【課題】親機と子機との間で複数のチャンネルが利用可能なコードレス電話装置において、通話の品質の劣化が使用者に認識される前に、チャンネルを自動的に替えることにより、通話の品質を劣化させないようにする。
【解決手段】親機BS1から子機HS1へのMF番号(S15、S16)は、複数のチャンネルの通信状態の確認処理を行うタイミングを合わせるための同期信号として用い、親機BS1からのビーコン信号の送信タイミング(S17)と、子機HS1でのビーコン信号等を用いた各チャンネルの通信状態の確認処理の実行タイミング(S17)とを合わせる。通話に使用中のチャンネルよりも通信状態の良いチャンネルが見つかった場合には(S18)、そのチャンネルへの切り替えを子機HS1から親機BS1に要請し(S19)、通話中において、通話品質が劣化する前に通話に使用するチャンネルを変更する。
親機と子機とからなり、前記親機と前記子機との間では、周波数の異なる予め決められた複数のチャンネルから選択した1のチャンネルを通じて無線通信を行うコードレス電話装置であって、
前記子機は、
前記親機から所定のタイミングごとに送信されるタイミング情報を受信する第1の受信手段と、
前記第1の受信手段を通じて受信した前記タイミング情報に基づいて、前記複数のチャンネルの通信状態の確認タイミングが到来したか否かを判別する判別手段と、
前記判別手段で前記確認タイミングが到来したと判別した場合に、前記複数のチャンネルごとの信号を受信する第2の受信手段と、
前記第2の受信手段により受信された前記複数のチャンネルのそれぞれの信号に基づいて、前記複数のチャンネルのそれぞれの通信状態を検知する検知手段と、
通話中にあるときに、前記検知手段により現在使用しているチャンネルよりも通信状態の良いチャンネルが検知された場合に、当該通信状態の良いチャンネルへの切り替えを要求する第1の切替要求を形成して前記親機に送信する第1の要求送信手段と
を備え、
前記親機は、
所定のタイミングごとにタイミング情報を前記子機に送信する第1の送信手段と、
通話中において、前記子機が前記複数のチャンネルのそれぞれの通信状態を検知するタイミングが到来した場合に、通話に使用しているチャンネル以外のチャンネルを通じて通信状態の検知に利用するビーコン信号を送信する第2の送信手段と、
前記子機からの前記第1の切替要求を受信する第1の要求受信手段と、
前記第1の要求受信手段を通じて前記子機からの前記第1の切替要求を受信した場合であって、指示された通信状態の良いチャンネルへの切り替えが可能である場合に、当該チャンネルの切り替え処理を実行する第1の切替手段と
を備えることを特徴とするコードレス電話装置。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図を参照しながら、この発明のコードレス電話装置の一実施の形態について説明する。以下に説明する実施の形態においては、この発明を種々の企業の事務所などに形成されるいわゆるビジネスホンシステム(ボタン電話システム)と呼ばれる電話システムに適用した場合を例にして説明する。
【0018】
[電話システムの構成例]
図1は、この実施形態の電話システム10の全体の構成例を示すブロック図である。この例の電話システム10においては、上位装置の例としての主装置1に対して、内線電話装置として、この発明の一実施の形態が適用された複数のコードレス電話装置21、22、・・・、2n(nは2以上の整数。以下同じ)が接続されている。コードレス電話装置21〜2nのそれぞれは、親機としてのベースセットBS1、BS2、・・・、BSnのそれぞれと、子機としてのハンドセットHS1、HS2、・・・、HSnのそれぞれとからなり、親機BS1〜BSnのそれぞれと、子機HS1〜HSnのそれぞれとは、無線接続される。
【0019】
なお、親機BS1〜BSnのそれぞれに対しては、複数の子機を無線接続することも可能であるが、この例では、1台の親機に対して、1台の子機が接続される構成とされている。また、図示は省略するが、主装置1に接続される内線電話装置としては、コードレス電話装置21、22、・・・、2nのみではなく、通常のビジネスホンと同様に、デジタルボタン電話端末も接続することも可能である。
【0020】
そして、この実施形態では、コードレス電話装置21〜2nの親機BS1〜BSnのそれぞれと、子機HS1〜HSnのそれぞれとの間の無線接続は、前述したデジタルコードレス電話のDECT規格(方式)を用いたTDMA/TDD方式により行うようにしている。
【0021】
主装置1は、1又は複数の電話回線L1〜Lm(mは1以上の整数)を収容可能である。そして、コードレス電話装置21〜2nのそれぞれの親機BS1〜BSnが、この主装置1に接続されている。
図1の例では、親機BS1〜BSnと主装置1とは有線で接続されているが、無線であってもよい。主装置1は、複数のコードレス電話装置21〜2nについての呼制御及び回線交換制御、その他のビジネスホンとしての制御を行う。
【0022】
コードレス電話装置21〜2nの親機BS1〜BSnのそれぞれは、DECT規格のデジタルコードレス電話の単位通信期間である1フレーム(10ミリ秒(ms))の周期の同期信号としてのフレーム同期信号を生成し、その生成したフレーム同期信号に基づいて、DECT規格を用いたTDMA/TDD方式の無線通信を子機HS1〜HSnとの間で実行する。
【0023】
そして、この実施形態のコードレス電話装置21〜2nでは、親機と子機とが協働することによって、子機において所定のタイミングごとに通信に使用可能な5つのチャンネルの全てについて通信状態を確認するためのいわゆるスキャニング処理を実行する。通話中において通話品質が劣化する前であっても、通信状態のより良いチャンネルへの切り替えを可能にすることによって、通話品質の劣化を防止するためである。
【0024】
通常、1つのチャンネルの通信状態を確認するためには、20ミリ秒提示の時間が必要であり、5チャンネルのそれぞれについて順番に通信状態の確認処理を行った場合には100ミリ秒の時間が必要になる。しかし、スキャニングの実施頻度が高いと消費電力の増加に繋がる。そこで、この実施形態のコードレス電話装置21〜2nでは、10秒周期でチャンネルのスキャニング処理を実行する。このため、親機BS1〜BSnのそれぞれは、160ミリ秒周期でタイミング情報としてDECT規格の通信方式で用いられているマルチフレーム番号を子機に送信する。
【0025】
マルチフレーム番号は、160ミリ秒ごとに1インクリメントされるものである。したがって、マルチフレーム番号の値が62増えるごとに9920ミリ秒経過したことが把握できる。そして、チャンネルのスキャニング処理には100ミリ秒程度の時間が掛かるので、マルチフレーム番号が62増えるごとにチャンネルのスキャニング処理を行うことによって、ほぼ10秒に1回の周期で、チャンネルのスキャニング処理を行える。また、この10秒の周期(マルチフレーム番号が62増えるごとの周期)は、親機BS1〜BSnにおいても把握できる。
