【解決手段】リール部材1は、巻芯2と、巻芯2の側面に形成され、紫外線遮蔽剤を含有する側板3とを備え、側板3の波長300〜500nmの光透過率が1%以下である。また、リール部材5は、巻芯2と、巻芯2の側面に形成された側板6と、側板6の表面に貼付された紫外線遮蔽フィルム7とを備え、紫外線遮蔽フィルム7は、波長300〜500nmの光透過率が1%以下である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態(本実施の形態)について、下記順序にて詳細に説明する。
1.リール部材
2.フィルム巻装体
3.接続体の製造方法
【0015】
<リール部材>
[第1の実施の形態]
第1の実施の形態に係るリール部材1は、例えば
図1、2に示すように、巻芯2の側面に形成され、紫外線遮蔽剤を含有する側板3を備え、側板3の波長300〜500nmの光透過率が1%以下である。このようなリール部材1は、例えば接着フィルム用に用いることができ、特に紫外線硬化型の接着フィルム用に好適に用いられる。以下、紫外線硬化型の接着フィルムとして、光硬化型の異方性導電フィルムを用いる場合を例に挙げて説明する。例えばリール部材1を紫外線硬化型の異方性導電フィルム用のリール部材として用いることにより、例えば異方性導電フィルムを本硬化させるまでの間、異方性導電フィルムを室内照明下に放置した場合であっても、異方性導電フィルム中の紫外線硬化剤が室内照明から照射される光に含まれる紫外線に反応することを抑制できる。そのため、例えばイエロールームや紫外線カットされた蛍光灯等の特殊な環境を整備することなく、通常の室内照明下で異方性導電フィルムの保存安定性を良好にすることができる。
【0016】
リール部材1の巻芯2は、異方性導電フィルムを巻き付け可能となるように、例えば筒状に形成されている。巻芯2は、巻付装置、繰出装置等の回転軸が挿入される軸穴4を有する。軸穴4は、例えば断面が円形状であり、巻付装置、繰出装置等の回転軸を軸穴に差し込んだ状態で回転軸を駆動した場合、リール部材1が回転するようになっている。巻芯2は、例えば種々のプラスチック材料(例えばポリスチレン樹脂)を用いて形成することができる。
【0017】
側板3は、巻芯2の側面にそれぞれ形成されている。側板3は、例えば巻芯2に対して十分に大きな径を有する円板状である。巻芯2を介して隔てられた一対の側板3間の距離は、異方性導電フィルムの幅に応じて適宜設定することができる。側板3の厚さは、後述する光透過率を満たす範囲で適宜設定することができ、例えば異方性導電フィルムの幅に対して105〜120%程度とすることができる。側板3は、波長300〜500nmの光透過率が1%以下であり、0.5%以下が好ましく、0.1%以下がより好ましい。このような構成とすることにより、リール部材1に巻回された異方性導電フィルムの保存安定性を良好にすることができる。
【0018】
ところで、通常の室内照明下で異方性導電フィルムの保存安定性を良好にする方法として、紫外線吸収剤を含む淡色のプラスチック容器もしくはフィルム中に、異方性導電フィルムを収容することも考えられる(例えば特表2005−511787号公報を参照)。しかしこの方法では、容器に収容された異方性導電フィルムを容器の外部から確認できないことが懸念される。また、容器の内部を確認できないため、異方性導電フィルムの製品認識ラベル等をプラスチック容器に貼り付ける作業が必要となる。このように、淡色のプラスチック容器等に異方性導電フィルムを収容する方法では、異方性導電フィルムの使用時の負荷が増大してしまう(例えば作業性の低下やコストの増加になる)。
【0019】
そこで、リール部材1の側板3は、波長600〜780nmのいずれかの波長の光透過率が50%以上であることが好ましく、55%以上であることがより好ましく、60%以上であることがさらに好ましい。また、作業に支障を来たさない視認性を得るためには、波長600〜780nmのいずれかの波長の光透過率が90%未満であることが好ましく、85%以下であることがより好ましい。また、波長600〜780nmの範囲おいて、以上の光透過率の条件が両立するように、光透過率が50%以上、55%以上または60%以上の波長の範囲と、90%未満または85%以下の波長の範囲とが分けられるように存在することが、リール部材1に巻回された異方性導電フィルムの保存安定性及び視認性を両立するためには好ましい。例えば、側板3は、波長600nmの光透過率が50%以上であり、波長700nmの光透過率が75%以上であることが好ましく、波長600nmの光透過率が55%以上であり、波長700nmの光透過率が75%より大きいことがより好ましい。異方性導電フィルムの視認性が良好となることにより、例えば異方性導電フィルムのブロッキングの有無を容易に確認することができる。
