特開2017-168944(P2017-168944A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-168944(P2017-168944A)
(43)【公開日】2017年9月21日
(54)【発明の名称】放送局システムおよび無人飛行体
(51)【国際特許分類】
   H04H 60/13 20080101AFI20170825BHJP
   B64C 39/02 20060101ALI20170825BHJP
   B64D 47/08 20060101ALI20170825BHJP
   B64C 13/20 20060101ALI20170825BHJP
   H04Q 9/00 20060101ALI20170825BHJP
   H04H 60/42 20080101ALI20170825BHJP
   H04H 20/57 20080101ALI20170825BHJP
   H04H 60/71 20080101ALI20170825BHJP
   H04H 60/51 20080101ALI20170825BHJP
   H04H 20/38 20080101ALI20170825BHJP
【FI】
   H04H60/13
   B64C39/02
   B64D47/08
   B64C13/20 C
   H04Q9/00 301B
   H04H60/42
   H04H20/57
   H04H60/71
   H04H60/51
   H04H20/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-50317(P2016-50317)
(22)【出願日】2016年3月14日
(71)【出願人】
【識別番号】515285280
【氏名又は名称】株式会社アマネク・テレマティクスデザイン
(71)【出願人】
【識別番号】516077404
【氏名又は名称】バイテックシステムエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101982
【弁理士】
【氏名又は名称】久米川 正光
(72)【発明者】
【氏名】今井 武
(72)【発明者】
【氏名】村越 博之
【テーマコード(参考)】
5K048
【Fターム(参考)】
5K048AA04
5K048AA05
5K048BA45
5K048DB01
5K048DC01
5K048EB01
5K048EB02
5K048EB06
5K048EB15
5K048FB15
5K048GC03
5K048HA06
(57)【要約】
【課題】自律飛行可能な無人飛行体における遠隔操作性および制御柔軟性の向上を図る。
【解決手段】マルチメディア放送を行う放送局システム3は、識別コード付の配信データを生成し、マルチメディア放送の放送波を用いて送信する。この配信データを受信した無人飛行体5は、配信データが自己に関連すると判定した場合、配信データに基づいて、自己の飛行を制御する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチメディア放送を行う放送局システムにおいて、
識別コードに関連する無人飛行体の飛行を制御するために、自律飛行可能な無人飛行体に配信すべき、識別コード付の配信データを生成する配信データ生成部と、
前記配信データ生成部によって生成された前記配信データをマルチメディア放送の放送波を用いて送信する配信データ送信部と
を有することを特徴とする放送局システム。
【請求項2】
前記配信データは、前記識別コードとして、無人飛行体を識別する機体コードが付された、無人飛行体の飛行を制御する制御データを含むことを特徴とする請求項1に記載された放送局システム。
【請求項3】
前記制御データは、無人飛行体の目的地または飛行ルートを指定する自律飛行データであることを特徴とする請求項2に記載された放送局システム。
【請求項4】
前記配信データは、前記識別コードとして、マルチメディア放送の放送地域を区分したエリアを指定するエリアコードが付された、無人飛行体の飛行に影響を及ぼすエリアデータを含むことを特徴とする請求項1に記載された放送局システム。
【請求項5】
自律飛行可能な無人飛行体において、
マルチメディア放送の放送波を用いて、マルチメディア放送を行う放送局システムより送信された識別コード付の配信データを受信する配信データ受信部と、