【0026】
そこで、子機HS1〜HSnにおいてチャンネルのスキャニング処理を実行するタイミングで、対応する親機BS1〜BSnのそれぞれが通話中以外のチャンネルでビーコン信号を送信する。これにより、親機BS1〜BSnからのビーコン信号の送信タイミングと、対応する子機HS1〜HSnでのチャンネルスキャニング処理の実行タイミングとの同期を合わせることが可能となり、適切に各チャンネルの通信状態を把握できる。そして、通信状態の良好なチャンネルへの切り替えを実現できる。
【0027】
なお、この実施形態のコードレス電話装置21〜2nにおいては、上述したようなチャンネルのスキャニング処理に応じた通話チャンネルの切り替え処理に加えて、CRCエラー値が閾値を超えた場合に、通話チャンネルの切り替え処理を実施する機能も備えている。以下に、この実施形態の電話システム10を構成する主装置1、親機BS1〜BSn、子機HS1〜HSnのそれぞれの構成例について説明する。
【0028】
[主装置1の構成例;
図2]
図2は、主装置1の構成例を示すブロック図である。
図2に示すように、主装置1は、電話回線L1〜Lmが接続される回線インターフェース11と、コンピュータを搭載して、主装置1の全体を制御するための制御回路12と、回線LSI(Large Scale Integrated Circuit)部13と、基準発振器14とを備えて構成されている。
【0029】
回線インターフェース11は、制御回路12からの制御により、回線L1〜Lmからの音声信号(受話音声信号)は、回線LSI部13に供給し、回線からの呼制御信号などの制御信号は、制御回路12に供給する。また、回線インターフェース11は、制御回路12からの制御により、回線LSI部13からの音声信号(送話音声信号)は、回線L1〜Lmを通じて相手方に送信し、制御回路12からの呼制御信号などの制御信号も、回線L1〜Lmを通じて相手方に送信する。
【0030】
回線LSI部13は、n個の内線電話装置に対応して、n個の内線処理回路131,132,・・・,13nと、タイミング信号生成部130を備える。タイミング信号生成部130には、水晶振動子を用いた高精度の基準発振器14からの基準クロック信号から伝送用クロック信号CK及び多重化/分割化用タイミング信号TMを生成し、n個の内線処理回路131〜13nに供給する。
【0031】
n個の内線処理回路131〜13nは、全く同一の構成を備えるもので、それぞれ、音声信号処理部31と、制御信号処理部32と、多重化/分割化処理部34とからなる。音声信号処理部31は、回線インターフェース11に接続されると共に、多重化/分割化処理部34に接続されており、回線インターフェース11からの受話音声信号及び多重化/分割化処理部34からの送話音声信号の処理回路である。この音声信号処理部31には、タイミング信号生成部130からの伝送用クロック信号CKが供給されている。
【0032】
制御信号処理部32は、制御回路12の制御信号入出力端に接続されると共に、多重化/分割化処理部34に接続されており、発信時及び着信時、また、終話時などにおける呼制御信号などの制御信号(主装置1からコードレス電話装置への制御信号と、コードレス電話装置から主装置1への制御信号の両方)の処理回路である。この制御信号処理部32にも、タイミング信号生成部130からの伝送用クロック信号CKが供給されている。
【0033】
多重化/分割化処理部34は、音声信号処理部31、制御信号処理部32に接続されると共に、コードレス電話装置21〜2nの親機BS1〜BSnのそれぞれに接続される。そして、多重化/分割化処理部34は、タイミング信号生成部130からのタイミング信号TMに基づいて、音声信号処理部31からの音声信号と、制御信号処理部32からの制御信号とを多重化(時分割多重)して多重化信号を生成し、その生成した多重化信号を親機BS1〜BSnのそれぞれに供給する。
【0034】
また、多重化/分割化処理部34は、タイミング信号生成部130からのタイミング信号TMに基づいて、親機BS1〜BSnのそれぞれからの多重化信号を音声信号と制御信号とに分割して、音声信号は音声信号処理部31に、制御信号は制御信号処理部32に、それぞれ供給する。なお。多重化/分割化処理部34は、送出する信号のパケット化処理及び受信した信号のパケット分割処理も行うことができるものである。
【0035】
また、図示しないが、主装置1には、アドレス管理部も接続されている。アドレス管理部は、主装置1に接続されているコードレス電話装置21〜2nの内線番号と内線処理回路131〜13nのそれぞれとの対応を記憶管理する。この実施形態の電話システム10においては、主装置1にコードレス電話装置21〜2nのいずれかが接続された時に、そのコードレス電話装置の親機は、主装置1に対して接続要求を送る。
【0036】
主装置1は、そのコードレス電話装置の親機からの接続要求を制御信号として受けた内線処理回路が内線処理回路131〜13nの内のいずれであるかを検知することにより、コードレス電話装置が接続された内線処理回路を検知する。そして、制御回路12は、設置工事者や管理者等により設定された内線番号、あるいは自動的に設定された内線番号と、コードレス電話装置が接続された内線処理回路の識別情報とを対応付けてアドレス管理部に登録する。
【0037】
このアドレス管理部の情報に基づいて、主装置1に接続されたコードレス電話装置の動作状況などを適切に把握することができると共に、主装置1に接続されたコードレス電話装置のそれぞれを適切に制御できる。
【0038】
[コードレス電話装置21〜2nの構成例]
複数個のコードレス電話装置21〜2nの親機BS1〜BSn及び子機HS1〜HSnのそれぞれは、全て同じ構成を備える。そこで、以下の説明では、コードレス電話装置21の親機BS1及び子機HS1の場合を例にとって、親機及び子機の構成例を説明する。
【0039】
<親機の構成例;
図3>
図3は、親機BS1の構成例を示すブロック図である。この
図3に示すように、親機BS1は、親機BS1の全体を制御するための制御回路41と、回線LSI部42と、無線通信回路44と、発振器45及び46とを備えて構成されている。制御回路41は、コンピュータを搭載して構成されている。そして、制御回路41は、この親機BS1における呼制御などの制御を行う機能を備える。
【0040】
