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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-170703(P2017-170703A)
(43)【公開日】2017年9月28日
(54)【発明の名称】ラッピング化粧板及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 33/00 20060101AFI20170901BHJP
   B27M 1/00 20060101ALI20170901BHJP
   B27M 3/00 20060101ALI20170901BHJP
   B32B 21/08 20060101ALI20170901BHJP
   B29C 63/04 20060101ALI20170901BHJP
【FI】
   B32B33/00
   B27M1/00 D
   B27M3/00 N
   B32B21/08
   B29C63/04
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-57569(P2016-57569)
(22)【出願日】2016年3月22日
(11)【特許番号】特許第6133463号(P6133463)
(45)【特許公報発行日】2017年5月24日
(71)【出願人】
【識別番号】000204985
【氏名又は名称】大建工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩城 克俊
(72)【発明者】
【氏名】神元 俊憲
(72)【発明者】
【氏名】本田 哲
(72)【発明者】
【氏名】笹田 智貴
(72)【発明者】
【氏名】水島 邦具
【テーマコード(参考)】
2B250
4F100
4F211
【Fターム(参考)】
2B250AA05
2B250AA06
2B250CA11
2B250DA04
2B250EA02
2B250EA18
2B250FA02
2B250FA29
2B250GA03
2B250GA06
2B250HA01
4F100AK01B
4F100AP00A
4F100AT00A
4F100BA02
4F100CB00
4F100DB01
4F100DB04
4F100DB16
4F100GB07
4F100GB08
4F100HB00B
4F211AD08
4F211AD25
4F211AG03
4F211AG23
4F211SA01
4F211SC01
4F211SD01
4F211SD18
4F211SH18
4F211SJ26
(57)【要約】
【課題】基材の露出が生じないラッピング精度の高いラッピング化粧板と、そのような構造のラッピング化粧板を容易に製造するための製造方法とを提供する。
【解決手段】矩形板状の基材10と、周縁部23が該基材10の周囲側面10b,10cに位置するように、該基材10に接着一体化されたシート21からなる化粧シート層20とを備えたラッピング化粧板1において、基材10の短辺側面10c,10cのシート21の周縁部23が接着される部分は、それぞれ基材10の表面10aの外縁よりも該基材10の内側に位置する後退面40に構成され、化粧シート層20では、基材10の各角部において該基材10の側面からはみ出したシート21の余剰部分23cが、基材10の後退面40に接着された短辺側面接着部23bに折り重ねられた状態で固定されている。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形板状の基材と、周縁部が該基材の周囲側面に位置するように、該基材の表面及び周囲側面に接着一体化されたシートからなる化粧シート層とを備えたラッピング化粧板であって、
上記基材の互いに対向する一方の側面対の上記シートの周縁部が接着される部分は、それぞれ上記基材の表面の外縁よりも該基材の内側に位置する後退面に構成され、
上記化粧シート層では、上記シートの周縁部であって上記基材の各角部において該基材の側面からはみ出した余剰部分が、上記シートの周縁部であって上記基材の上記後退面に設けられた後退面接着部に折り重ねられた状態で固定されている
ことを特徴とするラッピング化粧板。
【請求項2】
請求項1において、
上記後退面は、上記基材の表面から裏面に向かうほど該基材の内側に位置する傾斜面によって構成されている
ことを特徴とするラッピング化粧板。
【請求項3】
請求項2において、
上記基材の表面の周縁部は、外側に向かうほど裏面側に位置する面取り部に構成され、
上記基材の周囲側面の各辺には、隣接するラッピング化粧板の基材と係合する雌実又は雄実がそれぞれ形成され、
上記傾斜面は、上記基材の表裏方向において、上記面取り部の裏側端部から上記雌実又は雄実の表側端面まで延びている
ことを特徴とするラッピング化粧板。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1つにおいて、
上記基材は、木質材料からなる板状部材によって構成されている
ことを特徴とするラッピング化粧板。
【請求項5】
矩形板状の基材と、周縁部が該基材の周囲側面に位置するように、該基材の表面及び周囲側面に接着一体化されたシートからなる化粧シート層とを備えたラッピング化粧板の製造方法であって、
上記基材の互いに対向する一方の側面対のそれぞれを切り欠いて、該各側面の上記シートの周縁部が接着される部分が、上記基材の表面の外縁よりも該基材の内側に位置する後退面となるように加工する切り欠き工程と、
上記基材の表面よりも大きい上記シートを、周縁部が上記基材の周囲側面に位置するように折り曲げて上記基材の表面と周囲側面とに接着するシート接着工程と、
上記シート接着工程において、上記シートの周縁部であって上記基材の各角部において該基材の側面からはみ出した余剰部分を、上記シートの周縁部であって上記後退面に設けられた後退面接着部に折り重ねて接着する余剰部分処理工程とを備えている
