(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-172144(P2017-172144A)
(43)【公開日】2017年9月28日
(54)【発明の名称】道路床版とPCa壁高欄との接合構造および接合方法
(51)【国際特許分類】
E01D 19/10 20060101AFI20170901BHJP
E01D 22/00 20060101ALI20170901BHJP
【FI】
E01D19/10
E01D22/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-57021(P2016-57021)
(22)【出願日】2016年3月22日
(71)【出願人】
【識別番号】507194017
【氏名又は名称】株式会社高速道路総合技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】505398941
【氏名又は名称】東日本高速道路株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】505398952
【氏名又は名称】中日本高速道路株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】505398963
【氏名又は名称】西日本高速道路株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】591030178
【氏名又は名称】ドーピー建設工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】592037907
【氏名又は名称】株式会社デイ・シイ
(74)【代理人】
【識別番号】100087491
【弁理士】
【氏名又は名称】久門 享
(74)【代理人】
【識別番号】100104271
【弁理士】
【氏名又は名称】久門 保子
(72)【発明者】
【氏名】青木 圭一
(72)【発明者】
【氏名】上平 謙二
(72)【発明者】
【氏名】竹本 伸一
【テーマコード(参考)】
2D059
【Fターム(参考)】
2D059AA21
2D059GG55
(57)【要約】
【課題】道路橋等の新規の壁高欄の設置及び既存の壁高欄の改修等を急速施工によりきわめて容易にかつ経済的に行うことの可能な道路床版とPCa壁高欄との接合構造及び接合方法を提供する。
【解決手段】道路床版1の側端部にPCa壁高欄2を設置する。道路床版1の側端側にPCa壁高欄2の下端部から道路床版1の側端部にかけてフック状に折り返して連続する捨て型枠3を設置する。捨て型枠3は下部捨て型枠10と上部捨て型枠11とから構成する。下部捨て型枠10の下端側を道路床版1の側端部に、上部捨て型枠11の上端側をPCa壁高欄2の外面側の下端部にそれぞれ固定する。下部捨て型枠10の上端部と上部捨て型枠11の下端部にそれぞれフック状の連結部10a,11aを形成する。連結部10a,11aどうしを噛み合わせて下部捨て型枠10と上部捨て型枠11を連結する。道路床版1の側端部と捨て型枠3との間及び道路床版1の側端部とPCa壁高欄2の下端部との間に無収縮モルタル4を一体に充填する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路床版の側端部にPCa壁高欄を設置し、当該PCa壁高欄の下端部と前記道路床版の側端部との間にグラウト材を充填することにより構成される道路床版とPCa壁高欄との接合構造において、前記道路床版の側端側に前記PCa壁高欄の下端部から道路床版の側端部にかけてフック状に折り返して連続する捨て型枠が設置され、当該捨て型枠の上端部は前記PCa壁高欄の外面側の下端部に固定され、当該捨て型枠のフック状に折り返した下端部は前記道路床版の側端部に固定され、かつ当該捨て型枠と前記道路床版の側端部との間および当該道路床版の側端部と前記PCa壁高欄の下端部との間にグラウト材が充填されてなることを特徴とする道路床版とPCa壁高欄との接合構造。
【請求項2】
請求項1記載の道路床版とPCa壁高欄との接合構造において、前記捨て型枠は上部捨て型枠と下部捨て型枠とからなり、前記下部捨て型枠の下端部と上部捨て型枠の上端部にそれぞれフック状の連結部が形成され、かつ当該連結部どうしを噛み合わせることにより、下部捨て型枠と上部捨て型枠が連結されていることを特徴とする道路床版とPCa壁高欄との接合構造。
【請求項3】
