特開2017-174900(P2017-174900A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社アツミテックの特許一覧

特開2017-174900熱電変換ユニット及び熱電変換モジュール
<>
  • 特開2017174900-熱電変換ユニット及び熱電変換モジュール 図000003
  • 特開2017174900-熱電変換ユニット及び熱電変換モジュール 図000004
  • 特開2017174900-熱電変換ユニット及び熱電変換モジュール 図000005
  • 特開2017174900-熱電変換ユニット及び熱電変換モジュール 図000006
  • 特開2017174900-熱電変換ユニット及び熱電変換モジュール 図000007
  • 特開2017174900-熱電変換ユニット及び熱電変換モジュール 図000008
  • 特開2017174900-熱電変換ユニット及び熱電変換モジュール 図000009
  • 特開2017174900-熱電変換ユニット及び熱電変換モジュール 図000010
  • 特開2017174900-熱電変換ユニット及び熱電変換モジュール 図000011
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-174900(P2017-174900A)
(43)【公開日】2017年9月28日
(54)【発明の名称】熱電変換ユニット及び熱電変換モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01L 35/30 20060101AFI20170901BHJP
   H02N 11/00 20060101ALI20170901BHJP
   F01N 5/02 20060101ALI20170901BHJP
【FI】
   H01L35/30
   H02N11/00 A
   F01N5/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-57279(P2016-57279)
(22)【出願日】2016年3月22日
(71)【出願人】
【識別番号】391064005
【氏名又は名称】株式会社アツミテック
(74)【代理人】
【識別番号】100090022
【弁理士】
【氏名又は名称】長門 侃二
(72)【発明者】
【氏名】内山 直樹
(72)【発明者】
【氏名】久保 和哉
(57)【要約】
【課題】本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、排ガスの流れを利用しつつ下流においても優れた熱エネルギー効率にて吸熱を図り、全体としての発電量を向上することができる熱電変換ユニットを提供すること。
【解決手段】並設された複数の熱電変換素子と、前記熱電変換素子の一端に接合され、隣接する前記熱電変換素子の一端同士を電気的に接続する第1電極と、前記熱電変換素子の他端に接合され、隣接する前記熱電変換素子の他端同士を電気的に接続する第2電極と、前記第2電極の前記熱電変換素子と接合した表面とは反対側の表面上に設けられた吸熱部と、を備える複数の熱電変換モジュールを有し、前記複数の熱電変換モジュールは熱の流路に沿って並設され、且つ前記吸熱部は千鳥状に配設されていること。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
並設された複数の熱電変換素子と、
前記熱電変換素子の一端に接合され、隣接する前記熱電変換素子の一端同士を電気的に接続する第1電極と、
前記熱電変換素子の他端に接合され、隣接する前記熱電変換素子の他端同士を電気的に接続する第2電極と、
前記第2電極の前記熱電変換素子と接合した表面とは反対側の表面上に設けられた吸熱部と、を備える複数の熱電変換モジュールを有し、
前記複数の熱電変換モジュールは熱の流路に沿って並設され、且つ前記吸熱部は千鳥状に配設されている熱電変換ユニット。
【請求項2】
前記熱の流路の下流側に位置する前記熱電変換モジュールの前記吸熱部の表面積は、前記熱の流路の上流側に位置する前記熱電変換モジュールの前記吸熱部の表面積よりも大きい請求項1に記載の熱電変換ユニット。
【請求項3】
前記熱の流路の上流側に位置する前記熱電変換モジュールの前記吸熱部と、前記熱の流路の下流側に位置する前記熱電変換モジュールの前記吸熱部とは、前記第2電極に対する傾斜角度が異なる請求項1又は2に記載の熱電変換ユニット。
【請求項4】
前記吸熱部は複数の吸熱フィンから構成されている請求項1乃至3のいずれか1項に記載の熱電変換ユニット。
【請求項5】
前記熱電変換モジュールのそれぞれにおいて、前記複数の吸熱フィンが千鳥状に配設されている請求項4に記載の熱電変換ユニット。
【請求項6】
前記熱電変換モジュールのそれぞれにおいて、前記熱の流路の上流側に位置する前記熱電変換モジュールの前記吸熱フィンと、前記熱の流路の下流側に位置する前記熱電変換モジュールの前記吸熱フィンとは、前記第2電極に対する傾斜角度が異なる請求項4又は5に記載の熱電変換ユニット。
【請求項7】
前記吸熱部は、前記熱の流路の上流側から下流側に向ってその高さが大きくなる請求項1乃至6のいずれか1項に記載の熱電変換ユニット。
【請求項8】
並設された複数の熱電変換素子と、
前記熱電変換素子の一端に接合され、隣接する前記熱電変換素子の一端同士を電気的に接続する複数の第1電極と、
