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特開2017-172502大型内燃エンジン用の燃料の流量制限バルブ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-172502(P2017-172502A)
(43)【公開日】2017年9月28日
(54)【発明の名称】大型内燃エンジン用の燃料の流量制限バルブ
(51)【国際特許分類】
   F02M 55/02 20060101AFI20170901BHJP
   F02M 37/00 20060101ALI20170901BHJP
   F16K 15/02 20060101ALI20170901BHJP
【FI】
   F02M55/02 360G
   F02M37/00 311K
   F02M37/00 311A
   F02M55/02 350P
   F16K15/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【外国語出願】
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-60585(P2016-60585)
(22)【出願日】2016年3月24日
(71)【出願人】
【識別番号】516087816
【氏名又は名称】オー.エム.ティー. オフィチネ メカニケ トリノ エス.ピー.エー.
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】コチット、カルロ
【テーマコード(参考)】
3G066
3H058
【Fターム(参考)】
3G066AA07
3G066AB03
3G066AC09
3G066BA28
3G066CB05
3G066CB09
3G066CB11
3G066CB13T
3G066CE13
3H058AA05
3H058BB29
3H058CA03
3H058CB04
3H058CB12
3H058CC02
3H058CD05
3H058CD16
3H058CD17
3H058DD01
3H058EE15
(57)【要約】      (修正有)
【課題】燃料の先行技術の制約を克服する、燃料の流量制限バルブを提供する目的を有する。
【解決手段】第1の密封表面52及び第2の密封表面54は、バルブピストン42のベース壁44上に直接的に機械加工され、バルブハウジング12は、バルブチャンバ14の長手方向に延在するピン形状部34を有し、排出チャネル38は、ピン形状部34を通じて延在し、排出バルブシート40は、ピン形状部34の内側末端部に形成されることを特徴とする、複数の大型内燃エンジンのための燃料の流量制限バルブ10。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の大型内燃エンジンのための燃料の流量制限バルブであって、
バルブチャンバを取り囲む内側円筒表面と、吸入バルブシートを伴う吸入チャネルと、排出バルブシートを伴う排出チャネルと、を有するバルブハウジングと、
前記バルブチャンバ内に収容され、ベース壁及び前記バルブハウジングの前記内側円筒表面に長手方向に導かれる円筒壁を有するバルブピストンであって、前記バルブピストンは、前記取り入れバルブシートと連携する第1の密封表面、及び、前記排出バルブシートと連携する第2の密封表面を有し、前記バルブピストンは、前記第1の密封表面が前記取り入れバルブシートを閉じる第1の位置と、前記第2の密封表面が前記排出バルブシートを閉じる第2の位置との間で前記長手方向を移動可能である、前記バルブピストンと、
前記ハウジングと前記バルブピストンの間に配置され、前記バルブピストンを前記第1の位置の方へ押す傾向がある弾性要素と、を備え、
前記第1の密封表面及び前記第2の密封表面は前記バルブピストンの前記ベース壁上に直接的に機械加工され、前記バルブハウジングは、前記バルブチャンバ内で前記長手方向に延在するピン形状部を有し、前記排出チャネルは前記ピン形状部を通じて延在し、前記排出バルブシートは前記ピン形状部の内側末端部に形成される、流量制限バルブ。
【請求項2】
前記バルブハウジングは、底壁と、前記底壁から延在し開口端部を含む側壁とを含む、第1のハウジング筐体を有し、前記ピン形状部は、前記第1のハウジング筐体の前記開口端部に封止して固定された第2のハウジング筐体に一体的に形成される、請求項1に記載の流量制限バルブ。
【請求項3】
前記弾性要素は、前記ピン形状部の外で、前記バルブピストンの前記円筒壁内に配置された圧縮コイルバネである、請求項2に記載の流量制限バルブ。
