(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-169538(P2017-169538A)
(43)【公開日】2017年9月28日
(54)【発明の名称】海藻種苗育成用基質、海藻種苗及びその製造方法並びに海藻の生産方法
(51)【国際特許分類】
A01G 33/00 20060101AFI20170901BHJP
A01K 61/70 20170101ALI20170901BHJP
【FI】
A01G33/00
A01K61/00 311
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-62382(P2016-62382)
(22)【出願日】2016年3月25日
(71)【出願人】
【識別番号】309015019
【氏名又は名称】地方独立行政法人青森県産業技術センター
(74)【代理人】
【識別番号】100088096
【弁理士】
【氏名又は名称】福森 久夫
(72)【発明者】
【氏名】山田 嘉暢
(72)【発明者】
【氏名】桐原 慎二
【テーマコード(参考)】
2B003
2B026
【Fターム(参考)】
2B003AA01
2B003BB07
2B003CC02
2B003DD03
2B003DD06
2B003EE04
2B026AA05
2B026AB05
2B026FA03
2B026FA04
(57)【要約】 (修正有)
【課題】海藻種苗を1藻体単位で生産・管理することができ、海藻の密度を容易に制御することが可能となり、高い着生強度を有し高い歩留りで海藻の生産を可能とする海藻種苗育成用基質、海藻種苗及びその製造方法並びに海藻の生産方法を提供する。
【解決手段】播種の対象である基質が、砂地状の表面を有するとともに、表面から裏面に貫通する穴が形成されている小片プレートからなる海藻種苗育成用基質。表面が、粒径が6μm〜1mmの海砂により形成されている。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
播種の対象である基質が、砂地状の表面を有するとともに、表面から裏面に貫通する穴が形成されている小片プレートからなる海藻種苗育成用基質。
【請求項2】
前記裏面も砂地状である請求項1記載の海藻種苗育成用基質。
【請求項3】
前記砂地状の面によりは、粒径が6μm〜1mmの海砂により形成されている請求項1又は2記載の海藻種苗育成用基質。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項記載の海藻種苗育成用基質に、前記穴を介して前記表面から前記裏面にわたり海藻の付着器が付着している海藻種苗。
【請求項5】
請求項1ないし3のいずれか1記載の海藻法種苗育成用基質の前記表面に海藻の幼胚を播種し、次いで、静止環境下で培養を行う請求項3記載の海藻種苗の製造方法。
【請求項6】
請求項4記載の海藻種苗を沖出しして海藻の育成を行う海藻の生産方法。
【請求項7】
前記海藻はホンダワラ類である請求項6記載の海藻の生産方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海藻種苗育成用基質、海藻種苗及びその製造方法並びに海藻の生産方法に係り、より詳細には、基質の数と海藻の数とが一対一に対応しており、藻場における海藻の密度を容易に制御することが可能であり、また、海藻の基質への付着力が強いため早期な段階で沖出しが可能であるとともに歩留りよく海藻を生産することができる海藻種苗育成用基質、海藻種苗及びその製造方法並びに海藻の生産方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、磯焼けにより衰退した藻場や雑海藻の繁茂により機能低下した増殖場が多くなっており、これらの場所を回復させることが求められている。
藻場造成の一手法として、「スポアーバッグ方式」がある。スポアーバッグ方式は、生殖器床に幼胚が出て成熟したホンダワラ類などの海藻を天然藻場から採取し、これを母藻として網袋(バッグ)に詰めて基質の上に吊下して沖出しを行い、網袋から胞子(スポア)や卵を飛散させて基質への海藻の加入を促進させる方式である。
