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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-173596(P2017-173596A)
(43)【公開日】2017年9月28日
(54)【発明の名称】構造物
(51)【国際特許分類】
   G09B 23/26 20060101AFI20170901BHJP
【FI】
   G09B23/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-60184(P2016-60184)
(22)【出願日】2016年3月24日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 平成27年9月24日に日本結晶成長学会第39回結晶成長(国際)討論会にてポスター発表 〔刊行物等〕 平成27年9月**日に界面反応成長研究所のウェブサイトにて発表
(71)【出願人】
【識別番号】516088190
【氏名又は名称】大鉢 忠
(71)【出願人】
【識別番号】503027931
【氏名又は名称】学校法人同志社
(74)【代理人】
【識別番号】100112520
【弁理士】
【氏名又は名称】林 茂則
(72)【発明者】
【氏名】大鉢 忠
(72)【発明者】
【氏名】吉門 進三
(57)【要約】
【課題】複数種類の結晶最密充填構造について統一的かつ簡単に表現することが可能な構造物を提供する。
【解決手段】結晶の最密充填構造を視覚化する構造物であって、複数の球体からなる球構造体、複数の単位三角平面で囲まれた面構造体、または、複数の単位正三角形が描画された板構造体を有し、前記球体の中心点、前記単位三角平面の頂点または前記単位正三角形の頂点が、結晶の格子点に対応し、2以上の前記球構造体、前記面構造体または前記板構造体を組み合わせることで一の結晶構造を表現し、組み合わせの変更または一の構造体に対する他の構造体の相対的な回転または移動により他の結晶構造を表現する構造物を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶の最密充填構造を視覚化する構造物であって、
複数の球体からなる球構造体、複数の単位三角平面で囲まれた面構造体、または、複数の単位正三角形が描画された板構造体を有し、
前記球体の中心点、前記単位三角平面の頂点または前記単位正三角形の頂点が、結晶の格子点に対応し、
2以上の前記球構造体、前記面構造体または前記板構造体を組み合わせることで一の結晶構造を表現し、組み合わせの変更または一の構造体に対する他の構造体の相対的な回転または移動により他の結晶構造を表現する構造物。
【請求項2】
前記球構造体が、それぞれ7個の球体からなる第1球構造体および第2球構造体を有し、
前記第1球構造体が、前記7個の球体のうち6個球体が三角形平面に最密配置された三角平面層を構成し、残余の1個球体が前記三角平面層の中心に位置する3個球体に接して配置されることで三角錐の外形を成すものであり、
前記第2球構造体が、前記7個の球体のうち1個球体が中心に配置され、残余の6個球体が前記1個球体の周りの平面に最密配置されることで六角平面層の外形を成すものであり、
前記第1球構造体の前記三角平面層が相互に接するように二つの前記第1球構造体が組み合わされることで、3C立方最密充填構造が表現され、
前記第1球構造体の前記三角平面層が前記第2球構造体の一方の面に接し、他の前記第1球構造体の前記三角平面層が前記第2球構造体の他方の面に接するように二つの前記第1球構造体および一つの前記第2球構造体が組み合わされることで、2H六方最密充填構造または4H六方最密充填構造が表現される
請求項1に記載の構造物。
【請求項3】
前記第1球構造体の三角錐の4頂点に対応する4個球体と、他の3個球体とが、色相、彩度、明度その他の視覚要素によって区別され、
前記第2球構造体の中心の1個球体と、他の6個球体とが、前記視覚要素によって区別される
請求項2に記載の構造物。
【請求項4】
前記第1球構造体の前記他の3個球体のそれぞれ、および、第2球構造体の前記他の6個球体から選択された少なくとも3個の球体が、前記視覚要素によってさらに区別され、
二つの前記第1球構造体が組み合わされたとき、または、二つの前記第1球構造体および一つの前記第2球構造体が組み合わされたとき、各球体が、隣接する球体に付された視覚要素とは異なる視覚要素を有する
請求項3に記載の構造物。
【請求項5】
前記球体が、前記球体の中心に位置する小球体と外殻とを有し、
前記外殻が、透明または半透明である
請求項2から請求項4の何れか一項に記載の構造物。
【請求項6】
前記面構造体が、第1面構造体を含み、
前記第1面構造体が、4つの前記単位三角平面からなる正三角平面および6つの前記単位三角平面からなる正六角平面を有し、前記正三角平面および前記正六角平面が平行に離間して配置され、前記正三角平面の外周辺と前記正六角平面の外周辺とが単一または複数の前記単位三角平面からなる平面によって接続されることで閉空間を成すものであり、
二つの前記第1面構造体が、それぞれの前記正六角平面を向かい合わせにして接するよう組み合わされることで、2H六方最密充填構造または4H六方最密充填構造が表現される
