【解決手段】グラフェン製造装置1は、土状黒鉛又は使用済みリチウムイオン電池の負極から回収された黒鉛が水と混合されてなる黒鉛含有液に、強い剪断力を加えることにより、黒鉛から黒鉛層を剥離させてグラフェンを生成する。グラフェン製造装置1は、黒鉛含有液を加圧して吐出する加圧ポンプ3と、加圧ポンプ3から吐出された黒鉛含有液を受け入れ、該黒鉛含有液の圧力エネルギを運動エネルギに変換することにより黒鉛含有液のジェット流を生成し、該ジェット流中に生じる剪断力により黒鉛から黒鉛層を剥離させてグラフェンを生成する剥離器4とを備えている。
鱗状黒鉛又は鱗片状黒鉛に比べて結晶子が小さい黒鉛片と、該黒鉛片と反応しない媒体液とを含む黒鉛含有液に剪断力を加えることにより、黒鉛片から黒鉛層を剥離させてグラフェンを生成するグラフェンの製造装置であって、
黒鉛含有液を加圧して吐出する加圧ポンプと、
前記加圧ポンプから吐出された黒鉛含有液を受け入れ、該黒鉛含有液の圧力エネルギを運動エネルギに変換することにより黒鉛含有液のジェット流を生成し、該ジェット流中に生じる剪断力により黒鉛片から黒鉛層を剥離させてグラフェンを生成する剥離器とを備えていることを特徴とするグラフェンの製造装置。
前記剥離器が、それぞれ細孔を有し黒鉛含有液の流れ方向に関して上流側から下流側に向かって順に、各細孔が互いに直列に接続されるよう直列配置された第1〜第3細孔部材を有していて、前記第1〜第3細孔部材の細孔の内直径をそれぞれd1、d2、d3とすれば、各内直径d1、d2、d3が、d2>d1>d3の関係を満たすように設定されていることを特徴とする請求項1に記載のグラフェンの製造装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
物理的剥離法は、黒鉛本体に対して複雑な化学的処理を施す必要がないので、グラフェンの製造工程が簡素であるといった利点があるが、例えば「スコッチテープ(登録商標)法」は、グラフェンを大量生産するのには適していない。このため、物理的剥離法を用いてグラフェンを大量生産する場合、黒鉛本体の両面に強い剪断力を作用させることができる手段が必要とされる。しかしながら、現実のグラフェンの製造分野ではこのような手段は見当たらず、現時点では黒鉛本体に何らかの前処理を施したり、特殊条件下で剥離させたりするようにしている。
【0007】
このように、物理的剥離法において黒鉛本体に前処理を施し、あるいは特殊条件下で剥離させてグラフェンを製造する場合、前処理や特殊条件下での黒鉛本体の破砕ないしは粉砕により、黒鉛本体内で黒鉛層間(炭素結晶間)に微小な結晶歪みが生じて広がり、剥離装置の効率を低下させるといった問題がある。本発明は、上記従来の問題を解決するためになされたものであって、黒鉛本体に前処理を施したり特殊条件を用いたりすることなく、剥離法によりグラフェンを容易かつ効率的に製造することを可能にする簡素な手段を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためになされた本発明に係るグラフェンの製造装置は、鱗状黒鉛又は鱗片状黒鉛に比べて結晶子が小さい黒鉛片(すなわち、黒鉛片内で隣り合う黒鉛層の間の結合が鱗状黒鉛又は鱗片状黒鉛に比べて小さい黒鉛片)と、該黒鉛片と反応しない媒体液とを含む黒鉛含有液に強い剪断力を加えることにより、黒鉛片から黒鉛層を剥離させてグラフェンを生成することを基本的な特徴とする。このグラフェンの製造装置は、好ましく、黒鉛含有液を加圧して吐出する加圧ポンプと、剥離器とを備えている。ここで、剥離器は、加圧ポンプから吐出された黒鉛含有液を受け入れ、該黒鉛含有液の圧力エネルギを運動エネルギに変換することにより黒鉛含有液のジェット流を生成し、該ジェット流中に生じる強い剪断力により黒鉛片から黒鉛層を剥離させてグラフェンを生成する。
【0009】
本発明に係るグラフェンの製造装置において、剥離器は、それぞれ細孔を有し黒鉛含有液の流れ方向に関して上流側から下流側に向かって順に、各細孔が互いに直列に接続されるよう直列配置された第1〜第3細孔部材を有しているのが好ましい。この場合、第1〜第3細孔部材の細孔の内直径をそれぞれd
1、d
2、d
3とすれば、各内直径d
1、d
2、d
3は、d
2>d
1>d
3の関係を満たすように設定されているのが好ましい。
【0010】
本発明に係るグラフェンの製造装置において、黒鉛片は、土状黒鉛又は使用済みリチウムイオン電池の負極から回収された黒鉛であるのが好ましい。また、媒体液は水であるのが好ましい。
