【解決手段】高電圧発生部と、ワードラインが接続されてマトリクス状に配置された複数のメモリセルと、前記メモリセルを有して構成される第1記憶領域と、前記メモリセルを有して構成される第2記憶領域と、前記高電圧発生部の出力電圧に基づいて前記ワードラインを選択するワードラインドライバと、前記ワードラインドライバにより前記第1記憶領域に含まれる書込み対象アドレスに対応する前記ワードラインが選択された状態において前記出力電圧の状態を検知する電圧検知部と、前記電圧検知部により前記出力電圧の異常低下が検知されると、前記第2記憶領域に書込み対象データを書き込む制御を行う制御部と、を備える半導体記憶装置としている。
前記制御部は、前記書込み対象アドレスに対応する前記ワードラインに含まれる前記書込み対象アドレス以外のアドレスから読み出されたデータを、前記書込み対象データに加えて前記第2記憶領域に書き込む制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の半導体記憶装置。
前記制御部は、前記書込み対象アドレスに対応する前記ワードラインに含まれる全てのアドレスから読み出されたデータのうち、前記書込み対象アドレスに記憶されたデータを前記書込み対象データに置き換えたデータを前記第2記憶領域に書き込む制御を行うことを特徴とする請求項2に記載の半導体記憶装置。
前記高電圧発生部において電源電圧を昇圧して生成される前記出力電圧と、前記電源電圧とのうちいずれかを前記制御部による制御に基づいて選択して前記ワードラインドライバに出力する高電圧制御回路を更に備えることを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の半導体記憶装置。
EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)であることを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の半導体記憶装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、高電圧をワードラインに印加する際は、メモリ周辺に設けられる回路であるワードラインドライバを用いるが、ワードラインドライバに偶発的な耐圧不良が発生した場合、高電圧が低下する場合があった。この場合、メモリセルのフローティングゲートへの電荷の注入やフローティングゲートからの電荷の引抜きが十分に行われず、イレース処理やライト処理を含めた書き込み処理に不良が生じる。
【0007】
なお、従来、ECC(Error Check and Correct)機能を有したメモリが存在するが、当該機能はビットエラー訂正を目的としており、上記のようなワードラインドライバにおける不具合により高電圧が低下した場合の書き込み不良を抑制することを目的としていない。
【0008】
上記問題点に鑑み、本発明は、ワードラインドライバにおける不具合によって高電圧が低下した場合でも、正常な書き込みを行える半導体記憶装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明の一態様に係る半導体記憶装置は、
高電圧発生部と、
ワードラインが接続されてマトリクス状に配置された複数のメモリセルと、
前記メモリセルを有して構成される第1記憶領域と、
前記メモリセルを有して構成される第2記憶領域と、
前記高電圧発生部の出力電圧に基づいて前記ワードラインを選択するワードラインドライバと、
前記ワードラインドライバにより前記第1記憶領域に含まれる書込み対象アドレスに対応する前記ワードラインが選択された状態において前記出力電圧の状態を検知する電圧検知部と、
前記電圧検知部により前記出力電圧の異常低下が検知されると、前記第2記憶領域に書込み対象データを書き込む制御を行う制御部と、
を備える構成としている(第1の構成)。
【0010】
また、前記第1の構成において、前記制御部は、前記書込み対象アドレスに対応する前記ワードラインに含まれる前記書込み対象アドレス以外のアドレスから読み出されたデータを、前記書込み対象データに加えて前記第2記憶領域に書き込む制御を行うこととしてもよい(第2の構成)。
【0011】
また、上記第2の構成において、前記制御部は、前記書込み対象アドレスに対応する前記ワードラインに含まれる全てのアドレスから読み出されたデータのうち、前記書込み対象アドレスに記憶されたデータを前記書込み対象データに置き換えたデータを前記第2記憶領域に書き込む制御を行うこととしてもよい(第3の構成)。
