(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-168943(P2017-168943A)
(43)【公開日】2017年9月21日
(54)【発明の名称】放送装置および受信装置
(51)【国際特許分類】
H04H 60/07 20080101AFI20170825BHJP
H04H 20/62 20080101ALI20170825BHJP
H04B 1/16 20060101ALI20170825BHJP
【FI】
H04H60/07
H04H20/62
H04B1/16 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-50316(P2016-50316)
(22)【出願日】2016年3月14日
(71)【出願人】
【識別番号】515285280
【氏名又は名称】株式会社アマネク・テレマティクスデザイン
(74)【代理人】
【識別番号】100101982
【弁理士】
【氏名又は名称】久米川 正光
(72)【発明者】
【氏名】今井 武
(72)【発明者】
【氏名】庄司 明弘
【テーマコード(参考)】
5K061
【Fターム(参考)】
5K061AA09
5K061BB06
5K061DD14
5K061FF02
5K061JJ07
(57)【要約】
【課題】受信装置の機種に依存したテキスト読上速度のばらつきに有効に対処する。
【解決手段】放送の番組枠の一つであるテキスト読上時間帯TTS1,TTS2において、受信装置側で行われるテキスト読上のバックグランドとして音楽(BGM)をストリーミング放送する。テキスト読上は、視聴者に提示する情報としてのテキストデータと、デジタル放送を受信する受信装置側におけるテキストデータの読上開始タイミングの指定を含む再生情報とを有するテキスト読上データに基づいて行われる。このテキスト読上データは、テキスト読上時間帯に先立ち受信装置側に配信される。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
デジタル放送の番組の一時間帯として設けられたテキスト読上時間帯用のデータを配信する放送装置において、
視聴者に提示する情報としてのテキストデータと、デジタル放送を受信する受信装置側におけるテキストデータの読上開始タイミングの指定を含む再生情報とを有するテキスト読上データを格納する配信データ格納部と、
前記テキスト読上時間帯に先立ち、前記配信データ格納部より読み出された前記テキスト読上データを受信装置に配信すると共に、前記テキスト読上時間帯において、前記受信装置側で行われるテキスト読上のバックグランドとして、音楽をストリーミング放送する送信部と、
を有することを特徴とする放送装置。
【請求項2】
前記送信部は、前記テキスト読上時間帯に続く番組として、コマーシャル以外の番組をストリーミング放送することを特徴とする請求項1に記載された放送装置。
【請求項3】
前記テキスト読上時間帯に続く番組は、アナウンサーによる受けコメントを含むトーク番組または曲番組であることを特徴とする請求項2に記載された放送装置。
【請求項4】
デジタル放送の番組の一時間帯として設けられたテキスト読上時間帯用のデータを受信する受信装置において、
テキスト読上時間帯に先立ち放送局より受信したテキスト読上データであって、視聴者に提示する情報としてのテキストデータと、テキストデータの読上開始タイミングの指定を含む再生情報とを有するテキスト読上データを格納する配信データ格納部と、
前記テキスト読上データに含まれる前記再生情報によって指定される再生開始タイミングで、前記テキスト読上データに含まれる前記テキストデータを読み上げるテキスト読上部と、
前記テキスト読上時間帯において、前記テキストデータに基づくテキスト読上のバックグランドとして、ストリーミング放送として受信した音楽を再生するストリーミング再生部と
を有することを特徴とする受信装置。
【請求項5】
前記テキスト読上部は、前記再生情報によって指定された読上終了タイミングで、前記テキストデータに基づくテキスト読上を強制的に終了することを特徴とする請求項4または5に記載されたデジタル放送用の受信装置。
【請求項6】
