【解決手段】 枠体3に揺動可能に組み付けられた係合アーム11であって、障子が閉状態となったときに当該障子に設けられた被係合部15と係合する係合部11Aを有し、かつ、「当該係合部11Aと被係合部15とが係合して障子が閉状態となる第1位置」と「係合部11Aと被係合部15と離間可能な第2位置」との間で揺動可能な係合アーム11と、係合アーム11を第2位置側から第1位置側に変位させる作動機構13とを備える。これにより、作動機構13が係合アーム11を第2位置側から第1位置側に変位させるので、障子5を確実に閉状態とすることが可能となる。
前記係合アームを前記第1位置側から前記第2位置側に変位させる力を発揮するねじりコイルばねを備えることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の窓開閉装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に説明する「発明の実施形態」は、本願発明の技術的範囲に属する実施形態の一例を示すものである。つまり、特許請求項の範囲に記載された発明特定事項等は、下記の実施形態に示された具体的構成や構造等に限定されるものではない。
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面と共に説明する。なお、各図に付された方向を示す矢印等は、各図相互の関係を理解し易くするために記載したものである。本発明は、各図に付された方向に限定されるものではない。
【0011】
少なくとも符号を付して説明した部材又は部位は、「複数」や「2つ以上」等の断りをした場合を除き、少なくとも1つ設けられている。
(第1実施形態)
1.窓開閉装置の構成
本実施形態は、排煙窓用の窓開閉装置に本発明を適用したものである。窓開閉装置1は、枠体3及び障子5等を有している。枠体3は、外壁等の建築物(図示せず)の壁に設けられた窓開口1Aを縁取る窓枠である。
【0012】
枠体3は、一対の縦枠部3A及び一対の横枠部3Bを有する。一対の縦枠部3Aは、障子5を挟んで水平方向両側に位置する。一対の横枠部3Bは、障子5を挟んで鉛直方向両側に位置する。
【0013】
障子5は、枠体3に対して変位することにより、窓開口1Aを閉じた状態(以下、閉状態という。)と窓開口1Aを開いた状態(以下、開状態という。)との間で変位できる。当該障子5は、揺動軸5Aを介して枠体3に対して揺動可能に組み付けられている。
【0014】
障子5の開閉態様は、特開2014−240564号公報(以下、特許文献2という。)と同じである。すなわち、障子5は、閉鎖状態(特許文献2の
図2参照)、換気状態(特許文献2の
図3(a)参照)及び排煙状態(特許文献2の
図3(b)参照)の3つの開閉態様を有する。
【0015】
枠体3には作動部材7が設けられている。作動部材7は、開状態に位置する障子5を閉状態側に変位させる機能を有する。当該作動部材7は、操作力を受けて縦枠部3Aに沿って平行変位する。当該操作力は、複数のギヤードケーブル9A〜9C及びギヤボックス9D等を介して作動部材7に伝達される。
【0016】
各ギヤードケーブル9A〜9Cは、複数本の素線を撚り合わせた可撓性を有する芯線に、噛合線を螺旋状に巻き付けられた形状のものである。そして、各ギヤードケーブル9A〜9Cは、長手方向に変位することにより、ハンドルボックス9で発生した操作力を伝達する。
【0017】
ハンドルボックス9は、ギヤードケーブル9Aを変位させる操作力を発生させる。なお、本実施形態に係るハンドルボックス9は、作業者が手動操作するタイプである。しかし、電動モータにて操作力を発生させる電動式のハンドルボックスであってもよい。
【0018】
ギヤボックス9Dは、ギヤードケーブル9Aに伝達された操作力を一対のギヤードケーブル9B、9Cに伝達する。一対のギヤードケーブル9B、9Cそれぞれは、各作動部材7に操作力を伝達する。なお、各作動部材7の作動及び構造は、例えば特許文献2と同一である。
【0019】
2.ロック機構
2.1 ロック機構の構造
ロック機構10は、保持機能及び引込機能を発揮させる機構である。保持機能は、障子5が枠体3に対して変位することを規制し、かつ、閉状態を保持する機能である、引込機能は、閉状態まで近接した障子5を閉状態とする機能である。
【0020】
ロック機構10は、
図2に示すように、少なくとも係合アーム11及び作動機構13等を備える。係合アーム11は枠体3に対して揺動可能である。なお、本実施形態に係る係合アーム11は、ベース部材3C(
図3参照)を介して鉛直方向下側に位置する横枠部3Bに組み付けられている。
【0021】