【0011】
本発明に係るグラフェンの製造方法は、下記の工程を有している。
(1) 鱗状黒鉛又は鱗片状黒鉛に比べて結晶子が小さい黒鉛片を準備する工程。
(2) 黒鉛片と、該黒鉛片と反応しない媒体液とを混合して黒鉛含有液を生成する工程。
(3) 黒鉛含有液を加圧して、それぞれ細孔を有し各細孔が互いに直列に接続されるよう直列配置された複数の細孔部材を備えた剥離器に供給する工程。
このグラフェンの製造方法においては、剥離器内で、黒鉛含有液の圧力エネルギを運動エネルギに変換することにより黒鉛含有液のジェット流を生成し、ジェット流中に生じる強い剪断力により、黒鉛片から黒鉛層を剥離させてグラフェンを生成する。
【0012】
本発明に係るグラフェンの製造方法においては、黒鉛片として、土状黒鉛又は使用済みリチウムイオン電池の負極から回収された黒鉛を用いるのが好ましい。また、媒体液として水を用いるのが好ましい。
【0013】
本発明に係るもう1つのグラフェンの製造方法は、下記の工程を有している。
(1) 使用済みのリチウムイオン電池を解体して、負極材料である黒鉛片を回収する工程。
(2) 回収された黒鉛片と、該黒鉛片と反応しない媒体液とを混合して黒鉛含有液を生成する工程。
(3) 黒鉛含有液を加圧して、それぞれ細孔を有し各細孔が互いに直列に接続されるよう直列配置された複数の細孔部材を備えた剥離器に供給する工程。
このグラフェンの製造方法においては、剥離器内で、黒鉛含有液の圧力エネルギを運動エネルギに変換することにより黒鉛含有液のジェット流を生成し、ジェット流中に生じる強い剪断力により、黒鉛片から黒鉛層を剥離させてグラフェンを生成する。この場合、媒体液として水を用いるのが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るグラフェンの製造装置又は製造方法によれば、黒鉛片内で隣り合う黒鉛層の間の結合が鱗状黒鉛又は鱗片状黒鉛に比べて比較的小さくなっていることに加えて、剥離器内で黒鉛含有液のジェット流により黒鉛片の両面に強い剪断力が作用するので、黒鉛片(黒鉛本体)に前処理を施したり特殊条件を用いたりすることなく、物理的剥離法によりグラフェンを容易かつ効率的に製造することができる。また、化学的処理を必要としないので、グラフェンの製造装置又は製造方法を簡素なものとすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付の図面を参照しつつ、本発明の1つの実施形態を具体的に説明する。
図1Aは、本発明の1つの実施形態に係るグラフェン製造装置のシステム構成図である。
図1Aに示すように、グラフェン製造装置1は、黒鉛片ないしは黒鉛粒子と水の混合物である黒鉛含有液、又はグラフェンと水の混合物であるグラフェン含有液の流れ方向に関して、上流側から下流側に向かって順に直列に接続された、混合器2と、加圧ポンプ3と、剥離器4と、減圧器5と、貯槽6とを備えている。また、グラフェン製造装置1は、このように直列に接続された混合器2から貯槽6までの一連の設備とは切り離された、第1分離器7、第2分離器8及び分解器9を備えている。さらに、グラフェン製造装置1は、貯槽6内の黒鉛含有液を、管路を介して混合器2に返送するための輸送ポンプ10を備えている。
【0017】
混合器2は、詳しくは図示していないがその内部に攪拌機11が設けられ、混合器2に供給された黒鉛片と水とを攪拌機で混合して、巨視的には水中に黒鉛片がほぼ均一に分布している黒鉛含有液を生成する。また、混合器2は、このような黒鉛含有液を剥離器4に排出した後、後で説明するようにカーボンコート(アモルファスカーボン)等が除去された黒鉛片と水の混合物である黒鉛含有液を受け入れる。加圧ポンプ3は、管路を介して混合器2内の黒鉛含有液、又はカーボンコート等が除去された黒鉛含有液を吸入し、加圧して管路を介して剥離器4に供給する。剥離器4は、後で詳しく説明するように、ジェット流による強い剪断力により、黒鉛含有液中の黒鉛片に強い剪断力を加えて黒鉛片の表面に付着しているカーボンコートあるいはバインダを剥離し、又はカーボンコートが除去された黒鉛含有液中の黒鉛片に強い剪断力を加え、黒鉛片から黒鉛層を剥離させてグラフェンないしはグラフェン含有液を生成する。剥離器4から排出された黒鉛含有液又はグラフェン含有液は、管路を介して減圧器5に導入される。
【0018】
