(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-170338(P2017-170338A)
(43)【公開日】2017年9月28日
(54)【発明の名称】塗装用工具及び塗装方法
(51)【国際特許分類】
B05B 7/26 20060101AFI20170901BHJP
B05D 5/06 20060101ALI20170901BHJP
B05D 1/02 20060101ALI20170901BHJP
【FI】
B05B7/26
B05D5/06 Z
B05D1/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-58985(P2016-58985)
(22)【出願日】2016年3月23日
(71)【出願人】
【識別番号】303046244
【氏名又は名称】旭化成ホームズ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000224123
【氏名又は名称】藤倉化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 靖之
(72)【発明者】
【氏名】梅崎 直人
【テーマコード(参考)】
4D075
4F033
【Fターム(参考)】
4D075AA02
4D075AA31
4D075AA81
4D075AA85
4D075CA47
4D075CA48
4D075CB36
4D075DA06
4D075DA27
4D075DC01
4D075EA05
4D075EC11
4F033QA01
4F033QB03X
4F033QB12Y
4F033QB18
4F033QD02
4F033QD18
4F033QD20
4F033QF08Y
(57)【要約】
【課題】コンプレッサーを備えた吹付けガンを使用することなく、吹付けガンを使用した場合と同等の多彩柄の塗膜模様を形成可能とした、軽量でコンパクトな塗装用工具、及び当該塗装用工具を用いた塗装方法を提供する。
【解決手段】塗料を収容する容器部2と、容器部2の下方に設けられるとともに内部が前記容器部の内部に連通する筒状の本体部3と、本体部3の前方開口3bに設けられた、噴出口4aを有するノズル4と、本体部3の後方開口3cに設けられた手押し式ポンプ5と、手押し式ポンプ5の前方に設けられ、本体部3の内側に延在する空気ノズル6と、を備え、空気ノズル6の先端開口6aが、ノズル4の内側かつ噴出口4aの近傍に配置され、容器部2から本体部3に流入した塗料を、手押し式ポンプ5の駆動により空気ノズル6の先端開口6aから排出した空気とともに、噴出口4aから噴出させることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗料を収容する容器部と、
前記容器部の下方に設けられるとともに内部が前記容器部の内部に連通する筒状の本体部と、
前記本体部の前方開口に設けられ噴出口を有するノズルと、
前記本体部の後方開口に設けられた手押し式ポンプと、
前記手押し式ポンプの前方に設けられ、前記本体部の内側に延在する空気ノズルと、を備え、
前記空気ノズルの先端開口が、前記ノズルの内側かつ前記噴出口の近傍に配置され、
前記容器部から前記本体部に流入した塗料を、前記手押し式ポンプの駆動により前記空気ノズルの先端開口から排出した空気とともに、前記噴出口から噴出させることを特徴とする、塗装用工具。
【請求項2】
前記噴出口の内径が3mm〜6mmである、請求項1に記載の塗装用工具。
【請求項3】
前記噴出口の中心は、前記空気ノズルの中心軸線の延長線上に位置している、請求項1または2に記載の塗装用工具。
【請求項4】
前記噴出口と前記空気ノズルの先端開口との間の、前記空気ノズルの中心軸線に沿う方向の距離が5mm〜20mmである、請求項1〜3の何れか1項に記載の塗装用工具。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか一項に記載の塗装用工具を用いて、被塗装面に多彩柄塗料を吹付ける塗装方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多彩柄塗料を噴出して、被塗装面に多彩色の塗膜模様を形成するための塗装用工具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、建築物の外壁には、意匠性の付与や外壁の劣化防止等を目的として塗装仕上げが行われている。このような塗装仕上げにおいて、複数色の粒子が混在した多彩柄(多彩色)の塗料を用いて、各粒子が複雑に入り組んだ模様の塗膜(塗膜模様)を形成することにより、意匠性の高い塗装仕上げを行うことが可能となる。