前記テキスト読上部は、前記再生情報によって特定される読上時間に応じて、前記テキストデータに基づくテキスト読上の速度を可変に調整することを特徴とする請求項4または5に記載されたデジタル放送用の受信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放送装置および受信装置に係り、特に、放送チャンネルにおける番組の一時間帯で行われるテキスト読上(TTS;Text to Speech)に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、テキストデータを音声に変換して読み上げる「テキスト読上」、略してTTS(Text to Speech)と称される技術を用いた放送手法が提案されている。例えば、特許文献1には、デジタルテレビジョン放送において、受信機によって受信された文字スーパーインポーズデータを、画面に表示すると共に、音声で読み上げることが開示されている。
【0003】
また、特許文献2には、ユーザがモニタ画面を見ることなく、受信したデータ放送の内容を把握可能にすべく、テキスト読上を行うディジタル放送受信装置が開示されている。この受信装置では、受信選局した放送電波に含まれるデータ放送ストリーミングを復号して、データ放送用の文字データと画像データとが取得される。受信装置には、図形パターンと、その図形パターンの読みとが対応付けて予め記憶されており、この対応関係を照合して、取得した画像データに含まれる各々の図形パターンの読みデータが検索される。そして、データ放送用の文字データと、検索により得られた図形パターンの読みデータとに基づいて、音声読上用の文章データが生成され、音声出力される。
【0004】
さらに、特許文献3には、文字や図形を含む文字多重放送を受信して、目的地までの経路上で関係する情報をリアルタイムに取得するナビゲーション装置が開示されている。このナビゲーション装置では、受信したFM文字多重放送に含まれる文字情報の中から、自車両の現在地や目的地に関係する情報が選択され、この選択された情報がテキスト読上にて音声出力される。テキスト読上の対象となる文字情報としては、天気情報、道路交通情報、娯楽情報が例示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−81930号公報
【特許文献2】特開2006−33741号公報
【特許文献3】特開2005−181272号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、テキスト読上を用いた放送形態としては、放送の番組枠とは別にテキスト読上にて情報を副次的に提示する形態の他にも、放送の番組枠の一つとしてテキスト読上時間帯を設け、番組そのものにテキスト読上を組み込む形態が考えられる。後者の場合、テキスト読上時間帯でテキスト読上がタイミングよく収まるように設定する必要がある。しかしながら、実際のテキスト読上の速度は、受信装置の処理能力に依存して異なるため、必ずしも、データの配信者側が意図したどおりに再生されるとは限らない。その結果、処理能力が高い機種では、テキスト読上が速く、テキスト読上が完了してからテキスト読上時間帯の終了までの間に無音状態が生じ得る。この無音状態が極端な場合には放送事故とみなされる。一方、処理能力が低い機種では、テキスト読上が遅く、テキスト読上時間帯の終了までにテキスト読上が完了しない状況が生じ得る。その結果、テキスト読上と次の音声放送とが被ってしまう。特に、テキスト読上時間帯の次の音声放送がコマーシャル(CM)の場合、このような音声の被りはスポンサーとの契約上、大きな問題となる。
【0007】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、受信装置の機種に依存したテキスト読上速度のばらつきに有効に対処することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる課題を解決すべく、第1の発明は、デジタル放送の番組の一時間帯として設けられたテキスト読上時間帯用のデータを配信する放送装置を提供する。この放送装置は、配信データ格納部と、送信部とを有する。配信データ格納部には、テキスト読上データが格納されている。このテキスト読上データは、視聴者に提示する情報としてのテキストデータと、デジタル放送を受信する受信装置側におけるテキストデータの読上開始タイミングの指定を含む再生情報とを有する。送信部は、テキスト読上時間帯に先立ち、配信データ格納部より読み出されたテキスト読上データを受信装置に配信する。また、送信部は、テキスト読上時間帯において、受信装置側で行われるテキスト読上のバックグランドとして、音楽をストリーミング放送する。
