特開2017-17033(P2017-17033A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特開2017-17033ポリマーブレンドを含む燃料電池用電解質膜及びこれを含む膜−電極接合体、並びに燃料電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-17033(P2017-17033A)
(43)【公開日】2017年1月19日
(54)【発明の名称】ポリマーブレンドを含む燃料電池用電解質膜及びこれを含む膜−電極接合体、並びに燃料電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/02 20160101AFI20161222BHJP
   H01M 8/10 20160101ALI20161222BHJP
   H01B 1/06 20060101ALI20161222BHJP
   C08G 65/40 20060101ALI20161222BHJP
   C08J 5/22 20060101ALI20161222BHJP
【FI】
   H01M8/02 P
   H01M8/10
   H01B1/06 A
   C08G65/40
   C08J5/22CEZ
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2016-131572(P2016-131572)
(22)【出願日】2016年7月1日
(31)【優先権主張番号】10-2015-0095424
(32)【優先日】2015年7月3日
(33)【優先権主張国】KR
(71)【出願人】
【識別番号】516198662
【氏名又は名称】ユルチョン ケミカル カンパニー リミテッド
(71)【出願人】
【識別番号】304039548
【氏名又は名称】コリア・インスティテュート・オブ・サイエンス・アンド・テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100165803
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 修平
(72)【発明者】
【氏名】キム ヒョンジュン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン ジョンヒョン
(72)【発明者】
【氏名】リ ソヨン
(72)【発明者】
【氏名】キム ボヒョン
(72)【発明者】
【氏名】チョエ ソンヒ
(72)【発明者】
【氏名】ハン ジョンヒ
(72)【発明者】
【氏名】キム ジンホ
(72)【発明者】
【氏名】パク ジョンヒョプ
【テーマコード(参考)】
4F071
4J005
5G301
5H026
【Fターム(参考)】
4F071AA51
4F071AA64
4F071AA78
4F071AA80
4F071FA03
4F071FA05
4F071FB01
4F071FC01
4F071FD02
4F071FE02
4J005AA24
4J005BA00
4J005BD00
4J005BD04
5G301CA30
5G301CD01
5G301CE01
5H026AA06
5H026EE18
5H026HH05
(57)【要約】      (修正有)
【課題】水素イオン伝導度が高く、且つ優れた機械的強度及び寸法安定性を有する電解質膜を提供すること。
【解決手段】(a)スルホン化ポリエーテルスルホン共重合体、(b)ヒドロキシ基を有するポリエーテルスルホン共重合体、及び(c)ヒドロキシ基を有するスルホン化ポリエーテルスルホン共重合体のポリマーブレンドを含み、(a)スルホン化ポリエーテルスルホン共重合体のスルホン化度は10%〜95%、且つ/又は(b)ヒドロキシ基を有するポリエーテルスルホン共重合体の水酸化度は5%〜90%、且つ/又は(c)ヒドロキシ基を有するスルホン化ポリエーテルスルホン共重合体のスルホン化度は10%〜95%で、水酸化度は5%〜90%である燃料電池用電解質膜。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)スルホン化ポリエーテルスルホン共重合体、(b)ヒドロキシ基を有するポリエーテルスルホン共重合体、及び(c)ヒドロキシ基を有するスルホン化ポリエーテルスルホン共重合体のポリマーブレンドを含む燃料電池用電解質膜。
【請求項2】
前記(a)スルホン化ポリエーテルスルホン共重合体のスルホン化度は10%〜95%である、請求項1に記載の燃料電池用電解質膜。
【請求項3】
前記(b)ヒドロキシ基を有するポリエーテルスルホン共重合体の水酸化度は5%〜90%である、請求項1または2に記載の燃料電池用電解質膜。
【請求項4】
前記(c)ヒドロキシ基を有するスルホン化ポリエーテルスルホン共重合体のスルホン化度は10%〜95%で、水酸化度は5%〜90%である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の燃料電池用電解質膜。
【請求項5】
前記(a)スルホン化ポリエーテルスルホン共重合体は、前記ポリマーブレンドの総重量に対し、10重量%以上100重量%未満で含まれる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の燃料電池用電解質膜。
【請求項6】
前記(b)ヒドロキシ基を有するポリエーテルスルホン共重合体は、前記ポリマーブレンドの総重量に対し、0重量%超過50重量%未満で含まれる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の燃料電池用電解質膜。
【請求項7】
前記(c)ヒドロキシ基を有するスルホン化ポリエーテルスルホン共重合体は、前記ポリマーブレンドの総重量に対し、0重量%超過50重量%未満で含まれる、請求項1〜6のいずれか一項に記載の燃料電池用電解質膜。
【請求項8】
前記(a)スルホン化ポリエーテルスルホン共重合体、(b)ヒドロキシ基を有するポリエーテルスルホン共重合体、及び(c)ヒドロキシ基を有するスルホン化ポリエーテルスルホン共重合体の重量比(a):(b):(c)は5〜9:0.5〜4:0.5〜4である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の燃料電池用電解質膜。
【請求項9】
