(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-171350(P2017-171350A)
(43)【公開日】2017年9月28日
(54)【発明の名称】滅菌方法
(51)【国際特許分類】
B65B 55/02 20060101AFI20170901BHJP
A61L 2/04 20060101ALI20170901BHJP
A61J 1/10 20060101ALI20170901BHJP
【FI】
B65B55/02 Z
A61L2/04
A61J1/10 333E
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-59238(P2016-59238)
(22)【出願日】2016年3月23日
(71)【出願人】
【識別番号】000104674
【氏名又は名称】キョーラク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126398
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 典子
(72)【発明者】
【氏名】内橋 健太郎
【テーマコード(参考)】
4C047
4C058
【Fターム(参考)】
4C047AA40
4C047BB12
4C047BB28
4C047CC04
4C047GG12
4C058AA16
4C058BB02
4C058CC02
4C058DD20
(57)【要約】
【課題】 蛇腹状の容器の滅菌において、容器の変形を回避することが可能な滅菌方法を提供する。
【解決手段】 口部と底部を有し胴部が蛇腹状とされた容器内に内容物を収容し、口部を密閉して加熱する滅菌方法である。蛇腹の一部形態を反転させた状態で滅菌を行う。例えば、容器の底部は、外方に向かって膨出する形状とされているが、当該底部を内方に反転させた後、滅菌を行う。容器の底部は、例えば球面形状である。滅菌に際して、内容物の充填量は、容器の満注内容量の50%〜70%とすることが好ましい。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
口部と底部を有し胴部が蛇腹状とされた容器内に内容物を収容し、口部を密閉して加熱する滅菌方法であって、
蛇腹の一部形態を反転させた状態で滅菌を行うことを特徴とする滅菌方法。
【請求項2】
前記容器の底部は、外方に向かって膨出する形状とされており、当該底部を内方に反転させた後、滅菌を行うことを特徴とする請求項1記載の滅菌方法。
【請求項3】
容器の胴部が複数のリング状頂部を有する蛇腹状とされており、
前記リング状頂部の寸法が底部に向かって次第に縮小され、且つ、前記リング状頂部から口部に向かって傾斜する斜面に比べて、前記リング状頂部から底部に向かって傾斜する斜面の方が急峻であることを特徴とする請求項1または2記載の滅菌方法。
【請求項4】
前記底部が球面形状とされていることを特徴とする請求項2または3記載の滅菌方法。
【請求項5】
内容物の充填量を容器の満注内容量の50%〜70%とすることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載の滅菌方法。
【請求項6】
容器は、内視鏡に設けられた導入口より薬液を送液する医療用容器であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項記載の滅菌方法。
【請求項7】
容器は、少なくとも前記胴部が、環状ポリオレフィン層とポリオレフィン層とを有する積層フィルムからなることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項記載の滅菌方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛇腹状の容器の滅菌方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