しかし、「スポアーバッグ方式」は、スポアーバッグに入れる母藻の成熟状態や設置揚所における潮流の影響などの問題から幼胚が流失して生育できない事例がある。
他の藻場造成の手法として、特許文献1、特許文献2に記載された技術が提供されている。
【0003】
特許文献1記載技術は、(a)褐藻類の胞子または幼胚を基盤上に播種し幼体に培養する工程、(b)前記幼体を前記基盤から剥離する工程、および(c)前記剥離された幼体を水槽に移し、各幼体単独での浮遊状態を維持できるように海水注水およびエアレーションにより水槽内を攪拌しながら培養する工程、を含む褐藻類の幼体の培養養成方法である。この技術は、褐藻類の幼体を種苗として効率的に養成することを目的としている。
【0004】
特許文献2記載技術は、上面に凹部を有した海藻育成用の小ブロックの凹部に海藻の幼胚を播種し、この小ブロックを平面状に配列し、幼体になるまで培養し、培養後の小ブロックをそのまま、海水の入った水槽の中に移し、各幼体単独での浮遊状態を維持できるように海水注入及びエアレーションにより水槽内を撹拌しながら培養し、培養後の小ブロックを、一定間隔をあけた状態で小ブロック固定手段に取り付け、藻場造成のための海藻種苗の移植または海面養殖のための海藻種苗の沖出しを行う海藻種苗の生産方法である。ここで、小ブロックの材質としてはABS樹脂が好ましく、小ブロック固定手段としてはロープやプラスチック製ブロック等が好ましいとされている。
【0005】
特許文献2記載技術は、特許文献1記載技術の改良技術である。すなわち、特許文献2では、幼体を剥離せずに小ブロック(基盤)ごと水槽の中に入れ、海水中で小ブロックが浮遊した状態で培養を行い(立体攪拌培養)、その後、紐状や板状の固定手段に小ブロックを取り付けて種苗の培養を行うことで、網地や網状育成具を用いる場合に比べて、より小型の種苗でも移植や沖出しが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−187574号公報
【特許文献2】特開2007−135523号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2では、播種対象である小ブロック(基質)に播種された海藻の幼胚は必ずしも小ブロックの凹部に残留せず、幼体となり、小ブロックに着生したとしても付着力は弱く沖出しを行うためには十分な付着力が得られるまでさらなる培養工程を必要とする。
また、沖出し後においても育成途中の海藻が小ブロックから離脱してしまうことがあり、海藻生産上の歩留り低下を招くおそれがある。
例えば、海藻類のひとつであるホンダワラ類においては、成熟後上部の主枝はかれるが付着器や茎は残り、茎から再び新しい主枝が伸びる。この技術においては、経年的に付着器が小ブロックから離脱してしまう。
本発明は、海藻種苗を1藻体単位で生産・管理することができ、海藻の密度を容易に制御することが可能となり、早期に沖出しを行うことが可能となり、高い歩留りで海藻の生産を可能とする海藻種苗育成用基質、海藻種苗及びその製造方法並びに海藻の生産方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、播種の対象である基質が、砂地状の表面を有するとともに、表面から裏面に貫通する穴が形成されている小片プレートからなる海藻種苗育成用基質である。
請求項2に係る発明は、前記裏面も砂地状である請求項1記載の海藻種苗育成用基質である。
請求項3に係る発明は、前記砂地状の面によりは、粒径が6μm〜1mmの海砂により形成されている請求項1又は2記載の海藻種苗育成用基質である。
請求項4に係る発明は、請求項1ないし3のいずれか1項記載の海藻種苗育成用基質に、前記穴を介して前記表面から前記裏面にわたり海藻の付着器が付着している海藻種苗である。
請求項5に係る発明は、請求項1ないし3のいずれか1記載の海藻法種苗育成用基質の前記表面に海藻の幼胚を播種し、次いで、静止環境下で培養を行う請求項3記載の海藻種苗の製造方法である。
