光Lを照射する場合と比較して、照射面積(表面積)が大きいため、その分、熱容量が大きくなる。これにより、チャネル領域52の形成領域においてレーザ照射後の温度が下がりにくくなり、その分、チャネル領域52の再結晶化が促進される。
【0045】
次に、制御部15は、2回目の照射をするため、
図3に示す矢印A1方向に沿って、基板2を距離dだけステップ移動させ、上記と同様にして、開口128bで整形されたレーザ光Lを1ショット照射させる(
図9(b)参照)。
【0046】
これにより、1回目のレーザ光Lの照射領域と2回目の照射領域との重なり部分は、1回目の照射領域よりもレーザ光Lの照射量が増すので、今回の照射による重なり部分の再結晶化(結晶成長)が促進される。さらに、上記の通り、パターン201、202の領域で発生した熱の蓄積効果により、チャネル領域52の再結晶化が促進される。
【0047】
次に、制御部15は、基板2を距離dだけステップ移動させ、ステップ移動する毎にレーザ照射を行い、基板2の各々のゲート電極3が全て5ショット実行されると、レーザアニール工程が終了する(
図9(c)〜(e)参照)。これにより、レーザアニール工程では、アモルファスシリコン膜8へのレーザ光Lの多重照射により、最終的にチャネル領域52を含むポリシリコン膜9を形成できる。
【0048】
以上、5ショットのレーザ光Lによる照射により、蓄積領域(パターン201、202)への照射の度に、蓄積された熱がその熱容量(蓄熱量)に応じて再結晶化を促進し、良質なチャネル領域52を含むポリシリコン膜9が形成され得る。
【0049】
次に、本発明による蓄積領域の除去工程(ステップS3)が実行される。
図10は、本発明における除去工程の一例を説明する平面図である。レーザアニール工程が終了すると、ポリシリコン化されたパターン201、202の領域(蓄積領域)がエッチングにより取り除かれる。これにより、絶縁膜4上に、半導体層5(ソース領域51、チャネル領域52、ドレイン領域53)が形成される。すなわち、基板2上の蓄積領域がポリシリコン化され、その領域はチャネル領域52への再結晶化の促進という役割を終えたので、除去工程では、チャネル領域52を除くポリシリコン化された領域をエッチングにより除去する点を特徴としている。そして、第1実施形態では、結果的にチャネル領域52のみを良好にポリシリコン化することができる。
【0050】
次に、最終的にTFTの製造が完了するまでの複数の工程(ステップS4)が実行される。
図11は、除去工程後に、ソース電極及びドレイン電極を積層したTFTの一例を示す平面図である。
図11では、ソース電極6が
図10に示すソース領域51を覆うように積層され、ドレイン電極7が
図10に示すドレイン領域53を覆うように積層されると共に、ソース電極6及びドレイン電極7は、チャネル領域52の一部の上層にも積層されている。図中、幅Dは、チャネル領域52の幅を表している。
そして、第1実施形態では、公知技術を適宜適用することで、最終的にTFT1を製造することができる。
【0051】
次に、第2実施形態について説明する。なお、上記第1実施形態と、同じ構成要素については同じ符号を付して説明を省略し、相違点について主に詳述する。
【0052】
図12は、
図3に示すレーザアニール装置の変形例を示す要部拡大正面図である。第1実施形態では、上述した通り、遮光マスク123に形成された複数の開口128a〜128eのマスクパターンを、それらの複数の開口128a〜128eに個別に対応させて設けられたマイクロレンズ125により基板2上に縮小投影する方式を採用した。
一方、第2実施形態では、複数の開口128a〜128eを有する遮光マスク123aを、一つの投影レンズ(投影光学系)110を使用して基板2上に縮小投影する方式を採用する。したがって、第2実施形態では、
図3に示す遮光マスク123及びマイクロレンズアレイ124の構成が、
図12に示す方式に置き換わる。
【0053】
図13は、本発明によるTFTの製造方法で使用する遮光マスクの一構成例を示す平面図である。
図14は、
図13のO−O線断面図である。
図13に示す遮光マスク123aは、
図4に示す遮光マスク123と比較して、マイクロレンズ125が個別に対応付けられていない点が相違するだけである。
【0054】
図12に戻り、投影レンズ110は、基板2上に遮光マスク123aの倒立像を結像するレンズ構成であっても、正立像を結像するレンズ構成であってもよい。倒立像を結像するレンズ構成の場合、使用する遮光マスクは、マスクパターンの配置が、投影されるマスクパターンの配置と、遮光マスクの中心を軸とする180度の回転対称の関係となる。
ここで、