回線LSI部42は、主装置1との間で音声信号及び制御信号のやり取りをするための回路であり、分割化/多重化処理部421と、制御信号処理部422と、音声信号処理部423と、PLL(Phase locked Loop)部425とからなる。PLL部425には、発振器45からの基準周波数の発振信号が供給されると共に、主装置1からの多重化信号が供給される。この例では、発振器45の発振信号の周波数は、例えば2048MHz(0.488ナノ秒(ns))とされている。
【0041】
PLL部425は、主装置1からの多重化信号から、いわゆるセルフクロッキングにより、主装置1のタイミング信号生成部からのクロック信号CKの成分を抽出し、その抽出したクロック信号CK成分と発振器45からの発振信号とを位相比較して、その比較結果に基づいて、発振器45の発振信号から、クロック信号CK成分に同期する親機BS1のシステムクロック信号SCKを生成する。
【0042】
そして、PLL部425は、生成したシステムクロック信号SCKを分割化/多重化処理部421、制御信号処理部422、音声信号処理部423のそれぞれに、信号処理用クロック信号として供給する。
【0043】
分割化/多重化処理部421は、主装置1に接続されると共に、制御信号処理部422、音声信号処理部423に接続される。そして、分割化/多重化処理部421は、主装置1からの多重化信号から制御信号と音声信号を分割して、制御信号は制御信号処理部422に、音声信号は音声信号処理部423に、それぞれ供給する。また、分割化/多重化処理部421は、制御信号処理部422からの制御信号と、音声信号処理部423からの音声信号とを多重化して多重化信号を生成し、その生成した多重化信号を主装置1に供給する。なお。分割化/多重化処理部421は、送出する信号のパケット化処理及び受信した信号のパケット分割処理も行うことができるものである。
【0044】
制御信号処理部422は、制御回路41の制御信号入出力端に接続されると共に、分割化/多重化処理部421に接続されており、発信時及び着信時、また、終話時などにおける呼制御信号などの制御信号(主装置1からコードレス電話装置21への制御信号と、コードレス電話装置21から主装置1への制御信号の両方)の処理回路である。
【0045】
音声信号処理部423は、無線通信回路44に接続されると共に、分割化/多重化処理部421に接続されており、無線通信回路44からの子機HS1から受信した受話音声信号及び分割化/多重化処理部421からの送話音声信号の処理回路である。
【0046】
次に、無線通信回路44について説明する。この無線通信回路44は、制御部441と、TDMA変復調部442と、無線通信部443とを備えて構成されている。無線通信部443は、主に子機HS1との間で、無線通信を行うための回路部である。制御部441は、TDMA変復調部442及び無線通信部443に接続されると共に、制御回路41に接続されている。制御部441は、この無線通信回路44の全体の動作を制御すると共に、制御回路41から得た制御信号に基づく制御信号をTDMA変復調部442に供給する。
【0047】
TDMA変復調部442は、制御部441及び回線LSI部42の音声信号処理部423に接続されると共に、無線通信部443に接続されており、制御部441からの制御信号と音声信号処理部423からの音声信号を子機HS1に送信するために変調を行う。このTDMA変復調部442で変調された信号は、無線通信部443を通じて子機HS1に送信される。
【0048】
また、TDMA変復調部442は、無線通信部443で受信された子機HS1からの受信信号から、音声信号及び制御信号を復調し、復調した音声信号は音声信号処理部423に供給し、復調した制御信号は、制御部441に供給する。そして、TDMA変復調部442は、PLL部4421を備える。PLL部4421には、発振器46からの発振信号が供給される。PLL部4421は、発振器46の発振信号から、フレーム同期信号FLに同期するタイミング信号及びクロック信号を生成する。
【0049】
TDMA変復調部442は、フレーム同期信号FLに同期するタイミング信号及びクロック信号を用いて、選択されたチャンネルの使用可能となるダウンリンクでのスロットの1つに相当する期間で子機HS1への送信信号を生成すると共に、当該チャンネルのアップリンクでのスロットの1つを用いて、子機HS1からの受信信号の処理を行うようにする。
【0050】
さらに、TDMA変復調部442には、MF番号送信部4422と、ビーコン送信部4423とを備えている。MF番号は、マルチフレーム番号略称である。そして、MF番号送信部4422は、制御部441の制御の下、上述もしたように、160ミリ秒ごとに1インクリメントされるマルチフレーム番号を、同じタイミングで子機HS1に対して送信する処理を行う。すなわち、MF番号送信部4422は、制御部441の制御に基づき、160ミリ秒周期でマルチフレーム番号を子機HS1に対して送信する処理を行う。
【0051】
ビーコン送信部4423は、制御部441の制御に基づき、通話中において、子機においてチャンネルのスキャニング処理を実行するタイミングで、通話に用いているチャンネル以外の4つのチャンネルを通じてビーコン信号を送信する処理を行う。より具体的には、例えば、子機HS1に対して最初のマルチフレーム番号の送信を基準にし、マルチフレーム番号が62インクリメントされるごとに、ビーコン送信部4423は、通話に用いているチャンネル以外の4つのチャンネルを通じてビーコン信号を送信する処理を行う。
【0052】
そして、子機HS1からの通話に用いているチャンネルの切替要求を、無線通信部443とTDMA変復調部442とを通じて制御部441が受信したときには、制御部441がチャンネルを切り替えるように子機HS1に指示してチャンネルの切り替えを行う。このように、制御部441は、チャンネルの切替手段としての機能を有する。
【0053】
なお、親機BS1においても、TDMA変復調部442と制御部441が機能し、各チャンネルの各スロットの通信状態を把握するためのスキャニング処理を所定のタイミングごとに実行している。このため、子機HS1からチャンネルの切替要求が送信されてきても、子機HS1からの要求に応じたチャンネルの通信状態が良くない場合や空きスロットの少ないチャンネルの場合には、制御部441は、チャンネルの切り替えを子機HS1に指示しない。この場合には、その時点において通話に利用されているチャンネルはそのまま利用される。すなわち、通話に用いるチャンネルの切り替えは行われない。
【0054】
また、この実施形態のコードレス電話装置21〜2nにおいては、従来から行われているCRCエラーの値を用いた通話チャンネルの切り替え処理も、チャンネルのスキャニング処理に応じた通話チャンネルの切り替え処理と並列して行われる。これにより、通話の品質が劣化する前に通話に用いるチャンネルの切り替え処理が行えなかった場合であっても、通話の品質が劣化した場合には、自動的に通話に用いているチャンネルの切り替え処理を行うことができる。