【0009】
ここで、第1の発明において、上記送信部は、テキスト読上時間帯に続く番組として、コマーシャル以外の番組をストリーミング放送することが好ましく、この番組は、アナウンサーによる受けコメントを含むトーク番組または曲番組であることが好ましい。
【0010】
第2の発明は、デジタル放送の番組の一時間帯として設けられたテキスト読上時間帯用のデータを受信する受信装置を提供する。この受信装置は、配信データ格納部と、テキスト読上部と、ストリーミング再生部とを有する。配信データ格納部には、テキスト読上データが格納されている。このテキスト読上データは、テキスト読上時間帯に先立ち放送局より受信され、視聴者に提示する情報としてのテキストデータと、テキストデータの読上開始タイミングの指定を含む再生情報とを有する。テキスト読上部は、テキスト読上データに含まれる再生情報によって指定される再生開始タイミングで、テキスト読上データに含まれるテキストデータを読み上げる。ストリーミング再生部は、テキスト読上時間帯において、テキストデータに基づくテキスト読上のバックグランドとして、ストリーミング放送として受信した音楽を再生する。
【0011】
ここで、第1の発明において、上記テキスト読上部は、再生情報によって指定された読上終了タイミングで、テキストデータに基づくテキスト読上を強制的に終了してもよい。また、上記テキスト読上部は、再生情報によって特定される読上時間に応じて、テキストデータに基づくテキスト読上の速度を可変に調整してもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、テキスト読上時間帯において、受信装置側で行われるテキスト読上のバックグランドとして音楽をストリーミング放送することで、テキスト読上の速さに関わりなく、無音状態の発生を有効に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】自動車向けのデジタル放送の番組構成を示す図
【
図3】テキスト読上データ生成装置のブロック構成図
【
図6】音声放送およびデータ配信のタイミングチャート
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、本実施形態に係るデジタル放送システムの全体図である。このデジタル放送システム1は、アナログテレビ放送が終了したことに伴い空白となったVHF帯のうち、1チャンネルから3チャンネルの周波数帯域(通称V−Low)を使って、移動体(その典型として自動車)向けのマルチメディア放送を行う。このサービスの特徴として、放送、通信、GPSおよびビックデータを融合したマルチメディア放送であることが挙げられる。放送によって配信されるすべての情報には、本デジタル放送の放送域を区分したエリア情報が付されており、自車両が走行するエリアに関する情報のみを選択して視聴者に提示する。エリア別のきめ細かな情報配信を行うことで、例えば、旬のドライブスポットや、流星や夕日が綺麗に見えるエリアなど情報をピンポイントで、かつ、タイムリーに紹介することが可能になる。また、道の駅やサービスエリアといった商業施設のトピックやイベント情報などを、そのエリアに近づく自動車の視聴者に事前に知らせることで、高い広告効果が期待できる。
【0015】
デジタル放送システム1は、コンテンツプロバイダ2と、テキスト読上データ生成装置3と、放送スタジオ4と、放送装置5と、受信装置6と、携帯端末7とを主体に構成されている。コンテンツプロバイダ2は、視聴者に提示すべき情報の内容や放送時間の指示を含む放送情報をテキスト読上データ生成装置3に提供する。放送情報には、典型的には、気象情報、交通情報、観光情報、広告情報などがあり、その他に、放送チャンネルの番組スポンサーといった独自のデータやコンテンツなどもある。テキスト読上データ生成装置3は、コンテンツプロバイダ2より提供された放送情報に基づいて、受信装置6側で再生されるテキスト読上データ(JEITA TT-6004準拠)を生成し、配信データとして放送装置5に送信する。放送スタジオ4は、トーク、曲、CMといったリアルタイムの音声放送を、放送装置5を介して同報する(ストリーミング放送)。