【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的のために、本発明は、外周部を有する開口部を介して開口する穴を有する容器を取り扱うことが可能な取扱用アセンブリを提案し、取扱用アセンブリは、吸引カップと負圧伝達手段とを備え、吸引カップは、
負圧伝達手段と少なくとも部分的に接触するための第1表面部と、
容器の穴における開口部の外周部と少なくとも部分的に接触するようになっている接触部を有する第2表面部と、
吸引カップを負圧伝達手段に組み付けるようになっている第1組付手段と、
吸引カップの第1表面部と吸引カップの第2表面部との間の複数の貫通流路であって、それぞれが、
吸引カップの第1表面部上に開口し、負圧伝達手段のダクト部と流体連通するようになっている第1開口部、及び、
接触部上に開口する第2開口部
を有する貫通流路と、
吸引カップの第2表面部上の突出部であって、
接触部に対して突出し、
接触部によって少なくとも部分的に包囲され、また
容器の穴を閉鎖するようになっている
突出部と
を有し、
負圧伝達手段は、
真空調整システムと少なくとも部分的に接触するための第1表面部と、
吸引カップと少なくとも部分的に接触するための第2表面部と、
負圧伝達手段を吸引カップに組み付けるようになっている第2組付手段と、
ダクト部であって、
第1表面部上に開口することで真空調整システムと流体連通する第1開口部、及び
第2表面部上に開口することで吸引カップの流路と流体連通する第2開口部
を有するダクト部と
を有し、
吸引カップと負圧伝達手段とは、吸引カップの流路の第1開口部が負圧伝達手段のダクト部の第2開口部と流体連通するように、吸引カップの第1組付手段と負圧伝達手段の第2組付手段とによって気密にシールされた態様で組み付けられる。
【0008】
本発明に係る吸引カップは、流路が真空調整システムと流体連通するように設計される。突出部が容器の穴を閉鎖するように容器の穴の開口部の外周部上に流路の2つの開口部を位置付けて、流路内に真空を作り出すことで、穴の開口部の外周部が吸引カップの接触部上で大気圧により維持される。これによって、穴の開口部の外周部と接触部との間の接合の防漏密閉が確実になり、突出部によって容器の穴が閉鎖されることが保証される。こうして、吸引カップを介して容器を取り扱うことができる。
【0009】
複数の容器が複数の吸引カップを備えるシステムによって取り扱われる場合に、各吸引カップが1つの容器に対応していると、初めは箱の中に存在する容器が互いのそれぞれの位置に留まり、互いにぶつかり合うという虞が無くなる。
【0010】
更に、吸引カップは、容器を解放せずに、どの方向にも、少なくとも僅かな程度に傾くことができる。
【0011】
突出部が容器の穴を閉鎖すると、容器の穴内に収容された液体に、吸引カップの流路によって生じる真空が生じないようにできる。
【0012】
吸引カップは、多数の容器を備える箱の中央から1つの容器を取り出すこと、又は各吸引カップが1つの容器に対応し、箱の容器を列ごとに取り出すことを可能にする。
【0013】
本発明に係る吸引カップは、例えば王冠状又はリング状の吸引カップとすることができる。
【0014】
この文書の範囲内で、「容器」は、例えばシリンジ、ビーカ、フラスコ、ボトル又は試験管とすることができる。容器の穴は、好ましくは、吸引カップの突出部によって塞ぐことができる1つの開口部のみを有する。
【0015】
この文書の範囲内で、容器の穴の開口部の「外周部」は、鍔、穴の開口部の縁部、又はネックを含むことができる。容器の穴は「容器のキャビティ」と呼ぶこともできる。
【0016】
この文書の範囲内で、要素間の「流体連通」は直接的に行うこともでき、または間接的に、すなわち他の要素を介して行うことができる。これは、好ましくは密閉され、すなわち、小さな漏れを容認することはできるが、流体連通している要素間の流体の吸入又は排出は無い。流体連通はガスの送給を可能にするため、ガス圧が送給され、したがってガスを吸引することで真空の送給を可能にする。
【0017】
この文書の範囲内で、「真空調整システム」は、真空の形成を可能にする、すなわち、ガスの吸引を可能にする任意のシステム、装置又は一連の要素である。これは、本明細書で説明するように、例えばトレイを含むことができる。また、真空ポンプを含むこともできる。
【0018】
吸引カップの第1表面部は、好ましくは、吸引カップの第1端部を備える。吸引カップの第2表面部は、好ましくは、第1端部と反対側の、吸引カップの第2端部を備える。
【0019】
