【解決手段】本明細書が開示するMEMS装置は、可動部と、支持部と、可動部が支持部に対して相対的に移動可能に可動部と支持部の間を連結する連結部を備えている。そのMEMS装置では、可動部の可動範囲が大きな箇所近傍に、可動部を動かすために必要な空隙と、空気を逃がすための空隙を有する。
可動部と支持部の間の間隔が、支持部に対する可動部の可動範囲が小さな箇所と支持部に対する可動部の可動範囲が大きな箇所の間で緩やかに変化する、請求項2のMEMS装置。
可動部と支持部の間の間隔が、支持部に対する可動部の可動範囲が小さな箇所と支持部に対する可動部の可動範囲が大きな箇所の間で急激に変化する、請求項2のMEMS装置。
支持部に対する可動部の可動範囲が大きな箇所における第1の通気孔の幅が、支持部に対する可動部の可動範囲が小さな箇所における第1の通気孔の幅よりも大きい、請求項6のMEMS装置。
複数本のねじり梁が、同一平面内に配置されており、可動部との接続箇所において一体化されており、一体化された接続箇所に第3の通気孔が形成されている、請求項9のMEMS装置。
支持部に対する複数本のねじり梁の可動範囲が大きな箇所における第3の通気孔の幅が、支持部に対する複数本のねじり梁の可動範囲が小さな箇所における第3の通気孔の幅よりも大きい、請求項10のMEMS装置。
複数本のねじり梁のうち最も支持部に近いねじり梁と支持部の間の間隔が、複数本のねじり梁の隣接するねじり梁間の間隔とほぼ等しい、請求項9から11の何れか一項のMEMS装置。
支持部に対する第2支持部の可動範囲が大きな箇所における第2支持部の幅が、支持部に対する第2支持部の可動範囲が小さな箇所における第2支持部の幅よりも小さい、請求項14のMEMS装置。
第3支持部と、支持部が第3支持部に対して相対的に移動可能に支持部と第3支持部を連結する第3連結部をさらに備えている、請求項1から13の何れか一項のMEMS装置。
支持部に対する可動部の可動範囲が大きな箇所における可動部の幅が、支持部に対する可動部の可動範囲が小さな箇所における可動部の幅よりも小さい、請求項16のMEMS装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1の技術では、騒音を消音するための消音用構造体を可動部とは別個に設ける必要がある。より簡素な構成により、MEMS装置が発生する騒音を抑制することが可能な技術が期待されている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(請求項1の効果)
本明細書が開示するMEMS装置は、可動部と支持部と可動部が支持部に対して相対的に移動可能に可動部と支持部の間を連結する連結部を備えている。そのMEMS装置では、可動部の可動範囲が大きな箇所近傍に、可動部を動かすために必要な空隙と、空気を逃がすための空隙を有している。以下では本空隙を設けた理由について説明する。
【0010】
本願の発明者が試作したMEMSスキャナを測定した結果、騒音が最も大きくなるのは、可動部の可動範囲が最も大きい位置近傍であった。このことから、騒音は、可動部が押し出す空気が狭い空隙を通過する際に発生していると考えられる。
【0011】
図23は、可動部である揺動板320が、支持部である支持フレーム322に、連結部であるねじり梁324を介して支持されている、MEMSスキャナ326を例示している。揺動板320は、揺動軸Cの周りに揺動する。このMEMSスキャナ326において、揺動板320を大きく形成し、かつ高速に、大振れ角で揺動板320を駆動すると、揺動板320の端部の速度は非常に大きくなる。その結果、
図24に示すように、揺動板320は大量の空気328を押し出すこととなる。押し出される大量の空気328は、
図25に示すように、揺動板320と支持フレーム322の間で圧縮される。圧縮された空気328は、
図26に示すように、揺動板320と支持フレーム322の空隙から噴射される。
【0012】
圧縮された大量の空気328が狭い空隙から噴出されるため、空気による騒音は非常に大きいものとなったと考えられる。騒音を低減するため、請求項1のMEMS装置では、可動部の可動範囲が大きな箇所近傍に、可動部が動くために必要となる空隙とともに、空気が移動できるような幅の空隙を設けた。このように空隙を大きくとることで、空気の圧縮量が減少する。これにより、空隙から噴射する空気の速度を低減できる。その結果、騒音を低減できる。特に可動部の可動範囲が大きな位置では、押し出される空気量が多い。このため、この位置に大きな空隙を設けることで、高い騒音低減効果が得られる。請求項1のMEMS装置によれば、消音用構造体を別途設けることなく、簡素な構成により、MEMS装置が発生する騒音を抑制することができる。
【0013】
(請求項2の効果)
上記のMEMS装置は、可動部が支持部に対して揺動軸周りに揺動可能であって、支持部に対する可動部の可動範囲が大きな箇所における可動部と支持部の間の間隔が、支持部に対する可動部の可動範囲が小さな箇所における可動部と支持部の間の間隔よりも大きいように構成することができる。
【0014】
従来のMEMS装置のように、可動部と支持部の間の間隔が均一で、かつ、可動部と支持部の間の間隔が揺動に必要な間隔しかない場合、可動部の可動範囲が大きくなるにつれて、その近傍の空隙から発生する空気の速度が高くなる(
図23参照)。その結果、大きな騒音の原因となる。これは、支持部に対する可動部の可動範囲が大きくなるにつれて、支持部と可動部の間における空気の圧縮比が大きくなるためである。
図28のMEMS装置332に例示するように、支持部322に対する可動部320の可動範囲に応じて支持部322と可動部320の間の間隔を大きくすることによって、可動範囲の大きな可動部320近傍の空隙における空気の圧縮比を低減できる。上記のMEMS装置では、可動部の可動範囲が大きい箇所における可動部と支持部の間の空隙が、可動部を動かすために必要な空隙(可動部の可動範囲が小さい箇所における可動部と支持部の間の空隙と同程度の大きさ)よりも大きく形成されており、騒音低減用の空気抜け穴として機能するので、空隙の全ての位置から噴射される空気の速度を低くでき、騒音を低減することができる。
【0015】
(請求項3の効果)
上記のMEMS装置は、可動部と支持部の間の間隔が、支持部に対する可動部の可動範囲が小さな箇所と支持部に対する可動部の可動範囲が大きな箇所の間で緩やかに変化するように構成することができる。
【0016】
上記のMEMS装置では、可動部と支持部の間の間隔が緩やかに変化するので、可動部によって押し出される空気の流れが場所によって大きく変動することを抑制することができる。このような構成とすることによって、空気の流れによって支持部に局所的な負荷が作用して応力集中を生じてしまうことを抑制することができる。
【0017】
(請求項4の効果)
あるいは、上記のMEMS装置は、可動部と支持部の間の間隔が、支持部に対する可動部の可動範囲が小さな箇所と支持部に対する可動部の可動範囲が大きな箇所の間で急激に変化するように構成することができる。
【0018】
上記のMEMS装置では、可動部と支持部の間の間隔を急激に変化させることで、支持部に対する可動部の可動範囲が大きな箇所に大部分の空気を流し、支持部に対する可動部の可動範囲が小さな箇所にほとんど空気を流さないようにしている。一般に、支持部に対する可動部の可動範囲が小さな箇所は、可動部と支持部を連結する連結部が支持部に接続する箇所に近く、このような箇所の近傍の支持部には、可動部を動かす際に大きな負荷が作用する。逆に、支持部に対する可動部の可動範囲が大きな箇所は、連結部が支持部に接続する箇所から離れており、このような箇所の近傍の支持部には、可動部を動かす際にそれほど大きな負荷が作用しない。上記のMEMS装置によれば、可動部が押し出す空気の流れにより支持部に作用する負荷を、支持部に対する可動部の可動範囲が大きな箇所、すなわち連結部が支持部に接続する箇所から離れた箇所に作用させることで、支持部に作用する負荷を分散させることができる。支持部に応力集中が生じることを抑制し、支持部の強度を確保することができる。
【0019】
(請求項5の効果)
上記のMEMS装置は、支持部の、揺動軸に沿った方向における、可動部に最も近い側面と可動部に最も遠い側面の間の幅が、支持部の、揺動軸に垂直な方向における、可動部に最も近い側面と可動部に最も遠い側面の間の幅よりも大きいように構成することができる。
【0020】
チップサイズを大きくすることなく、支持部と可動部の間の間隔を大きくしようとすると、それだけ支持部の幅を狭くせざるを得なくなり、支持部の強度と剛性の低下を招いてしまう。そこで、上記のMEMS装置では、大きな騒音が発生する箇所では、空隙を大きくするとともに支持部の幅を狭くし、それほど騒音が発生しない箇所では、空隙を小さくして支持部の幅を広くすることで、チップサイズを大きくすることなく、騒音を抑制し、かつ支持部の強度および剛性を確保している。具体的には、
図27のMEMS装置330に例示するように、支持部322の、揺動軸Cに沿った方向における、可動部320に最も近い端部と可動部に最も遠い端部の間の幅Aが、支持部322の、揺動軸Cに垂直な方向における、可動部320に最も近い端部と可動部に最も遠い端部の間の幅Bよりも大きくなるように構成することで、連結部324と支持部322の接続点近傍の強度を従来技術の構造(
図23参照)と同等にできる。また、連結部324と支持部322の接続点近傍の支持部322の面積を従来技術の構造(
図23参照)と同等にすることができる。固定できる面積が広いため、連結部324と支持部322の接続点近傍にて、MEMS装置330を頑強に固定することができる。従来と同等の強度でMEMS装置330を固定できるため、従来のMEMS装置と同等のQ値を得ることができる。その結果、従来のMEMS装置と同等の電力で駆動することができる。以上から、本構成では、MEMS装置の駆動電力を増大させることなく、騒音を低減することができる。
【0021】
(請求項6の効果)
本明細書が開示する別のMEMS装置は、可動部と、支持部と、可動部が支持部に対して相対的に移動可能に可動部と支持部の間を連結する連結部を備えている。そのMEMS装置では、可動部に第1の通気孔が形成されている。なお、本明細書でいう通気孔とは、可動部が支持部に対して相対的に移動する際に、騒音を低減できる程度の断面積を有する貫通孔を意味している。
【0022】
上記のMEMS装置では、可動部に第1の通気孔が形成されているので、可動部が支持部に対して相対的に移動する際に、第1の通気孔によって可動部が押し出す空気を逃がすことができるため、可動部と支持部の間で空気が強く圧縮されることを防ぐことができる。これによって、可動部が支持部に対して相対的に移動する際に、可動部と支持部の間で騒音が発生することを抑制することができる。また、第1の通気孔によって可動部の押し出す空気を逃がすことができるため、可動部と支持部の間に、空気を逃がすための空隙を設けなくても良くなる。その結果、従来のMEMS装置と同じ支持部の強度と面積を実現できる。このため、従来のMEMS装置と同等のQ値が実現できる。さらに、孔を設けたことで可動部が軽くなるため、同じ共振周波数を実現するための支持部および連結部のバネ定数が小さくできる。従来と同等のQ値を維持しつつバネ定数を小さくできるため、MEMS装置を駆動するための電力を小さくできる。以上から、駆動電力を低減しつつ、騒音を低減することが可能となる。
【0023】
(請求項7の効果)