また、放送装置5は、テキスト読上データ生成部3からのテキスト読上データを、ストリーミング放送中にバックグランドで配信する。自動車に搭載された受信装置6(車載器)は、放送装置5より受信したストリーミング放送をリアルタイムで再生すると共に、ストリーミング放送中にバックグランドで受信したテキスト読上データを取得・蓄積する。受信装置6側に蓄積されたテキスト読上データは、このデータに含まれる再生情報に基づいて、音声にて読み上げられる。携帯端末7は、受信装置6と連係しており、受信装置6によって取得されたコンテンツ(例えば割引クーポンのURL等)が転送され、指定されたURLにアクセスすることによって、これに関連した追加コンテンツ等をサーバより取得する。
【0016】
図2は、移動体の一例としての自動車向けのデジタル放送の番組構成を示す図である。本実施形態に係るデジタル放送は、自動車が走行する道路の種別毎に用意された複数の放送チャンネルを有する。チャンネル番号「200」は一般道路向けの番組A、チャンネル番号「201」は高速道路向けの番組B、チャンネル番号「202」は渋滞道路向けの番組Cである。番組A〜Cのいずれも、60分を番組編成上の単位としており、CMの時間帯、曲の時間帯、トークの時間帯、および、テキスト読上(TTS)の時間帯といった番組枠で編成されている。それぞれの番組枠は、3分を最小単位とし、その整数倍で尺が構成されている。TTS時間帯は、一例として、60分のまとまりの中で4回、合計12分(番組Cのみ24分)の尺として確保されている。番組A〜Cは、TTS時間帯の番組内容が相違する以外、CM、曲、トークの内容や尺は基本的に同一に設定されているが、これは一例であって、道路種別毎に変えても構わない。また、渋滞道路向けの番組CのみTTS時間帯が6分×4になっている理由は、視聴者に提示する情報量が、一般道路向けや高速道路向けに比べて、多い状況が想定されるからである。
【0017】
放送チャンネルを道路の種別毎に別ける理由は、TTS時間帯で視聴者に提示する情報を道路種別にてカテゴライズすることで、自動車に乗っている視聴者に対して、有用な情報を効率的に配信するためである。例えば、一般道路沿いの店舗情報については、一般道路向きのチャンネル「200」でのみ配信すればよく、それ以外のチャンネル「201」,「202」で配信する必要はない。ただし、気象情報のように道路の種別に関わりのない情報については、すべてのチャンネル「200」〜「202」で配信される。なお、道路の種別は、一般道路、高速道路、渋滞道路の3つに限られるものではなく、それ以外のものも含めた任意の組み合わせを適宜設定すればよい。
【0018】
本実施形態に係る番組構成上の特徴の一つは、TTS時間帯の開始タイミング、換言すれば、受信装置6側におけるテキストデータの読上開始タイミングが、すべての番組A〜Cにおいて同期していることである。図示した例では、すべての番組A〜Cにおいて、9分、24分、39分、54分のそれぞれを開始時とした3分間(または6分間)の番組枠が、TTS時間帯として設定されている。このように設定する理由は、後述するように、放送チャンネルの切り替えに起因して、テキスト読上時間帯が無音状態になることを抑制するためである。すべての種類の番組の尺を、所定時間の整数倍に設定することで、番組間に時間的な空白を生じさせることなく、TTS時間帯を容易に揃えることができるので、番組編成上の利点は大きい。
【0019】
また、番組Cでは、TTS時間帯の直後にコマーシャル(CM)の枠が設けられているが、TTS時間帯に続く番組としては、コマーシャル以外の番組、具体的には、アナウンサーによる受けコメントを含むトーク番組または曲番組とすることが好ましい。テキスト読上が遅い受信装置6では、TTS時間帯の終了までにテキスト読上が完了せず、次の音声放送と被ってしまうおそれがある。TTS時間帯の次の音声放送がコマーシャルだと、このような音声の被りはスポンサーとの契約上、大きな問題となる。コマーシャル以外の番組にすれば、かかる問題を解消できる。
【0020】