【0055】
<子機の構成例;
図4>
図4は、子機HS1の構成例を示すブロック図である。
図4に示すように、子機HS1は、無線通信回路51と、制御回路52と、コーデック回路53と、発振器54と、マイクロホン55と、スピーカ56とを備えて構成されている。マイクロホン55は送話器を構成し、スピーカ56は受話器を構成する。
【0056】
無線通信回路51は、制御部511と、TDMA変復調部512と、無線通信部513とを備えて構成されている。無線通信部513は、親機BS1との間で、無線通信を行うための回路部である。制御部511は、TDMA変復調部512及び無線通信部513に接続されると共に、制御回路52に接続されている。制御部511は、制御回路52の制御の下、この無線通信回路51の全体の動作を制御する。
【0057】
TDMA変復調部512は、制御部511及び無線通信部513に接続されると共に、コーデック回路53と接続されており、制御部511からの制御信号とコーデック回路53からの音声信号を親機BS1に送信するために変調を行う。このTDMA変復調部512で変調された信号は、無線通信部513を通じて親機BS1に送信される。また、TDMA変復調部512は、無線通信部513で受信された親機BS1からの受信信号から、音声信号及び制御信号を復調し、復調した音声信号はコーデック回路53に供給し、復調した制御信号は、制御部511に供給する。
【0058】
そして、TDMA変復調部512は、クロック生成用のPLL部5121を備える。このPLL部5121には、発振器54からの発振信号が供給されると共に、無線通信部513からの受信信号の復調信号が供給され、このPLL部5121からは、発振器54からの発振信号から、受信信号の復調信号のクロック成分に同期したクロック信号が生成される。このPLL部5121からのクロック信号は、TDMA変復調部512における処理用クロック信号とされる。
【0059】
さらに、TDMA変復調部512は、
図4に示すように、MF番号抽出部5122、MF番号一致検出部5123、スキャン処理部5124、RSSI比較部5125、エラーカウント部5126、チャンネル切替処理部5127を備えている。MF番号抽出部5122とMF番号一致検出部5123の「MF番号」は、マルチフレーム番号の略称である。また、RSSIは、受信信号強度(Received Signal Strength Indication)の略称である。
【0060】
MF番号抽出部5122は、上述もしたように、親機BS1から送信され、無線通信部513で受信されるMF番号を抽出し、これをMF番号一致検出部5123に通知する処理を行う。MF番号一致検出部5123は、MF番号抽出部5122で抽出された今回受信したMF番号が、チャンネルのスキャニング処理を実行するタイミングを示す値と一致しているか否かを検出する。親機BS1から子機HS1に最初に送信されたMF番号が例えば、「0番」であり、これを基準とする場合を考える。この場合、MF番号一致検出部5123は、受信したMF番号が、62、124、186、…というように、62の倍数と一致しているか否かを判別する。そして、MF番号一致検出部5123は、今回受信したMF番号が、チャンネルのスキャニング処理を実行するタイミングを示す値と一致していることを検出した場合には、これをスキャン処理部5124に通知する。
【0061】
スキャン処理部5124は、MF番号一致検出部5123から今回受信したMF番号が、チャンネルのスキャニング処理を実行するタイミングを示す値と一致していることの通知を受けた場合に、各チャンネルのRSSIを順次に検出する処理を行う。すなわち、スキャン処理部5124は、無線通信部513を通じて受信される各チャンネルの信号に基づいて、チャンネルごとのRSSI(受信信号強度)を検出するスキャニング処理を行う。スキャン処理部5124で検出された各チャンネルのRSSIは、RSSI比較部5125に通知される。
【0062】
RSSI比較部5125は、スキャン処理部5124からの各チャンネルのRSSIを比較し、現在通話に用いているチャンネルよりもRSSIが高く、そのRSSIが閾値以上であるチャンネル(通信状態の良いチャンネル)がある場合に、これを特定する。そして、RSSI比較部5125は、特定したチャンネルをチャンネル切替処理部5127に通知する。チャンネル切替処理部5127は、RSSI比較部5125からのRSSIが閾値以上のチャンネルの通知を受けた場合には、当該チャンネルへの切替要求を形成し、これを無線通信部513を通じて親機BS1に送信する処理を行う。
【0063】
エラーカウント部5126は、通話時において、通話に用いているチャンネルを通じて送信されてくる信号であって、無線通信部513を通じて受信した信号のCRCエラーの値を検出する処理を行う。そして、エラーカウント部5126は、検出したCRCエラーの値が閾値を超えた場合に、これをチャンネル切替処理部5127に通知する。チャンネル切替処理部5127は、エラーカウント部5126からの当該通知を受けた場合に、通話に用いているチャンネルの切替要求を形成し、これを無線通信部513を通じて親機BS1に送信する処理を行う。
【0064】
このように、この実施形態の子機HS1のTDMA変復調部512は、親機BS1と同期を合わせて、チャンネルのスキャニング処理を行い、この結果に応じて通話に用いているチャンネルを切り替える機能を備える。さらに、TDMA変復調部512は、スキャニング処理に応じたチャンネルの切り替え機能に加えて、CRCエラーの値に応じたチャンネルの切り替え処理も並行して行うこともできるようになっている。
【0065】
コーデック回路53は、TDMA変復調部512で復調された音声信号を復号して、アナログ音声信号に変換し、そのアナログ音声信号をスピーカ56に供給して、受話音声として放音する。また、コーデック回路53は、マイクロホン55で収音したアナログ音声信号を符号化して、TDMA変復調部512に供給するようにする。
【0066】
なお、制御回路52は、この子機HS1からの発呼時には、発呼時の呼制御信号を、無線通信回路51を通じて親機BS1に送信し、また、親機BS1からの着信時の呼制御信号を受けた時には、着信音をスピーカ56から放音するなどの処理を行う。
【0067】
以上の説明は、コードレス電話装置21の親機BS1及び子機HS1についての説明であるが、前述したように、その他のコードレス電話装置22〜2nの親機BS2〜BSn及び子機HS2〜HSnについても同様の構成を有するものである。
【0068】