【請求項4】
前記第1の密封表面は、前記バルブピストンの前記ベース壁の一体突出部上に形成される凸状面である、請求項1から3のいずれか1項に記載の流量制限バルブ。
【請求項5】
前記第2の密封表面は、前記バルブピストンの前記ベース壁内の凹んだ凹状面である、請求項1から4のいずれか1項に記載の流量制限バルブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は複数の大型内燃エンジン用の燃料の流量制限バルブに関する。
【0002】
本発明によるバルブは、特に、複数のコモンレール燃料噴射システムを有する複数の大型の船舶用エンジンに使用されることが意図される。
【背景技術】
【0003】
複数のコモンレール燃料噴射システムは、エンジンのスピード及び、複数の燃料カムの設計に関わらず、圧力の選択及び噴射のタイミングの選択、並びに、多様な噴射によって噴射の流れの変調を可能とするので、複数の内燃エンジンの制御においてより大きな柔軟性をもたらしてきた。
【0004】
これらの全ては、以前には燃料噴射ポンプに委ねられていた圧力生成器及び複数の噴射の制御機能を、様々な構成部品(それぞれ、高圧ポンプ及び電気的に制御されたインジェクタ)に割り当てることにより実現されてきた。
【0005】
このタイプの噴射システムにおいて、噴射制御ユニットにより要求されたときに噴射が実行され得るよう、複数のインジェクタは、高圧燃料蓄圧器に継続的に連結される。このことから、機能不全に起因してインジェクタが開位置に固定されたままとなった場合、高圧蓄圧器内に存在する全ての燃料がシリンダに排出され、エンジンに複数の壊滅的な結果をもたらす。
【0006】
それゆえ、複数のコモンレール噴射システムの開発の早い段階から、各インジェクタのサイクル毎に噴射される燃料の量を制限する、装置の必要とされてきた。
【0007】
複数のコモンレール噴射システムの燃料の流量制限バルブの第1の例は、米国特許第3780716号において記載される。この文書は、燃料蓄圧器に連結した吸入口及び、インジェクタに連結した排出口を有する燃料の流量制限バルブを説明する。制限バルブは、ハウジング及びバルブチャンバ内を直線方向において移動可能なピストンを備える。圧縮コイルバネは、ピストンを燃料の流れの吸入チャネルの方へ押す。インジェクタが開くと、バルブの排出口の圧力は降圧し、ピストンは排出チャネルの方へ移動し始める。ピストンの上流チャンバと下流チャンバとの間の圧力損失は、各々の位置及び瞬間において、バネ力及びピストン自体の慣性力が釣り合う位置及び瞬間になるようにされる。通常動作状態において、ピストンが排出バルブシートに到達する前に、噴射が停止される。それゆえ、複数のチャンバ内のピストンの上流及び下流の圧力レベルは、バネがピストンを元の位置に押し戻すことを可能とする値に到達する。逆に、噴射が過剰に長い場合、ピストンは、排出バルブシートに到達し、インジェクタへの接続を閉じ、それゆえ、噴射を終了させ、高圧蓄圧器を更に減圧することを回避する。
【0008】
複数の大型内燃エンジン、特に重油燃料を処理する複数のディーゼルエンジンにおいて、燃料の粘性を減少させ、最適なポンピング及び噴霧を可能とすべく、燃料を120から160℃に加熱することが必須要件となる。この燃料でエンジンを始動することを可能とすべく、燃料の噴射を妨げる値にまで粘性が上昇しないことを確保すべく、噴射システムの全ての構成部品は、温かい状態に保たれなければならない。
【0009】
これは、噴射システム内において複数の蓄圧器から複数のインジェクタへ、低圧で熱い燃料を継続的に循環させることにより実行される。複数のインジェクタには、燃料が低圧で維持されているときは燃料タンクへの流路を開き、圧力が上昇したときはこの流路を閉じる循環バルブを提供される。このようにして、低圧での循環及び高圧での通常動作の両方が可能となる。構成部品の損耗に起因してインジェクタのバルブシートが完全な状態でない場合、低圧での循環の間に、燃料がインジェクタのシートを通じて流れ出ることが出て、シリンダに到達することがあり得る。複数の大型の船舶用エンジンは、数日間、循環モードのままになり得るので、燃料で満たされたシリンダを有するエンジンを再始動するときに生じ得る深刻なダメージによるこの損失は、複数の深刻な問題を引き起こし得る。
【0010】
この理由のため、循環モードに典型的な燃料の圧力を密封して閉じるように設計された、通常動作を可能にすべくこれらの圧力レベルより上では、燃料の流路を開くのに適したバルブをこの領域の上流に配置することにより、噴射針のシートの領域で燃料の循環を妨げることが必要である。言い換えれば、予め組み込まれた逆止弁が必要となる。