【0020】
側板3は、例えば、種々のプラスチック材料(例えばポリスチレン樹脂)に紫外線遮蔽剤を含有させて形成することができる。紫外線遮蔽剤としては、紫外線吸収剤、及び紫外線散乱剤の少なくとも1種を用いることができる。
【0021】
紫外線吸収剤は、室内照明からの紫外線を吸収し、紫外線硬化型の異方性導電フィルム中の紫外線硬化剤が室内照明からの紫外線に反応することを抑制するために用いられる。紫外線吸収剤は、例えば、ベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤、トリアジン系の紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系の紫外線吸収剤、シアノアクリレート系の紫外線吸収剤、ヒドロキシベンゾエート系の紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系の紫外線吸収剤等を用いることができ、紫外線吸収性の観点からベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤、及びトリアジン系の紫外線吸収剤の少なくとも1種を用いることが好ましい。紫外線吸収剤の極大吸収波長は、紫外線硬化型の異方性導電フィルムの保存安定性の観点から、300〜500nmであることが好ましい。
【0022】
ベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤としては、例えば、2−(2−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(1−メチル−1−フェニルエチル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール、メチル3−(3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートとポリエチレングリコール300との反応生成物等が挙げられる。ベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤の具体的な商品名としては、例えば、TINUVIN PS、TINUVIN 384−2、TINUVIN 900、TINUVIN 928、TINUVIN 99−2、TINUVIN 1130等(以上BASF社製)が挙げられる。
【0023】
トリアジン系の紫外線吸収剤としては、例えば、2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジンと(2−エチルヘキシル−グリシド酸エステルの反応生成物、2,4−ビス「2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル」−6−(2,4−ジブトキシフェニル)−1,3−5−トリアジン等が挙げられる。トリアジン系の紫外線吸収剤の具体的な商品名としては、例えば、TINUVIN 400、TINUVIN 405、TINUVIN 460、TINUVIN 477、TINUVIN 479等(以上BASF社製)が挙げられる。
【0024】
紫外線散乱剤は、室内照明からの紫外線を散乱、反射させ、紫外線硬化型の異方性導電フィルム中の紫外線硬化剤が室内照明からの紫外線に反応することを抑制することができる。紫外線散乱剤としては、例えば酸化チタン、酸化亜鉛,酸化セリウム等を用いることができる。
【0025】
リール部材1は、射出成形などによって巻芯2及び一対の側板3を一体的に成形してもよいし、別々に成形された巻芯2及び一対の側板3を嵌合、接着することによって成形してもよい。また、リール部材1は、切削加工により作成してもよく、切削加工で部材を作成し、これを組み合わせてもよい。
【0026】
[第2の実施の形態]
第2の実施の形態に係るリール部材5は、例えば
図3、4に示すように、巻芯2と、側板6と、少なくとも側板6の表面に貼付された紫外線遮蔽フィルム7とを備え、紫外線遮蔽フィルム7の波長300〜500nmの光透過率が1%以下である。
【0027】