前記(a)スルホン化ポリエーテルスルホン共重合体のスルホン化度が40%であるとき、前記(a)スルホン化ポリエーテルスルホン共重合体、(b)ヒドロキシ基を有するポリエーテルスルホン共重合体、及び(c)ヒドロキシ基を有するスルホン化ポリエーテルスルホン共重合体の重量比(a):(b):(c)は6:2:2である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の燃料電池用電解質膜。
【請求項10】
前記(a)スルホン化ポリエーテルスルホン共重合体のスルホン化度が50%であるとき、前記(a)スルホン化ポリエーテルスルホン共重合体、(b)ヒドロキシ基を有するポリエーテルスルホン共重合体、及び(c)ヒドロキシ基を有するスルホン化ポリエーテルスルホン共重合体の重量比(a):(b):(c)は7:2:1である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の燃料電池用電解質膜。
【請求項11】
前記(a)スルホン化ポリエーテルスルホン共重合体のスルホン化度が60%であるとき、前記(a)スルホン化ポリエーテルスルホン共重合体、(b)ヒドロキシ基を有するポリエーテルスルホン共重合体、及び(c)ヒドロキシ基を有するスルホン化ポリエーテルスルホン共重合体の重量比(a):(b):(c)は8:1:1である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の燃料電池用電解質膜。
【請求項12】
前記(a)、(b)、及び(c)の共重合体は、ポリ(アリーレンエーテルスルホン)系ランダム共重合体である、請求項1〜11のいずれか一項に記載の燃料電池用電解質膜。
【請求項13】
【化1】
(前記式中、XはO、S、C(=O)、C(=O)NH、Si(CH、(CH、(CF、C(CH、C(CF、またはC(CH)(CF)を表し、p、qは1〜10の整数を表し、aは0.1〜0.95を表し、nは共重合体の分子量が増加するにつれ比例して増加する高分子の重合度を表す。)
前記(a)スルホン化ポリエーテルスルホン共重合体は、上記化学式1で示される繰り返し単位を含むものである、請求項1〜12のいずれか一項に記載の燃料電池用電解質膜。
【請求項14】
【化2】
(前記式中、XはO、S、C(=O)、C(=O)NH、Si(CH、(CH、(CF、C(CH、C(CF、またはC(CH)(CF)を表し、p、qは1〜10の整数を表し、bは0.05〜0.9を表し、nは共重合体の分子量が増加するにつれ比例して増加する高分子の重合度を表す。)
前記(b)ヒドロキシ基を有するポリエーテルスルホン共重合体は、上記化学式2で示される繰り返し単位を含むものである、請求項1〜13のいずれか一項に記載の燃料電池用電解質膜。
【請求項15】
【化3】
(前記式中、XはO、S、C(=O)、C(=O)NH、Si(CH、(CH、(CF、C(CH、C(CF、またはC(CH)(CF)を表し、p、qは1〜10の整数を表し、c、d、e、fはそれぞれ重縮合反応のための単量体のモル比に相応し、nは共重合体の分子量が増加するにつれ比例して増加する高分子の重合度を表す。)
前記(c)ヒドロキシ基を有するスルホン化ポリエーテルスルホン共重合体は、上記化学式3で示される繰り返し単位を含むものである、請求項1〜14のいずれか一項に記載の燃料電池用電解質膜。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか一項に記載の燃料電池電解質膜を含む膜−電極接合体。
【請求項17】
請求項1〜15のいずれか一項に記載の燃料電池電解質膜を含む燃料電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、ポリマーブレンドを含む燃料電池用電解質膜及びこれを含む膜−電極接合体、並びに燃料電池を開示する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池の種類は、使用される電解質によって固体酸化物燃料電池(SOFC)、高分子電解質燃料電池(PEMFC)、リン酸燃料電池(PAFC)、溶融炭酸塩燃料電池(MCFC)、及びアルカリ型燃料電池(AFC)等に分けられる。
【0003】
一般に、高分子電解質燃料電池(polymer electrolyte membrane fuel cell)用の電解質膜に要求される特性としては、高い水素イオン伝導度、優れた機械的強度、低い燃料透過度、高い寸法安定性、高い不活性、低価格等がある。高分子電解質燃料電池用電解質膜として主に使用されるナフィオン系のペルフルオロスルホン化高分子膜(Nafion type perfluorosulfonated polymer membrane)は、高い水素イオン伝導度や高い不活性、優れた機械的特性を有するが、燃料透過度が高く、低加湿および高温条件において水素イオン伝導度が低く、且つ価格が高いため経済性が低い。
【0004】
そこで、炭化水素系(Hydrocarbon based)及び部分的にフッ素が置換されている陽イオン交換膜に関する研究が進んでおり、その例として、スルホン化したポリ(フェニレンオキサイド)系、ポリ(フェニレンスルフィド系)系、ポリスルホン系、ポリ(パラフェニレン)系、ポリスチレン系、ポリエーテルエーテルケトン系、ポリアリーレンエーテルスルホン系、及びポリイミド系高分子等がある。高スルホン化度を有する低分子量のスルホン化したポリアリーレンエーテルスルホン系高分子は、水に対する溶解度が比較的高く且つ寸法安定性が良くないため、前記ペルフルオロスルホン化高分子膜のような長期安定性能を示すことができないこともある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】韓国登録特許公報第10−1344686号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一観点において、本発明が解決しようとする課題は、水素イオン伝導度が高く、且つ優れた機械的強度及び寸法安定性を有する電解質膜を提供することである。
【0007】
他の観点において、本発明が解決しようとする課題は、長期安定性に優れる電解質膜を提供することである。
【0008】
また他の観点において、本発明が解決しようとする課題は、低加湿条件で水素イオン伝導度の高い電解質膜を提供することである。
【0009】