前記熱電変換素子の他端に接合され、隣接する前記熱電変換素子の他端同士を電気的に接続する複数の第2電極と、
前記第2電極の前記熱電変換素子と接合した表面とは反対側の表面上に設けられた複数の吸熱フィンと、を有し、
前記吸熱フィンは千鳥状に配設されている熱電変換モジュール。
【請求項9】
前記熱の流路の上流側に位置する前記吸熱フィンと、前記熱の流路の下流側に位置する前記熱電変換モジュールの前記吸熱フィンとは、前記第2電極に対する傾斜角度が異なる請求項8に記載の熱電変換モジュール。
【請求項10】
前記熱の流路の下流側に位置する前記吸熱フィンの表面積は、前記熱の流路の上流側に位置する前記熱電変換モジュールの前記吸熱フィンの表面積よりも大きい請求項8又は9に記載の熱電変換モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゼーベック効果による熱電変換を行う熱電変換素子を備える熱電変換ユニット及び熱電変換モジュールにおける集熱構造に関する。
【背景技術】
【0002】
熱電変換モジュールは、ゼーベック効果によって熱エネルギーを電気エネルギーに変換することが可能である熱電変換素子から構成されるモジュールである。このようなエネルギーの変換性質を利用することで、産業・民生用プロセスや移動体から排出される排熱を有効な電力に変換することができるため、環境問題に配慮した省エネルギー技術として当該熱電変換モジュール及びこれを構成する熱電変換素子が注目されている。
【0003】
このような熱電変換モジュールは、一般的に、複数個の熱電変換素子(p型半導体及びn型半導体)を電極で接合して構成される。このような熱電変換モジュールは、例えば、特許文献1に開示されている。また、このような熱電モジュールは、自動車及びその他のエンジンを備える産業機器における排ガスの廃熱を利用して発電するために、エンジン等の高温熱源の下流側に配置されることになる。このような熱電変換モジュールの利用及び当該熱電変換モジュールを用いた熱電変換装置は、例えば、特許文献2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−115359号公報
【特許文献2】特開2007−221895号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、エンジンからの排ガスは下流(すなわち、排気側)に進むにつれて温度の低下に伴って熱量が不足するため、p型半導体及びn型半導体を電極で接合した一般的な構造のみの熱電変換モジュールでは、十分な発電が行えないという問題が生じていた。また、複数の熱電変換モジュールを排ガスの流路に沿って配設すると、下流側に位置する熱電変換モジュールは、上流側に位置する熱電変換モジュールの存在により、下流側に位置する熱電変換モジュールに向けた排ガスの流れが遮られ、下流側に位置する熱電変換モジュールでは十分な発電が行えない場合がある。
【0006】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、排ガスの流れを利用しつつ下流においても優れた熱エネルギー効率にて吸熱を図り、全体としての発電量を向上することができる熱電変換ユニット及び熱電モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した目的を達成するため、本発明の熱電変換ユニットは、並設された複数の熱電変換素子と、
前記熱電変換素子の一端に接合され、隣接する前記熱電変換素子の一端同士を電気的に接続する第1電極と、前記熱電変換素子の他端に接合され、隣接する前記熱電変換素子の他端同士を電気的に接続する第2電極と、前記第2電極の前記熱電変換素子と接合した表面とは反対側の表面上に設けられた吸熱部と、を備える複数の熱電変換モジュールを有し、前記複数の熱電変換モジュールは熱の流路に沿って並設され、且つ前記吸熱部は千鳥状に配設されている。
【0008】
上述した熱電変換ユニットにおいて、前記熱の流路の下流側に位置する前記熱電変換モジュールの前記吸熱部の表面積は、前記熱の流路の上流側に位置する前記熱電変換モジュールの前記吸熱部の表面積よりも大きくてもよい。これにより、下流側に位置する熱電変換モジュールにおいてもより優れた熱エネルギー効率にて吸熱を図り、熱電変換ユニット全体としての発電量を向上することができる。
【0009】
上述した熱電変換ユニットのいずれかにおいて、前記熱の流路の上流側に位置する前記熱電変換モジュールの前記吸熱部と、前記熱の流路の下流側に位置する前記熱電変換モジュールの前記吸熱部とは、前記第2電極に対する傾斜角度が異なっていてもよい。これにより、下流側に位置する吸熱部における吸熱が上流側に位置する吸熱部によって阻害されることがなくなり、下流側に位置する熱電変換モジュールにおいてもより優れた熱エネルギー効率にて吸熱を図り、熱電変換ユニット全体としての発電量を向上することができる。
【0010】
上述した熱電変換ユニットのいずれかにおいて、前記吸熱部は複数の吸熱フィンから構成されていてもよい。これにより、各熱電変換モジュールにおいて、効率よく吸熱を図ることができる。
【0011】
上述した吸熱部が複数の吸熱フィンから構成されている熱電変換ユニットにおいて、前記複数の吸熱フィンが千鳥状に配設されていてもよい。これにより、下流側に位置する吸熱フィンにおいてもより優れた熱エネルギー効率にて吸熱を図り、1つの熱電変換モジュールとしての発電量を向上することができる。