各種薬液が充填される医療用の容器として、例えばプラスチックをブロー成形したブロー成形ボトルやブロー成形バッグ等が用いられている。ブロー成形によれば効率的に容器を製造することが可能であり、近年では、バイアルと称される医療用の容器もブロー成形技術により製造されるようになってきている。
【0003】
近年では、医療技術の進歩に伴い、用いられる医療用容器の形態も多様化しており、医療過誤を防止するため、事前に定量薬液が充填された製品を用いるケースが増えている。容器形態としては、いわゆるシリンジが使用されることが多く、いわゆるプレフィルドシリンジと称される形態で供給されている。
【0004】
例えば、内視鏡の使用に際して、鉗子口等を導入口として体内に薬液を注入することが行われており、薬液を送液するために前記プレフィルドシリンジが用いられている。また、送液の作業性等を考えると、前記シリンジでは必ずしも作業性が良好ではなく、これを改善するために、シリンジに代わる薬液容器も提案されている(例えば特許文献1を参照)。
【0005】
特許文献1には、球形の容器本体を押し潰すことで容器本体内の薬液を送液するようにした薬液容器や、蛇腹状の薬液容器が開示されている。これらの薬液容器を採用することで、作業性を良好なものとすることができ、医療用容器の製造コストを大幅に削減することも可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−49595号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、医療用容器の場合、滅菌処理が必須の工程となっており、容器内に薬液を充填した後、水蒸気滅菌や加熱滅菌を行うのが一般的である。前述の蛇腹状の薬液容器の場合も例外ではなく、薬液の充填の後、滅菌処理が施される。
【0008】
しかしながら、例えば蛇腹状の薬液容器の場合、加熱による滅菌処理を行うと、容器形状が変形するという問題が発生している。蛇腹状の薬液容器が変形してしまうと、いわゆるスクイズによる送液ができなくなる等、その使用に支障をきたすおそれがある。
【0009】
本発明は、このような従来の実情に鑑みて提案されたものであり、蛇腹状の容器の滅菌において、容器の変形を回避することが可能な滅菌方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述の目的を達成するために、本発明の滅菌方法は、口部と底部を有し胴部が蛇腹状とされた容器内に内容物を収容し、口部を密閉して加熱する滅菌方法であって、蛇腹の一部形態を反転させた状態で滅菌を行うことを特徴とする。
【0011】
予め蛇腹の一部形態を反転させた状態(例えば、底部を内方に反転させた状態)で加熱による滅菌処理を行うと、蛇腹(底部)が元の形状に戻ることで内圧の上昇が吸収され、内圧上昇による変形が解消される。また、滅菌後、冷却により容器内が減圧状態になると、蛇腹状であることによる弾性変形により、容器高さが若干圧縮されるが、再び反転する等、大きく変形することはなく、容器の密閉状態を開放することで、容器形状が復元される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、蛇腹状の容器の滅菌において、容器の変形を回避することが可能であり、滅菌後のスクイズ不良等の問題を解消することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態において使用される医療用容器の一例を示す概略斜視図である。
【
図2】
図1に示す医療用容器の形状を説明する図である。
【
図3】
図1に示す医療用容器を使用して薬液の送液が行われる内視鏡の一例を示す図である。
【
図4】
図1に示す医療用容器の使用後の形態を示す概略斜視図である。
【
図5】滅菌工程を示す図であり、(a)は滅菌前の状態、(b)は滅菌後の状態、(c)は滅菌後、密閉状態を開放した状態をそれぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を適用した滅菌方法の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0015】
先ず、本発明の実施形態において使用される容器(医療容器)であるが、