【0012】
また、上記第1〜第3のいずれかの構成において、前記メモリセルを有して構成される第3記憶領域を更に備え、
前記制御部は、前記出力電圧の異常低下が検知された前記書込み対象アドレスである不良アドレスの記載されたデータを前記第3記憶領域に書き込む制御を行うこととしてもよい(第4の構成)。
【0013】
また、上記第4の構成において、前記制御部は、書込みコマンドを受けると、今回の書込み対象アドレスが前記不良アドレスと同一ワードラインに属するかを判定する判定部と、
前記判定部により属していると判定された場合は、前記今回の書込み対象アドレスを、そのアドレスに対応する前記第2記憶領域におけるアドレスに補正する補正部と、を有し、
補正後のアドレスに書込み対象データを書き込むよう制御することとしてもよい(第5の構成)。
【0014】
また、上記第1〜第5のいずれかの構成において、前記高電圧発生部は、
昇圧回路と、
前記昇圧回路の出力電圧が基準値を上回るとその旨の出力信号を出力するクランプ回路と、
前記出力信号に基づき前記出力電圧を抑制するよう前記昇圧回路を制御する制御回路と、を有し、
前記電圧検知部は、前記出力信号に基づき前記出力電圧の異常低下を検知することとしてもよい(第6の構成)。
【0015】
また、上記第6の構成において、前記クランプ回路は、
前記昇圧回路の出力電圧の印加端にカソードが接続されるダイオードと、
定電流回路と、
前記ダイオードのアノードに電流入力側が接続され、前記定電流回路に電流出力側が接続されるカレントミラーと、
前記定電流回路と前記カレントミラーとの接続点に入力端が接続されて前記出力信号を出力するインバータと、を有することとしてもよい(第7の構成)。
【0016】
また、上記第1〜第7のいずれかの構成において、前記高電圧発生部において電源電圧を昇圧して生成される前記出力電圧と、前記電源電圧とのうちいずれかを前記制御部による制御に基づいて選択して前記ワードラインドライバに出力する高電圧制御回路を更に備えることとしてもよい(第8の構成)。
【0017】
また、上記第1〜第8のいずれかの構成の半導体記憶装置は、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)であることが特に好適である(第9の構成)。
【0018】
また、本発明の別態様に係る車載用電子機器は、上記第1〜第9のいずれかの構成の半導体記憶装置を備えることとしている。
【発明の効果】
【0019】
本発明によると、ワードラインドライバにおける不具合によって高電圧が低下した場合でも、正常な書き込みを行える。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。ここでは、半導体記憶装置の一例としてEEPROMを挙げて説明する。
【0022】
<EEPROMの構成>
図1は、本発明の一実施形態に係るEEPROMの全体構成を示すブロック図である。
図1に示すEEPROM50は、高電圧発生回路1と、Y方向高電圧制御回路2と、X方向高電圧制御回路3と、制御部4と、アドレスデコーダ5と、記憶部6と、X方向デコーダ7と、ワードラインドライバ8と、Y方向デコーダ9と、カラムラッチ10と、ページバッファ11と、を備えている。
【0023】
高電圧発生回路1は、チャージポンプ1Aと、クランプ回路1Bと、制御回路1Cと、を有している。
図2は、高電圧発生回路1の構成例を示す図である。チャージポンプ1Aは、電源電圧Vccを昇圧して電圧Vppを出力する。電圧Vppは、高電圧である例えば15V〜20V程度である。
【0024】
クランプ回路1Bは、ダイオードD1と、MOSトランジスタM1と、MOSトランジスタM2と、定電流回路Ic1と、インバータIv1と、を有している。ダイオードD1のカソードは、電圧Vppの出力されるラインL1に接続され、アノードはMOSトランジスタM1のドレインに接続される。ゲートとドレインが短絡されたMOSトランジスタM1と、MOSトランジスタM2によりカレントミラーが構成される。定電流回路Ic1は、ラインL1とMOSトランジスタM2のドレインとの間に接続される。定電流回路Ic1とMOSトランジスタM2との接続点には、インバータIv1の入力端が接続される。インバータIv1の出力信号Soutは制御回路1Cに入力される。
【0025】