減圧器5は、後で詳しく説明するように、剥離器4内の黒鉛含有液又はグラフェン含有液に対して所定の背圧をかけ、剥離器4の内部におけるバブリングの発生を防止するとともに、黒鉛含有液又はグラフェン含有液の圧力を段階的ないしは漸次的に減圧し、減圧器5の出口部における黒鉛含有液又はグラフェン含有液の圧力を大気圧まで低下させる。圧力が大気圧まで低下した黒鉛含有液又はグラフェン含有液は、攪拌機12を備えた貯槽6に一時的に貯留される。
【0019】
第1分離器7は、カーボンコート等が剥離された黒鉛片を含む黒鉛含有液中に浮遊するカーボンコート(アモルファスカーボン)を浮上させて除去する浮上分離装置ないしは浮遊選鉱装置である。第2分離器8は、グラフェン含有液をグラフェンと水に分離する固液分離装置(例えば、濾過器、沈降分離器等)である。また、分解器9は、カーボンコートが除去された黒鉛含有液中の黒鉛片に付着している有機物、あるいは黒鉛含有液中に浮遊している有機物等の不純物を、例えば酸化剤(オゾン、過酸化水素等)で酸化して除去する設備である。
【0020】
図2は、剥離器4の構造を模式的に示す図である。
図2に示すように、剥離器4は、互いに直列に接続された、ノズル16と、円筒形のパイプ17と、本体部18とを備えている。ノズル16とパイプ17と本体部18とは、これらの中心軸が一直線となるように、すなわち同軸状に配置されている。本体部18は、黒鉛含有液ないしはグラフェン含有液の流れ方向(
図2中の位置関係では右向き)に関して、上流側から下流側に向かって順に並ぶ第1〜第3筒状部材19〜21(細孔部材)を備えている。第1〜第3筒状部材19〜21は、それぞれ、これらを中心軸方向に貫通する円柱形の第1〜第3孔部22〜24(細孔)を有している。なお、第1〜第3筒状部材19〜21は、リング状のパッキン15を介して互いに連結されている。
【0021】
第1〜第3孔部22〜24の直径をそれぞれd
1、d
2、d
3とすれば、各直径d
1、d
2、d
3は、d
2>d
1>d
3の関係を満たすように設定されている。ここで、パイプ17の内直径は、d
2より大きい値に設定されている。また、各パッキン25の内直径もd
2より大きい値に設定されている。なお、第1〜第3筒状部材19〜21の内直径は、例えば0.4〜4mmの範囲内で好ましく設定され、その長さは例えば4〜40mmの範囲内で好ましく設定される。
【0022】
剥離器4においては、比較的小径の第1筒状部材19(第1孔部22)は、比較的大径のパイプ17内の黒鉛含有液に対して背圧をかける。また、最も小径の第3筒状部材21(第3孔部24)は、最も大径の第2筒状部材20(第2孔部23)内の黒鉛含有液に対して背圧をかける。ここで、パッキン25の内直径は、第2筒状部材20(第2孔部23)の内直径d
2より大きいので、黒鉛含有液の圧力を瞬間的に緩和することができ、第1〜第3筒状部材19〜21は互いに独立した減圧作用を生じさせることができる。
【0023】
加圧ポンプ3によって加圧された高圧(例えば50〜200MPa、最も好ましくは100MPa)の黒鉛含有液(又はカーボンコート等が除去された黒鉛含有液)は、ノズル16により、高速のジェット流に変換されてパイプ17内に噴出する。パイプ17内に噴出したジェット流は、周囲に存在する黒鉛含有液に強い剪断力を加えて、黒鉛片の表面に付着しているカーボンコート(アモルファスカーボン)等を剥離させて除去し、又は黒鉛片から黒鉛層を剥離させてグラフェンを生成する。そして、黒鉛含有液のジェット流はその運動エネルギを失いつつ第1〜第3筒状部材19〜21内に流入し、第1〜第3筒状部材19〜21内に存在する黒鉛含有液に剪断力を加え、さらに黒鉛片の表面に付着しているカーボンコート等を剥離させて除去し、又は黒鉛片から黒鉛層を剥離させてグラフェンを生成する。
【0024】
このように、剥離器4内で黒鉛含有液に強い剪断力を加えることができるので、黒鉛片の表面に付着しているカーボンコート等を効果的に剥離させすることができる。また、後で詳しく説明するように、グラフェンの材料として、黒鉛片内で隣り合う黒鉛層の間の結合が鱗状黒鉛又は鱗片状黒鉛に比べて比較的小さくなっている黒鉛片を用いるので、黒鉛片から黒鉛層を容易にかつ効率的に剥離させてグラフェンを生成することができる。その際、減圧器5によって剥離器4に背圧がかけられるので、剥離器4内におけるバブリングの発生を防止することができる。
【0025】