請求項1または2記載の道路床版とPCa壁高欄との接合構造において、フック状に折り返した下部捨て型枠の下端部が前記道路床版の側端部の下面より下方に突出していることを特徴とする道路床版とPCa壁高欄との接合構造。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかひとつに記載の道路床版とPCa壁高欄との接合構造において、捨て型枠は、耐腐食性の金属板から形成されていることを特徴とする道路床版とPCa壁高欄との接合構造。
【請求項5】
道路床版の側端部にPCa壁高欄を設置し、当該PCa壁高欄の下端部と前記道路床版の側端部との間にグラウト材を充填することにより道路床版とPCa壁高欄とを接合する道路床版とPCa壁高欄との接合方法において、前記道路床版の側端側に前記PCa壁高欄の下端部から道路床版の側端部にかけてフック状に折り返して連続する捨て型枠を設置し、前記当該捨て型枠の上端部は前記PCa壁高欄の外面側の下端部に固定し、下端部は前記道路床版の側端部に固定し、かつ前記捨て型枠と前記道路床版の側端部との間および当該道路床版の側端部と前記PCa壁高欄の下端部との間にグラウト材を充填することを特徴とする道路床版とPCa壁高欄との接合方法
【請求項6】
請求項5記載の道路床版とPCa壁高欄との接合構造において、前記捨て型枠を上部捨て型枠と下部捨て型枠とから構成すると共に、前記下部捨て型枠の上端部と上部捨て型枠の下端部にそれぞれフック状の連結部を形成し、あらかじめ前記下部捨て型枠を前記道路床版の側端部に、上部捨て型枠を前記PCa壁高欄の外面側の下端部にそれぞれ固定し、次に前記連結部どうしを噛み合わせて上部捨て型枠と下部捨て型枠とを連結することを特徴とする道路床版とPCa壁高欄との接合構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路床版の端部とプレキャスト(以下「PCa」)壁高欄との接合構造および接合方法に関し、道路橋などの新規の壁高欄の設置および既存の壁高欄の改修等を急速施工によりきわめて容易にかつ経済的に行えるようにしたものである。
【背景技術】
【0002】
道路橋などの道路床版の両側端部には、主として車輛の視線誘導や橋面外への逸脱を防止する目的で壁高欄が設置されている。
【0003】
この種の壁高欄は、これまで場所打ちコンクリートによって設置され、その改修等も場所打ちコンクリートによって行なわれていたが、最近では安定した品質、強度、耐久性の向上、さらには現場施工の省力化、工期短縮、施工環境改善(騒音の低下)等の理由によりJIS工場で製作されたPCa壁高欄によって施工されている。
【0004】
また、同様の理由により道路床版にはプレテンションPC鋼材やポストテンションPC鋼材によって補強されたプレキャスト・プレストレストコンクリート(以下「PCa・PC」)床版が採用されている。
【0005】
ところで、これまで建設されてきた道路橋などの橋梁は、近年老朽化が進み、特に近年の車両交通量や重交通の増加等に伴い、今後、改修、架け替え等が大幅に増えることが予想される。また、施工にあたっては工期の短縮化、現場施工の省力化等が求められ、必然的に壁高欄および道路床版のPca化がさらに進むことが予想される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−193015号公報
【特許文献2】特開2013−036205号公報
【特許文献3】特公昭58−4125号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
道路橋などの場所打ち壁高欄は、
図6に図示するように、一般に道路床版がRC構造の場合、壁高欄30の外面が道路床版31の側端面とほぼ面一になるように設置されるが、
図7に図示するように道路床版31が特にプレテンションPC鋼材やポストテンションPC鋼材32によって補強されたPCa・PC構造の道路床版の場合は、
図7に図示するように道路床版31の側端部にPC鋼材32の端部とPC鋼材32の端部を定着する定着ナット等の定着具33が突出するため、図示するようにPC壁高欄30の下端部に水切り部34を設けて道路床版31の側端部にPC鋼材32の端部と定着具33が露出しないようになされている。
【0008】
一方、