請求項6に係る発明は、請求項4記載の海藻種苗を沖出しして海藻の育成を行う海藻の生産方法である。
請求項7に係る発明は、前記海藻はホンダワラ類である請求項6記載の海藻の生産方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の小片プレートは、1藻体単位で種苗を利用できることから、沖出し後に養殖施設または礁体から脱落しても新たな種苗を設置することができるなど密度管理がしやすい。
そのため、育成環境における光その他の条件に対応して最適な密度にすることができ、良好な海藻の育成ひいては藻場の形成が可能となる。
海藻の基質への付着力(着生強度)が従来に比べて極めて高く、天然海域で成育する海藻と同等ないしそれ以上の着生強度を維持しているため沖出しを行っても海藻の脱落、流出が少なく、高い歩留りで海藻を育成させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施例において播種する幼胚の外観写真である。
【
図2】実施例における培養容器内における培養中の海藻を示す写真である。
【
図3】実施例において作成した海藻種苗の全体を示す写真である。
【
図4】
図3に示す海藻種苗を表面側から見た写真である。
【
図5】
図3に示す海藻種苗を裏面側から見た写真である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施の形態に係る海藻種苗育成用基質は、砂地状の表面を有するとともに、表面から裏面に貫通する穴が形成されている小片プレートからなる。
以下、詳細に説明する。
【0012】
(基質)
本発明の実施の形態では、播種の対象となり播種された幼胚を担持する基盤である基質を薄板(小片プレート)により構成する。
この小片プレートには表面から裏面に通じる穴が形成されている。この薄板上に幼胚を播種し、培養液中で培養を行うと、幼胚から付着器が成長して薄板表面に沿って成長する。表面に沿って進行する途中で穴に到達すると穴の周壁に沿って下方に進行する。裏面に達すると裏面に沿って進行する。
【0013】
その結果、付着器は薄板を挟み込む形となる。そのため、幼体あるいは伸長期に達した海藻に薄板に対して垂直方向の力がかかっても海藻は薄板から離脱することはない。
なお、穴の形状は円形、四角形その他の形状が考えられるが横方向の力を分散する上からは四角形よりは円形が好ましい。
穴の数は特に限定されない。穴を複数形成しておけば吸着器は穴に達する確率は高くなる。
穴の径は、付着器が裏面に回り込むことができるに足る大きさにすればよい。すなわち、径が小さいと付着器が裏面に回り込む前に穴を塞いでしまう。従って、そのようなことが無い大きさとすればよい。海藻の種類によっても異なるが、例えば5−10mmの径がこのましい。また、表面から裏面に向かうにつれ穴の径を大きくすると、海藻はより離脱しにくくなる。
【0014】
薄板の厚さ(すなわち穴の深さ)は、特に限定されないが、例えば1−5mmとすればよい。ただ、厚すぎると付着器が裏面に到達しなくなるのでそのような厚さより薄くする。
また、付着器が穴の周縁のできるだけ多くの部分を覆うようにすることが脱離防止のために好ましい。従って、付着器の体積を実験により予め求めておき穴の周縁の例えば1/4以上あるいは1/3以上が覆われるように穴の径を設計しておいてもよい。
なお、薄板は例えばプラスチック製とすればよい。
【0015】
(砂地状の表面:表面粗度)
薄板の表面は平坦ではなく砂地状をなす非平坦な面である。なお、表面とは播種を受け幼胚を担持する側の面である。
砂地状の表面は、小片プレートの表面に砂を付着させることにより達成される。すなわち、プレートの表面に接着剤を塗布し、その上から砂を振りかければ砂の層が形成されて砂地状の表面が形成される。あるいは、砂地状の表面を有するセラミック薄片をプレートに接着剤を用いて接着することにより砂地状の表面を形成してもよいし、プレートの表面に対してブラスト処理を行うことにより砂地状の表面を形成してもよい。
【0016】