【0011】
この機能は、流体吸入チャネルに第2のバルブシートを追加することにより、流量制限バルブに統合され得る。この第2のバルブシートは流量制限バルブのピストンに形成された対応する密封要素と連携する。このように、追加の構成部品を必要とすることなく、重要な安全性の機能が加えられる。
【0012】
この発想の特定の実施形態は、欧州特許第2423498号に記載される。この文書は、バルブチャンバ、吸入バルブシートを伴う吸入チャネル、及び排出バルブシートを伴う排出チャネルを取り囲む円筒表面を有するバルブハウジングを備える圧力制限バルブを説明する。バルブチャンバ内に、円筒壁を有するバルブピストンが収容され、これはバルブハウジングの内側円筒表面により長手方向に導かれる。バルブピストンは、長手方向に引き伸ばされ、対向する端部に密封表面を有するピン形状の密閉要素を支持し、これは吸入バルブシート、及び排出バルブシートとそれぞれ連携する。
【0013】
バネを収容すべくピストン内に提供する必要のある深い溝のため、この構成はピストン及び、ピン形状の密閉要素を1つの部品として機械加工することが、常に実用性が高く、都合のよいものではない。これは、ピストン及びピン形状の密閉要素を共に固定される2つの別個の部品として製造する必要性につながり、また、シート及びガイド表面の同軸性を保証するための後の機械加工を施すことにつながる。これらの機械加工処理をしない場合、バルブシートの密封に、支障をきたすであろう。
【発明の概要】
【0014】
本発明は先行技術の制約を克服する、燃料の流量制限バルブを提供する目的を有する。特に、本発明は、製造コストを減少させ、操作の信頼性を上昇させ、及びピストンを加速するのに必要な圧力損失を減少させ、これにより、燃料の流量制限バルブの動的振る舞いを改善することを目的としている。
【0015】
本発明によると、請求項1の主題を形成する特徴を有する、燃料の流量制限バルブにより、これらの目的が実現される。
【0016】
請求項は、本発明に関し、ここで提供される開示の不可欠な部分を形成する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
ここで本発明は、純粋に非限定的な例として与えられる添付の複数の図面を参照して、詳細に記載される。
図1】第1の作動位置における本発明による燃料の流量制限バルブの軸方向断面図である。
図2】第2の作動位置における本発明による燃料の流量制限バルブの軸方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
複数の図面を参照すると、10は、複数の大型内燃エンジンの複数のコモンレール噴射システムに使用されることを目的とした燃料の流量制限バルブを示す。燃料の流量制限バルブ10は内部にバルブチャンバ14が画定されるバルブハウジング12を備える。バルブハウジング12は、互いに固定された第1のハウジング筐体16及び第2のハウジング筐体18により形成される。
【0019】
第1のハウジング筐体16は、底壁20及び、上記の底壁20から延在し、バルブチャンバ14を取り囲む内側円筒表面24を有する側壁22を備える。第1のハウジング筐体16の側壁22は、第2のハウジング筐体18が内部に挿入され、固定される、開口端部26を有する。第1のハウジング筐体16の底壁20において、バルブチャンバ14と連通する吸入チャネル28が形成される。取り入れチャネル28の内側端部は吸入バルブシート30を有する。示された例において、吸入バルブシートは凹状円錐表面により形成される。
【0020】
第2のハウジング筐体18は、単一の筐体中に、ベース32及びバルブチャンバ14内に長軸Aに沿って延在するピン形状部34を備える。第2のハウジング筐体18のベース32は、第1のハウジング筐体16の開口端部26に封止して固定される。ピン形状部34は、ベース32の内側表面36から突出する。排出チャネル38は、ピン形状部34内に形成され、これはバルブチャンバ14と連通する。排出バルブシート40は、ピン形状部34の内側末端部に形成される。示された例において、排出バルブシート40は球状の凸状面である。
【0021】
バルブ10は、バルブチャンバ14内に収容され、長手方向Aに移動可能なバルブピストン42を有する。バルブピストン42は、ベース壁44と円筒壁46とを有する単一の筐体により形成される。円筒壁46は外側円筒表面48を有し、これは第1のハウジング筐体16の内側円筒表面24に誘導するように接触している。
【0022】