前記配信データの識別コードに基づいて、前記配信データが自己に関連するか否かを判定する識別コード判定部と、
前記配信データが自己に関連すると判定された場合、前記配信データに基づいて、無人飛行体の飛行を制御する飛行制御部と
を有することを特徴とする無人飛行体。
【請求項6】
前記配信データは、前記識別コードとして、無人飛行体を識別する機種コードが付された、無人飛行体の自律飛行を制御する制御データを含み、
前記識別コード判定部は、前記配信データの前記機種コードを自己のコードと比較することによって、前記配信データが自己に関連するか否かを判定し、
前記飛行制御部は、前記配信データが自己に関連すると判定された場合、前記配信データに含まれる前記制御データに基づいて、自律飛行を制御することを特徴とする請求項5に記載された無人飛行体。
【請求項7】
前記制御データは、無人飛行体の目的地または飛行ルートを指定する自律飛行データであって、
前記飛行制御部は、前記自律飛行データに基づいて、無人飛行体の目的地または飛行ルートを設定することを特徴とする請求項6に記載された無人飛行体。
【請求項8】
前記配信データは、前記識別コードとして、マルチメディア放送の放送地域を区分したエリアを指定するエリアコードが付された、無人飛行体の飛行に影響を及ぼすエリアデータを含み、
前記識別コード判定部は、前記エリアコードによって指定されたエリアを無人飛行体の目的地のエリアまたは飛行ルート上のエリアと比較することによって、前記配信データが自己に関連するか否かを判定し、
前記飛行制御部は、前記配信データが自己に関連すると判定された場合、前記エリアデータによって指定されたエリアを回避するように、無人飛行体の目的地または飛行ルートを変更することを特徴とする請求項5に記載された無人飛行体。
【請求項9】
無人飛行体視点の画像を撮像する撮像装置と、
前記撮像装置によって撮像された画像をモバイル通信によって送信する送信部と
をさらに有することを特徴とする請求項5から8のいずれかに記載された無人飛行体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放送局システムおよび無人飛行体に係り、特に、無人飛行体の遠隔制御に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、ドローン(drone)と称される無人飛行体が注目されている。このような無人飛行体の制御手法として、例えば、特許文献1には、4翼ヘリコプター等の回転翼無人機を制御機器によって遠隔制御することが記載されている。この制御機器としては、マルチメディア機器や携帯情報端末、例えばiPhoneタイプの携帯電話やiPod Touchタイプ(米国、Apple Inc.の登録商標)が用いられ、無線通信としては、Wi-Fi(IEEE802.11)やBluetooth(登録商標)が用いられる。また、特許文献2には、無人ヘリコプターに格納された飛行ルートプログラムおよび飛行基本プログラムに基づいて、無人ヘリコプターを所定の飛行ルートで所定の位置に飛行させる自律飛行方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−106721号公報
【特許文献2】特開2008−105591号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のような無線通信による無人飛行体の制御では、通信範囲が狭く、通信範囲を広げようとすると、無人飛行体の消費電力が増大して、飛行距離が短くなるといった不都合がある。また、特許文献2のような無人飛行体の自律飛行は、事前に設定された目的地や飛行ルートに基づいて行われ、自律飛行中に目的地や飛行ルートを変更することはできない。そのため、例えば、強風、豪雨、落雷といった飛行状況の急な変化が生じても、適切かつ柔軟に対処することができない。
【0005】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、自律飛行可能な無人飛行体における遠隔操作性および制御柔軟性の向上を図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる課題を解決すべく、第1の発明は、マルチメディア放送を行う放送局システムを提供する。この放送局システムは、配信データ生成部と、配信データ送信部とを有する。配信データ生成部は、識別コードに関連する無人飛行体の飛行を制御するために、自律飛行可能な無人飛行体に配信すべき、識別コード付の配信データを生成する。配信データ送信部は、配信データ生成部によって生成された配信データをマルチメディア放送の放送波を用いて送信する。