さらに、他の観点において、本発明が解決しようとする課題は、高温および低加湿条件で優れた水素イオン伝導度を示し、且つ経済的な方法で製造できる電解質膜を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一観点に係る燃料電池用電解質膜は、スルホン化ポリエーテルスルホン共重合体、ヒドロキシ基を有するポリエーテルスルホン共重合体、及びヒドロキシ基を有するスルホン化ポリエーテルスルホン共重合体のポリマーブレンドを含んでいてよい。
【0011】
本発明の他の観点に係る膜−電極接合体は、前記燃料電池用電解質膜を含んでいてよい。
【0012】
本発明のまた他の観点に係る燃料電池は、前記燃料電池用電解質膜を含んでいてよい。
【発明の効果】
【0013】
一観点において、本発明は、水素イオン伝導度が高く、且つ優れた機械的強度及び寸法安定性を有する電解質膜を提供することができる。
【0014】
他の観点において、本発明は、長期安定性に優れた電解質膜を提供することができる。
【0015】
また他の観点において、本発明は、低加湿条件で水素イオン伝導度の高い電解質膜を提供することができる。
【0016】
さらに他の観点において、本発明は、高温および低加湿条件で経済的に優れた水素イオン伝導度を示し、且つ経済的な方法で製造できる電解質膜を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施例及び比較例において製造した電解質膜のTEM写真である。
図2A】実施例及び比較例において製造した電解質膜の含水率を示したグラフである。
図2B】実施例及び比較例において製造した電解質膜の含水率を示した表である。
図3A】実施例及び比較例において製造した電解質膜の寸法変化率を示したグラフである(30℃)。
図3B】実施例及び比較例において製造した電解質膜の寸法変化率を示したグラフである(65℃)。
図3C】実施例及び比較例において製造した電解質膜の寸法変化率を示したグラフである(90℃)。
図4】実施例及び比較例において製造した電解質膜の引張強度及び延伸率を示したグラフである。
図5】65℃及び相対湿度95%RHの高湿条件での単位電池性能を示したグラフである。
図6】65℃及び相対湿度95%RHの高湿条件での単位電池性能を示したグラフである。
図7】90℃及び相対湿度35%RHの高温低湿条件での単位電池性能を示したグラフである。
図8】本発明実施例に係る電解質膜の長期安定性を評価した結果を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付の図面を参照して、本出願の実施例をより詳細に説明する。なお、本出願に開示された技術は、ここで説明される実施例に限定されず、他の形態で具体化することもできる。単に、ここで紹介される実施例は、開示された内容が徹底且つ完全にできるように、また当業者に本出願の思想が十分に伝達できるようにするために提供されるものである。図面において各構成要素を明確に表現するために構成要素の幅や厚さ等の大きさを多少拡大して示した。また、説明の便宜のために構成要素の一部だけを図示したりもしたが、当業者であれば構成要素の残りの部分に対しても容易に把握できるはずである。また、当該分野において通常の知識を有する者であれば、本出願の技術的思想を逸脱しない範囲内で本出願の思想を種々の他の形態に実現することができる。
【0019】
本明細書において、スルホン化度(degree of sulfonation)は、共重合体の側鎖がスルホン酸基で置換された程度を表すものであって、下記化学式1で示される繰り返し単位のうちのaの比率を百分率で表した値であってよい。
【0020】
本明細書において、水酸化度(degree of hydroxylation)は、共重合体の側鎖がヒドロキシ基で置換された程度を表すものであって、下記化学式2で示される繰り返し単位のうちのbの比率を百分率で表した値であってよい。
【0021】
本明細書において、スルホン化された共重合体、またはスルホン化ポリエーテルスルホン共重合体は、共重合体の主鎖の一部または全部がスルホン酸基で置換された共重合体を意味し、主鎖にヒドロキシ基を含まない。
【0022】
本明細書において、ヒドロキシ基を有する共重合体、またはヒドロキシ基を有するポリエーテルスルホン共重合体は、共重合体の主鎖の一部または全部がヒドロキシ基で置換された共重合体を意味し、主鎖にスルホン酸基を含まない。
【0023】
本明細書において、ヒドロキシ基を有するスルホン化共重合体、またはヒドロキシ基を有するスルホン化ポリエーテルスルホン共重合体は、共重合体の主鎖の全部または一部がスルホン酸基及びヒドロキシ基に置換されてスルホン酸基とヒドロキシ基をいずれも含む共重合体を意味する。
【0024】
本発明の一実施例に係る燃料電池用電解質膜は、ポリマーブレンドを含んでいてよい。前記ポリマーブレンドは、スルホン化された共重合体、ヒドロキシ基を有する共重合体及びヒドロキシ基を有するスルホン化された共重合体のブレンドであってよい。
【0025】
スルホン化された共重合体のスルホン化度は、10%以上、11%以上、12%以上、13%以上、14%以上、15%以上、16%以上、17%以上、18%以上、19%以上、20%以上、21%以上、22%以上、23%以上、24%以上、25%以上、26%以上、27%以上、28%以上、29%以上、30%以上、31%以上、32%以上、33%以上、34%以上、35%以上、36%以上、37%以上、38%以上、39%以上、40%以上、41%以上、42%以上、43%以上、44%以上、45%以上、46%以上、47%以上、48%以上、49%以上、または50%以上で、且つ、95%以下、94%以下、93%以下、92%以下、91%以下、90%以下、89%以下、88%以下、87%以下、86%以下、85%以下、84%以下、83%以下、82%以下、81%以下、80%以下、79%以下、78%以下、77%以下、76%以下、75%以下、74%以下、73%以下、72%以下、71%以下、70%以下、69%以下、68%以下、67%以下、66%以下、65%以下、64%以下、63%以下、62%以下、61%以下、60%以下、59%以下、58%以下、57%以下、56%以下、55%以下、54%以下、53%以下、52%以下、51%以下、または50%以下であってよい。例えば、前記スルホン化度は、10%〜95%であってよく、例えば30%〜70%、例えば40%〜60%であってもよい。前記範囲内において電解質膜が優れた水素イオン伝導度を示すと共に高い寸法安定性を示すことができる。