バルブピストン42のベース壁44は、第1のハウジング筐体16の底壁20に面する側に配置される一体突出部50を有する。一体突出部50は、吸入バルブシート30を密封するよう設計される凸状面により形成される第1の密封表面52を有する。ベース壁44は、第2のハウジング筐体18のベース32に面する側に配置される第2の密封表面54を有する。第2の密封表面54はベース壁20内に凹んだ凹状円錐表面により形成され、排出バルブシート40を密封するように意図されている。第1の密封表面52、及び、第2の密封表面54は、バルブピストン42のベース壁44上に直接機械加工される。それぞれのバルブシート30、40を密封するのに必要な、外側円筒表面48に対する密封表面52、54の同軸性を保証すべく、密封表面52、54の機械加工は、バルブピストン42の外側円筒表面48の機械加工を実行するものと同一の機械上で実行され得る。
【0023】
バルブピストン42は、バルブピストン42の向かい合った側に配置されるバルブチャンバ14の2つの部分を一緒に連結する較正された(calibrated)流体の流路を有する。示された例において、較正された流路は、バルブピストン42のベース壁44内に形成された較正ホール(calibrated hole)56により形成される。
【0024】
圧縮コイルバネ58が、ピン形状部34の外側に同軸に配置される。バネ58の第1の端部は、第2のハウジング筐体18の内側表面36に支えられ、バネ58の第2の第2の端部は、バルブピストン42のベース壁44に支えられる。コイルバネ58は、バルブピストン42の円筒壁46に対し、内部に配置される。コイルバネ58は、バルブピストン42を第1のハウジング筐体16の底壁20へ押す傾向がある。
【0025】
動作中、吸入チャネル28は、コモンレール噴射システムの蓄圧器に連結され、排出チャネル38は、電気的に制御されたインジェクタに連結される。インジェクタが閉じられた場合、バルブピストン42は、図1に図示された位置に配置される。この位置において、第1の密封表面52は、吸入バルブシート30を封止して閉じ、バルブチャンバ14へと流体が入るのを妨げる。インジェクタが開く場合、バルブチャンバ14の圧力は低下し、バルブピストン42は排出バルブシート40の方へ移動し始める。通常動作状態において、バルブピストン42が排出バルブシート40に到達する前に、噴射が阻害される。それゆえ、バルブピストン42の上流及び下流のバルブチャンバ14における圧力レベルは、バネ58が吸入バルブシート30の閉位置にバルブピストン42を戻すことを可能とする値に到達する。バルブピストン42は、その後の噴射の実行の前に、吸入バルブシート30の閉位置に戻らなければならない。閉鎖速度は、設計者により、バネ力及び、較正ホール56のサイズを適切に選択することで決まる。
【0026】
噴射の持続時間が過剰に長くなると、バルブピストン42は、図2に図示される位置に到達する。この位置において、バルブピストン42の第2の密封表面54は、排出バルブシート40を封止して閉じる。このように、噴射は阻害され、高圧蓄圧器から、燃料が更に排出することを妨げる。エンジンのそれぞれのシリンダは、動作停止されたままとなるが、噴射圧力不足に起因する、エンジンの燃料の過剰供給及び停止は、阻止される。
【0027】
燃料の噴射の最大体積は、バルブピストン42の下流側にあるバルブチャンバ14の体積、及び、バルブピストン42の排出バルブシート40の方への移動の間に、複数の較正ホール56を通過する流れに依存する。
【0028】
本発明によるバルブの設計は、構成部品数、及び、バルブを組み立てるのに必要とされる精密機械加工処理数を減少させる。具体的には、バルブの3つの主要な構成部品(第1のハウジング筐体16、第2のハウジング筐体18及びバルブピストン42)の各々が単一の金属部品により構成される。構成部品の形状は、ツールによる機械加工では到達が難しい位置に配置される領域を想定しないので、密封表面及びガイド表面の機械加工は、簡易で迅速な方法により実行され得る。欧州特許第2423498号により実行したものと比較して、複数の可動部(もしくは、むしろバルブピストン42のみ)の総質量が、20%減少される。それゆえ、加速段階における慣性力、及び、ピストン42の上流チャンバと下流チャンバとの間の圧力損失の減少は、かなりのものとなる。これは、インジェクタの開いている段階の間、より高圧の複数の噴射を可能とする。
【0029】
勿論、本発明の原理を損なうことなく、構造の詳細及び実施形態は、記載され、示されたものに対し広く変化し得、そのことによって以下の特許請求の範囲により画される発明の範囲から逸脱することはない。
図1
図2
【外国語明細書】
2017172502000001.pdf