減圧器5は、詳しくは図示していないが、黒鉛含有液又はグラフェン含有液の流入部と流出部との間に、多段(例えば、3段以上)の筒状部材又はキャピラリからなる減圧部材が連結された構造を有し、剥離器4に対して所定の背圧を与える一方、該背圧を多段に減圧するように構成されたものである。例えば、減圧部材として、上流側から下流側に向かって第1〜第3の3つの筒状部材又はキャピラリを用いる場合、第1〜第3の筒状部材又はキャピラリの内径D
1、D
2、D
3を、D
2>D
3>D
1の関係を満たすように設定すれば、高圧の黒鉛含有液又はグラフェン含有液の圧力を、バブリングを生じさせることなく円滑に大気圧まで低下させることができる。
【0026】
以下、
図1Aに示すグラフェン製造装置1を用いたグラフェンの製造方法の一例を説明する。このグラフェンの製造方法では、鱗状黒鉛又は鱗片状黒鉛に比べて結晶子が小さい黒鉛片、すなわち黒鉛片内で隣り合う黒鉛層の間の結合が鱗状黒鉛又は鱗片状黒鉛に比べて比較的小さくなっている黒鉛片を用いる。このように、本発明に係るグラフェンの製造方法では、鱗状黒鉛や鱗片状黒鉛ではなく、鱗状黒鉛又は鱗片状黒鉛に比べて結晶子が小さい黒鉛片を用いているが、これは以下で説明するような黒鉛及びグラフェンの一般的性質に基づいている。
【0027】
まず、黒鉛及びグラフェンの一般的性質並びにこのような黒鉛における剥離理論を説明する。
(1) 黒鉛の性質
天然黒鉛粉末は、地質学的には地球上で広く散見され、鉱物として産出される。通常、これらに物理製錬又は化学製錬を施し、高純度化して各種用途に用いている。このほか、各種有機物を非酸化雰囲気において高温で熱処理することにより人造黒鉛が得られる。また、処理温度や原料を好ましく選択することにより、カーボンブラック、コークス、炭素繊維、活性炭などの炭素材料も得ることができるが、これらも微細な黒鉛結晶が集まった材料である。またCVD法によっても、CNTやグラフェンを製造することができる。
【0028】
しかし、黒鉛は通常の温度や圧力の下では溶融することはなく、溶解する媒体もほとんどない。このため、再結晶や電解による高純度化は難しく、包含する不純物を物理的に分離し、あるいは他の物質と反応させて溶解や気化させることにより単離しなければならない。例えば、金属不純物を酸で溶解洗浄したり、塩素ガスで塩化物として気化させたりするなどして単離することになる。
【0029】
また、黒鉛は比重が金属やその酸化物に比べ小さく(2.4)、親油性かつ親空気性であるので、黒鉛を油や空気の泡に吸着させて他の不純物と物理的に分離することができる(浮遊選鉱)。しかし、黒鉛は空気中では500℃以上で燃焼するので、有機不純物を燃焼させて単離するといった手法を用いるのは難しい。なお、グラフェンも同じ性質を有している。また、黒鉛は層状構造を有しており、この黒鉛層の一枚一枚がグラフェンである。理論上グラフェンとは一枚の場合のみを言うが、通常は10枚程度以下の複数のグラフェンの重なりを有するものもグラフェンと称される。
【0030】
(2) 黒鉛の用途
黒鉛は鉛筆の芯、耐火煉瓦、カーボンブラシ、導電性材料、熱伝導性材料、電池用導電材、潤滑剤などに幅広く利用されている。グラフェンもこのような性質を備えているが、黒鉛の性質はほぼグラフェンの性質に依存している。黒鉛が、例えば100層のグラフェンの積層物で構成されている場合、この黒鉛から剥離したグラフェンの1枚1枚が黒鉛と同様の特性をもつので、グラフェンを用いれば、添加量は黒鉛の1/100でよい。また、黒鉛はその面方向に対して非常に強度が高い物質であるので、グラフェン化することにより高強度材料として使用することができる。また、グラフェンは黒鉛とは電子特性が異なるので、半導体材料などにも応用することができる。
【0031】
(3) 黒鉛のグラフェン化理論
一般に、グラフェンは、黒鉛本体から物理的剥離法又は化学的剥離法により黒鉛層を一枚一枚、又は数枚数枚はがしていくことにより製造される。そして、前記のとおり、化学的剥離法では、黒鉛本体内において黒鉛層間に各種の物質を挿入することにより黒鉛層間隔を広げ、黒鉛層の剥離を容易にしている。しかしながら、このような化学的処理は、グラフェンの製造装置あるいは製造工程を複雑化するので、化学的処理を必要としない物理的剥離法が工業的に有利であり、本発明はこのような物理的剥離法を用いてグラフェンを製造しようとするものである。
【0032】
(4) 黒鉛の粉砕剥離
一般に、粉末を生成するための破砕ないしは粉砕は、粉砕機の衝撃力及び剪断力によって行われるが、黒鉛の場合、グラフェンの強度が強いことからも分かるように、黒鉛は面方向からはほとんど破砕ないしは粉砕されない。また、黒鉛本体から黒鉛層をグラフェンとして剥離させるには、衝撃力だけではその効率が悪く、強い剪断力を長時間作用させることが必要である。しかし、現実にグラフェンの製造業界では、黒鉛本体に剪断力を効果的に長時間作用させることができる設備は見当たらない。
