【解決手段】積層鉄心の製造方法は、第1のダイ孔が設けられた第1のダイ、及び、第1のダイ孔に対向するように配置された第1のパンチを有する第1のパンチ部に、帯状の金属板の第1の被加工部位を送出して、第1のパンチを第1のダイ孔内に挿入させることで金属板を打ち抜いて金属板に貫通孔を形成した後、第1のダイ孔と略同等の大きさ及び形状を有する第2のダイ孔が設けられた第2のダイ孔、及び、第2のダイ孔に対向するように配置された第2のパンチを有する第2のパンチ部に、金属板の第1の被加工部位を送出して、段差部を介して第2のパンチの本体部から延びると共に本体部及び第2のダイ孔よりも外径が小さい先端部のみを貫通孔内に挿入する第1の工程を含む。
第1のダイ孔が設けられた第1のダイ、及び、前記第1のダイ孔に対向するように配置された第1のパンチを有する第1のパンチ部に、帯状の金属板の第1の被加工部位を送出して、前記第1のパンチを前記第1のダイ孔内に挿入させることで前記金属板を打ち抜いて前記金属板に貫通孔を形成した後、前記第1のダイ孔と略同等の大きさ及び形状を有する第2のダイ孔が設けられた第2のダイ孔、及び、前記第2のダイ孔に対向するように配置された第2のパンチを有する第2のパンチ部に、前記金属板の前記第1の被加工部位を送出して、段差部を介して前記第2のパンチの本体部から延びると共に前記本体部及び前記第2のダイ孔よりも外径が小さい先端部のみを前記貫通孔内に挿入する第1の工程と、
前記金属板の第2の被加工部位を前記第1のパンチ部に送出して、前記第1のパンチ部による前記金属板の打ち抜きを行わず、その後、前記金属板の前記第2の被加工部位を前記第2のパンチ部に送出して、前記第2のパンチの前記先端部のみを前記金属板に押しつけて前記金属板を前記第2のダイ孔内に押し出すことで前記金属板に凹凸部を形成する第2の工程とを含む、積層鉄心の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記の第1の工程において、金属板に貫通孔を形成する貫通孔形成処理を実行する場合には、金属板の被加工部位が貫通孔形成位置に到達したときに、貫通孔形成用パンチによって金属板を所定形状(例えば円形状)に打ち抜き、金属板が順送りされて金属板の被加工部位がカシメ形成位置に到達したときに、カシメ形成用パンチを貫通孔内に挿通させる。一方、上記の第1の工程において、金属板にカシメを形成するカシメ形成処理を実行する場合には、貫通孔形成用パンチが金属板に到達しないよう貫通孔形成用パンチの位置を、位置変更機構により変更しておく。この状態で、金属板の被加工部位が貫通孔形成位置に到達したときには貫通孔形成用パンチによって金属板が加工されず、金属板が順送りされて金属板の被加工部位がカシメ形成位置に到達したときに、カシメ形成用パンチによって金属板にカシメを形成する。
【0006】
一般に、貫通孔形成用パンチとカシメ形成用パンチとで、大きさ及び形状は同等である。そのため、貫通孔形成用パンチによる貫通孔の打ち抜き精度に誤差が生じたり、コイル材の送り精度に誤差が生じたり、カシメ形成用パンチの動作時にカシメ形成用パンチに振動が生じたりすると、貫通孔形成処理においてカシメ形成用パンチが貫通孔内に挿通される際に、カシメ形成用パンチが貫通孔の内壁を擦って、貫通孔内にバリが生ずることがある。このようなバリを有する積層鉄心を用いてモータを構成すると、モータの動作に伴いバリに振動、遠心力等が作用して、バリが脱落しうる。そのため、バリがモータの構成部品と衝突して、モータから異音が生じたり、モータの特性に影響を与えたりする虞がある。
【0007】
そこで、特許文献1では、貫通孔形成処理を実行する場合にも、カシメ形成用パンチが金属板に到達しないようカシメ形成用パンチの位置を、位置変更機構により変更している。この状態で、金属板の被加工部位が貫通孔形成位置に到達したときに、貫通孔形成用パンチによって金属板を所定形状(例えば円形状)に打ち抜き、金属板が順送りされて金属板の被加工部位がカシメ形成位置に到達したときには、カシメ形成用パンチによって金属板を加工しない。これにより、貫通孔形成処理に際してカシメ形成用パンチが貫通孔に挿通されないので、バリの発生を防ぐことが可能となる。しかしながら、貫通孔形成用パンチの位置変更機構に加えて、カシメ形成用パンチの位置変更機構を要するので、装置が大型化及び複雑化し、コストの増加が懸念される。
【0008】
一方、特許文献2では、貫通孔形成用パンチの大きさをカシメ形成用パンチよりも小さく設定し、貫通孔形成処理に際して、カシメ形成用パンチにより貫通孔をあえて大きく変形し、大きなバリを発生させている。これにより、大きなバリが貫通孔内の広い領域で貫通孔と接続されるので、貫通孔内に大きなバリを保持することが可能となる。しかしながら、特許文献2の積層鉄心を用いてモータを構成すると、バリが大きいのでモータの動作に伴いバリに振動、遠心力等がより作用しやすくなり、やはりバリが脱落する虞がある。
【0009】
