【解決手段】監視用レーダ11は、所定の監視領域内に進入する飛行物体を監視する。監視用レーダ11が飛行物体を検知すると、監視装置2は、当該飛行物体を検知した気象状態や時間帯を考慮した評価値を算出し、当該評価値が所定値以上であると検知した飛行物体が検知対象であると判定する。検知対象と判定した場合は、撮像部12を制御して、撮像部12が取得した画像を表示装置21に表示させる。
前記判定手段は、前記評価値に前記飛行物体を検知した時間帯に基づく時間帯補正値を加味して前記評価値を算出することを特徴とする請求項1に記載の飛行物体監視システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、例えば、監視領域において監視用レーダが検知するものは、検知対象である飛行物体だけでなく、風に吹かれて飛来する飛来物や鳥なども検知してしまう可能性がある。これらが、監視領域内で検知される度に確認のため都度、カメラ等で取得される画像で確認することは監視員にとって負担となる。
【0006】
一方、テロ、盗撮目的等の悪意者により操作された飛行物体が監視領域に侵入した場合は、これを確実に検知する必要がある。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、監視領域内に飛来する飛行物体を監視するにあたって、検知対象である飛行物体を確実に検知するとともに、検知対象以外の飛行物体を極力検知しないようにすることで、監視員が監視すべき飛行物体を適切に判定することができる飛行物体監視システムの実現を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した目的を達成するために、本発明に係る飛行物体監視システムは、所定の監視領域内の飛行物体を検知する検知手段と、前記検知された飛行物体の画像を撮像する撮像手段と、前記検知手段が検知した飛行物体の少なくとも位置情報と前記撮像手段が撮像した画像をセンタ装置へ送信する送信手段と、前記監視領域における気象状態を検出する気象状態検出手段と、を含む監視装置と、
前記監視装置が取得した飛行物体の位置情報に基づいて前記撮像手段を制御する制御手段と、前記撮像手段が取得した画像を表示する表示手段と、を備えたセンタ装置からなる飛行物体監視システムであって、前記検知手段が検知した飛行物体が検知すべき検知対象らしさを示す評価値が所定値以上であるか否かを判定する判定手段をさらに備え、前記判定手段は、前記評価値に前記飛行物体を検知したときの気象状態に基づく気象状態補正値を加味して前記評価値を算出し、前記評価値が所定値以上の飛行物体を検知対象と判定し、前記撮像手段にて撮像する制御手段を備えたことを特徴とする。
【0009】
また、前記判定手段は、前記評価値に前記飛行物体を検知した時間帯に基づく時間補正値を加味して前記評価値を算出するようにしてもよい。
【0010】
さらに、前記気象状態検出手段は、降雨量を検出可能な降雨量検出手段を含み、
前記気象状態補正値は前記降雨量が多いほど高くなる値としてもよい。
【0011】
また、前記気象状態検出手段は、風速及び風向きを計測する風速検出手段を含み、前記判定手段は、前記風速が所定速度以上であり、かつ前記飛行物体の移動方向と前記風向き方向の一致度が高いほど低くなる値としてもよい。
【0012】
さらに、前記時間帯補正値は前記飛行物体を検知した時間帯が夜間帯である場合に、昼間帯よりも高い値としてもよい。
【0013】
また、前記判定手段は、前記検知手段にて検知した飛行物体が検知対象らしさを示す評価値として前記飛行物体の過去所定期間内における飛行軌跡に基づいて算出するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の飛行物体監視システムによれば、監視領域内に進入してきた飛行物体の内、検知対象である飛行物体を確実に検知し、非検知対象である飛行物体を非検知とすることで、監視員の監視負担を低減させるとともに、監視すべき不審な飛行物体を的確に判定することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態について、添付した図面の