ことを特徴とするラッピング化粧板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の床材や壁材等に用いられる板状の基材の表面がシートでラッピングされたラッピング化粧板及びその製造方法に関し、特に、ラッピング精度を向上させる技術に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のラッピング化粧板として、例えば、特許文献1,2に示すように、基材の表面からはみ出す大きさのシートで、基材の表面と周囲側面とを一体的にラッピングしたものがある。これらのラッピング化粧板では、シートを折り曲げながら基材の表面と周囲側面とに接着し、基材の4つの角部において基材の側面からはみ出した余剰部分を切除することによって基材の表面と周囲側面とをシートで一体的にラッピングしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−20305号公報
【特許文献2】特開2015−20306号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記ラッピング化粧板では、余剰部分を切除するため、その加工精度が悪いと、切除部分に隙間ができて基材が露出するおそれがあった。また、精度良く余剰部分を切除するのは容易ではなく、ラッピング化粧板を容易に製造することができなかった。
【0005】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、基材の露出が生じないラッピング精度の高いラッピング化粧板と、そのような構造のラッピング化粧板を容易に製造するための製造方法とを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明では、基材の表面よりも大きなシートを基材の表面と周囲側面とに接着し、シートの周縁部であって基材の各角部において該基材の側面からはみ出した余剰部分を、シートの周縁部であって基材の互いに対向する一方の側面対の後退面に設けられた後退面接着部に折り重ねた状態で固定することとした。
【0007】
具体的には、第1の発明は、矩形板状の基材と、周縁部が該基材の周囲側面に位置するように、該基材の表面及び周囲側面に接着一体化されたシートからなる化粧シート層とを備えたラッピング化粧板を前提としている。
【0008】
そして、第1の発明に係るラッピング化粧板は、上記基材の互いに対向する一方の側面対の上記シートの周縁部が接着される部分は、それぞれ上記基材の表面の外縁よりも該基材の内側に位置する後退面によって構成され、上記シートの周縁部であって上記基材の各角部において該基材の側面からはみ出した余剰部分は、上記シートの周縁部であって上記後退面に設けられた後退面接着部に折り重ねられた状態で固定されている上記基材の互いに対向する一方の側面対の上記シートの周縁部が接着される部分は、それぞれ上記基材の表面の外縁よりも該基材の内側に位置する後退面に構成され、上記化粧シート層では、上記シートの周縁部であって上記基材の各角部において該基材の側面からはみ出した余剰部分が、上記シートの周縁部であって上記基材の上記後退面に設けられた後退面接着部に折り重ねられた状態で固定されていることを特徴とする。
【0009】
第1の発明では、基材の化粧シート層を、シートをその周縁部が基材の周囲側面に位置するように基材の表面及び周囲側面に接着一体化することによって形成する。また、シートを基材に接着する際に、シートの周縁部であって基材の各角部において該基材の側面からはみ出した余剰部分を、シートの周縁部の基材の側面に設けられた部分に折り重ねた状態で固定する仕上げとした。そのため、余剰部分を切除する必要がなく、加工精度が低いために基材が露出する等のラッピング不良を生じることがない。従って、基材の露出が生じないラッピング精度の高いラッピング化粧板を提供することができる。
【0010】
ところで、上述のようにシートの余剰部分を切除することなくシートの基材の側面に設けられた部分に折り重ねて固定する構成では、化粧シート層の余剰部分が重なる重複部分がその他の部分よりも分厚くなる。このように基材の側面に形成された化粧シート層の側面部の一部が分厚く形成されると、複数のラッピング化粧板を並べて床材や壁材として用いる際に、ラッピング化粧板の間に隙間が形成されるために目地が大きくなって美観を損なうおそれがある。
【0011】
しかしながら、上記第1の発明では、基材の互いに対向する一方の側面対のシートの周縁部が接着される部分を、それぞれ基材の表面の外縁よりも該基材の内側に位置する後退面に構成し、シートの余剰部分を、シートの周縁部であって基材の後退面に設けられた後退面接着部に折り重ねて固定することとした。このような構成により、シートの余剰部分によってその他の部分よりも分厚くなる化粧シート層の重複部分は、上記後退面によって基材の側面の外側に形成されるスペースに収容されるため、化粧シート層の重複部分の基材の外側への出っ張りが抑制される。従って、複数のラッピング化粧板を並べて床材や壁材として用いる際に、ラッピング化粧板の間に隙間が形成されて目地が大きくなることがなく、美観の低下を抑制することができる。また、化粧シート層の重複部分の基材の外側への出っ張りが抑制されるため、複数のラッピング化粧板を並べて床材や壁材として用いる際に、ずれ等の施工不良を抑制することもできる。
【0012】
第2の発明は、第1の発明において、上記後退面は、上記基材の表面から裏面に向かうほど該基材の内側に位置する傾斜面によって構成されている。
【0013】
第2の発明では、後退面を傾斜面とすることで、基材における後退面の加工を容易に行うことができる。
【0014】
第3の発明は、第2の発明において、上記基材の表面の周縁部は、外側に向かうほど裏面側に位置する面取り部に構成され、上記基材の周囲側面の各辺には、隣接するラッピング化粧板の基材と係合する雌実又は雄実がそれぞれ形成され、上記傾斜面は、上記基材の表裏方向において、上記面取り部の裏側端部から上記雌実又は雄実の表側端面まで延びている。
【0015】
第3の発明では、基材の一部を切り欠いて面取り加工及び実加工を施す際に、同時に後退面を容易に形成することができる。