リール部材5を用いることにより、上述したリール部材1を用いたときと同様に、イエロールームや紫外線カットされた蛍光灯等の特殊な環境を整備することなく、通常の室内照明下で異方性導電フィルムの保存安定性を良好にすることができる。また、リール部材5は、一般的なリール部材の側板の表面に紫外線遮蔽フィルムを貼付することで得られる。そのため、上述したリール部材1のように、波長300〜500nmの光透過率が1%以下である側板3を準備しなくてもよいため、より簡易にリール部材を作製できる。
【0028】
紫外線遮蔽フィルム7の主成分は、通常透明樹脂であり、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂等が用いられる。
【0029】
紫外線遮蔽フィルム7は、波長300〜500nmの光透過率が1%以下であり、0.5%以下が好ましく、0.1%以下がより好ましい。また、紫外線遮蔽フィルム7は、視認性を良好にする観点から、波長600〜780nmのいずれかの波長の光透過率が50%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましく、70%以上であることがさらに好ましい。また、作業に支障を来たさない視認性を得るためには、波長600〜780nmのいずれかの波長の光透過率が90%未満であることが好ましく、85%以下であることがより好ましい。このようなフィルムとしては、紫外線遮蔽剤として、上述した紫外線吸収剤、及び紫外線散乱剤の少なくとも1種を含有するものが挙げられる。紫外線遮蔽フィルムの市販品としては、例えばルミクール1905等が挙げられる。また、リール部材5は、側板6と紫外線遮蔽フィルム7との積層部分において、波長600〜780nmのいずれかの波長の光透過率が50%以上であることが好ましい。
【0030】
紫外線遮蔽フィルム7は、上述した光透過率を満たす範囲で、透明樹脂及び紫外線遮蔽剤以外の他の成分をさらに含有していてもよい。
【0031】
紫外線遮蔽フィルム7の厚さは、上述した光透過率を満たす範囲で適宜設計することができ、例えば10〜50μmとすることができる。また、紫外線遮蔽フィルム7の貼付枚数も、上述した光透過率を満たす範囲で適宜設計することができ、1枚であってもよいし、2枚以上であってもよい。
【0032】
<フィルム巻装体>
本実施の形態に係るフィルム巻装体は、上述したリール部材と、リール部材の巻芯に巻回された紫外線硬化型の異方性導電フィルムとを備える。以下、
図5、6に示すように、上述したリール部材1に、紫外線硬化型の異方性導電フィルム8を巻回させたフィルム巻装体9を例に挙げて説明する。
【0033】
異方性導電フィルム8は、例えば
図7に示すように、剥離基材10と、剥離基材10上に形成されたバインダー樹脂層11とを備える。バインダー樹脂層11は、導電性粒子12を含有する。異方性導電フィルム8は、テープ状に成形されており、リール部材1の巻芯に、剥離基材10が外周側となるように巻回されることにより、巻芯2と側板3との間で形成された領域にフィルム巻装体9を構成する。
【0034】
剥離基材10は、例えば、基材に剥離剤が塗布されており、テープ状に成形されている。剥離基材10は、異方性導電フィルム8の乾燥を防ぐとともに、異方性導電フィルム8の形状を維持する。剥離基材10に用いられる基材としては、例えば、PET(Poly Ethylene Terephthalate)、OPP(Oriented Polypropylene)、PMP(Poly-4-methylpentene-1)、PTFE(Polytetrafluoroethylene)等が挙げられる。基材の色は、特に限定されず、例えば白色とすることができる。白色の基材を用いることにより、異方性導電フィルム8の本硬化前に、異方性導電フィルム8中の紫外線硬化剤が室内照明から照射される光に含まれる紫外線に反応することをより効果的に抑制することができる。
【0035】
バインダー樹脂層11は、光カチオン系や光アニオン系であってもよいし、光ラジカル系であってもよい。また、光ラジカル系と、光カチオン系を併用してもよい。以下、光カチオン系のバインダー樹脂層、及び光ラジカル系のバインダー樹脂層について説明する。
【0036】
[光カチオン系のバインダー樹脂層]
光カチオン系のバインダー樹脂層は、膜形成樹脂と、反応性樹脂としての光カチオン重合性化合物と、紫外線硬化剤としての光カチオン重合開始剤と、導電性粒子と、応力緩和剤を含有することが好ましい。
【0037】
[膜形成樹脂]
