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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-171852(P2017-171852A)
(43)【公開日】2017年9月28日
(54)【発明の名称】被覆材
(51)【国際特許分類】
   C09D 201/00 20060101AFI20170901BHJP
   E04B 1/94 20060101ALI20170901BHJP
   C09D 7/12 20060101ALI20170901BHJP
   C09D 5/02 20060101ALI20170901BHJP
【FI】
   C09D201/00
   E04B1/94 U
   C09D7/12
   C09D5/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-62441(P2016-62441)
(22)【出願日】2016年3月25日
(71)【出願人】
【識別番号】510114125
【氏名又は名称】株式会社エフコンサルタント
(72)【発明者】
【氏名】軽賀 英人
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 明
【テーマコード(参考)】
2E001
4J038
【Fターム(参考)】
2E001DE01
2E001DE04
2E001HD11
4J038CE021
4J038CG141
4J038DA161
4J038HA166
4J038HA426
4J038JA17
4J038JC38
4J038KA03
4J038MA10
4J038NA14
4J038NA15
4J038PA18
4J038PB05
4J038PC02
(57)【要約】
【課題】
熱膨張性によって、優れた耐熱保護性を発揮することができる、新たな被覆材を提供する。
【解決手段】
本発明の被覆材は、結合剤、耐熱性付与剤、充填剤、及び溶剤を含む液状またはゲル状の粒子が、水性媒体に分散しており、上記耐熱性付与剤として、難燃剤及び/または発泡剤を含むことを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱膨張性を有する被覆材であって、
結合剤、耐熱性付与剤、充填剤、及び溶剤を含む液状またはゲル状の粒子が、水性媒体に分散しており、
上記耐熱性付与剤として、難燃剤及び/または発泡剤を含むことを特徴とする被覆材。
【請求項2】
熱膨張性を有する被覆材であって、
結合剤、耐熱性付与剤、充填剤、及び溶剤を含む液状またはゲル状の粒子が、水性媒体に分散しており、
上記液状またはゲル状の粒子が、
上記耐熱性付与剤として難燃剤を含む第1粒子、並びに
上記耐熱性付与剤として発泡剤を含む第2粒子
を含むことを特徴とする被覆材。
【請求項3】
上記水性媒体が、炭化剤を含むことを特徴とする請求項1または2記載の被覆材。
【請求項4】
上記水性媒体が、発泡剤を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の被覆材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた耐熱保護性を有する被覆材に関するものである。本発明の被覆材は、建築構造物における各種基材を高温から保護する目的で使用することができる。
【背景技術】
【0002】
建築物、土木構築物等の構造物が火災によって高温に晒された場合には、これら構造物の基材(鉄骨、コンクリート等)の物理的強度が急激に低下するという問題がある。これに対し、建築構造物の各種基材を耐熱保護材で被覆して耐熱性を高める方法が種々提案されている。例えば、熱膨張性を有する被覆材(以下「熱膨張性被覆材」ともいう。)を基材に塗付しておくことで、火災時における基材の温度上昇を遅延させ、物理的強度の低下を抑制する方法が採られている。このような熱膨張性被覆材による被膜は、通常(非火災時)は数mm程度の膜厚であるが、火災時には数倍〜数十倍の倍率で膨張して有効な断熱層を形成することができるものである。
【0003】
熱膨張性被覆材としては、合成樹脂に対し、難燃剤、発泡剤、炭化剤、充填剤を分散させた被覆材が知られている(例えば、特許文献1等)。これらは、合成樹脂の形態に着目すると、有機溶剤に溶解させた合成樹脂を使用する溶剤系被覆材と、水に分散させた合成樹脂エマルション等を使用する水系被覆材がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−40290号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このうち、溶剤系被覆材は、優れた耐熱保護性能が発揮できるものが実用化されている。一方、水系被覆材は、環境への負荷、作業衛生や安全性等の点において好ましいものではあるが、耐熱保護性等の物性面では溶剤系被覆材に及ばない場合があり、改善の余地がある。
【0006】