本開示は、バリの発生を低コストで抑制することが可能な製造装置及び積層鉄心の製造方法を説明する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の一つの観点に係る積層鉄心の製造装置は、帯状の金属板を間欠的に順次送り出すように構成された送出部と、第1のダイ孔が設けられた第1のダイ、及び、第1のダイ孔に対向するように配置された第1のパンチを有する第1のパンチ部と、第1のパンチ部が金属板の打ち抜き動作を行える第1の状態と、第1のパンチ部が金属板の打ち抜き動作を行えない第2の状態との間で第1のパンチ部の状態を選択的に変更可能に構成された状態変更部と、第1のダイ孔と略同等の大きさ及び形状を有する第2のダイ孔が設けられた第2のダイ、及び、第2のダイ孔に対向するように配置された第2のパンチを有する第2のパンチ部と、第1及び第2のパンチ部を駆動させる駆動部と、制御部とを備える。第2のパンチは、本体部と、段差部を介して本体部から延びると共に本体部及び第2のダイ孔よりも外形が小さい先端部とを含む。制御部は、状態変更部を制御して第1のパンチ部を第1の状態としつつ、送出部及び駆動部を制御して、送出部により金属板の第1の被加工部位を第1のパンチ部に到達させて、駆動部により第1のパンチを第1のダイ孔内に挿入させることで金属板を打ち抜いて金属板に貫通孔を形成した後、送出部により金属板の第1の被加工部位を第2のパンチ部に到達させて、駆動部により第2のパンチの先端部のみを貫通孔内に挿入させる第1の処理と、状態変更部を制御して第1のパンチ部を第2の状態としつつ、送出部及び駆動部を制御して、送出部により金属板の第2の被加工部位を第1のパンチ部に到達させて、駆動部により第1のパンチ部を駆動させるが第1のパンチを金属板に接触させず、その後、送出部により金属板の第2の被加工部位を第2のパンチ部に到達させて、駆動部により第2のパンチの先端部のみを金属板に押しつけて金属板を第2のダイ孔内に押し出すことで金属板に凹凸部を形成する第2の処理とを実行する。
【0011】
本開示の一つの観点に係る積層鉄心の製造装置では、第2のパンチが、段差部を介して本体部から延びると共に本体部及び第2のダイ孔よりも外形が小さい先端部を含む。そのため、第1のパンチ部による貫通孔の打ち抜き精度に誤差が生じたり、金属板の送り精度に誤差が生じたり、第2のパンチの動作時に第2のパンチに振動が生じたりした場合でも、制御部が、第1の処理において駆動部を制御して、駆動部により第2のパンチの先端部のみを貫通孔内に挿入させるときに、第2のパンチの先端部が貫通孔と極めて接触し難い。従って、第2のパンチの先端部と本体部との間に段差部を設けるという極めて簡易な手法により、バリの発生を低コストで抑制することが可能となる。なお、この場合でも、第1及び第2のダイ孔の形状及び大きさが共に略同等であるので、第2のパンチ部によって金属板に形成される凹凸部の突起は、第1のパンチ部によって金属板に形成される貫通孔と嵌合可能である。
【0012】
段差部の幅は1μm〜10μmであってもよい。段差部の幅が1μm以上であると、第2のパンチの先端部が貫通孔とより接触し難くなるので、バリの発生をいっそう抑制することが可能となる。段差部の幅が10μm以下であると、第2のパンチ部によって金属板に形成される一の凹凸部の突起と、第2のパンチ部によって金属板に形成される他の凹凸部の窪みとを嵌合させる際に、当該窪みが当該突起に対して小さくなりすぎずにすむ。そのため、当該窪みに当該突起を無理に圧入することなくこれらを嵌合することができるので、これらの嵌合にあたり金属板の変形を抑制することが可能となると共に、積層方向に隣り合う金属板同士の間に生ずる隙間を抑制することが可能となる。
【0013】
段差部は第2のパンチの全周にわたって設けられていてもよい。
【0014】
段差部は第2のパンチに部分的に設けられていてもよい。
【0015】
本開示の一つの観点に係る積層鉄心の製造方法は、第1のダイ孔が設けられた第1のダイ、及び、第1のダイ孔に対向するように配置された第1のパンチを有する第1のパンチ部に、帯状の金属板の第1の被加工部位を送出して、第1のパンチを第1のダイ孔内に挿入させることで金属板を打ち抜いて金属板に貫通孔を形成した後、第1のダイ孔と略同等の大きさ及び形状を有する第2のダイ孔が設けられた第2のダイ孔、及び、第2のダイ孔に対向するように配置された第2のパンチを有する第2のパンチ部に、金属板の第1の被加工部位を送出して、段差部を介して第2のパンチの本体部から延びると共に本体部及び第2のダイ孔よりも外径が小さい先端部のみを貫通孔内に挿入する第1の工程と、金属板の第2の被加工部位を第1のパンチ部に送出して、第1のパンチ部による金属板の打ち抜きを行わず、その後、金属板の第2の被加工部位を第2のパンチ部に送出して、第2のパンチの先端部のみを金属板に押しつけて金属板を第2のダイ孔内に押し出すことで金属板に凹凸部を形成する第2の工程とを含む。
【0016】