【0016】
第4の発明は、第1乃至第3のいずれか1つの発明において、上記基材は、木質材料からなる板状部材によって構成されている。
【0017】
第4の発明では、基材が木質材料からなる板状部材で構成されている。木質材料からなる板状部材は平滑性が高い。そのため、加工性に優れ、化粧シート層の形成を容易に行うことができると共に、意匠性に優れたラッピング化粧板を構成することができる。また、木質材料からなる板状部材によって基材を構成することにより、基材の一部を切り欠くことによって後退面を容易に形成することができる。これにより、基材の切断加工時(例えば、実加工時)に、同時に後退面を形成することができるため、基材に後退面を形成することとしても、加工工程を増やすことなく、容易に基材を形成することができる。
【0018】
第5の発明は、矩形板状の基材と、周縁部が該基材の周囲側面に位置するように、該基材の表面及び周囲側面に接着一体化されたシートからなる化粧シート層とを備えたラッピング化粧板の製造方法が対象である。
【0019】
そして、第5の発明に係るラッピング化粧板の製造方法は、上記基材の互いに対向する一方の側面対のそれぞれを切り欠いて、該各側面の上記シートの周縁部が接着される部分が、上記基材の表面の外縁よりも該基材の内側に位置する後退面となるように加工する切り欠き工程と、上記基材の表面よりも大きい上記シートを、周縁部が上記基材の周囲側面に位置するように折り曲げて上記基材の表面と周囲側面とに接着するシート接着工程と、上記シート接着工程において、上記シートの周縁部であって上記基材の各角部において該基材の側面からはみ出した余剰部分を、上記シートの周縁部であって上記基材の上記後退面に設けられた後退面接着部に折り重ねて接着する余剰部分処理工程とを備えていることを特徴とする。
【0020】
第5の発明では、基材の表面より大きなシートを折り曲げて基材の表面と周囲側面とに接着した後に、シートの周縁部であって基材の各角部において該基材の側面からはみ出した余剰部分を、シートの周縁部の基材の側面に設けられた部分に折り重ねて接着することとした。このように基材の各角部において基材の側面からはみ出したシートの余剰部分を、シートの基材の側面に設けられた部分に折り重ねて固定する仕上げとしたため、従来の製造方法のように余剰部分を切除する必要がない。よって、切除の加工精度が低いために基材が露出する等のラッピング不良を生じることがない。従って、基材の露出が生じないラッピング精度の高いラッピング化粧板を製造することができる。また、余剰部分を精度よく切除する必要がないため、加工精度によって仕上がりが大きく左右されることがなく、意匠性に優れたラッピング化粧板を容易に形成することができる。
【0021】
また、第5の発明では、基材の互いに対向する一方の側面対のシートの周縁部が接着される部分を、それぞれ基材の表面の外縁よりも該基材の内側に位置する後退面に加工し、余剰部分処理工程において、シートの余剰部分を、シートの周縁部であって基材の後退面に設けられた後退面接着部に折り重ねて接着することとした。このような製造方法により、シートの余剰部分によってその他の部分よりも分厚くなる化粧シート層の重複部分を、上記後退面によって基材の側面に形成されるスペースに収容することができるため、化粧シート層の重複部分の基材の外側への出っ張りが抑制される。従って、複数並べて床材や壁材として用いる際に、各ラッピング化粧板の間に隙間が形成されて目地が大きくなることがなく、見栄えのよいラッピング化粧板を製造することができる。また、上記製造方法によれば、化粧シート層の重複部分の基材の外側への出っ張りが抑制されるため、複数並べて床材や壁材として用いる際に、ずれ等の施工不良が生じないラッピング化粧板を製造することもできる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、基材の表面よりも大きなシートを基材の表面と周囲側面とに接着し、シートの周縁部であって基材の各角部において該基材の側面からはみ出した余剰部分を、シートの周縁部であって基材の後退面に設けられた後退面接着部に折り重ねた状態で固定することにより、余剰部分を切除する加工精度が低いために基材が露出する等のラッピング不良が生じないラッピング精度の高いラッピング化粧板を提供することができる。また、化粧シート層を形成する際に余剰部分を精度よく切除する必要がないため、ラッピング精度の高いラッピング化粧板を容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、本発明の実施形態1に係るラッピング化粧板の斜視図である。
図2図2は、本発明の実施形態1に係るラッピング化粧板の平面図である。
図3図3は、図2におけるIII−III線方向の矢視図である。
図4図4は、図2におけるIV−IV線断面図である。
図5図5は、基材の側面の後退面付近を拡大して示す斜視図である。
図6図6は、図5の基材に化粧シート層を形成した後の様子を、図5と同様の角度から拡大して示す斜視図である。
図7図7(a)及び(b)は、ラッピング化粧板の製造方法において、シートを基材の表面に接着する第1シート接着工程の説明図であり、図7(a)は平面図、図7(b)は側面図である。
図8図8(a)及び(b)は、ラッピング化粧板の製造方法において、シートを基材の長辺側面に接着する第2シート接着工程の説明図であり、図8(a)は平面図、図8(b)は側面図である。
図9図9(a)及び(b)は、ラッピング化粧板の製造方法において、シートを基材の短辺側面に接着する第3シート接着工程の説明図であり、図9(a)は平面図、図9(b)は側面図である。
図10図10(a)及び(b)は、ラッピング化粧板の製造方法において、折り曲げ接着工程の説明図であり、図10(a)は平面図、図10(b)は側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の実施形態は、本質的に好ましい例示に過ぎず、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0025】