上記のMEMS装置は、支持部に対する可動部の可動範囲が大きな箇所における第1の通気孔の幅が、支持部に対する可動部の可動範囲が小さな箇所における第1の通気孔の幅よりも大きいように構成することができる。
【0024】
上記のMEMS装置では、支持部に対する可動部の可動範囲が大きな箇所における第1の通気孔の幅を、支持部に対する可動部の可動範囲が小さな箇所における第1の通気孔の幅よりも大きく形成しているため、騒音への影響の大きい、可動部の可動範囲が大きな箇所が押し出した空気を透過することができる。このため、上記のMEMS装置では、請求項6の構成と同等の騒音低減効果を維持することができる。また、支持部に対する可動部の可動範囲が小さな箇所では、可動部の第1の通気孔以外の部分の面積を大きくできるため、可動部の剛性を確保することが可能となる。さらに、可動部の可動範囲が大きな箇所で第1の通気孔の幅を大きくすることで、可動部の慣性モーメントを低減することができ、同じ共振周波数を実現するための支持部および連結部のバネ定数を小さくすることができる。従来と同等のQ値を維持しつつバネ定数を小さくできるため、MEMS装置を駆動するための電力を小さくできる。以上から、駆動電力を低減しつつ、騒音を低減することが可能となる。また、第1の通気孔によって可動部の押し出す空気を逃がすことができるため、可動部と支持部の間の間隔を場所によって変える必要がなく、エッチングの際に加工すべき幅を均一にすることができる。マイクロローディング効果の発生を抑制し、可動部と支持部を精度よく加工することができる。
【0025】
(請求項8の効果)
本明細書が開示する別のMEMS装置は、可動部と、支持部と、可動部が支持部に対して相対的に移動可能に可動部と支持部の間を連結する連結部を備えている。そのMEMS装置では、支持部に第2の通気孔が形成されている。
【0026】
上記のMEMS装置では、支持部に第2の通気孔が形成されているので、可動部が支持部に対して相対的に移動する際に、第2の通気孔によって可動部が押し出す空気を逃がすことができるため、可動部と支持部の間で空気が強く圧縮されることを防ぐことができる。これによって、可動部が支持部に対して相対的に移動する際に、可動部と支持部の間で騒音が発生することを抑制することができる。また、第2の通気孔によって可動部の押し出す空気を逃がすことができるため、可動部と支持部の間の間隔を場所によって変える必要がなく、エッチングの際に加工すべき幅を均一にすることができる。マイクロローディング効果の発生を抑制し、可動部と支持部を精度よく加工することができる。
【0027】
(請求項9の効果)
上記のMEMS装置は、連結部が、複数本のねじり梁を備えているように構成することができる。なお、本明細書でいうねじり梁とは、可動部が支持部に対して相対的に移動する際にねじり変形する梁状の部材のことをいう。
【0028】
詳細は実施例8で後述するが、連結部が複数本のねじり梁から構成されている場合、連結部が単一のねじり梁から構成されている場合に比べて、必要とされる可動部の共振周波数とねじり梁の強度を確保しつつ、ねじり梁の長さを短くすることができる。MEMS装置のチップ面積を一定とした場合、本構成では、従来のMEMS装置よりも支持部の面積を大きくできる。その結果、支持部の剛性を高めることができるため、MEMS装置のQ値を高くすることができる。その結果、MEMS装置の駆動電力を低減できる。
【0029】
(請求項10の効果)
上記のMEMS装置は、複数本のねじり梁が、同一平面内に配置されており、可動部との接続箇所において一体化されており、一体化された接続箇所に第3の通気孔が形成されているように構成することができる。
【0030】
連結部が同一平面内に配置された複数本のねじり梁から構成されている場合、回転軸から離れた位置にあるねじり梁は、回転軸近傍の梁よりも可動部の可動範囲が大きな箇所で、可動部に接続される。このような梁では、回転軸に近いねじり梁に比べ、ねじり梁の可動部との接続箇所も、可動部とともに支持部に対して大きく移動するので、ねじり梁の可動部との接続箇所と支持部の間で空気が強く圧縮されて、大きな騒音を発生するおそれがある。上記のMEMS装置によれば、複数本のねじり梁が、可動部との接続箇所において一体化されており、一体化された接続箇所に第3の通気孔が形成されているので、隣接するねじり梁の間隔よりも大きな通気孔を形成することができる。これによって、ねじり梁の可動部との接続箇所と支持部の間で空気が強く圧縮されることを防ぎ、可動部とねじり梁の接続部が押し出す空気によって発生する騒音を低減することができる。
【0031】
(請求項11の効果)
上記のMEMS装置は、支持部に対する複数本のねじり梁の可動範囲が大きな箇所における第3の通気孔の幅が、支持部に対する複数本のねじり梁の可動範囲が小さな箇所における第3の通気孔の幅よりも大きいように構成することができる。
【0032】
上記のMEMS装置では、梁接続部の中で、騒音の影響の大きい、可動範囲が大きな箇所で第3の通気孔の幅を大きくすることで、可動部の可動範囲が大きな箇所が押し出した空気を透過することができる。このため、上記のMEMS装置では、請求項10の構成と同等の騒音低減効果を維持することができる。また、上記のMEMS装置では、梁接続部の中で、可動範囲が小さな箇所では、第3の通気孔の幅を小さくすることで、梁接続部の第3の通気孔以外の部分の面積を大きくできるため、梁接続部の剛性を確保することが可能となる。
【0033】
(請求項12の効果)
上記のMEMS装置は、複数本のねじり梁のうち最も支持部に近いねじり梁と支持部の間の間隔が、複数本のねじり梁の隣接するねじり梁間の間隔とほぼ等しいように構成することができる。
【0034】
上記のMEMS装置によれば、複数本のねじり梁を加工する際のマイクロローディング効果の発生を抑制し、複数本のねじり梁を精度よく加工することができる。なお、マイクロローディングの詳細については、実施例10にて説明する。
【0035】
(請求項13の効果)
上記のMEMS装置は、可動部に固定されたミラーを備えているように構成することができる。
【0036】
上記のMEMS装置は、光偏向装置として利用することができる。上記のMEMS装置によれば、光偏向装置の動作時に発生する騒音を抑制することができる。
【0037】
(請求項14の効果)
上記のMEMS装置は、可動部が、第2可動部と、第2支持部と、第2可動部が第2支持部に対して相対的に移動可能に第2可動部と第2支持部を連結する第2連結部をさらに備えており、連結部が、第2支持部が支持部に対して相対的に移動可能に第2支持部と支持部の間を連結しているように構成することができる。
【0038】
上記のMEMS装置は、第2可動部が支持部に対して2自由度で相対的に移動可能な装置として利用することができる。上記のMEMS装置によれば、このような装置において、第2支持部と支持部の間で騒音が発生することを抑制することができる。
【0039】
(請求項15の効果)
上記のMEMS装置は、支持部に対する第2支持部の可動範囲が大きな箇所における第2支持部の幅が、支持部に対する第2支持部の可動範囲が小さな箇所における第2支持部の幅よりも小さいように構成することができる。
【0040】
上記のMEMS装置によれば、支持部の形状を小さくすることなく、第2支持部と支持部の間の間隔を確保することができる。支持部の剛性および強度を確保しつつ、第2支持部と支持部の間で騒音が発生することを抑制することができる。
【0041】
(請求項16の効果)
上記のMEMS装置は、第3支持部と、支持部が第3支持部に対して相対的に移動可能に支持部と第3支持部を連結する第3連結部をさらに備えているように構成することができる。
【0042】
上記のMEMS装置によれば、可動部が第3支持部に対して2自由度で相対的に移動可能な装置として利用することができる。上記のMEMS装置によれば、このような装置において、可動部と支持部の間で騒音が発生することを抑制することができる。
【0043】
(請求項17の効果)
上記のMEMS装置は、支持部に対する可動部の可動範囲が大きな箇所における可動部の幅が、支持部に対する可動部の可動範囲が小さな箇所における可動部の幅よりも小さいように構成することができる。
【0044】
上記のMEMS装置によれば、支持部の形状を小さくすることなく、可動部と支持部の間の間隔を確保することができる。支持部の剛性および強度を確保しつつ、可動部と支持部の間で騒音が発生することを抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0046】
(実施例1)
図1および
図2は、本実施例のMEMS装置2を示している。MEMS装置2は、支持フレーム4(支持部の一例である)と、揺動板6(可動部の一例である)と、ミラー8と、ねじり梁10a,10b(連結部の一例である)と、永久磁石12と、電磁石14a,14bを備えている。
【0047】
支持フレーム4と、揺動板6と、ねじり梁10a,10bは、単結晶シリコンからなるシリコンウェハを選択的にエッチングすることによって形成されている。支持フレーム4と、揺動板6と、ねじり梁10a,10bは、継ぎ目無く一体的に形成されている。
【0048】
支持フレーム4は、MEMS装置2を上方から平面視したときに、揺動板6とねじり梁10a、10bの周囲を囲む形状に形成されている。
【0049】
揺動板6は、MEMS装置2を上方から平面視したときに、矩形の平板形状に形成されている。揺動板6は、支持フレーム4の内側に配置されている。揺動板6は、ねじり梁10a,10bを介して、支持フレーム4に対して揺動軸C周りに揺動可能に支持されている。なお、本実施例では、揺動軸Cに沿う方向をX軸とし、揺動板6に直交する方向をZ軸とし、X軸およびZ軸に直交する方向をY軸としている。
【0050】
ミラー8は、揺動板6の表面にAL等の金属を蒸着することによって形成されている。ミラー8は、MEMS装置2の上面側から入射する光を反射する。揺動板6が揺動軸C周りに揺動すると、ミラー8の反射角度が変化する。すなわち、MEMS装置2は、光偏向装置として動作することができる。
【0051】
ねじり梁10a,10bは、X軸方向に沿って伸びる直線状の部材である。ねじり梁10a、10bは、曲げに対する剛性が高く、ねじりに対する剛性が低い形状に形成されている。ねじり梁10a、10bは、X軸方向の両側から(すなわち揺動軸Cに沿う方向の両側から)揺動板6を支持している。ねじり梁10aは、揺動板6の揺動軸Cに沿った一方の端部(
図1の左側の端部)を支持している。ねじり梁10bは、揺動板6の揺動軸Cに沿った他方の端部(
図1の右側の端部)を支持している。揺動板6が揺動する際には、ねじり梁10a,10bがそれぞれねじり変形する。
【0052】
揺動板6と支持フレーム4の間には、空隙16が存在している。空隙16は、MEMS装置2を上方から平面視したときに、揺動板6のY軸方向の端部の側面6aと、側面6aに対向する支持フレーム4の側面4aの間で、幅Laを有している。また、空隙16は、MEMS装置2を上方から平面視したときに、揺動板6のX軸方向の端部の側面6bと、側面6bに対向する支持フレーム4の側面4bの間で、幅Lbを有している。本実施例のMEMS装置2では、揺動板6のY軸方向の端部の側面6aと支持フレーム4の側面4aの間の幅Laは、揺動板6のX軸方向の端部の側面6bと支持フレーム4の側面4bの間の幅Lbに比べて、大きく形成されている。本実施例のMEMS装置2では、揺動板6と支持フレーム4の間の間隔が、支持フレーム4に対する揺動板6の可動範囲が小さな箇所と支持フレーム4に対する揺動板6の可動範囲が大きな箇所の間で急激に変化しているといえる。
