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特開2017-172815ベンチュリノズル及び該ベンチュリノズルを備える燃料供給装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-172815(P2017-172815A)
(43)【公開日】2017年9月28日
(54)【発明の名称】ベンチュリノズル及び該ベンチュリノズルを備える燃料供給装置
(51)【国際特許分類】
   F23D 14/64 20060101AFI20170901BHJP
   F23K 5/00 20060101ALI20170901BHJP
【FI】
   F23D14/64 Z
   F23K5/00 301Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-55802(P2016-55802)
(22)【出願日】2016年3月18日
(71)【出願人】
【識別番号】000175272
【氏名又は名称】三浦工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】芝 誠
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 茂広
(72)【発明者】
【氏名】藤原 達也
【テーマコード(参考)】
3K017
3K068
【Fターム(参考)】
3K017CA01
3K017CB08
3K017CD02
3K017CE04
3K068AA01
3K068AB04
3K068BB01
3K068EA01
(57)【要約】
【課題】より簡易な構成で、燃焼用空気の流量の変動があった場合においても流量係数を一定に保てるベンチュリノズル及びこのベンチュリノズルを備える燃料供給装置を提供すること。
【解決手段】送風機20の上流側に配置され、送風機20の吸込圧により燃焼用空気と燃料ガスとを混合するベンチュリノズル1であって、下流側に向かって縮径した形状に形成され燃焼用空気が導入されるノズル部12と、ノズル部12の下流側に配置され、下流側に向かって拡径した形状に形成され燃焼用空気と燃料ガスとが混合される混合部13と、ノズル部12と混合部13との間に配置され燃料ガスが導入される燃料ガス導入口15と、を備え、ノズル部12の内面には、周方向に延びると共に燃焼用空気の流れ方向に所定の間隔をあけて配置される複数の凸条部16が形成される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
送風機の上流側に配置され、該送風機の吸込圧により燃焼用空気と燃料ガスとを混合するベンチュリノズルであって、
下流側に向かって縮径した形状に形成され燃焼用空気が導入されるノズル部と、
前記ノズル部の下流側に配置され、下流側に向かって拡径した形状に形成され燃焼用空気と燃料ガスとが混合される混合部と、
前記ノズル部と前記混合部との間に配置され燃料ガスが導入される燃料ガス導入口と、を備え、
前記ノズル部の内面には、周方向に延びると共に燃焼用空気の流れ方向に所定の間隔をあけて配置される複数の溝部又は凸条部が形成されるベンチュリノズル。
【請求項2】
前記ノズル部の内面は、内側に向かって凸となるように湾曲した曲面により形成される請求項1に記載のベンチュリノズル。
【請求項3】
前記溝部又は凸条部の高さ(h)は、0.5mm〜5mmであり、隣り合う溝部又は凸条部間の距離(l)の該溝部又は凸条部の高さ(h)に対する比(l/h)は、1〜5である請求項1又は2に記載のベンチュリノズル。
【請求項4】
前記凸条部を構成する面のうち前記ノズル部の中心軸側に位置する面は、該中心軸に対して平行、垂直又は上流側に向かうに従って前記中心軸から離間する方向に延び、
前記凸条部を構成する面のうち、前記ノズル部の外面側に位置する面は、前記中心軸に対して平行、垂直又は上流側に向かうに従って前記中心軸に接近する方向に延びる請求項1〜3のいずれかに記載のベンチュリノズル。
【請求項5】
レイノルズ数が2.5E+5の場合の流量係数に対するレイノルズ数が1.0E+5の場合の流量係数の比が0.97〜1.00である請求項1〜4のいずれかに記載のベンチュリノズル。