膜形成樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、フェノキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、飽和ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ブタジエン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂などが挙げられる。特に、膜形成樹脂としては、製膜性、加工性、接続信頼性等の観点からフェノキシ樹脂が好ましい。フェノキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールAとエピクロルヒドリンより合成される樹脂などを用いることができる。フェノキシ樹脂は、適宜合成したものを用いてもよいし、市販品を用いてもよい。
【0038】
バインダー樹脂層中の膜形成樹脂の含有量は、例えば20〜70質量%が好ましく、30〜60質量%がより好ましい。膜形成樹脂は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。2種以上の膜形成樹脂を併用する場合、その合計量が上記含有量の範囲を満たすことが好ましい。
【0039】
[光カチオン重合性化合物]
光カチオン重合性化合物は、カチオン種によって重合する官能基を有する化合物であり、エポキシ化合物、ビニルエーテル化合物、環状エーテル化合物等が挙げられる。
【0040】
エポキシ化合物としては、例えば、エピクロルヒドリンとビスフェノールAやビスフェノールF等から誘導されるビスフェノール型エポキシ樹脂、ポリグリシジルエーテル、ポリグリシジルエステル、芳香族エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物、ノボラック型エポキシ化合物、グリシジルアミン系エポキシ化合物、グリシジルエステル系エポキシ化合物などが挙げられる。
【0041】
バインダー樹脂層中の光カチオン重合性化合物の含有量は、例えば5〜60質量%が好ましく、10〜50質量%がより好ましい。光カチオン重合性化合物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。2種以上の光カチオン重合性化合物を併用する場合、その合計量が上記含有量の範囲を満たすことが好ましい。
【0042】
[光カチオン重合開始剤]
光カチオン重合開始剤としては、例えば、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、芳香族ジアゾニウム塩、ホスホニウム塩、セレノニウム塩などのオニウム塩、金属アレーン錯体、シラノール/アルミニウム錯体などの錯体化合物、ベンゾイントシレート、o−ニトロベンジルトシレートなどが挙げられる。また、塩を形成する際の対アニオンとしては、プロピレンカーボネート、ヘキサフルオロアンチモネート、ヘキサフルオロホスフェート、テトラフルオロボレート、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどが挙げられる。
【0043】
光カチオン重合開始剤の極大吸収波長は、200〜400nmであることが好ましく、240〜380nmであることがより好ましい。これにより、例えば、波長365nmの紫外線照射により高い反応率を得ることができる。このような極大吸収波長を有する光カチオン重合開始剤の具体例としては、IRGACURE250、IRGACURE270(以上、BASF社製)などが挙げられる。
【0044】
バインダー樹脂層中の光カチオン重合開始剤の含有量は、例えば0.5〜10質量%が好ましく、1〜8質量%がより好ましい。光カチオン重合性化合物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。2種以上の光カチオン重合開始剤を併用する場合、その合計量が上記含有量の範囲を満たすことが好ましい。
【0045】
[導電性粒子]
導電性粒子としては、例えば、金属粒子、金属被覆樹脂粒子などが挙げられる。金属粒子としては、例えば、ニッケル、コバルト、銀、銅、金、パラジウム、半田などが挙げられる。これらの中でも、ニッケル、銀、銅を用いることが好ましい。また、金属粒子として、表面酸化を防ぐ目的で、その表面に金、パラジウムを施したものを用いてもよい。また、金属粒子として、表面に金属突起や有機物で絶縁皮膜を施したものを用いてもよい。導電性粒子は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0046】