請求項1に記載の構造物。
【請求項7】
前記面構造体が、第2面構造体をさらに含み、
前記第2面構造体が、前記正三角平面を二つ有し、二つの前記正三角平面が平行に離間し、かつ相対的に60°回転して配置され、二つの前記正三角平面のそれぞれの外周辺が単一または複数の前記単位三角平面からなる平面によって接続されることで閉空間を成すものであり、
前記第1面構造体と前記第2面構造体とが、前記第2面構造体の二つの前記正三角平面の何れか一方と前記第1面構造体の前記正三角平面とを向かい合わせにして接するよう組み合わされることで、3C立方最密充填構造が表現される
請求項6に記載の構造物。
【請求項8】
前記単位三角平面の各頂点に、色相、彩度、明度その他の視覚要素を付与する
請求項6または請求項7に記載の構造物。
【請求項9】
付与する前記視覚要素は4種類であり、隣接する点において同一の視覚要素が付与されず、
前記面構造体の組み合わせにおいて、対向する二つの面に付された視覚要素が一致するよう前記面構造体を組み合わせる
請求項8に記載の構造物。
【請求項10】
前記板構造体が、透明または半透明の基板を有し、前記単位正三角形を隙間なく前記基板上に配置した場合における前記単位正三角形の頂点位置に、文字、記号、図形その他のマークを描画したものであり、
複数の前記板構造体を、相対位置を変えて重ね合わせることで、3C立方最密充填構造、2H六方最密充填構造または4H六方最密充填構造が表現される
請求項1に記載の構造物。
【請求項11】
前記マークに、4種類の色相、彩度、明度その他の視覚要素を、隣接するマークにおいて同一の種類とならないよう付与する
請求項10に記載の構造物。
【請求項12】
前記単位正三角形の各頂点に位置するマークに付された視覚要素とは異なる視覚要素を前記単位正三角形の占有領域に付与し、
一の板構造体の前記占有領域に、他の板構造体の前記マークが位置するよう、前記一の板構造体と前記他の板構造体とを重ね合わせる場合において、
前記一の板構造体の前記占有領域に付された視覚要素と、前記他の板構造体の前記マークに付された視覚要素とが同じになるよう前記一の板構造体および前記他の板構造体を重ね合わせる
請求項11に記載の構造物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結晶の空間構造を視覚化して示すとともに、最密充填構造における空間構造の違いが容易に理解できるようにした構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
水晶、食塩等の結晶は、原子が3次元空間を規則的に埋め尽くしてでき上がるものであり、3次元空間を球により最密に埋め尽くす構造として、最密充填構造が知られている。最密充填構造には、六方最密充填構造と立方最密充填構造の2種類が結晶多形として知られており、その空間構造の違いを理解することは、結晶を扱う者にとって大切な事である。
【0003】
結晶の空間構造の理解を補助する目的で、たとえば非特許文献1に記載されているような分子模型を用いる場合がある。分子模型は、プラスチック等からなる球体や多面体を原子に見立て、これら球体等をプラスチック棒等で相互に接続し、結晶や分子の3次元空間における構造を視覚化して示すよう構成したものである。このような分子模型を用いれば、結晶の規則性や周期性が視覚的に把握でき、結晶の空間構造を容易に理解することができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】「ウチダ 理科・理化学機器カタログ 第63版」、株式会社内田洋行、平成27年3月、p.599−602
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記したような分子模型では、単一種類の結晶構造が表現されるだけであり、複数種類の空間構造を含む結晶多形を統一的に表現することができない。本発明の目的は、複数種類の結晶最密充填構造について統一的かつ簡単に表現することが可能な構造物を提供することにある。本発明の他の目的は、審美性に優れた結晶の空間構造を、複数種類について簡単に変更し観賞することが可能な構造物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の態様においては、結晶の最密充填構造を視覚化する構造物であって、複数の球体からなる球構造体、複数の単位三角平面で囲まれた面構造体、または、複数の単位正三角形が描画された板構造体を有し、前記球体の中心点、前記単位三角平面の頂点または前記単位正三角形の頂点が、結晶の格子点に対応し、2以上の前記球構造体、前記面構造体または前記板構造体を組み合わせることで一の結晶構造を表現し、組み合わせの変更または一の構造体に対する他の構造体の相対的な回転または移動により他の結晶構造を表現する構造物を提供する。
【0007】
このような構造物によれば、複数の球構造体、面構造体または板構造体(以下単に「構造体」という。)を組み合わせて一の結晶構造を表現するとともに、構造体の組み合わせを変更しまたは構造体を相対的に回転または移動させて、他の結晶構造を表現することができる。その結果、複数種類の結晶構造を統一的かつ簡単に表現することができ、最密充填構造の違いについての理解を容易にすることができる。また、結晶構造の審美性を、複数種類の結晶構造について簡単に表現し観賞することができる。