【0053】
ねじり梁10a、10bと、支持フレーム4の間には、空隙18が存在している。空隙18は、ねじり梁10a、10bのY軸方向の側面10c、10dと、側面10c、10dに対向する支持フレーム4の側面4c、4dの間で、幅Lc、Ldを有している。本実施例のMEMS装置2では、ねじり梁10a、10bのY軸方向の側面10c、10dと支持フレーム4の側面4c、4dの間の幅Lc、Ldは、揺動板6のY軸方向の端部の側面6aと支持フレーム4の側面4aの間の幅Laや、揺動板6のX軸方向の端部の側面6bと支持フレーム4の側面4bの間の幅Lbに比べて、小さく形成されている。
【0054】
永久磁石12は、ネオジム磁石(Nd
2Fe
14B)や、サマリウムコバルト磁石(SmCo
5(1−5系)、Sm
2Co
17(2−17系)等)や、フェライト磁石等からなる永久磁石である。永久磁石12は、揺動板6の裏面中央部に固定されている。
図1に示すように、MEMS装置2を上方から平面視したときに、永久磁石12は、揺動軸Cと重なる位置に配置されている。
図2に示すように、永久磁石12は、極性の向きが揺動板6に直交する姿勢で、揺動板6に固定されている。本実施例では、永久磁石12のN極が揺動板6に近い側に配置され、S極が揺動板6から遠い側に配置されている。
【0055】
電磁石14a,14bは、鉄心の周りにコイルを捲回して形成されている。電磁石14a,14bは、Y軸方向に関して、支持フレーム4の外側から、揺動板6の永久磁石12を挟みこむように配置されている。
【0056】
例えば、電磁石14aがN極となり、電磁石14bがS極となるように、電磁石14a,14bに電流を流すと、揺動板6の永久磁石12には、電磁石14bから電磁石14aに向かう方向の磁場が作用する。これにより、永久磁石12には、S極を電磁石14aに近づけ、N極を電磁石14bに近づける方向のトルクが作用する。このトルクによって、揺動板6は、電磁石14a側の端部が上昇し、電磁石14b側の端部が下降する方向に揺動する。これにより、ミラー8の反射角度が変化する。
【0057】
逆に、電磁石14aがS極となり、電磁石14bがN極となるように、電磁石14a,14bに電流を流すと、揺動板6の永久磁石12には、電磁石14aから電磁石14bに向かう方向の磁場が作用する。これにより、永久磁石12には、S極を電磁石14bに近づけ、N極を電磁石14aに近づける方向のトルクが作用する。このトルクによって、揺動板6は、電磁石14b側の端部が上昇し、電磁石14a側の端部が下降する方向に揺動する。これにより、ミラー8の反射角度が変化する。
【0058】
本実施例では、永久磁石12と電磁石14a,14bの間に作用する磁力を用いて、揺動板6を揺動させている。このような構成とすることで、揺動板6に対する電流の供給が不要となり、支持フレーム4から揺動板6へのねじり梁10a,10bを介した電気配線が不要となる。このような構成とすることで、ねじり梁10a,10bの断面を、より小さく形成することができる。
【0059】
揺動板6が揺動する際には、揺動板6のY軸方向の端部の側面6aと、支持フレーム4の側面4aの間で空気が圧縮されて、騒音を生じる。この際に、揺動板6のY軸方向の端部の側面6aと、支持フレーム4の側面4aの間の間隔Laが小さく形成されていると、空気が強く圧縮されて、大きな騒音を生じる。このような空気の圧縮を抑制するためには、揺動板6と支持フレーム4の間の空隙16や、ねじり梁10a、10bと支持フレーム4の間の空隙18の面積を大きくすることが好ましいが、単に空隙16、18の面積を大きく形成すると、それだけ支持フレーム4の面積を小さくせざるを得ず、支持フレーム4の強度および剛性の低下を招いてしまう。その結果、MEMS装置2のQ値が低下し、揺動板6を所望の角度だけ動作させるための電力が増大する。本実施例のMEMS装置2では、騒音を発生する揺動板6のY軸方向の端部の側面6aと支持フレーム4の側面4aの間の間隔Laが、それほど騒音を発生しないねじり梁10a、10bのY軸方向の側面10c、10dと支持フレーム4の側面4c、4dの間の幅Lc、Ldに比べて、大きく形成されている。このような構成とすることによって、支持フレーム4の剛性および強度を確保しつつ、揺動板6のY軸方向の端部の側面6aと支持フレーム4の側面4aの間で騒音を発生することを抑制することができる。
【0060】
同様に、揺動板6が揺動する際には、揺動板6のX軸方向の端部の側面6bと、支持フレーム4の側面4bの間でも空気が圧縮されて、騒音を生じる。本実施例のMEMS装置2では、騒音を発生する揺動板6のX軸方向の端部の側面6bと支持フレーム4の側面4bの間の間隔Lbが、それほど騒音を発生しないねじり梁10a、10bのY軸方向の側面10c、10dと支持フレーム4の側面4c、4dの間の幅Lc、Ldに比べて、大きく形成されている。このような構成とすることによって、支持フレーム4の剛性および強度を確保しつつ、揺動板6のX軸方向の端部の側面6bと支持フレーム4の側面4bの間で騒音を発生することを抑制することができる。
【0061】
揺動板6が揺動する際には、揺動板6のY軸方向の端部の側面6aは、揺動板6のX軸方向の端部の側面6bに比べて、揺動軸Cからの距離が大きいので、高速かつ大振幅で揺動する。このため、揺動板6のY軸方向の端部の側面6aでは、揺動板6のX軸方向の端部の側面6bに比べて、空気が強く圧縮されやすく、大きな騒音を生じやすい。本実施例のMEMS装置2では、大きな騒音を発生しやすい揺動板6のY軸方向の端部の側面6aと支持フレーム4の側面4aの間の間隔Laが、それほど大きな騒音を発生しにくい揺動板6のX軸方向の端部の側面6bと支持フレーム4の側面4bの間の間隔Lbに比べて、大きく形成されている。このような構成とすることによって、支持フレーム4の剛性および強度を確保しつつ、揺動板6と支持フレーム4の間で大きな騒音を発生することを抑制することができる。
【0062】
(実施例2)
図3は、本実施例のMEMS装置22を示している。MEMS装置22は、
図1および
図2に示す実施例1のMEMS装置2と同様の構成を備えている。以下では、MEMS装置22について、実施例1のMEMS装置2と相違する点のみについて説明する。
【0063】
本実施例のMEMS装置22では、MEMS装置22を上方から平面視したときに、支持フレーム4の側面4bが、揺動板6のX軸方向の端部の側面6bに対して傾斜した形状に形成されており、揺動板6のX軸方向の端部の側面6bと支持フレーム4の側面4bの間の間隔Lbが、揺動軸Cから離れた位置になるほど、大きくなっている。本実施例のMEMS装置22では、揺動板6と支持フレーム4の間の間隔が、支持フレーム4に対する揺動板6の可動範囲が小さな箇所と支持フレーム4に対する揺動板6の可動範囲が大きな箇所の間で緩やかに変化しているといえる。
【0064】
揺動板6が揺動する際に、揺動板6のX軸方向の端部の側面6bは、揺動軸Cに近い位置では、低速かつ小振幅で揺動し、揺動軸Cから遠い位置では、高速かつ大振幅で振動する。このため、揺動板6のX軸方向の端部の側面6bは、揺動軸Cに近い位置では、大きな騒音を発生しにくく、揺動軸Cから遠い位置では、大きな騒音を発生しやすい。本実施例のMEMS装置22では、揺動板6のX軸方向の端部の側面6bと支持フレーム4の側面4bの間の間隔Lbが、揺動軸Cから離れた位置になるほど、大きくなるように形成されている。このような構成とすることによって、支持フレーム4の剛性および強度を確保しつつ、揺動板6のX軸方向の端部の側面6bと支持フレーム4の側面4bの間で大きな騒音を発生することを抑制することができる。
【0065】
(実施例3)
図4は本実施例のMEMS装置32を示している。MEMS装置32は、
図1および
図2に示す実施例1のMEMS装置2と同様の構成を備えている。以下では、MEMS装置32について、実施例1のMEMS装置2と相違する点のみについて説明する。
【0066】
本実施例のMEMS装置22では、MEMS装置22を上方から平面視したときに、揺動板6が六角形状の平板形状に形成されている。このため、MEMS装置22を上方から平面視したときに、揺動板6の側面6bが支持フレーム4の側面4bに対して傾斜しており、揺動板6の側面6bと支持フレーム4の側面4bの間の間隔Lbが、揺動軸Cから離れた位置になるほど、大きくなっている。このような構成とすることによって、実施例2のMEMS装置22と同様に、支持フレーム4の剛性および強度を確保しつつ、揺動板6の側面6bと支持フレーム4の側面4bの間で大きな騒音を発生することを抑制することができる。
【0067】
(実施例4)
図5は本実施例のMEMS装置42を示している。MEMS装置42は、
図1および
図2に示す実施例1のMEMS装置2と同様の構成を備えている。以下では、MEMS装置42について、実施例1のMEMS装置2と相違する点のみについて説明する。
【0068】
本実施例のMEMS装置42では、揺動板6のY軸方向の端部の側面6aと支持フレーム4の側面4aの間の幅Laと、揺動板6のX軸方向の端部の側面6bと支持フレーム4の側面4bの間の幅Lbが、同程度の大きさに形成されている。
【0069】
また、本実施例のMEMS装置42では、揺動板6に、通気孔44(第1の通気孔の一例である)が形成されている。通気孔44は、揺動板6のY軸方向の端部の近傍に形成されている。通気孔44は、MEMS装置42を上方から平面視したときに、X軸方向に長手方向を有する矩形の形状に形成されている。通気孔44は、揺動板6のX軸方向の一方の端部の近傍から他方の端部の近傍まで延びている。
【0070】
本実施例のMEMS装置42では、揺動板6が揺動する際に、空気が通気孔44を通過するので、揺動板6と支持フレーム4の間で空気が強く圧縮されることを防止し、大きな騒音を発生することを抑制することができる。この場合、揺動板6と支持フレーム4の間の空隙16や、ねじり梁10a、10bと支持フレーム4の間の空隙18の面積を小さくしても、大きな騒音が発生しないので、支持フレーム4の面積を大きくして、支持フレーム4の強度および剛性を確保することができる。
【0071】
本実施例のMEMS装置42では、揺動板6のY軸方向の端部近傍に、通気孔44が形成されている。揺動板6のY軸方向の端部は、揺動板6が揺動する際に高速かつ大振幅で揺動するため、大きな騒音を発生しやすい。本実施例のMEMS装置42のように、揺動板6のY軸方向の端部近傍に通気孔44を形成することによって、大きな騒音を発生することを抑制することができる。
【0072】
(実施例5)
図6は本実施例のMEMS装置52を示している。MEMS装置52は、
図5に示す実施例4のMEMS装置42と同様の構成を備えている。以下では、MEMS装置42について、実施例4のMEMS装置42と相違する点のみについて説明する。
【0073】
本実施例のMEMS装置52では、通気孔44が、揺動板6のX軸方向の端部の近傍に形成されている。通気孔44は、MEMS装置52を上方から平面視したときに、Y軸方向に長手方向を有する矩形の形状に形成されている。通気孔44は、揺動板6のY軸方向の一方の端部の近傍から他方の端部の近傍まで延びている。
【0074】