【0026】
前記スルホン化された共重合体は、スルホン化ポリエーテルスルホン系共重合体、ポリチオスルホン系共重合体、ポリエーテルエーテルケトン系共重合体、ポリイミド系共重合体、ポリスチレン系共重合体、ポリホスファゼン系共重合体のうちから選択されるスルホン化炭化水素系共重合体であってよく、例えば、スルホン化ポリエーテルスルホン系共重合体であってよい。前記スルホン化された共重合体を含み、電解質膜が優れた伝導度を示す。
【0027】
具体例において、スルホン化された共重合体は、ポリ(アリーレンエーテルスルホン)系ブロック共重合体またはランダム共重合体であってよい。例えば、前記スルホン化された共重合体は、下記化学式1で示される繰り返し単位を含むポリ(アリーレンエーテルスルホン)系ブロックまたはランダム共重合体、例えばランダム共重合体であってよい。
【0028】
【化1】
【0029】
前記式中、Xは、O、S、C(=O)、C(=O)NH、Si(CH、(CH、(CF、C(CH、C(CF、またはC(CH)(CF)を表し、p、qは1〜10の整数を表し、aは0.1〜0.95を表し、nは共重合体の分子量が増加するにつれ比例して増加する高分子の重合度を表す。
【0030】
具体例において、スルホン化された共重合体は、非スルホン化または低スルホン化共重合体を重合した後、さらにスルホン化させて製造することができ、またはスルホン化単量体を用いてスルホン化共重合体を重合して製造することができるが、これらに制限されるものではない。
【0031】
例えば、スルホン酸基を含む一つ以上の単量体と、スルホン酸基を含まない一つ以上の単量体とを、一定のモル分率で縮合反応して製造することができるが、これに制限されるものではない。前記スルホン酸基を含む単量体またはスルホン酸基を含まない単量体は、4−フルオロフェニルスルホン、4,4’−ジクロロビフェニルスルホン、ビス(4−フルオロ−3−スルホフェニル)スルホン塩、4,4−ビフェノール、4,4’−ジヒドロキシビフェノールのうちから選択され得るが、これらに制限されるものではない。
【0032】
前記スルホン化された共重合体は、前記ポリマーブレンドの総重量に対し、10重量%以上、15重量%以上、20重量%以上、25重量%以上、30重量%以上、35重量%以上、40重量%以上、45重量%以上、50重量%以上、55重量%以上、60重量%以上、65重量%以上、70重量%以上、75重量%以上、80重量%以上、または85重量%以上で、且つ、100重量%未満、95重量%以下、90重量%以下、85重量%以下、80重量%以下、または75重量%以下の範囲で含まれていてよく、例えば、10重量%以上100重量%未満の範囲で含まれていてよい。前記スルホン化された共重合体の含有量は、共重合体のスルホン化度に応じて調整されてよく、例えば、前記スルホン化された共重合体のスルホン化度が40%〜60%である場合、前記スルホン化された共重合体は、ポリマーブレンドの総重量に対し、50重量%以上、55重量%以上、60重量%以上、65重量%以上、70重量%以上、75重量%以上、80重量%以上、または85重量%以上で、且つ、100重量%未満、95重量%以下、90重量%以下、85重量%以下、80重量%以下、75重量%以下、70重量%以下、または65重量%以下の範囲で含まれていてよく、例えば、50重量%以上100重量%未満の範囲で含まれていてよい。前記範囲内において電解質膜が優れた水素イオン伝導度を示すと共に寸法安定性が高く、且つ優れた長期安定性を示すことができる。
【0033】
ヒドロキシ基を有する共重合体の水酸化度は、5%以上、6%以上、7%以上、8%以上、9%以上、10%以上、11%以上、12%以上、13%以上、14%以上、15%以上、16%以上、17%以上、18%以上、19%以上、20%以上、21%以上、22%以上、23%以上、24%以上、25%以上、26%以上、27%以上、28%以上、29%以上、30%以上、31%以上、32%以上、33%以上、34%以上、35%以上、36%以上、37%以上、38%以上、39%以上、40%以上、41%以上、42%以上、43%以上、44%以上、45%以上、46%以上、47%以上、48%以上、49%以上、50%以上、51%以上、52%以上、53%以上、54%以上、55%以上、56%以上、57%以上、58%以上、59%以上、または60%以上で、且つ、90%以下、89%以下、88%以下、87%以下、86%以下、85%以下、84%以下、83%以下、82%以下、81%以下、80%以下、79%以下、78%以下、77%以下、76%以下、75%以下、74%以下、73%以下、72%以下、71%以下、70%以下、69%以下、68%以下、67%以下、66%以下、65%以下、64%以下、63%以下、62%以下、61%以下、または60%以下であってよい。例えば、前記水酸化度は、5%〜90%の範囲であってよく、例えば、50%〜80%の範囲であってよい。前記範囲内において優れた機械的強度及び高い寸法安定性を示すことができ、且つ広い範囲の相対湿度、例えば、80%RH以上、90%RH以上の高湿、60RH%以下、50RH%以下の低湿条件でも優れた水素イオン伝導度を示すことができる。
【0034】
前記ヒドロキシ基を有する共重合体は、ヒドロキシ基を有する、ポリエーテルスルホン系共重合体、ポリチオスルホン系共重合体、ポリエーテルエーテルケトン系共重合体、ポリイミド系共重合体、ポリスチレン系共重合体、ポリホスファゼン系共重合体のうちから選択される炭化水素系共重合体でもよく、例えば、ヒドロキシ基を有するポリエーテルスルホン系共重合体であってよい。前記ヒドロキシ基を有する共重合体を含み、ヒドロキシ基によって広い範囲の相対湿度の条件で水素イオン伝導度に優れ、且つ機械的強度および寸法安定性に優れた電解質膜を提供することができる。
【0035】
具体例において、ヒドロキシ基を有する共重合体は、ヒドロキシ基を有するポリ(アリーレンエーテルスルホン)系ブロック共重合体またはランダム共重合体であってよい。例えば、前記ヒドロキシ基を有する共重合体は、下記化学式2で示される繰り返し単位を含むポリ(アリーレンエーテルスルホン)系ブロックまたはランダム共重合体、例えば、ランダム共重合体であってよい。
【0036】
【化2】
【0037】