【請求項6】
レイノルズ数が2.5E+5の場合の流量係数に対するレイノルズ数が5.0E+4の場合の流量係数の比が0.94〜1.00である請求項1〜5のいずれかに記載のベンチュリノズル。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載のベンチュリノズルと、
前記ベンチュリノズルの下流側に配置される送風機と、
前記送風機の出力を制御する制御部と、を備える燃料供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベンチュリノズル及びこのベンチュリノズルを備える燃料供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、燃料ガスを燃焼用空気と混合して燃焼させることにより水を加熱して蒸気を生成する蒸気ボイラ等の燃焼装置に用いられる燃料供給装置として、燃焼装置に燃焼用空気を送り込む送風機よりも上流側で燃焼用空気と燃料ガスとを混合するファンサクションミキシング方式の予混合バーナが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2001−526372号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ファンサクションミキシング方式の予混合バーナは、送風機と、この送風機の上流側に配置されるベンチュリノズルと、を含んで構成される。そして、ベンチュリノズルは、下流側に向かって縮径した形状に形成され燃焼用空気が導入されるノズル部と、このノズル部の下流側に配置され燃焼用空気と燃料ガスとが混合される混合部と、ノズル部と混合部との間に配置され燃料ガスが導入される燃料ガス導入口と、を含んで構成される。
【0005】
以上のベンチュリノズルによれば、送風機を駆動させることにより、ノズル部に燃焼用空気が吸入され、このノズル部に引き込まれた燃焼用空気のベンチュリ効果によって燃料ガス導入口から燃料ガスが混合部に引き込まれる。
このように、予混合バーナを、ベンチュリノズルを含んで構成することで、ベンチュリ効果を利用して燃料ガスを効率よく燃焼用空気と混合させられるため、燃料供給装置への燃料ガスの供給圧力を高めることなく、燃料ガスと燃焼用空気とを好適に混合させられる。
【0006】
しかしながら、ファンサクションミキシング方式の予混合バーナにおいて、送風機の出力を変化させて燃焼量を変更した場合、燃料ガスと燃焼用空気の混合比(空気比)を一定に保つことが困難であった。即ち、送風機の出力が大きい場合(つまり、燃焼用空気の流量が大きい場合)に比して、送風機の出力が小さい場合(つまり、燃焼用空気の流量が小さい場合)、ベンチュリノズルの表面において発生する境界層剥離の影響が大きくなり、ベンチュリノズルに導入される燃焼用空気の流量係数が低下してしまう。ベンチュリノズルにおいては、燃焼用空気の供給圧力(大気圧)と燃料ガスの供給圧力とを一定の関係に保つことで空気比も一定に保たれるため、流量係数が変化してしまうと、空気比を一定に保つことはできない。そのため、従来の燃料供給装置では、燃焼量の変化(つまり、燃焼用空気の供給量の変化)に伴う流量係数の変化に応じて、燃料ガスの供給圧力を調整するガス圧力の調整機構を必要としていた。
【0007】
従って、本発明は、より簡易な構成で、燃焼用空気の流量の変動があった場合においても流量係数を一定に保てるベンチュリノズル及びこのベンチュリノズルを備える燃料供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、送風機の上流側に配置され、該送風機の吸込圧により燃焼用空気と燃料ガスとを混合するベンチュリノズルであって、下流側に向かって縮径した形状に形成され燃焼用空気が導入されるノズル部と、前記ノズル部の下流側に配置され、下流側に向かって拡径した形状に形成され燃焼用空気と燃料ガスとが混合される混合部と、前記ノズル部と前記混合部との間に配置され燃料ガスが導入される燃料ガス導入口と、を備え、前記ノズル部の内面には、周方向に延びると共に燃焼用空気の流れ方向に所定の間隔をあけて配置される複数の溝部又は凸条部が形成されるベンチュリノズルに関する。