図1に示すように、いわゆる蛇腹状の医療用容器1であり、胴部2に薬液を排出するための口部3を有するものである。口部3には、例えばノズル(図示は省略する)が装着され、ここから薬液が送液される。胴部2は、山部と谷部が交互に形成された蛇腹状とされており、各山部の頂部は、先端が尖ったリング状頂部となっている。本例の医療用容器1の場合、3段の蛇腹とされ、3つのリング状頂部4a,4b,4cを有している。
【0016】
また、胴部2の底部5は、球面形状を有しており、前記蛇腹状の胴部2の形状を最適化することと相俟って、薬液の定量排出や逆流防止を実現するようにしている。以下、蛇腹状の胴部2の形状的特徴について説明する。
【0017】
図1に示す医療用容器1において、前記の通り胴部2が蛇腹状とされているが、その形態は単なる蛇腹ではない。先ず第1に、
図2に破線で示すように、蛇腹状の胴部2の寸法は、底部に向かって次第に縮小されている。すなわち、各リング状頂部4a,4b,4cの外径寸法は同じではなく、口部3に近い側のリング状頂部4aの外径寸法が最も大きく、底部5に最も近いリング状頂部4cの外径寸法が最も小さい。
【0018】
外径寸法の縮小の程度であるが、例えばリング状頂部4a,4b,4cの外径寸法を1mmずつ小さくする。勿論これに限らず、1.5〜2mm程度ずつ小さくすることも可能である。
【0019】
前述のように蛇腹状の胴部2の寸法を段々小さくなる形状とすることで、医療用容器1を押し潰した際に、各蛇腹が反転し、医療用容器1内の液残りやエアー残りを僅かなものとすることができる。液残りを少なくすることで、定量排出が可能となる。
【0020】
また、第2に、蛇腹状の胴部2においては、前記リング状頂部4a,4b,4cを挟んで口部3側及び底部5側にそれぞれ斜面が形成されて山部とされているが、本実施形態の医療用容器1においては、底部5側の斜面6と口部3側の斜面7は、その傾斜角度が同じではない。底部5側の斜面6の方が口部3側の斜面7よりも急峻とされている。2段目の山部を例に角度で示すと、リング状頂部4bにおける水平断面に対する底部5側の斜面6の傾斜角度をα、口部3側の斜面7の傾斜角度をβとすると、α<βである。具体的角度としては、例えば、斜面6の傾斜角度αが35°、斜面7の傾斜角度βが45°である。傾斜角度αと傾斜角度βの差は10°程度とすることが好ましい。
【0021】
胴部2を蛇腹状とした場合、斜面6と斜面7の傾斜角度を同じにすると、押し潰した際に元に戻ろうとする力が働き、薬液の逆流の原因となる。それに対して、押し付ける側(底部5側)の斜面6を急峻にすると、反発し難くすることができる。
【0022】
底部5は球面形状であるが、その曲率半径Rは40mm以下であることが好ましい。曲率半径Rが40mmを超えると、反転させるために強く押す必要が生ずる。本実施形態では、何度も使用する際に使い勝手が悪くなるため、底部5の球面形状の曲率半径Rを40mm以下とすることで、容易に反転可能な形状とした。
【0023】
以上が形状的な特徴であるが、次に、医療用容器1の材質について説明する。
図1に示す医療用容器1は、内視鏡等で使用する薬液を収容するものであり、薬効成分の吸着の少ない材質を用いることが好ましい。また、滅菌については、薬剤が経口投与されるものであり、輸液のように無菌保証の必要がないため、80℃程度の殺菌処理で対応が可能である。
【0024】
このような状況から、医療用容器1の層構成を多層構成とし、内層を例えば環状ポリオレフィン(COP)やポリエチレンテレフタレート(PET)等により構成している。外層はポリプロピレン(PP)や直鎖状短鎖分岐ポリエチレン(LLDPE)等であり、これらを接着層を介して積層する。
【0025】
環状ポリオレフィンは、環内にエチレン性二重結合を有する重合性の環状オレフィンを少なくとも重合成分とする樹脂であり、重合成分である環状オレフィンは、単環式オレフィンであってもよく、多環式オレフィンであってもよい。
【0026】
前記環状オレフィンとしては、公知のものがいずれも使用可能であるが、代表的なものとしては、ノルボルネン類、シクロペンタジエン類、ジシクロペンタジエン類、さらにはノルボルネン類とシクロペンタジエンとの縮合により得られる多環式オレフィン等を例示することができる。