図8に図示するようにPCa壁高欄の場合、この部分の水切り部34をPCa壁高欄30本体と一体に形成することは施工的、構造的および構造細目的に困難と考えられ、このため、この部分の水切り部34は一般に、PCa壁高欄設置後場所打ちコンクリートやグラウトモルタルによって施工されるが、施工場所がPCa壁高欄30の外面側であり、しかも高所作業になりやすいため、型枠の製作や設置などの点で急速施工のためのPC化には問題があった。
【0009】
また特に、ポストテンションPC鋼材によって補強された道路床版にあっては、ポストテンションPC鋼材が劣化等により破断して道路床版の側端部から突出するおそれがあった。さらに、永年の経過と共に水切り部34のコンクリートが劣化して脱落するおそれもあった。
【0010】
本発明は、以上の課題を解決するためになされたもので、道路橋などの新規の壁高欄の設置および既存の壁高欄の改修等を急速施工によりきわめて容易にかつ経済的に行えるようにした道路床版とPCa壁高欄との接合構造および接合方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、道路床版の側端部にPCa壁高欄を設置し、当該PCa壁高欄の下端部と前記道路床版の側端部との間にグラウト材を充填することにより構成される道路床版とPCa壁高欄との接合構造および接合方法の発明であり、道路床版の側端側にPCa壁高欄の下端部から道路床版の側端部にかけてフック状に折り返して連続する捨て型枠が設置され、かつ当該捨て型枠と前記道路床版の側端部との間および当該道路床版の側端部と前記PCa壁高欄の下端部との間にグラウト材が一体に充填されていることで、特にポストテンションPC鋼材の劣化等で、PC鋼材が破断して道路床版の側端部から突出するのを防止することができる。
【0012】
また、コンクリートの劣化に伴う道路床版側端部のコンクリートの剥落事故を未然に防止することができ、またこれにより道路床版側端部に突出するPC鋼材の端部および定着具の露出も防止することができる。
【0013】
また、捨て型枠は上部捨て型枠と下部捨て型枠とから構成され、上部捨て型枠の上端部はPCa壁高欄の外面側の下端部に、下部捨て型枠の下端部は記道路床版の側端部にそれぞれ固定され、かつ上部捨て型枠と下部捨て型枠は双方の端部に形成されたフック状の連結部どうしを噛み合わせることにより連結されていることで、グラウト材の充填は道路床版側からの作業のみとなり、従来の型枠に比べて作業足場等が不要になる等して、工期の大幅な短縮化と工事費の低減化等を図ることができ、また作業足場による高所作業が低減でき作業の安全性の向上に繋がる。
【0014】
また、フック状に形成された連結部において捨て型枠の寸法誤差や施工誤差を容易に修正することができ、しかもPCa壁高欄背面の雨だれ水が捨て型枠の内側に浸入するのを防止することができ、さらに連結部が劣化しても捨て型枠がはずれて脱落するおそれもない。
【0015】
また、フック状に折り返した下部捨て型枠の下端部が前記道路床版の側端部下面より下方に突出していることで、PCa壁高欄および捨て型枠背面の雨だれ水が道路床版の背面を流れ落ちて道路床版の背面を汚すこともない。
【0016】
また、捨て型枠は、ステンレス板などの耐腐食性の金属板から形成されていることで、長年の風雨による劣化を防止できると共に錆付きによるコンクリート表面の汚れを防止することができ、また加工も容易である。
【0017】
なお、グラウト材には高耐久無収縮グラウトモルタル等を充填することにより、雨水の浸入による補強筋の腐食等を防止することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、道路床版の側端側にPCa壁高欄の下端部から道路床版の側端部にかけてフック状に折り返して連続する捨て型枠が設置され、かつ当該捨て型枠と前記道路床版の側端部との間および当該道路床版の側端部と前記PCa壁高欄の下端部との間にグラウト材が充填されていることで、特にポストテンションPC鋼材が劣化等によって破断しても、道路床版の側端部に突出するのを防止することができる。
【0019】
また、コンクリートの劣化等に伴う道路床版側端部のコンクリートの剥落を未然に防止することができると共に、道路床版の側端部に突出するPC鋼材の端部および定着具が露出するのも防止することができる。
【0020】
また、捨て型枠は上部捨て型枠と下部捨て型枠とから構成され、上部捨て型枠の上端部はPCa壁高欄の外面側の下端部に、下部捨て型枠の下端部は記道路床版の側端部にそれぞれ固定され、かつ上部捨て型枠と下部捨て型枠は双方の端部に形成されたフック状の連結部どうしを噛み合わせることにより連結されていることで、グラウト材の充填は道路床版側からの作業のみとなり、従来の型枠に比べて作業足場等が不要になる等して、工期の大幅な短縮化と工事費の低減化等を図ることができ、また作業足場による高所作業が低減でき作業の安全性の向上に繋がる。