本開示の一つの観点に係る積層鉄心の製造方法では、第2のパンチが、段差部を介して本体部から延びると共に本体部及び第2のダイ孔よりも外形が小さい先端部を含む。そのため、第1のパンチ部による貫通孔の打ち抜き精度に誤差が生じたり、金属板の送り精度に誤差が生じたり、第2のパンチの動作時に第2のパンチに振動が生じたりした場合でも、第1の工程において第2のパンチの先端部のみを貫通孔内に挿入するときに、第2のパンチの先端部が貫通孔と極めて接触し難い。従って、第2のパンチの先端部と本体部との間に段差部を設けるという極めて簡易な手法により、バリの発生を低コストで抑制することが可能となる。なお、この場合でも、第1及び第2のダイ孔の形状及び大きさが共に略同等であるので、第2のパンチ部によって金属板に形成される凹凸部の突起は、第1のパンチ部によって金属板に形成される貫通孔と嵌合可能である。
【0017】
段差部の幅は1μm〜10μmであってもよい。段差部の幅が1μm以上であると、第2のパンチの先端部が貫通孔とより接触し難くなるので、バリの発生をいっそう抑制することが可能となる。段差部の幅が10μm以下であると、第2のパンチ部によって金属板に形成される一の凹凸部の突起と、第2のパンチ部によって金属板に形成される他の凹凸部の窪みとを嵌合させる際に、当該窪みが当該突起に対して小さくなりすぎずにすむ。そのため、当該窪みに当該突起を無理に圧入することなくこれらを嵌合することができるので、これらの嵌合にあたり金属板の変形を抑制することが可能となると共に、積層方向に隣り合う金属板同士の間に生ずる隙間を抑制することが可能となる。
【0018】
段差部は第2のパンチの全周にわたって設けられていてもよい。
【0019】
段差部は第2のパンチに部分的に設けられていてもよい。
【発明の効果】
【0020】
本開示に係る製造装置及び積層鉄心の製造方法によれば、バリの発生を低コストで抑制することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に説明される本開示に係る実施形態は本発明を説明するための例示であるので、本発明は以下の内容に限定されるべきではない。以下の説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0023】
[固定子積層鉄心]
まず、
図1及び
図2を参照して、固定子積層鉄心1の構成について説明する。固定子積層鉄心1(ステータ)は、円筒形状を呈している。すなわち、固定子積層鉄心1の中央部分には、中心軸Axに沿って延びる貫通孔1aが設けられている。貫通孔1a内には、図示しない回転子鉄心(ロータ)が配置可能である。固定子積層鉄心1は、回転子鉄心と共に電動機(モータ)を構成する。
【0024】
固定子積層鉄心1は、複数の打ち抜き部材10(
図5参照。詳しくは後述する。)が積み重ねられた積層体である。固定子積層鉄心1は、ヨーク部2と、複数のティース部3(
図1では6個のティース部3)とを有する。
【0025】
ヨーク部2は、円環状を呈しており、中心軸Ax囲むように延びている。ヨーク部2の径方向における幅は、モータの用途及び性能に応じて種々の大きさとなりうるが、例えば2mm〜40mm程度であってもよい。
【0026】
各ティース部3はそれぞれ、ヨーク部2の内縁から中心軸Ax側に向かうように固定子積層鉄心1の径方向に沿って延びている。
図1に示される固定子積層鉄心1においては、各ティース部3がヨーク部2に一体的に形成されている。
【0027】
各ティース部3は、固定子積層鉄心1の周方向において、略等間隔で並んでいる。固定子積層鉄心1がモータとして構成される場合には、各ティース部3には、巻線(図示せず)が所定回数巻回される。隣り合うティース部3の間には、巻線を配置するための空間であるスロット4が画定されている。
【0028】
各ティース部3にはカシメ部5が設けられている。カシメ部5は、
図2に示されるように、固定子積層鉄心1の最下層をなす打ち抜き部材10に形成された貫通孔5aと、固定子積層鉄心1の最下層以外をなす打ち抜き部材10に形成されたカシメ5b(凹凸部)とを有する。カシメ5bは、打ち抜き部材10の表面側に形成された窪み(凹部)と、打ち抜き部材10の裏面側に形成された突起(凸部)とで構成されている。一の打ち抜き部材10のカシメ5bの窪みは、当該一の打ち抜き部材10の表面側に位置する他の打ち抜き部材10のカシメ5bの突起と接合される。一の打ち抜き部材10のカシメ5bの突起は、当該一の打ち抜き部材10の裏面側に位置する更に他の打ち抜き部材10のカシメ5bの窪みと接合される。貫通孔5aには、固定子積層鉄心1の最下層に隣接する打ち抜き部材10のカシメ5bの突起が接合される。貫通孔5aは、固定子積層鉄心1を連続して製造する際、既に製造された固定子積層鉄心1に対して次に製造する固定子積層鉄心1がカシメ5bによって締結されるのを防ぐ機能を有する。
【0029】
[固定子積層鉄心の製造装置]
続いて、
図3を参照して、固定子積層鉄心1の製造装置100について説明する。製造装置100は、帯状の金属板である電磁鋼板W(被加工板)から固定子積層鉄心1を製造するための装置である。製造装置100は、アンコイラー110と、送出装置120(送出部)と、打ち抜き装置130と、コントローラ150(制御部)とを備える。
【0030】