[親機と子機とが協働して行う通話チャンネルの切り替え処理の詳細]
次に、上述した構成を有する親機BS1〜BSnと子機HS1〜HSnとが協働して行われる通話チャンネルの切り替え処理について説明する。以下においては、説明を簡単にするため、コードレス電話装置21を構成する親機BS1と子機HS1とが協働して通話チャンネルの切り替え処理を行う場合を例にして具体的に説明する。
図5、
図6は、親機BS1と子機HS1とが協働して行う通話チャンネルの切り替え処理の詳細を説明するための図である。
【0069】
図5に示すように、コードレス電話装置21の親機BS1と子機HS1とのそれぞれに電源が投入されると(ステップS1)、親機BS1と子機HS1とのそれぞれにおいて、無線接続処理が実行される(ステップS2)。このステップS2の無線接続処理は、親機BS1と子機HS1とが通信を行って、通信に使用するチャンネルと当該チャンネル内に設けられるスロットのうち通信に用いるスロットとを定め、親機BS1から子機HS1に同期信号等の情報の送信を開始する処理である。これにより、親機BS1と子機HS1とは着信に応答したり、発信したりすることが可能な待機状態となる(ステップS3)。
【0070】
この後、親機BS1は、MF番号送信部4422が機能し、160ミリ秒周期でマルチフレーム番号(MF番号)を、特定したチャンネルの特定したスロットを通じて送信する処理を行う(ステップS4、S6、S9)。MF番号は上述もしたように、160ミリ秒ごとに1インクリメントされるものであり、160ミリ秒ごとに1インクリメントされたMF番号が親機BS1から子機HS1に送信される。これに応じて、子機HS1では、親機BS1から送信されてくるMF番号を、無線通信部513を通じて受信し、MF番号抽出部5122が受信した信号からMF番号を抽出してMF番号一致検出部5123に供給する(ステップS4、S6、S9)。
【0071】
そして、子機HS1では、MF番号一致検出部5123が機能し、今回受信したMF番号が、チャンネルのスキャニング処理を実行するタイミングを示す値と一致しているか否かを検出する(ステップS5、S7、S10)。ステップS5、S7、S10の処理は、上述もしたように、MF番号が62インクリメントされるごとの値か否かを判別する処理である。
【0072】
MF番号一致検出部5123での検出結果が、ステップS5に示したように、今回受信したMF番号とチャンネルのスキャニング処理を実行するタイミングを示す値とが一致していないと検出された場合には、子機HS1では次のMF番号を受信するのを待つ。これに対して、ステップS7、S10に示したように、今回受信したMF番号とチャンネルのスキャニング処理を実行するタイミングを示す値とが一致していると検出されたとする。この場合には、子機HS1では、スキャン処理部5124が機能して、待機状態における処理とは関係なく、いわゆるバックグランドで、この実施形態の場合には使用可能とされた5つのチャンネルにおけるRSSI(受信信号強度)を検出する処理を行う(ステップS8、S11)。
【0073】
このようにして、待機状態にあるコードレス電話装置21の親機BS1と子機HS1とにおいては、スキャニング処理の実行タイミングの同期を合わせるようにしている。この後、
図6に示すように、子機HS1を通じて着信に応答したり、子機HS1から発信したりして、通話を開始したとする(ステップS12)。この場合、親機BS1と子機HS1との間では、通話に用いるチャンネルとスロットが特定され、そのチャンネルとスロットを通じて通話が行われる。この例では、
図12のステップS12に示したように、チャンネルChXが通話に使用するようにされたとする。
【0074】
そして、通話開始後においても、親機BS1は、160ミリ秒周期でMF番号を子機HS1に送信する(ステップS13、S15)。これに応じて、子機HS1では、親機BS1から送信されてくるMF番号を、無線通信部513を通じて受信し、MF番号抽出部5122が受信した信号からMF番号を抽出してMF番号一致検出部5123に供給する(ステップS13、S15)。
【0075】
そして、子機HS1では、MF番号一致検出部5123が機能し、今回受信したMF番号が、チャンネルのスキャニング処理を実行するタイミングを示す値と一致しているか否かを検出する(ステップS14、S16)。MF番号一致検出部5123での検出結果が、ステップS14に示したように、今回受信したMF番号とチャンネルのスキャニング処理を実行するタイミングを示す値とが一致していないと検出された場合には、子機HS1では次のMF番号を受信するのを待つ。
【0076】
さらに、通話中において、親機BS1は、子機においてチャンネルのスキャニング処理を実行するタイミングで、通話に用いているチャンネル以外の4つのチャンネルを通じてビーコン信号を送信する(ステップS17)。このステップS17の処理は、制御部441の制御の下、ビーコン送信部4423が機能して行われる。これに対応し、ステップS16に示したように、今回受信したMF番号とチャンネルのスキャニング処理を実行するタイミングを示す値とが一致していると検出されたとする。この場合には、子機HS1では、スキャン処理部5124が機能して、いわゆるバックグランドで、この実施形態の場合には使用可能とされた5つのチャンネルにおけるRSSI(受信信号強度)を検出する処理を行う(ステップS17)。
【0077】
すなわち、通話に使用しているチャンネルを通じては通話音声が送受されており、それ以外のチャンネルを通じては、親機よりビーコン信号が送信されて来るので、子機HS1のスキャン処理部5124において、各チャンネルを通じて信号を受信することにより、RSSIを適切に計測できるのである。そして、子機HS1のRSSI比較部5125において、スキャン処理部5124で計測された各チャンネルのRSSIを比較し、通話に用いているチャンネルよりもRSSIが高く、かつ、そのRSSIが閾値よりも高いチャンネルがあれば、そのチャンネルをチャンネル切替処理部5127に通知する(ステップS18)。
【0078】
この場合、チャンネル切替処理部5127は、通話に用いるチャンネルをRSSI比較部5125より通知されたRSSIが閾値よりも高いチャンネルに切り替える切替要求を形成し、これを親機BS1に送信する(ステップS19)。上述もしたように、親機BS1においても、所定のタイミングごとに各チャンネルのスキャニング処理を行っている。そして、親機BS1は、自機においてのチャンネルのスキャニング処理の結果をも考慮し、子機HS1からのチャンネルの切替要求に応じたチャンネルに切り替え可能であると判別した場合には、親機BS1の制御部441はチャンネルを切り替える処理を行う。
【0079】