【0021】
また、捨て型枠の寸法誤差や施工誤差を容易に修正することができ、しかもPCa壁高欄背面の雨だれ水が捨て型枠の内側に浸入するのを防止することができ、さらに連結部が劣化しても捨て型枠がはずれて脱落するおそれもない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】PCa・PC構造の道路床版とPCa壁高欄との接合部を示し、
図1(a)はその施工後を示す斜視図、
図1(b)は施工前を斜視図である。
【
図2】PCa・PC構造の道路床版の側端部を示す斜視図である。
【
図3】PCa・PC構造の道路床版の側端部に下部捨て型枠を設置した状態を示す斜視図である。
【
図4】PCa・PC構造の道路床版の側端部に捨て型枠とPCa壁高欄をそれぞれ設置し、かつ下部捨て型枠とPCa壁高欄に設置された上部捨て型枠を連結した状態を示す道路床版の一部斜視図である。
【
図5】PCa・PC構造の道路床版の側端部に捨て型枠とPCa壁高欄をそれぞれ設置し、かつ下部捨て型枠とPCa壁高欄に設置された上部捨て型枠を連結し、さらにグラウトモルタルを充填した状態を示す道路床版の側端部の一部斜視図である。
【
図6】道路床版と場所打ち壁高欄の接合部の構造を示す道路橋の一部斜視図である。
【
図7】PCa・PC構造の道路床版と場所打ち壁高欄との接合部を示す道路橋の一部斜視図である。
【
図8】PCa・PC構造の道路床版とPCa壁高欄との接合部を示す道路橋の一部斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1〜
図5は本発明の一実施形態であり、PCa・PC構造の道路床版とPCa構造の壁高欄との接合部を図示したものである。図において、道路床版1の側端部に壁高欄2が設置されている。
【0024】
また、道路床版1の側端側に壁高欄2の下端部から道路床版1の側端部にかけて連続する捨て型枠3が設置されている。そして、道路床版1の側端部と壁高欄2の下端部との間および道路床版1の側端部と捨て型枠3との間にグラウト材として無収縮グラウトモルタル4が一体に充填されている。
【0025】
道路床版1は、当該床版1内の橋軸直角方向に挿通された複数のPC鋼材5によって橋軸直角方向に所定量のプレストレスを導入することにより補強されている。PC鋼材5は道路床版1内に一段または二段に挿通され、かつ橋軸方向に一定間隔に挿通されている。
【0026】
なお、PC鋼材5は、プレテンションPC鋼材またはポストテンションPC鋼材のいずれでもよく、実施形態ではポストテンションPC鋼材が一段に挿通され、かつ各PC鋼材5の端部は道路床版1の側端部に突出され、かつ定着ナット6によって定着されている。
【0027】
また、道路床版1の側端部に複数のループ筋7が無収縮グラウトモルタル4内に突出した状態で配筋され、各ループ筋7は無収縮グラウトモルタル4内の橋軸直角方向の鉛直面内で矩形状のループを形成するように配筋され、かつ橋軸方向に一定間隔に配筋されている。
【0028】
一方、壁高欄2の下端部には複数のループ筋8が無収縮グラウトモルタル4内に突出した状態で配筋され、各ループ筋8は無収縮グラウトモルタル4内の橋軸直角方向の鉛直面内で矩形のループを形成するように配筋され、かつループ筋7と橋軸方向に交互に重なるように配筋されている。
【0029】
なお、ループ筋7と8は、いずれも、原則として道路床版1と壁高欄2の工場での製作時に配筋され、また道路床版1と壁高欄2のコンクリート内にそれぞれ配筋された主筋などの補強筋の一部をループ状に突出させる等して配筋されている。また、必要に応じて、ループ筋7と8内に複数の縦補強筋9が橋軸方向に連続して配筋されている。
【0030】
捨て型枠3は、道路床版1側に設置された下部捨て型枠10と壁高欄2側に設置された上部捨て型枠11とから構成され、また壁高欄2の下端部から道路床版1の先端部にかけて連続し、無収縮グラウトモルタル4、PC鋼材5の端部および定着ナット6を含む道路床版1の側端側の全面を覆うように壁高欄2の背面に沿ってほぼ鉛直に設置されている。
【0031】
下部捨て型枠10は、ステンレス板などの耐腐食性の金属板から橋軸方向に一定長に形成され、上端部に連結部10a、下端部に水切り部10bと固定部10cがそれぞれ一体に形成されている。