【0033】
また、一般に破砕ないしは粉砕には、ボールやビーズなどの粉砕メディアを用いて粉砕対象物を粉砕するメディアミルも用いられる。しかし、メディアミルを黒鉛本体からの黒鉛層の剥離に用いると、黒鉛の潤滑性により粉砕メディア間での粉砕対象物の粒子の捕捉が不十分なものとなり、黒鉛本体に剪断力を効率的に作用させることができない。このため、一般に、グラフェンの物理的剥離には、超音波分散機、Rotor-Stator型乳化器、高圧乳化器などを用いて、黒鉛本体に剪断力を加えるようにしている。これらの機器では、キャビテーションや、粒子同士の衝突や、インパクトパネルと粒子の衝突などにより発生する衝撃力が利用されるので、十分な剪断力を作用させることができず、たとえ強い剪断力を加えることができても、短時間しか作用させることができない。
【0034】
(5) 剥離設備
そこで、前記のとおり、本発明に係るグラフェン製造装置1では、このような剥離設備として、例えば
図2に示すような流体式の剥離器4を用いている。この剥離器4は、強い剪断力が作用する時間や、剪断力が作用する方向や、剪断力と衝撃力の調整(バランス)や、剪断力及び衝撃力を作用させるタイミングなどの操作パラメータを制御することができるので、黒鉛片から黒鉛層を剥離してグラフェンを生成するのに適している。また、剥離器4によれば、投入エネルギの大半ないしはほとんど全部が剪断力に変換されるので、剪断力ないしは剪断エネルギは非常に大きい。このため、剥離器4を用いれば、黒鉛片の前処理や特殊条件下での剥離操作を必要とすることなく(もちろん、これらを施せば効率はさらによくなる。)、結晶性を歪めずに黒鉛片から黒鉛層(グラフェン)を剥離させることができる。
【0035】
次に、本発明に係るグラフェン製造装置1の製造工程で用いられる、グラフェンの原料としての黒鉛片の特徴を説明する。この黒鉛片は、前記のとおり、鱗状黒鉛又は鱗片状黒鉛に比べて結晶子が小さい黒鉛片、すなわち黒鉛片内で隣り合う黒鉛層の間の結合が鱗状黒鉛又は鱗片状黒鉛に比べて小さいものであるが、このような黒鉛片としては、例えば、使用済みのリチウムイオン電池の負極から回収された黒鉛や、土状黒鉛などが挙げられる。
【0036】
まず、使用済みのリチウムイオン電池の負極から回収される黒鉛の特徴を説明する。
(1) リチウムイオン電池の構造
図3は一般に用いられている普通のリチウムイオン電池の概略構成を示している。また、
図4は、このようなリチウムイオン電池の負極の構造を示している。ここで、負極の活物質は、大半ないしはほとんど全部が天然黒鉛であり、残りは人造黒鉛や炭素材である。なお、負極には、チタン酸化物やシリコンも少量使用されている。
【0037】
リチウムイオン電池は、例えば表1に示すような構成要素で構成されている。また、リチウムイオン電池の代表的な組成は、例えば表2に示すとおりである。ここで、負極を構成する炭素の大半ないしはほとんど全部が天然黒鉛であり、黒鉛表面には、通常、蒸着等により、厚さが数ナノメーターのアモルファスカーボン(非晶質炭素)のコーティング(カーボンコート)が施されている。黒鉛とカーボンコートの結合力は、炭素−炭素の共有結合力と、通常の分子間力とによるものと考えられる。
【0040】
(2) リチウムイオン電池の製造時における負極活物質の状態
図4に示すように、リチウムイオン電池の負極においては、活物質である黒鉛がバインダにより互いに接着され、またバインダにより黒鉛が集電材(銅箔)に接着されている。なお、電極は電解液に浸漬され、ほかの部材とは接着結合されていない。また、負極は、セパレータを介して正極と対向している。なお銅箔はリードを介して外部端子と接続されている。
【0041】
(3) リチウムイオン電池の充放電時における黒鉛の状態
図5は、リチウムイオン電池の充電時における黒鉛の状態(左側)と、放電時における黒鉛の状態(右側)とを示している。充放電時において、黒鉛層間ではリチウムイオンの挿入・脱離が起こり、黒鉛層間は10%程度の膨張・収縮を繰り返す。使用済み電池の場合、1000〜2000回以上の挿入・脱離と膨張・収縮とが繰り返される。また、隣り合うグラフェン層の積重なり方が、AB配列とAA配列の間で変化を繰り返す。
【0042】
(4) 使用済みのリチウムイオン電池の負極の状態