図1〜5を参照しながら詳細に説明する。
【0017】
[本発明の概要について]
本発明は、監視領域内に飛来する飛行物体(例えばドローン等)を監視対象として監視する飛行物体監視システムに関するものであり、監視領域内で、飛行物体を検知した場合、飛行物体の飛行軌跡等に基づいて検知した飛行物体が検知対象らしさの評価値を算出し、これを監視領域内の気象状態、時間帯の条件に応じて補正した補正評価値が所定値以上であると検知対象と判定し、当該飛行物体のカメラ画像を監視卓の表示手段に表示させる機能を有する。
【0018】
具体的には、監視領域内で飛行物体を検知した時、飛行物体の飛行軌跡が蛇行或いはホバリングをしていると検知対象らしさを高くし、これに監視領域内の気象状態が、降雨状態さらに夜間時間帯である場合は、さらに検知対象らしさを高くする。
一方監視領域内で飛行物体を検知したとき、検知した飛行物体の移動方向が風向きと同一方向である場合は、検知対象らしさを低くする。
これにより、検知対象である飛行物体と非検知対象である飛行物体を精度良く識別することが可能となる。
【0019】
[飛行物体監視システムの構成について]
図1に示すように、本実施の形態の飛行物体監視システム1は、監視領域内に飛来する飛行物体を監視する監視装置2と、監視装置2から離れた位置に配置される遠隔のセンタ装置3とから大略構成される。
【0020】
図2は飛行物体監視システム1による監視イメージの概略を示している。
図2において、半球を監視領域Eとする後述する監視用レーダ11を備えた監視装置2が設置される。
図2では、検知対象である飛行物体W1と非検知対象である飛行物体W2とが監視領域E内に飛来している例を示している。飛行物体W2は、風に吹かれて飛来する飛来物をイメージしている。
【0021】
監視用レーダ11が監視領域E内に飛行する飛行物体W1,W2を検知した場合、監視領域内の気象状態、及び時間帯に応じて飛行物体W1が検知対象であると判定すると撮像対象として選択し、監視用レーダ11近傍の後述する撮像部12により、飛行物体W1を撮像したカメラ画像を遠隔のセンタ装置3に送信し、センサ装置3の後述する監視卓の表示装置22にカメラ画像が表示される。
監視センタの監視員は、監視卓の表示装置22に表示されるカメラ画像により飛行物体W1を監視する。一方で、飛行物体W2は検知対象でないと判定すると撮影対象とはしない。
【0022】
なお、
図2の例では、1つの監視装置2にて監視領域内に監視領域Eを設定しているが、監視装置2を監視領域内に複数設置し、複数の監視領域Eの一部を重複させて広域の監視領域を設定するようにし、何れかの監視用レーダ11が飛行物体を検知すると、監視用レーダ11近傍の撮像部12によるカメラ画像が遠隔のセンタ装置3に送信されるようにしてもよい。
【0023】
[監視装置]
図1に示すように、監視装置2は、例えば
図2に示す監視領域Eを形成するように監視領域の所定箇所に設置され、検知手段としての監視用レーダ11、撮像部12、気象状態検出部13を含んで構成される。
【0024】
[監視用レーダ]
監視用レーダ11は、監視領域内に飛来する飛行物体Wを検知するもので、監視領域の所定箇所に固定設置され、半球面を監視可能なように複数のレーダで構成される。監視用レーダ11は、レーダから送信される送受信波として周波数変調された連続波を使用して測距を行うFM−CW方式を採用し、所定周期(例えば1回転/1秒)で方位方向に所定の水平ビーム幅(例えば2度)のビームを360度回転させ、所定周期(例えば3ms)ごとに電波を送受信することで、飛行物体Wの方位方向を検知できる。また、監視用レーダ11の回転速度はレーダの最大検知距離(例えば100m)に応じて決定されるビームの往復時間と比較して、アンテナが停止しているみなせるほど小さい速度に設定される。監視用レーダ11からは、レーダを中心とした水平面上の方位角、距離、速度、受信強度を出力情報として得ることができる。