《発明の実施形態1》
図1及び図2は、本発明の実施形態1に係るラッピング化粧板1を示している。このラッピング化粧板1は、例えば、床材等として用いられる。
【0026】
−構成−
ラッピング化粧板1は、矩形板状の基材10と、この基材10に接着剤を介して接着一体化されたシート21からなる化粧シート層20とを備えている。
【0027】
〈基材の構成〉
図3及び図4に示すように、上記基材10は、合板に中密度繊維板(MDF)等を積層することによって構成されている。なお、基材10は、このような構成に限られず、例えば、パーティクルボードやハードボード等のその他の木質材料、大建工業(株)製の製品名「ダイライト」等の無機質系板材等、通常に建材として用いられる板状の材料を用いたらよい。基材10は、例えば、厚み15mm、幅303mm、長さ1818mmの長方形状に形成されている。
【0028】
[雌実及び雄実]
基材10の周囲側面10b,10b,10c,10cの各辺には雌実4又は雄実5が形成されている。具体的には、基材10の幅方向に対向する長辺側面10b,10bの一方には雌実4が形成され、他方にはこの雌実4に嵌合可能な雄実5が形成されている。また、基材10の長さ方向に対向する短辺側面10c,10cの一方には雌実4が形成され、他方にはこの雌実4に嵌合可能な雄実5が形成されている。長辺側面10b,10bの雌実4に、隣接するラッピング化粧板1の基材10の長辺側面10b,10bの雄実5を嵌合することで、両ラッピング化粧板1が並べられて施工され、短辺側面10c,10cの雌実4に、隣接するラッピング化粧板1の基材10の短辺側面10c,10cの雄実5を嵌合することで、両ラッピング化粧板1が並べられて施工されるように構成されている。
【0029】
上記長辺側面10b及び短辺側面10cの雌実4,4は、同じ構造に構成されている。雌実4,4は、雌実凹部4aと、表側雌実凸部4bと、裏側雌実凸部4cとをそれぞれ有している。雌実凹部4aは、基材10の長辺側面10b及び短辺側面10cの厚み方向である表裏方向の中間部をそれぞれ凹溝状に切り欠くことで形成されている。表側雌実凸部4b及び裏側雌実凸部4cは、基材10の雌実凹部4aを切り欠いた残りの部分であって、表側雌実凸部4bは雌実凹部4aの表側に位置する部分であり、裏側雌実凸部4cは雌実凹部4aの裏側に位置する部分である。なお、本実施形態では、裏側雌実凸部4cの突出長さが、表側雌実凸部4bの突出長さよりも長くなるように、表側雌実凸部4bは、基材10の雌実凹部4aの表側の部分を雌実凹部4aよりも浅く凹溝状に切り欠くことによって形成されている。
【0030】
上記長辺側面10b及び短辺側面10cの雄実5,5は、同じ構造に構成されている。雄実5,5は、雄実凸部5aと、表側雄実凹部5bと、裏側雄実凹部5cとをそれぞれ有している。雄実凸部5aと表側雄実凹部5bと裏側雄実凹部5cとは、基材10の長辺側面10b及び短辺側面10cの表裏方向の中間部が凸条になるように該中間部の表側と裏側とをそれぞれ切り欠くことによって形成されている。なお、本実施形態では、裏側雄実凹部5cは、表側雄実凹部5bよりも深く凹溝状に切り欠くことによって形成されている。
【0031】
このように、本実施形態では、隣り合うラッピング化粧板1の端面が嵌合するように、基材10に、雌実4と雄実5とを形成する所謂本実加工を施している。しかしながら、隣り合うラッピング化粧板1の端面を嵌合させる構造はこれに限らない。例えば、基材10の短辺側面10c,10cの一方は基材10の厚み方向の表側部を切り欠き、他方は基材10の厚み方向の裏側部を切り欠く所謂合決り加工を施すこととしてもよい。また、本実加工は、上述のものに限られず、表側雌実凸部4bと裏側雌実凸部4cの突出長さが等しく、表側雄実凹部5bと裏側雄実凹部5cの深さが等しいものであってもよい。
【0032】
[後退面]
また、図4乃至図6に示すように、基材10の短辺側面10c,10cのシート21の短辺側面接着部23bが接着される表側雌実凸部4bの突出先端面及び表側雄実凹部5bの底面は、後述するシート21の余剰部分23c,23cが収まるスペースS1が形成されるように、基材10の表面10aの外縁よりも該基材10の内側に位置する後退面40に形成されている。本実施形態では、基材10の短辺側面10c,10cの表側雌実凸部4bの突出先端面及び表側雄実凹部5bの底面の全面が、基材10の表裏方向において裏側へ向かうほど、内側に位置する傾斜面に形成され、後退面40を構成している。なお、図5,6の仮想線は、実加工後、後退面40を形成する前(後退面加工工程前)の表側雌実凸部4bの外形線である。
【0033】
[面取り部]
図3及び図4に示すように、基材10の表面10aは、ラッピング化粧板1の化粧面を構成する。基材10の表面10aと長辺側面10b,10b及び短辺側面10c,10cの各々との角部には、各角部を斜め(又は円弧状)に切り欠くことにより、外側に向かうほど基材10の裏面側に位置する面取り部2が形成されている。
【0034】
〈化粧シート層の構成〉
化粧シート層20は、基材10の表面10a、長辺側面10b,10b及び短辺側面10c,10cを一体的に覆うと共に接着剤によって接着されたシート21によって形成されている。接着剤としては、例えば、湿気硬化型ウレタン樹脂系ホットメルト接着剤(PURホットメルト接着剤)が用いられている。このように、湿気硬化型ウレタン樹脂系ホットメルト接着剤を用いることで、シート21で基材10を容易にラッピングして該シート21を接着することができる。なお、湿気硬化型ウレタン樹脂系ホットメルト接着剤以外の接着剤を用いることもできる。
【0035】
上記シート21は、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリオレフィン系等の樹脂シート等からなり、その厚みは、0.1〜0.4mm程度のものが用いられる。また、シート21は、基材10の表面10aよりも大きい長方形状に形成されている。なお、シート21として、上述したもの以外に、ポリエチレンテレフタレート等の樹脂シート、コート紙、樹脂含浸紙等の化粧紙、不織布、織布、木質薄化粧突き板、畳表等の薄いシート材を用いることができる。シート21の厚みは、ラッピング設備との兼ね合いで決定すればよく、紙であれば例えば、0.05〜0.3mm程度のもの、木質薄化粧突き板であれば、0.15〜0.30mm程度のものが好適に用いられる。