本実施例のMEMS装置52では、揺動板6が揺動する際に、空気が通気孔44を通過するので、揺動板6と支持フレーム4の間で空気が強く圧縮されることを防止し、大きな騒音を発生することを抑制することができる。本実施例のMEMS装置52によれば、実施例4のMEMS装置42と同様に、支持フレーム4の強度および剛性を確保しつつ、大きな騒音を発生することを抑制することができる。
【0075】
(実施例6)
図7は本実施例のMEMS装置62を示している。MEMS装置62は、
図5に示す実施例4のMEMS装置42と同様の構成を備えている。以下では、MEMS装置62について、実施例4のMEMS装置42と相違する点のみについて説明する。
【0076】
本実施例のMEMS装置62では、通気孔44が、MEMS装置62を上方から平面視したときに、2つの底辺がX軸方向に沿っており、揺動軸Cから遠い方の底辺の長さが、揺動軸Cから近い方の底辺の長さよりも長い、台形形状に形成されている。すなわち、通気孔44のX軸方向の幅は、揺動軸Cに近いほど狭く、揺動軸Cから遠いほど広い。
【0077】
本実施例のMEMS装置62では、実施例4のMEMS装置42と同様に、支持フレーム4の強度および剛性を確保しつつ、騒音を発生することを抑制することができる。また、本実施例のMEMS装置62では、実施例4のMEMS装置42と同様に、揺動板6のY軸方向の端部近傍に通気孔44を形成することによって、大きな騒音を発生することを抑制することができる。
【0078】
本実施例のMEMS装置62では、通気孔44のX軸方向の幅が、揺動軸Cに近いほど狭く、揺動軸Cから遠いほど広くなるように形成されている。揺動板6に通気孔44を形成する場合、通気孔44が形成されていない場合に比べて、揺動板6の強度および剛性は低下する。本実施例のMEMS装置42では、通気孔44のX軸方向の幅を、揺動軸Cに近いほど(すなわち、揺動板6のY軸方向の端部から遠いほど)狭く、揺動軸Cから遠いほど(すなわち、揺動板6のY軸方向の端部から近いほど)広くしている。駆動速度が速く、押し出す空気の多い位置ほど通気孔が大きくなるようにすることで、押し出す空気量を低減できる。このため、効果的に騒音を抑制することができる。また、揺動板6の孔以外の部分を大きくすることで、揺動板6の強度と剛性を確保しやすくなる。その結果、高いQ値を得ることができるため、小さい電力で揺動板6を駆動できる。
【0079】
(実施例7)
図8は本実施例のMEMS装置72を示している。MEMS装置72は、
図6に示す実施例5のMEMS装置52と同様の構成を備えている。以下では、MEMS装置72について、実施例5のMEMS装置52と相違する点のみについて説明する。
【0080】
本実施例のMEMS装置72では、通気孔44が、MEMS装置72を上方から平面視したときに、揺動板6の角部の近傍に配置されており、一辺が揺動板6のX軸方向の端部の側面と平行であって、他の一辺が揺動板6のY軸方向の端部の側面と平行である、三角形状に形成されている。すなわち、通気孔44のX軸方向の幅は、揺動軸Cから遠いほど(すなわち、揺動板6のY軸方向の端部から近いほど)広く、揺動軸Cに近いほど(すなわち、揺動板6のY軸方向の端部から遠いほど)狭い。また、通気孔44のY軸方向の幅は、揺動板6のX軸方向の端部に近いほど広く、揺動板6のX軸方向の端部から遠いほど狭い。
【0081】
本実施例のMEMS装置72では、揺動板6に通気孔44を形成することによって、支持フレーム4の強度および剛性を確保しつつ、騒音を発生することを抑制することができる。また、本実施例のMEMS装置72では、揺動板6のY軸方向の端部近傍に通気孔44を形成することによって、大きな騒音を発生することを抑制することができる。さらに、本実施例のMEMS装置72では、揺動板6のX軸方向の端部近傍に通気孔44を形成することによって、大きな騒音を発生することを抑制することができる。
【0082】
騒音を抑制するためには、移動速度が速い揺動板6のY軸方向の端部の近傍では、通気孔44を大きくすることが好ましい。しかしながら、揺動板6に通気孔44を形成する場合、通気孔44が形成されていない場合に比べて、揺動板6の強度および剛性は低下する。本実施例のMEMS装置72では、通気孔44のX軸方向の幅が、揺動板6のY軸方向の端部に近いほど広く、揺動板6のY軸方向の端部から遠いほど狭くなるように形成されている。このような構成とすることによって、揺動板6の強度および剛性を確保しつつ、大きな騒音を発生することを抑制することができる。
【0083】
(実施例8)
図9は本実施例のMEMS装置82を示している。MEMS装置82は、
図1および
図2に示す実施例1のMEMS装置2と同様の構成を備えている。以下では、MEMS装置82について、実施例1のMEMS装置2と相違する点のみについて説明する。
【0084】
本実施例のMEMS装置82では、揺動板6は、ねじり梁群84a,84b(連結部の一例である)を介して、支持フレーム4に対して揺動軸C周りに揺動可能に支持されている。ねじり梁群84a,84bは、X軸方向の両側から(すなわち揺動軸Cに沿う方向の両側から)揺動板6を支持している。ねじり梁群84aは、揺動板6の揺動軸Cに沿った一方の端部(
図9の左側の端部)を支持している。ねじり梁群84bは、揺動板6の揺動軸Cに沿った他方の端部(
図9の右側の端部)を支持している。揺動板6が揺動する際には、ねじり梁群84a,84bがそれぞれねじり変形する。
【0085】
ねじり梁群84aは、2本の直線ねじり梁86a,88aと、10本の屈曲ねじり梁90a,92a,94a,96a,98a,100a,102a,104a,106a,108aを備えている。ねじり梁群84bは、2本の直線ねじり梁86b,88bと、10本の屈曲ねじり梁90b,92b,94b,96b,98b,100b,102b,104b,106b,108bを備えている。直線ねじり梁86a,86b,88a,88bと、屈曲ねじり梁90a,90b,92a,92b,94a,94b,96a,96b,98a,98b,100a,100b,102a,102b,104a,104b,106a,106b,108a,108bは、何れも矩形断面を有しており、同一平面内(XY平面内)に配置されている。
【0086】
直線ねじり梁86a,88aは、直線状に伸びており、揺動軸Cに沿って、互いに平行に配置されている。直線ねじり梁86a,88aは、MEMS装置82を上方から平面視したときに、揺動軸Cを挟んで対称な位置に配置されている。直線ねじり梁86a,88aは、いずれも揺動軸Cから離れて配置されている。直線ねじり梁86b,88bは、直線状に伸びており、揺動軸Cに沿って、互いに平行に配置されている。直線ねじり梁86b,88bは、MEMS装置82を上方から平面視したときに、揺動軸Cを挟んで対称な位置に配置されている。直線ねじり梁86b,88bは、いずれも揺動軸Cから離れて配置されている。
【0087】
直線ねじり梁86a,86b,88a,88bの支持フレーム4との接続部および揺動板6との接続部では、直線ねじり梁86a,86b,88a,88bの揺動軸Cに近い側の側面は支持フレーム4または揺動板6の側面と直交する形状に形成されており、直線ねじり梁86a,86b,88a,88bの揺動軸Cから遠い側の側面は凹型のフィレット形状を介して支持フレーム4または揺動板6の側面と接続する形状に形成されている。言い換えると、直線ねじり梁86a,86b,88a,88bは、支持フレーム4との接続部において、支持フレーム4に近づくにつれて、断面積が増加し、かつ断面の中心から揺動軸Cまでの距離が増加する形状に形成されている。また、直線ねじり梁86a,86b,88a,88bは、揺動板6との接続部において、揺動板6に近づくにつれて、断面積が増加し、かつ断面の中心から揺動軸Cまでの距離が増加する形状に形成されている。このような構成とすることで、直線ねじり梁86a,86b,88a,88bにおいて応力集中を緩和するために支持フレーム4および/または揺動板6との接続部で必要とされる断面積を確保しつつ、直線ねじり梁86a,86b,88a,88bを揺動軸Cに近い位置に配置して、直線ねじり梁86a,86b,88a,88bに作用する引張応力を低減することができる。
【0088】
屈曲ねじり梁90a,94a,98a,102a,106aは、直線ねじり梁86aから見て揺動軸Cから遠い側に、順に隣接して配置されている。屈曲ねじり梁92a,96a,100a,104a,108aは、直線ねじり梁88aから見て揺動軸Cから遠い側に、順に隣接して配置されている。屈曲ねじり梁90a,94a,98a,102a,106aと、対応する屈曲ねじり梁92a,96a,100a,104a,108aは、MEMS装置82を上方から平面視したときに、揺動軸Cを挟んで対称な位置に配置されている。屈曲ねじり梁90b,94b,98b,102b,106bは、直線ねじり梁86bから見て揺動軸Cから遠い側に、順に隣接して配置されている。屈曲ねじり梁92b,96b,100b,104b,108bは、直線ねじり梁88bから見て揺動軸Cから遠い側に、順に隣接して配置されている。屈曲ねじり梁90b,94b,98b,102b,106bと、対応する屈曲ねじり梁92b,96b,100b,104b,108bは、MEMS装置82を上方から平面視したときに、揺動軸Cを挟んで対称な位置に配置されている。
【0089】
屈曲ねじり梁90a,90b,92a,92b,94a,94b,96a,96b,98a,98b,100a,100b,102a,102b,104a,104b,106a,106b,108a,108bは、いずれも、支持フレーム4から揺動軸Cに沿って直線状に伸びる支持側接続部と、支持側接続部から揺動軸Cに向けてほぼ直角に屈曲した後、揺動軸Cに沿う方向に緩やかに湾曲する支持側湾曲部と、揺動板6から揺動軸Cに沿って直線状に伸びる揺動側接続部と、揺動側接続部から揺動軸Cに向けてほぼ直角に屈曲した後、揺動軸Cに沿う方向に緩やかに湾曲する揺動側湾曲部と、揺動軸Cに沿って伸びており、支持側湾曲部と揺動側湾曲部を接続する中央直線部を備えている。屈曲ねじり梁90a,90b,92a,92b,94a,94b,96a,96b,98a,98b,100a,100b,102a,102b,104a,104b,106a,106b,108a,108bの支持側湾曲部と揺動側湾曲部は、ねじり変形の際に発生する引張応力を緩和する応力緩和部として機能する。このような構成とすることで、ねじり梁群84a,84bのねじり剛性を一定に保ちつつ、屈曲ねじり梁90a,90b,92a,92b,94a,94b,96a,96b,98a,98b,100a,100b,102a,102b,104a,104b,106a,106b,108a,108bの強度を向上することができる。大きく駆動しても破断しない、信頼性の高いねじり梁群84a,84bを実現することができる。
【0090】
