特開2017-173463(P2017-173463A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特開2017-173463映像投映装置およびそれを用いたプラネタリウム装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-173463(P2017-173463A)
(43)【公開日】2017年9月28日
(54)【発明の名称】映像投映装置およびそれを用いたプラネタリウム装置
(51)【国際特許分類】
   G09B 27/00 20060101AFI20170901BHJP
   G03B 21/14 20060101ALI20170901BHJP
【FI】
   G09B27/00 B
   G03B21/14 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2016-57674(P2016-57674)
(22)【出願日】2016年3月22日
(71)【出願人】
【識別番号】000142894
【氏名又は名称】株式会社五藤光学研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100081949
【弁理士】
【氏名又は名称】神保 欣正
(72)【発明者】
【氏名】笠原 誠
【テーマコード(参考)】
2C032
2K203
【Fターム(参考)】
2C032EB01
2K203FA77
2K203FA82
2K203FA96
2K203GC22
2K203KA05
2K203MA40
(57)【要約】
【課題】 投映装置としてのビデオプロジェクタの解像度を高くすることなく本来の解像度を保ちながら、ドーム面に投映される映像中の物体の自然な動きを実現する。
【解決手段】 ドーム状スクリーンDに映像を投映する装置において、動画を投映する2台以上のビデオプロジェクタ1A、1Bの集合体を、上記集合体からの投映範囲が全球を覆うようにドーム内に配置するとともに、上記集合体を2軸以上の回転軸を持つ架台2に同架する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドーム状スクリーンに映像を投映する装置において、動画を投映する2台以上のビデオプロジェクタの集合体を、上記集合体からの投映範囲が全球を覆うようにドーム内に配置するとともに、上記集合体を2軸以上の回転軸を持つ架台に同架したことを特徴とする映像投映装置。
【請求項2】
ドーム状スクリーンに映像を投映する装置において、動画を投映する2台以上のビデオプロジェクタの集合体を、上記集合体からの投映範囲が全球を覆うようにドーム内に配置するとともに、上記集合体を2軸以上の回転軸を持つ光学式プラネタリウム投映機に同架したことを特徴とするプラネタリウム装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、プラネタリウムなどで用いる映像投映装置およびそれを用いたプラネタリウム装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶等の画像表示部に生成された画像を光学系を介して投映するビデオプロジェクタをプラネタリウムに導入するというアイデアが公知である。
【0003】
そして、この種のビデオプロジェクタは動画による映像が容易に得られるため、これをプラネタリウムに使用することはプラネタリウムの演出を補助し、多彩な映像表現を行う上で極めて有用である。現在、この種のビデオプロジェクタを用いた映像投映システムは、デジタル式プラネタリウムと呼ばれ、リアルタイムにコンピュータグラフィックスによる映像を映し出すことで、数十万を超える太陽系小天体や、無数の人工天体、さらには太陽系から遠く離れた地点から見た星空をも投映可能とした。
【0004】
また、このようなダイナミックな映像と光学式プラネタリウム投映機による星空とを組合わせて使用することで(例えば特許文献1)、様々な天球上の座標系を表示したり、星の軌跡を表示するなど、これまでにない映像表現が可能となった。
【0005】
前記のプラネタリウムにおいては、ビデオプロジェクタは、ドーム周囲あるいは中央付近に、単数あるいは複数台がドーム投映面を覆うように特定の方向を向けて固定設置されていた。
【0006】
すなわち、単数のビデオプロジェクタの場合はそれをもって画像がドーム全面を包括するように、複数台のビデオプロジェクタの場合は各プロジェクタの画像を対面するドーム面の各領域に投映し、それらの画像をつなぎ合わせてドーム全面を包括していた。
【0007】
よって、プラネタリウムの演出に際し、例えば星や飛行体などのある物体の運動を再現するには、固定された領域内に投映される動画中においてある物体を移動、すなわち映像を変化させることによって表現していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−145614