当該チャンネルを切り替える処理は、子機に対して通話に使用するチャンネルを通知し、そのチャンネルを通じて通話音声等の送受を行うようにする処理である。そして、
図6に示した例の場合には、子機HS1からの切替要求に応じて、親機BS1は通話に使用するチャンネルをチャンネルChXからチャンネルChYに切り替えている(ステップS20)。これにより、RSSIが良好なチャンネルを通じて通話を継続させることができる。
【0080】
このようにして通話に用いるチャンネルを切り替えた後においても、親機BS1と子機HS1との間では、同様の処理が繰り返される。すなわち、
図6に示すように、親機BS1は、160ミリ秒周期でMF番号を子機HS1に送信する(ステップS21、S23)。これに応じて、子機HS1では、親機BS1から送信されてくるMF番号を、無線通信部513を通じて受信し、MF番号抽出部5122が受信した信号からMF番号を抽出してMF番号一致検出部5123に供給する。
【0081】
そして、子機HS1では、MF番号一致検出部5123が機能し、今回受信したMF番号が、チャンネルのスキャニング処理を実行するタイミングを示す値と一致しているか否かを検出する(ステップS22、S24)。MF番号一致検出部5123での検出結果が、ステップS22に示したように、今回受信したMF番号とチャンネルのスキャニング処理を実行するタイミングを示す値とが一致していないと検出された場合には、子機HS1では次のMF番号を受信するのを待つ。
【0082】
さらに、通話中において、親機BS1は、子機においてチャンネルのスキャニング処理を実行するタイミングで、通話に用いているチャンネル以外の4つのチャンネルを通じてビーコン信号を送信する(ステップS25)。このステップS25の処理は、制御部441の制御の下、ビーコン送信部4423が機能して行われる。これに対応し、ステップS24に示したように、今回受信したMF番号とチャンネルのスキャニング処理を実行するタイミングを示す値とが一致していると検出されたとする。この場合には、子機HS1では、スキャン処理部5124が機能して、いわゆるバックグランドで、この実施形態の場合には使用可能とされた5つのチャンネルにおけるRSSI(受信信号強度)を検出する処理を行う(ステップS25)。
【0083】
そして、子機HS1のRSSI比較部5125において、スキャン処理部5124で計測された各チャンネルのRSSIを比較し、通話に用いているチャンネルよりもRSSIが高いチャンネルがあれば、そのチャンネルをチャンネル切替処理部5127に通知する(ステップS26)。この場合、チャンネル切替処理部5127は、通話に用いるチャンネルをRSSI比較部5125より通知されたチャンネルに切り替える切替要求を形成し、これを親機BS1に送信する(ステップS27)。そして、親機BS1は、自機においてのチャンネルのスキャニング処理に結果をも考慮し、子機HS1からのチャンネルの切替要求に応じたチャンネルに切り替え可能であると判別した場合には、親機BS1の制御部441はチャンネルを切り替える処理を行う。
【0084】
このように、この実施形態のコードレス電話装置21では、待機中から親機BS1と子機HS1との間において、親機BS1からのビーコン信号の送信タイミングと、子機HS1でのチャンネルのスキャニング処理の実行タイミングとの同期を合わせる。そして、通話中においては、子機HS1において定期的にチャンネルのスキャニング処理を実行し、通話に使用しているチャンネルよりも、RSSI(受信信号強度)が高く、かつ、そのRSSIが閾値よりも高いチャンネルが存在している場合に、当該チャンネルへの切り替え処理を行う。
【0085】
そして、通話中において、子機HS1を持って移動することにより、他の無線通信機器の近隣に移動したり、逆に、他の無線通信機器がコードレス電話装置21の近隣に移動して来たりするなどして、使用チャンネルの通信状態が悪化する場合がある。このような場合、CRCエラーの値の上昇に応じて、通話チャンネルの切り替え処理を行うことが従来から行われている。しかし、この実施形態のコードレス電話装置21の場合、CRCエラーの値が閾値を超える前に、通信状態の良いチャンネルの存在が確認できた場合には、その通信状態の良いチャンネルに切り替えることができるので、通話品質を劣化させることが無いようにできる。
【0086】
もちろん、この実施形態のコードレス電話装置21においても、CRCエラーの値に応じた通話チャンネルの切り替え処理も並列して行う。当該機能は、
図4に示した子機HS1のエラーカウント部5126とチャンネル切替処理部5127との機能により実現できる。したがって、何らかの原因で、急激にCRCエラーの値が高くなってしまった場合には、即座に通話チャンネルの切り替えを行うことができるので、CRCエラーの値の上昇にも適切に対応できる。
【0087】
なお、ここでは、コードレス電話装置21を構成する親機BS1と子機HS1とが協働する場合を例にして説明したが、コードレス電話装置22〜2nのそれぞれにおいても同様の処理が行われる。
【0088】
[親機と子機のそれぞれにおいて行われる処理のまとめ]
次に、この実施形態のコードレス電話装置を構成する親機で行われる処理と子機で行われる処理とのそれぞれについて、フローチャートを参照しながらまとめる。以下においても、説明を簡単にするため、コードレス電話装置21を構成する親機BS1で行われる処理と子機HS1で行われる処理を例にして説明する。
【0089】
[親機BS1で行われる処理]
図7は、親機BS1で行われる処理を説明するためのフローチャートである。
図7に示すフローチャートの処理は、電源が投入され、子機HS1との間で無線接続が確立した後において、制御回路41の制御に下、制御部441において実行される処理である。まず、制御部441は、親機BS1においても、所定のタイミングごとにチャンネルのスキャン処理を開始する(ステップS101)。これにより、親機BS1においても、所定のタイミングごとに、各チャンネルの利用状況やノイズの混入状況など、各チャンネルの通信状態全般を把握できる。
【0090】
そして、制御部411は、MF番号送信部4422を制御し、160ミリ秒ごとにMF番号を子機HS1に送信する処理を開始する(ステップS102)。この後、制御部411は、電源をオフする操作が行われたか否かを判別し(ステップS103)、電源をオフにする操作が行われたと判別したときには、この
図7に示す処理を終了し、親機BS1の電源を落とす処理を行うようにする。ステップS103の判別処理において、電源をオフにする操作は行われていないと判別したときには、制御部411は、自機を通じて通話が行われているか否か(通話中か否か)を判別する(ステップS104)。
【0091】