図13に示す遮光マスク123aのような中心軸C1で左右対称の形状を有するマスクを採用した場合、投影レンズ110が、正立像を結像するレンズ構成であるか、倒立像を結像するレンズ構成であるかは、気にしなくてもよいというメリットがある。そこで、以下の説明では、正立像を結像するレンズ構成を使用した場合について説明をする。
【0055】
投影レンズ110が正立像を結像するレンズ構成の場合、
図13に示す遮光マスク123aとして複数の開口128a〜128eのマスクパターンは、
図4に示す遮光マスク123の複数の開口128a〜128eのマスクパターンと同様である。この場合、各開口128a〜128eの配列ピッチ(w
1,w
2)は、TFT1の形成部であるゲート電極3の縦横配列ピッチを投影レンズ110の倍率で換算した値に設定される。
【0056】
そして、パルスのレーザ光Lの照射は、複数の開口128a〜128eが基板搬送方向と交差する方向に並ぶ複数の開口列のうち、基板搬送方向最上流に対応して位置する開口列129(
図13参照)の結像位置と基板搬送方向最下流に位置する複数の照射対象の各ゲート電極3とが合致したときから開始される。以降のレーザ光Lの照射タイミングは、第1実施形態と同様である。
【0057】
以上より、本発明のTFTの製造方法によれば、レーザ光Lの照射条件が限定される状況下であっても、レーザアニール工程にて、遮光マスク123又は123aを用いて、チャネル領域52の形成領域を含む領域(パターンP)にレーザ光Lを照射するので、加熱溶融時の熱が蓄積しやすくなり、その分、熱容量が大きくなることで温度が下がりにくくなり、チャネル領域の再結晶化を促進させ、より電子移動度を高めることができる。
【0058】
また、本発明のTFTの製造方法によれば、再結晶化の促進のための熱エネルギーをTFT1のチャネル領域52周辺に蓄積できるので、再結晶化促進のためのレーザエネルギーを抑制でき、レーザアニール処理の許容範囲を広げることができる。
【0059】
さらに、局所的にチャネル領域52の形成領域のみにレーザ光Lを照射すると、上述したような高エネルギーで照射した場合にはアモルファスシリコン膜8がダメージを受ける可能性がある。しかし、本発明のTFTの製造方法によれば、チャネル領域52の形成領域と蓄積領域とにレーザ光Lを照射することで、形成領域の周辺も含めて熱蓄積を行うことでダメージを防ぐことができる。
【0060】
なお、上記実施形態(第1及び第2実施形態)では、一例として5ショットのレーザ照射の場合について説明したが、例えば、ショット回数を増やす代わりに、チャネル領域52の形成領域のみにレーザ照射を実行して同様の効果を得ようとすると、その分、TFTを製造するための装置の処理時間(タクトタイム)が増加する。上記実施形態では、この点においても処理時間を短縮でき、上述したTFTの製造方法は優位性を備えている。
【0061】
また、従来、レーザ光の照射条件が、例えば、レーザパワー及びショット回数に大きく依存していたが、上記実施形態を採用することにより、レーザパワー、ショット回数及び照射面積の組み合わせで電子移動度を高められるので、レーザ光の照射条件のバリエーションを広げることができる。
【0062】
以上で説明した上記実施形態は、本発明の好ましい一例を示すものである。上記実施形態で示される構成要素の構造、配置や工程の順序は一例であり、本発明を限定する主旨ではない。例えば、TFT1の構造や遮光マスク123の形状、マスクパターンの配置等は一例である。また、遮光マスク123とマイクロレンズアレイ124とを一体化したものを、本発明のマスクとしてもよい。また、例えば、
図1に示すステップS2の後に、他の工程の処理をした後、ステップS3の除去工程を実行してもよい。
【0063】
なお、上記実施形態においては、基板2を搬送しながらレーザアニールが実施される場合について説明したが、本発明はこれに限られず、設置固定された基板2に対して1ショット、又は複数ショットのレーザ照射によりレーザアニールが実施されるものであってもよい。
【0064】
また、発明の理解の容易のため、上記実施形態で挙げた各図面における各構成要素の縮尺は必ずしも実際のものと同じであるとは限らない場合がある。また、本発明は、上記各実施形態の記載によって限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。例えば、上記実施形態では、パルスレーザを用いたが、連続的にレーザ光を出力するCW(Continuous Wave)レーザを用いて本発明の効果を実現できるように適宜変更してもよい。また、上記実施形態では、ボトムゲート型(逆スタガ型)のTFTに適用したが、トップゲート型(スタガ型)のTFTに、適用してもよい。