クランプ回路1Bの動作について説明すると、ダイオードD1に電圧Vppによる逆方向電圧が印加され、これによりダイオードD1に電流Idが流れる。電流Idはカレントミラーによってミラーリングされ、電流I2が出力される。定電流回路Ic1による定電流I1と電流I2とのバランスによってインバータIv1の出力信号Soutのレベルが切替わる。
【0026】
電圧Vppが基準値(例えば15V)以下の場合、電流I2は電流I1よりも小さくなり、インバータIv1の出力信号SoutはLowレベルとなる。そして、電圧Vppが基準値を上回ると、電流I2が電流I1よりも大きくなり、インバータIv1の出力信号SoutはHighレベルとなる。制御回路1Cは、インバータIv1の出力信号SoutがLowレベルからHighレベルに切替わったことを検知すると、電圧Vppを抑制すべくチャージポンプ1Aを制御する。このようにして、クランプ回路1Bからのフィードバックによって電圧Vppは一定に維持され、出力端T1から出力される。なお、インバータIv1の出力信号Soutは、出力端T2から制御部4に含まれる電圧検知部4A(
図1)へ出力可能であり、これについては後述する。
【0027】
X方向高電圧制御回路3は、制御部4からの制御信号に応じて、高電圧発生回路1から出力される電圧Vppと、電源電圧Vccとのうちいずれかを電圧V1としてワードラインドライバ8に出力する。
【0028】
Y方向高電圧制御回路2は、制御部4からの制御信号に応じて、高電圧発生回路1から出力される電圧Vppと、電源電圧Vccとのうちいずれかを電圧V2、V3として、それぞれをカラムラッチ10、ページバッファ11へ出力する。
【0029】
記憶部6は、ワードラインおよびビットラインが接続されてマトリクス状に配置される複数のメモリセル(
図1では不図示)から構成される。単体のメモリセルは、情報の最小単位である「0」または「1」から成る1ビットのデータを保持するために必要な回路構成である。記憶部6は、通常の書き込みに使用する所定の第1記憶領域6Aと、非常用の所定の第2記録領域6Bおよび第3記憶領域6Cと、を有する。
【0030】
アドレスデコーダ5は、制御部4から入力されるアドレスデータをデコードし、X方向位置データをX方向デコーダ7へ、Y方向位置データをY方向デコーダ9へそれぞれ出力する。
【0031】
X方向デコーダ7は、入力されるX方向位置データに基づいて記憶部6のX方向のアドレス制御を行う。X方向とはワードラインの方向(行方向)である。ワードラインドライバ8は、X方向デコーダ7のアドレス制御に基づいてワードラインを駆動する。
【0032】
Y方向デコーダ9は、入力されるY方向位置データに基づいて記憶部6のY方向のアドレス制御を行う。Y方向とはビットラインの方向(列方向)である。カラムラッチ10およびページバッファ11は、Y方向デコーダ9のアドレス制御に基づいてコントロールラインおよびビットラインを駆動する。
【0033】
図3は、記憶部6におけるメモリセル構成の一部を具体的に示す図である。
図3に示すように、記憶部6は、複数のメモリセル61がマトリクス状に配列されて構成される。単体のメモリセル61は、直列に接続された選択トランジスタSTとメモリトランジスタMTから構成される。このようなメモリセル61がワードラインの方向に8個配列されて一つのメモリセル群611が構成される。メモリセル群611は、一つのアドレスに対応する8ビットの記憶領域に相当する。記憶部6は、メモリセル群611がm行×n列で配列されて構成される。
【0034】
ワードラインドライバ8の駆動ラインとして、m本のワードラインWL1〜WLmが配線される。1本のワードラインWLは、1行分のn個の各メモリセル群611における各選択トランジスタSTのゲートに共通接続されている。
【0035】
カラムラッチ10の駆動ラインとして、n本の選択ラインSL1〜SLnが配線される。1本の選択ラインSLは、1列分のm個の各メモリセル群611における各スイッチトランジスタMTのコントロールゲートと、m個の各選択スイッチSWおよびコントロールラインCLを介して接続される。1行分の各選択スイッチSWのゲートは、1本のワードラインWLに共通接続される。
【0036】
ページバッファ11の駆動ラインとして、8本のビットラインBL1〜BL8が1列分のm個のメモリセル群611に対して配線される。8本分のビットラインBLから成る単位がワードラインの方向にn個配列されて配線される。各ビットラインBLは、1列分のm個のメモリセル61における各選択トランジスタSTのドレインに共通接続される。
【0037】