本実施例のMEMS装置82では、屈曲ねじり梁90a,90b,92a,92b,94a,94b,96a,96b,98a,98b,100a,100b,102a,102b,104a,104b,106a,106b,108a,108bにおいて、支持側接続部が支持フレーム4から揺動軸Cに沿って直線状に伸びており、支持側湾曲部が支持側接続部から揺動軸Cに向けてほぼ直角に屈曲している。このような構成とすることによって、屈曲ねじり梁90a,90b,92a,92b,94a,94b,96a,96b,98a,98b,100a,100b,102a,102b,104a,104b,106a,106b,108a,108bの揺動軸Cに沿った方向の長さを長くすることなく、支持側湾曲部の揺動軸Cに直角に伸びた部分を長くすることができる。この部分が長いほど、揺動軸Cに沿った方向に変形しやすくなるため、ねじり変形に伴う引張応力を緩和することが可能である。その結果、多くのねじり梁を有するMEMS装置82を実現できるため、ねじり梁群84a,84bの剛性を維持しつつ、梁の長さを短くすることができる。その結果、チップ面積を小さくすることが可能である。また、本実施例のMEMS装置82では、屈曲ねじり梁90a,90b,92a,92b,94a,94b,96a,96b,98a,98b,100a,100b,102a,102b,104a,104b,106a,106b,108a,108bにおいて、支持側湾曲部が、支持側接続部から揺動軸Cに向けてほぼ直角に屈曲した後、揺動軸Cに沿う方向に緩やかに湾曲している。このような構成とすることによって、支持側湾曲部における応力集中を緩和することができる。
【0091】
本実施例のMEMS装置82では、屈曲ねじり梁90a,90b,92a,92b,94a,94b,96a,96b,98a,98b,100a,100b,102a,102b,104a,104b,106a,106b,108a,108bにおいて、揺動側接続部が揺動板6から揺動軸Cに沿って直線状に伸びており、揺動側湾曲部が揺動側接続部から揺動軸Cに向けてほぼ直角に屈曲している。このような構成とすることによって、屈曲ねじり梁90a,90b,92a,92b,94a,94b,96a,96b,98a,98b,100a,100b,102a,102b,104a,104b,106a,106b,108a,108bの揺動軸Cに沿った方向の長さを長くすることなく、揺動側湾曲部の揺動軸Cに直角に伸びた部分を長くすることができる。この部分が長いほど、揺動軸Cに沿った方向に変形しやすくなるため、ねじり変形に伴う引張応力を緩和することが可能である。その結果、多くのねじり梁を有するMEMS装置82を実現できるため、ねじり梁群84a,84bの剛性を維持しつつ、揺動板6以外の部分のサイズを小さくすることが可能である。また、本実施例のMEMS装置82では、屈曲ねじり梁90a,90b,92a,92b,94a,94b,96a,96b,98a,98b,100a,100b,102a,102b,104a,104b,106a,106b,108a,108bにおいて、揺動側湾曲部が、揺動側接続部から揺動軸Cに向けてほぼ直角に屈曲した後、揺動軸Cに沿う方向に緩やかに湾曲している。このような構成とすることによって、揺動側湾曲部における応力集中を緩和することができる。
【0092】
屈曲ねじり梁90a,90b,92a,92b,94a,94b,96a,96b,98a,98b,100a,100b,102a,102b,104a,104b,106a,106b,108a,108bでは、支持側接続部および揺動側接続部は、幅広に形成することが望ましい。支持側接続部および揺動側接続部が幅広であるほど、支持側湾曲部および揺動側湾曲部よりもバネ定数が高くなるため、支持側接続部および揺動側接続部は変形しにくくなる。支持側接続部および揺動側接続部での変形量が少なくなるため、支持側接続部および揺動側接続部に作用する応力を低減することができる。なお、上記の実施例では、直線ねじり梁86a,86b,88a,88bの支持フレーム4との接続部および揺動板6との接続部には応力緩和のためのフィレットが形成されているものの、屈曲ねじり梁90a,90b,92a,92b,94a,94b,96a,96b,98a,98b,100a,100b,102a,102b,104a,104b,106a,106b,108a,108bの支持側接続部と揺動側接続部には応力緩和のためのフィレットが形成されていない。これは、屈曲ねじり梁90a,90b,92a,92b,94a,94b,96a,96b,98a,98b,100a,100b,102a,102b,104a,104b,106a,106b,108a,108bにおいては、応力緩和部として機能する支持側湾曲部と揺動側湾曲部が形成されているため、支持側接続部と揺動側接続部にそれほど大きな応力集中が発生しないためである。このような構成とすることで、隣接する屈曲ねじり梁間の間隔を狭めて配置することができ、支持フレーム4および揺動板6の限られたスペースに配置可能な屈曲ねじり梁90a,90b,92a,92b,94a,94b,96a,96b,98a,98b,100a,100b,102a,102b,104a,104b,106a,106b,108a,108bの本数を多くすることができる。なお、上記とは異なり、屈曲ねじり梁90a,90b,92a,92b,94a,94b,96a,96b,98a,98b,100a,100b,102a,102b,104a,104b,106a,106b,108a,108bの支持側接続部や揺動側接続部にも、応力集中を緩和するためのフィレットを形成してもよい。
【0093】
揺動板6が揺動する際に生じるねじり変形は、揺動軸Cから近い位置に配置されているねじり梁(例えば直線ねじり梁86a,86b,88a,88bおよび屈曲ねじり梁90a,90b,92a,92b)に比べて、揺動軸Cから遠い位置に配置されているねじり梁(例えば屈曲ねじり梁102a,102b,104a,104b,106a,106b,108a,108b)において、大きなものとなる。これに対応して、本実施例のMEMS装置82では、揺動軸Cから離れた位置に配置されているねじり梁(例えば屈曲ねじり梁102a,102b,104a,104b,106a,106b,108a,108b)は、揺動軸Cに近い位置に配置されているねじり梁(例えば直線ねじり梁86a,86b,88a,88bおよび屈曲ねじり梁90a,90b,92a,92b)に比べて、梁長さが長く形成されている。このような構成にすることで、支持側湾曲部および揺動側湾曲部の揺動軸Cに沿った方向のバネ定数を小さくすることができる。揺動時に揺動軸Cに沿った方向の変形量が多くなっても、支持側湾曲部および揺動側湾曲部のバネ定数が小さくなるため、支持側湾曲部および揺動側湾曲部に発生する応力を低減できる。その結果、揺動軸Cから離れた位置に配置されているねじり梁に、大きな引張応力が作用することを防ぐことができる。
【0094】
電磁石14a,14bの駆動周波数を揺動板6の共振周波数に一致させると、小さな駆動電力で揺動板6を大きく動作させることができる。このような共振駆動において、揺動板6を高速で動作させるためには、電磁石14a,14bの駆動周波数を高くするとともに、それに合わせて揺動板6の共振周波数を高くする必要がある。また、MEMS装置82の耐久性を確保するためには、ねじり梁群84a,84bの強度を確保しておく必要がある。その上で、MEMS装置82における有効な反射面積の割合を向上するためには、ねじり梁群84a,84bの長さを可能な限り短くすることが好ましい。
【0095】
本実施例のMEMS装置82では、一方のねじり梁群84aを12本のねじり梁で構成し、他方のねじり梁群84bを12本のねじり梁で構成することによって、必要とされる揺動板6の共振周波数とねじり梁群84a,84bの強度を確保しつつ、ねじり梁群84a,84bの長さを短くすることができる。以下では、ねじり梁群84a,84bにおけるねじり梁の本数と、ねじり梁群84a,84bの長さの関係について説明する。
【0096】
図10に示すように、揺動板Pの一方の端部を単一のねじり梁BRで支持し、他方の端部を単一のねじり梁BLで支持する構成を考える。この場合、揺動板Pの共振周波数frは、次式で与えられる。
【0098】
ここで、Kはねじり梁BR、BLの(片側のみの)ねじり剛性であり、Jは揺動板Pの慣性モーメントである。
【0099】
ねじり梁BR,BLのねじり剛性Kは、次式で与えられる。
【0101】
ここで、lはねじり梁BR,BLの長さであり、aはねじり梁BR,BLの断面の長辺の長さであり、bはねじり梁BR,BLの断面の短辺の長さであり、Gはねじり梁BR,BLの横弾性係数である。以下では、ねじり梁BR,BLの断面の高さtbが断面の幅wbよりも長いものとして説明する。すなわち、本説明の中では、tbがねじり梁BR,BLの断面の長辺の長さaであり、wbがねじり梁BR,BLの断面の短辺の長さbに相当する。
【0102】
揺動板Pの慣性モーメントJは、次式で与えられる。
【0104】
ここで、ρは揺動板Pの質量密度であり、Wは揺動板Pの幅であり、Lは揺動板Pの長さであり、Tは揺動板Pの厚みである。
【0105】
揺動板6を共振駆動する場合、揺動板6の共振周波数frを所定の周波数に一致させる必要がある。
【0106】
また、ねじり梁BR,BLの強度に関して、ねじり梁BR,BLに作用するせん断応力τは、次式で与えられる。
【0108】
ここで、θは揺動板Pの最大傾き角である。
【0109】
ねじり梁BR,BLの強度を確保するためには、ねじり梁BR,BLに作用するせん断応力τを、許容せん断応力τmax以下としなければならない。
【0111】
従って、上記の数式(1)〜(4)の条件を満足した上で、数式(7)の条件を満たすlの最小値が、実現可能なねじり梁BR,BLの最小の長さとなる。
【0112】
例えば、揺動板Pの共振周波数frを3kHzとし、揺動板Pの質量密度ρを2330kg/m3とし、揺動板Pの幅Wを5mmとし、揺動板Pの長さLを5mmとし、揺動板Pの厚みTを0.5mmとし、揺動板Pの最大傾き角θを15°とし、ねじり梁BR,BLの横弾性係数Gを64GPaとし、ねじり梁BR,BLの許容せん断応力τmaxを1GPaとし、ねじり梁BR,BLの断面の長辺の長さa(断面の高さtb)を0.5mmとする場合、ねじり梁BR,BLの長さが最小となるのはねじり梁BR,BLの断面の短辺の長さb(断面の幅wb)が0.142mmの時であり、その際のねじり梁BR,BLの長さは2.3mmである。従って、
図10に示す、単一のねじり梁BR,BLによって揺動板Pを両側から支持する構成では、ねじり梁BR,BLの長さを2.3mmより短くすることはできない。
【0113】
次に、
図11に示すように、揺動板Pの一方の端部をn本のねじり梁からなるねじり梁群BRnで支持し、他方の端部をn本のねじり梁からなるねじり梁群BLnで支持する構成を考える。この場合、揺動板Pの共振周波数frは、次式で与えられる。
【0115】
ここで、Kallはねじり梁群BRn、BLnの(片側のみの)ねじり剛性であり、Jは揺動板Pの慣性モーメントである。
【0116】
ねじり梁群BRn,BLnのねじり剛性Kallは、次式で計算される。
【0118】
ここで、lはねじり梁群BRn,BLnの長さであり、aはねじり梁群BRn,BLnの個々のねじり梁の断面の長辺の長さであり、bはねじり梁群BRn,BLnの個々のねじり梁の断面の短辺の長さであり、Gはねじり梁群BRn,BLnの横弾性係数である。以下では、ねじり梁群BRn,BLnの個々のねじり梁の断面の高さtbが断面の幅wbよりも長いものとして説明する。すなわち、本説明の中では、tbがねじり梁群BRn,BLnの個々のねじり梁の断面の長辺の長さaであり、wbがねじり梁群BRn,BLnの個々のねじり梁の断面の短辺の長さbに相当する。
【0119】
揺動板Pの慣性モーメントJは、上記の数式(4)で与えられる。
【0120】
揺動板6を共振駆動する場合、揺動板6の共振周波数frを所定の周波数に一致させる必要がある。
【0121】
また、ねじり梁群BRn,BLnの強度に関して、ねじり梁群BRn,BLnの個々のねじり梁に作用するせん断応力τは、次式で与えられる。
【0123】
ここで、θは揺動板Pの最大傾き角である。
【0124】