【0027】
また、前記環状ポリオレフィン系樹脂は、1種類の環状オレフィンの単独重合体であってもよいし、種類の異なる環状ポリオレフィンの共重合体(例えば、単環式オレフィンと多環式オレフィンとの共重合体等)であってもよい。あるいは、環状オレフィンと他の共重合性単量体との共重合体であってもよい。この場合、他の共重合性単量体としては、例えば、エチレンやプロピレン等の鎖状オレフィン、(メタ)アクリル系単量体、不飽和ジカルボン酸又はその誘導体、重合性ニトリル化合物、ビニルエステル類、共役ジエン類等を挙げることができる。
【0028】
前記多層構成において、環状ポリオレフィン(内層)の厚さは、全体の20%以下とすることが好ましい。環状ポリオレフィンからなる層の厚さが厚くなると、柔軟性に欠けることになり、反転押し潰しが速やかに進行しなくなるおそれがある。このような層構成とした医療用容器1においては、薄肉化が可能であり、また、高価な環状ポリオレフィンの比率を少なくすることができるので、環状ポリオレフィン単層からなるシリンジと比べて、製造コストを大幅に削減することが可能である。
【0029】
次に、前述の医療用容器1の使用方法について説明する。
図3は、医療用容器1により薬液を送液する内視鏡11の一例を示すものである。内視鏡11は、細長い可撓性を有する挿入部13と、その基端に設けられた操作部12とを基本構成とするものであり、挿入部13を体内に挿入することで、体内の観察等が行われる。また、操作部12には、薬液を供給するための薬液導入口14が設けられており、ゴム栓等で密封されているが、ここに医療用容器1の口部3を貫通・挿入して、内部の薬液を送液する。
【0030】
医療用容器1内に収容される薬液は任意であるが、例えば内視鏡11による上部消化管内視鏡検査の際に、胃部の蠕動運動を抑制するための薬液(例えば、l−メントール等)を挙げることができる。
【0031】
医療用容器1による薬液送液の際には、医療用容器1内に、薬液とともに少量のエアーを入れておく。使用時には、医療用容器1を逆さにし、底部5を押して医療用容器1内の薬液を送液する。底部5を押し込むことで、蛇腹状の胴部2が順次反転して潰れていく。これに伴い、医療用容器1内の薬液が体内に送り込まれる。
【0032】
医療用容器1内の薬液が全て送り込まれると、最後に残存するエアーが送る込まれる。それにより、内視鏡11の経路内に滞留する薬液が全て体内へと送り込まれ、定量排出される。
【0033】
図4は、送液完了後の医療用容器1の形態を示すものである。内部の薬液を全て送液した後には、蛇腹状の胴部2が順次反転して潰れ、球面形状の底部5も反転する。また、反転した状態が元に戻ることはない。これにより、使用後の医療用容器1の減容化が図られ、廃棄等も容易である。
【0034】
以上が医療用容器1の構成であるが、この種の医療用容器1では、内容物(本例の場合には薬液)を充填した後、滅菌処理を行う。以下、蛇腹状の医療用容器1の滅菌方法の実施形態について説明する。
【0035】
図5は、滅菌処理工程を説明する図である。本実施形態では、滅菌工程の前に、
図5(a)に示すように、医療用容器1の蛇腹の一部(ここでは底部5)を反転しておく。医療用容器1の底部5は前述の通り、外方に向かって膨出する球面形状を呈しているが、これを内方に押し込んで反転させておく。なお、反転させるのは底部5に限らず、蛇腹の任意の位置を反転させることが可能である。例えば、3段の蛇腹の場合、1段目、2段目、3段目のいずれを反転させてもよい。また、反転させるのは、蛇腹の上下2つの斜面のうちのいずれであってもよい。
【0036】
次いで、医療用容器1内に薬液の充填を行い、口部3を密閉する。薬液の充填量は任意であるが、医療用容器1の満注内容量の50%〜70%とすることが好ましい。薬液量が満注内容量の50%未満であると、相対的に空間の容積が大きくなり、底部5の反転だけでは内圧の上昇を吸収しきれず、変形が生じてしまうおそれがある。逆に、薬液量が満注内容量の70%を越えると、内圧があまり上昇せず、反転させた底部5が復元しないおそれがある。
【0037】