図3は、テキスト読上データ生成装置3のブロック構成図である。このテキスト読上データ生成装置3は、テキスト素材格納部3aと、テキスト特定部3bと、再生情報生成部3cと、配信データ供給部3dとを主体に構成されている。テキスト素材格納部3aには、TTS時間帯で読み上げられるテキストデータの構成要素となる複数のテキスト素材が予め格納されている。気象情報、交通情報、観光情報、広告情報などは、いずれも定型的な文で表現できることが殆どである。そこで、定型的なテキスト文の構成要素をテキスト素材として多数用意しておき、これらをテキスト素材格納部3aに格納しておく。これにより、テキスト読上データを生成する毎に、テキスト文を手入力しなくても、テキスト文を自動生成することができる。
【0021】
テキスト特定部3bは、視聴者に提示する情報として、テキストデータを放送チャンネル毎に生成・特定する。具体的には、コンテンツプロバイダ2より定期的に供給される放送情報に基づいて、テキスト素材格納部3aに格納されたテキスト素材を組み合わせて、テキストデータTx(テキスト文)を随時生成する。このテキストデータTxは、一般道路向け、高速道路向け、および、渋滞道路向けの3種類が生成される。ただし、上述したように、これらのテキストデータTxの内容は、必ずしも相違するとは限らず、同一の場合もあり得る。
【0022】
図4は、一つの放送チャンネル用のテキストデータTxの構成を示す図である。このテキストデータTx(例えばJSON形式)は、エリアコード(R1,R2,・・・)とテキストデータ(Tx1,Tx2,・・・)とを関連付けた多数のデータセットによって構成されている。ここで、エリアコード(R1,R2,・・・)は、デジタル放送の放送域を区分したエリアを指定する識別子である。エリアコードとしては、例えば、都道府県コード(JIS X0401)、市町村コード(JIS X0402)、JMAコード(気象庁防災情報XMLフォーマット”気象情報/府県予報区・細分区域等”)、2次メッシュコード(JIS X 0410 地域メッシュコード)、3次メッシュコード(JIS X 0410 地域メッシュコード)、4分の1地域メッシュコード(JIS X 0410 地域メッシュコード)および郵便番号などを、組み合わせて用いることができる。これによって、視聴者に提示する情報をエリアコードによってきめ細やかに指定することが可能になる。また、「ユーザ別コード」や「サービス別コード」を併用すれば、情報再生端末の指定も可能になり、より多彩な指定が可能になる。また、テキストデータ(Tx1,Tx2,・・・)は、エリアコードによって指定されたエリアに関するローカルな気象情報、交通情報、観光情報、広告情報などである。
【0023】
再生情報生成部3cは、テキスト特定部2bによって生成されたテキストデータTxに関する再生情報Mtを生成する。本実施形態において、再生情報Mtは、デジタル放送を受信する受信装置6において、テキストデータTxの読上開始タイミングを放送チャンネル間で同期させるために用いられる。具体的には、再生情報Mtは、同時にデータ転送している再生開始キューおよび同期受付開始キューを含む。再生開始キューは、受信装置6側における、対象コンテンツ(テキストデータTx)の処理を行う動作、その処理回数、動作開始時間(テキストデータTxの読上開始タイミング)、および、その動作終了時間などの指定を含む。
【0024】
配信データ供給部3dは、テキストデータTxおよび再生情報Mtに、放送データリストを付加したテキスト読上データTdを放送チャンネル毎に生成する。放送データリストは、テキストデータTxのファイル名、受信装置6に対するデータ同期を行う際の設定や内容、テキスト文の読み上げや表示の有無、その他の条件が記載されている。テキスト読上データTdは、それぞれの放送チャンネルのTTC時間帯に先立ち、それぞれの放送チャンネルを介して受信装置6に配信するために、配信データとして放送装置5に供給される。
【0025】
なお、
図3に示した構成は、テキスト読上データ生成装置3自身がテキストデータTxを生成する機能を備えているが、テキストデータTxの生成自体は、コンテンツプロバイダ2側で行ってもよい。この場合、テキスト特定部3bは、コンテンツプロバイダ2から提供されたテキストデータTxのうち、ターゲットなるTTS時間帯のものを特定し、テキスト読上データTdを生成して、配信データ供給部3dに転送する機能を担うことになる。
【0026】