【0036】
図3及び図4に示すように、このシート21からなる化粧シート層20は、基材10の表面10aに装着される表面部20aと、基材10の長辺側面10b,10bにそれぞれ装着される2つの長辺側面部20b,20bと、基材10の短辺側面10c,10cにそれぞれ装着される2つの短辺側面部20c,20cとによって構成されている。
【0037】
表面部20aは、接着剤によって基材10の表面10aに接着されたシート21の本体部22によって構成されている。
【0038】
2つの長辺側面部20b,20bは、シート21の周縁部23であって接着剤によって基材10の長辺側面10b,10bに接着された長辺側面接着部23a,23aによって構成されている。
【0039】
シート21の2つの長辺側面接着部23a,23aのうち、雌実4が形成された長辺側面10b上に位置する長辺側面接着部23aは、長辺側面10bの一部である雌実4の表側雌実凸部4bの突出先端面に接着され、その基材10の表裏方向において裏側の先端が雌実凹部4aに到達しないように、表側雌実凸部4bの突出先端面において雌実凹部4a近傍まで延びている。
【0040】
一方、シート21の2つの長辺側面接着部23a,23aのうち、雄実5が形成された長辺側面10b上に位置する長辺側面接着部23aは、長辺側面10bの一部である雄実5の表側雄実凹部5bの底面に接着され、その基材10の表裏方向において裏側の先端が雄実凸部5aに到達しないように、表側雄実凹部5bの底面において雄実凸部5a近傍まで延びている。
【0041】
2つの短辺側面部20c,20cは、シート21の周縁部23であって接着剤によって基材10の短辺側面10c,10cに接着された短辺側面接着部23b,23bと、同じくシート21の周縁部23であってシート21の接着時に基材10からはみ出した余剰部分23c,…,23cとによって構成されている。
【0042】
シート21の2つの短辺側面接着部23b,23bのうち、雌実4が形成された短辺側面10c上に位置する短辺側面接着部23bは、基材10の短辺側面10cの一部である雌実4の表側雌実凸部4bの突出先端面に接着され、その基材10の表裏方向において裏側の先端が雌実凹部4aに到達しないように、表側雌実凸部4bの突出先端面において雌実凹部4a近傍まで延びている。
【0043】
一方、シート21の2つの短辺側面接着部23b,23bのうち、雄実5が形成された短辺側面10c上に位置する短辺側面接着部23bは、基材10の短辺側面10cの一部である雄実5の表側雄実凹部5bの底面に接着され、その基材10の表裏方向において裏側の先端が雄実凸部5aに到達しないように、表側雄実凹部5bの底面において雄実凸部5a近傍まで延びている。
【0044】
なお、上述したように、基材10の短辺側面10c,10cのシート21の短辺側面接着部23bが接着される表側雌実凸部4bの突出先端面及び表側雄実凹部5bの底面は、基材10の表面10aの外縁よりも該基材10の内側に位置する後退面40に形成されている。つまり、シート21の2つの短辺側面接着部23b,23bは、後退面40に接着される本発明に係る後退面接着部を構成している。
【0045】
また、シート21の基材10に接着されずに、基材10の各角部において、長辺側面10b及び短辺側面10cからはみ出した余剰部分23c,…,23cは、短辺側面接着部23b,23bに折り重ねられ、その状態で接着剤によって接着されている。なお、上述したように、この余剰部分23c,…,23cが折り重ねられる短辺側面接着部23b,23bは、基材10の短辺側面10c,10cの後退面40に接着されている。つまり、余剰部分23c,23cは、基材10の短辺側面10c,10cの後退面40に接着されたシート21の短辺側面接着部(後退面接着部)23bに折り重ねて接着されている。このような構成により、シート21の余剰部分23c,23cによってその他の部分よりも分厚くなる化粧シート層20の重複部分は、上記後退面40によって基材10の短辺側面10c,10cに形成されるスペースS1に収容されるため、化粧シート層20の重複部分の基材10の外側への出っ張りが抑制される。
【0046】
以上のような構成により、基材10の表面10a及び各側面10b,10cは、シート21によって覆われ、基材10の表面10a及び各側面10b,10c上に化粧シート層20が形成されている。
【0047】
−製造方法−
以下、本発明の実施形態1に係るラッピング化粧板1の製造方法について図7図10に基づいて説明する。ラッピング化粧板1の製造方法は、基材10の切り欠き加工工程と、基材10へのシート21のラッピング工程と、余剰部分処理工程とを有する。なお、以下で説明する工程の順序は、一例にすぎず、本発明に係る製造方法はこれに限られない。
(1)基材10の切り欠き加工工程
まず、基材10に切り欠き加工が施される。基材10の切り欠き加工は、実加工と面取り加工と後退面加工とを有する。本実施形態では、後退面加工工程は、実加工工程と同時に行われる。実加工工程及び後退面加工工程と面取り加工工程とは、同時に行ってもよく、順番に行ってもよい。
【0048】
[実加工工程]
実加工工程では、基材10の長辺側面10b,10b及び短辺側面10c,10cをそれぞれ切り欠いて、長辺側面10b,10b及び短辺側面10c,10cに雌実4と雄実5とをそれぞれ加工する。
【0049】
[面取り加工工程]
面取り加工工程では、基材10の表面10aと長辺側面10b,10b及び短辺側面10c,10cの各々との角部を斜め(又は円弧状)に切り欠いて、外側に向かうほど基材10の裏面側に位置する面取り部2を形成する。
【0050】
[後退面加工工程]