【0009】
また、前記ノズル部の内面は、内側に向かって凸となるように湾曲した曲面により形成されることが好ましい。
【0010】
また、前記溝部又は凸条部の高さ(h)は、0.5mm〜5mmであり、隣り合う溝部又は凸条部間の距離(l)の該溝部又は凸条部の高さに対する比(l/h)は、1〜5であることが好ましい。
【0011】
また、前記凸条部を構成する面のうち前記ノズル部の中心軸側に位置する面は、該中心軸に対して平行、垂直又は上流側に向かうに従って前記中心軸から離間する方向に延び、前記凸条部を構成する面のうち、前記ノズル部の外面側に位置する面は、前記中心軸に対して平行、垂直又は上流側に向かうに従って前記中心軸に接近する方向に延びることが好ましい。
【0012】
また、ベンチュリノズルは、レイノルズ数が2.5E+5の場合の流量係数に対するレイノルズ数が1.0E+5の場合の流量係数の比が0.97〜1.00であることが好ましい。
【0013】
また、ベンチュリノズルは、レイノルズ数が2.5E+5の場合の流量係数に対するレイノルズ数が5.0E+4の場合の流量係数の比が0.94〜1.00であることが好ましい。
【0014】
また、本発明は、上記のいずれかに記載のベンチュリノズルと、前記ベンチュリノズルの下流側に配置される送風機と、前記送風機の出力を制御する制御部と、を備える燃料供給装置に関する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、より簡易な構成で、燃焼用空気の流量の変動があった場合においても流量係数を一定に保てるベンチュリノズル及びこのベンチュリノズルを備える燃料供給装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の燃料供給装置の構成を模式的に示す図である。
図2】本発明の一実施形態に係るベンチュリノズルのノズル部を示す斜視図である。
図3図2のX−X線断面図である。
図4図3の部分拡大図である。
図5】比較例1のベンチュリノズルのノズル部を示す断面図であり、図3に対応する図である。
図6】比較例2のベンチュリノズルのノズル部を示す断面図であり、図3に対応する図である。
図7】実施例及び比較例の結果を示す図である。
図8】本発明の第1の変形例に係るベンチュリノズルのノズル部を示す断面図であり、図4に対応する図である。
図9】本発明の第2の変形例に係るベンチュリノズルのノズル部を示す断面図であり、図4に対応する図である。
図10】本発明の第3の変形例に係るベンチュリノズルの凸条部を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明のベンチュリノズル及び燃料供給装置の好ましい各実施形態について、図面を参照しながら説明する。
本実施形態の燃料供給装置100は、送風機よりも上流側で燃焼用空気と燃料ガスとを混合するファンサクションミキシング方式の予混合バーナであり、蒸気ボイラ等の燃焼装置(図示せず)に燃料ガス及び燃焼用空気の混合気を供給する。この燃料供給装置100は、送風機20と、制御部30と、ベンチュリノズル1と、燃料ガス供給ライン40と、第1混合気供給ライン50と、第2混合気供給ライン60と、を備える。
【0018】
送風機20は、ファン及びこのファンを回転させるモータを有する送風機本体21と、ファン(モータ)の回転数を増減させるインバータ22と、を備える。送風機20は、インバータ22に入力される周波数に応じてファンが所定の回転数で回転することで、所定の出力で燃焼用空気及び燃料ガスを吸引し、燃焼装置に送り込む。
【0019】
制御部30は、燃焼装置の燃焼状態(例えば、蒸気ボイラの燃焼位置)に応じて送風機20の出力を変更して燃焼装置に供給される燃焼用空気の流量を制御する。具体的には、燃焼装置を高い燃焼位置で燃焼させる場合の送風機20の出力は、低い燃焼位置で燃焼させる場合の送風機20の出力よりも高く設定される。
【0020】
ベンチュリノズル1は、送風機20の上流側に配置される。ベンチュリノズル1は、ケーシング11と、ノズル部12と、混合部13と、燃料ガス流路14と、燃料ガス導入口15と、を備える。