【0008】
前記球構造体が、それぞれ7個の球体からなる第1球構造体および第2球構造体を有し、前記第1球構造体が、前記7個の球体のうち6個球体が三角形平面に最密配置された三角平面層を構成し、残余の1個球体が前記三角平面層の中心に位置する3個球体に接して配置されることで三角錐の外形を成すものであり、前記第2球構造体が、前記7個の球体のうち1個球体が中心に配置され、残余の6個球体が前記1個球体の周りの平面に最密配置されることで六角平面層の外形を成すものであり、前記第1球構造体の前記三角平面層が相互に接するように二つの前記第1球構造体が組み合わされることで、3C立方最密充填構造が表現され、前記第1球構造体の前記三角平面層が前記第2球構造体の一方の面に接し、他の前記第1球構造体の前記三角平面層が前記第2球構造体の他方の面に接するように二つの前記第1球構造体および一つの前記第2球構造体が組み合わされることで、2H六方最密充填構造または4H六方最密充填構造が表現されてもよい。
【0009】
前記第1球構造体の三角錐の4頂点に対応する4個球体と、他の3個球体とが、色相、彩度、明度その他の視覚要素によって区別され、前記第2球構造体の中心の1個球体と、他の6個球体とが、前記視覚要素によって区別されてもよい。前記第1球構造体の前記他の3個球体のそれぞれ、および、第2球構造体の前記他の6個球体から選択された少なくとも3個の球体が、前記視覚要素によってさらに区別され、二つの前記第1球構造体が組み合わされたとき、または、二つの前記第1球構造体および一つの前記第2球構造体が組み合わされたとき、各球体が、隣接する球体に付された視覚要素とは異なる視覚要素を有してもよい。前記球体が、前記球体の中心に位置する小球体と外殻とを有し、前記外殻が、透明または半透明であってもよい。
【0010】
前記面構造体が、第1面構造体を含み、前記第1面構造体が、4つの前記単位三角平面からなる正三角平面および6つの前記単位三角平面からなる正六角平面を有し、前記正三角平面および前記正六角平面が平行に離間して配置され、前記正三角平面の外周辺と前記正六角平面の外周辺とが単一または複数の前記単位三角平面からなる平面によって接続されることで閉空間を成すものであり、二つの前記第1面構造体が、それぞれの前記正六角平面を向かい合わせにして接するよう組み合わされることで、2H六方最密充填構造または4H六方最密充填構造が表現されてもよい。
【0011】
前記面構造体が、第2面構造体をさらに含み、前記第2面構造体が、前記正三角平面を二つ有し、二つの前記正三角平面が平行に離間し、かつ相対的に60°回転して配置され、二つの前記正三角平面のそれぞれの外周辺が単一または複数の前記単位三角平面からなる平面によって接続されることで閉空間を成すものであり、前記第1面構造体と前記第2面構造体とが、前記第2面構造体の二つの前記正三角平面の何れか一方と前記第1面構造体の前記正三角平面とを向かい合わせにして接するよう組み合わされることで、3C立方最密充填構造が表現されてもよい。
【0012】
前記単位三角平面の各頂点に、色相、彩度、明度その他の視覚要素を付与してもよい。 付与する前記視覚要素は4種類であり、隣接する点において同一の視覚要素が付与されず、前記面構造体の組み合わせにおいて、対向する二つの面に付された視覚要素が一致するよう前記面構造体を組み合わせてもよい。
【0013】
前記板構造体が、透明または半透明の基板を有し、前記単位正三角形を隙間なく前記基板上に配置した場合における前記単位正三角形の頂点位置に、文字、記号、図形その他のマークを描画したものであり、複数の前記板構造体を、相対位置を変えて重ね合わせることで、3C立方最密充填構造、2H六方最密充填構造または4H六方最密充填構造が表現されてもよい。
【0014】
前記マークに、4種類の色相、彩度、明度その他の視覚要素を、隣接するマークにおいて同一の種類とならないよう付与してもよい。前記単位正三角形の各頂点に位置するマークに付された視覚要素とは異なる視覚要素を前記単位正三角形の占有領域に付与し、一の板構造体の前記占有領域に、他の板構造体の前記マークが位置するよう、前記一の板構造体と前記他の板構造体とを重ね合わせる場合において、前記一の板構造体の前記占有領域に付された視覚要素と、前記他の板構造体の前記マークに付された視覚要素とが同じになるよう前記一の板構造体および前記他の板構造体を重ね合わせてもよい。
【0015】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の構造物の一例である球構造体100を示した斜視図である。
図2】第1球構造体110および第2球構造体120を実際に構成したものの写真である。
図3】最密充填構造を説明するための概念図である。
図4】二つの第1球構造体110と一つの第2球構造体120とを組み合わせた構造物の例を示す。
図5】二つの第1球構造体110と一つの第2球構造体120とを組み合わせた構造物の例を示す。
図6】二つの第1球構造体110を組み合わせた構造物の例を示す。
図7】第1球構造体110および第2球構造体120の他の例を示す写真である。
図8】本発明の構造物の一例である面構造体200を示した写真である。