バインダは、電気化学反応による分解や黒鉛の収縮・膨張により活物質から剥離し、活物質と銅箔集電体及び活物質との間の接着力は失われている。このため、黒鉛とバインダ銅箔は、容易に分離することができる。
【0043】
(5) 使用済みリチウムイオン電池の黒鉛の状態
カーボンコートを構成するアモルファスカーボンは、電解質と黒鉛の電気化学反応(充放電)に深く関与しているため、黒鉛とカーボンコートの接着力は、充放電を繰り返す間に結合欠陥が生じ、両者の結合力は弱くなる。なお、通常は危険であるため、分解は放電状態、すなわちリチウムイオンが黒鉛層間から脱離した状態で行われる。また、リチウムイオンの挿入・脱離反応は、理想的には可逆的な反応であるが、実際には充放電による膨張・収縮の影響により、挿入・脱離の痕跡が残り、黒鉛層間がわずか拡大し、また結晶欠陥が生じ、更に黒鉛層間や結晶欠陥にリチウムイオンが残存している。このため、黒鉛は前処理を施されたような状態となっており、剥離器4により容易に黒鉛層を剥離することができる。
【0044】
(6) 使用済みのリチウムイオン電池からの負極黒鉛の回収
使用済みのリチウムイオン電池からの負極黒鉛の回収は、まず使用済みリチウムイオン電池から負極を分離し、次に黒鉛と他の成分とを分離することにより行われる。使用済み電池からの負極の分離は、例えば特許文献3〜5に開示された公知の手法により行うことができる。これにより、負極とそれ以外の成分とを分離することができる。このような分離方法は、湿式法(例えば、特許文献3参照)と乾式法(例えば、特許文献4参照)とに大別される。また、特許文献5には、電池を極低温中で不活性化する方法が開示されている。なお、特許文献6には、使用済みのリチウムイオン電池から黒鉛を回収する方法が開示されているが、これは黒鉛を電池用活物質として再生する方法である。
【0045】
黒鉛と他の成分の分離は、例えば以下のような手順で行うことができる。まず、黒鉛と金属成分(金属又は金属酸化物)や他の灰分(シリカ、アルミナ)の分離は、黒鉛の比重が金属成分又は他の灰分の比重よりも小さいこと、黒鉛が親油性であることなどに鑑み、浮遊選鉱法を用いて行うことができる。
【0046】
バインダは、前記のとおり、基本的には黒鉛含有液中(水中)で黒鉛とは分離している。なお、バインダは、黒鉛と付着している場合でも結合力は弱い。また、アモルファスカーボンからなるカーボンコートは、前記のとおり、黒鉛の表面を覆っているが、黒鉛との結合は強くない。このように、黒鉛とカーボンコート及びバインダとは、炭素−炭素間結合が弱くなっているので、剥離器4で容易に効率よく剥離することができる。なお、超音波分散機などでも、黒鉛からカーボンコート及びバインダを剥離することが可能である。
【0047】
かくして、剥離器4は、黒鉛片からカーボンコート及びバインダを剥離するのに用いられる一方、黒鉛片から黒鉛層を剥離してグラフェンを生成するのにも用いられる。そこで、剥離器4の操作パラメータ、例えば剥離器4に供給する黒鉛含有液又はグラフェン含有液の圧力及び流量等は、カーボンコート及びバインダを剥離する場合と、黒鉛片から黒鉛層を剥離する場合とで切り換えるのが好ましい。例えば、黒鉛片から黒鉛層を剥離する場合の操作パラメータをαとし、黒鉛片からカーボンコート及びバインダを剥離する場合の操作パラメータをβとすれば、操作パラメータα、βは表3のように設定される。
【0049】
剥離器4を操作パラメータβで操作した場合、カーボンコート・バインダが剥離された黒鉛は粒径が大きいので、黒鉛含有液中(水中)で沈降する。このため、例えば浮遊選鉱法により、水面近傍のカーボンコート及びバインダを、容易に取り除くことができる。なお、バインダあるいは有機物は、オゾンマイクロバブル法などにより酸化分解して取り除くことができる。
【0050】
(7) グラフェンの製造工程
以下、
図1Aに示すグラフェン製造装置1を用いたグラフェンの製造工程の一例を説明する。グラフェンは、例えば次の工程を経て、使用済みのリチウムイオン電池の負極から回収された黒鉛から製造することができる。
【0051】
1) 使用済みのリチウムイオン電池を短絡させることにより放電状態にする。
2) リチウムイオン電池のキャップ部分を取り外す。
3) 端子と電心部を切り離す。
4) 電心部を水に浸漬する。水素発生が起こるので注意する。水素発生が終了するまで放置する。
5) 電心部を、負極とセパレータと正極とに分離する。より詳しくは、電心部を、負極活物質と、正極活物質と、セパレータと、銅箔と、アルミ箔とに分離する。