金属被覆樹脂粒子は、樹脂粒子の表面を金属で被覆した粒子であり、例えば、樹脂粒子の表面をニッケル、銀、半田、銅、金、及びパラジウムの少なくともいずれかの金属で被覆した粒子などが挙げられる。金属被覆樹脂粒子は、表面に金属突起や有機物で絶縁皮膜を施したものを用いてもよい。樹脂粒子への金属の被覆方法としては、例えば、無電解めっき法、スパッタリング法などが挙げられる。樹脂粒子の材質としては、例えば、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体、ベンゾグアナミン樹脂、架橋ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、スチレン−シリカ複合樹脂などが挙げられる。
【0047】
導電性粒子の平均粒子径は、1〜50μmが好ましく、2〜25μmがより好ましく、2〜10μmがさらに好ましい。なお、導電性粒子の平均粒子径は、任意に200個の導電性粒子について測定した粒子径の平均値であり、例えば走査型電子顕微鏡により測定することができる。
【0048】
バインダー樹脂層中の導電性粒子の含有量は、接続体の導通抵抗を良好にする観点から、例えば2〜50質量%が好ましく、3〜30質量%がより好ましい。2種以上の導電性粒子を併用する場合、その合計量が上記含有量の範囲を満たすことが好ましい。また、バインダー樹脂層中の導電性粒子の平均粒子密度は、接続信頼性及び絶縁信頼性の観点から、好ましくは100〜100000個/mm
2、より好ましくは500〜80000個/mm
2である。
【0049】
[応力緩和剤]
応力緩和剤は、バインダー樹脂層と、基板(例えばガラス基板、フレキシブル基板)との界面部分に生じる内部応力の強度を軽減する目的で用いられる。応力緩和剤は、ゴム系の弾性材料を用いることができる。ゴム系の弾性材料としては、例えば、ブタジエンゴム、アクリルゴム、ニトリルゴム等が挙げられ、内部応力をより多く吸収する観点からブタジエンゴム、特にスチレン・ブタジエンゴムが好ましい。
【0050】
バインダー樹脂層中の応力緩和剤の含有量は、例えば1〜20質量%が好ましく、1〜20質量%がより好ましい。応力緩和剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。2種以上の応力緩和剤を併用する場合、その合計量が上記含有量の範囲を満たすことが好ましい。
【0051】
[光ラジカル系のバインダー樹脂層]
光ラジカル系のバインダー樹脂層は、例えば、膜形成樹脂と、反応性樹脂としての光ラジカル重合性化合物と、紫外線硬化剤としての光ラジカル重合開始剤と、導電性粒子と、応力緩和剤を含有することが好ましい。
【0052】
光ラジカル系のバインダー樹脂層で用いられる膜形成樹脂、導電性粒子、及び応力緩和剤は、光カチオン系のバインダー樹脂層で説明したものと同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0053】
[光ラジカル重合性化合物]
光ラジカル重合性化合物は、活性ラジカルによって重合する官能基を有する物質であり、(メタ)アクリレート、マレイミド化合物などが挙げられる。また、光ラジカル重合性化合物は、モノマー、又はオリゴマーのいずれの状態で用いることもでき、モノマーとオリゴマーとを併用してもよい。なお、本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリル酸エステル(アクリレート)とメタクリル酸エステル(メタクリレート)とを包含する意味である。
【0054】
(メタ)アクリレートとしては、エポキシアクリレートオリゴマー、ウレタンアクリレートオリゴマー、ポリエーテルアクリレートオリゴマー、ポリエステルアクリレートオリゴマーなどの光重合性オリゴマー;トリメチロールプロパントリアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリアルキレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールアクリレート、2−シアノエチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、ジシクロベンテニロキシエチルアクリレート、2−(2−エトキシエトキシ)エチルアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、イソボルニルアクリレート、イソデシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、n−ラウリルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、2−フェノキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリールアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートなどの光重合性単官能又は多官能アクリレートモノマーなどが挙げられる。