【0007】
ここで、第1の発明において、上記配信データは、識別コードとして、無人飛行体を識別する機体コードが付された、無人飛行体の飛行を制御する制御データを含んでいてもよい。この場合、上記制御データは、無人飛行体の目的地または飛行ルートを指定する自律飛行データであることが好ましい。
【0008】
また、第1の発明において、上記配信データは、識別コードとして、マルチメディア放送の放送地域を区分したエリアを指定するエリアコードが付された、無人飛行体の飛行を制限するエリアデータを含んでいてもよい。
【0009】
第2の発明は、自律飛行可能な無人飛行体を提供する。この無人飛行体は、配信データ受信部と、識別コード判別部と、飛行制御部とを有する。配信データ受信部は、マルチメディア放送の放送波を用いて、マルチメディア放送を行う放送局システムより送信された識別コード付の配信データを受信する。識別データ判定部は、配信データの識別コードに基づいて、配信データが自己に関連するか否かを判定する。飛行制御部は、配信データが自己に関連すると判定された場合、配信データに基づいて、無人飛行体の飛行を制御する。
【0010】
ここで、第2の発明において、上記配信データは、識別コードとして、無人飛行体を識別する機種コードが付された、無人飛行体の自律飛行を制御する制御データを含んでいてもよい。この場合、上記識別コード判定部は、配信データの機種コードを自己のコードと比較することによって、配信データが自己に関連するか否かを判定する。そして、飛行制御部は、配信データが自己に関連すると判定された場合、配信データに含まれる制御データに基づいて、自律飛行を制御する。この制御データは、無人飛行体の目的地または飛行ルートを指定する自律飛行データであってもよい。この場合、上記飛行制御部は、自律飛行データに基づいて、無人飛行体の目的地または飛行ルートを設定する。
【0011】
また、第2の発明において、上記配信データは、識別コードとして、マルチメディア放送の放送地域を区分したエリアを指定するエリアコードが付された、無人飛行体の飛行を制限するエリアデータを含んでいてもよい。この場合、上記識別コード判定部は、エリアコードによって指定されたエリアを無人飛行体の目的地のエリアまたは飛行ルート上のエリアと比較することによって、配信データが自己に関連するか否かを判定する。そして、飛行制御部は、配信データが自己に関連すると判定された場合、エリアデータによって指定されたエリアを回避するように、無人飛行体の目的地または飛行ルートを変更する。
【0012】
さらに、第2の発明において、無人飛行体視点の画像を撮像する撮像装置と、撮像装置によって撮像された画像をモバイル通信によって送信する送信部とをさらに設けてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、自律飛行可能な無人飛行体の制御を、マルチメディア放送の放送波を用いて行う。マルチメディア放送は広範な放送範囲を有しているので、無線通信と比較して、遠隔操作性に優れている。また、マルチメディア放送の放送域内であれば、いつでもどこでも無人飛行体にデータを配信できる。これにより、放送局システムから識別コード付の配信データを送信することによって、識別コードに関連する特定の無人飛行体を高い柔軟性をもって動的に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】デジタル放送システムの全体図
図2】放送局システムのブロック構成図
図3】第1の実施形態に係る無人飛行体のブロック構成図
図4】無人飛行体の自律走行の一例を示す図
図5】第2の実施形態に係る無人飛行体のブロック構成図