砂地状の表面とすることにより、着生が生じるまでの間、幼胚が表面から脱離しないように担持し続けることができる。また、着生が生じた後において付着器が砂地状の空隙を埋め込むことにより根を張るようになり基質への付着力が高まる。後者の観点からすると、穴を介して裏面に付着器が流れ込む本発明の場合は、裏面も砂地状にしておくことが好ましい。
【0017】
砂地状表面の粗度としては、6μm〜1mmの粒径の海砂を接着して得られる粗度が好ましい。この範囲における表面粗さ測定したところ次の結果が得られた。
6.3μm〜125μm Rz:268.38
125μm〜250μm Rz:309.10
250μm〜500μm Rz:270.98
500μm〜1mm Rz:443.21
1mm〜2mm Rz:866.40
2mm以上 Rz:820.33
砂無し Rz:178.37
測定条件
JIS規格「JIS B 0031:2003」
レーザー顕微鏡:キーエンス VK−9500
測定値は3試料の平均値である。
Rzは、最大高さ粗さであり、並外れた高さを除き、断面曲線の基準長さの範囲内において一番高い山を数値化したものである。
算術平均粗さ。断面曲線の中心に線を引き、中心線によって得られた曲線上の総面積を長さLで割った値。
【0018】
薄板上に幼胚を播種後、培養は静的環境で行う。しかし、播種後、培養液まで搬送を行う際に薄板に平行方向の力が加わることがある。幼胚は200〜400μmの径を有しており軽量である。薄板に平行方向の力が加わると幼胚は薄板から離脱するおそれがある。また、付着器が裏面に回り込んだ後であって沖出しにおいて、あらゆる方向の力が加わる。
これら諸々の要因に対して表面粗度を6μm〜1mmとすることによりこれら諸々の要因が生じても歩留りよく海藻を養殖することが可能である。
【0019】
ここで、海藻とは、海で生活する藻類であり、海藻は遊走子という胞子を海中に放出して繁殖する。
海藻は以下の三つの群に代表される。
褐藻類:マコンブ、ガゴメ、ワカメ、ホンダワラ、アカモク、イシモズク、ヒジキ
紅藻類:テングサ、フノリ、アカバギンナンソウ、ツノマタ、エゴノリ
緑藻類:アオサ、アオノリ、カサノリ、フサイワヅタ、ミル
【0020】
本発明ではいずれの類の海藻も対象とする。藻場という観点からは褐藻類に適用することが好ましい。
褐藻類の中でもホンダワラ類への適用がより大きな効果を達成する。ホンダワラ類は、付着器(仮根)、茎、主枝、葉、気胞(きほう)などに分化している。
【0021】
ただ、ホンダワラは付着器が他のホンダワラ類に比べて小さく、岩に固着する力が弱いので、波当たりの強い場所では流されることが多く、養殖時における歩留まり向上の妨げとなっている。従って、本発明による効果が顕著に現れる。
なお、ホンダワラは、褐藻綱ホンダワラ科ホンダワラ属の海藻の1種であり、同じホンダワラ科には、ヒジキやアカモクがある。
【0022】
(海藻種苗の製造)
基質の表面に海藻の幼胚を播種し、次いで、静止環境下で培養を行う。
ホンダワラは主に次のような経時変化をたどる。
1 幼胚(長径300μm)
2 幼体期
単葉期(0.5−1mm 4−8月) 第1茎葉が形成
双葉期(1−5mm 8−10月) 第2茎葉が形成
葉形成期(5−15mm 10−12月) 第3−4茎葉が形成
3 伸長期
茎伸長期(15−30mm 12月―4月) 茎が伸長、第1主枝が形成
主枝形成期(30−50mm 4−8月) 主枝が伸長、複数の主枝が形成
主枝伸長期(50−200mm 8−2月) 主枝が伸長、鋸状の葉の形成
気胞形成期(200mm以上 2−4月) 気胞が形成
4 成熟期(2000mm以上 4−8月) 生殖器床が形成
5 主枝脱落(50mm程度)
【0023】
付着器の成長から着生は幼体期終了後の伸長期に生じるが、本明細書では付着器が裏面に回り込み着生が生じた以降のものを海藻種苗と言う。
【0024】
(幼胚の播種)
薄板の表面に幼胚を播種する。従来は播種対象である基質として大きなコンクリートブロックを用いていたので均一な播種密度を確保することは難しかったが、本発明において基質は小さな独立した薄板からなるため播種は容易に行うことができる。播種は例えばピペットあるいはスポイトなどを用いて行えばよい。