係合アーム11は、障子5に設けられた被係合部15と係合する係合部11Aを有する。係合部11Aは、係合アーム11の先端側から揺動軸11B側に窪んだ凹部にて構成されている。以下、係合部11Aを凹部11Aとも記す。
【0022】
被係合部15は、ステー部材15Aを介して障子5に組み付けられている。ステー部材15Aは、障子5の鉛直方向下端側に組み付けられている。つまり、被係合部15は、障子5の鉛直方向下端側に設けられている。
【0023】
被係合部15は、凹部11Aと接触する部位が回転可能なローラにて構成されている。以下、被係合部15を係合ローラ15という。すなわち、係合ローラ15は、円筒状の部材である。
【0024】
ステー部材15Aには、係合ローラ15に挿入されたローラ軸15Bが設けられている。係合ローラ15の内周面とローラ軸15Bの外周面とは滑り接触可能である。凹部11Aは、係合ローラ15が嵌り込み可能な窪みであって、室外側が室内側に比べて大きく開口したJ字状の窪みである。
【0025】
そして、係合アーム11は、揺動軸11Bを揺動中心として、「凹部11Aと係合ローラ15とが係合して障子5が閉状態となる第1位置」と「凹部11Aと係合ローラ15とが離間可能な第2位置」との間で揺動可能である。
【0026】
第1位置は、例えば
図2や
図4Aに示す位置である。第2位置は、例えば
図4Bや
図4Cに示す位置である。なお、本実施形態では、ロック機構10、つまり係合アーム11及び作動機構13は、窓開閉装置1の水平方向中央を挟んで両側に設けられている。一対のロック機構10それぞれは、左右対称である点を除き、同一の構造である。
【0027】
作動機構13は、係合アーム11を第2位置側から第1位置側に変位させるための機構である。当該作動機構13は、
図2に示すように、少なくともカム部11C及び押圧ローラ13A等を有して構成されている。
【0028】
カム部11Cは、係合アーム11のうち揺動軸11Bを挟んで当該係合アーム11の先端側と反対側、つまり揺動軸11Bを挟んで凹部11Aと反対側に設けられている。なお、
図2においては、カム部11Cは太い実線(一部は太い破線)で示されている。
【0029】
当該カム部11Cは、押圧ローラ13Aに接触して当該押圧ローラ13Aから押圧力F1を受けるとともに、当該押圧力F1を利用して係合アーム11を第2位置側から第1位置側に変位させる力F2を発生させる。
【0030】
このため、カム部11Cのうち押圧ローラ13Aと接触するカム面は、押圧力F1の向きに対して傾斜した傾斜面となっている。なお、カム面は、係合アーム11の揺動角によらず、ねじりコイルばね17(
図3参照)によって発生する開放モーメントM1より大きな閉塞モーメントM2が発生するような湾曲面となっている。
【0031】
開放モーメントM1とは、係合アーム11を第1位置側から第2位置側に変位させるモーメントである。当該開放モーメントM1は、ねじりコイルばね17が係合アーム11に作用させる弾性力によって発生する。
【0032】
閉塞モーメントM2とは、係合アーム11を第2位置側から第1位置側に変位させるモーメントである。当該閉塞モーメントM2は、押圧ローラ13Aが係合アーム11に作用させる力F2によって発生する。
【0033】
押圧ローラ13Aは、押圧力F1をカム部11Cに作用させるとともに、当該カム部11Cに対して回転可能なローラである。押圧ローラ13Aは、保持器13Bに回転可能に組み付けられている。
【0034】
保持器13Bは、
図5に示すように、ギヤードケーブル9B又はギヤードケーブル9Cから操作力を受けて揺動軸11Bに対して離接変位する。すなわち、保持器13Bは、レール部19Aにスライド変位可能に組み付けられている。レール部19Aは、横枠部3Bと平行な方向に延びている。
【0035】
レール部19Aには、ギヤードケーブル9B、9Cの変位を案内する案内部19Bが設けられている。ギヤードケーブル9B、9Cと保持器13Bとは連結材19Cを介して連結されている。
【0036】
このため、ギヤードケーブル9B、9Cが、その長手方向に変位すると、これに連動して保持器13Bがスライド変位するため、押圧ローラ13Aが揺動軸11Bに対して離接変位する。そして、押圧ローラ13Aが揺動軸11Bに近接するように変位するときに、閉塞モーメントM2が発生する。
【0037】
ねじりコイルばね17は、
図3に示すように、そのコイル部17Aに揺動軸11Bが挿入された状態でロック機構10に組み付けられている。そして、ねじりコイルばね17の一端17Bが係合アーム11に係止され、他端17Cがフレーム19に係止されている。
【0038】
フレーム19は、揺動軸11B等が組み付けられた部材である。当該フレーム19は、ベース部材3Cに組み付けられている。フレーム19を挟んでコイル部17Aと反対側には、回転式のダンパー21が配設されている。