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、映像の中の微小な光点の移動を考えた時、その光点は投映機の画素配列を辿りながら離散的に移動していくことになるので、連続的な対象物の移動として捉えられず不自然な映像となる。
【0010】
このような映像の不自然さを避けるため、映像にアンチエイリアシング処理を行うことが一般的に行われるが、演算コストの増加は当然のことながら、星空のような点光源の映像では、本来であれば1画素に収まる対象が4画素あるいは9画素の大きさの不自然なものとなってしまい、投映装置の解像度を生かしきれないでいた。
【0011】
一般的な映像メディアとしてのテレビジョンでは、視聴距離を、映像の一画素が視力1. 0に相当する角度である1分角に相当するように規定されているから、同等の解像度をドームスクリーンで実現するためには、ドーム子午線上の解像度を、アンチエイリアシングを用いるデジタル式プラネタリウムでは21600〜32400画素程度にする必要がある。これだけの高解像度の映像は、それを投映する装置の構築に多大なコストを要するだけでなく、投映する映像を生成することにも多くのコストを必要とし現実的ではなかった。
【0012】
この発明の映像投映装置は以上の問題点に鑑みて創作されたものであり、投映装置としてのビデオプロジェクタの解像度を高くすることなく本来の解像度を保ちながら、ドーム面に投映される映像中の物体の自然な動きを実現する映像投映装置を安価に供給することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明の映像投映装置はドーム状スクリーンに映像を投映する装置において、動画を投映する2台以上のビデオプロジェクタの集合体を、上記集合体からの投映範囲が全球を覆うようにドーム内に配置するとともに、上記集合体を2軸以上の回転軸を持つ架台に同架したことを特徴とする。
【0014】
また、請求項2記載の発明は前記の映像投映装置をプラネタリウム装置に使用するものであり、ドーム状スクリーンに映像を投映する装置において、動画を投映する2台以上のビデオプロジェクタの集合体を、上記集合体からの投映範囲が全球を覆うようにドーム内に配置するとともに、上記集合体を2軸以上の回転軸を持つ光学式プラネタリウム投映機に同架したことを特徴とする。
【0015】
すなわち、この発明は、これまでは、単数あるいは複数のビデオプロジェクタによって、ドームスクリーンである半球状の投映面のみを映像の投映範囲としていたものを、少なくとも2台以上のビデオプロジェクタによって、スクリーンの無い半球も含めた全球を投映範囲とする映像システムを構築し、それを2軸以上の可動軸を持つ架台の上に設置する。また、可動軸を持つ架台として光学式プラネタリウム投映機を用いることで、プラネタリウムドーム内での共用を可能とする。
【発明の効果】
【0016】
この発明においては少なくとも2台以上のビデオプロジェクタを2軸以上の可動軸を持つ架台の上に設置しているが、ここに2軸とは例えばX軸、Y軸であり、これらの軸の回転の組み合わせによりビデオプロジェクタはその投映方向を全方向に向けて運動することが可能となる。
【0017】
一般的な映像において、これまでは、単数あるいは複数台がドーム投映面を覆うように特定の方向を向けて固定設置されていたので、ある物体の運動を再現するには、固定された領域内に投映される動画中においてある物体を移動、すなわち映像を変化させることによって表現していた。よって、水平あるいは垂直方向の視線の移動、あるいは頭を傾けるような視点の回転を伴う映像については、映像をリアルタイムに生成し変更する必要があったが、この発明の映像投映装置によれば、これらの変化に対して映像を変化させる必要がなく、可動軸の回転によって、すべて対応することができる。
【0018】
このことは、映画のように予め生成された映像においても、予めあらゆる方向の映像を用意しておくことで、再生時に視線方向、すなわち正面となる方向の変更が可能であり、リアルタイムに生成する映像と同様の効果を得ることができる。
【0019】
また、プラネタリウムなどの天文映像においては、視線方向の変化だけでなく時刻や観測地の変化についても、映像を変化させることなく可動軸の回転によって表現することが出来る。特に、可動軸を持つ架台として光学式プラネタリウム投映機を用いることで、これらの運動や移動を滑らかに再現できるだけでなく、ビデオプロジェクタによる映像と光学式プラネタリウム投映機による映像を組合わせて用いる場合においても、互いの映像を精度良く一致させた映像展開が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】この発明の映像投映装置の正面図。