【0025】
さらに監視用レーダ11の構成について
図3を参照しながら説明する。ここでの監視用レーダ11は、斜方監視用レーダと天面監視用レーダによる2つのレーダ装置を組み合わせて半球面を監視する構成としている。以下、2つのレーダ装置にFM−CWレーダを用いた場合を例にとって説明する。
【0026】
図3は2つのレーダ装置で構成される監視領域のイメージを示している。固定位置に設置されたFM−CWレーダが、斜め上方、及び上空方向におのおの送信ビームTを放射し、斜め上方に送信した領域を上下に分割した領域からの電波Rを受信する2つの受信アンテナ、及び上空方向からの電波Rを受信する2つの受信アンテナを用いて監視領域内に飛来する飛行物体Wからの反射ビームを受信する。
【0027】
ここでは、FM−CWレーダの原理の詳細については省略するが、その概略について説明すると、監視用レーダ11としてのFM−CWレーダは、送信アンテナ、第1の受信アンテナ、第2の受信アンテナ、送受信装置、A/D変換器、信号処理装置を含んで構成される。
【0028】
各部について説明すると、送信アンテナは、送信ビームを前方に放射する。第1の受信アンテナと第2の受信アンテナは、送信ビームの範囲あるいは、送信ビームの範囲を分割した監視領域からの電波を受信する。送受信装置は、FM−CW送信波を生成し、また受信ビームを信号処理装置で処理可能な周波数に変換する。A/D変換器は、送受信装置が出力する受信ビーム強度をデジタル変換する。信号処理装置は、A/D変換器が出力する受信ビーム強度から監視領域にある検知対象物の相対距離、相対速度、及び受信ビーム中の検知対象物からの反射ビーム成分の強度を求める。
【0029】
さらに説明すると、信号処理装置では、A/D変換器から入力した反射ビームの信号の周波数分析を行い、各周波数における信号強度を演算する。次に、信号強度が閾値以上となる周波数を求めて、その周波数を検知対象物からの反射ビーム成分の周波数とする。そして、求めた検知対象物からの反射ビーム成分の周波数と、送信ビームの周波数の差を演算してビート周波数を算出し、このビート周波数から検知対象物の相対距離、相対速度を演算して出力する。また、回転させているレーダがどの角度で飛行物体Wを検知したかに基づいて方向を求めることができる。これにより飛行物体Wの方位角が求まる。そして、いずれの受信アンテナで検知したかにより飛行物体Wが存在する仰角範囲を求めることができる。
【0030】
なお、監視用レーダ11は、監視領域にある検知対象物の相対距離、相対確度(方位角、仰角)、相対速度、及び受信ビーム中の検知対象物からの反射ビーム成分の強度などの検知対象物に関する各種情報を取得できればよく、
図3に示す構成に限定されるものではない。またレーダ方式もFM−CWに限定されず、例えば2周波CW方式等でも採用することができる。
【0031】
[撮像部]
撮像部12は、パン、チルト、ズーム機能を備えた高解像度、高感度のカメラで構成される。撮像部12は、監視領域を撮像可能な位置に固定設置され、センタ装置3の後述する制御部21の制御により、パン、チルト及びズームが可能であり、飛行物体Wが画面中央に映し出せるように撮像範囲が可変される。撮像部12は、監視用レーダ11と連動し、監視用レーダ11で検知した飛行物体Wの位置情報(距離、方位角、仰角範囲)に基づくセンタ装置3の後述する制御部21の制御により、飛行物体Wが画像中心になるように旋回台を旋回、上下方向、倍率を調整し、カメラ画像をセンタ装置3に送信する。
【0032】
なお、撮像部12は、監視用レーダ(FM−CWレーダ)11の上部または下部、あるいは別の場所に固定設置してもよい。
[気象状態検出部]
気象状態検出部13は、降雨状態を検出する雨量計、風速及び風向きを検出する風速計、温度を検出する温度計などで構成される。