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態に係るデジタル放送システムの全体図である。このデジタル放送システム1は、アナログテレビ放送が終了したことに伴い空白となったVHF帯のうち、1チャンネルから3チャンネルの周波数帯域(通称V−Low)を使って、自動車向けのマルチメディア放送を行う。このサービスの特徴としては、第1に、放送、通信、GPSおよびビックデータを融合したマルチメディア放送であることが挙げられる。コンテンツプロバイダ2は、視聴者に提示すべき情報の内容や放送時間の指示を含む放送情報を放送局システム3に提供する。放送情報には、典型的には、気象情報、交通情報、観光情報、広告情報などがあり、その他に、放送チャンネルの番組スポンサーといった独自のデータやコンテンツなどもある。
【0016】
第2の特徴は、放送の番組として「テキスト読上」、略してTTS(Text to Speech)が行われることである。すなわち、番組枠の一つとしてテキスト読上時間帯が設けられており、車載器4側で再生されるテキスト文(配信データ)が、テキスト読上時間帯に先立ち、トーク、曲、コマーシャル(CM)といったストリーミング放送(音声放送)のバックグランドで配信される。すべての配信データには、本デジタル放送の放送域を多数のエリアに区分(細分化)したエリアコードが付されており、車載器4側において、自車両が走行するエリアに関する情報のみを選択して視聴者に提示する。エリア別のきめ細かな情報配信を行うことで、例えば、旬のドライブスポットや、流星や夕日が綺麗に見えるエリアなど情報をピンポイントで、かつ、タイムリーに紹介することが可能になる。また、道の駅やサービスエリアといった商業施設のトピックやイベント情報などを、そのエリアに近づく自動車の視聴者に事前に知らせることで、高い広告効果が期待できる。
【0017】
第3の特徴は、マルチメディア放送の放送波を用いて、ドローン(drone)等に代表される自律飛行可能な無人飛行体5の制御を行うことである。現状、この類いの制御は、プロポ等のコントローラからの無線が届く範囲で行われ、無線が届かないエリアでは、GPS、画像、ジャイロ等によって自己の位置を検出しながら目的地に向かって飛行する自律飛行が行われる。しかしながら、自律飛行中は、遠距離の無人飛行体5を操作できないという問題がある。そこで、デジタル放送波を使って、無人飛行体5を外部からリアルタイムで遠隔操作できるようにする。無人飛行体5を制御するためのデジタル放送波としては、専用の周波数帯を設けることを想定しているが、ストリーミング放送のバックグランドで配信することも可能である。
【0018】
図2は、放送局システム3のブロック構成図である。この放送局システム3は、車載器4が搭載された自動車向けの放送装置の他に、無人飛行体5を制御する制御データを生成して、無人飛行体5に送信する機能を有する。この機能は、制御データ生成部3aと、配信データ生成部3bと、配信データ送信部3cとによって実現される。制御データ生成部3aは、無人飛行体5を制御する制御データを生成する。この制御データは、無人飛行体5の飛行を制御するものであれば、どのようなものであってもよく、例えば、目的地または飛行ルートの指定を含めて、自律飛行を制御する自律飛行データはもとより、ホバリング等の制御、飛行高度の変更(強制着陸を含む)などであってもよい。
【0019】

配信データ生成部3bは、無人飛行体5に配信すべき配信データを生成する。この配信データは、制御データ生成部3aによって生成された制御データと、制御対象を特定する識別コードとを含む。本実施形態では、識別コードとして、無人飛行体5を識別する機体固有のコード(機種コード)を用いている。これにより、制御データによる制御指示を特定の無人飛行体5だけに実行させることができる。機種コードによる指定は、単独の無人飛行体5を対象としてもよいし、複数の無人飛行体5をまとめて一括で指定できるようにしてもよい。なお、識別コードとして機種コードを用いる場合、外部システム(無人飛行体5の所有者や飛行管理インフラ等)より情報を取得するなどして、放送局システム3側において、制御すべき無人飛行体5に関する情報が既知であることが前提となる。配信データ送信部3cは、識別コードに関連する無人飛行体5の飛行を制御するために、配信データ生成部3bによって生成された配信データを、マルチメディア放送の放送波を用いて送信(同報)する。
【0020】