図9】二つの第1面構造体210を組み合わせた構造物の例を示す。
図10】二つの第1面構造体210を組み合わせた構造物の例を示す。
図11】第1面構造体210と第2面構造体220を組み合わせた構造物の例を示す。
図12】本発明の構造物の一例である板構造体300を示す。
図13】三つの板構造体300を組み合わせた構造物の例を示す。
図14】三つの板構造体300を組み合わせた構造物の例を示す。
図15】二つの板構造体300を組み合わせた構造物の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0018】
(実施の形態1)
図1は、本発明の構造物の一例である球構造体100を示した斜視図であり、図1(a)は、第1球構造体110を、図1(b)は第2球構造体120を示し、図1(c)は第1球構造体110の一部を分解して示した説明図である。本実施形態の球構造体100は、複数の球体からなるものであり、第1球構造体110および第2球構造体120を有する。
【0019】
第1球構造体110は、図1(a)に示すように、7個の球体からなり、7個の球体のうち6個の球体が三角平面層112を構成する。三角平面層112は、図1(c)に示すように、6個の球体が三角形平面に最密配置されたものである。7個の球体のうち残余の1個の球体が三角平面層112の中心に位置する3個の球体(以後「3個球体116」という。)に接して配置される。図1(c)においては、残余の1個球体(点線で示す球体102)が3個球体116上に配置される前の状態を示しており、残余の1個球体が3個球体116上に配置されることで、第1球構造体110は、図1(a)に示すような三角錐の外形を成す。
【0020】
第2球構造体120は、図1(b)に示すように、7個の球体からなり、7個の球体のうち1個の球体(以後「中心球体122」という。)が中心に配置され、残余の6個の球体(以後「周辺球体124」という。)が中心球体122の周りに配置される。中心球体122および周辺球体124は平面に最密に配置され、よって第2球構造体120は、図1(b)に示すような六角平面層の外形を成す。
【0021】
第1球構造体110および第2球構造体120を構成する球体の中心点は結晶の格子点に対応する。球体は、プラスチック、ガラス、金属、発泡スチロール、紙等、構造が保持できる程度の機械的強度を有するものであれば、特に構成材料の限定はない。球体と球体との接触部における接着は、構成材料に適した接着剤を用いることができ、球体に接続孔を開け、当該接続孔に接続部材を挿入することで固着するようにしてもよい。
【0022】
なお、第1球構造体110の三角錐の4頂点に対応する4個の球体(以下、「頂点球体114」という。)と3個球体116とが、色相、彩度、明度その他の視覚要素によって区別されてもよい。また、第2球構造体120の中心球体122と周辺球体124とが、同様な視覚要素によって区別されてもよい。ここで、「視覚要素」とは人間の持つ視覚によって違いが認識できる物性要素であり、色相、彩度、明度で表す色が例示できる。色には、赤、青、黄色等の有彩色はもとより、白、灰色、黒等の無彩色、または色がない無色、透明を含む。無色、透明の場合、球体を構成する材料物質の色が球体の色を表すことになるが、球体の材料物質が同じであっても、球体表面の模様、粗さ、艶等の質感(テクスチャ)により視覚的に識別できる場合、これらは視覚要素に含まれる。
【0023】
第1球構造体110において頂点球体114と3個球体116とが視覚要素で区別され、第2球構造体120において中心球体122と周辺球体124とが視覚要素によって区別されることで、後に説明するように、これらを組み合わせた場合の空間構造を明確に認識できる。そのため、組み合わせを変更した場合の違いも明瞭に認識することが可能になり、最密充填構造における結晶構造の違いを容易に認知することができるようになる。
【0024】
さらに、第1球構造体110の3個球体116のそれぞれ、および、第2球構造体120の周辺球体124から選択された少なくとも3個の球体が、視覚要素によってさらに区別されてもよい。この場合、二つの第1球構造体110が組み合わされたとき、または、二つの第1球構造体110および一つの第2球構造体120が組み合わされたとき、各球体が、隣接する球体に付された視覚要素とは異なる視覚要素を有することとなる。3個球体116および周辺球体124をさらに視覚要素によってさらに区別することで、空間構造をさらに明確に認識でき、組み合わせを変更した場合の空間構造(結晶構造)の違いもより明瞭かつ容易に認識できるようになる。
【0025】
図2は、第1球構造体110および第2球構造体120を実際に構成したものの写真である。同写真の右側に第1球構造体110を示し、中央に第2球構造体120を示し、左側に倒立させた第1球構造体110を示す。同写真の左側に示す倒立させた第1球構造体110においては、4つの頂点球体114のうち3個球体116と3点で接着されている球体(図1(c)における球体102)を台紙130に固着させることで倒立を実現している。
【0026】