アンコイラー110は、コイル状に巻回された帯状の電磁鋼板Wであるコイル材111が装着された状態で、コイル材11を回転自在に保持する。送出装置120は、電磁鋼板Wを上下から挟み込む一対のローラ121,122を有する。一対のローラ121,122は、コントローラ150からの指示信号に基づいて回転及び停止し、電磁鋼板Wを打ち抜き装置130に向けて間欠的に順次送り出す。
【0031】
コイル材111を構成する電磁鋼板Wの長さは、例えば500m〜10000m程度であってもよい。電磁鋼板Wの厚さは、例えば0.1mm〜0.5mm程度であってもよい。電磁鋼板Wの厚さは、より優れた磁気的特性を有する固定子積層鉄心1を得る観点から、例えば0.1mm〜0.3mm程度であってもよい。電磁鋼板Wの幅は、例えば50mm〜500mm程度であってもよい。
【0032】
コントローラ150は、例えば、記録媒体(図示せず)に記録されているプログラム又はオペレータからの操作入力等に基づいて、送出装置120及び打ち抜き装置130をそれぞれ動作させるための指示信号を生成し、送出装置120及び打ち抜き装置130に送信する。
【0033】
[打ち抜き装置]
続いて、
図3〜
図6を参照して、打ち抜き装置130について説明する。打ち抜き装置130は、送出装置120によって間欠的に送り出される電磁鋼板Wを順次打ち抜き加工して打ち抜き部材10を形成する機能と、打抜き加工によって得られた打ち抜き部材10を順次積層しつつ重ね合わせて固定子積層鉄心1を製造する機能とを有する。
【0034】
打ち抜き装置130は、
図3及び
図4に示されるように、ベース131と、下型132と、ダイプレート133と、ストリッパ134と、上型135と、天板136、プレス機137(駆動部)と、吊り具138と、切替機構140(状態変更部)と、パンチA1〜A6と、押さえピンB1〜B6とを有する。ベース131は、ベース131に載置された下型132を支持する。
【0035】
下型132は、下型132に載置されたダイプレート133を保持する。下型132には、電磁鋼板Wから打ち抜かれた材料(例えば、打ち抜き部材10、廃材等)が排出される排出孔C1〜C6が、パンチA1〜A6に対応する位置にそれぞれ設けられている。排出孔C6内には、
図5に示されるように、シリンダ132aと、ステージ132bと、プッシャ132cとが配置されている。
【0036】
シリンダ132aは、パンチA6によって電磁鋼板Wから打ち抜かれた打ち抜き部材10が下方に落下するのを防止するため、打ち抜き部材10を支持する。シリンダ132aは、コントローラ150からの指示信号に基づいて上下方向に移動可能に構成されている。具体的には、シリンダ132aは、シリンダ132a上に打ち抜き部材10が積み重ねられるごとに間欠的に下方に移動する。シリンダ132a上において打ち抜き部材10が所定枚数まで積層され、固定子積層鉄心1が形成されると、シリンダ132aの表面がステージ132bの表面と同一高さとなる位置にシリンダ132aが移動する。
【0037】
ステージ132bには、シリンダ132aが通過可能な孔が設けられている。プッシャ132cは、コントローラ150からの指示信号に基づいて、ステージ132bの表面上において水平方向に移動可能に構成されている。シリンダ132aの表面がステージ132bの表面と同一高さとなる位置にシリンダ132aが移動した状態で、プッシャ132cは、固定子積層鉄心1をシリンダ132aからステージ132bに払い出す。ステージ132bに払い出された固定子積層鉄心1は、製造装置100外に搬送される。
【0038】
図4に戻って、ダイプレート133は、パンチA1〜A6と共に、打ち抜き部材10を成形する機能を有する。ダイプレート133には、パンチA1〜A6に対応する位置にダイD1〜D6がそれぞれ設けられている。各ダイD1〜D6には、上下方向に延びると共に対応する排出孔C1〜C9と連通する貫通孔D1a〜D6a(ダイ孔)が設けられている。各貫通孔D1a〜D6aの径は、対応するパンチA1〜A6の先端部が挿通可能で且つ当該先端部よりも僅かに小さな大きさである。貫通孔D3a,D4aの形状及び大きさは、略同等である。ダイプレート133には、押さえピンB1〜B6に対応する位置に挿通孔E1〜E6がそれぞれ設けられている。
【0039】
ストリッパ134は、ストリッパプレート134aと、保持プレート134bとを有する。ストリッパプレート134aは、パンチA1〜A6で電磁鋼板Wを打ち抜く際にパンチA1〜A6に食いついた電磁鋼板WをパンチA1〜A6から取り除く機能を有する。ストリッパプレート134aは、ダイプレート133の上方に位置している。保持プレート134bは、ストリッパプレート134aを上方から保持する。
【0040】
ストリッパ134には、パンチA1〜A6に対応する位置に貫通孔F1〜F6がそれぞれ設けられている。各貫通孔F1〜F6はそれぞれ、上下方向に延びると共に、ストリッパプレート134aがダイプレート133と接したときに対応するダイD1〜D6の貫通孔D1a〜D6aと連通する。各貫通孔F1〜F6内にはそれぞれ、パンチA1〜A6の下部が挿通されている。パンチA1〜A6の当該下部はそれぞれ、各貫通孔F1〜F6内においてスライド可能である。