ねじり梁群BRn,BLnの強度を確保するためには、ねじり梁群BRn,BLnの個々のねじり梁に作用するせん断応力τを、許容せん断応力τmax以下としなければならない。
【0126】
従って、上記の数式(4),(8)〜(10)の条件を満足した上で、数式(13)の条件を満たすlの最小値が、実現可能なねじり梁群BRn,BLnの最小の長さとなる。
【0127】
例えば、揺動板Pの共振周波数frを3kHzとし、揺動板Pの質量密度ρを2330kg/m3とし、揺動板Pの幅Wを5mmとし、揺動板Pの長さLを5mmとし、揺動板Pの厚みTを0.5mmとし、揺動板Pの最大傾き角θを15°とし、ねじり梁群BRn,BLnの横弾性係数Gを64GPaとし、ねじり梁群BRn,BLnの許容せん断応力τmaxを1GPaとし、ねじり梁群BRn,BLnのねじり梁の本数nを5とし、ねじり梁群BRn,BLnの個々のねじり梁の長辺の長さa(断面の高さtb)を0.5mmとする場合、ねじり梁群BRn,BLnの個々のねじり梁の断面の短辺の長さb(断面の幅wb)を0.06mmとすれば、ねじり梁群BRn,BLnの長さを1.0mmとすることができる。従って、
図11に示すように、複数のねじり梁からなるねじり梁群BRn,BLnによって揺動板Pを両側から支持する構成とすることで、
図10に示す構成に比べて、ねじり梁群BRn,BLnの長さを短くすることができる。
【0128】
上記の計算例では、ねじり梁群BRn,BLnのねじり梁の本数nを5とする場合について説明したが、ねじり梁群BRn,BLnのねじり梁の本数nは、以下の関係を満たすものであればよい。
【0130】
ねじり梁の本数nが上記の数式(14)の条件を満たしている場合には、必要とされる揺動板Pの共振周波数とねじり梁群BRn,BLnの強度を確保しつつ、ねじり梁群BRn,BLnの長さを短くすることができる。
【0131】
図9に示す本実施例のMEMS装置82では、可動部の可動範囲が大きな箇所近傍(揺動板6のY軸方向の端部)に、可動部が動くために必要となる空隙のほかに、空気が移動できるような幅の空隙を設けた。このように空隙を大きくとることで、空気の圧縮量が減少する。これにより、空隙から噴射する空気の速度を低減できる。その結果、騒音を低減できる。さらに、ねじり梁長が短くなったことで、支持フレーム4の面積を大きくできる。これにより、支持フレーム4の強度を高めることができるため、MEMS装置82のQ値を高くすることができる。その結果、MEMS装置82の駆動電力を低減できる。
【0132】
(実施例9)
図12は本実施例のMEMS装置112を示している。MEMS装置112は、
図9に示す実施例8のMEMS装置82と同様の構成を備えている。以下では、MEMS装置112について、実施例8のMEMS装置82と相違する点のみについて説明する。
【0133】
本実施例のMEMS装置112では、屈曲ねじり梁90a,90b,92a,92b,94a,94b,96a,96b,98a,98b,100a,100b,102a,102b,104a,104b,106a,106b,108a,108bの支持側接続部が一体化されている。また、本実施例のMEMS装置112では、屈曲ねじり梁90a,90b,92a,92b,94a,94b,96a,96b,98a,98b,100a,100b,102a,102b,104a,104b,106a,106b,108a,108bの揺動側接続部が一体化されている。この一体化された揺動側接続部に、通気孔114a,114b,116a,116b(第3の通気孔の一例である)が形成されている。通気孔114a,114b,116a,116bのX軸方向の幅は、揺動軸Cから遠いほど(すなわち、揺動板6のY軸方向の端部から近いほど)広く、揺動軸Cに近いほど(すなわち、揺動板6のY軸方向の端部から遠いほど)狭い形状に形成されている。
【0134】
本実施例のMEMS装置112によれば、揺動側接続部に通気孔114a,114b,116a,116bが形成されているので、揺動側接続部と支持フレーム4の間で空気が圧縮されて騒音を生じることを抑制することができる。また、揺動側接続部に通気孔114a,114b,116a,116bが形成されていることで、揺動板6に押される空気が逃げるので、揺動板6と支持フレーム4の間で空気が圧縮されて騒音を生じることも抑制することができる。さらに、揺動側接続部に通気孔114a,114b,116a,116bが形成されていることで、揺動板6とねじり梁群84a,84bを合わせた慣性モーメントが小さくなるので、所望の共振周波数を実現するためのねじり梁群84a,84bのバネ定数を小さくすることができ、ねじり梁群84a,84bを短くすることができる。
【0135】
本実施例のMEMS装置112では、通気孔114a,114b,116a,116bのX軸方向の幅は、高速かつ大振幅で揺動する揺動軸Cから遠い位置ほど広く、低速かつ小振幅で揺動する揺動軸Cから近い位置ほど狭い形状に形成されている。このような構成とすることによって、屈曲ねじり梁90a,90b,92a,92b,94a,94b,96a,96b,98a,98b,100a,100b,102a,102b,104a,104b,106a,106b,108a,108bの強度および剛性を維持しつつ、騒音の発生を抑制することができる。また、揺動板6とねじり梁群84a,84bを合わせた慣性モーメントが小さくなるので、所望の共振周波数を実現するためのねじり梁群84a,84bのバネ定数を小さくすることができ、ねじり梁群84a,84bを短くすることができる。ねじり梁長が短くなったことで、支持フレーム4の面積を大きくできる。これにより、支持フレーム4の強度を高めることができるため、MEMS装置112のQ値を高くすることができる。その結果、MEMS装置112の駆動電力を低減できる。
【0136】
(実施例10)
図13は本実施例のMEMS装置122を示している。MEMS装置122は、
図9に示す実施例8のMEMS装置82と同様の構成を備えている。以下では、MEMS装置122について、実施例8のMEMS装置82と相違する点のみについて説明する。
【0137】
本実施例のMEMS装置122では、支持フレーム4が屈曲ねじり梁106a,106b,108a,108bの中央直線部に向けて延びており、支持フレーム4と屈曲ねじり梁106a,106b,108a,108bの間の間隔が、直線ねじり梁86a,86b,88a,88bおよび屈曲ねじり梁90a,90b,92a,92b,94a,94b,96a,96b,98a,98b,100a,100b,102a,102b,104a,104b,106a,106b,108a,108bの隣接する各梁間の間隔と略同程度となっている。梁をDeep Reactive Ion Etching(DRIE)などの加工方法で作製する場合、梁間の間隔が異なると、マイクロローディング効果によって、各梁の梁幅が変化する。実施例9の構造の場合、揺動軸から一番離れた梁の外側は空間が広くなるため、揺動軸から一番離れた梁にマイクロローディング効果が発生する。この梁の加工精度が低下するため、梁群のねじり剛性が設計値から変化し、共振周波数が設計値から離れてしまう。本実施例のように全ての梁間隔を略一定とすることで、マイクロローディング効果の発生を抑制し、直線ねじり梁86a,86b,88a,88bおよび屈曲ねじり梁90a,90b,92a,92b,94a,94b,96a,96b,98a,98b,100a,100b,102a,102b,104a,104b,106a,106b,108a,108bを精度よく形成することができる。その結果、梁群のねじり剛性を設定値通りに作製できるため、設計通りの共振周波数を実現できる。なお、本実施例のMEMS装置122は、実施例8のMEMS装置82と同様に、揺動板6のY軸方向の端部の側面と支持フレーム4の側面の間の間隔が、屈曲ねじり梁106a,106b,108a,108bのY軸方向の側面と支持フレーム4の側面の間の間隔に比べて、大きく形成されている。このような構成とすることによって、支持フレーム4の剛性および強度を確保しつつ、揺動板6のY軸方向の端部の側面と支持フレーム4の側面の間で騒音を発生することを抑制することができる。
【0138】
(実施例11)
図14は本実施例のMEMS装置132を示している。MEMS装置132は、実施例8のMEMS装置82と同様の構成を備えている。以下では、MEMS装置132について、実施例8のMEMS装置82と相違する点のみについて説明する。
【0139】
本実施例のMEMS装置132では、ねじり梁群84aが、2本の直線ねじり梁86a,88aと、6本の屈曲ねじり梁90a,92a,94a,96a,98a,100aを備えており、ねじり梁群84bが、2本の直線ねじり梁86b,88bと、6本の屈曲ねじり梁90b,92b,94b,96b,98b,100bを備えている。本実施例のMEMS装置132では、最も外側に配置された屈曲ねじり梁98a,98b,100a,100bの揺動側接続部は、揺動板6のY方向の端部よりも揺動軸Cに近い位置に配置されている。本実施例のMEMS装置132では、支持フレーム4と屈曲ねじり梁98a,98b,100a,100bの中央直線部の間の間隔は、直線ねじり梁86a,86b,88a,88bおよび屈曲ねじり梁90a,90b,92a,92b,94a,94b,96a,96b,98a,98b,100a,100bの隣接する各梁の中央直線部の間の間隔とほぼ等しい。支持フレーム4と屈曲ねじり梁98a,98b,100a,100bの支持側接続部の間の間隔は、支持フレーム4と屈曲ねじり梁98a,98b,100a,100bの中央直線部の間の間隔とほぼ等しい。支持フレーム4と屈曲ねじり梁98a,98b,100a,100bの揺動側接続部の間の間隔は、支持フレーム4と屈曲ねじり梁98a,98b,100a,100bの支持側接続部の間の間隔よりも広い。揺動板6と支持フレーム4の間の間隔は、支持フレーム4と屈曲ねじり梁98a,98b,100a,100bの揺動側接続部の間の間隔よりも広い。
【0140】
本実施例のMEMS装置132では、支持フレーム4と屈曲ねじり梁98a,98b,100a,100bの揺動側接続部の間の間隔が、支持フレーム4と屈曲ねじり梁98a,98b,100a,100bの支持側接続部の間の間隔よりも広く形成されている。このような構成とすることによって、支持フレーム4と屈曲ねじり梁98a,98b,100a,100bの揺動側接続部の間での騒音の発生を抑制することができる。
【0141】
(実施例12)
図15は本実施例のMEMS装置142を示している。MEMS装置142は、揺動板6(請求項14の第2可動部の一例であり、請求項16の可動部の一例でもある)と、ミラー8と、永久磁石12と、第1ねじり梁群144a,144b(請求項14の第2連結部の一例であり、請求項16の連結部の一例でもある)と、第1支持フレーム146(請求項14の第2支持部の一例であり、請求項16の支持部の一例でもある)と、第2ねじり梁群148a,148b(請求項14の連結部の一例であり、請求項16の第3連結部の一例でもある)と、第2支持フレーム150(請求項14の支持部の一例であり、請求項16の第3支持部の一例でもある)と、第1電磁石152a,152bと、第2電磁石154a,154bを備えている。
【0142】
揺動板6、ミラー8、永久磁石12、第1ねじり梁群144a,144b、第1支持フレーム146、第1電磁石152a,152bの構成については、