【0039】
ダンパー21は、摩擦抵抗又は粘性抵抗を利用して、少なくとも開放モーメントM1に対向する抵抗力を発揮する。当該ダンパー21には、揺動軸11Bを介して係合アーム11の揺動が入力される。
【0040】
なお、本実施形態に係るダンパー21は、例えば特許文献1に記載のダンパーと同一構造である。このため、ダンパー21は、開放モーメントM1及び閉塞モーメントM2のいずれのモーメントに対しても抵抗力を発揮する。
【0041】
2.1 ロック機構の作動
障子5が開状態から閉状態に変位する場合、係合アーム11は、
図6A→
図6B→
図6C→
図6Dに示す順に揺動する。障子5が閉状態から開状態に変位する場合、係合アーム11は、
図6D→
図6C→
図6B→
図6Aに示す順に揺動する。
【0042】
すなわち、障子5が開状態にある場合には、
図6Aに示すように、凹部11Aと係合ローラ15とが離間し、係合アーム11は第2位置側に位置する。作動部材7が作動して障子5が閉状態側に近接していくと、
図6Bに示すように、係合ローラ15が凹部11Aに嵌り込むように接触するとともに、押圧ローラ13Aがカム部11Cに接触して係合アーム11に閉塞モーメントM2が作用する。
【0043】
なお、作動部材7及び押圧ローラ13Aは、ギヤードケーブル9A〜9C及びギヤボックス9Dを介して機械的に連動して作動する。このため、作動部材7により障子5が閉状態側に近接していくと、これに連動して押圧ローラ13Aが揺動軸11Bに近接していく。
【0044】
そして、ハンドルボックス9が更に回転操作されると、押圧ローラ13Aが更に揺動軸11Bに近接するので、凹部11Aに係合ローラ15が係合した状態で係合アーム11が第1位置側に揺動する。
【0045】
このため、係合アーム11は、閉状態まで近接した障子5を閉状態まで引き込むとともに(
図6C参照)、閉状態に到達した障子5が枠体3に対して変位することを規制する(
図6D参照)。なお、ハンドルボックス9には、ギヤードケーブル9Aの変位を規制するロック装置が設けられている。このため、障子5の閉状態が維持される。
【0046】
前記ロック装置が解除されると、ギヤードケーブル9Aが変位可能となる。そして、ギヤードケーブル9Aが変位すると、ねじりコイルばね17の開放モーメントM1により、係合アーム11が第1位置側から第2位置側に揺動し、障子5が閉状態から開状態側に変位する。
【0047】
3.本実施形態に係る窓開閉装置の特徴
本実施形態に係る窓開閉装置1では、作動機構13が係合アーム11を第2位置側から第1位置側に変位させるので、障子5を確実に閉状態とすることが可能となる。
【0048】
被係合部15は、係合部11Aと接触する部位が回転可能なローラ(係合ローラ)にて構成されている。これにより、接触箇所での摩耗を低減し、かつ、障子5を閉状態とするための操作力を低減することが可能となり得る。したがって、障子5を確実に閉状態とすることが可能となる。
【0049】
さらに、作動機構13は、係合アーム11のうち揺動軸11Bを挟んで凹部11Aと反対側にカム部11Cを有し、かつ、押圧ローラ13Aによる押圧力F1をカム部11Cに作用させる。
【0050】
これにより、「てこの原理」を利用して係合アーム11を変位させることができるので、係合アーム11を変位させる際に必要な力を低減することが可能となる。そして、揺動軸11Bを挟んで凹部11Aと反対側にカム部11C等が設けられているので、カム部11Cを挟んで押圧ローラ13Aと反対側、つまり係合アーム11の揺動軸11B側にスペースを確保し易くなる。
【0051】
このため、ねじりコイルばね17のコイル部17Aの外径寸法を大型化できる。延いては、ねじりコイルばね17に大きな応力が発生することを抑制でききるので、当該ねじりコイルばね17の耐久性を向上させることができる。
【0052】
(その他の実施形態)
上述の実施形態では、被係合部15をローラ(係合ローラ)とし、係合部11Aを凹部とした。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、被係合部15を回転不可な円柱状としてもよい。
【0053】
上述の実施形態に係る作動機構13は、カム部11Cに押圧力を作用させる押圧部材が押圧ローラ13Aに構成されていた。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、カム部11Cに滑り接触する摺接部材であってもよい。
【0054】
また、本発明は、特許請求項の範囲に記載された発明の趣旨に合致するものであればよく、上述の実施形態に限定されるものではない。