図3は、最密充填構造を説明するための概念図である。剛体球を立体的な空間に密に詰めることによって結晶と同じ3次元の周期構造が構成でき、その基本が最密充填構造である。平面上(2次元)に剛体球を一層だけ密に並べると、一つの球の周りに6個の球が接して最密に並べられる、第2球構造体120と同様な6角形最密充填層が構成される。この6角形最密充填層を構成する各球の中心点を、図3(a)に示すように結ぶと、上向き(U)と下向き(D)の正三角形ができる。これは球の隙間の空隙に対応させることができる。以下、上向き正三角形(U)に対応する空隙を「空隙U」と、下向き正三角形(D)に対応する空隙を「空隙D」と称する。
【0027】
次に、この最密充填層の上に2層目を重ねることを考える。球は体積を持つため、図3(b)に示すように、空隙Dに球が乗ると空隙Uには球は乗る事ができなくなる。逆に、空隙Uに球が乗ると空隙Dには球は乗れない。空隙Uに球を置いても60°、120°または180°回転すると空隙Dに球を置いた場合と同じと見なせるが、図3(c)および図3(d)に示すように、2層目の中心部空隙における正三角形の向きが上下逆転する。すなわち、1層目の空隙Uの上に2層目の球が乗ると2層目の中心部空隙における正三角形の向きはDとなり、1層目の空隙Dの上に2層目の球が乗ると2層目の中心部空隙における正三角形の向きはUとなる。よって、3層目として1層目反対面に最密充填層を重ねる場合、1層目の空隙Dに球を置くのか、あるいは空隙Uに球を置くのかによって空間構造に差が生じる。
【0028】
図4および図5は、二つの第1球構造体110と一つの第2球構造体120とを組み合わせた構造物の例を示す。図4(a)の左側は、倒立させた第1球構造体110(1層目の最密充填層)の上に第2球構造体120(2層目の最密充填層)を組み合わせて配置した状態であり、第1球構造体110の三角平面層112が第2球構造体120の一方の面に接した状態である。図4(a)の右側は、もう一つの第1球構造体110であり、その方向が、倒立させた第1球構造体110(1層目の最密充填層)の空隙三角形の方向と同じになるように置いたものである。図4(b)は、図4(a)の右側の第1球構造体110を、左側の第2球構造体120(2層目の最密充填層)に重ねて組み合わせた状態であり、他の第1球構造体110(3層目の最密充填層)の三角平面層112が第2球構造体120(2層目の最密充填層)の他方の面に接した状態である。すなわち、第1球構造体110の三角平面層112が第2球構造体120の一方の面に接し、他の第1球構造体110の三角平面層112が第2球構造体120の他方の面に接するように二つの第1球構造体110および一つの第2球構造体120が組み合わされた状態である。
【0029】
ここで、1層目の最密充填層と3層目の最密充填層は、2層目の最密充填層の同じ空隙位置に球を配置している。つまり1層目の最密充填層の着色球の上に3層目の最密充填層の着色球が配置されるように組み合わされている。これを横から見ると、図4(c)に示すように、下からABABAと2層周期毎に続く構造が見て取れ、上から見ると6回対称を持っているところから、2H六方最密充填構造を表現していることとなる。
【0030】
図5(a)の左側は、図4(a)の左側同様、倒立させた第1球構造体110(1層目の最密充填層)の上に第2球構造体120(2層目の最密充填層)を組み合わせて配置した状態であり、第1球構造体110の三角平面層112が第2球構造体120の一方の面に接した状態である。図5(a)の右側は、もう一つの第1球構造体110であり、その方向が、倒立させた第1球構造体110(1層目の最密充填層)の空隙三角形の方向と逆になるよう、つまり図4(a)の右側の第1球構造体110を60°、120°または180°回転させて置いたものである。図5(b)は、図5(a)の右側の第1球構造体110を、左側の第2球構造体120(2層目の最密充填層)に重ねて組み合わせた状態であり、他の第1球構造体110(3層目の最密充填層)の三角平面層112が第2球構造体120(2層目の最密充填層)の他方の面に接した状態である。すなわち、第1球構造体110の三角平面層112が第2球構造体120の一方の面に接し、他の第1球構造体110の三角平面層112が第2球構造体120の他方の面に接するように二つの第1球構造体110および一つの第2球構造体120が組み合わされた状態である。
【0031】
図5における1層目の最密充填層と3層目の最密充填層は、2層目の最密充填層の異なる空隙位置に球を配置している。つまり1層目の最密充填層の着色球の上には3層目の最密充填層の空隙が位置するように組み合わされている。これを横から見ると、図5(c)に示すように、下からABACAと4層周期毎に続く構造が見て取れ、上から見ると6回対称を持っているところから、4H六方最密充填構造を表現していることとなる。
【0032】
図6は、二つの第1球構造体110を組み合わせた構造物の例を示す。図6(a)の左側は、倒立させた第1球構造体110(1層目の最密充填層)である。図6(a)の右側は、もう一つの第1球構造体110であり、その方向が、倒立させた第1球構造体110(1層目の最密充填層)の空隙三角形の方向と逆になるよう、つまり図5(a)の右側の第1球構造体110と同様、図4(a)右側の第1球構造体110を60°、120°または180°回転させて置いたものである。図6(b)は、図6(a)の右側の第1球構造体110を、左側の第1球構造体110(1層目の最密充填層)に重ねて組み合わせた状態であり、第1球構造体110の三角平面層112が相互に接するように二つの第1球構造体110が組み合わされた状態である。