【0032】
連結部10aは、下部捨て型枠10の上端部を外向き(道路床版の反対側)に折り返すことにより真下に開口するフック状に形成されている。また、水切り部10bと固定部10cは、捨て型枠10の下端部を内向き(道路床版側)に上り勾配の斜めに折り返し、さらにその先端部を道路床版1の側端面に沿って真上に鉛直に折り返すことにより連続した形状に形成され、固定部10cには複数の固定孔10dが橋軸方向に一定間隔で形成されている。
【0033】
また、下部捨て型枠10の下端部は、道路床版1の側端面に水切り部10bが道路床版1の下端面より下方に突出した状態で添え付けられ、かつ固定孔10dを貫通する複数の固定ボルト12によって固定部10cを道路床版1の側端面にボルト止めすることにより固定されている(
図3)。また、下部捨て型枠10の上端部は上部捨て型枠11の下端部に連結されている。
【0034】
固定ボルト12は、道路床版1の側端面に埋設されたインサートナット13に螺合されている。なお、固定孔10dを水平方向に長軸を有する長孔とすることにより下部捨て型枠と道路床版1の側端面に埋設されたインサートナット13との施工誤差を吸収できる。
【0035】
上部捨て型枠11は、下部捨て型枠10と同様にステンレス板などの耐腐食性の金属板より橋軸方向に所定長に形成され、かつ下端部に下部捨て型枠10の連結部10aと噛み合う連結部11aが形成されている。連結部11aは上部捨て型枠11の下端部を内向き(道路床版側)に折り返して真上に開口するフック状に形成されている。
【0036】
また、上部捨て型枠11の上端側は壁高欄2の外面側の下端部に固定され、下端側は壁高欄2の外面に沿って下部捨て型枠10側に所定長垂設され、かつ下部捨て型枠10の連結部10aに連結部11aを噛み合せることにより下部捨て型枠10の上端部と連結されている。
【0037】
上部捨て型枠11は、アンカー等を予め溶接しその後コンクリートを打設して壁高欄2を完成させることにより壁高欄2と一体化されている。
【0038】
なお、上部捨て型枠11は下部捨て型枠10の下端部と同様に、壁高欄2の下端部に埋設されたインサートナットに固定ボルトでボルト止めして後付けとする構造にしてもよい。
【0039】
このように設置された下部捨て型枠10と上部捨て型枠11とからなる捨て型枠3と道路床版1の側端部との間、および道路床版1の側端部と壁高欄2の下端部との間にグラウト材として無収縮グラウトモルタル4が一体に充填され、以上の構成により道路床版1の側端部に壁高欄2の下端部が一体的に接合されている。
【0040】
次に、施工方法について説明すると、最初に道路床版1の側端側に下部捨て型枠10を配置し、鉛直方向および橋軸方向の位置決めを行った後、下端部を道路床版1の側端面に固定ボルト12によってボルト止めする(
図3)。その際、特に固定ボルト12を通す固定孔10dが橋軸方向に長孔に形成されていることで、下部捨て型枠10の橋軸方向の位置調整がしやすい。
【0041】
次に、道路床版1の側端部に壁高欄2を双方のループ筋7とループ筋8が橋軸方向に交互に重なるように吊り込むと共に、下部捨て型枠10の連結部10aと上部捨て型枠11の連結部11aとを噛み合わせて下部捨て型枠10の上端部と上部捨て型枠11の下端部とを連結する(
図4)。
【0042】
そして、壁高欄2の鉛直方向および橋軸方向の位置決めをし、支保工材で壁高欄2を仮固定する。また、必要に応じてループ筋7と8内に複数の縦補強筋9を橋軸方向に連続して配筋する。
【0043】
次に、道路床版1の側端部と捨て型枠3との間および道路床版1の側端部と壁高欄2の下端部との間に無収縮グラウトモルタル4を一体に充填する(
図5)。以上の施工手順により道路床版1と壁高欄2を一体に接合することができる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、道路橋などの新規の壁高欄の設置および既存の壁高欄の改修等を急速施工によりきわめて容易にかつ経済的に行うことができる。
【符号の説明】
【0045】
1 道路床版
2 壁高欄
3 捨て型枠
3a 連結部
3b 水切り部
3c 固定部
3d 固定孔
4 無収縮グラウトモルタル(グラウト材)
5 PC鋼材
6 定着ナット
7 ループ筋
8 ループ筋
9 縦補強筋
10 下部捨て型枠
10a 連結部
10b 水切り部
10c 固定部
10d 固定孔
11 上部捨て型枠
11a 連結部
12 固定ボルト
13 インサートナット
14 アンカー筋