尚、降雨状態の検出に用いる雨量計は貯水型、転倒ます型などいずれもタイプでもよい、また撮像部12で取得されるカメラ画像から画像処理にて降雨状態を判定するようにしてもよい。
【0033】
図1の構成では、監視装置2が監視用レーダ11、撮像部12、気象状態検出部13を含む構成としているが、監視用レーダ11、撮像部12、気象状態検出部13はそれぞれ個別に構成して配置してもよい。
また、センタ装置3における信号処理部211、判定部212の機能を監視装置2に設けるようにしてもよい。
【0034】
[センタ装置]
図1に示すように、センタ装置3は、監視センタ等に設けられ、制御部21と監視卓の表示部(表示手段)22、記憶部23を含んで構成される。
【0035】
[制御装置]
制御部21は、システム全体を統括制御するものであり、信号処理部211、判定部212を含んで構成される。
【0036】
[信号処理部]
信号処理部211は、監視用レーダ11から取得した出力情報からノイズ除去処理等を行い、検知した飛行物体の可能性がある場合には膨張処理等の画像処理を施して、ラベルを設定し、追跡処理を行う。信号処理部211の処理結果は判定部212へ出力する。
【0037】
[判定部]
判定部212は、後述する
図4の処理において、監視用レーダ11が飛行物体Wを検知したか否かの判定、検知した飛行物体Wが撮影すべき検知対象であるか否かの判定を行う。
制御部21は、さらに判定部212で撮影すべきと判断した場合に飛行物体に基づく撮像部12のパン・チルト・ズーム制御(以下、PTZ制御という)、表示部22の表示制御などを行う。
【0038】
[表示部]
監視卓の表示部22は、制御部21と接続され、監視用レーダ11で検知した付近の撮像部12のカメラ画像を表示するモニタである。
【0039】
表示部22は、監視用レーダ11が監視領域内に飛来する飛行物体Wを検知すると、制御部21の制御により、監視用レーダ11近傍の撮像部12が撮像したカメラ画像を表示させる。その際、制御部21は、監視用レーダ11から取得した飛行物体Wの位置情報に基づき撮像部12のPTZ制御を行い、飛行物体Wが画面中央に映し出せるようにする。
【0040】
[記憶部]
記憶部23は、監視用レーダ11および撮像部12の位置情報(緯度情報、経度情報、高度情報)などの情報が予め記憶される。
【0041】
次に、上記のように構成される飛行物体監視システム1におけるセンタ装置3の制御部21の具体的な制御について
図4のフローチャートを参照しながら説明する。以降の処理は、監視用レーダ11を360度回転するごとに実行される。
ここでは検知対象として、監視領域内に進入した人工的な飛行物体であって、有人無人を問わず、自律的或いは人が操作する飛行物体を検知対象とする。具体的にはドローン等のマルチコプター、ヘリコプター、ラジコン飛行機等が上げられる。
【0042】
まず、制御部21は、監視用レーダ11が監視領域内に飛来する飛行物体Wを検知しているか否かを判定し、検知した飛行物体Wが所定の大きさ以上か否か判定する(S101)。所定の大きさ未満の飛行物体Wはノイズとして判定する。
【0043】
制御部21は、監視用レーダ11が所定の範囲内の飛行物体を検知していると判定すると、信号処理部211にて監視用レーダ11で検知した全ての飛行物体に対し、特徴算出処理を行う(S102)。この処理は検知した飛行物体が検知対象らしさの評価値を算出する処理でありサブルーチン化されている。この処理については、後述する。
【0044】
制御部21は、特徴算出処理の結果、監視用レーダ11で検知した飛行物体Wが監視すべき検知対象であるか否かを判定する(S103)。具体的には、S102の特徴算出処理で算出した評価値が予め定めた所定値以上か否か判定し、所定値以上である場合は監視すべき検知対象であると判定する。この所定値は用途に応じて実験的に決定される。
【0045】