【0041】
ストリッパ134には、押さえピンB1〜B6に対応する位置に貫通孔F7〜F12がそれぞれ設けられている。各貫通孔F7〜F12はそれぞれ、上下方向に延びると共に、ストリッパプレート134aがダイプレート133と接したときに対応する挿通孔E1〜E6と連通する。各貫通孔F7〜F12内にはそれぞれ、押さえピンB1〜B6の下部が挿通されている。押さえピンB1〜B6の当該下部はそれぞれ、各貫通孔F7〜F12内においてスライド可能である。
【0042】
上型135は、ストリッパ134の上方に位置している。上型135には、パンチA1,A2,A4〜A6及び押さえピンB1〜B6の基部(上部)が固定されている。上型135には、パンチA3が上下にスライド可能となるようにパンチA3の基部(上部)を保持している。そのため、上型135は、パンチA1〜A6及び押さえピンB1〜B6を保持している。
【0043】
上型135のうち打ち抜き装置130の上流側及び下流側の各端部にはそれぞれ、天板136側に位置し且つ上下方向に延びる収容空間135aと、収容空間135aから下方に向けて貫通する貫通孔135bとが設けられている。上型135のうちパンチA3の上方には、天板136側に位置し且つ水平方向に延びる収容空間135cと、収容空間から下方に向けて(パンチA3の基部に向けて)貫通する貫通孔135dとが設けられている。
【0044】
天板136は、上型135の上方に位置している。天板136は、上型135を保持している。プレス機137は、天板136の上方に位置している。プレス機137のピストンは、天板136に接続されており、コントローラ150からの指示信号に基づいて動作する。プレス機137が動作すると、ピストンが伸縮して、ストリッパ134、上型135、天板136、吊り具138、切替機構140、パンチA1〜A6及び押さえピンB1〜B6(以下、これらを可動部160という。)が全体的に上下動する。
【0045】
吊り具138は、ストリッパ134を上型135に吊り下げて保持する。吊り具138は、長尺のロッド部138aと、ロッド部138aの上端に設けられた頭部138bとを有する。ロッド部138aの下端部は、ストリッパ134に固定されている。ロッド部138aの上端部は、上型135の貫通孔135bに挿通されている。頭部138bは、下端部よりも径が大きく、上型135の収容空間135a内に収容されている。そのため、頭部138bは、収容空間135a内において上型135に対して上下動可能である。
【0046】
パンチA1〜A6は、ダイプレート133(ダイD1〜D6)と共に、電磁鋼板Wを所定形状に打ち抜く機能を有する。パンチA1〜A6はそれぞれ、打ち抜き装置130の上流側(送出装置12側)から下流側に向けてこの順に並ぶように配置されている。パンチA1〜A6は、例えば円柱形状であってもよい。
【0047】
パンチA3は、電磁鋼板Wに貫通孔5aを形成するための貫通孔形成用パンチである。パンチA3は、図示しない付勢部材によって、収容空間135cに向けて付勢されている。パンチA3の基部には、上方に向けて突出するロッドA3aが設けられている。ロッドA3aは、貫通孔135d内に挿通されており、貫通孔135d内において上型135に対して上下動可能である。
【0048】
パンチA4は、電磁鋼板Wにカシメ5bを形成するためのカシメ形成用パンチである。
図6に示されるように、パンチA4の下部は、本体部A4aと、先端部A4bとで構成されている。本体部A4aと先端部A4bとの間には、段差部A4cがパンチA4の全周にわたって設けられている。そのため、先端部A4bは、段差部A4cを介して本体部A4aから下方に向けて延びている。先端部A4bの外形は、本体部A4aの外形よりも小さく、且つ、パンチA4が対応する貫通孔D4aの大きさよりも小さくなるように設定されている。段差部A4cの幅G、すなわち、パンチA4の軸に直交する方向における先端部A4bの外表面から本体部A4aの外表面までの直線距離は、例えば、1μm〜10μm程度であってもよく、3μm〜7μm程度であってもよく、5μm程度であってもよい。
【0049】
押さえピンB1〜B6は、パンチA1〜A6によって電磁鋼板Wが打ち抜かれる際に電磁鋼板Wをダイプレート133に押さえつける機能を有する。押さえピンB1〜B6はそれぞれ、打ち抜き装置130の上流側(送出装置12側)から下流側に向けてこの順に並ぶように配置されている。
【0050】
切替機構140は、例えばカム機構であり、カム部材141と、アクチュエータ142とを有する。カム部材141は、収容空間135c内において、収容空間135cの延びる方向(水平方向)にスライド可能である。カム部材141には、下方(パンチA3側)に対向する窪み141aが設けられている。窪み141aは、パンチA3のロッドA3aの先端部を収容可能である。
【0051】