【0003】
多彩柄塗料を被塗装面に塗布する方法としては、ローラーや刷毛といった工具を用いる方法の他に、吹付けガンを用いる方法が知られている(特許文献1参照)。吹付けガンは、塗料を収容する容器部と、容器部の下方に設けられて先端が噴出口となるガン部を有し、ガン部はホース(空気導管)を介してコンプレッサーに接続されている。そしてガン部の内部には、空気ノズルの先端のノズル孔が噴出口の近傍に配置され、コンプレッサーから圧送される高圧空気を当該ノズル孔から排出することによって、噴出口から塗料を噴出させる。このような吹付けガンを使用した場合、コンプレッサーからの高圧空気によって、塗料を広い範囲に均一に噴出させることができるため、大きな面積の被塗装面を塗装するのに適しており、形成される塗膜模様にもばらつきが生じ難いという利点がある。
【0004】
ところで、塗装仕上げ後に、塗装の吹き残しやムラが見つかったり、形成された塗膜表面に衝撃や摩擦等が加わり塗膜に欠損や剥離が生じたりした場合には、部分的に塗膜の補修が必要となることがある。このような塗膜の補修を目的として、特に小面積の塗装を行う場合には、吹付けガンを用いて大がかりな塗装作業を行うことは非効率的である。また、吹付けガンに用いるコンプレッサーは工具としては比較的重く大型であるため、補修時等に再度用意するのは作業者にとって面倒である。さらに、コンプレッサーの使用は騒音や排気の発生を伴うため、周辺環境への悪影響も生じる。このため、小面積の塗膜の補修においては、コンプレッサーを使用しない簡易な方法での塗装作業が望まれていた。
【0005】
コンプレッサーを使用せずに、すなわち吹付けガンによらずに塗装を行う方法として、刷毛を用いて塗料を塗布することも可能であるが、刷毛を用いる場合には塗装ムラが生じ易く、均一な厚さに塗布することは困難である。また、刷毛を用いた場合は、着色された粒子が伸びたり、方向性が出たりするため、周囲の塗装部の外観と差異が生じやすいといった問題がある。
【0006】
また、吹付けガンを使用せずに補修する方法としては、補修用としてあらかじめ塗膜をフィルム状に形成したものを接着剤によって貼付ける方法がある(特許文献2参照)。しかしながら、この場合には、凹凸のある被塗装面にフィルムが追従し難く、剥がれたり、浮いたりするなどの不具合が発生する虞がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平5−177165号公報
【特許文献2】特許第3992316号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
それゆえ本発明は、コンプレッサーを備えた吹付けガンを使用することなく、吹付けガンを使用した場合と同等の多彩柄の塗膜模様を形成可能とした、軽量でコンパクトな塗装用工具、及び当該塗装用工具を用いた塗装方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、本発明の塗装用工具は、塗料を収容する容器部と、
前記容器部の下方に設けられるとともに内部が前記容器部の内部に連通する筒状の本体部と、
前記本体部の前方開口に設けられた噴出口を有するノズルと、
前記本体部の後方開口に設けられた手押し式ポンプと、
前記手押し式ポンプの前方に設けられ、前記本体部の内側に延在する空気ノズルと、を備え、
前記空気ノズルの先端開口が、前記ノズルの内側かつ前記噴出口の近傍に配置され、
前記容器部から前記本体部に流入した塗料を、前記手押し式ポンプの駆動により前記空気ノズルの先端開口から排出した空気とともに、前記噴出口から噴出させることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の塗装用工具にあっては、前記噴出口の内径が3mm〜6mmであることが好ましい。
【0011】