前記式中、Xは、O、S、C(=O)、C(=O)NH、Si(CH、(CH、(CF、C(CH、C(CF、またはC(CH)(CF)を表し、p、qは、1〜10の整数を表し、bは、0.05〜0.9を表し、nは、共重合体の分子量が増加するにつれ比例して増加する高分子の重合度を表す。
【0038】
具体例において、ヒドロキシ基を有する共重合体は、水酸基を含まない共重合体を重合した後、さらに水酸化(hydroxylation)させて製造するか、または水酸基を有する単量体を用いてヒドロキシ基を有する共重合体を重合して製造することができるが、これに制限されるものではない。
【0039】
具体例において、ヒドロキシ基を有する共重合体は、アルコキシ基を有する単量体を含む単量体混合物を一定のモル分率で縮合反応して製造した後、アルコキシ基をヒドロキシ基に置換して製造することができるが、これに制限されるものではない。
【0040】
前記単量体混合物は、4−フルオロフェニルスルホン、4,4’−ジクロロビフェニルスルホン、4,4−ビフェノール、4,4’−ジヒドロキシビフェノール、アルコキシヒドロキノンのうちから選択される単量体を含んでいてよいが、これらに制限されるものではない。例えば、前記アルコキシヒドロキノンは、メトキシヒドロキノン、エトキシヒドロキノン、n−プロポキシヒドロキノン、イソプロポキシヒドロキノン、n−ブトキシヒドロキノン、イソブトキシヒドロキノン、及びターシャリーブトキシヒドロキノンのうちから選択され得るが、これらに制限されるものではない。
【0041】
アルコキシ基をヒドロキシ基に置換することは、例えば、脱アルキル化剤を用いて脱アルキル化(dealklyation)させることができるが、これに制限されるものではない。前記脱アルキル化剤は、例えば、三塩化ホウ素、三臭化ホウ素のような強いルイス酸、またはHF、Hl、HBr、HIのようなハロゲン化水素を用いていてよい。
【0042】
一具体例において、ヒドロキシ基を有する共重合体は、前記ポリマーブレンドの総重量に対し、0重量%超過、0.1重量%以上、0.2重量%以上、0.3重量%以上、0.4重量%以上、0.5重量%以上、0.6重量%以上、0.7重量%以上、0.8重量%以上、0.9重量%以上、1重量%以上、2重量%以上、3重量%以上、4重量%以上、5重量%以上、6重量%以上、7重量%以上、8重量%以上、9重量%以上、または10重量%以上で、且つ、50重量%未満、45重量%以下、40重量%以下、35重量%以下、30重量%以下、25重量%以下、または20重量%以下であってよく、例えば、0重量%超過50重量%未満、例えば、0.5重量%以上40重量%以下、例えば、5重量%以上30重量%以下であってよい。前記範囲内において電解質膜が優れた水素イオン伝導度を示すと共に、優れた膜の機械的強度や寸法安定性を示すことができる。
【0043】
他の具体例において、ヒドロキシ基を有する共重合体の含有量は、共重合体の水酸化度に応じて調整されてよく、例えば、水酸化度が0%超過10%以下である場合、ヒドロキシ基を有する共重合体の含有量は、0重量%超過、5重量%以上、10重量%以上、15重量%以上、20重量%以上、25重量%以上、30重量%以上、35重量%以上、40重量%以上、45重量%以上、50重量%以上、55重量%以上、または60重量%以上で、且つ、90重量%以下、85重量%以下、80重量%以下、75重量%以下、70重量%以下、または65重量%以下であってよく、例えば、0重量%超過90重量%以下であってよい。
【0044】
ヒドロキシ基を有するスルホン化ポリエーテルスルホン共重合体は、主鎖にヒドロキシ基及びスルホン酸基を有する共重合体であってよい。前記ヒドロキシ基を有するスルホン化ポリエーテルスルホン共重合体を含み、前記スルホン化共重合体及びヒドロキシ基を有する共重合体の互換性を高めることができると共に、優れた水素イオン伝導度及び機械的強度を示すことができるようにし、且つ長期安定性を向上させることができる。前記共重合体のスルホン化度は10%〜95%で、水酸化度は5%〜90%であってよく、前記スルホン化度及び水酸化度は、上述したスルホン化共重合体及びヒドロキシ基を有する共重合体のことにおける説明と同様で、例えば、スルホン化度30%〜50%及び水酸化度30%〜50%、例えば、スルホン化度40%及び水酸化度40%であってよい。前記範囲内において前記スルホン化共重合体及びヒドロキシ基を有する共重合体の互換性を高めることができ、優れた水素イオン伝導度及び機械的強度を示すようにすることができる。
【0045】
前記ヒドロキシ基を有するスルホン化共重合体は、ヒドロキシ基を有する、スルホン化ポリエーテルスルホン系共重合体、ポリチオスルホン系共重合体、ポリエーテルエーテルケトン系共重合体、ポリイミド系共重合体、ポリスチレン系共重合体、ポリホスファゼン系共重合体のうちから選択されるスルホン化炭化水素系共重合体であってよく、例えば、ヒドロキシ基を有するスルホン化ポリエーテルスルホン系共重合体であってよい。
【0046】
具体例において、ヒドロキシ基を有するスルホン化された共重合体は、ヒドロキシ基を有するポリ(アリーレンエーテルスルホン)系ブロック共重合体またはランダム共重合体であってよい。例えば、前記ヒドロキシ基を有するスルホン化された共重合体は、下記化学式3で示される繰り返し単位を含むポリ(アリーレンエーテルスルホン)系ブロックまたはランダム共重合体でもよく、例えばランダム共重合体であってよい。
【0047】
【化3】
【0048】
前記式中、Xは、O、S、C(=O)、C(=O)NH、Si(CH、(CH、(CF、C(CH、C(CF、またはC(CH)(CF)を表し、p、qは、1〜10の整数を表し、c、d、e、fは、それぞれ重縮合反応のための単量体のモル比に相応し、nは、共重合体の分子量が増加するにつれ比例して増加する高分子の重合度を表す。
【0049】
具体例において、ヒドロキシ基を有するスルホン化された共重合体は、アルコキシ基を有するスルホン化共重合体を製造し、アルコキシ基を有するスルホン化共重合体のスルホン酸基をスルホニルクロリド基で置換し、アルコキシ基をヒドロキシ基で置換し、スルホニルクロリド基を加水分解してスルホン酸基に還元させて製造することができるが、これに制限されるものではない。
【0050】