ケーシング11は、例えば、アルミニウムやステンレス等の金属部材により一端側及び他端側が開放された筒状に構成される。ケーシング11は、ベンチュリノズル1の外形を構成する。
【0021】
ノズル部12は、ケーシング11の内部に配置される。より具体的には、ノズル部12は、下流側に向かって縮径した形状に形成される、そして、ノズル部12の上流側の端部は、全周に亘ってケーシング11の上流側の端部に接合される。
ノズル部12は、燃焼用空気が導入される燃焼用空気の導入部として機能する。
【0022】
本実施形態では、ノズル部12は、図2及び図3に示すように、軸方向の断面形状が内側に向かって凸となるように湾曲した曲面となった円錐台形状に形成される。より詳細には、ノズル部12の内面は、径方向断面視において、下流側端部側に配置された直線部分121と、所定の半径Rの内側に凸となるように湾曲した四分円の曲面部分122と、を有する。
ノズル部12の内面には、図2及び図3に示すように、周方向に延びると共に燃焼用空気の流れ方向に所定の間隔をあけて配置される複数の凸条部16が形成されている。凸条部16の詳細については、後述する。
【0023】
混合部13は、ケーシング11の内部におけるノズル部12の下流側に配置され、下流側に向かって拡径した形状に形成される。混合部13の上流側の端部の径は、ノズル部12の下流側の端部の径よりも若干大きく構成される。また、混合部13の上流側の端部は、ノズル部12の下流側の端部と重なり合う位置に配置される。混合部13の下流側の端部は、全周に亘ってケーシング11の下流側の端部に接合される。本実施形態では、混合部13は、図2及び図3に示すように、円錐台形状に形成される。
混合部13は、ノズル部12から導入される燃焼用空気と、後述の燃料ガス導入口15から導入される燃料ガスとを混合する。
【0024】
燃料ガス流路14は、ケーシング11の内面と、ノズル部12の外面及び混合部13の外面とに囲まれた空間により形成される。この燃料ガス流路14には、後述の燃料ガス供給ライン40から燃料ガスが供給される。
【0025】
燃料ガス導入口15は、ノズル部12と混合部13との間に配置される。具体的には、燃料ガス導入口15は、ノズル部12の下流側の端部と混合部13の上流側の端部との間に形成される隙間により形成される。
【0026】
燃料ガス供給ライン40は、ベンチュリノズル1に燃料ガスを供給する。燃料ガス供給ライン40の上流側は、燃料ガス供給源(図示せず)に接続される。燃料ガス供給ライン40の下流側は、ケーシング11に接続される。
燃料ガス供給ライン40には、均圧弁41及びオリフィス42が配置される。均圧弁41オリフィス42は、燃料ガス供給ライン40を流通する燃料ガスの圧力を設定された圧力に減圧してベンチュリノズル1側に供給する。
【0027】
第1混合気供給ライン50は、ベンチュリノズル1と送風機20とを接続する。第1混合気供給ライン50は、混合部13において混合された燃料ガスと燃焼用空気との混合気を送風機20側に流通させる。
【0028】
第2混合気供給ライン60は、送風機20と燃焼装置(図示せず)とを接続する。第2混合気供給ライン60は、送風機20に送り込まれた混合気を燃焼装置側に流通させる。
【0029】
以上の燃料供給装置100によれば、制御部30により送風機20を所定の出力で駆動させると、燃焼用空気は、下流側に向かって縮径したノズル部12に引き込まれ、その後、下流側に向かって拡径した混合部13に引き込まれる。また、燃料ガス流路14には、燃料ガス供給ライン40から所定の圧力で燃料ガスが供給される。すると、ノズル部12に引き込まれ、更に混合部13に引き込まれた燃焼用空気のベンチュリ効果によって、燃料ガス流路14に供給された燃料ガスは、燃料ガス導入口15から混合部13に引き込まれる。これにより、ベンチュリノズル1においては、ベンチュリ効果を利用することで燃料ガスの供給圧を高めることなく、燃焼用空気と燃料ガスとを効率的に混合させられる。
混合部13において混合された燃焼用空気と燃料ガスとの混合気は、第1混合気供給ライン50、送風機20及び第2混合気供給ライン60を通って燃焼装置に供給され、燃焼装置において燃焼される。