【0055】
バインダー樹脂層中の光ラジカル重合性化合物の含有量は、例えば20〜70質量%とすることができ、30〜60質量%とすることもできる。光ラジカル重合性化合物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。2種以上の光ラジカル重合性化合物を併用する場合、その合計量が上記含有量の範囲を満たすことが好ましい。
【0056】
[光ラジカル重合開始剤]
光ラジカル重合開始剤は、公知の光ラジカル重合開始剤の中から適宜選択して使用することができる。光ラジカル重合開始剤としては、例えば、アルキルフェノン系光重合開始剤、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤、オキシムエステル系光重合開始剤等が挙げられる。
【0057】
光ラジカル重合開始剤の具体例としては、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド(IRGACURE819)、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1(IRGACURE369)、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン(IRGACURE379)、1.2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)](IRGACURE OXE01)、2−ヒドロキシ−2−シクロヘキシルアセトフェノン(IRGACURE184)、α−ヒドロキシ−α,α´−ジメチルアセトフェノン(DAROCUR1173)、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン(IRGACURE651)、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン(DAROCUR2959)、2−ヒドロキシ−1−{4−[2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル]−ベンジル}フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン(IRGACURE127、以上BASF社製)等が挙げられる。
【0058】
光ラジカル重合開始剤の極大吸収波長は、200〜400nmが好ましく、240〜380nmがより好ましい。これにより、例えば、波長365nmの紫外線照射により高い反応率を得ることができる。
【0059】
バインダー樹脂層中の光ラジカル重合開始剤の含有量は、例えば0.5〜10質量%とすることができ、1〜8質量%とすることもできる。光ラジカル重合開始剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。2種以上の光ラジカル重合開始剤を併用する場合、その合計量が上記含有量の範囲を満たすことが好ましい。
【0060】
バインダー樹脂層は、目的に応じて上述した成分以外の他の成分を含有していてもよい。他の成分としては、例えば、シランカップリング剤などを用いることができる。
【0061】
バインダー樹脂層は、1層構造であってもよいし、2層以上の構造であってもよい。2層以上の構造の例としては、例えば、導電性粒子を含有する導電性粒子含有層と、絶縁性樹脂層とからなる2層構造のバインダー樹脂層が挙げられる。バインダー樹脂層の平均厚さは、目的に応じて適宜選択することができ、例えば5〜30μmとすることができる。バインダー樹脂層が2層以上の場合、各層の合計膜厚が上記平均厚さを満たすことが好ましい。
【0062】
<接続体の製造方法>
本実施の形態に係る接続体の製造方法は、例えば、上述した異方性導電フィルムを基板の端子上に貼り付ける貼付工程と、異方性導電フィルム上に電子部品を載置する載置工程と、電子部品を加熱ツールにより押圧するとともに、紫外線を照射し、異方性導電フィルムを硬化させる硬化工程とを有する。
【0063】
[貼付工程]
貼付工程では、例えば