本発明に係る負圧伝達手段は、吸引カップと真空調整システムとの間に作られる接合を可能にする。吸引カップが、好ましくは可撓性材料から作られると、好ましくは吸引カップの材料よりも高剛性の材料から作られる負圧伝達手段が、吸引カップを、真空調整システム、特に真空調整システムの一部を形成するトレイに簡単に固定することを可能にする。
【0020】
更に、多数の吸引カップを真空調整システムに固定するように、各吸引カップは、例えば吸引カップが可撓性材料から作られている場合には連結させることによって、負圧伝達手段に簡単に固定することができ、圧力伝達手段は、例えばねじ留めすることによって、真空調整システムに簡単に固定することができる。
【0021】
負圧伝達手段は、必要に応じて、「圧力伝達手段」、「吸引伝達手段」、「ガス伝達手段」、「流体接続手段」、又は「真空伝達手段」と呼ぶこともできる。
【0022】
負圧伝達手段の第1表面部は、好ましくは、負圧伝達手段の第1端部を備える。負圧伝達手段の第2表面部は、好ましくは、第1端部と反対側の、負圧伝達手段の第2端部を備える。
【0023】
好ましくは、取扱用アセンブリにおいて、吸引カップの第1表面部は、負圧伝達手段の第2表面部と接触する。
【0024】
負圧伝達手段と吸引カップとの耐密に密閉された組み付けは、真空調整システムによって形成された負圧が、負圧伝達手段のダクト部及び吸引カップの流路を通り、容器の外周部を吸引することを可能にする、吸引カップの第2表面部の接触部まで伝播されることを可能にする。
【0025】
本発明に係る吸引カップは、好ましくは可撓性材料から作られる。例えば、吸引カップは、1〜1000MPA、好ましくは1〜100MPAのヤング率を有する材料から作ることができる。この可撓性によって、吸引カップが負圧伝達手段の形状に合い、容器と負圧伝達手段との間の接続を耐密に密閉することを可能にする。この可撓性は、更に、吸引カップが負圧伝達手段の一部を受容するように変形することを可能にする。
【0026】
有利には、負圧伝達手段は、吸引カップの材料よりも高剛性の材料から作られる。
【0027】
好ましくは、吸引カップは、少なくとも部分的にシリコーンを備える材料から作られる。好ましくは、吸引カップは、全てシリコーンから作られる。
【0028】
シリコーンは、吸引カップが穴の開口部の外周部に最適に押し付けられるように真空が生じたときに、吸引カップの僅かな変形を可能にする適切な剛性を有する。更に、殺菌することができる。
【0029】
本発明の一実施例において、吸引カップは一体に作られる。
【0030】
これによって、吸引カップの製造が簡素化される。また、吸引カップが特に強固になる。
【0031】
本発明の一実施例において、負圧伝達手段は一体に作られる。
【0032】
これによって、負圧伝達手段の製造が簡素化される。また、負圧伝達手段が特に強固になる。
【0033】
有利には、接触部は、凹部内に含まれており、この凹部は、
− 容器の穴の開口部の外周部の少なくとも一部を受容するようになっており、また
− その内部に流路の第2開口部が開口する。
【0034】
凹部は、穴の開口部の外周部を接触部に対して簡単に位置付けることを可能にし、したがって穴を突出部に対して簡単に位置付けることを可能にする。更に、容器の穴の開口部の外周部と吸引カップの接触部との間のグリップが良好になる。
【0035】
本発明の一実施例において、第1組付手段は、流路の第1開口部を、負圧伝達手段のダクト部と流体連通させるようになっている吸引カップの窪み(hollow)を備え、この窪みは、
− 負圧伝達手段の狭部を受容するようになっている狭部と、
− 広部と
を有し、広部は、
負圧伝達手段の広部を受容するようになっており、
窪みの狭部よりも流路に近接しており、また
負圧伝達手段の広部を塞ぐ(ブロックする)ことが可能になるように、窪みの狭部の断面積よりも大きな断面積を有している。
【0036】
このような組付手段は、簡単に取り外すことができる、簡単且つ迅速で確実な組み付けを可能にする。この文書の範囲内で、例えば窪みといった要素の「断面」は、吸引カップと負圧伝達手段とが互いの上部で鉛直方向に組み付けられる場合における水平面に沿った断面である。
【0037】
本発明の一実施例において、第2組付手段は、
− 吸引カップの窪みの狭部内に受容されるようになっている狭部と、
− 広部と
を有し、この広部は、
吸引カップの窪みの広部内に受容されるようになっており、
負圧伝達手段の狭部よりもダクト部の第2開口部に近接しており、また
負圧伝達手段の狭部の断面積よりも大きな断面積を有している。
【0038】
このような組付手段は、簡単に取り外すことができる、簡単且つ迅速で確実な組み付けを可能にする。
【0039】