本発明は、このような問題点に鑑みて完成されたものであり、熱膨張性によって、優れた耐熱保護性を発揮することができる、新たな被覆材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記目的を解決するために鋭意検討を重ねた結果、耐熱性付与剤等を含む液状またはゲル状の粒子が水性媒体に分散されてなる新規な被覆材に想到し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
即ち、本発明は、下記の被覆材に関する。
1.熱膨張性を有する被覆材であって、
結合剤、耐熱性付与剤、充填剤、及び溶剤を含む液状またはゲル状の粒子が、水性媒体に分散しており、
上記耐熱性付与剤として、難燃剤及び/または発泡剤を含むことを特徴とする被覆材。
2.熱膨張性を有する被覆材であって、
結合剤、耐熱性付与剤、充填剤、及び溶剤を含む液状またはゲル状の粒子が、水性媒体に分散しており、
上記液状またはゲル状の粒子が、
上記耐熱性付与剤として難燃剤を含む第1粒子、並びに
上記耐熱性付与剤として発泡剤を含む第2粒子
を含むことを特徴とする被覆材。
3.上記水性媒体が、炭化剤を含むことを特徴とする1.または2.記載の被覆材。
4.上記水性媒体が、発泡剤を含むことを特徴とする1.〜3.のいずれかに記載の被覆材。
【発明の効果】
【0009】
本発明被覆材は、優れた耐熱保護性を発揮するものであり、環境への負荷低減、作業衛生や安全性等の点においても好ましいものである。本発明被覆材は、建築構造物における各種基材を高温から保護する目的で使用する耐熱保護材として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の被覆材は、熱膨張性を有する被覆材であって、
結合剤(A)、耐熱性付与剤(B)、充填剤(C)、及び溶剤(D)を含む液状またはゲル状粒子が、水性媒体に分散しており、上記耐熱性付与剤(B)として、難燃剤(B1)及び/または発泡剤(B2)を含むことを特徴とする。
【0011】
結合剤(A)(以下「(A)成分」ともいう。)としては、公知の熱膨張性被覆材で採用されているものを使用することができる。(A)成分としては、例えば、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニル−アクリル共重合樹脂、ポリエチレン樹脂、アクリル−スチレン共重合樹脂、酢酸ビニル−エチレン共重合樹脂、ポリエステル樹脂、酢酸ビニル−バーサチック酸ビニルエステル共重合樹脂、酢酸ビニル−バーサチック酸ビニルエステル−アクリル共重合樹脂、フェノール樹脂、石油樹脂、塩化ビニル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリブタジエン樹脂、アルキッド樹脂、メラミン樹脂、プロピレンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、イソブチレンゴム等の溶剤可溶型、溶剤分散型(エマルション型を含む)の有機質結合剤が挙げられる。これらの(A)成分は、単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0012】
耐熱性付与剤(B)(以下「(B)成分」ともいう。)は、耐熱保護性を高めるものである。本発明では(B)成分として、難燃剤(B1)及び/または発泡剤(B2)を含む。
【0013】
難燃剤(B1)(以下「(B1)成分」ともいう。)は、火災時に脱水冷却効果、不燃性ガス発生効果、結合剤炭化促進効果等の少なくとも1つの効果を発揮し、結合剤の燃焼を抑制する作用を有するものである。(B1)成分としては、上記作用を有する限り特に制限されず、公知の熱膨張性被覆材で使用する難燃剤と同様のものが使用できる。
【0014】
このような(B1)成分としては、例えば、トリクレジルホスフェート、ジフェニルクレジルフォスフェート、ジフェニルオクチルフォスフェート、トリ(β−クロロエチル)フォスフェート、トリブチルフォスフェート、トリ(ジクロロプロピル)フォスフェート、トリフェニルフォスフェート、トリ(ジブロモプロピル)フォスフェート、クロロフォスフォネート、ブロモフォスフォネート、ジエチル−N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノメチルフォスフェート、ジ(ポリオキシエチレン)ヒドロキシメチルフォスフォネート、三塩化リン、五塩化リン、リン酸アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム等のリン化合物;塩素化ポリフェニル、塩素化ポリエチレン、塩化ジフェニル、塩化トリフェニル、塩素化パラフィン、五塩化脂肪酸エステル、パークロロペンタシクロデカン、塩素化ナフタレン、テトラクロル無水フタル酸等の塩素化合物;三酸化アンチモン、五塩化アンチモン等のアンチモン化合物;ホウ酸亜鉛、ホウ酸ソーダ、ホウ砂、ホウ酸等のホウ素化合物等が挙げられる。これらの(B1)成分は、単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0015】