アクチュエータ142は、コントローラ150からの指示信号に基づいて、カム部材141を水平方向において駆動させる。具体的には、アクチュエータ142は、ロッドA3aの先端部が窪み141aの外側に位置し且つカム部材141の下面と当接する第1の位置と、ロッドA3aの先端部が窪み141a内に収容される第2の位置との間で、カム部材141を移動させる。
【0052】
カム部材141が第1の位置にあるときには、パンチA3が相対的に下方に移動する。この状態でプレス機137が動作して可動部160が下降すると、パンチA3の先端部がダイD3の貫通孔D3a内に挿入されるので、電磁鋼板Wの打ち抜きが行われる(
図8(a)参照)。従って、アクチュエータ142がカム部材141を第1の位置に移動させると、パンチA3及びダイD3(第1のパンチ部)は、これらによって電磁鋼板Wの打ち抜き動作を行える第1の状態に変更される。
【0053】
一方、カム部材141が第2の位置にあるときには、パンチA3が相対的に上方に移動する。この状態でプレス機137が動作して可動部160が下降すると、パンチA3の先端部が、ダイD3の貫通孔D3a内に挿入されず且つ電磁鋼板Wにも接触しないので、電磁鋼板Wに対して何らの加工も行われない(
図9(a)参照)。従って、アクチュエータ142がカム部材141を第2の位置に移動させると、パンチA3及びダイD3は、これらによって電磁鋼板Wの打ち抜き動作を行えない第2の状態に変更される。このように、切替機構140は、パンチA3の状態を選択的に変更可能に構成されている。
【0054】
[固定子積層鉄心の製造方法]
続いて、
図3、
図4及び
図7〜
図9を参照して、固定子積層鉄心1の製造方法について説明する。まず、電磁鋼板Wに貫通孔5aを形成しつつ(貫通孔形成処理)、貫通孔5aが設けられた打ち抜き部材10を形成する工程(第1の工程;第1の処理)について説明する。ここでは、コントローラ150がアクチュエータ142に指示して、パンチA3及びダイD3の状態を第1の状態に変更させる。そのため、パンチA3の下死点の位置が下方に変位する。次に、コントローラ150が送出装置120に指示して、電磁鋼板Wを間欠的に順送りする。
【0055】
電磁鋼板Wが送出装置120によって打ち抜き装置130に送り出され、電磁鋼板Wの被加工部位がパンチA1に到達すると、コントローラ150がプレス機137に指示して、プレス機137が可動部160をダイプレート133に向けて下方に押し出す。ストリッパ134がダイプレート133に到達してこれらで電磁鋼板Wが挟持された後も、コントローラ150がプレス機137に指示して、プレス機137が可動部160を下方に向けて押す。このとき、ストリッパ134は移動しないが、パンチA1〜A6及び押さえピンB1〜B6の先端部はストリッパプレート104の貫通孔F1〜F12内を移動して、ダイプレート133のうち対応する貫通孔D1a〜D6a及び挿通孔E1〜E6に到達する。そのため、電磁鋼板WがパンチA1によって所定の打ち抜き形状に沿って打ち抜かれ、電磁鋼板Wの両側縁近傍に一対の貫通孔W1が形成される。(
図4及び
図7の位置S1参照)。打ち抜かれた廃材は、下型132の排出孔C1から排出される。その後、プレス機137が動作して可動部160を上昇させる。
【0056】
次に、電磁鋼板Wが送出装置120によって送り出され、電磁鋼板Wの被加工部位がパンチA2に到達すると、コントローラ150がプレス機137に指示して、プレス機137が可動部160を昇降させる。これにより、電磁鋼板WがパンチA2によって所定の打ち抜き形状に沿って打ち抜かれ、電磁鋼板Wの中央部分に複数の貫通孔W2(本実施形態では6つの貫通孔W2)が形成される(
図4及び
図7の位置S3参照)。複数の貫通孔W2は、円形状に並んでいる。各貫通孔W2は、固定子積層鉄心1のスロット4に対応する。打ち抜かれた廃材は、下型132の排出孔C2から排出される。パンチA2による電磁鋼板Wの打ち抜きの際、貫通孔W1及び挿通孔E1,E2内には押さえピンB1,B2が挿通される(
図4及び
図7の位置S2,S4参照)。
【0057】
次に、電磁鋼板Wが送出装置120によって送り出され、電磁鋼板Wの被加工部位がパンチA3に到達すると、コントローラ150がプレス機137に指示して、プレス機137が可動部160を昇降させる。これにより、パンチA3の先端部が電磁鋼板Wに押しつけられて、パンチA3の先端部が電磁鋼板Wと共にダイD3の貫通孔D3a内に挿入される。従って、電磁鋼板WがパンチA3によって打ち抜かれ、電磁鋼板Wに複数の貫通孔W3(本実施形態では6つの貫通孔W3)が形成される(
図4及び
図7の位置S5、並びに、
図8(a)参照)。複数の貫通孔W3は、円形状に並んでいる。各貫通孔W3は、固定子積層鉄心1の貫通孔5aに対応する。打ち抜かれた廃材は、下型132の排出孔C3から排出される。パンチA3による電磁鋼板Wの打ち抜きの際、貫通孔W1及び挿通孔E2,E3内には押さえピンB2,B3が挿通される(
図4及び
図7の位置S4,S6参照)。
【0058】
次に、電磁鋼板Wが送出装置120によって送り出され、電磁鋼板Wの被加工部位がパンチA4に到達すると、コントローラ150がプレス機137に指示して、プレス機137が可動部160を昇降させる。これにより、位置S5において形成された貫通孔W3(貫通孔5a)内に、パンチA4の先端部A4bのみが挿通される(