次に制御部21は、S103にて、検知した飛行物体が監視すべき検知対象であると判定した場合は、検知した飛行物体Wが撮像可能なように撮像部12をPTZ制御する(S104)。これにより、PTZ制御された撮像部12が撮像したカメラ画像は、制御部21に送信される。
【0046】
そして、制御部21は、PTZ制御した撮像部12が撮像したカメラ画像を監視卓の表示装置22に表示制御する。
【0047】
次に、制御部21は、撮像部12にて監視中の飛行物体が消失したか否かを判定する(S105)。制御部21は、監視中の飛行物体Wが監視用レーダ11から消失したと判定すると(S105-YES)、S106へ進み、監視領域内の他の検知対象の飛行物体Wが存在するか否かを判定する。存在する場合は、S104へ戻り、当該飛行物体Wの移動に追随して撮像部12をPTZ制御する。検知対象である飛行物体Wが存在しない場合は、S101へ戻る(図中のA)。
【0048】
なお、上述した処理において、一度検知対象と判定した飛行物体Wが監視用レーダ11から消失するまで撮像部12をPTZ制御して追随するようにしているが、監視領域内で複数の飛行物体Wが検知されている場合に監視装置2からの距離等に応じて優先度を設定し、現在撮像中の飛行物体よりも、優先度が高い飛行物体Wが出現すれば、最も優先度が高い飛行物体Wに対し、撮像部12を制御してカメラ画像を取得するようにしてもよい。
【0049】
次に
図5に示すフローチャートを用いてS102の特徴算出処理について詳述する。この処理は制御部21の信号処理部211により実行される。
尚、
図5では、まずS1021、S1022、S1023の処理が並列的に実行されるようになっているが、直列的に実行してもよい。以下各処理について説明する。
【0050】
S1021では、飛行軌跡に基づく評価値の算出が実行される。ここでは、検知された飛行物体Wの過去所定期間内の飛行軌跡から、検知対象である飛行物体らしさが高いほど高い評価値が与えられる。具体的には、飛行軌跡が左右や上下に蛇行している場合や、その度合いに応じて高い評価値が設定される。これは検知対象である飛行物体の内、飛行軌跡が蛇行する飛行物体は悪戯、かく乱目的による可能性が高いという知見に基づく。
【0051】
また一箇所に滞留している(いわゆるホバリング)場合は、その滞留時間に応じて高い評価値が設定される。これは、特定の場所で滞留している飛行物体は盗撮目的など悪意を持った行為である可能性が高いという知見に基づく。一方で、鳥や飛来物はそのような飛行軌跡となる可能性が低い。
【0052】
飛行軌跡の評価値は、例えば0〜5の間で、飛行軌跡の非直線的度、或いは所定期間内の滞留度に応じて段階的な評価値が与えられる。非直線度合いは例えば過去所定期間の検知位置と近似直線のずれ量などからその度合いに応じた評価値を与えられる。また滞留時間は過去所定期間の移動量などから評価値を与えられる。
【0053】
S1022では、気象状態に基づく気象状態補正値としての評価値が与えられる。具体的には、降雨状態が強いほど、検知対象である飛行物体と判定され易くなるような評価値が与えられる。これは、鳥や質量の軽い飛来物は降雨時には飛行しない可能性が高いという知見に基づく。
降雨状態による評価値は、例えば0〜5の間で、1時間辺りに換算した降雨量が30mm以上であると5、1mm未満の場合は0として、その間は雨量に応じて段階的な評価値が与えられる。
【0054】
信号処理部211は、監視装置2の気象状態検出部113である雨量計から降雨状態を判定する。
或いは気象状態検出部113の一部を制御部21内に設け、撮像部112から取得されるカメラ画像を画像処理して降雨状態を判定するようにしてもよい。
【0055】
また、監視装置2は気象状態検出部113として風速計を備える。S1022では風速計により、風速が所定以上(例えば15m/s以上)であり、かつ検知した飛行物体Wの移動方向と風向の一致度が高いほど、飛行物体であると判定され難くなるような気象状態補正値としての評価値が与えられる。