図3は、自律飛行可能な無人飛行体5のブロック構成図である。この無人飛行体5は、飛行制御部6を主体として、受信系7と、モータやプロペラといった駆動系8と、センサ系9と、撮像系10と、無人飛行体5の全体に電力を供給するバッテリー11とを有する。受信系7は、放送局システム3より送信された放送波(配信データ)を受信する配信データ受信部7aと、プロポより送信された電波を受信する無線受信部7bと、識別コード判定部7cとを有する。センサ系9は、一般的なドローン等と同様、無人飛行体5の姿勢を検出するジャイロなどの姿勢センサ9aと、無人飛行体5の向きを検出する方位センサ9bと、無人飛行体5の高度を検出する高度センサ9cと、無人飛行体5の緯度および経度を検出する、GPS(Global Positioning System)やGNSS(Global Navigation Satellite System)等の緯度経度センサ9dなどを有する。また、撮像系10は、撮像装置10aと、無線送信部10bとを有する。撮像装置10aは、無人飛行体5からの視点の画像を撮像する。無線送信部10bは、撮像装置10aによって撮像された画像を、移動通信回線(例えば3G回線)を用いて送信する。
【0021】
飛行制御部6は、無人飛行体5の飛行制御の全般を司る。具体的には、操縦者が目視可能な範囲内での飛行時には、無線受信部7bによって受信された無線信号に基づいて、モータやプロペラといった駆動系8が動作し、これによって、プロポ等を操作する操縦者の意図どおりに無人飛行体5が飛行する。一方、自律飛行時には、配信データ受信部7aによって受信された放送波(配信データ)に基づいて、無人飛行体5の制御が行われる。この場合、識別コード判定部7cは、配信データ受信部7aによって受信された配信データに含まれる識別コードに基づいて、この配信データが自己に関連するか否かを判定する。具体的には、配信データに含まれる機種コードが、無人飛行体5内に予め記憶された自己の機種コードと比較され、両者が一致する場合には、配信データが自己に関連するものと判定される。飛行制御部6は、配信データが自己に関連すると判定された場合、配信データに含まれる制御データに基づいて、無人飛行体5の飛行を制御する。
【0022】
図4は、無人飛行体5の自律走行の一例として、気象情報に基づく飛行ルートの変更を示す図である。無人飛行体5は、出発地Aから目的地Bに向かう飛行ルート(当初のルート)で自律飛行している。無人飛行体5の自律飛行中に、コンテンツプロバイダ2(気象予報システム)より気象情報が提供される。この気象情報は、本デジタル放送の放送域を区分(細分化)したエリアを特定するエリアコードが付されており、エリア毎の気象を示すエリアデータとして提供される。図示した例では、当初のルートを飛行する無人飛行体5(現在位置「1」)の前方に、「豪風」、「強風」、「やや強い風」のエリア(符号「2」で示す。)が複数存在する。そこで、位置「3」に存在する放送局システム3(制御データ生成部3a)は、エリア「2」を迂回する変更ルートを生成して、これを制御データ(自律飛行データ)として無人飛行体5に送信する。これにより、現在位置「1」の無人飛行体5は、位置「4」の方向に進路を変更し、エリア「2」を回避しながら目的地Bに向かって飛行する。
【0023】
無人飛行体5は、風、雨などの影響を受けやすく、特に風については影響が大きい。上記の例では、気象情報として風を一例に説明したが、降雨や落雷に応じて飛行ルートを変更してもよい。また、これらに応じて、目的地Bを変更することも可能である。例えば、地図情報として、無人飛行体5の着陸可能な地点が予め多数設定されている場合、目的地Bのエリアの天候の悪化に応じて、目的地Bに最も近い地点(新たな目的地)に変更するといった如くである。さらに、無人飛行体5の目的地や飛行ルートの設定や変更は、気象情報に限らず、コンテンツプロバイダ2より供給されるその他の様々な情報に基づいて行うことも可能である。例えば、無人飛行体5の侵入が制限されているエリア(法規制上の飛行禁止区域を含む。)について、このエリアに許可なく侵入しようとする無人飛行体5に対して、目的地や飛行ルートの変更を指示する制御データを放送局システム3より配信すれば、このエリアへの侵入を有効に規制できる。
【0024】