図8に示すように、異方性導電フィルム8を、基板20の端子20a上に貼り付ける。
【0064】
基板20としては、LCDパネルや有機EL(OLED)などのフラットパネルディスプレイ用途、タッチパネル用途などのガラス基板、プリント配線板などが挙げられる。プリント配線板の材質は特に限定されない。プリント配線板の材質は、例えば熱可塑性樹脂などのプラスチックやセラミックなどでもよい。また、ガラス基板も透明性の高いものであれば特に限定されず、熱可塑性樹脂などのプラスチック基板であってもよい。基板20の大きさ、形状、構造は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0065】
[載置工程]
載置工程では、例えば
図9に示すように、異方性導電フィルム8上に電子部品22を載置する。具体的には、異方性導電フィルム8に電子部品22の端子22aが接するように電子部品22を載置する。
【0066】
電子部品22は、例えばフレキシブル基板、テープキャリアパッケージ基板、ICなどが挙げられる。また、ICをフレキシブル基板に実装したCOF(Chip On Film)などであってもよい。
【0067】
[硬化工程]
硬化工程では、電子部品22を加熱ツールにより押圧するとともに、紫外線を照射し、異方性導電フィルム8を硬化させる。加熱ツールにより押圧する処理は、紫外線照射の前に開始し、紫外線照射の終了まで、又は紫外線照射の終了後所定時間後まで行うことが好ましい。
【0068】
電子部品22が加熱及び押圧されることにより、例えば
図10に示すように異方性導電フィルム8が流動し、基板20の端子20aと電子部品22の端子22aとが導電性粒子12を介して接続される。そして、基板20側から紫外線を照射することにより、異方性導電フィルム8が本硬化し、異方性導電膜24が形成される。
【0069】
加熱の温度(到達温度)は、例えば、異方性導電性フィルム8の流動性の観点から、80℃〜140℃とすることが好ましい。また、押圧の圧力は、例えば、0.1MPa〜100MPaとすることが好ましい。加熱及び押圧の時間は、例えば、0.5〜120秒間とすることができる。
【0070】
紫外線の照射は、基板20側から行ってもよいし、電子部品22側から行ってもよい。例えば、基板20側に配置された紫外線照射器23より照射された紫外線は、基板20を支持するガラス等の透明な支持台、及びこの支持台に支持された基板を通過して異方性導電フィルム8に照射される。紫外線照射器23は、目的に応じて適宜選択することができ、例えば365nmなどに最大発光波長を持つLEDランプ、365nmを主波長とし、254nm、303nm、313nmの紫外線を放射する水銀ランプ等を用いることができる。
【0071】
また、本実施の形態に係る接続体の製造方法は、上述した仮貼工程、載置工程、及び硬化工程以外の他の工程をさらに有していてもよい。他の工程として、例えば、仮貼工程と載置工程の間に、異方性導電フィルム側から紫外線を照射し、異方性導電フィルムを仮硬化させる工程をさらに有してもよい。
【0072】
また、本実施の形態に係る接続体の製造方法は、上述した異方性導電フィルムを基板の端子上に貼り付ける工程と、異方性導電フィルム上(異方性導電フィルム側)から異方性導電フィルム全面に対して紫外線を照射する工程と、上記異方性導電フィルム上に電子部品を載置する工程と、加圧ツールにより基板の端子と電子部品の端子とを接続する工程を有してもよい。接続する工程は、熱によるものでもよく、熱と光を併用したものであってもよい。熱と光を併用する場合の光の照射方向は、基板側からであることが好ましい。
【実施例】
【0073】
以下、本発明の実施例について説明する。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0074】
[実施例1]
[異方性導電フィルムの作製]
本実施例では以下の化合物を用いて異方性導電フィルムを作製した。
フェノキシ樹脂:YP50、新日鐵化学社製
エポキシアクリレート樹脂:EBECRYL 600、ダイセル・オルネクス社製
スチレン・ブタジエンゴム:グレード0589、JSR社製
光ラジカル重合開始剤:IRGACURE 369、BASF社製
導電性粒子:AUL704、積水化学工業社製
【0075】
フェノキシ樹脂50質量部、エポキシアクリレート樹脂15質量部、スチレン・ブタジエンゴム10質量部、光ラジカル重合開始剤5質量部、及び導電性粒子20質量部を均一に混合し、固形分50質量%の組成物を得た。得られた組成物を剥離処理したPET上にバーコーターで塗布した。PET上に塗布した組成物を70℃の熱風で5分間乾燥させ、平均厚みが20μmの異方性導電フィルムを得た。