また、本発明の塗装用工具にあっては、前記噴出口の中心は、前記空気ノズルの中心軸線の延長線上に位置していることが好ましい。
【0012】
また、本発明の塗装用工具にあっては、前記噴出口と前記空気ノズルの先端開口との間の、前記空気ノズルの中心軸線に沿う方向の距離が5mm〜20mmであることが好ましい。
【0013】
また、本発明の塗装方法は、上記塗装用工具を用いて、被塗装面に多彩柄塗料を吹付ける塗装方法である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、コンプレッサーを備えた吹付けガンを使用することなく、吹付けガンを使用した場合と同等の多彩柄の塗膜模様を形成可能とした、軽量でコンパクトな塗装用工具、及び当該塗装用工具を用いた塗装方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係る塗装用工具の一実施形態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ、本発明に係る塗装用工具の一実施形態について詳細に説明する。
図1に示すように、本実施形態の塗装用工具1は、多彩柄塗料を収容する容器部2と、容器部2の下方に設けられた筒状の本体部3と、本体部3の前方に設けたノズル4と、本体部3の後方に設けた手押し式ポンプ5と、手押し式ポンプ5の前方に設けられた空気ノズル(エア芯)6とを備える。
【0017】
容器部2は、円筒状の筒壁部10と、筒壁部10の下端に連結し、下方に向けて縮径する縮径部11とを有し、縮径部11の下部が本体部3の外周面に接続されている。容器部2の内部は、本体部3に連通しており、上端開口2aから容器部2内に注入された塗料は、重力によって本体部3の内部に流入する構成とされている。
【0018】
本実施形態において本体部3は、前方及び後方に開口を有する円筒状に形成され、外周面に設けた連通孔3aを介して容器部2に内部が連通している。また、連通孔3aを取り囲むように容器部2の縮径部11が、本体部3の外周面に対して配置されている。ここで、容器部2、本体部3は、例えば上下水道等の配管に用いられる塩化ビニル管を加工して形成することができるが、これに限定されるものではない。また、容器部2、本体部3、ノズル4、手押し式ポンプ5等、各部材の接続方法は特に限定されるものではなく、接着、溶着、ボルト締め、ねじ係合、つめ係合等により接続することができる。また、各部材の接続部分には、液漏れの防止等を目的として封止部材を設けることも可能である。
【0019】
ノズル4は、本体部3の前方開口3bに設けられており、前方の端部には噴出口4aが形成されている。ノズル4は、フランジ4bを有する後端部から噴出口4aに向けて徐々に縮径する略円錐台形状とされている。噴出口4aの内径は、多彩柄塗料の種類等に応じて適宜設定することができ、内径を小さくするほど、塗料の噴出圧力、噴出速度が大きくなる。具体的には、噴出口4aの内径は3mm〜6mmの範囲内とすることが好ましい。ノズル4は、例えば、吹付けガンに使用される金属製のノズルと同種のものを使用することができるが、これに限定されるものではない。なお、本実施形態においてノズル4は、フランジ4bの前方側で、本体部3の前方開口3b内面に圧入された筒状の抜け止め部材12によって本体部3から抜けないように保持されている。
【0020】
手押し式ポンプ5は、円筒状のシリンダ13と、シリンダ13の内面に摺動する円板状のピストン14と、ピストン14に連結されたピストンロッド15とを備える。ピストンロッド15の後端には把持部16が設けられている。シリンダ13の前方端部は、本体部の後方開口3cに挿入されている。
【0021】
空気ノズル6は、シリンダ13の前端に接続されており、ピストン14によって押し出されたシリンダ13内の空気が空気ノズル6内を通過し、先端開口6aから排出されるよう構成されている。空気ノズル6は本体部3の内側に延在し、空気ノズル6の先端開口6aはノズル4の内側かつ噴出口4aの近傍に配置されている。また、空気ノズル6は、本体部3と中心軸線が一致するように配置される。本実施形態においてノズル4の噴出口4aの中心は、空気ノズル6の中心軸線の延長線上に位置している。
【0022】