この評価値は、全体の評価値を減じる値が与えられる。これは、質量の軽い飛来物などは風に吹かれて風と同じ向きに移動する可能性が高いという知見に基づく。一方、検知対象である飛行物体Wは動力を備えているため、ある程度、風の影響を受けずに飛行可能である。
この風向との一致度に基づく評価値は、例えば―5〜0の間で、風速が所定未満であれば0とし、風速が所定以上であり、検知した飛行物体の飛行軌跡と風向きの角度(0〜±90度)に応じて±10度以内の場合に−(マイナス)5、±80度以上の場合に0とするなどし、その間の角度は段階的な評価値が与えられる。
【0056】
次にS1023では時間帯に基づく時間帯補正値としての評価値が算出される。具体的には、夜間に検知された飛行物体Wは、検知対象である飛行物体であると判定され易くなるような評価値が設定される。これは、検知対象とする飛行物体と同等のサイズの鳥類は、一部を除いて夜間に飛行する種類が少ないため、夜間に飛行する飛行物体Wは検知対象である可能性が高いという知見に基づく。この評価値は鳥の生息地、移動時期、習性等に応じて適宜設定を変更するようにしてもよい。
評価値は、例えば3〜5の間で、時間帯が22時〜3時の夜間帯の間は5、8時〜15時の昼間帯の間は2とするなどし、昼夜の移り変わりの時間帯は段階的な評価値が与えられる。
【0057】
信号処理部211では、制御部に備える時計(図示しない)から現在時刻を取得し、時間帯に応じた補正値としての評価値を算出する。尚、監視装置2に屋外天候を計測可能な場所に照度計を設けて、実際の照度に応じて照度が所定以下の場合に夜間帯と判定するようにしてもよい。
【0058】
次にS1024で、S1021からS1023で算出した評価値を統合する。具体的には各評価値に所定の重み係数を乗じて合計或いは乗算することで統合評価値とする。例えば、検知対象と判定するための所定値が評価値5以上と設定した場合、上記に示した例で、ある飛行物体が一定箇所で所定期間ホバリングし(例えば評価値3とする)、時間帯が夜間(例えば評価値5とする)である場合、合計値が8となるため、検知対象であると判定する。或いは飛行物体を検知した時間帯が夜間(例えば評価値5とする)であり、飛行軌跡がやや非直線的である(例えば評価値2とする)が、風向きと同じ方向に移動(例えば評価値―5とする)であった場合、合計値である総合評価値は2となるので非検知対象であると判定する。
【0059】
上記評価値の算出は一例であり、上述のような離散的な評価値でなく、実際の降雨量、風向一致度等の値に応じてより詳細な評価値が設定されるようにしてもよい。また、各評価値に所定の重み係数を掛けて算出するようにしてもよい。この場合の重み係数は目的に応じて実験的に定められる。
また、上述の例では各評価値の合計値を算出していたが、これに限られず、各評価値を乗算して総合評価値とするようにしてもよい。
また、全ての評価値を用いることは必須ではなく、いずれか1つ或いは2つの評価値を用いるようにしてもよい。
【0060】
尚、上記のほか、評価値として他の指標を追加することは可能である。
一例として、監視装置の構成として監視用レーダ11に、マイクロホンアレイを用いて音源方向を推定する手段を設け、監視用レーダ11の検知に加え、マイクロホンアレイの出力に遅延和処理を行い、遅延和信号の強度が大きいほど検知対象である可能性が高くなるように評価値を設定するようにしてもよい。
これにより、ドローン等を検知対象とする場合は、プロペラ等の回転音を発していない飛行物体の評価値が低くなるようにすることで、誤検知を押させることが可能となり、監視員の負担が低減される。
【0061】
以上、本発明に係る飛行物体監視システムの最良の形態について説明したが、この形態による記述及び図面により本発明が限定されることはない。すなわち、この形態に基づいて当業者等によりなされる他の形態、実施例及び運用技術などはすべて本発明の範疇に含まれることは勿論である。