【0076】
スリット設備を用いて、異方性導電フィルム(原反)を幅1.8mm、長さ10mにスリットした。スリットした異方性導電フィルムをリール部材の巻芯に巻回させることにより、フィルム巻装体を得た。リール部材の側板は、紫外線遮蔽剤(2−2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−クロロベンゾトリアゾール、チヌビン(登録商標)326、BASF社製)を0.2質量%含有し、側板の波長300〜500nmの光透過率が1%以下であり、波長600〜780nmのいずれかの波長の光透過率が60%以上であった。具体的には、側板は、波長600nmの光透過率が50〜60%であり、波長700nmの光透過率が75%より大きい数値であった。
【0077】
フィルム巻装体の視認性は、室内照明下で目視によりリール部材の内部、すなわち異方性導電フィルムの状態が確認できる場合を「OK」と評価し、確認できない場合を「NG」と評価した。例えば
図6に示すフィルム巻装体9において、A方向から目視によりリール部材の内部、すなわち異方性導電フィルム8の状態が確認できるかどうかを評価した。フィルム巻装体の視認性は、実用上問題ないことを確認した。
【0078】
[特性評価]
評価素子として、以下の評価用ICを用いた。
外形:1.8mm×20mm
厚さ:0.5mm
金メッキバンプ外形:30μm×85μm
金メッキバンプ高さ:15μm
【0079】
評価用ICが接続される評価基材として、ガラス厚0.7mmのITOコーティングガラスを用いた。
【0080】
このITOコーティングガラスに異方性導電フィルムを介して評価用ICを熱加圧、及び光照射によって接続した接続体サンプルを形成した。熱加圧条件は、100℃、70MPa、5秒であり、加熱押圧ヘッドと評価用ICとの間に緩衝材として厚さ50μmのテフロン(登録商標)を介在させた。光照射条件は、熱加圧開始2秒後から、積算光量が2000mJ/cm
2となるように設定した。
【0081】
[接続体の導通抵抗の評価]
接続体について、30箇所の端子間の抵抗値(Ω)を、4端子法で電流1mAを流した際の導通抵抗値(平均値、及び最大値)を測定した。また、同様に、通常の蛍光灯下において常温で24時間放置したフィルム巻装体を用いた場合の接続体の導通抵抗値を評価した。
【0082】
[実施例2]
実施例2では、紫外線遮蔽剤を含有しないリール部材であって、側板の表面に紫外線遮蔽フィルム(製品名:ルミクール1905、光透過率を下記表に示す)が貼付されたリール部材を用いたこと以外は実施例1と同様の条件で評価を行った。なお、側板の表面に紫外線遮蔽フィルム(ルミクール1905)が貼付されたリール部材において、側板と紫外線遮蔽フィルムの積層部分は、波長780nmの光透過率が84.1%であり、波長600nmの光透過率が55.3%であった。
【0083】
[比較例1]
比較例1では、紫外線遮蔽剤を含有しないリール部材を用いたこと以外は実施例1と同様の条件で評価を行った。
【0084】
[比較例2]
比較例2では、紫外線遮蔽剤に代えて等量の黒色色素(NUBIAN BLACK PC‐5856、オリエント化学工業社製)を含有するリール部材を用いたこと以外は実施例1と同様の条件で評価を行った。
【0085】
【表1】
【0086】
実施例では、側板の波長300〜500nmの光透過率が1%以下であるリール部材、又は、側板の表面に波長300〜500nmの光透過率が1%以下である紫外線遮蔽フィルムを貼付したリール部材を用いたため、通常の蛍光灯下に放置したフィルム巻装体を用いた場合でも接続体の導通抵抗値の上昇を抑制できた。すなわち、実施例では、通常の室内照明下で異方性導電フィルムの保存安定性が良好であることが分かった。
【0087】
また、実施例では、側板の波長600〜780nmのいずれかの波長の光透過率が60%以上であるリール部材、又は、側板と紫外線遮蔽フィルムの波長600〜780nmのいずれかの波長の光透過率が60%以上であるリール部材を用いたため、側板側からの異方性導電フィルムの視認性が良好であった。
【0088】
一方、比較例1、2では、波長300〜500nmの光透過率が1%以下であるリール部材、又は、側板の表面に波長300〜500nmの光透過率が1%以下である紫外線遮蔽フィルムを貼付したリール部材を用いなかったため、通常の室内照明下で異方性導電フィルムの保存安定性が良好でないことが分かった。