ステップS104の判別処理において、通話中ではないと判別したときには、制御部441は、ステップS103からの処理を繰り返す。ステップS104の判別処理において、通話中であると判別したときには、制御部441は、10秒周期が到来したか否か、すなわち、子機HS1においてのチャンネルのスキャニング処理の実行タイミングが到来したか否かを判別する(ステップS105)。すなわち、この実施形態において、ステップS105の処理は、送信対象のMF番号が、前回の子機HS1においてのチャンネルのスキャニング処理の実行タイミング時のMF番号(基準となるMF番号)から値「62」だけインクリメントされたものか否かを判別する処理である。
【0092】
ステップS105の判別処理において、10秒周期は到来していないと判別したときには、ステップS103からの処理を繰り返す。また、ステップS105の判別処理において、10秒周期が到来したと判別したときには、制御部441は、ビーコン送信部4423を制御して、通話に使用しているチャンネル以外のチャンネル(非使用チャンネル)を通じてビーコン信号を送信する処理を行う(ステップS106)。
【0093】
この後、制御部441は、無線通信部443及びTDMA変復調部442を通じて子機HS1からの切替要求を受信するようにし(ステップS107)、切替要求を受信したか否かを判別する(ステップS108)。ステップS108の判別処理において、切替要求を受信していないと判別したときには、ステップS103からの処理を繰り返すようにする。ステップS108の判別処理において、切替要求を受信したと判別したときには、制御部441はチャンネル切り替え処理を実行する(ステップS109)。
【0094】
ステップS109で実行される処理は、自機におけるチャンネルのスキャニング結果を考慮して、子機HS1から要求されたチャンネルに切り替え可能か否かを判別し、切り替え可能な場合に、通話チャンネルを子機からの要求に応じたチャンネルに切り替える。そして、ステップS109のチャンネル切り替え処理の後においては、ステップS103からの処理を繰り返す。このように、親機BS1は、子機でのチャンネルのスキャニング処理の実行タイミングで、非使用チャンネルを通じてのビーコン信号の送信を行い、子機でのスキャニング処理に応じたチャンネルの切り替え処理を行えるようにしている。
【0095】
[子機HS1で行われる処理]
図8は、子機HS1で行われる処理を説明するためのフローチャートである。
図8に示すフローチャートの処理は、電源が投入され、親機BS1との間で無線接続が確立した後において、制御回路52の制御に下、制御部511において実行される処理である。まず、制御部511は、電源をオフする操作が行われたか否かを判別し(ステップS201)、電源をオフにする操作が行われたと判別したときには、この
図8に示す処理を終了して、子機HS1の電源を落とす処理を行うようにする。
【0096】
ステップS201の判別処理において、電源をオフにする操作は行われていないと判別したときには、制御部511は、無線通信部513及びTDMA変復調部512を通じて親機BS1から送信されるMF番号を受信するようにする(ステップS202)。この後、制御部511は、親機BS1からのMF番号を受信したか否かを判別し(ステップS203)、受信していないと判別したときには、ステップS201からの処理を繰り返すようにする。
【0097】
ステップS203の判別処理において、親機BS1からのMF番号を受信したと判別したとする。この場合、まず、制御部511は、MF番号抽出部5122を制御して親機BS1からのMF番号を抽出し、MF番号一致検出部5123を制御して、抽出したMD番号が10秒周期の到来を示すものか否かを検出する(ステップS204)。ステップS204の処理は、受信したMF番号が、前回の子機HS1においてのチャンネルのスキャニング処理の実行タイミング時のMF番号(基準となるMF番号)から値「62」だけインクリメントされたものか否かを判別する処理である。この後、制御部511は、ステップS204の検出結果が、10秒周期の到来を示すものか否を判別する(ステップS205)。
【0098】
ステップS205の判別処理において、10秒周期は到来していないと判別したときには、ステップS201からの処理を繰り返す。ステップS205の判別処理において、10秒周期が到来したと判別したときには、制御部511は、スキャン処理部5124を制御して、バックグランドでの各チャンネルのスキャニング処理を実行する(ステップS206)。ステップS206の処理では、無線通信部513を通じて受信される各チャンネルの信号に基づいて、各チャンネルのRSSIが検出される。この後、制御部511は、自機を通じて通話が行われているか否か(通話中か否か)を判別する(ステップS207)。
【0099】
ステップS207の判別処理において、通話中ではないと判別したときには、制御部511は、ステップS201からの処理を繰り返すようにする。ステップS207の判別処理において、通話中であると判別したときには、制御部511は、RSSI比較部5125を制御して、ステップS206の処理において、スキャン処理部5124で検出されたチャンネルごとのRSSIを比較する処理を行う(ステップS208)。このステップS208の処理では、現在通話に用いているチャンネルよりもRSSIの高く、かつ、そのRSSIが閾値よりも高い、通信に優位なチャンネル(優位チャンネル)が存在する場合には、その優位チャンネルが検出される。
【0100】
そして、制御部511は、ステップS208のRSSI比較処理において、優位チャンネルが検出されたか否かを判別する(ステップS209)。ステップS209の判別処理において、優位チャンネルは検出されていないと判別したときには、制御部511はステップS201からの処理を繰り返す。ステップS209の判別処理において、優位チャンネルが検出されたと判別したときには、制御部511は、当該優位チャンネルへの切替要求を形成し、これを親機BS1に送信する(ステップS210)。
【0101】
子機HS1からの当該チャンネル切替要求を受信した親機BS1では、当該チャンネル切替要求に応じてチャンネルを切り替えることができると判別すると、上述したように、当該チャンネル切替要求に応じたチャンネルへの切替処理が実行される。この場合、親機BS1から子機HS1に対してチャンネル切替指示が送信されて来るので、子機HS1の制御部511は、これに応じて通話に用いるチャンネルを切り替える処理を実行し(ステップS211)、通話を継続させる。
【0102】