また、薬液の充填量は、医療用容器1の反転後の内容量(容積)の60%〜90%とすることが好ましい。薬液量が、医療用容器1の反転後の内容量の60%未満であると、相対的に空間の容積が大きくなり、底部5の反転だけでは内圧の上昇を吸収しきれず、変形が生じてしまうおそれがある。逆に、薬液量が医療用容器1の反転後の内容量の90%を越えると、内圧があまり上昇せず、反転させた底部5が復元しないおそれがある。
【0038】
口部3の密閉は、キャップやシール等、任意の方法で行えばよく、
図5に示すように、例えばアルミニウムシール8でシールする。
【0039】
この状態で滅菌工程を行う。滅菌工程は、水蒸気滅菌等、薬液が充填された医療用容器1を加熱することで行う。この時、加熱に伴って医療用容器1の内圧が上昇するが、この内圧上昇は、押し込んでおいた底部5が再度反転して復元することにより吸収され、蛇腹状の医療用容器1が変形することはない。加熱滅菌後、冷却した状態が
図5(b)である。
【0040】
加熱により医療用容器1の内圧が上昇し、底部5が反転するが、その後、冷却されると、医療用容器1内の内圧が下がって減圧状態となる。この時、蛇腹状の胴部2が弾性的に変形し、わずかに医療用容器1の高さが低くなる。このように、減圧変形を蛇腹状の胴部2の変形で吸収することで、例えば底部5が再度内方に反転したり、他の部分が不用意に反転することはない。
【0041】
滅菌工程の後、アルミニウムシール8を剥がして開封すると、医療用容器1の減圧状態が開放され、
図5(c)に示すように、容器形状が復元する。すなわち、減圧により高さが低くなっていた医療用容器1は、開封により所定の高さに復元する。
【0042】
前述の通り、本実施形態の滅菌方法では、滅菌時の加熱や冷却による内圧の変化が吸収され、滅菌後に蛇腹状の医療用容器1が変形することはない。したがって、滅菌後の医療用容器1においては、スクイズに支障をきたすことなく、円滑な送液が可能である。
【0043】
以上、本発明を適用した実施形態についてを説明してきたが、本発明が前述の実施形態に限られるものでないことは言うまでもなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、多様な変更または改良を加えることが可能である。
【実施例】
【0044】
実験1
満注内容量が35mLの蛇腹状容器(
図1に示す形態の容器)を成形し、球面形状に膨出する底部を押し込んで反転させた。底部を反転させることにより、内容量が7mL減少した。次いで、容器内に薬液の代わりに水を20mL入れ、口部をアルミシールで密閉した。この状態で80℃、30分間の滅菌を行ったところ、底部が元の状態に復元し、アルミシール開封後には、内容量35mLを確保することができた。また、滅菌後、蛇腹容器に変形は認められなかった。
【0045】
同様の実験を蛇腹状容器の底部を反転させずに行ったところ、滅菌後に蛇腹状容器が大きく変形し、スクイズができない状態であった。
【0046】
実験2
実験1と同様の蛇腹状容器の底部を反転し、内容液の充填量を2mLずつ変えて12mL〜26mL充填した。その後、80℃、30分間の滅菌を行い、殺菌処理終了後、シャワー冷却させ、容器の変形状況(殺菌処理後の底部復元、及び滅菌変形の有無)を目視確認した。結果を表1に示す。なお、殺菌処理後の底部復元において、○は復元したことを示し、×は復元しなかったことを示す。滅菌変形の有無において、○は大きな変形がなかったことを示し、×は変形したことを示す。
【0047】
【表1】
【0048】
この表1から明らかなように、内溶液の量が少なすぎると滅菌後に変形が生じ、多すぎると底部が復元しないことがわかる。また、内溶液量が適正であると、冷却後に、蛇腹が圧縮されることで減圧が吸収され、底部が再び反転することはなかった。滅菌後の変形がなく、底部も復元する最適内溶液量としては、18mL〜24mLであり、これは蛇腹状容器の満注内容量の概ね50〜70容積%(反転後の内容量の概ね60〜90容積%)ということになる。
【符号の説明】
【0049】
1 医療用容器
2 胴部
3 口部
4a,4b,4c リング状頂部
5 底部
6 斜面(底部側)
7 斜面(口部側)
8 アルミニウムシール