また、m本のソースラインSCL1〜SCLmが列方向に配列されて配線される。1行分の各メモリセル群611における各メモリトランジスタMTのソースは、1本のソースラインSCLに共通接続されている。
【0038】
図4は、ワードラインドライバ8の構成を示す図である。ワードラインドライバ8は、ワードラインWL1〜WLmに対応して、m個の切替部S81〜S8mを有している。各切替部S8には、X方向高電圧制御回路3から電圧V1が印加される。X方向デコーダ7の制御によって、各切替部S8は、電圧V1または接地電位を対応するワードラインWLに出力することを切替える。
【0039】
図5は、カラムラッチ10の構成を示す図である。カラムラッチ10は、選択ラインSL1〜SLnに対応して、n個の切替部S91〜S9nを有している。各切替部S9には、Y方向高電圧制御回路2から電圧V2が印加される。Y方向デコーダ9の制御によって、各切替部S9は、電圧V2または接地電位を対応する選択ラインSLに出力することを切替える。
【0040】
なお、ページバッファ11については、図示はしないが
図5と同様の構成であり、8×n本分の各ビットラインBLに対応して、同数の切替部を有し、各切替部はY方向高電圧制御回路2からの電圧V3または接地電位を対応するビットラインBLに出力することを切替える。
【0041】
このような構成により、ワードラインドライバ8によっていずれかのワードラインWLに対して電圧V1として高電圧である電圧Vppを出力することで当該ワードラインWLが選択される。すると、選択されたワードラインWLに対応した1行分の各メモリセル群611における選択トランジスタSTがオンとされると共に、選択されたワードラインWLに対応した選択スイッチSWがオンとされる。
【0042】
この状態で、カラムラッチ10によっていずれかの選択ラインSLに対して電圧V2として高電圧である電圧Vppを出力することで当該選択ラインSLが選択されると、当該選択された選択ラインSLからオンとなっている選択スイッチSWおよびコントロールラインCLを介して、対象のメモリセル群611における各メモリトランジスタMTのコントロールゲートに高電圧である電圧Vppが印加される。また、選択されたワードラインWLに対応するソースラインSCLには、接地電位が印加される。それと共に、上記対象のメモリセル群611に対応するビットラインBLにページバッファ11によって接地電位が印加される。これにより、上記対象のメモリセル群611における各メモリトランジスタMTのフローティングゲートに電子が注入されるイレース処理が行われる。イレース処理は、「1」が書き込まれることに相当する。
【0043】
また、上記のようなワードラインが選択された状態で、カラムラッチ10によっていずれかの選択ラインSLに対して接地電位を出力することで当該選択ラインSLが選択されると、当該選択された選択ラインSLからオンとなっている選択スイッチSWおよびコントロールラインCLを介して、対象のメモリセル群611における各メモリトランジスタMTのコントロールゲートに接地電位が印加される。また、選択されたワードラインWLに対応するソースラインSCLはオープンとされる。それと共に、上記対象のメモリセル群611に対応するビットラインBLにページバッファ11によって電圧V3として高電圧である電圧Vppが出力される。これにより、上記対象のメモリセル群611における各メモリトランジスタMTのフローティングゲートから電子が引抜かれ、ライト処理が行われる。ライト処理は、「0」が書き込まれることに相当する。
【0044】
このようにして、対象アドレスに対応する記憶領域としてのメモリセル群611に対する書き込み処理が行われる。
【0045】
<書込み処理の流れ>
次に、上記のような構成としたEEPROM50における書込み処理の流れについて、
図6に示すフローチャートも参照して説明する。
【0046】
図6に示すフローチャートは、制御部4が、書込みコマンド、書込み対象のアドレス(メモリセル群611のアドレス)、および書き込むデータを受信した場合に開始される。このアドレスは、記憶部6における通常時に使用される第1記憶領域6Aに含まれるメモリセル群611のアドレスである(例えば
図1に示すアドレスAD)。
【0047】
ここで、
図7に、電圧V1〜V3の波形例を示す。電圧V1〜V3が共に電源電圧Vccであるタイミングt1にてステップS1が行われる。ステップS1で、制御部4がアドレスデコーダ5に送ったアドレスに基づき、X方向デコーダ7は、上記アドレスに対応するワードラインWLを選択すべく、ワードラインドライバ8を制御する。このとき、いずれかの切替部S8(