【0052】
6) 正負極活物質は、箔から離れ水中に堆積する。
7) 正極バインダは水に溶解しないので、正極は大きな形を保っているが、負極は一次粒子まで分離しているので、100メッシュの篩でふるい分ける。
8) 篩上物は正極であり、篩下物は負極である。
9) 篩下物を、水により洗浄して脱水するといった操作を繰り返す。これにより、水に溶解しているバインダもある程度除去される。
10) 剥離器4の操作パラメータをβに設定し、グラフェン製造装置1の混合器2から貯槽6に至る一連の装置を運転する。この場合、例えば、黒鉛含有液の濃度を10wt%に設定し、黒鉛含有液の圧力を100MPaに設定し、黒鉛含有液の流量を100ml/8minに設定し、滞留時間を10分に設定する。なお、貯槽6内の黒鉛含有液は、輸送ポンプ10により、管路を介して混合器2に返送され、混合器2から貯槽6に至る一連の装置を繰り返し流通する。
【0053】
11) 第1分離器7を用いて、黒鉛含有液の表面に浮遊しているカーボンコート(アモルファスカーボン)を除去する(掻きとる)。
12) 分解器9を用いて、酸化剤による酸化処理(過酸化水素処理、オゾンマイクロバブル処理、ソリューションプラズマ処理等)で有機物を分解し、又は除去する。
13) 剥離器4の操作パラメータをαに設定し、カーボンコート、有機物等が除去された黒鉛含有液に対して、グラフェン製造装置1の混合器2から貯槽6に至る一連の装置で処理し、グラフェン含有液を生成する。この場合、例えば、黒鉛含有液の濃度を10wt%に設定し、黒鉛含有液の圧力を100MPaに設定し、黒鉛含有液の流量を100ml/8minに設定し、滞留時間を10分に設定する。なお、貯槽6内の黒鉛含有液は、輸送ポンプ10により、管路を介して混合器2に返送され、混合器2から貯槽6に至る一連の装置を繰り返し流通する。
14) 第2分離器8を用いて、グラフェンと水を分離し、グラフェンを得る。
【0054】
以下、原料として土状黒鉛を用いる場合のグラフェン製造方法を説明する。まず、土状黒鉛(特殊黒鉛)の特徴を説明する。
表4に示すように、黒鉛粉末は、天然黒鉛粉末と人造黒鉛粉末に分類される。黒鉛粉末(例えば、鱗状黒鉛)は、例えば
図6に示すような構造を有する結晶性の高い(理想的な黒鉛構造に近い)黒鉛粉末と、例えば
図7に示すような構造を有する結晶子が小さい、ないしは結晶性が低い黒鉛(例えば、土状黒鉛)とに分類される。
【0056】
黒鉛からのグラフェン剥離には、一般に、結晶性の高い黒鉛(以下「高結晶性黒鉛」という。)が用いられ、結晶性の低い黒鉛(以下「低結晶性黒鉛」という。)は用いられていない。しかし、これらの結晶性が低いと言われている低結晶性黒鉛粉末は、そうでないものに比べて、次のような特徴をもつ。
a) 黒鉛層間(グラフェン層間)が広い。
b) 黒鉛層(グラフェン層)が整列している割合が低い。
c) 体積当たりの結晶欠陥(単結晶の非連続あるいは折れ曲がった部分)が多い。
【0057】
したがって、低結晶性黒鉛の黒鉛層間(グラフェン層間)の結合エネルギは、高結晶性黒鉛に比べて明らかに小さい。また、くさびがすでに打ち込まれている状態となっている箇所が多い。このように、低結晶性黒鉛では、黒鉛層を一枚一枚はがすためのエネルギが高結晶性黒鉛に比べ明らかに小さいので、剥離器4により、黒鉛層を容易に剥離してグラフェンを生成することができる。低結晶性黒鉛の具体例は、表4に示されている。この場合、どの黒鉛あるいは炭素材料を選択しても良いが、天然の土状黒鉛がとくに好ましい。
【0058】
土状黒鉛は、石炭が更に高温高圧化で結晶化が進んだものと考えられており、鱗状黒鉛、鱗片状黒鉛とは明らかに成因ないしは組成が異なっている。天然の土状黒鉛は低価格であり、鱗状黒鉛ほどの導電性、潤滑性、純度などの特性が必要とされないもの、例えば電極用ペースト、鋳物塗料剤、乾電池、鉛筆、耐火物、製綱用保温材ゴム樹脂、固体潤滑剤等などに使われている。
【0059】
さらに、天然生成物であるため、人造黒鉛を精製する場合に比べて明らかにCO
2排出量が少ない。しかしながら、このような土状黒鉛粉末をグラフェンの製造に応用した事例は見当たらない。また、この黒鉛の一次粒子は粒度分布が狭く、ほとんどが数μ以下の粒子であるが、通常の微粒化した黒鉛に比べて、表面積が小さく(超微粒が少ない)グラフェン自体の耐熱性も高い。一般の土状黒鉛は純度が悪く、80%程度であるが、例えば特許文献7に開示された方法によって純度を高めることができる。不純物は二酸化ケイ素やアルミナや、酸化鉄などの微粉末であるため、剥離器4により不純物を分離することができる。不純物は親水性である一方、グラフェンは疎水性であるので、これらを浮遊選鉱を用いて分離することができる。