本発明では、(B1)成分として、特にポリリン酸アンモニウムを含むことが好ましい。ポリリン酸アンモニウムを使用する場合には、脱水冷却効果及び不燃性ガス発生効果をより効果的に発揮することができる。
【0016】
上記(B1)成分の混合比率は、上記(A)成分の固形分100重量部に対して、好ましくは50〜800重量部(より好ましくは100〜600重量部)である。
【0017】
発泡剤(B2)(以下「(B2)成分」ともいう。)は、火災時に不燃性ガスを発生させて、炭化していく結合剤等、あるいは発泡剤自身を膨張させて気孔を有する炭化断熱層を形成させる役割を有する。(B2)成分は、このような作用を有する限り特に制限されず、公知の熱膨張性被覆材における発泡剤と同様のものを使用することができる。
【0018】
このような(B2)成分としては、例えば、含窒素発泡剤、膨張性黒鉛等が挙げられる。このうち、含窒素発泡剤としては、例えば、メラミン及びその誘導体、ジシアンジアミド及びその誘導体、アゾジカーボンアミド、尿素、チオ尿素等が挙げられる。これらの発泡剤は、単独でまたは2種以上で使用することができる。本発明では、(B2)成分として、含窒素発泡剤を含むことが好ましい。
【0019】
上記(B2)成分の混合比率は、上記(A)成分の固形分100重量部に対して、好ましくは10〜400重量部(より好ましくは20〜300重量部)である。
【0020】
本発明の被覆材は、上記(B)成分として、(B1)成分と(B2)成分のうち、いずれか一方または両方を含む液状またはゲル状粒子が水性媒体に分散していればよいが、特に、上記(B)成分として(B1)成分を含む液状またはゲル状の第1粒子、並びに、上記(B)成分として(B2)成分を含む液状またはゲル状の第2粒子、が水性媒体に分散している態様が好適である。
【0021】
このように(B1)成分と(B2)成分が別々の粒子に含まれる態様とすることによって、被覆材の安定性が高まり、長期貯蔵後に被膜を形成した場合であっても、十分な耐熱保護性を備えた被膜が得られる。このような効果が奏される理由は明らかではないが、(B1)成分と(B2)成分が共存する場合、そこに水が浸入すると、両成分の相互作用によって耐熱性付与剤としての性能低下のおそれがあるのに対し、(B1)成分と(B2)成分が別々の粒子に含まれる場合は、このような危険性が回避されるものと考えられる。
【0022】
上記第1粒子は、(B2)成分を含んでもよいが、この場合、(B2)成分は(B1)成分よりも少ない重量であることが望ましい。上記第1粒子としては、(B)成分が(B1)成分のみからなる態様、すなわち(B2)成分を含まない態様がより望ましい。
【0023】
上記第2粒子は、(B1)成分を含んでもよいが、この場合、(B1)成分は(B2)成分よりも少ない重量であることが望ましい。上記第2粒子としては、(B)成分が(B2)成分のみからなる態様、すなわち(B1)成分を含まない態様がより望ましい。
【0024】
充填剤(C)(以下「(C)成分」ともいう。)としては、例えば、タルク等の珪酸塩;炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム等の炭酸塩;酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ等の金属酸化物;粘土、クレー、シリカ等の天然鉱物類等が挙げられる。これら(C)成分は、単独でまたは2種以上で使用することができる。
【0025】
上記(C)成分の混合比率は、上記(A)成分の固形分100重量部に対して、好ましくは10〜500重量部(より好ましくは20〜300重量部)である。
【0026】
溶剤(D)(以下「(D)成分」ともいう。)としては、例えば、石油ベンゼン、n−ヘプタン、n−ヘキサン、ミネラルスピリット、ターペン、ケロシン等の脂肪族炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、シクロヘキサン等の脂環族炭化水素類、ジクロルエタン、トリクレン、パークレン等の塩素化炭化水素類、メチルセロソルブ、セロソルブソルベント、ブチルセロソルブ、イソブチルセロソルブ等のエーテルアルコール類、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール等のアルコール類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類等が挙げられ、場合により水を含んでもよい。これら(D)成分は、単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0027】
上記(D)成分の混合比率は、上記(A)成分の固形分100重量部に対して、好ましくは10〜400重量部(より好ましくは50〜300重量部)である。なお、(D)成分には上記(A)等の媒体として用いられる溶剤も含まれる。
【0028】