後退面加工工程では、基材10の短辺側面10c,10cの表側雌実凸部4bの突出先端面及び表側雄実凹部5bの底面を斜めに切り欠いて、基材10の表裏方向において裏側へ向かうほど内側に位置する後退面40を形成する。
(2)基材10へのラッピング工程
次に、シート21が基材10の表面10a、長辺側面10b,10b及び短辺側面10c,10cにラッピング加工が施され、基材10に化粧シート層20が形成される。ラッピング加工は、接着剤塗布工程と、第1〜第3シート接着工程とを有する。
【0051】
[接着剤塗布工程]
接着剤塗布工程では、シート21の裏面に接着剤(湿気硬化型ウレタン樹脂系ホットメルト接着剤)を塗布する。なお、接着剤は、シート21の裏面に塗布するのに代えて、基材10の表面10a、長辺側面10b,10b及び短辺側面10c,10cに塗布してもよい。
【0052】
このシート21は、例えば、ロール等に巻き取られ、該ロールから連続的に繰り出されて供給されるものであり、予め、その幅が基材10にラッピングしたときに基材10の幅に対応する基準幅に設定されていてもよく、基準幅よりも大きくてもよい。具体的には、シート21の基準幅は、シート21を基材10に各々の幅方向を一致させてラッピングし、後述の第2シート接着工程において基材10の長辺側面10b,10bに接着されたシート21の長辺側面接着部23a,23aの先端(基材10の表裏方向の裏側端)が、基材10の長辺側面10b,10bの雌実凹部4a及び雄実凸部5aに到達しないような幅である。図7(a)においては基準幅のシート21を示している。
【0053】
[第1シート接着工程]
図7(a)及び(b)に示すように、第1シート接着工程では、上記シート21を基材10の表面10aに加圧し、接着剤を固化させて接着する。このとき、シート21と基材10とを幅方向に正確に位置合わせして接着する。このような動作により、基材10の表面10a上に、シート21の本体部22を接着する。本実施形態では、シート21の本体部22によって、化粧シート層20の表面部20aが構成される。
【0054】
[第2シート接着工程]
図8(a)及び(b)に示すように、第2シート接着工程では、基材10の表面10aに接着された上記シート21の周縁部であって幅方向の両端部を折り曲げて基材10の2つの長辺側面10b,10bに接着剤で接着する。
【0055】
具体的には、加熱した折り曲げ治具を用いて、シート21の幅方向の両端部を、基材10の長辺側面10bの表側雌実凸部4bの突出先端面及び表側雄実凹部5bの底面に押し付け、シート21裏面の接着剤を再活性化(再溶融)させるホットプレス動作を行う。その後、上記折り曲げ治具の加熱をやめ、加熱されない状態の折り曲げ治具で、シート21の幅方向の両端部を、基材10の長辺側面10bの表側雌実凸部4bの突出先端面及び表側雄実凹部5bの底面に押し付け、上記再活性化された接着剤を冷却することによって固化させて接着するコールドプレス動作を行う。
【0056】
以上のホットプレス動作とコールドプレス動作とにより、基材10の長辺側面10bの表側雌実凸部4bの突出先端面及び表側雄実凹部5bの底面上に、シート21の周縁部23の長辺側面接着部23a,23aを接着する。本実施形態では、シート21の2つの長辺側面接着部23a,23aによって、化粧シート層20の2つの長辺側面部20b,20bが構成される。
【0057】
[第3シート接着工程]
図9(a)及び(b)に示すように、第3シート接着工程では、基材10の表面10aに接着された上記シート21の周縁部であって長手方向の両端部を折り曲げて基材10の2つの短辺側面10c,10cに接着剤で接着する。
【0058】
具体的には、加熱した折り曲げ治具を用いて、シート21の長手方向の両端部を、基材10の短辺側面10cの表側雌実凸部4bの突出先端面及び表側雄実凹部5bの底面に押し付け、シート21裏面の接着剤を再活性化(再溶融)させるホットプレス動作を行う。その後、上記折り曲げ治具の加熱をやめ、加熱されない状態の折り曲げ治具で、シート21の長手方向の両端部を、基材10の短辺側面10cの表側雌実凸部4bの突出先端面及び表側雄実凹部5bの底面に押し付け、上記再活性化された接着剤を冷却することによって固化させて接着するコールドプレス動作を行う。
【0059】
以上のホットプレス動作とコールドプレス動作とにより、基材10の短辺側面10cの表側雌実凸部4bの突出先端面及び表側雄実凹部5bの底面上に、シート21の周縁部23の短辺側面接着部23b,23bを接着する。
【0060】
なお、前述のように、本実施形態では、短辺側面10c,10cの表側雌実凸部4bの突出先端面及び表側雄実凹部5bの底面の全面が、基材10の表裏方向において裏側へ向かうほど内側に位置する傾斜面からなる後退面40に構成されている。そのため、シート21の周縁部23の短辺側面接着部23b,23bは、基材10の表裏方向において裏側へ向かうほど内側に位置する後退面40に接着されることとなる。
【0061】
この第3シート接着工程が終了すると、基材10の2つの長辺側面10b,10b及び2つの短辺側面10c,10cに、長方形状のシート21の周縁部23が折り曲げられて接着された状態となる。このとき、基材10の周囲の4つの角部では、シート21の周縁部23の角部が基材10の長辺側面10bと短辺側面10cとからはみ出して基材10に接着されない余剰部分23c,…,23cとなって存在している。図9(b)に示すように、各余剰部分23cは、シート21の周縁部23の各角部が、基材10の各角部において、基材10の長辺側面10bからはみ出した部分と短辺側面10cからはみ出した部分の裏面どうしが重なるように折り曲げられて形成される。
(3)余剰部分処理工程
次に、上述のラッピング工程において基材10の各角部において形成されたシート21の余剰部分23cを、基材10の短辺側面10c,10cに接着されたシート21の短辺側面接着部(後退面接着部)23bに折り重ねて接着する余剰部分処理工程が行われる。余剰部分処理工程は、接着剤塗布工程と、折り曲げ接着工程とを有する。
【0062】
[接着剤塗布工程]