【0030】
ここで、ベンチュリノズル1においては、理想的には、以下の関係式が成り立つ。
【0031】
【数1】
【0032】
上記の式に加え、均圧弁41を用いてPg1=Pa1(Patm(大気圧))を保つことで、ベンチュリミキシングでは、QgとQaの比例関係が保たれる。これにより、他の混合方式において必要とされる、空気比(燃焼用空気と燃料ガスとの混合比)を一定に保つための機械的又は電気的な燃料ガスの圧力調整機構を含むことなく、一定の空気比を実現できる。
【0033】
しかしながら、従来のベンチュリノズルを含んで構成されるファンサクションミキシング方式の予混合バーナにおいて、送風機の出力を変化させて燃焼量を変更した場合、燃料ガスと燃焼用空気の混合比(空気比)を一定に保つことが困難であった。即ち、送風機の出力が大きい場合(つまり、燃焼用空気の流量が大きい場合)に比して、送風機の出力が小さい場合(つまり、燃焼用空気の流量が小さい場合)、ベンチュリノズルの表面において発生する境界層剥離の影響が大きくなると考えられ、これによりベンチュリノズルに導入される燃焼用空気の流量係数が低下してしまう。ベンチュリノズルにおいては、燃焼用空気の供給圧力Pa1(大気圧)と燃料ガスの供給圧力Pg1とを一定の関係に保つことで空気比も一定に保たれるため、流量係数が変化してしまうと、空気比を一定に保つことはできない。
【0034】
ここで、流量係数Cは、以下の式にて表される。流量係数の低下は、流れの損失の増大を示す。
【0035】
【数2】
ここで、vは流速、pは圧力、ρは密度を示す。また、添字2はノズル最狭部(図1におけるPa2の位置に相当)での値、添字1はノズル入口(図1におけるPa1の位置に相当)での値を示す。
【0036】
そこで、本実施形態では、ノズル部12の内面に複数の凸条部16を形成してベンチュリノズル1を構成した。これにより、ノズル部12に形成した複数の凸条部16によりノズル部12の表面において乱流を生じさせて境界層剥離の発生を抑制できる。よって、燃焼用空気の流量が小さい場合と大きい場合とにおいて、ベンチュリノズル1に導入される燃焼用空気の圧力に生じる変動を抑制できるので、燃焼用空気の流量の変動があった場合においても流量係数Cを安定化させられ、空気比を一定に保てる。
【0037】
本実施形態では、凸条部16は、図3及び図4に示すように、ノズル部12の内面において、周方向の全周に亘って延びるように環状に形成される。また、環状に形成された凸条部16は、ノズル部12の曲面部分122において、燃焼用空気の流れ方向に所定の間隔をあけて配置される。
【0038】
より詳細には、本実施形態では、凸条部16は、ノズル部12の曲面部分122の内面から内側に突出するように形成されている。また、複数の凸条部16の高さ(h)は、上流側から下流側に向かうに従って徐々に高くなっている。そして、複数の凸条部16の頂部は、それぞれ、略90度の角度で突出しており、複数の凸条部16は、階段状に形成されている。
【0039】
また、凸条部16を構成する面のうちノズル部12の中心軸X側に位置する面(図4における面16a)は、中心軸Xに対して平行、垂直又は上流側に向かうに従って中心軸Xから離間する方向に延びる。本実施形態では、凸条部16を構成する面のうちノズル部12の中心軸X側に位置する面16aは、中心軸Xに対して平行に延びている。
【0040】
また、凸条部16を構成する面のうち、ノズル部12の外面側に位置する面(図4における面16b)は、中心軸Xに対して平行、垂直又は上流側に向かうに従って中心軸Xに接近する方向に延びる。本実施形態では、凸条部16を構成する面のうち、ノズル部12の外面側に位置する面16bは、中心軸Xに対して垂直に延びている。
これにより、ノズル部12を型を用いて成形する場合に、凸条部16を好適に形成することができる。
【0041】
ノズル部12に形成する凸条部16の高さ(h)は、圧力損失を低減しつつ、低流量時における流量係数Cの低下を効果的に抑制する観点から、0.5mm〜5mmであることが好ましい。凸条部16の高さ(h)が高すぎる場合には、凸条部16を配置することによる圧力損失が大きくなりすぎてしまう。また、凸条部16の高さ(h)が低すぎる場合には、凸条部16により乱流を十分に発生させられず、境界層剥離の発生を十分に抑制できなくなる。