図5は、放送装置5のブロック構成図である。この放送装置5は、配信データ管理部5aと、配信データ格納部5bと、データ多重化部5cと、3つのチャンネル送信部5d〜5fとを主体に構成されている。配信データ管理部5aは、テキスト読上データ生成装置3より随時受信したテキスト読上データTdを配信データ格納部5bに一時的に格納する。また、配信データ管理部5aは、配信データ格納部5bに格納されたテキスト読上データTdの配信タイミングを管理すると共に、各放送チャンネルのTTS時間帯に先立ち、配信データ格納部5bより配信対象となるテキスト読上データTdを読み出して、データ多重化部5cに出力する。その際、データ量を低減すべく、テキスト読上データTdは圧縮形式(例えばZIP圧縮)とすることが好ましい。データ多重化部5cは、放送スタジオ4からの音声放送を放送チャンネル毎の放送部5d〜5fに振り分けて出力する。また、データ多重化部5cは、配信データ管理部5aよりテキスト読上データTdが供給された場合、音声放送にテキスト読上データTdを多重化した上で、放送チャンネル毎の放送部5d〜5fに振り分けて出力する。
【0027】
また、放送スタジオ4は、TTC時間帯においても、音声放送を中断または無音状態にすることなく、受信装置6側で行われるテキスト読上のバックグランドとして、音楽(GBM)を供給する。これにより、放送チャンネル毎の放送部5d〜5fは、TTS時間帯において、ストリーミング放送としてBGMを送信する。
【0028】
図6は、音声放送およびデータ配信(テキスト読上データTd)のタイミングチャートである。まず、タイミングt0からTTS1時間帯の開始タイミングt1までは、すべての放送チャンネルにおいて、トーク、曲、CM等のストリーミング放送が行われる。この期間t0〜t1において、一般道路向けチャンネル送信部5d(チャンネル番号「200」)は、一般道路向けのストリーミング放送(番組A)を行うと共に、このストリーミング放送のバックグランドでTTS1時間帯用のテキスト読上データTd(一般道路向け)を繰り返し配信する。また、高速道路向けチャンネル送信部5e(チャンネル番号「201」)は、高速道路向けのストリーミング放送(番組B)を行うと共に、このストリーミング放送のバックグランドでTTS1時間帯用のテキスト読上データTd(高速道路向け)を繰り返し配信する。さらに、渋滞道路向けチャンネル送信部5f(チャンネル番号「202」)は、渋滞道路向けのストリーミング放送(番組C)を行うと共に、このストリーミング放送のバックグランドでTTS1時間帯用のテキスト読上データTd(渋滞道路向け)を繰り返し配信する。テキスト読上データTdを繰り返し配信する理由は、1回だけの配信だと、電波不良等で受信装置6側が取得できないおそれがあるので、それを回避するためである。
【0029】
TTS1時間帯の開始タイミングt1になると、受信装置6側でテキスト読上が再生される。その際、すべての放送チャンネルにおいて、BGMがストリーミング放送される。これにより、BGMが流れている状態でテキスト読上が行われるので、TTS1時間帯の終了よりも早くテキスト読上が終了しても、無音状態にはならない。そして、TTS1時間帯の終了タイミングt2になると、そこから次のTTS2時間帯の開始タイミングt3までの期間において、一般道路向けのストリーミング放送(番組A)が行われると共に、このストリーミング放送のバックグランドで次のTTS2時間帯用のテキスト読上データTd(一般道路向け)が繰り返し配信される。高速道路向けおよび渋滞道路向けについても同様である。
【0030】
図7は、受信装置6のブロック構成図である。この受信装置6は、ナビゲーション装置6aと連係しており、チャンネル受信部6bと、配信データ分離部6cと、ストリーミング再生部6dと、配信データ管理部6eと、配信データ格納部6fと、テキスト読上部6gとを主体に構成されている。ナビゲーション装置6aは、GPS情報等に基づいて、自車両の位置を検出すると共に、地図情報やVICS(登録商標)情報を参照して、自車両が走行する道路の種別(一般道路、高速道路、渋滞道路等)を検出する。チャンネル受信部6bは、放送装置5から放送されたデジタル放送をアンテナ6hを介して受信する。受信する放送チャンネルは、ナビゲーション装置6aによって検出された道路の種別に応じて、自動的に選択される。すなわち、自車両の走行路が一般道路の場合には、一般道路向けの放送(チャンネル番号「200」)が選択される。また、高速道路の場合には高速道路向けの放送(チャンネル番号「201」)、渋滞道路(例えば、20km/h以下)の場合には渋滞道路向けの放送(チャンネル番号「202」)がそれぞれ選択される。
【0031】