【0033】
図6の構造物は、図5における構造物から第2球構造体120(2層目の最密充填層)を抜いた構造物であり、4H六方最密充填構造に積層欠陥を作ったものに相当する。これを横から見ると、図6(c)に示すように、下からABCABCAと続き3層周期毎に続く構造が見て取れ、3C立方最密充填構造(cubic closest packing)を表現していることとなる。当該構造は、面心立方(face centered cubic :fcc)構造とも呼ばれている結晶の基本構造の一つである。
【0034】
以上の通り、二つの第1球構造体110および一つの第2球構造体120を組み合わせて2H六方最密充填構造または4H六方最密充填構造の一方が表現され、一つの第1球構造体110を回転することで、2H六方最密充填構造または4H六方最密充填構造の他方が表現される。また、二つの第1球構造体110および一つの第2球構造体120の組み合わせを二つの第1球構造体110の組み合わせに変更することで、3C立方最密充填構造が表現される。つまり、2以上の球構造体を組み合わせることで一の結晶構造を表現し、組み合わせの変更または一の構造体に対する他の構造体の相対的な回転により他の結晶構造を表現することができる。
【0035】
図7は、第1球構造体110および第2球構造体120の他の例を示す写真である。図7(a)は、二つの第1球構造体110および第2球構造体120を分離して示した写真、図7(b)は、二つの第1球構造体110と一つの第2球構造体120を六方最密充填構造に組み合わせた写真、図7(c)は、二つの第1球構造体110を立方最密充填構造に組み合わせた写真である。球体は、図7に示すように、球体の中心に位置する小球体104と外殻106とを有することができ、外殻106は透明または半透明とすることができる。透明な外殻106と小球体104との二重構造とすることで、空間構造を見通し易くすると共に、審美性を高めることができる。
【0036】
(実施の形態2)
図8は、本発明の構造物の一例である面構造体200を示した写真である。図8(a)および図8(b)は第1面構造体210aを、図8(c)および図8(d)は第1面構造体210bを、図8(e)および図8(f)は第2面構造体220を示す。図8において、(a)と(b)、(c)と(d)および(e)と(f)は、互いの表裏面を写したものである。面構造体200は、第1面構造体210を含む。また、面構造体200は、第2面構造体220をさらに含んでもよい。
【0037】
第1面構造体210(第1面構造体210aと第1面構造体210bを総称する場合、「第1面構造体210」という。)は、正三角平面214および正六角平面216を有する。正三角平面214は4つの単位三角平面202からなり、正六角平面216は6つの単位三角平面202からなる。正三角平面214および正六角平面216は、平行に離間して配置され、正三角平面214の外周辺と正六角平面216の外周辺とが平面218によって接続されることで閉空間を成す。平面218は、単一または複数の単位三角平面202からなる。つまり、第1面構造体210は、単位三角平面202によって閉空間を形成する構造体である。
【0038】
第2面構造体220は、正三角平面224を二つ有する。正三角平面224は、4つの単位三角平面202からなる。二つの正三角平面224が平行に離間し、かつ相対的に60°回転して配置され、二つの正三角平面224のそれぞれの外周辺が平面228によって接続されることで閉空間を成す。平面228は、単一または複数の単位三角平面202からなる。つまり、第2面構造体220は、単位三角平面202によって閉空間を形成する構造体である。
【0039】
単位三角平面202の各頂点は、結晶の格子点に対応する。単位三角平面202の各頂点には、視覚要素が付与されている。付与する視覚要素は4種類であり、隣接する点において同一の視覚要素は付与されない。視覚要素については実施の形態1と同様である。また、第1面構造体210および第2面構造体220の構成材料についても実施の形態1における球体と同様である。
【0040】
第1面構造体210および第2面構造体220に付されている視覚要素は、具体的には色である。図8において、青色を「B」、緑色を「G」、赤色を「R」、黄色を「Y」の標識を付して示している。図8(a)および(b)に示す第1面構造体210aと図8(c)および(d)に示す第1面構造体210bとは、形状は同じであるが付された視覚要素(色の並び)が相違する。
【0041】
図9および図10は、二つの第1面構造体210を組み合わせた構造物の例を示す。図9(a)は、第1面構造体210aと第1面構造体210bを、正六角平面216を上にして並置した写真である。図9(b)は、図9(a)の第1面構造体210aと第1面構造体210bとを、それぞれの正六角平面216を向かい合わせにして接するよう組み合わせた写真である。ここで、第1面構造体210aの正六角平面216に付された視覚要素と、第1面構造体210bの正六角平面216に付された視覚要素とが一致するよう第1面構造体210aおよび第1面構造体210bを組み合わせる。つまり、図9(a)の矢印で対になっているように色を一致させて組み合わせる。