図13に示す実施例10のMEMS装置122の、揺動板6、ミラー8、永久磁石12、ねじり梁群84a,84b、支持フレーム4、電磁石14a,14bと同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0143】
第2支持フレーム150は、MEMS装置142を上方から平面視したときに、揺動板6、第1ねじり梁群144a,144b、第1支持フレーム146、第2ねじり梁群148a,148bの周囲を囲む形状に形成されている。
【0144】
第1支持フレーム146は、第2ねじり梁群148a,148bを介して、第2支持フレーム150に対して、Y軸方向に沿う揺動軸C2周りに揺動可能に支持されている。第1支持フレーム146と第2支持フレーム150の間を接続する第2ねじり梁群148a,148bの構成は、揺動軸C2の方向が揺動軸Cの方向とは異なる点を除いて、揺動板6と第1支持フレーム148の間を接続する第1ねじり梁群144a,144bの構成と同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0145】
第2電磁石154a,154bは、鉄心の周りにコイルを捲回して形成されている。第2電磁石154a,154bは、X軸方向に関して、第2支持フレーム150の外側から、揺動板6の永久磁石12を挟みこむように配置されている。
【0146】
第2支持フレーム150と第1支持フレーム146の間のX方向の間隔および第2支持フレーム150と第2ねじり梁群148a,148bの間のX方向の間隔の間の大小関係については、第1支持フレーム146と揺動板6の間のY方向の間隔および第1支持フレーム146と第1ねじり梁群144a,144bの間のY方向の間隔の間の大小関係と同様である。
【0147】
本実施例のMEMS装置142は、永久磁石12と第1電磁石152a,152bの間に作用する磁力を用いて、揺動板6を第1支持フレーム146に対して揺動軸C周りに、すなわちX軸周りに揺動させることができる。また、本実施例のMEMS装置142は、永久磁石12と第2電磁石154a,154bの間に作用する磁力を用いて、揺動板6および第1支持フレーム146を第2支持フレーム150に対して揺動軸C2周りに、すなわちY軸周りに揺動させることができる。MEMS装置142は、2軸の光偏向装置として動作させることができる。
【0148】
本実施例のMEMS装置142では、揺動板6と第1支持フレーム146の間が、複数本のねじり梁からなる第1ねじり梁群144a,144bで連結されている。このような構成とすることによって、第1支持フレーム146のX軸方向のサイズを小さくすることができる。第1支持フレーム146のX軸方向のサイズを小さくすることで、第1支持フレーム146のY軸周りの慣性モーメント、すなわち揺動軸C2周りの慣性モーメントを小さくすることができ、第2ねじり梁群148a,148bのバネ定数を小さくしても、所望の共振周波数を実現することができる。従って、第2ねじり梁群148a,148bを短くして、MEMS装置142を小型化することができる。また、第1支持フレーム146のX軸方向のサイズを小さくすることで、第1支持フレーム146のX軸方向の端部の第2支持フレーム150に対する揺動を低速かつ小振幅とすることができ、第1支持フレーム146と第2支持フレーム150の間で空気が強く圧縮されて大きな騒音が発生することを抑制することができる。特に、第1支持フレーム146のX軸方向の端部の第2支持フレーム150に対する揺動は、揺動板6のY軸方向の端部の第1支持フレーム146に対する揺動に比べて、高速かつ大振幅であり、発生する騒音も大きい。上記のように、第1支持フレーム146と第2支持フレーム150の間での騒音の発生を抑制することで、MEMS装置142の動作時に発生する騒音を大幅に抑制することができる。
【0149】
また、本実施例のMEMS装置142では、第1支持フレーム146と第2支持フレーム150の間が、複数本のねじり梁からなる第2ねじり梁群148a,148bで連結されている。このような構成とすることによって、第2支持フレーム150の面積を大きくすることができる。これにより、第2支持フレーム150の強度向上とMEMS装置142の固定強度の向上を図れるため、MEMS装置142のQ値を高くすることができる。その結果、MEMS装置142の駆動電力を低減できる。
【0150】
(実施例13)
図16は、本実施例のMEMS装置162を示している。MEMS装置162は、
図15に示す実施例12のMEMS装置142と同様の構成を備えている。以下では、MEMS装置162について、実施例12のMEMS装置142と相違する点のみについて説明する。
【0151】
本実施例のMEMS装置162では、第1ねじり梁群144a,144bが、それぞれ、
図14に示す実施例11のMEMS装置132のねじり梁群84a,84bと同様に、2本の直線ねじり梁と、6本の屈曲ねじり梁を備えている。本実施例のMEMS装置162における、揺動板6、第1ねじり梁群144a,144b、第1支持フレーム146の関係については、
図14に示す実施例11のMEMS装置132における、揺動板6、ねじり梁群84a,84b、支持フレーム4の関係と同様である。
【0152】
本実施例のMEMS装置162では、第2ねじり梁群148a,148bが、それぞれ、
図14に示す実施例11のMEMS装置132のねじり梁群84a,84bと同様に、2本の直線ねじり梁と、6本の屈曲ねじり梁を備えている。本実施例のMEMS装置162における、第1支持フレーム146、第2ねじり梁群148a,148b、第2支持フレーム150の関係については、揺動軸C2の方向が揺動軸Cの方向とは異なる点を除いて、
図14に示す実施例11のMEMS装置132における、揺動板6、ねじり梁群84a,84b、支持フレーム4の関係と同様である。
【0153】
(実施例14)
図17は本実施例のMEMS装置172を示している。MEMS装置172は、
図15に示す実施例12のMEMS装置142と同様の構成を備えている。以下では、MEMS装置172について、実施例12のMEMS装置142と相違する点のみについて説明する。
【0154】
本実施例のMEMS装置172では、MEMS装置172を上方から平面視したときに、第1ねじり梁群144a,144bの揺動側屈曲部と対向する第1支持フレーム146の側面が、揺動軸Cから離れた位置になるほど揺動板6から離れる形状に形成されている。このため、第1ねじり梁群144a,144bの揺動側屈曲部と第1支持フレーム146の側面の間の間隔は、揺動軸Cから離れた位置になるほど、大きくなっている。このような構成とすることによって、第1支持フレーム146の強度および剛性を確保しつつ、第1ねじり梁群144a,144bの揺動側屈曲部と第1支持フレーム146の間で騒音が発生することを抑制することができる。
【0155】
本実施例のMEMS装置172では、MEMS装置172を上方から平面視したときに、第2ねじり梁群148a,148bの揺動側屈曲部と対向する第2支持フレーム150の側面が、揺動軸C2から離れた位置になるほど第1支持フレーム146から離れる形状に形成されている。このため、第2ねじり梁群148a,148bの揺動側屈曲部と第2支持フレーム150の側面の間の間隔は、揺動軸C2から離れた位置になるほど、大きくなっている。このような構成とすることによって、第2支持フレーム150の強度および剛性を確保しつつ、第2ねじり梁群148a,148bの揺動側屈曲部と第2支持フレーム150の間で騒音が発生することを抑制することができる。
【0156】
(実施例15)
図18は本実施例のMEMS装置182を示している。MEMS装置182は、
図16に示す実施例13のMEMS装置162と同様の構成を備えている。以下では、MEMS装置182について、実施例13のMEMS装置162と相違する点のみについて説明する。
【0157】
本実施例のMEMS装置182では、MEMS装置182を上方から平面視したときに、第1ねじり梁群144a,144bの揺動側屈曲部と対向する第1支持フレーム146の側面が、揺動軸Cから離れた位置になるほど第1ねじり梁群144a,144bの揺動側屈曲部から離れる形状に形成されている。このため、第1ねじり梁群144a,144bの揺動側屈曲部と第1支持フレーム146の側面の間の間隔は、揺動軸Cから離れた位置になるほど、大きくなっている。このような構成とすることによって、第1支持フレーム146の強度および剛性を確保しつつ、第1ねじり梁群144a,144bの揺動側屈曲部と第1支持フレーム146の間で騒音が発生することを抑制することができる。
【0158】
本実施例のMEMS装置182では、MEMS装置182を上方から平面視したときに、揺動板6のX方向の端部と対向する第1支持フレーム146の側面が、揺動軸Cから離れた位置になるほど揺動板6から離れる形状に形成されている。このため、揺動板6のX方向の端部と第1支持フレーム146の側面の間の間隔は、揺動軸Cから離れた位置になるほど、大きくなっている。このような構成とすることによって、第1支持フレーム146の強度および剛性を確保しつつ、揺動板6のX方向の端部と第1支持フレーム146の間で騒音が発生することを抑制することができる。
【0159】
本実施例のMEMS装置182では、MEMS装置182を上方から平面視したときに、第2ねじり梁群148a,148bの揺動側屈曲部と対向する第2支持フレーム150の側面が、揺動軸C2から離れた位置になるほど第2ねじり梁群148a,148bの揺動側屈曲部から離れる形状に形成されている。このため、第2ねじり梁群148a,148bの揺動側屈曲部と第2支持フレーム150の側面の間の間隔は、揺動軸C2から離れた位置になるほど、大きくなっている。このような構成とすることによって、第2支持フレーム150の強度および剛性を確保しつつ、第2ねじり梁群148a,148bの揺動側屈曲部と第2支持フレーム150の間で騒音が発生することを抑制することができる。
【0160】
本実施例のMEMS装置182では、MEMS装置182を上方から平面視したときに、第1支持フレーム146のY方向の端部と対向する第2支持フレーム150の側面が、揺動軸C2から離れた位置になるほど第1支持フレーム146から離れる形状に形成されている。このため、第1支持フレーム146のY方向の端部と第2支持フレーム150の側面の間の間隔は、揺動軸C2から離れた位置になるほど、大きくなっている。このような構成とすることによって、第2支持フレーム150の強度および剛性を確保しつつ、第1支持フレーム146のY方向の端部と第2支持フレーム150の間で騒音が発生することを抑制することができる。
【0161】
(実施例16)
図19は本実施例のMEMS装置192を示している。MEMS装置192は、揺動板6(請求項14の第2可動部の一例であり、請求項16の可動部の一例でもある)と、ミラー8と、永久磁石12と、第1ねじり梁194a,194b(請求項14の第2連結部の一例であり、請求項16の連結部の一例でもある)と、第1支持フレーム196(請求項14の第2支持部の一例であり、請求項16の支持部の一例でもある)と、第2ねじり梁198a,198b(請求項14の連結部の一例であり、請求項16の第3連結部の一例でもある)と、第2支持フレーム200(請求項14の支持部の一例であり、請求項16の第3支持部の一例でもある)と、第1電磁石152a,152bと、第2電磁石154a,154bを備えている。
【0162】