前記アルコキシ基を有するスルホン化共重合体は、例えば、ビス(4−フルオロ−3−スルホフェニル)スルホン塩、4,4’−ジクロロビフェニルスルホン、4−フルオロフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシビフェノール、アルコキシヒドロキノンのうちから選択される単量体を縮合反応して製造することができるが、これに制限されるものではない。
【0051】
前記スルホン酸基をスルホニルクロリドに置換することは、チオニルクロリドを触媒下で反応させることを含んでもよいが、これに制限されるものではない。
【0052】
前記アルコキシ基をヒドロキシ基に置換することは、例えば、脱アルキル化剤を用いて脱アルキル化させることができるが、これに制限されるものではない。前記脱アルキル化剤は、例えば、三塩化ホウ素、三臭化ホウ素のような強いルイス酸、またはHF、Hl、HBr、HIのようなハロゲン化水素を用いてもよい。
【0053】
前記スルホニルクロリドをスルホン酸基に還元させることは、酸溶液、例えば、希硫酸または希塩酸溶液に浸漬させることを含んでもよいが、これに制限されるものではない。
【0054】
前記ヒドロキシ基を有するスルホン化された共重合体は、前記ポリマーブレンドの総重量に対し、0重量%超過、0.1重量%以上、0.2重量%以上、0.3重量%以上、0.4重量%以上、0.5重量%以上、0.6重量%以上、0.7重量%以上、0.8重量%以上、0.9重量%以上、1重量%以上、2重量%以上、3重量%以上、4重量%以上、5重量%以上、6重量%以上、7重量%以上、8重量%以上、9重量%以上、または10重量%以上で、且つ、50重量%未満、45重量%以下、40重量%以下、35重量%以下、30重量%以下、25重量%以下、または20重量%以下でもよく、例えば、0重量%超過50重量%未満、例えば、0.5重量%以上40重量%以下、例えば、5重量%以上30重量%以下でもよい。前記範囲内においてポリマーブレンド中の共重合体間の互換性を高めることができ、優れた水素イオン伝導度及び機械的強度を示せるようにできる。
【0055】
具体例において、前記ポリマーブレンドは、前記(a)スルホン化された共重合体、(b)ヒドロキシ基を有する共重合体、及び(c)ヒドロキシ基を有するスルホン化共重合体を、(a):(b):(c)が5〜9:0.5〜4:0.5〜4の重量比で含んでもよく、例えば、6〜8:1〜2:1〜2の重量比で含んでもよい。前記範囲内において長期安定性に優れ、機械的強度が高く、且つ寸法安定性に優れると共に高い水素イオン伝導度を示すことができる。
【0056】
前記重量比(a):(b):(c)は、(a)スルホン化された共重合体のスルホン化度(DSa)に応じて調整されてよく、例えば、DSaが40%であるとき、6:2:2、DSaが50%であるとき、7:2:1、DSaが60%であるとき、8:1:1であり得る。前記範囲内において長期安定性、機械的強度、及び寸法安定性がより向上し、高い水素イオン伝導度を示すことができる。
【0057】
本発明の実施例に係る燃料電池電解質膜は、前記3種の共重合体をブレンドするため、スルホン化された共重合体のスルホン化度が30%以上、40%以上、50%以上、60%以上といった高スルホン化度の場合でも、優れた寸法安定性や機械的強度、長期安定性を示すことができる。
【0058】
本発明の実施例に係る燃料電池電解質膜は、燃料電池の膜−電極接合体に用いられる。例えば、本発明の実施例に係る燃料電池電解質膜をアノードとカソードとの間に配置して燃料電池用膜−電極接合体に用いることができ、前記膜−電極接合体は、燃料電池に含まれ得る。
【0059】
本発明の一実施例に係る膜−電極接合体は、本発明の実施例に係る燃料電池電解質膜を含むことができる。
【0060】
本発明の一実施例に係る燃料電池は、本発明の実施例に係る燃料電池電解質膜を含むことができる。
【0061】
以下、実施例、比較例、及び試験例を参照して本発明を詳細に説明する。なお、これらは、単に本発明をより具体的に説明するために例示的に提示したものに過ぎず、本発明の範囲がこれらの実施例、比較例、及び試験例によって制限されないことは、当業界における通常の知識を有する者にとって自明である。
【0062】
<製造例1.スルホン化共重合体の製造(スルホン化度40%)>
下記反応式1で示すように、250mlの四ツ口フラスコを用いて、アルゴンガスの雰囲気下で、モノマーである3,3’−ジスルホネート−4,4’−ジクロロジフェニルスルホン(1.9650g、4mmol)、4,4’−ジクロロジフェニルスルホン(1.7230g、6mmol)、及び4,4’−ジヒドロキシビフェノール(1.8809g、10mmol)とKCO 1.67gを、トルエン11mlとジメチルアセトアミド(DMAc)22mlとの混合溶媒に分散させ、ディーン・スターク(Dean−Stark)蒸留装置にて140℃で5時間加熱して還流(reflux)した。次いで、トルエンを単純蒸留法で除去し、残りの反応混合物を、アルゴンガスの雰囲気下、160℃で20時間反応させた。生成された共重合体溶液をイソプロピルアルコールと蒸留水との7:3混合物に浸漬させ、ろ過した後、120℃の真空オーブンにて24時間乾燥して、スルホン化度40%のスルホン化共重合体を製造した。
(反応式1)
【0063】
<製造例2〜3.スルホン化共重合体の製造(スルホン化度50%、60%)>
スルホン化度50%のスルホン化共重合体及びスルホン化度60%のスルホン化共重合体は、モノマー含有量を下記の表1のように変更したことを除いては、前記製造例1と同法によりスルホン化共重合体を製造した。
【0064】
【表1】
【0065】
<製造例4.ヒドロキシ基を有する共重合体の製造>
[4−1.メトキシ基を含むポリ(アリーレンエーテルスルホン)ランダム共重合体の合成]
下記の反応式2で示すように、250mlの四ツ口フラスコを用いて、アルゴンガスの雰囲気下で、モノマーである4,4’−ジクロロジフェニルスルホン(2.871g、10mmol)、メトキシヒドロキノン(0.841g、6mmol)、4,4’−ジヒドロキシビフェノール(0.752g、10mmol)及びKCO 1.67gをトルエン11mlとN−メチル−2−ピロリドン(NMP)22mlとの混合溶媒に分散させ、ディーン・スターク(Dean−Stark)蒸留装置にて140℃で3時間加熱して還流した。次いで、トルエンを単純蒸留法で除去し、残りの反応混合物を、アルゴンガスの雰囲気下、190℃で3時間反応させた。生成された共重合体溶液をイソプロピルアルコールと蒸留水との7:3混合物に浸漬させ、ろ過した後、120℃の真空オーブンにて24時間乾燥して、メトキシ基を含むポリ(アリーレンエーテルスルホン)ランダム共重合体(BPS−Me)を合成した。