図4)が電源電圧Vcc(電圧V1)を選択するワードラインWLに印加させる。また、Y方向デコーダ9の制御により、カラムラッチ10は全ての選択ラインSLをオープンとし、ページバッファ11は全てのビットラインBLをオープンとする。これにより、選択されたワードラインWLに対応するメモリセル群611に書き込みが行われることを抑止する。
【0048】
そして、
図7におけるタイミングt2にて、ステップS2が行われる。ステップS2で、制御部4がX方向高電圧制御回路3を制御することによって、電圧V1〜V3のうち電圧V1のみ電圧Vppに上昇する。これにより、上記で選択されたワードラインWLに電圧Vpp(電圧V1)が印加される。
【0049】
ここで、通常であれば、電圧Vppは上述のクランプ回路1Bの作用により、基準値を上回ることと基準値以下となることを繰り返すので(
図7の電圧V1の実線)、インバータIv1(
図2)の出力信号SoutはHighレベルとLowレベルを繰り返す。しかしながら、もし切替部S8を構成する素子等に偶発的に耐圧不良が生じている場合、電圧Vppが低下して基準値以下に維持されることが起こりうる(
図7の電圧V1の破線)。この場合、出力信号Soutは、Lowレベルを維持することとなる。
【0050】
即ち、出力信号Soutの挙動によって電圧Vppの状態を検知できる。そこで、ステップS3において、制御部4に含まれる電圧検知部4Aは、出力信号Soutに基づき電圧Vppが基準値以下を維持する異常状態であるか否かを検知する。
【0051】
もし、電圧Vppが正常である場合は(ステップS3のN)、書き込みを正常に行うことができるので、ステップS4に進む。ステップS4の処理は、電圧V1が電源電圧Vccとされている
図7に示すタイミングt3以降の処理となる。タイミングt3において、制御部4がアドレスデコーダ5に送ったアドレスに基づき、X方向デコーダ7は、上記アドレスに対応するワードラインWLを選択すべく、ワードラインドライバ8を制御する。このとき、選択されたワードラインWLに電源電圧Vcc(電圧V1)が印加される。また、制御部4がアドレスデコーダ5に送ったアドレスに基づき、Y方向デコーダ9は、上記アドレスに対応する選択ラインSLを選択すべく、カラムラッチ10を制御する。このとき、選択された選択ラインSLに電源電圧Vcc(電圧V2)が印加される。
【0052】
そして、
図7のタイミングt4にて、制御部4がX方向高電圧制御回路3およびY方向高電圧制御回路2を制御することによって、電圧V1〜V3のうち電圧V1および電圧V2のみ電圧Vppに上昇する。これにより、選択されたワードラインWLおよび選択ラインSLに電圧Vppが印加される。このとき、制御部4がアドレスデコーダ5に送ったアドレスに基づき、Y方向デコーダ9は、上記アドレスに対応するビットラインBL1〜BL8の一組を選択すべく、ページバッファ11を制御する。このとき、選択されたビットラインBL1〜BL8に接地電位が印加される。
【0053】
これにより、対象のアドレスに対応するメモリセル群611における8ビット分のメモリトランジスタMTのフローティングゲートに電子が十分に注入され、8ビット分のイレース処理が行われる(8ビット分の「1」の書き込み)。
【0054】
その後、電圧V1および電圧V2ともに電源電圧Vccとされているタイミングt5において、制御部4がアドレスデコーダ5に送ったアドレスに基づき、X方向デコーダ7は、上記アドレスに対応するワードラインWLを選択すべく、ワードラインドライバ8を制御する。このとき、選択されたワードラインWLに電源電圧Vcc(電圧V1)が印加される。また、制御部4がアドレスデコーダ5に送ったアドレスに基づき、Y方向デコーダ9は、上記アドレスに対応する選択ラインSLを選択すべく、カラムラッチ10を制御する。このとき、選択された選択ラインSLに接地電位が印加される。
【0055】
そして、
図7のタイミングt6にて、制御部4がX方向高電圧制御回路3およびY方向高電圧制御回路2を制御することによって、電圧V1〜V3のうち電圧V1および電圧V3のみ電圧Vppに上昇する。これにより、選択されたワードラインWLに電圧Vppが印加される。このとき、制御部4がアドレスデコーダ5に送ったアドレスに基づき、Y方向デコーダ9は、上記アドレスに対応するビットラインBL1〜BL8の一組のうち、所望のビットラインBLを選択すべく、ページバッファ11を制御する。このとき、選択されたビットラインBL1〜BL8に電圧Vpp(電圧V3)が印加される。