本実施例のMEMS装置192における、揺動板6、ミラー8、永久磁石12、第1電磁石152a,152b、第2電磁石154a,154bについては、
図15に示す実施例12のMEMS装置142と同様である。
【0163】
第1支持フレーム196は、MEMS装置192を上方から平面視したときに、揺動板6と、第1ねじり梁194a,194bの周囲を囲む、矩形の枠形状に形成されている。揺動板6は、第1ねじり梁194a,194bを介して、第1支持フレーム196に対して、X軸方向に沿う揺動軸C周りに揺動可能に支持されている。第1ねじり梁194a,194bは、X軸方向に沿って伸びる直線状の部材である。第1ねじり梁194a,194bは、曲げに対する剛性が高く、ねじりに対する剛性が低い形状に形成されている。第1ねじり梁194a,194bは、X軸方向の両側から(すなわち揺動軸Cに沿う方向の両側から)揺動板6を支持している。
【0164】
第1支持フレーム196のX軸方向の端部には、通気孔202(第1の通気孔の一例である)が形成されている。第1支持フレーム196のY軸方向の両端部には、通気孔204(第1の通気孔の一例である)が形成されている。
【0165】
第2支持フレーム200は、MEMS装置192を上方から平面視したときに、揺動板6と、第1ねじり梁194a,194bと、第1支持フレーム196と、第2ねじり梁198a,198bの周囲を囲む、矩形の枠形状に形成されている。第1支持フレーム196は、第2ねじり梁198a,198bを介して、第2支持フレーム200に対して、Y軸方向に沿う揺動軸C2周りに揺動可能に支持されている。第2ねじり梁198a,198bは、Y軸方向に沿って伸びる直線状の部材である。第2ねじり梁198a,198bは、曲げに対する剛性が高く、ねじりに対する剛性が低い形状に形成されている。第2ねじり梁198a,198bは、Y軸方向の両側から(すなわち揺動軸C2に沿う方向の両側から)第1支持フレーム196を支持している。
【0166】
本実施例のMEMS装置192は、永久磁石12と第1電磁石152a,152bの間に作用する磁力を用いて、揺動板6を第1支持フレーム196に対して揺動軸C周りに、すなわちX軸周りに揺動させることができる。また、本実施例のMEMS装置192は、永久磁石12と第2電磁石154a,154bの間に作用する磁力を用いて、揺動板6および第1支持フレーム196を第2支持フレーム200に対して揺動軸C2周りに、すなわちY軸周りに揺動させることができる。MEMS装置192は、2軸の光偏向装置として動作させることができる。
【0167】
本実施例のMEMS装置192では、第1支持フレーム196のX方向の端部に通気孔202が形成されている。これによって、第1支持フレーム196のX方向の端部と第2支持フレーム200の間で騒音が発生することを抑制することができる。また、第1支持フレーム196のY軸周りの慣性モーメントが小さくなるので、所望の共振周波数を実現するための第2ねじり梁198a,198bのバネ定数を小さくすることができ、第2ねじり梁198a,198bを短くすることができる。このため、同じチップ面積を持つ従来のMEMS装置に比べ、第2支持フレーム200の面積を大きくすることができる。これにより、第2支持フレーム200の強度向上とMEMS装置192の固定強度の向上を図れるため、MEMS装置192のQ値を高くすることができる。その結果、MEMS装置192の駆動電力を低減できる。
【0168】
本実施例のMEMS装置192では、第1支持フレーム196のY方向の端部に通気孔204が形成されている。これによって、第1支持フレーム196のY方向の端部と第2支持フレーム200の間で騒音が発生することを抑制することができる。また、第1支持フレーム196のY軸周りの慣性モーメントが小さくなるので、所望の共振周波数を実現するための第2ねじり梁198a,198bのバネ定数を小さくすることができ、第2ねじり梁198a,198bを短くすることができる。このため、同じチップ面積を持つ従来のMEMS装置に比べ、第2支持フレーム200の面積を大きくすることができる。これにより、第2支持フレーム200の強度向上とMEMS装置192の固定強度の向上を図れるため、MEMS装置192のQ値を高くすることができる。その結果、MEMS装置192の駆動電力を低減できる。
【0169】
(実施例17)
図20は本実施例のMEMS装置212を示している。MEMS装置212は、
図18に示す実施例15のMEMS装置182と同様の構成を備えている。以下では、MEMS装置212について、実施例15のMEMS装置182と相違する点のみについて説明する。
【0170】
本実施例のMEMS装置212では、第1支持フレーム146のX方向の端部近傍において、MEMS装置212を上方から平面視したときに、揺動軸C2から離れるほど、第1支持フレーム146のY方向の幅が狭くなるように、第1支持フレーム146が形成されている。このため、第1支持フレーム146の側面と第2支持フレーム150の側面のY方向の間隔は、揺動軸C2から離れた位置になるほど、大きくなっている。このような構成とすることによって、第2支持フレーム150の強度および剛性を確保しつつ、第1支持フレーム146と第2支持フレーム150の間で騒音が発生することを抑制することができる。また、第1支持フレーム146のY軸周りの慣性モーメントが小さくなるので、所望の共振周波数を実現するための第2ねじり梁群148a,148bのバネ定数を小さくすることができ、第2ねじり梁群148a,148bを短くすることができる。このため、同じチップ面積を持つ従来のMEMS装置に比べ、第2支持フレーム150の面積を大きくすることができる。これにより、第2支持フレーム150の強度向上とMEMS装置212の固定強度の向上を図れるため、MEMS装置212のQ値を高くすることができる。その結果、MEMS装置212の駆動電力を低減できる。
【0171】
(実施例18)
図21は本実施例のMEMS装置222を示している。MEMS装置222は、
図15に示す実施例12のMEMS装置142と同様の構成を備えている。以下では、MEMS装置222について、実施例12のMEMS装置142と相違する点のみについて説明する。
【0172】
本実施例のMEMS装置222では、第1ねじり梁群144a,144bの揺動側接続部が一体化されており、この一体化された揺動側接続部に、通気孔224a,224b(第3の通気孔の一例である)が形成されている。通気孔224a,224bのX方向の幅は、揺動軸Cから遠いほど広く、揺動軸Cに近いほど狭い形状に形成されている。第1ねじり梁群144a,144bの揺動側屈曲部と対向する第1支持フレーム146の側面は、揺動軸Cから遠くなるほど、第1ねじり梁群144a,144bの揺動側屈曲部から離れる形状に形成されている。このような構成とすることによって、揺動板6を揺動軸C周りに、すなわちX軸周りに揺動させる際の騒音の発生を抑制することができる。
【0173】
第1支持フレーム146は、X軸方向の端部近傍において、揺動軸C2から離れるほど、Y軸方向の幅が狭くなる形状に形成されている。第1支持フレーム146の、第1ねじり梁群144a,144bの揺動側屈曲部と、中央直線部と、支持側屈曲部によって三方を囲われた部分には、通気孔226a,226bが形成されている。第1支持フレーム146の、Y軸方向の端部近傍には、X軸方向に長手方向を有する矩形状の通気孔228a,228bが形成されている。通気孔228a,228bには、補強梁230a,230bが形成されている。また、本実施例のMEMS装置222では、第2ねじり梁群148a,148bの揺動側接続部が一体化されており、この一体化された揺動側接続部に、通気孔232a,232b(第3の通気孔の一例である)が形成されている。通気孔232a,232bのY方向の幅は、揺動軸C2から遠いほど広く、揺動軸C2に近いほど狭い形状に形成されている。第2ねじり梁群148a,148bの揺動側屈曲部と対向する第2支持フレーム150の側面は、揺動軸C2から遠くなるほど、第2ねじり梁群148a,148bの揺動側屈曲部から離れる形状に形成されている。このような構成とすることによって、揺動板6と第1支持フレーム146を揺動軸C2周りに、すなわちY軸周りに揺動させる際の騒音の発生を抑制することができる。
【0174】
(実施例19)
図29は本実施例のMEMS装置242を示している。MEMS装置242は、
図1および
図2に示す実施例1のMEMS装置2と同様の構成を備えている。以下では、MEMS装置242について、実施例1のMEMS装置2と相違する点のみについて説明する。
【0175】
本実施例のMEMS装置242では、揺動板6のY軸方向の端部の側面6aと支持フレーム4の側面4aの間の幅Laと、揺動板6のX軸方向の端部の側面6bと支持フレーム4の側面4bの間の幅Lbが、同程度の大きさに形成されている。
【0176】
また、本実施例のMEMS装置242では、支持フレーム4に、通気孔244(第2の通気孔の一例である)が形成されている。通気孔244は、支持フレーム4の、揺動板6のY軸方向の端部と対向する箇所の近傍に形成されている。通気孔244は、MEMS装置242を上方から平面視したときに、X軸方向に長手方向を有する矩形の形状に形成されている。通気孔244のX軸方向の幅は、揺動板6のX軸方向の幅よりも長い。
【0177】
本実施例のMEMS装置242では、揺動板6が揺動する際に、空気が通気孔244を通過するので、揺動板6と支持フレーム4の間で空気が強く圧縮されることを防止し、大きな騒音を発生することを抑制することができる。
【0178】
本実施例のMEMS装置242では、支持フレーム4の、揺動板6のY軸方向の端部に対向する箇所の近傍に、通気孔244が形成されている。揺動板6のY軸方向の端部は、揺動板6が揺動する際に高速かつ大振幅で揺動するため、大きな騒音を発生しやすい。本実施例のMEMS装置242のように、支持フレーム4の、揺動板6のY軸方向の端部に対向する箇所の近傍に通気孔244を形成することによって、大きな騒音を発生することを抑制することができる。
【0179】
上記の各種の実施例では、揺動板6に永久磁石12を取り付けておき、揺動板6に作用する磁場を変化させることで揺動板6を揺動させる、磁気駆動の構成について説明したが、揺動板6を揺動させる手段はこれに限定されるものではない。例えば、圧電駆動によって揺動板6を揺動させてもよいし、静電駆動によって揺動板6を揺動させてもよいし、熱駆動によって揺動板6を揺動させてもよい。
【0180】
上記の各種の実施例では、揺動部が支持部に対して相対的に揺動可能となるように、揺動部が連結部を介して支持部に連結されている構成を説明したが、例えば、可動部が支持部に対して相対的に並進可能となるように、可動部が連結部を介して支持部に連結されている構成や、可動部が支持部に対して相対的に回転可能となるように、可動部が連結部を介して支持部に連結されている構成であってもよい。本発明によれば、いずれの場合についても、上記の実施例と同様に、可動部の動作時に可動部と支持部の間で空気が圧縮されて騒音が発生することを抑制することができる。
【0181】
以上、本発明の実施例について詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【0182】
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項に記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。