噴出口4aと空気ノズル6の先端開口6aとの間の、空気ノズル6の中心軸線に沿う方向の距離Dは、多彩柄塗料の種類等に応じて適宜設定することができるが、具体的には、5mm〜20mmとすることが好ましい。また、空気ノズル6の先端開口6aの内径も同様に多彩柄塗料の種類等に応じて適宜設定することができ、具体的には、1.5mm〜3.5mmとすることが好ましい。また、空気ノズル6の先端開口6aは、本体部3の前方開口3bの面よりも前方に位置している。
【0023】
手押し式ポンプ5は、シリンダ13内でピストン14を前後に摺動させることにより駆動する。ピストン14の往動時、すなわち把持部16を空気ノズル6側へ押し込むことによりピストン14を前方側に摺動させた際には、シリンダ13内の空気が空気ノズル6の先端開口6aから排出され、ピストン14の復動時、すなわちピストン14を後方側へ引き戻した際には、減圧作用によりシリンダ13内に外気が吸入される。
【0024】
上記構成を有する塗装用工具1を用いて、被塗装面に多彩柄塗料を吹付ける際には、先ず、容器部2の上端開口2aから多彩柄塗料を注入する。容器部2に収容された多彩柄塗料は、重力の働きによって連通孔3aを介して本体部3内に流入する。この状態で手押し式ポンプ5を駆動させ、空気ノズル6の先端開口6aから空気を排出することで、多彩柄塗料を空気と共に噴出口4aから噴出させることができる。
【0025】
以上のように、本実施形態の塗装用工具1にあっては、コンプレッサーを伴う吹付けガンに比べて軽量でコンパクトであるため、持ち運びが容易である。そのため、狭い場所や、足場の上などの高所での作業においても、手軽に塗装作業を行うことができる。また、手押し式ポンプ5は手動操作で駆動するため電力も不要であり、コンプレッサーを用いる場合のような騒音や排気の発生の虞もない。よって、例えば、ALCパネル等の建物の外壁に対して、吹付けガンにより全体の塗装仕上げを行った後、塗膜が欠損、剥離し部分的な補修が必要となった場合等において、本実施形態の塗装用工具1を用いることで、コンプレッサーを伴う吹付けガンを再度使用することなく、手軽に補修作業を行うことができる。
【0026】
また、同じ吹付けによる工法のため、刷毛を用いた場合のように、着色された粒子が伸びたり、方向性が出たりする不具合がなく、周囲の塗装部の外観と差異が生じにくい。すなわち、本実施形態の塗装用工具1によれば、コンプレッサーを備えた吹付けガンを用いることなく、吹付けガンを使用した場合と同等の塗膜模様を形成することができる。よって、建物の外壁に対して、吹付けガンにより全体の塗装仕上げを行った後で、塗膜の部分的な補修を行う場合に、補修個所と周囲の塗膜模様に差異が生じ難く、意匠性を損なわずに補修することができる。さらに、刷毛を用いる場合に比べてムラになり難く、均一な厚さの塗膜を形成し易くなる。
【0027】
なお、本実施形態のノズル4に関して、ノズル4の噴出口4aの内径は、使用する塗料の種類や手押し式ポンプ5の出力性能に応じて適宜設定することができるが、具体的には、1mm〜6mmの範囲内とすることが好ましい。なお、本実施形態の手押し式ポンプ5によって供給される空気の出力は、コンプレッサーからの高圧空気に比べて小さくなり易いため、同径の噴出口を有するノズルでは、塗料の噴出速度が低下し易い。したがって、噴出口4aの内径を、コンプレッサーを使用する吹付けガンのノズルの内径よりも僅かに小さく設定することで、吹付けガンと同等の塗膜模様を形成し易くなる。具体的には、噴出口4aの内径を、吹付けガンに用いるノズルの噴出口の内径よりも0.5mm〜1.0mm程度小さい内径に設定することが好ましい。
【0028】
また、容器部2、本体部3、ノズル4、手押し式ポンプ5等の各部材は、着脱自在な構成とすることが好ましく、これにより、塗装後の洗浄や片づけ作業が容易となる。また、ノズル4を本体部3に対して着脱自在な構成とすることにより、塗料の種類に応じて適切な内径の噴出口4aを有するノズル4を使用することができ、意図した塗膜模様を形成し易くなる。
【符号の説明】
【0029】
1 塗装用工具
2 容器部
2a 上端開口
3 本体部
3a 連通孔
3b 前方開口
3c 後方開口
4 ノズル
4a 噴出口
4b フランジ
5 手押し式ポンプ
6 空気ノズル
6a 先端開口
10 筒壁部
11 縮径部
12 抜け止め部材
13 シリンダ
14 ピストン
15 ピストンロッド
16 把持部