【0056】
これにより、対象のアドレスのメモリセル群611における8ビット分のメモリトランジスタMTのうち、所望のメモリトランジスタMTのみのフローティングゲートから電子が引抜かれる。つまり、所望のビット箇所にのみ「0」が書き込まれるライト処理が行われる。
【0057】
以上のように、ステップS4では、対象のアドレスに対応するメモリセル群611において、一旦、イレース処理により8ビット分全てに「1」を書き込んだ後、ライト処理により所望のビット箇所にのみ「0」を書き込むことにより、書込み対象のデータを第1記憶領域6Aの対象アドレス箇所に書き込むことが可能となる。 ステップS4により、処理は終了となる(エンド)。
【0058】
一方、ステップS3において、電圧Vppが基準値以下を維持している異常状態である場合(ステップS3のY)、書込み処理が正常に行えないので、ステップS5に進む。ステップS5は、電圧V1が電源電圧Vccとされている
図7のタイミングt3にて行われる。
【0059】
ステップS5では、制御部4がアドレスデコーダ5に送ったアドレスに基づき、X方向デコーダ7は、上記アドレスに対応するワードラインWLを選択すべく、ワードラインドライバ8を制御する。これにより、選択されたワードラインWLに電源電圧Vcc(電圧V1)が印加される。このとき、Y方向デコーダ9の制御により、カラムラッチ10は、全ての選択ラインSLに接地電位を印加させる。
【0060】
この状態で、ページバッファ11は、全てのビットラインBL(8×n個)を通じて、選択されたワードラインWLの各メモリセル群611における各メモリトランジスタMTからデータを読み出す。つまり、選択されたワードラインWLに対応する1行分の記憶されたデータ(8×nビット)を読み出す。
【0061】
そして、ステップS6に進み、制御部4がアドレスデコーダ5に送った第2記憶領域6Bに対応するアドレスに基づき、X方向デコーダ7は、上記アドレスに対応するワードラインWLを選択すべく、ワードラインドライバ8を制御する。このとき、選択されたワードラインWLには電源電圧Vcc(電圧V1)が印加される。
【0062】
このとき、Y方向デコーダ9は、全ての選択ラインSL(n本)を選択すべく、カラムラッチ10を制御する。このとき、全ての選択ラインSLに電源電圧Vcc(電圧V2)が印加される。そして、
図7のタイミングt4にて、電圧V1および電圧V2は電圧Vppとされ、Y方向デコーダ9は、全てのビットラインBL(8×n本)を選択すべく、ページバッファ11を制御する。このとき、全てのビットラインBLに接地電位が印加される。
【0063】
これにより、1本のワードラインWL分の記憶領域として構成される第2記憶領域6Bにおける全てのメモリセル群611のイレース処理が行われる。即ち、第2記憶領域6Bにおいて、全てのビットが「1」である1行分のデータが書き込まれる。
【0064】
そして、電圧V1および電圧V2が電源電圧Vccとされている
図7のタイミングt5にて、制御部4がアドレスデコーダ5に送った第2記憶領域6Bに対応するアドレスに基づき、X方向デコーダ7は、上記アドレスに対応するワードラインWLを選択すべく、ワードラインドライバ8を制御する。このとき、選択されたワードラインWLには電源電圧Vcc(電圧V1)が印加される。
【0065】
このとき、Y方向デコーダ9は、全ての選択ラインSL(n本)を選択すべく、カラムラッチ10を制御する。このとき、全ての選択ラインSLに接地電位が印加される。そして、
図7のタイミングt6にて、電圧V1および電圧V3は電圧Vppとされ、Y方向デコーダ9は、ステップS5でページバッファ11によって読み出された1行分のデータにおいて書き込み対象アドレスの箇所のみ書き込むデータで置き換えたデータに基づき、全てのビットラインBL(8×n本)のうち所望のビットラインBLを選択すべく、ページバッファ11を制御する。このとき、選択されたビットラインBLに電圧Vpp(電圧V3)が印加される。これにより、所望のビットラインBLに対応するメモリトランジスタMTのみのフローティングゲートから電子が引抜かれる。
【0066】
これにより、第2記憶領域6Bにおいて、一旦イレース処理により1行分の「1」が書き込まれたデータにおいて、ライト処理により所望のビット箇所のみ「0」が書き込まれる。従って、第1記憶領域6Aにおける電圧Vppが異常となるワードラインWLに対応する領域からデータを読み出し、そのデータのうち書き込み対象アドレスの箇所のみ書き込むデータで置き換えたようなデータを第2記憶領域6Bに記憶させることができる。即ち、異常が生じたワードラインWLの箇所のデータを第2記憶領域6Bに退避させつつ、書込み対象のデータを正常に第2記憶領域6Bに書き込むことができる。