(反応式2)
【0066】
[4−2.メトキシ基を含む共重合体(BPS−Me)のメトキシ基をヒドロキシ基に置換]
50mlの三ツ口フラスコを用いて、アルゴンガスの雰囲気下、前記4−1.で合成されたメトキシ基を含む共重合体(BPS−Me)1.0g、ジクロロメタン(DCM)溶媒40mlを入れ、反応器を冷却槽(coolingbath)に浸して、反応器の外部温度が0℃になるようにした状態で、注射器を利用して1.0MのBBr溶液7mlを滴下する。BBr溶液の滴下完了後、6時間反応させて脱メチル化させ、浸漬過程を経ることなくろ過し蒸留水で数回洗浄し、ろ過後、60℃の真空オーブンにて24時間乾燥して、ヒドロキシ基を有する共重合体を製造した。製造された共重合体の水酸化度は60%であった。
【0067】
<製造例5.ヒドロキシ基を有するスルホン化共重合体の製造>
下記反応式3と同様の過程により、ヒドロキシ基を有するスルホン化共重合体を製造した。
【0068】
[5−1.メトキシ基を含むスルホン化ポリ(アリーレンエーテルスルホン)ランダム共重合体の合成]
250mlの四ツ口フラスコを用いて、アルゴンガスの雰囲気下で、モノマーである3,3’−ジスルホネート−4,4’−ジクロロジフェニルスルホン(1.9650g、4mmol)、4,4’−ジクロロジフェニルスルホン(1.7230g、6mmol)、メトキシヒドロキノン(0.5605g、4mmol)、4,4’−ジヒドロキシビフェノール(1.3697g、6mmol)、及びKCO 2.32gを、トルエン11mlとジメチルアセトアミド(DMAc)22mlとの混合溶媒に分散させ、ディーン・スターク蒸留装置にて140℃で5時間加熱して還流した。次いで、トルエンを単純蒸留法で除去し、残りの反応混合物を、アルゴンガスの雰囲気下、160℃で20時間反応させた。生成された共重合体溶液をイソプロピルアルコールと蒸留水との7:3混合物に浸漬させ、ろ過した後、80℃の真空オーブンにて24時間乾燥して、メトキシ基を含むスルホン化ポリ(アリーレンエーテルスルホン)ランダム共重合体(SPAES−Me)を合成した。共重合体のスルホン化度は40%でる。
【0069】
[5−2.メトキシ基を含むスルホン化共重合体(SPAES−Me)のスルホン酸基をスルホニルクロリド基に置換]
50mlの二ツ口フラスコを用いて、前記5−1.で合成されたメトキシ基を含むスルホン化共重合体(SPAES−Me)2.0g、チオニルクロリド20mlをアルゴンガスの雰囲気でいれる。反応器に触媒であるN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)4mlを入れ、反応器の温度を60℃にして4時間反応させる。次いで、反応器の温度を95℃に上げ、80%以上のチオニルクロリドを溶媒抽出する。反応器に残留した共重合体溶液は、室温まで温度を下げた後、テトラヒドロフラン(THF)20mlを入れて希共重合体溶液にし、イソプロピルアルコールに浸漬させる。ろ過後、60℃の真空オーブンにて24時間乾燥して、スルホニルクロリド基を有するメトキシ基を含む共重合体(BPSCl−Me)を製造した。
【0070】
[5−3.メトキシ基をヒドロキシ基に置換]
50mlの三ツ口フラスコを用いて、アルゴンガスの雰囲気下、前記5−2.で製造されたスルホニルクロリド基を有するメトキシ基を含む共重合体(BPSCl−Me)1.0gとジクロロメタン(DCM)溶媒40mlを入れる。反応器を冷却槽(coolingbath)に浸し、反応器の外部温度が0℃になるようにした状態で、注射器を利用して1.0MのBBr溶液7mlを滴下する。BBr溶液の滴下完了後、6時間反応させて脱メチル化させ、浸漬過程を経ることなくろ過し蒸留水で数回洗浄する。次いで、100℃の沸いている水で24時間撹拌して残留BBrを除去し且つスルホニルクロリド基を加水分解してスルホン酸基に還元させる。ろ過後、60℃の真空オーブンにて24時間乾燥して、ヒドロキシ基を有するスルホン化共重合体を製造した。製造された共重合体のスルホン化度は40%、水酸化度は40%である。
(反応式3)
【0071】
<実施例1〜3.ポリマーブレンド電解質膜の製造>
前記製造例1〜5で製造された共重合体を用いてポリマーブレンド電解質膜を製造した。
【0072】
前記製造例1〜5の共重合体のそれぞれをジメチルアセチルアミド(DMAc)溶媒にて室温で溶かした後、下記表2で表す組成で混合して高分子溶液を製造した。高分子溶液をガラス板の上にキャスティングし、60℃のオーブンにて24時間乾燥した後、さらに80℃のオーブンにて4時間乾燥し、120℃の真空オーブンにて24時間乾燥して、厚さ約50μmの膜を製造した。乾燥された膜を蒸留水に含浸して残留溶媒を除去し、ガラス板から引き剥がし、水で処理した後、1Mの硫酸溶液で2時間かけて80℃で沸かした後、蒸留水で2時間かけて80℃で沸かして、水素イオンの形態に転換させた。
【0073】
【表2】
【0074】
<比較例1〜6.電解質膜の製造>
高分子溶液の組成を下記表3で表すように変更したことを除いては、実施例と同法により比較例の電解質膜を製造した。
【0075】
【表3】
【0076】
<試験例1.外観の評価>
TEM(JEOL、200kv)測定のために、前記実施例及び比較例の電解質膜をエポキシでモールディング後、断面を約50nmに切片し、リード(lead)イオンで染色してTEM測定した。TEM写真は、TecnaiG2 gun形態の装備を200kVの加速電圧で作動させて得た。結果写真を図1に示した。図1中、NR212はナフィオン膜のTEM写真である。
【0077】
図1の結果において、Nafion 212の膜の場合、4〜5nmのハイドロフィリック(hydrophilic)ドメインが互いに連結された相分離されたモホロジーを示した。このような微細な相分離構造を示して始めて優れた水素イオン伝導度、特に低加湿条件で優れた水素イオン伝導度を示すことができる。比較例2(BPS60)の電解質膜の場合、スルホン化度が60%と高いにも関わらず、ランダム共重合体のために明確に相分離されたモホロジーを示さない。
【0078】