【0042】
図9(b)において、正六角平面216が向かい合った面は、実施の形態1の図4におけるA層に相当し、第1面構造体210aおよび第1面構造体210bの正三角平面214は、B層に相当する。図9(b)の面構造体の上下に、さらに第1面構造体210aおよび第1面構造体210bを追加したものが図9(c)の写真である。下からABABAと2層周期毎に続く構造が見て取れ、上から見ると6回対称を持っているところから、2H六方最密充填構造を表現していることとなる。
【0043】
図10(a)は、第1面構造体210aと第1面構造体210bを、正六角平面216を上にして並置した写真である。ただし、図10(a)においては、右側の第1面構造体210aを、図9(a)の場合より180°回転した状態で置いている。図10(b)は、図10(a)の第1面構造体210aと第1面構造体210bとを、それぞれの正六角平面216を向かい合わせにして接するよう組み合わせた写真である。ここで、第1面構造体210aの正六角平面216に付された視覚要素と、第1面構造体210bの正六角平面216に付された視覚要素とが一致するよう第1面構造体210aおよび第1面構造体210bを組み合わせる。つまり、図10(a)の矢印で対になっているように色を一致させて組み合わせる。
【0044】
図10(b)において、正六角平面216が向かい合った面は、実施の形態1の図5におけるA層に相当し、第1面構造体210bの正三角平面214はB層に相当し、第1面構造体210aの正三角平面214はC層に相当する。図10(b)の面構造体に、さらに第1面構造体210bを追加したものが図10(c)の写真である((c)の写真では、(b)に追加したものを倒置している。)。下からACABと4層周期毎に続く構造が見て取れ、上から見ると6回対称を持っているところから、4H六方最密充填構造を表現していることとなる。
【0045】
図11は、第1面構造体210と第2面構造体220を組み合わせた構造物の例を示す。図11(a)は、第1面構造体210bと第2面構造体220とを、それぞれの正三角平面214および224を上にして並置した写真である。図11(b)は、図11(a)の第1面構造体210bと第2面構造体220とを、それぞれの正三角平面214および224を向かい合わせにして接するよう組み合わせた写真である。ここで、第1面構造体210bの正三角平面214に付された視覚要素と、第2面構造体220の正三角平面224に付された視覚要素とが一致するよう第1面構造体210bおよび第2面構造体220を組み合わせる。つまり、図11(a)の矢印で対になっているように色を一致させて組み合わせる。
【0046】
図11(b)において、正三角平面214および224が向かい合った面は、実施の形態1の図6におけるB層に相当し、第1面構造体210bの正六角平面216はA層に相当し、第2面構造体220の正三角平面224はC層に相当する。図11(b)の面構造体に、さらに第1面構造体210aを追加したものが図11(c)の写真である。下からABCAと3層周期毎に続く構造が見て取れ、3C立方最密充填構造を表現していることとなる。
【0047】
以上の通り、二つの第1面構造体210を組み合わせて2H六方最密充填構造または4H六方最密充填構造が表現され、第1面構造体210の一つを回転することで2H六方最密充填構造または4H六方最密充填構造の他方が表現される。また、第1面構造体210と第2面構造体220と組み合わせて3C立方最密充填構造が表現される。つまり、2以上の面構造体を組み合わせることで一の結晶構造を表現し、組み合わせの変更または一の構造体に対する他の構造体の相対的な回転により他の結晶構造を表現することができる。
【0048】
(実施の形態3)
図12は、本発明の構造物の一例である板構造体300を示す。図12(a)は、板構造体300の全体を示し、図12(b)および図12(c)は、板構造体300に描画されたものの一部を抜き出して示したものである。板構造体300は、透明または半透明の基板302を有し、単位正三角形304が隙間なく基板上に配置および描画されている。基板302を構成する材料は、透明および半透明な物質であり、機械的強度が保持されるものであれば特に限定されない。プラスチック、ガラス等が例示できる。なお、最下層に位置する基板は透明または半透明である必要はない。
【0049】
基板に描画された単位正三角形304の頂点は、結晶の格子点に対応し、単位正三角形304の頂点位置には、文字、記号、図形その他のマーク306が描画されている。マーク306に、4種類の色相、彩度、明度その他の視覚要素を、隣接するマーク306において同一の種類とならないよう付与できる。視覚要素については実施の形態1の場合と同様である。また、単位正三角形304の各頂点に位置するマーク306に付された視覚要素とは異なる視覚要素を単位正三角形304の占有領域308に付与する。
【0050】
マーク306に付されている視覚要素は、具体的には色である。図12において、青色を「B」、緑色を「G」、赤色を「R」、黄色を「Y」の標識を付して示している。また、占有領域308に付されている視覚要素も、具体的には色である。図12において、青色を「b」、緑色を「g」、赤色を「r」、黄色を「y」の標識を付して示している。ただし、占有領域308は下層が透過して見えることが好ましいので、占有領域308に付す色は、透過または半透過な薄い色であることが好ましい。