本発明では上記(A)成分、(B)成分、(C)成分、及び(D)成分を均一に混合することにより、熱膨張性組成物(I)が得られる。ここで、熱膨張性組成物(I)には、さらに、本発明の効果を損なわない程度に、各種の添加剤、例えば、増粘剤、可塑剤、乾燥調整剤、紫外線吸収剤、艶調整剤、顔料分散剤、消泡剤、酸化防止剤、防黴剤、防腐剤等を適宜配合してもよい。熱膨張性組成物(I)には、後述の炭化剤(E)を配合することもできるが、その混合比率は、水性媒体(II)に含まれる炭化剤(E)よりも少ないことが望ましい。具体的に、熱膨張性組成物(I)に含まれる炭化剤(E)は、上記(A)成分の固形分100重量部に対して、好ましくは200重量部以下(より好ましくは80重量部以下、さらに好ましくは40重量部以下)である。熱膨張性組成物(I)が炭化剤(E)を含まない態様も好適である。
【0029】
本発明の液状またはゲル状の粒子は、例えば、上記熱膨張性組成物(I)を、水性媒体(II)に分散させることによって得ることができる。この際、水性媒体(II)に予め分散安定剤を混合しておけば、粒子形成が安定化する。上記熱膨張性組成物(I)を分散安定剤含有水性媒体に分散するには、例えば、攪拌槽内に分散安定剤含有水性媒体を仕込み、これをインペラー等の混合分散装置にて攪拌しながら、上記熱膨張性組成物(I)を徐々に加える方法等を採用すればよい。この際、攪拌槽の大きさや、インペラーの形状、大きさ、周速等、あるいは上記組成物(I)の投入速度等を適宜設定することにより、粒子の大きさや形状等を調整することができる。液状またはゲル状粒子の粒子径は、好ましくは0.01〜10mmである。
【0030】
分散安定剤としては、特に限定されないが、例えば、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチレンオキサイド、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カゼイン、セルロースアセテートフタレイト、ベントナイト、ポリメタクリル酸、ゼラチン、アルギン酸ナトリウム、アラビアゴム、ゼラチン、ペクチン、キサンタンガム、澱粉等を用いることができる。また、白土、タルク、珪藻土等を使用することも可能である。このうち、特にカチオン性のものが分散安定化の点で好ましい。また、水性媒体(II)における分散安定剤の濃度は、好ましくは0.01〜5重量%である。なお、水性媒体(II)に使用する溶媒としては、主に水が使用されるが、水と水溶性溶剤との混合物を使用することもできる。
【0031】
上記分散安定剤は、架橋剤と組み合わせて用いることができる。このような架橋剤の使用は、粒子形成の安定化、貯蔵安定性、耐熱保護性等の向上化の点で好適である。架橋剤としては、特に限定されないが、例えば、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、アミン化合物、錫化合物、リン酸化合物、ホウ酸化合物、アルコキシシラン化合物、有機チタネート化合物、アルミニウムキレート化合物、アルミニウムアルコキシド化合物等が挙げられる。これらは、単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0032】
本発明の水性媒体(II)は、上記成分の他に、炭化剤(E)(以下「(E)成分」ともいう。)を含むことが好ましい。(E)成分は、火災時に結合材の炭化とともにそれ自体も脱水炭化していくことにより、断熱性に優れた厚みのある炭化断熱層を形成する作用を有する。炭化剤としては、このような作用を有する限り特に制限されず、公知の熱膨張性被覆材で使用する炭化剤と同様のものが使用できる。
【0033】
(E)成分としては、例えば、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン等の多価アルコール;デンプン、カゼイン等が挙げられる。これら(E)成分は、単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。本発明では、(E)成分として、多価アルコールが好ましく、特にペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等が脱水冷却効果と炭化断熱層形成作用に優れている点でより好ましい。
【0034】
(E)成分の混合比率は、上記(A)成分の固形分100重量部に対し、好ましくは10〜300重量部(より好ましくは25〜250重量部)である。このような比率で、(E)成分が水性媒体(II)中に含まれることにより、被覆材の安定性が高まり、長期貯蔵後に被膜を形成した場合であっても、十分な耐熱保護性を備えた被膜が得られる。このような効果が奏される理由は明らかではないが、(E)成分が上記粒子内に存在すると、その親水性によって水の浸入を招き、(B)成分の性能低下を引き起こすおそれがあるのに対し、(E)成分が水性媒体に含まれる場合は、このような危険性が回避されるものと考えられる。
【0035】