接着剤塗布工程では、各余剰部分23cの短辺側面接着部23bに連続する面に接着剤(湿気硬化型ウレタン樹脂系ホットメルト接着剤)を塗布する。なお、接着剤は、各余剰部分23cの短辺側面接着部23bに連続する面に塗布するのに代えて、短辺側面接着部23bの余剰部分23cが重なる部分に塗布してもよい。
【0063】
[折り曲げ接着工程]
図10(a)及び(b)に示すように、折り曲げ工程では、シート21の各余剰部分23cを、基材10の短辺側面10c,10cに形成された後退面40に接着されたシート21の短辺側面接着部(後退面接着部)23bに折り重なるように折り曲げる。そして、シート21の各余剰部分23cが短辺側面接着部23bに重なる重複部分を、加圧することによって、余剰部分23c又は短辺側面接着部23bに塗布された接着剤を固化させて余剰部分23cを短辺側面接着部23bに接着する。これにより、基材10の短辺側面10cの表側雌実凸部4bの突出先端面及び表側雄実凹部5bの底面上に、シート21の周縁部23の短辺側面接着部23b,23bと余剰部分23c,…,23cとによって、化粧シート層20の2つの短辺側面部20c,20cが形成される。
【0064】
以上のようにして、本ラッピング化粧板1は、基材10へのシート21のラッピング工程の後、上述の余剰部分処理工程を行うことにより、基材10に接着されずにはみ出したシート21の余剰部分23cが、切断されることなく、短辺側面接着部23bに折り重ねられた状態で接着されることとなる。
【0065】
ところで、化粧シート層20において余剰部分23cが短辺側面接着部23bに重なる重複部分は、その他の部分よりも分厚く形成される。このように化粧シート層20の短辺側面部20cの一部が分厚く形成されると、複数のラッピング化粧板1を並べて床材や壁材として用いる際に、ラッピング化粧板1の間に隙間が形成されるために目地が大きくなって意匠性を低下させるおそれがある。
【0066】
しかしながら、本実施形態では、余剰部分処理工程において、シート21の余剰部分23c,…,23cを、シート21の周縁部23であって基材10の表面10aの外縁よりも該基材10の内側に位置する後退面40に接着された短辺側面接着部(後退面接着部)23b,23bに折り重ねて接着することとした。そのため、シート21の余剰部分23c,…,23cによってその他の部分よりも分厚くなる化粧シート層20の重複部分は、上記後退面40によって、該後退面40の外側で基材10の最外縁よりも内側の位置に形成されるスペースS1に収容される。そのため、化粧シート層20においてシート21の余剰部分23c,…,23cが短辺側面接着部(後退面接着部)23b,23bに重なる重複部分の基材10の外側への出っ張りが抑制される。
【0067】
−実施形態1の効果−
以上のように、本実施形態1のラッピング化粧板1によれば、シート21を基材10に接着する際に、シート21の周縁部23であって基材10の各角部において該基材10の側面10b,10cからはみ出した余剰部分23c,…,23cを、シート21の周縁部23の基材10の側面10b,10cに接着された部分に折り重ねた状態で固定する仕上げとした。そのため、従来のようにシート21の余剰部分23c,…,23cを切除する必要がなく、加工精度が低いために基材10が露出する等のラッピング不良を生じることがない。従って、基材10の露出が生じないラッピング精度の高いラッピング化粧板1を提供することができる。
【0068】
ところで、上述のようにシート21の余剰部分23c,…,23cを切除することなくシート21の基材10の側面10b,10cに接着された部分に折り重ねて固定する構成では、化粧シート層20の余剰部分23c,…,23cが重なる重複部分がその他の部分よりも分厚くなる。このように基材10の側面10cに形成された化粧シート層20の一部が分厚く形成されると、複数のラッピング化粧板1を並べて床材や壁材として用いる際に、ラッピング化粧板1の間に隙間が形成されるために目地が大きくなって美観を損なうおそれがある。
【0069】
しかしながら、本実施形態1のラッピング化粧板1では、基材10の互いに対向する2つの短辺側面10c,10cのシート21の周縁部23が接着される表側雌実凸部4bの突出先端面及び表側雄実凹部5bの底面を、それぞれ基材10の表面10aの外縁よりも該基材10の内側に位置する後退面40に構成し、シート21の余剰部分23c,…,23cを、シート21の周縁部23であって基材10の後退面40に接着された短辺側面接着部(後退面接着部)23b,23bに折り重ねて固定することとした。このような構成により、シート21の余剰部分23c,…,23cによってその他の部分よりも分厚くなる化粧シート層20の重複部分は、上記後退面40によって、該後退面40の外側で基材10の最外縁よりも内側の位置に形成されるスペースS1に収容される。そのため、化粧シート層20においてシート21の余剰部分23c,…,23cが短辺側面接着部(後退面接着部)23b,23bに重なる重複部分の基材10の外側への出っ張りが抑制される。従って、複数のラッピング化粧板1を並べて床材や壁材として用いる際に、ラッピング化粧板1の間に隙間が形成されて目地が大きくなることがなく、美観の低下を抑制することができる。また、化粧シート層20の重複部分の基材10の外側への出っ張りが抑制されるため、複数のラッピング化粧板1を並べて床材や壁材として用いる際に、ずれ等の施工不良を抑制することもできる。
【0070】
また、本実施形態1のラッピング化粧板1では、後退面40を、基材10の表面10aから裏面に向かうほど該基材10の内側に位置する傾斜面に構成している。これにより、基材10における後退面40の加工を容易に行うことができる。
【0071】
また、本実施形態1のラッピング化粧板1では、後退面40を構成する傾斜面を、基材10の表裏方向において、面取り部2の裏側端部から雌実4又は雄実5の表側端面まで延びるように形成することとした。後退面40をこのような傾斜面とすることにより、基材10の一部を切り欠いて面取り加工及び実加工を施す際に、同時に後退面40を容易に形成することができる。
【0072】