このように、本実施形態によれば、自律飛行可能な無人飛行体5の飛行制御を、マルチメディア放送の放送波を用いて行う。マルチメディア放送は広範な放送範囲を有しているので、無線通信を用いる場合と比較して、遠隔操作性に優れている。また、マルチメディア放送の放送域内であれば、いつでもどこでも無人飛行体5へのデータ配信ができるので、放送局システム3から識別コード付の配信データ(無人飛行体5の制御内容を指示する制御データを含む。)を送信することによって、識別コードに関連する特定の無人飛行体5の制御を高い柔軟性をもって、動的に(すなわち、自律飛行中であってもリアルタイムで)行うことができる。さらに、3G回線などの移動通信回線を利用した場合、トラフィックや災害時には通信帯域が制限されて利用困難となるが、放送波を用いれば、そのような制限を受けることなく、無人飛行体5の制御を安定して行うことができる。
【0025】
また、本実施形態によれば、目的地や飛行ルートを任意に設定・変更可能な無人飛行体5を用いることで、災害時などにおいて状況をいち早く把握するための手段として、様々な状況で広く活用することが可能になる。例えば、災害場所が複数にわたる場合や、飛行開始時に場所の特定が難しい場合などにおいて、取り敢えず現場方面(暫定の目的地)に無人飛行体5を飛行させ、詳細がわかり次第、正確な現場(適切な目的地)を再設定することができる。また、道路の渋滞や事故発生時に、サービスエリアをベース基地とした無人飛行体5を現地に急行させて現場を上空から撮像する。そして、放送局システム3よりデジタル放送として撮像画像を放送すれば、渋滞情報や事故情報をいち早くデジタル放送の視聴者に提供できる。さらに、大雪で道路を通れなくなり、道路上に車が取り残されている状況下において、スピーカが搭載された無人飛行体5を現場に飛行させれば、放送局システム3のデジタル放送を通じて、現場の人々に対して様々な情報をリアルタイムで提供できる。
【0026】
さらに、本実施形態によれば、無人飛行体5に搭載された撮像装置10aの画像を、移動通信を介して無人飛行体5の制御者に送信する。これにより、無人飛行体5の制御者は、受信した画像を見ながら、無人飛行体5の飛行制御をリアルタイムで行うことが可能となる。特に、移動通信回線を用いて、無人飛行体5の現在位置を制御者に送信すれば、気象状況等を踏まえた補正情報を放送波から送出する事ができ、より高い安全性を確保することができる。
【0027】
(第2の実施形態)
図5は、第2の実施形態に係る無人飛行体5のブロック構成図である。上述した第1の実施形態と異なる点は、飛行制御部6が制御データ生成部6aを備えている点、すなわち、無人飛行体5の飛行を制御する制御データを放送局システム3側ではなく、無人飛行体5側で生成する点である。それ以外の点については、図3に示した構成と同一なので、同一の符号を付して、ここでの説明を省略する。
【0028】
本実施形態において、放送局システム3は、配信データとして、マルチメディア放送の放送地域を区分したエリアを指定するエリアコード(識別コード)が付された、無人飛行体5の飛行に影響を及ぼすエリアデータを送信する。例えば、図4に示した例では、5つのエリアが「豪風」、「強風」または「やや強い風」であることが、それぞれのエリアコード付で送信される。
【0029】
配信データを受信した無人飛行体5において、識別コード判定部7cは、配信データに含まれるエリアコードによって指定されたエリアを、自己の目的地のエリアまたは自己の飛行ルート上のエリアと比較することによって、配信データが自己に関連するか否かを判定する。飛行制御部6の一部をなす制御データ生成部6aは、配信データが自己に関連すると判定された場合、エリアデータによって指定されたエリアを回避するように、無人飛行体5の目的地または飛行ルートを策定し、当初の飛行ルートを策定した飛行ルートに変更する。飛行ルートを策定するための条件や規則は、プログラムとして予め決められている。
【0030】
このように、本実施形態によれば、無人飛行体5の飛行を制御する制御データを放送局システム3側ではなく、無人飛行体5側で生成することにより、上述した第1の実施形態と同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0031】
1 デジタル放送システム
2 コンテンツプロバイダ
3 放送局システム
3a 制御データ生成部
3b 配信データ生成部
3c 配信データ送信部
4 車載器
5 無人飛行体
6 飛行制御部
6a 制御データ生成部
7 受信系
7a 配信データ受信部
7b 無線受信部
7c 識別コード判定部
8 駆動系
9 センサ系
9a 姿勢センサ
9b 方位センサ
9c 高度センサ
9d 経度緯度センサ
10 撮像系
10a 撮像装置
10b 無線送信部
11 バッテリー
図1
図2
図3
図4
図5