図4及び
図7の位置S7、並びに、
図8(b)参照)。従って、このとき、パンチA4によって電磁鋼板Wの加工が行われない。また、このとき、貫通孔W1及び挿通孔E3,E4内には押さえピンB3,B4が挿通される(
図4及び
図7の位置S6,S8参照)。
【0059】
次に、電磁鋼板Wが送出装置120によって送り出され、電磁鋼板Wの被加工部位がパンチA5に到達すると、コントローラ150がプレス機137に指示して、プレス機137が可動部160を昇降させる。これにより、電磁鋼板WがパンチA5によって打ち抜かれ、電磁鋼板Wに一つの貫通孔W5が形成される(
図4及び
図7の位置S9参照)。貫通孔W5は、電磁鋼板Wの幅方向における中央部分に位置し、複数の貫通孔W5の内縁と連接される。打ち抜かれた廃材は、下型132の排出孔C5から排出される。パンチA5による電磁鋼板Wの打ち抜きの際、貫通孔W1及び挿通孔E4,E5内には押さえピンB4,B5が挿通される(
図4及び
図7の位置S8,S10参照)。
【0060】
次に、電磁鋼板Wが送出装置120によって送り出され、電磁鋼板Wの被加工部位がパンチA6に到達すると、コントローラ150がプレス機137に指示して、プレス機137が可動部160を昇降させる。これにより、電磁鋼板WがパンチA6によって所定の打ち抜き形状R(本実施形態では円形状)に沿って打ち抜かれ、打ち抜き形状Rに対応した形状の打ち抜き部材10が形成される(
図4及び
図7の位置S11参照)。パンチA6による電磁鋼板Wの打ち抜きの際、貫通孔W1及び挿通孔E5,E6内には押さえピンB5,B6が挿通される(
図4及び
図7の位置S10,S12参照)。こうして、貫通孔5aが設けられた打ち抜き部材10は、排出孔C6内においてシリンダ132a上に載置され、固定子積層鉄心1の最下層となる。
【0061】
続いて、電磁鋼板Wにカシメ5bを形成しつつ(カシメ形成処理)、カシメ5bが設けられた打ち抜き部材10を形成する工程(第2の工程;第2の処理)について説明する。ここでは、コントローラ150がアクチュエータ142に指示して、パンチA3及びダイD3の状態を第2の状態に変更する。そのため、パンチA3の下死点の位置が上方に変位する。次に、コントローラ150が送出装置120に指示して、電磁鋼板Wを間欠的に順送りする。パンチA1,A2による貫通孔W1,W2の形成は、上述した第1の工程と同様であるので、説明を省略する。
【0062】
パンチA2による電磁鋼板Wの打ち抜きの後、電磁鋼板Wが送出装置120によって送り出され、電磁鋼板Wの被加工部位がパンチA3に到達すると、コントローラ150がプレス機137に指示して、プレス機137が可動部160を昇降させる。このとき、パンチA3の先端部は、ダイD3の貫通孔D3a内に挿入されず且つ電磁鋼板Wにも接触しない。そのため、電磁鋼板Wに対して何らの加工も行われない(
図4及び
図7の位置S5、並びに、
図9(a)参照)。パンチA3による電磁鋼板Wの打ち抜きの際、貫通孔W1及び挿通孔E2,E3内には押さえピンB2,B3が挿通される(
図4及び
図7の位置S4,S6参照)。
【0063】
次に、電磁鋼板Wが送出装置120によって送り出され、電磁鋼板Wの被加工部位がパンチA4に到達すると、コントローラ150がプレス機137に指示して、プレス機137が可動部160を昇降させる。これにより、パンチA4の先端部A4bのみが電磁鋼板Wに押しつけられて、電磁鋼板WがダイD4の貫通孔D4a内に押し出す。従って、電磁鋼板WがパンチA4によって半抜き加工され、電磁鋼板Wに複数の加工部W4(本実施形態では6つの加工部W4)が形成される(
図4及び
図7の位置S7参照、並びに、
図9(b)参照)。複数の加工部W4は、円形状に並んでいる。各加工部W4は、固定子積層鉄心1のカシメ5bに対応する。パンチA4による電磁鋼板Wの加工の際、貫通孔W1及び挿通孔E3,E4内には押さえピンB3,B4が挿通される(
図4及び
図7の位置S6,S8参照)。
【0064】
その後の、パンチA5による貫通孔W5の形成と、パンチA6による打ち抜き部材10の形成は、上述した第1の工程と同様であるので、説明を省略する。カシメ5bが設けられた打ち抜き部材10は、排出孔C6内においてシリンダ132a上に載置された他の打ち抜き部材10に積み重ねられる。このとき、貫通孔5aにはカシメ5bの突起が嵌合する。一の打ち抜き部材10におけるカシメ5bの窪みには、他の打ち抜き部材10におけるカシメ5bの突起が嵌合する。これにより、各打ち抜き部材10同士が締結され、固定子積層鉄心1が製造される。なお、積層された複数の打ち抜き部材10の側面に対して、中心軸Axに沿って延びる溶接部を形成することにより、複数の打ち抜き部材10同士をより確実に接合してもよい。
【0065】
[作用]