好ましくは、負圧伝達手段は、吸引カップの第2表面部上に位置する突出部を保持するようになっている支持部を更に備え、支持部は、ダクト部の第2開口部を、吸引カップの流路と流体連通するようになっている周線と流体連通させる分配線によって分離されている。
【0040】
支持部は、圧力差による吸引カップの変形を防止するため、容器の穴が突出部によって閉鎖されることが防止され、且つ/又は穴の開口部の外周部の第2流路開口部が分離され、それによって容器が解放される。
【0041】
好ましくは、取扱用アセンブリは、負圧伝達手段に組み付けられた吸気保護装置を更に備える。
【0042】
複数の取扱用アセンブリが同じ真空調整システムに接続され、複数の容器が平行に把持される場合、取扱用アセンブリは、容器の穴における開口部の外周部に対して不正確に位置付けられたり、容器を紛失したりすることがある。これによって、真空調整システムは、対応する取扱用アセンブリの吸引カップの流路を介して周囲空気を吸引し、負圧を損失させることがある。吸気保護装置は、周辺空気に開口するこうした流路からの流体の通過を軽減する。これによって、このような状況における負圧の損失が軽減する。
【0043】
第2の観点によれば、本発明は、取扱用アセンブリを保持し、圧力を送給するためのトレイを提案し、トレイは、
− 第1表面部と、
− 取扱用アセンブリと少なくとも部分的に接触するための接触部を有する第2表面部と、
− 第1表面部と第2表面部との間に位置する真空チャンバと、
− 第1表面部上及び真空チャンバ内に開口し、真空チャンバを真空ポンプと流体連通させる吸気口と、
− それぞれが、一方で真空チャンバ内に開口し、他方で接触部上に開口することで、取扱用アセンブリと流体連通する複数の流路と、
− 取扱用アセンブリを接触部上に固定するための手段と
を備える。
【0044】
トレイは、取扱用アセンブリを介して、多数の容器を一回の動作で平行に取り扱うことを可能にする。
【0045】
好ましくは、トレイは、吸気口に対向して真空チャンバ内に位置する圧力再分配壁を更に備える。
【0046】
圧力再分配壁は、トレイの吸気口に直に対向して位置するトレイの流路が、トレイの中心部以外よりも強く吸引されるのを防止するように、真空調整システムから発生する、トレイの流路間における吸引の分配を可能にする。
【0047】
好ましい手法において、トレイはポリマー樹脂を備える。
【0048】
これによって、特にトレイの真空チャンバ及び流路といった精密な構造をもつ比較的薄いトレイを形成することを可能にする光造形法を介して、トレイを製造することが可能になる。
【0049】
本発明の一実施例において、取扱用アセンブリを固定するための手段は、ポリマー樹脂内に組み込まれたインサート、好ましくは金属製のインサートを備える。
【0050】
このインサートは、例えばねじ山が付いたダクト部をそれぞれ備え、取扱用アセンブリへの確実性の高い取り付けを実現する。
【0051】
本発明の一実施例において、トレイは、シリンジ用のネストのノッチ内に受容されるようになっている少なくとも1つのフィンを備える。
【0052】
通常、ネストは、手での簡単な取り扱いを可能とするように、少なくとも1つのノッチを有する。特に、ネストは、オフセットした2つのノッチを有することができる。トレイ上の1つ以上のフィンは、ネスト上のトレイを真っ直ぐに配列することで、トレイに固定された取扱用アセンブリを、ネスト内に収容されたシリンジの鍔上に真っ直ぐに配列する。
【0053】
第3の観点によれば、本発明は、容器把持システムを提案し、容器把持システムは、
− 本発明に係るトレイと、
− 吸引カップの流路の第2開口部を、吸引カップの流路、負圧伝達手段のダクト部、及びトレイを介して真空ポンプと流体連通させることができるようにトレイに固定された、本発明に係る取扱用アセンブリと
を備える。
【0054】
容器把持システムは、好ましくは単一の機械(マシン)のみを有する。これによって、2つ以上の機械を必要とする既知の容器把持システムに対して、容積及び費用が削減される。
【0055】
更に、全てのシリンジを平行に把持できるため、ネストからの迅速な取り外し速度が提供される。
【0056】
トレイは、容器把持システムによって取り出される容器を選択するように、トレイの所定の流路を閉鎖する手段を潜在的に含むことができる。
【0057】
興味深いことに、本発明の使用は、ネストから容器を取り外すことに限定されない。実際に、本発明は、例えばブリスターを製造する機械や、シリンジ、フラスコ、ボトル又は試験管を取り扱う任意の機械への装着といった、容器のどのような取り扱いにも使用することができる。
【0058】
本発明の他の特徴及び利点は、添付の図面を参照して与えられた、以下の詳細な説明を読むことでより理解されるであろう。