水性媒体(II)は、上述の発泡剤(B2)を含むものであってもよい。この場合も、被覆材の安定性が高まり、長期貯蔵後に被膜を形成した場合であっても、十分な耐熱保護性を備えた被膜が得られる。水性媒体(II)が、(B2)成分及び(E)成分を含む態様も好適である。水性媒体(II)における(B2)成分の混合比率は、上記(A)成分の固形分100重量部に対し、10〜400重量部(より好ましくは20〜300重量部)である。
【0036】
水性媒体(II)には、上記成分の他に、例えば、消泡剤、増粘剤、分散剤、防黴剤、防腐剤、pH調整剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤等公知の添加剤を、本発明の効果を阻害しない範囲内で混合することもできる。
【0037】
本発明の被覆材は、建築物・土木構築物等の構造物において耐熱構造とすべき部分に適用することができる。具体的には、壁、柱、床、梁、屋根、階段、天井、戸等の各種基材に施工することができる。適用可能な材質としては、例えば、金属、コンクリート、木質材、樹脂等が挙げられる。これら基材は、何らかの下地処理(防錆処理、難燃処理等)が施されたものであってもよい。
【0038】
本発明の被覆材を塗付する際には、スプレー、ローラー、刷毛等の塗装器具を使用して、一回ないし数回塗り重ねて塗装すれば良い。最終的に形成される被膜厚は、所望の耐熱性能、適用部位等により適宜設定すれば良いが、好ましくは0.2〜5mm程度である。
【0039】
本発明では、上記被覆材より形成される被膜を保護するために、必要に応じ上塗層を積層することもできる。このような上塗層は、公知の水性型あるいは溶剤型の塗料を塗付することによって形成することができる。上塗層としては、例えば、アクリル樹脂系、ウレタン樹脂系、アクリルシリコン樹脂系、フッ素樹脂系等の塗料を用いることができる。これらの塗装は、公知の塗装方法によれば良く、スプレー、ローラー、刷毛等の塗装器具を使用することができる
【実施例】
【0040】
以下に実施例を示して、本発明の特徴をより明確にする。但し、本発明はこの範囲には限定されない。
【0041】
使用した各成分は以下の通りである。
・結合剤:溶剤可溶形アクリル樹脂(固形分50重量%、ミネラルスピリット溶液)
・難燃剤:ポリリン酸アンモニウム
・発泡剤:メラミン
・炭化剤:ジペンタエリスリトール
・充填剤:酸化チタン
・溶剤:ミネラルスピリット
・水性媒体:カチオン性ポリビニルアルコール3重量%水溶液
【0042】
○熱膨張性組成物の製造
(熱膨張性組成物1)
結合剤200重量部(固形分100重量部)に、難燃剤380重量部、発泡剤75重量部、充填剤90重量部、炭化剤90重量部、溶剤100重量部を加えて均一に混合し、熱膨張性組成物1を製造した。
【0043】
(熱膨張性組成物2)
結合剤200重量部(固形分100重量部)に、難燃剤380重量部、発泡剤75重量部、充填剤90重量部、溶剤80重量部を加えて均一に混合し、熱膨張性組成物2を製造した。
【0044】
(熱膨張性組成物3)
結合剤200重量部(固形分100重量部)に、難燃剤380重量部、充填剤90重量部、炭化剤90重量部、溶剤80重量部を加えて均一に混合し、熱膨張性組成物3を製造した。
【0045】
(熱膨張性組成物4)
結合剤200重量部(固形分100重量部)に対し、発泡剤75重量部、充填剤90重量部、炭化剤90重量部を加えて均一に混合し、熱膨張性組成物4を製造した。
【0046】
○被覆材の製造
(被覆材1)
水性媒体を攪拌しながら、熱膨張性組成物1を分散させた後に、架橋剤(有機チタネート化合物)を混合することにより、熱膨張性組成物1の液状粒子が水性媒体に分散してなる被覆材1を製造した。
【0047】
(被覆材2)
熱膨張性組成物1を熱膨張性組成物2に代えた以外は、被覆材1と同様にして被覆材を製造し、この被覆材に炭化剤を混合(被覆材1の結合剤100重量部に対し90重量部の比率)することにより、熱膨張性組成物2の液状粒子が、炭化剤を含む水性媒体に分散してなる被覆材2を得た。
【0048】
(被覆材3)
熱膨張性組成物1を熱膨張性組成物3に代えた以外は、被覆材1と同様にして被覆材3−1を製造した。次に、熱膨張性組成物1を熱膨張性組成物4に代えた以外は、被覆材1と同様にして被覆材3−2を製造した。以上の方法で得られた被覆材3−1と被覆材3−2を等量で混合することにより、熱膨張性組成物3の液状粒子と、熱膨張性組成物4の液状粒子とが水性媒体に分散してなる被覆材3を得た。
【0049】
○試験
(試験例1)
鋼板(厚み8mm)に対し、乾燥厚みが2mmとなるように各被覆材を塗付け、試験体を作製した。得られた試験体の裏面に熱電対を設置し、試験体の表面側からヒーターにて加熱したときの鋼板裏面温度を測定した。その結果、被覆材1〜3は、いずれも裏面温度が低く抑えられ、良好な耐熱保護性を示した。
【0050】
(試験例2)
50℃で7日間貯蔵後の各被覆材について、上記試験例1と同様の試験を行った。その結果、被覆材1に比べ、被覆材2、被覆材3のほうが裏面温度が低く、良好な耐熱保護性を示した。