配信データ分離部6cは、受信した音声放送に多重化されているテキスト読上データTdを分離して、音声放送をストリーミング再生部6dに出力すると共に、テキスト読上データTdを配信データ管理部6eに出力する。放送音声は、ストリーミング再生部6dを介して、スピーカ6iより出力される。これにより、一般道路向け放送チャンネルの選択時には、一般道路向けのストリーミング放送(番組A)が再生される。同様に、高速道路向け放送チャンネルの選択時には高速道路向けのストリーミング放送(番組B)、渋滞道路向け放送チャンネルの選択時には渋滞道路向けのストリーミング放送(番組C)がそれぞれ再生される。
【0032】
配信データ管理部6eは、配信データ分離部6cによって抽出されたテキスト読上データTdを配信データ格納部6fに一時的に格納する。また、配信データ管理部6eは、配信データ格納部6fに格納されたテキスト読上データTdの配信タイミングを管理し、テキスト読上データTdに含まれる再生情報Mtの指示(特に、読上開始タイミングの指示)にしたがい、テキスト読上データTdに含まれるテキストデータTxを読み出し、テキスト読上部6gに出力する。これにより、番組枠の一つであるTTS時間帯において、事前に取得・蓄積されたテキストデータTxが音声に変換されてスピーカ6iより出力される。その際、ストリーミング再生部6dは、テキスト読上のバックグランドとして、ストリーミング放送として受信した音楽(BGM)を再生する。
【0033】
また、テキスト読上部6gは、再生情報によって指定された読上終了タイミング(動作終了時間)で、テキストデータTxのテキスト読上を強制的に終了してもよい。また、テキスト読上部6gは、再生情報によって特定される読上時間(動作開始時間と動作終了時間との間隔)に応じて、テキストデータTxの読上速度を可変に調整してもよい。具体的には、テキスト読上の速度が遅い機種では、通常よりもテキスト読上の速度を速くするといった如くである。これにより、テキスト読上が遅い機種であっても、TTS時間帯においてテキスト読上を完了させることができ、次の音声放送と被ってしまうことを有効に回避できる。
【0034】
図4に示したように、テキストデータTxは、エリアコード(R1,R2,・・・)とテキストデータ(Tx1,Tx2,・・・)とを関連付けた多数のデータセットによって構成されている。配信データ管理部6eは、テキスト読上の対象となるテキストデータTxに含まれる複数のテキストデータ(Tx1,Tx2,・・・)のうち、自車両が現在または近い将来走行するエリアに相当するものを選択・抽出する。これにより、テキスト読上部6gは、配信データ管理部6eによって選択されたテキストデータTxを読み上げる。
【0035】
図8は、受信装置6側における番組再生の遷移を示す図である。まず、タイミングt0において、自車両が一般道路を走行している場合、一般道路向けのストリーミング放送(番組A)が再生されると共に、このストリーミング放送のバックグランドでTTS1時間帯用のテキスト読上データTd(一般道路向け)が取得される。そして、TTS1時間帯の開始タイミングt1になると、期間t0〜t1で取得されたテキスト読上データTd(TTS1用)のうち、自車両の走行エリアに関するテキストデータTx(一般道路向け)が読み上げられる(ストリーミング放送としてBGM再生)。なお、テキスト読上の期間t1〜t3の途中(タイミングt2)で、自車両の走行路が一般道路から高速道路に移行した場合であっても、テキスト読上を中断することなく継続される。
【0036】
高速道路への移行に応じて、放送チャンネルが切り替わり、タイミングt3以降は、高速道路向けのストリーミング放送(番組B)が再生されると共に、このストリーミング放送のバックグランドでTTS2時間帯用のテキスト読上データTd(高速道路向け)が取得される。そして、TTS2時間帯の開始タイミングt4になると、期間t3〜t4で取得されたテキスト読上データTd(TTS2用)のうち、自車両の走行エリアに関するテキストデータTx(高速道路向け)が読み上げられる(ストリーミング放送としてBGM再生)。そして、TTS2時間帯の終了タイミングt5になると、高速道路向けのストリーミング放送(番組B)が再開されると共に、このストリーミング放送のバックグランドでTTS3時間帯用のテキスト読上データTd(高速道路向け)が取得される。
【0037】