図2】この発明のプラネタリウム装置の正面図。
図3】従来技術の映像投映装置の正面図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、この発明の映像投映装置およびプラネタリウム装置の具体的実施例を添付図面に基づいて説明する。図1は、2台のビデオプロジェクタ1A、1Bを用いてドームスクリーンDの全領域を投映する例を示す図である。
【0022】
前記ビデオプロジェクタ1A、1Bは画角が180度以上ある魚眼レンズを組合わせることにより、一台の単眼式のプロジェクターによって画像がドーム全面を包括する。
【0023】
前記ビデオプロジェクタ1A、1Bは互いに対向方向を向く集合体として構成され、3つの回転軸2X、2Y、2Zを持つ架台に載せられる。
【0024】
前記のビデオプロジェクタの1A、1Bの映像は、無線接続によって直接ビデオプロジェクタに与えても良いし、架台内に映像生成用のコンピュータを配置し、外部からコンピュータへの指示により映像を生成させても良い。
【0025】
このとき、個々のビデオプロジェクタ1A、1Bが映し出す映像は、基本的には映像の視線ベクトルを固定した状態で生成するからから、例えば、ビデオプロジェクタ1Aは水平線より上の映像を映し、ビデオプロジェクタ1Bは、水平線下の映像(地面の様子など) を映し出し、架台2の各軸の回転によって、ドームスクリーンD上に観察者の視線が表現される。
【0026】
このことからわかるように、ビデオプロジェクタ1A、1Bから映し出す映像は、映像内に含まれるオブジェクト自体の移動や変化、そして観察者の位置の変化による映像の変化のみを描画すればよいことになる。
【0027】
図2は、2台のビデオプロジェクタ11A、11Bを光学式プラネタリウム投映機12と組み合わせたプラネタリウム装置を示す図である。
【0028】
前記ビデオプロジェクタ11A、11Bは画角が180度以上ある魚眼レンズを組合わせることにより、一台の単眼式のプロジェクターによって画像がドーム全面を包括する。
【0029】
前記ビデオプロジェクタ11A、11Bは互いに対向方向を向く集合体として構成され、光学式プラネタリウム投映機12に載せられる。
【0030】
前記光学式プラネタリウム投映機12は3つの回転軸12X、12Y、12Zを持つ公知の構造のものである。
【0031】
前記の実施例と同様に、ビデオプロジェクタ11A、11Bの映像は、無線接続によって直接ビデオプロジェクタに与えても良いし、光学式プラネタリウム投映機12の架台内に映像生成用のコンピュータを配置し、外部からコンピュータへの指示により映像を生成させても良い。
【0032】
このとき、光学式プラネタリウム投影機によって映し出される星空12と、ビデオプロジェクタ11A、11Bによって映し出される映像の相互の位置関係は固定された状態にあるから、例えば、光学式プラネタリウム投映機から映し出される星座に合わせて、ビデオプロジェクタから、星座の絵やその星々をつなぐ線を、正確に位置を一致させた状態で表示するが可能になる。
【0033】
この場合、光学式プラネタリウム投映機12の回転軸を動かし、星空の投影される位置が変化した場合においても、ビデオプロジェクタによる映像は、なんら変化させる必要がない。
【0034】
図3は対比例として従来技術のビデオプロジェクタVと光学式プラネタリウム投映機Pを組合わせた投映システムを示す図である。
【0035】
このような投映システムでは、光学式プラネタリウム投映機が映し出す星空の位置が変化すると、ビデオプロジェクタの設置された位置から見るプラネタリウムが映す星空が変化するから、ビデオプロジェクタによって投映する映像も星空の移動に合わせて逐次変化させなければならない。
【0036】
ビデオプロジェクタは、ドームスクリーンDの周囲に配置されているからその映像は大きく歪み、その歪みを精密に補正する必要がある。
【0037】
ドームスクリーンのような大きな構造物では、スクリーン面を完全な球面の状態で維持することが困難で、温度などの要因によってその形状は時々刻々と変化する。その量はわずかではあるが、ドーム周囲に配置されたビデオプロジェクタと、ドーム中心に設置された光学式プラネタリウム投映機の投映する映像の位置にズレを生じるという問題を抱えていた。図2で示した構成とすれば、双方がほぼ同一の点から投映光束を発しているため、ドームスクリーン面の変形の影響を大幅に抑えることが可能となり、この点からもこの発明の優位性が明らかである。
【符号の説明】
【0038】
D ドームスクリーン
1A ビデオプロジェクタ
1B ビデオプロジェクタ
2 架台
11A ビデオプロジェクタ
11B ビデオプロジェクタ
12 光学式プラネタリウム投映機
図1
図2
図3