【0042】
また、隣り合う凸条部16間の距離(l)の凸条部16の高さ(h)に対する比(l/h)は、同様の観点から、1〜5であることが好ましい。凸条部16間の距離(l)の凸条部16の高さ(h)に対する比(l/h)が大きすぎる場合(つまり、隣り合う凸条部16間の距離(l))が長すぎる場合には、複数の凸条部16による境界層剥離の発生の抑制効果が低下してしまう。
【0043】
尚、本実施形態において、凸条部16の高さ(h)とは、凸条部16の頂部からノズル部12の曲面部分122に対する垂直方向の距離をいう。また、隣り合う凸条部16間の距離(l)とは、隣り合う凸条部16の頂部間の直線距離をいう。
【0044】
また、本実施形態のベンチュリノズル1を、送風機の出力を大きく変化させる燃焼装置(例えば、ターンダウン比率の大きい蒸気ボイラ)に適用する場合に、高流量時と低流量時とにおける空気比の変動を抑制する観点から、レイノルズ数が2.5E+5の場合の流量係数C1に対するレイノルズ数が1.0E+5の場合の流量係数C2の比(C2/C1)が0.97〜1.00であることが好ましい。また、同様の観点から、レイノルズ数が2.5E+5の場合の流量係数C1に対するレイノルズ数が5.0E+4の場合の流量係数C3の比(C3/C1)が0.94〜1.00であることが好ましく、0.97〜1.00であることがより好ましい。
【実施例】
【0045】
次に、本発明を実施例及び比較例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0046】
[流量係数の測定]
内面に複数の凸条部16を形成したノズル部12を具備する実施例1のベンチュリノズル1、並びに凸条部を形成していないノズル部120を具備する比較例1及び2のベンチュリノズルにつき、燃焼用空気の流量を変化させて、各流量におけるノズル部の入口の流量係数を測定した。
【0047】
[比較例1]
図4に示すディンプルが形成されていないノズル部120を用いた比較例のベンチュリノズルを製造し、燃焼用空気の流量を変化させて各流量における流量係数を測定した。
ノズル部120として、上流側端部の直径D1が下流側端部の直径D2の約1.75倍であり、内面は、径方向断面視において、下流側端部側に直線部分121を有すると共に、半径Rが下流側端部の直径D2の約0.4倍の内側に凸となるように湾曲した四分円の曲面部分122を有するものを用いた。このノズル部120の長さD3は、下流側端部の直径D2の約0.5倍の長さであった。
【0048】
[実施例1]
図2図4に示す実施例1のノズル部12を用いたベンチュリノズル1につき、燃焼用空気の流量を変化させ、各流量における流量係数を測定した。
実施例1のノズル部12は、比較例1と同様のノズル部を用い、このノズル部12の内面の曲面部分122に複数の凸条部16を形成して製造した。
【0049】
実施例1の凸条部16は、最も上流側の凸条部16の高さ(h)が0.5mm、最も下流側の凸条部16の高さ(h)が1.7mmに形成される。また、隣り合う凸条部16間の距離(l)の凸条部16の高さ(h)に対する比(l/h)は、最も上流側において2、最も下流側において4であった。
【0050】
[比較例2]
図6に示す比較例2のノズル部120を用いたベンチュリノズルにつき、燃焼用空気の流量を変化させ、各流量における流量係数を測定した。
比較例2のノズル部120は、上流側端部の直径D1、下流側端部の直径D2及び長さD3は実施例1と同じ大きさであるが、内面は、径方向断面視において、下流側端部側から第1の直線部分123、第2の直線部分124、及び第3の直線部分125を有する不連続な複数の内面を有するものを用いた。
【0051】
以上の実施例1、及び比較例1及び2の結果を図7及び表1に示す。
【0052】
【表1】
【0053】
図7及び表1に示すように、ノズル部12の内面に複数の凸条部16を形成した実施例1のベンチュリノズルでは、複数の凸条部16を形成していない比較例1のベンチュリノズルに比して、低流量(低レイノルズ数)時における流量係数の低下傾向が小さくなっていることが確認された。