【0051】
図12(b)は、図12(a)の描画部を、単位正三角形304が6つの正六角形になるよう抜き出したものであり、実施の形態1における第2球構造体120(2層目の最密充填層)の正六角形に相当する。図12(c)は、図12(a)の描画部を、単位正三角形304が4つの正三角形になるよう抜き出したものであり、実施の形態1における第1球構造体110(1層目または3層目の最密充填層)の正三角形に相当する。
【0052】
図13は、三つの板構造体300を組み合わせた構造物の例を示す。図13(a)に示すように、単位正三角形304が4つの正三角形を含む板構造体300aを配置し、単位正三角形304が6つの正六角形を含む板構造体300bを板構造体300aの上に重ねる。このとき、板構造体300aの占有領域308に付された視覚要素と、板構造体300bのマーク306に付された視覚要素とが同じになるよう板構造体300bと板構造体300aとを重ねる。重ねた結果が図13(b)である。さらに、単位正三角形304が4つの正三角形を含む板構造体300cを板構造体300bの上に重ねる。このとき、板構造体300bの占有領域308に付された視覚要素と、板構造体300cのマーク306に付された視覚要素とが同じになるよう板構造体300cと板構造体300bとを重ねる。重ねた結果が図13(c)である。なお、図13(c)において、板構造体300cと板構造体300aとが重なってしまうため、図面を見やすくする観点から板構造体300cを少しずらして表示している。
【0053】
図13(c)に示すように、1層目と3層目の最密充填層は上から見て一致しており、実施の形態1の図4の構造物に相当する。すなわち、ABABAと2層周期毎に続く2H六方最密充填構造を表現している。
【0054】
図14は、三つの板構造体300を組み合わせた構造物の例を示す。図14(a)および図14(b)は図13(a)および図13(b)と同じである。ここでは、図14(c)の板構造体300cを180°回転した板構造体300dを板構造体300bの上に重ねる。このとき、板構造体300bの占有領域308に付された視覚要素と、板構造体300dのマーク306に付された視覚要素とが同じになるよう板構造体300dと板構造体300bとを重ねる。重ねた結果が図14(c)である。
【0055】
図14(c)に示すように、1層目のマークが位置する場所を3層目のマークが位置する場所は相違しており、実施の形態1の図5の構造物に相当する。すなわち、ABACAと4層周期毎に続く4H六方最密充填構造を表現している。
【0056】
図15は、二つの板構造体300を組み合わせた構造物の例を示す。図15(a)に示すように、単位正三角形304が4つの正三角形を含む板構造体300aを配置し、図14(c)の板構造体300cを180°回転した板構造体300dを板構造体300bの上に重ねる。このとき、板構造体300aの占有領域308に付された視覚要素と、板構造体300dのマーク306に付された視覚要素とが同じになるよう板構造体300aと板構造体300dとを重ねる。重ねた結果が図15(b)である。
【0057】
図15(b)に示す構造は、実施の形態1における2層目の最密充填層が抜けた構造であり、実施の形態1の図6の構造物に相当する。すなわち、ABCABCAと3層周期毎に続く3C立方最密充填構造を表現している。
【0058】
以上の通り、複数の板構造体300を、相対位置を変えて重ね合わせることで、3C立方最密充填構造、2H六方最密充填構造または4H六方最密充填構造が表現される。つまり、2以上の板構造体を組み合わせることで一の結晶構造を表現し、組み合わせの変更または一の構造体に対する他の構造体の相対的な回転または移動により他の結晶構造を表現することができる。
【0059】
以上説明のとおり、実施の形態1〜3の構造物によれば、複数種類の結晶最密充填構造を統一的かつ簡単に表現することができる。この結果、結晶の空間構造を視覚的に把握することができ、最密充填構造の結晶多形の相違を容易に理解することができるようになる。また、当該構造物は、審美性にも優れており、結晶の空間構造を複数種類について簡単に変更し観賞することができる。
【0060】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0061】
100…球構造体、102…球体、104…小球体、106…外殻、110…第1球構造体、112…三角平面層、114…頂点球体、116…3個球体、120…第2球構造体、122…中心球体、124…周辺球体、130…台紙、200…面構造体、202…単位三角平面、210…第1面構造体、210a…第1面構造体、210b…第1面構造体、214…正三角平面、216…正六角平面、218…平面、220…第2面構造体、224…正三角平面、228…平面、300…板構造体、300a…板構造体、300b…板構造体、300c…板構造体、300d…板構造体、302…基板、304…単位正三角形、306…マーク、308…占有領域、D…空隙、U…空隙。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15