TTS3時間帯の開始タイミングt7に至る前(タイミングt6)に、自車両の走行路が高速道路から渋滞道路に移行する。高速道路への移行に応じて、放送チャンネルが切り替わり、タイミングt6以降は、渋滞道路向けのストリーミング放送(番組C)が再生されると共に、このストリーミング放送のバックグランドでTTS3時間帯用のテキスト読上データTd(渋滞道路向け)が取得される。これにより、同一時間帯のテキスト読上データTdとして、高速道路向け、および、渋滞道路向けの双方が取得される。この場合には、現在走行している道路の種別が優先され、TTS3時間帯では、渋滞道路向けのテキストデータTxが読み上げられる(ストリーミング放送としてBGM再生)。
【0038】
このように、本実施形態によれば、受信装置6の機種に依存したテキスト読上速度のばらつきに有効に対処することができる。すなわち、TTS時間帯において、受信装置6側で行われるテキスト読上のバックグランドとして音楽(BGM)をストリーミング放送することで、テキスト読上が速い受信装置6であっても、無音状態の発生を有効に抑制できる。また、TTS時間帯に続く番組として、アナウンサーによる受けコメントを含むトーク番組または曲番組とすることにより、テキスト読上に時間がかかっても、アナウンサーや曲のストリーミング放送でカバーできる。
【0039】
また、本実施形態によれば、放送チャンネル毎に生成されるテキストデータTxの他に、受信装置6側におけるテキストデータTxの読上開始タイミングを放送チャンネル間で同期させる再生情報Mtも併せて受信装置6側に配信する。これにより、複数のチャンネル相互において、再生情報Mtによって指定されるテキスト読上開始タイミング、すなわち、TTS時間帯の開始時を揃えることができる。その結果、受信装置6側で放送チャンネルを切り替えても、新たなテキストデータTxを取得する時間的な余裕を確保できるため、テキストデータTxを確実に取得できる。
【0040】
また、本実施形態によれば、放送チャンネルを道路の種別毎に用意することで、TTS時間帯で視聴者に提示する情報を効率的にカテゴライズできる。これにより、自動車に乗っている視聴者に対して、有用な情報を効率的かつタイムリーに配信することができる。特に、自車両が走行する道路の種別に応じて、受信装置6側で放送チャンネルの切り替えを自動的に行えば、視聴者の負担を生じさせることなく、利便性の高いサービスを実現できる。
【0041】
また、本実施形態によれば、テキストデータTxとして、デジタル放送の放送域を区分したエリアを指定するエリアコードが関連付けられたテキストデータをエリア毎に用意することで、視聴者にとって有用であるローカルな情報をきめ細やかに配信・提示することが可能となる。
【0042】
さらに、本実施形態によれば、テキスト読上時間帯に先立つストリーミング放送中に、テキスト読上データTdをバックグランドで繰り返し配信することにより、電波状況の変化に対しても柔軟に対応することができる。
【0043】
なお、上述した実施形態では、移動体の一例としての自動車向けのデジタル放送を例に説明したが、放送チャンネル間でTTS時間帯を同期させることで、TTS時間帯の無音状態の解消を図ると入った効果は、移動体向けにデジタル放送に限定されるものではなく、テキスト読上を番組枠に組み込んだ様々なデジタル放送に対して、広く適用することができる。
【0044】
また、本発明の応用例として、災害時における情報提供システムとしても活用できる。例えば、豪雪によって車両が特定のエリアに閉じ込められている場合、このエリアのエリアコードを付したテキストデータを特定の放送チャンネルまたはすべての放送チャンネルを介して配信すればよい。
【符号の説明】
【0045】
1 デジタル放送システム
2 コンテンツプロバイダ
3 テキスト読上データ生成装置
3a テキスト素材格納部
3b テキスト特定部
3c 再生情報生成部
3d 配信データ供給部
4 放送スタジオ
5 放送装置
5a 配信データ管理部
5b 配信データ格納部
5c データ多重化部
5d 一般道路向けチャンネル送信部
5e 高速道路向けチャンネル送信部
5f 渋滞道路向けチャンネル送信部
6 受信装置
6a ナビゲーション装置
6b チャンネル受信部
6c 配信データ分離部
6d ストリーミング再生部
6e 配信データ管理部
6f 配信データ格納部
6g テキスト読上部
6h アンテナ
6i スピーカ
7 携帯端末