【0054】
より具体的には、実施例1のベンチュリノズルでは、レイノルズ数が2.5E+5の場合の流量係数C1に対するレイノルズ数が1.0E+5の場合の流量係数C2の比(C2/C1)が0.98以上に保たれており、低流量域における流量係数Cの低下傾向が抑制されていることが確認された。
レイノルズ数が2.5E+5〜1.0E+5の範囲において、流量係数Cの変化率を抑制することで、例えば、ベンチュリノズルを送風機の出力を大きく変化させる燃焼装置(例えば、ターンダウン比率の大きい蒸気ボイラ)に適用した場合においても、安定した燃焼状態を実現できる。
【0055】
一方、不連続な複数の内面を有するノズル部120を用いた比較例2のベンチュリノズルでは、図7及び表1に示すように、流量の変化に対する流量係数の変化は少なくなっているが、四分円の曲面を有するノズル部12を用いたベンチュリノズルに比して、全体的に流量係数が小さくなっていることが確認された。この結果から、比較例2のベンチュリノズルでは、実施例1のベンチュリノズルに比して、損失が大きくなっていることが示された。
【0056】
以上の結果から、内面に複数の凸条部16が形成されたノズル部12を有する実施例1のベンチュリノズルでは、流量を変化させた場合における流量係数を一定に保てることが示された。また、ノズル部12の内面を曲面に形成することで、流量係数を高く維持しつつ流量係数の安定化を実現できることが示された。
【0057】
以上説明した本実施形態のベンチュリノズル1及び燃料供給装置100によれば、以下の効果が奏される。
【0058】
(1)燃焼量を変更可能な燃料供給装置を、ベンチュリノズル及びこのベンチュリノズルの下流側に配置される送風機を含んで構成した場合、送風機の出力を大きくして供給する燃料ガス及び燃焼用空気の流量を大きくした場合(燃焼量を大きくした場合)と送風機の出力を小さくして供給する燃料ガス及び燃焼用空気の流量を少なくした場合(燃焼量を小さくした場合)とにおいて、空気比(燃料ガスと燃焼用空気の混合比)を一定に保つことが困難であった。即ち、送風機の出力が大きい場合(つまり、燃焼用空気の流量が大きい場合)に比して、送風機の出力が小さい場合(つまり、燃焼用空気の流量が小さい場合)、ベンチュリノズルの表面において発生する境界層剥離の影響が大きくなり、ベンチュリノズルに導入される燃焼用空気の流量係数が低下してしまう。そのため、従来の燃料供給装置では、燃焼量の変化(つまり、燃焼用空気の供給量の変化)に伴う流量係数の変化に応じて、燃料ガスの供給圧力を調整するガス圧力の調整機構を必要としていた。
そこで、ベンチュリノズル1を、ノズル部12の内面に複数の凸条部16を形成して構成し、このベンチュリノズル1を含んで燃料供給装置100を構成した。これにより、ノズル部12に形成した複数の凸条部16によりノズル部12の表面において乱流を生じさせて境界層剥離の発生を抑制できるので、燃焼用空気の流量が小さい場合における流量係数の低下を抑制できる。よって、燃焼用空気の流量の変動があった場合においてもベンチュリノズル1における流量係数を一定に保てるので、燃焼用空気の流量の変動があった場合でも、燃焼用空気と燃料ガスとの混合比(空気比)を一定に保てる。その結果、ターンダウン比の高いボイラにおいても、燃焼量変化に伴うガス圧力調整機構等を含むことなく、ボイラを構成できるので、ベンチュリノズル1を含んで構成される燃料供給装置100及びこの燃料供給装置100を含んで構成されるボイラの製造コストを低減できる。
また、燃焼用空気と燃料ガスとの混合比(空気比)を一定に保てるため、ガス圧力調整機構を含んで燃料供給装置を構成した場合においても、ガス圧力調整機構への依存度を下げられ、より簡易な制御によって、空気比を安定させられる。
【0059】
(2)ノズル部12の内面を、内側に向かって凸となるように湾曲した曲面により構成した。これにより、流量係数を高く維持しつつ流量係数の安定化を実現できる。よって、ベンチュリノズル1における圧力損失を小さくできるので、送風機20の負荷を軽減でき、エネルギ損失の抑制及び流量特性の安定化を両立させられる。