【0060】
原料として土状黒鉛を用いる場合は、
図1に示すグラフェン製造装置1において、混合器2から貯槽6までの一連の装置と、第2分離機8とを用いてグラフェンを製造することができる。この場合、土状黒鉛の表面にはアモルファスカーボン等は付着していないので、原料として使用済みのリチウムイオン電池の負極から回収された黒鉛を用いる場合とは異なり、第1分離機7及び分解器9を用いる必要はなく、また混合器2から貯槽6までの一連の装置は1回使用するだけでよい(2回使用する必要はない。)。
【0061】
かくして、剥離器4の操作パラメータをαに設定し、土状黒鉛と水の混合物である黒鉛含有液を、グラフェン製造装置1の混合器2から貯槽6に至る一連の装置で処理し、グラフェン含有液を生成することができる。この場合、例えば、黒鉛含有液の濃度を10wt%に設定し、黒鉛含有液の圧力を100MPaに設定し、黒鉛含有液の流量を100ml/8minに設定し、滞留時間を10分に設定する。この後、第2分離器8を用いて、グラフェンと水を分離し、グラフェンを得る。なお、貯槽6内の黒鉛含有液は、輸送ポンプ10により、管路を介して混合器2に返送され、混合器2から貯槽6に至る一連の装置を繰り返し流通する。
【0062】
前記のとおり、
図1に示すグラフェン製造装置1を用いて、使用済みのリチウムイオン電池の負極から回収された黒鉛からグラフェンを製造する場合は、まず混合器2から貯槽6に至る一連の装置を用いて黒鉛片からカーボンコート等を剥離・除去し、この後再び混合器2から貯槽6に至る一連の装置を用いて黒鉛片から黒鉛層を剥離し、グラフェンを生成する。すなわち、混合器2から貯槽6に至る一連の装置を2回使用してグラフェンを製造する。しかしながら、例えば
図1Bに示すように、加圧ポンプと剥離器と減圧器とで構成される剥離機構を2組設け、これらの2組の剥離機構を直列に接続し、連続プロセスでグラフェンを製造するようにしてもよい。
【0063】
図1Bに示すように、使用済みのリチウムイオン電池の負極から回収された黒鉛からグラフェンを連続プロセスで製造するグラフェン製造装置30は、黒鉛含有液ないしはグラフェン含有液の流れ方向に関して上流側から下流側に向かって順に直列に接続された、攪拌機31が付設された混合器32と、第1加圧ポンプ33と、第1剥離器34と、第1減圧器35と、第1分離器36と、分解器37と、第2加圧ポンプ38と、第2剥離器39と、第2減圧器40と、第2分離器41とを備えている。
【0064】
ここで、混合器32は、
図1Aに示すグラフェン製造装置1の混合器2と同様の構造及び機能を有している。第1、第2加圧ポンプ33、38は、グラフェン製造装置1の加圧ポンプ3と同様の構造及び機能を有している。第1、第2剥離器34、39は、グラフェン製造装置1の剥離器4と同様の構造及び機能を有している。ただし、第1剥離器34は操作パラメータβで運転され、第2剥離器39は操作パラメータαで運転される。第1、第2減圧器35、40は、グラフェン製造装置1の減圧器5と同様の構造及び機能を有している。また、第1、第2分離機36、41は、それぞれ、基本的にはグラフェン製造装置1の第1、第2分離機7、8と同様の構造及び機能を有している。ただし、第1、第2分離機36、41は連続操作が可能な構造のものである。分解器37は、基本的にはグラフェン製造装置1の分解器9と同様の構造及び機能を有している。ただし、分解器37は連続操作が可能な構造のものである。
【0065】
かくして、グラフェン製造装置30によれば、使用済みのリチウムイオン電池の負極から回収された黒鉛から、グラフェンを連続プロセスで製造することができ、
図1Aに示すグラフェン製造装置1に比べて省力化を図ることができ、また操作の自動化を図ることができる。
【0066】
以上、本発明に係るグラフェンの製造装置又は製造方法によれば、黒鉛片内で隣り合う黒鉛層の間の結合が鱗状黒鉛又は鱗片状黒鉛に比べて比較的小さくなっていることに加えて、剥離器4内で黒鉛含有液のジェット流により黒鉛片の両面に強い剪断力が作用するので、黒鉛片(黒鉛本体)に前処理を施したり特殊条件を用いたりすることなく、物理的剥離法によりグラフェンを容易かつ効率的に製造することができる。また、化学的処理を必要としないので、グラフェンの製造装置1又は製造工程を簡素なものとすることができる。