実施例3(60−811)の場合、約1μmの直径を有する大きなハイドロフィリックドメイン中に約50〜80nmの小さなハイドロフィリックドメインが点状でさらに相分離されたモホロジーを示した。このように小さくハイドロフィリックとハイドロフォビック領域が相分離されたモホロジーは、一般的なスルホン化ブロック高分子に見られるモホロジー形態であり、これは、低加湿で高い水素イオン伝導度を示すことができる。
【0079】
比較例3(60−820)の場合、約2〜3μmの直径を有するハイドロフィリックドメインを示し、比較例5(60−910)の場合には約0.5〜1μmの直径を有するハイドロフィリックドメインを示した。ヒドロキシ基を有する共重合体を含まない比較例2、6(60−802、60−901)は、比較例3、5に比べて、相分離領域の体積が小さく示される。
【0080】
<試験例2.寸法安定性の評価>
3mm角大きさの実施例及び比較例の電解質膜を3×3 80℃で24時間乾燥させ、乾燥された状態の重さ(m)と長さ(l)を測定する。膜の長さは、四角形の4辺の長さを測定しその平均値を用いた。電解質膜をそれぞれ30℃、65℃、及び90℃温度の水に平衡状態をなすまで浸漬した後、濡れた状態の膜の重さ(m)と長さ(l)を測定する。含水率(WU)と寸法変化率は、下記の式1及び2によって計算し、結果を図2A図2B、および図3A図3Cに示した。
【0081】
(式1)
含水率(WU、%)=(m−m)/m×100
(式2)
寸法変化率(%)=(l−l)/l×100
図2A図2B、および図3A図3Cの結果において、比較例2(BPS60)は、65℃の水和状態で304%を越える含水率と210%の寸法変化率を示す。これは、スルホン化度が高いことから親水性が過度に高くなるためであると見られる。
【0082】
これに対し、実施例3(60−811)の電解質膜の場合、高いスルホン化度(60%)を保持しながらも、比較例2に比べ、約70%以上の顕著に低減した含水率を示す。
【0083】
<試験例3.引張強度及び延伸率の評価>
前記実施例及び比較例の電解質膜を用いて引張強度(MPa)及び延伸率(%)を、国際標準化ISO37−4に従い、25℃、湿度20%RHで万能試験機(Shimazu、AGS−500NJ)により測定し、結果を図4に示した。図4の結果において、実施例3(60−811)の電解質膜は、比較例2に比べて顕著に増加した引張強度及び延伸率を示す。比較例4(60−802)の場合、引張強度及び延伸率が低く、且つ、前記試験例1におけるTEM結果を示した図1から分かるように、相分離領域の周囲で膜が破れていることが確認でき、物理的強度が低いことが分かる。
【0084】
<実施例4〜6及び比較例7〜11.膜−電極接合体の製造>
膜−電極接合体(Membraneelectrode assembly、MEA)は、スプレー法を用いてCCM(carbon coated membrane)方法ににより製造された。スプレー法に用いられる触媒スラリーは、45wt% Pt/C(BASF fuel cells、Sommerset、NJ、USA)と5重量%のナフィオン分散溶液(DE 521、DuPont、Wilmington、DE、USA)とを、イソプロパノール(IPA)と水との混合物に分散させて製造した。製造された触媒スラリーを、スプレー装置を利用して下記の表4で表すように、それぞれ実施例1〜3及び比較例3〜6で製造した電解質膜及びナフィオン膜の上に直接コーティングした。最終コーティングされた白金触媒の量は、正極と負極のそれぞれ0.4mg/cmである。製造された膜−電極接合体は、60℃のオーブンで約1時間乾燥した。
【0085】
【表4】
【0086】
<試験例4.単位電池性能の評価>
単位電池の実験は、温度65℃及び相対湿度95%RHの高湿条件、90℃及び相対湿度35%RHの高温低湿条件で水素と空気ガスを用いて実施した。各水素と空気は化学量論(stoichiometric)比により、それぞれ1.5:2.0の割合で注入した。単位電池は活性化(activation)過程を経て、分極曲線(polarization curve)を確認して単位電池性能を評価した。結果を図5図7に示した。
【0087】
図5及び図6の結果において、65℃及び相対湿度95%RHの高湿条件で実施例4(40−622)、実施例5(50−721)は、顕著に優れた単位電池性能を示し、特に実施例6(60−811)は、0.6Vにて電流密度約1039mA/cmと、ナフィオン膜を用いた比較例7(NR−212)の約831mA/cmよりも高い単位電池性能を示した。これに対し、ヒドロキシ基を有するスルホン化共重合体を含んでいない電解質膜を用いた比較例8及び10の場合は、顕著に低い単位電池性能を示した。比較例8及び10の場合、電解質膜のポリマーブレンド中のヒドロキシ基を有する共重合体のヒドロキシ基がスルホン化共重合体のスルホン酸基と水素結合して水素イオン伝達機能を果たし得るスルホン酸基の数が顕著に減少するためであると考えられる。
【0088】
図7の結果において、90℃及び相対湿度35%RHの高温低湿条件でも実施例6(60−811)は、比較例7よりも高い性能を示すことが分かる。本願実施例に係る電解質膜は、大きなハイドロフィリックドメイン内にさらに小さいハイドロフィリックドメインに相分離されたモホロジーを示すので、低加湿でもこのように優れた電池性能を示すことができると考えられる。
【0089】
<試験例5.長期安定性の評価>
前記実施例4〜6の膜−電極接合体を用いて、下記のような物理的物性性能の低下及び化学的性能の低下を同時に評価する長期安定性評価を行った。具体的に、負極及び正極にそれぞれH及び空気を入れ、開回路電圧(OCV)で1分、無加湿条件、0.6V、1分、95%RH条件、0.4V、1分、95%RH条件の全3分の周期(cycling)テストを行い、その結果を図8に示した。
【0090】
図8の結果において、OCV性能低下0.9Vを基準にして、実施例4(40−622)はOCV性能低下0.9V基準に、約6500cyclesの最高長期安定性を示し、実施例5(50−721)は約1800cycles、実施例6(60−811)のブレンド膜は約500cyclesの長期安定性を示した。
【0091】
本発明の単なる変形乃至変更は、当該分野の通常の知識を有する者によって容易に実施でき、このような変形や変更はいずれも本発明の請求の範囲に含まれるものと見るべきである。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6
図7
図8