【0060】
以上、本発明のベンチュリノズル及び燃料供給装置の好ましい各実施形態につき説明したが、本発明は、上述の実施形態に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。
例えば、本実施形態では、ノズル部12の曲面部分122の内面から突出した形状の凸条部16を複数形成してベンチュリノズル1を構成したが、これに限らない。即ち、図8に示すように、ノズル部12Aの曲面部分122Aの内面から凹んだ形状の溝部16Aを複数形成してベンチュリノズルを構成してもよい。この場合、溝部16Aの高さ(h)は、溝部16Aの最奥部からノズル部12の曲面部分122の内面に対する垂直方向の距離をいう。また、隣り合う溝部16A間の距離(l)とは、隣り合う溝部16Aの裾野部分(最も内面側に位置する部分)の間の直線距離をいう。また、この場合、溝部16Aを構成する面のうちノズル部12Aの中心軸X側に位置する面16aは、中心軸Xに対して垂直に延びている。そして、溝部16Aを構成する面のうちノズル部12Aの外面側に位置する面16bは、中心軸Xに対して平行に延びている。
【0061】
また、本実施形態では、複数の凸条部16の頂部を、それぞれ、ノズル部12の内面から略90度の角度で突出させ、複数の凸条部16を階段状に形成したが、これに限らない。即ち、図9に示すように、複数の凸条部16Bを、頂部が凸曲面となるようにノズル部12Bの曲面部分122Bの内面から突出させてリブ状に形成してもよい。この場合、凸条部16Bを構成する面のうちノズル部12Bの中心軸X側に位置する面16a、及びノズル部12Bの外面側に位置する面16bは、いずれも中心軸Xに対して平行に延びている。
【0062】
また、凸条部16の高さ(h)及び隣り合う凸条部16間の距離(l)は、実施例に制限されない。
【0063】
また、上述の各実施形態では、溝部又は凸条部を構成する面のうちノズル部の中心軸X側に位置する面16a、及びノズル部12Bの外面側に位置する面16bは、中心軸Xに対して平行又は垂直に延びていたが、これに限らない。即ち、図10に示すように、凸条部16Cを構成する面のうちノズル部12Cの中心軸X側に位置する面16aを、ノズル部12Cの上流側に向かうに従って中心軸Xから離間する方向に延びる面16a1を含んで構成してもよい。また、凸条部16Cを構成する面のうちノズル部12Cの外面側に位置する面16bを、ノズル部12Cの上流側に向かうに従って中心軸Xに接近する方向に延びる面16b1を含んで構成してもよい。
【0064】
尚、溝部は、当該溝部を構成する面と中心軸とのなす角度が0度以上の劣角となるように設定することで、ノズル部を型を用いて成形する場合に、溝部を好適に形成することができる。ここで、溝部を構成する面と中心軸とのなす角度とは、溝部を構成する面におけるノズル部の内面側に位置する端部に中心軸と平行な直線を合わせた場合における両者のなす角度を、中心軸を基準(始線)とした正の角で表すものをいう。
【0065】
また、本実施形態では、全周に亘って環状に形成された凸条部16を燃焼用空気の流れ方向に間隔をあけて複数配置したが、これに限らない。即ち、溝部又は凸条部は、ノズル部の内面の一部に形成してもよい。この場合、ノズル部を軸方向視した場合(ノズル部を燃焼用空気の流れ方向に視た場合)に、隣り合う溝部又は凸条部が重なる位置に配置されればよい。また、溝部又は凸条部をノズル部の内面に螺旋状に形成してもよい。
即ち、本明細書において、「燃焼用空気の流れ方向に所定の間隔をあけて配置される複数の溝部又は凸条部」とは、ノズル部を軸方向視した場合に隣り合う溝部又は凸条部が重なる位置に配置されることを示す。
【0066】
また、燃料供給装置を、ベンチュリノズルに供給される燃料ガスの圧力を調整するガス圧力調整機構を含んで構成してもよい。
【符号の説明】
【0067】
1 ベンチュリノズル
12 ノズル部
13 混合部
15 燃料ガス導入口
16 凸条部
20 送風機
30 制御部
100 燃料供給装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10