【0067】
その後、ステップS7に進み、制御部4の制御により、今回の書込み対象アドレス、即ち不良アドレスが記載されたデータを第3記憶領域6Cの所定アドレスに書き込む。このとき、以上説明したものと同様に、イレース処理とライト処理の一連の処理により書き込みを行う。
【0068】
ステップS7で処理は終了となる(エンド)。以降、書込みコマンドを制御部4が受けるたびに、制御部4は第3記憶領域6Cに記憶された不良アドレスを確認し、今回の書込み対象アドレスが不良アドレスと同一ワードラインWLに属するかを判定する。もし、属している場合は、制御部4は、今回の書込み対象アドレスを、そのアドレスに対応する第2記憶領域6Bにおけるアドレスに補正し、補正後のアドレスに書込み対象データを書き込むよう制御する。これにより、正常な書き込み処理を継続することが可能となる。
【0069】
このように本実施形態によれば、ワードラインドライバにおける不具合によって高電圧が低下した場合でも、正常な書き込みを行うことができる。特にEEPROMでは、書込みに要する時間が規定されており、短時間で書き込むことが要請されるので、本実施形態は有効となる。
【0070】
<車両への適用>
図8は、EEPROMを搭載した車両の一構成例を示す外観図である。本構成例の車両Xは、バッテリX10と、バッテリX10から入力電圧の供給を受けて動作する種々の電子機器X11〜X18と、を搭載している。なお、
図8におけるバッテリX10および電子機器X11〜X18の搭載位置については、図示の便宜上、実際とは異なる場合がある。
【0071】
電子機器X11は、エンジンに関連する制御(インジェクション制御、電子スロットル制御、アイドリング制御、酸素センサヒータ制御、および、オートクルーズ制御など)を行うエンジンコントロールユニットである。
【0072】
電子機器X12は、HID[high intensity discharged lamp]やDRL[daytime running lamp]などの点消灯制御を行うランプコントロールユニットである。
【0073】
電子機器X13は、トランスミッションに関連する制御を行うトランスミッションコントロールユニットである。
【0074】
電子機器X14は、車両Xの運動に関連する制御(ABS[anti-lock brake system]制御、EPS[electric power steering]制御、電子サスペンション制御など)を行うボディコントロールユニットである。
【0075】
電子機器X15は、ドアロックや防犯アラームなどの駆動制御を行うセキュリティコントロールユニットである。
【0076】
電子機器X16は、ワイパー、電動ドアミラー、パワーウィンドウ、ダンパー(ショックアブソーバー)、電動サンルーフ、および、電動シートなど、標準装備品やメーカーオプション品として、工場出荷段階で車両Xに組み込まれている電子機器である。
【0077】
電子機器X17は、車載A/V[audio/visual]機器、カーナビゲーションシステム、および、ETC[electronic toll collection system]など、ユーザオプション品として任意で車両Xに装着される電子機器である。
【0078】
電子機器X18は、車載ブロア、オイルポンプ、ウォーターポンプ、バッテリ冷却ファンなど、高耐圧系モータを備えた電子機器である。
【0079】
なお、先に説明したEEPROMは、電子機器X11〜X18のいずれにも組み込むことが可能である。
【0080】
<その他>
なお、本発明の構成は、上記実施形態のほか、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。すなわち、上記実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきであり、本発明の技術的範囲は、上記実施形態の説明ではなく、特許請求の範囲によって示されるものであり、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。
【0081】
例えば、上記実施形態では第2記憶領域6Bは、1本のワードライン分の記憶領域としたが、2本、3本ほどのワードライン分の記憶領域として構成してもよい。