ところで、パンチA4が段差部A4cを有していない場合、すなわち、パンチA4の先端部A4bの外形が本体部A4aの外形と同程度である場合、パンチA3(貫通孔形成用パンチ)及びダイD3による貫通孔5aの打ち抜き精度に誤差が生じたり、送出装置120による電磁鋼板Wの送り精度に誤差が生じたり、パンチA4(カシメ形成用パンチ)の動作時にパンチA4に振動が生じたりすると、貫通孔形成処理においてパンチA4が貫通孔5a内に挿通される際に、パンチA4が貫通孔5aの内壁を擦って、貫通孔5a内にバリ10aが生ずることがある(
図10(a)参照)。このようなバリ10aを有する打ち抜き部材10を積層して固定子積層鉄心1を製造し(
図10(b)参照)、当該固定子積層鉄心1用いてモータを構成すると、モータの動作に伴いバリに振動、遠心力等が作用して、バリ10aが脱落しうる。そのため、バリ10aがモータの構成部品と衝突して、モータから異音が生じたり、モータの特性に影響を与えたりする虞がある。
【0066】
そこで、パンチA4の先端部A4bの外形が本体部A4aの外形と同程度である場合に、パンチA4の先端部A4bの角部を面取りすることも考えられる。この場合、パンチA4の位置が貫通孔5aとずれたとしても、貫通孔形成処理においてパンチA4が貫通孔5a内に挿通される際に角部が貫通孔5aを滑りつつ貫通孔5aに円滑に案内されるようにも思われる。しかしながら、パンチA4は、パンチA4の先端部A4bの角部が貫通孔5aを擦りながら、貫通孔5a内に挿通される。そのため、パンチA4が貫通孔5a内に挿通される際に、パンチA4の先端部A4bが撓んでしまい、この撓みが繰り返されることによりパンチA4の剛性が低下しうる。また、貫通孔5aの近傍において電磁鋼板Wの表面に被覆されている絶縁コーティングが剥がれうるので、貫通孔5aが他の打ち抜き部材10のカシメ5bの突起と接合されることにより導通面積が増え、モータ特性に影響を与える可能性がある。さらに、貫通孔5aの近傍において電磁鋼板Wの表面に被覆されている絶縁コーティングが剥がれると、剥がれた絶縁コーティングが打ち抜き部材10に付着しうるので、絶縁コーティングの残渣が固定子積層鉄心1に残存しているか否かの検査を要する可能性がある。
【0067】
しかしながら、以上のような本実施形態では、パンチA4が、段差部A4cを介して本体部A4aから延びると共に本体部A4a及びダイD4の貫通孔D4aよりも外形が小さい先端部A4bを含む。そのため、パンチA3及びダイD3による貫通孔5aの打ち抜き精度に誤差が生じたり、送出装置120による電磁鋼板Wの送り精度に誤差が生じたり、パンチA4(カシメ形成用パンチ)の動作時にパンチA4に振動が生じた場合でも、第1の工程においてパンチA4の先端部A4bのみを貫通孔5a内に挿入するときに、パンチA4の先端部A4bが貫通孔5aと極めて接触し難い。従って、パンチA4の先端部A4bと本体部A4aとの間に段差部A4cを設けるという極めて簡易な手法により、バリ10aの発生を低コストで抑制することが可能となる。なお、この場合でも、ダイD3の貫通孔D3a及びダイD4の貫通孔D4aの形状及び大きさが共に略同等であるので、パンチA4及びダイD4(第2のパンチ部)によって電磁鋼板Wに形成されるカシメ5bの突起側は、パンチA3及びダイD3(第1のパンチ部)によって電磁鋼板Wに形成される貫通孔5aと嵌合可能である。
【0068】
本実施形態では、段差部A4cの幅が1μm〜10μmである。段差部A4cの幅が1μm以上であると、パンチA4の先端部A4bが貫通孔5aとより接触し難くなるので、バリ10aの発生をいっそう抑制することが可能となる。段差部A4cの幅が10μm以下であると、パンチA4及びダイD4によって電磁鋼板Wに形成される一のカシメ5bの突起と、パンチA3及びダイD3によって電磁鋼板Wに形成される他のカシメ5bの窪みとを嵌合させる際に、当該窪みが当該突起に対して小さくなりすぎずにすむ。そのため、当該窪みに当該突起を無理に圧入することなくこれらを嵌合することができるので、これらの嵌合にあたり電磁鋼板Wの変形を抑制することが可能となると共に、積層方向に隣り合う打ち抜き部材10同士の間に生ずる隙間を抑制することが可能となる。
【0069】
[他の実施形態]
以上、本開示に係る実施形態について詳細に説明したが、本発明の要旨の範囲内で種々の変形を上記の実施形態に加えてもよい。例えば、パンチA3,A4は円柱形状以外の形状であってもよい。具体的には、パンチA3,A4は四角柱形状であってもよい。この場合も、パンチA4の段差部A4cは、
図11(a)に示されるように、パンチA4の全周にわたって設けられている。あるいは、パンチA3が四角柱状であり、パンチA4がいわゆるV型パンチであってもよい。この場合、パンチA4の先端部A4bは、
図11(b)に示されるように、四角柱の下端面に三角柱が一体的に設けられた形状を呈している。パンチA4の段差部A4cは、パンチA4に部分的に設けられている。すなわち、先端部A4bの三角柱の一対の底面に対応して、一対の段差部A4cがそれぞれ位置している。
【0070】
パンチA4の先端部A4bの角部が面取り(例えば、C面取り、R面取りなど)されていてもよい。すなわち、パンチA4の先端部A4bの角部が、傾斜していたり、湾曲していたりしていてもよい。