また、本実施形態1のラッピング化粧板1では、基材10を、木質材料からなる板状部材によって構成している。木質材料からなる板状部材は平滑性が高い。そのため、加工性に優れ、化粧シート層20の形成を容易に行うことができると共に、意匠性に優れたラッピング化粧板1を構成することができる。また、木質材料からなる板状部材によって基材10を構成することにより、基材10の一部を切り欠くことによって後退面40を容易に形成することができる。これにより、基材10の切断加工時(例えば、実加工時)に、同時に後退面40を形成することができるため、基材10に後退面40を形成することとしても、加工工程を増やすことなく、容易に基材10を形成することができる。
【0073】
また、本実施形態1のラッピング化粧板1の製造方法では、基材10の表面10aより大きなシート21を折り曲げて基材10の表面10aと周囲側面10b,10b,10c,10cとに接着した後に、シート21の周縁部23であって基材10の各角部において該基材10の側面10b,10cからはみ出した余剰部分23c,…,23cを、シート21の周縁部23の基材10の短辺側面10c,10cの表側雌実凸部4bの突出先端面及び表側雄実凹部5bの底面に接着された短辺側面接着部23b,23bに折り重ねて接着する仕上げとした。そのため、従来の製造方法のように余剰部分23cを切除する必要がない。よって、切除の加工精度が低いために基材10が露出する等のラッピング不良を生じることがない。従って、基材10の露出が生じないラッピング精度の高いラッピング化粧板1を製造することができる。また、余剰部分23cを精度よく切除する必要がないため、加工精度によって仕上がりが大きく左右されることがなく、意匠性に優れたラッピング化粧板1を容易に製造することができる。
【0074】
また、本実施形態1のラッピング化粧板1の製造方法では、基材10の互いに対向する2つの短辺側面10c,10cのシート21の周縁部23が接着される表側雌実凸部4bの突出先端面及び表側雄実凹部5bの底面を、それぞれ基材10の表面10aの外縁よりも該基材10の内側に位置する後退面40に加工し、余剰部分処理工程において、シート21の余剰部分23c,…,23cを、シート21の周縁部23であって基材10の後退面40に接着された短辺側面接着部(後退面接着部)23b,23bに折り重ねて接着することとした。このような製造方法により、シート21の余剰部分23c,…,23cによってその他の部分よりも分厚くなる化粧シート層20の重複部分を、上記後退面40によって、該後退面40の外側で基材10の最外縁よりも内側の位置に形成されるスペースS1に収容することができるため、化粧シート層20においてシート21の余剰部分23c,…,23cが短辺側面接着部(後退面接着部)23b,23bに重なる重複部分の基材10の外側への出っ張りが抑制される。そのため、意匠性及び施工性に優れたラッピング化粧板1を製造することができる。また、複数並べて床材や壁材として用いる際に、各ラッピング化粧板1の間に隙間が形成されて目地が大きくなることがなく、見栄えのよいラッピング化粧板1を製造することができる。また、上記製造方法によれば、化粧シート層20の重複部分の基材10の外側への出っ張りが抑制されるため、複数並べて床材や壁材として用いる際に、ずれ等の施工不良が生じないラッピング化粧板1を製造することもできる。
【0075】
《その他の実施形態》
上記実施形態1では、基材10の短辺側面10c,10cの表側雌実凸部4bの突出先端面及び表側雄実凹部5bの底面の全面を、基材10の表裏方向において裏側へ向かうほど内側に位置する傾斜面に形成し、該傾斜面によって後退面40を構成していた。しかしながら、本発明に係る後退面40は、上記実施形態1の傾斜面に限られない。シート21の余剰部分23c,…,23cによってその他の部分よりも分厚くなる化粧シート層20の重複部分の基材10の外側への出っ張りが抑制されるように該重複部分を収容するスペースS1を確保できる後退面であればいかなる形状でもよい。例えば、円弧面で形成してもよい。
【0076】
また、上記実施形態1では、基材10の短辺側面10c,10cの表側雌実凸部4bの突出先端面及び表側雄実凹部5bの底面の全面を傾斜させて後退面40としていたが、シート21の余剰部分23c,…,23cによってその他の部分よりも分厚くなる化粧シート層20の重複部分が、基材10の外縁からさらに外側に出っ張らないように収容するスペースS1を確保できるものであれば、基材10の短辺側面10c,10cの表側雌実凸部4bの突出先端面及び表側雄実凹部5bの底面の全面でなく、一部を後退面40に形成してもよい。
【0077】
上記実施形態では、基材10の短辺側面10c,10cに後退面40を形成していたが、後退面40は、基材10の長辺側面10b,10bに形成されていてもよい。後退面40は、基材10の各角部を挟む長辺側面10bと短辺側面10cの少なくとも一方に形成されていればよいが、両方に形成されていてもよい。
【0078】
また、上記実施形態では、シート21の余剰部分23cを短辺側面接着部(後退面接着部)23bに固定する際に、接着剤を用いて接着することとしていたが、加熱することによって余剰部分23cを溶融させて短辺側面接着部(後退面接着部)23bに融着することとしてもよい。
【0079】
また、上記各実施形態では、ラッピング化粧板1を床材として用いることとしていたが、ラッピング化粧板1の用途は床材に限られない。その他、例えば、壁材等に用いることも勿論可能である。
【産業上の利用可能性】
【0080】
以上説明したように、本発明は、建築物の床材や壁材等に用いられる板状の基材の表面がシートでラッピングされたラッピング化粧板及びその製造方法について有用である。
【符号の説明】
【0081】
1 ラッピング化粧板
2 面取り部
4 雌実
5 雄実
10 基材
10a 表面
10b 長辺側面(周囲側面、側面)
10c 短辺側面(周囲側面、側面)
20 化粧シート層
21 シート
23 周縁部
23b 短辺側面接着部(後退面接着部)
23c 余剰部分
40 後退面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10