【0025】
なお、播種する幼胚は、例えば次のように播種すればよい。ホンダワラを例に説明する。成熟期間である3月中旬から4月上旬頃に、生殖器床上に卵を付着させた雌の藻体(母藻)を採集し、流水下に静置しておく。数日程度経過すると生殖器床上で卵が幼胚(長径約250〜300μm)となり、その後に落下する。これらを回収してメッシュで不要物を除去し、数回清浄な濾過海水で洗浄して播種する。
なお、幼胚には、褐藻類ホンダワラ科や紅藻類アカバギンナンソウなどの種に相当する受精卵や幼胚、四分胞子や果胞子を含む。
【0026】
(幼体への培養)
幼胚を幼体にするために培養を行う。幼胚が播種された薄板を平面状に配列して培養を行う。
培養条件については公知の条件を使用すればよい。例えば特許文献2では、遮光幕により相対光強度(直射日光下での光量子量に対するその場の光量子量の割合)を約2%程度に調整し、この状態で約2〜3カ月育成させて 幼体を得ており、この条件を用いればよい。
【実施例】
【0027】
本例では、基質の薄板としてナイロン66からなる小片プレートを用いた。このプレートは、40mm×40mm×2mmの薄板からなる。もちろんこの寸法に限定されるものではない。ただ、厚すぎると付着器が裏面に回り込まない場合もあるため、5mm以下が好ましく、3mm以下がより好ましく、1mm以下がさらに好ましい。その中央には、表面から裏面に貫通する円形の穴が形成されている。
裏面には、面に平行にロープを通すための貫通孔を有する壁が設けられている。
表面に、α―シアノアクリーレートを主成分とする瞬間接着剤を用い、粒径6.3μm〜125μmの海砂を接着したて砂地状の表面を形成した。
【0028】
スポイトを用いて小片プレートの表面(海砂を形成した面)にアカモクの幼胚を播種した。一つのプレート当たり2〜3個の幼胚が播種された。播種した幼胚の形状を
図1の写真に示す。一部が尖った涙型をしており、寸法は300〜400μmである。
幼胚が播種された小片プレートを平面状に配列し、培養用の槽内で培養を行った。槽内には栄養塩を適宜添加した。
播種からおおよそ3か月経過後の海藻を
図2から
図5に示す。
図2は、培養を行った槽における海藻種苗を示す写真である。
図3は
図2に示す水槽の中から取り出した一つの海藻種苗の外観を示す写真である。
図4は
図3に示す海藻種苗を基質の表面側から見た写真である。付着器が表面の海砂に着生するとともに、中央に形成された穴の壁に沿って成長していることがわかる。
図5は
図3に示す海藻種苗を基質の裏面側から見た写真である。穴を介して張り出してきた付着器が裏面にも張り付いている様子がわかる。
この海藻種苗について脱落試験を行った。
脱落試験は、海藻種苗を水槽内に入れ、水槽の下方から空気の通気を行い、一定時間経過後における脱落の有無を測定して評価を行う試験である。
通気は6.5L/分(弱通気試験)と30L/分(強通気試験)の二種類を複数の試料について行った。なお、通気時間は3分とした。
弱通気試験と強通気試験のいずれの場合も全ての試料につき脱落はなかった。
【0029】
(実施例2)
本例では、基質の表面の粗度を使用する海砂の粒径を次の範囲として変化させた。
試料番号B 125μm〜250μm
試料番号C 250μm〜500μm
試料番号D 500μm〜1mm
試料番号E 1mm〜2mm
試料番号F 2mm以上
試料番号G 海砂無し
試料番号B,C,Dについては弱通気試験と強通気試験のいずれの場合も脱落した試料は無かった。
試料番号E,F,Gについては強通気試験においていくつかの脱落が生じた。
【0030】
(比較例1)
本例では、基質に用いる薄板として表面から裏面に貫通する穴が形成されていない薄板を用いた。
他の点は実施例1と同様とした。
実施例1と同様に脱落試験を行ったところ強試験においていくつかの脱落が生じた。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明によれば、健全な藻場の造成に役立ち、浅海域で二酸化炭素を固定し、また、多くの生物に食物と生活環境を提供することができる。