このように、子機HS1は、親機BS1と協働することによって、通話に使用しているチャンネルよりもRSSIが高く、かつ、そのRSSIが閾値よりも高い優位なチャンネルが存在する場合には、当該優位なチャンネルを通話に用いるチャンネルとすることができる。すなわち、CRCエラーの値が高くなる前においても、通話の品質を高品質に保つことができるチャンネルが存在する場合には、通話に用いるチャンネルをそのチャンネルに切り替えることができる。
【0103】
なお、この実施形態のコードレス電話装置21では、上述もしたように、CRCエラーの値に応じた通話チャンネルの切り替え処理も行う。当該処理は、子機HS1においては、
図8に示した処理の例えばステップS207において通話中であると判別した場合であって、CRCエラーの値が閾値以上の場合に、チャンネルの切替要求を送信する処理を行うようにする。
【0104】
これに応じて、親機BS1においては、
図7に示した処理のステップS104において通話中であると判別した場合に、子機HS1からのチャンネルの切替要求を受信するようにする。そして、子機HS1からのチャンネルの切替要求を受信した場合に、親機BS1においてのチャンネルのスキャニング処理に基づいて適切なチャンネルを選択し、当該チャンネルに切り替えるようにすればよい。
【0105】
もちろん、
図7、
図8に示した子機HS1のチャンネルのスキャニング処理に応じた通話チャンネルの切り替え処理と並列して、CRCエラーの値に応じた通話チャンネルの切り替え処理を行うようにしてもよい。
【0106】
なお、ここでは、コードレス電話装置21を構成する親機BS1と子機HS1の処理を例にして説明したが、コードレス電話装置22〜2nを構成する親機と子機との間でも、同様の処理が行われる。
【0107】
[実施の形態の効果]
親機と子機との間で複数のチャンネルが利用可能なコードレス電話装置21〜2nのそれぞれにおいて、通話の品質の劣化が使用者に認識される前に、通話に用いるチャンネルを自動的に替えることにより、通話の品質を劣化させないようにできる。
【0108】
また、従来からのCRCエラーの値に応じた通話チャンネルの切り替え処理をも併用することによって、通話に使用しているチャンネルにおける通信状態が急激に悪くなった場合であっても、適切にチャンネルの切り替え処理を実行し、通話の品質を維持できる。
【0109】
特に、ビジネスホンシステムを構築する内線電話端末としてコードレス電話装置を用いる場合には、周囲に複数のコードレス電話装置が存在することにより、他のコードレス電話装置の影響を受けて通信状態が悪くなるような状況が生じても、これを適切に回避できる。
【0110】
[変形例]
上述した実施の形態では、ほぼ10秒周期でチャンネルのスキャニング処理を実行するようにしたが、これに限るものではない。例えば、3秒周期、5秒周期、7秒周期など、適宜の周期でチャンネルのスキャニング処理を行うようにできる。このように、スキャニング処理を実行する周期を替える場合には、MF番号の目的とするカウント値を変えるようにすればよい。例えば、MF番号を「18」インクリメントするごとにスキャニング処理を実行するようにすれば、スキャニング処理をほぼ3秒周期で実行できる。また、MF番号を「31」インクリメントするごとにスキャニング処理を実行するようにすれば、スキャニング処理をほぼ5秒周期で実行できる。
【0111】
また、上述した実施の形態では、DECT規格の通信方式で用いられている160ミリ秒ごとに1インクリメントされるマルチフレーム番号を用いるようにしたが、これに限るものではない。例えば、所定周期でインクリメントされる番号情報を設定し、これを用いるようにできる。また、所定周期で特定の情報を親機から子機に送信し、子機において、当該特定の情報の受信回数をカウントすることにより、スキャニング処理の実行タイミングを特定するようにしてもよい。
【0112】
また、DECT規格の通信方式を用いたコードレス電話装置の場合、例えRSSIが閾値よりも高いチャンネルが見つかっても、そのチャンネルの空きスロットが少ない場合には、チャンネルの切り替え処理は行わないようにする。このため、親機においては、例えば、無線通信部443、TDMA変復調部442、制御部441が協働して、各チャンネルの受信電界強度だけでなく、各チャンネルに設けられるスロットごとに信号を受信するスロットのスキャニング処理も行い、スロットの空き状況も把握する。そして、子機からのチャンネルの切替要求を受信した場合には、この把握しているスロットの空き情報も考慮して、チャンネルを切り替えるか否かを決定する。このようにすれば、スロットの空き状況も考慮した通話チャンネルの切り替え処理が行えることになり、込み合ったチャンネルを通話に用いないようにできる。
【0113】
また、上述した実施の形態では、DECT規格の通信方式を用いるコードレス電話装置の場合を例にして説明したが、これに限るものではない。親機と子機とが複数の通信チャンネルを切り替えて使用可能な種々の通信方式を採用したコードレス電話装置にこの発明を適用できる。
【0114】
また、コードレス電話装置は、専用の親機と子機とからなるものに限るものではなく、例えば、PHS(Personal Handy-phone System)の端末装置と通信ができるベース装置(親機)とPHSの端末装置とで構成されるコードレス電話装置にもこの発明を適用できる。
【0115】
[その他]
上述した実施の形態の説明から分かるように、子機の第1、第2の受信手段の機能は、子機HS1の主に無線通信部513が実現し、子機の判別手段の機能は、子機HS1のMF番号抽出部5122とMF番号一致検出部5123が実現し、子機の検知手段の機能は、子機HS1のスキャン処理部5124及びRSSI比較部5125が実現し、子機の第1の要求送信手段の機能は、子機HS1のチャンネル切替処理部5127及び無線通信部513が実現している。
【0116】
一方、親機の第1の送信手段の機能は、親機BS1のMF番号送信部4422及び無線通信部443が実現し、親機の第2の送信手段の機能は、親機BS1のビーコン送信部4423及び無線通信部443が実現し、親機の第1の要求受信手段の機能は、親機BS1の無線通信部443及びTDMA変復調部442が実現し、親機の第1の切替手段の機能は、親機BS1の主に制御部441が実現している。
【0117】
また、子機のカウント手段の機能は、子機HS1のエラーカウント部5126が実現し、子機の第2の要求送信手段の機能は、子機HS1の子機HS1のチャンネル切替処理部5127及び無線通信部513が実現している。
【0118】
また、親機の第2の要求受信手段の機能は、親機BS1の無線通信部443及びTDMA変復調部442が実現し、親機の第2の切替手段の機能は、親機BS1の主に制御部441が実現している。また、親機の利用状況検知手段の機能は、無線通信部443、TDMA変復調部442、制御部441が協働して実現している。