【0012】
上述した吸熱部が複数の吸熱フィンから構成されている熱電変換ユニットのいずれかにおいて、前記熱の流路の上流側に位置する前記熱電変換モジュールの前記吸熱フィンと、前記熱の流路の下流側に位置する前記熱電変換モジュールの前記吸熱フィンとは、前記第2電極に対する傾斜角度が異なっていてもよい。これにより、下流側に位置する吸熱フィンにおいてもより優れた熱エネルギー効率にて吸熱を図り、1つの熱電変換モジュールとしての発電量をより向上することができる。
【0013】
上述した熱電変換ユニットのいずれかにおいて、前記吸熱部は、前記熱の流路の上流側から下流側に向ってその高さが大きくなっていてもよい。これにより、吸熱部の下流側に位置する部分においてもより優れた熱エネルギー効率にて吸熱を図り、1つの熱電変換モジュールとしての発電量を向上することができる。
【0014】
また、上述した目的を達成するため、本発明の熱電変換モジュールは、並設された複数の熱電変換素子と、前記熱電変換素子の一端に接合され、隣接する前記熱電変換素子の一端同士を電気的に接続する複数の第1電極と、前記熱電変換素子の他端に接合され、隣接する前記熱電変換素子の他端同士を電気的に接続する複数の第2電極と、前記第2電極の前記熱電変換素子と接合した表面とは反対側の表面上に設けられた複数の吸熱フィンと、を有し、前記吸熱フィンは千鳥状に配設されている。
【0015】
上述した熱電変換モジュールにおいて、前記熱の流路の上流側に位置する前記吸熱フィンと、前記熱の流路の下流側に位置する前記熱電変換モジュールの前記吸熱フィンとは、前記第2電極に対する傾斜角度が異なっていてもよい。これにより、下流側に位置する吸熱フィンにおいてもより優れた熱エネルギー効率にて吸熱を図り、熱電変換モジュール全体としての発電量を向上することができる。
【0016】
上述した熱電変換モジュールのいずれかにおいて、前記熱の流路の下流側に位置する前記吸熱フィンの表面積は、前記熱の流路の上流側に位置する前記熱電変換モジュールの前記吸熱フィンの表面積よりも大きくてもよい。これにより、下流側に位置する吸熱フィンにおいてもより優れた熱エネルギー効率にて吸熱を図り、熱電変換モジュール全体としての発電量を向上することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る熱電変換ユニット及び熱電変換モジュールによれば、排ガスの流れを利用しつつ下流においても優れた熱エネルギー効率にて吸熱を図り、全体としての発電量を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施例に係る熱電変換モジュールの斜視図である。
図2】実施例に係る熱電変換モジュールの側面図である。
図3】実施例に係る熱電変換ユニットの構成を示す概略上面図である。
図4】変形例1に係る熱電変換モジュールの上面図である。
図5】変形例2に係る熱電変換モジュールの側面図である。
図6】変形例3に係る熱電変換モジュールの側面図である。
図7】変形例4に係る熱電変換モジュールの正面図である。
図8】変形例5に係る熱電変換ユニットの上面図である。
図9】変形例5に係る熱電変換ユニットの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照し、本発明による熱電変換ユニット及び熱電変換モジュールの実施の形態について、実施例及び各変形例に基づき詳細に説明する。なお、本発明は以下に説明する内容に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において任意に変更して実施することが可能である。また、実施例及び各変形例の説明に用いる図面は、いずれも本発明による熱電変換ユニット及び熱電変換モジュール並びにその構成部材を模式的に示すものであって、理解を深めるべく部分的な強調、拡大、縮小、又は省略等を行っており、各構成部材の縮尺や形状等を正確に表すものとはなっていない場合がある。更に、実施例及び各変形例で用いる様々な数値は、いずれも一例を示すものであり、必要に応じて様々に変更することが可能である。
【0020】
<実施例>
(熱電変換モジュールの構造)
以下において、図1及び図2を参照しつつ、本実施例に係る熱電変換モジュール1の構造について説明する。ここで、図1は本実施例に係る熱電変換モジュール1の斜視図である。また、図2は本実施例に係る熱電変換モジュール1の側面図である。ここで、図1における一方向をX方向と定義し、X方向に直交する方向をY方向、及びZ方向と定義するとともに、特に熱電変換モジュール1の高さ方向をZ方向と定義する。
【0021】
図1及び図2から分かるように、本実施例に係る熱電変換モジュール1は、レール状の形状を有している。具体的に、本実施例に係る熱電変換モジュール1は、並設された複数の第1熱電変換素子2a及び第2熱電変換素子2bと、当該第1熱電変換素子2a及び第2熱電変換素子2bの端部に設けられた第1電極3a及び第2電極3bと、を有している。また、本実施例に係る熱電変換モジュール1は、第2電極3bのそれぞれの表面上に一体的に設けられた複数の吸熱フィン4a〜4d(以下において、いずれかの吸熱フィンを選択することなく代表して吸熱フィンを説明する場合には単に吸熱フィン4とも称する)を更に有している。
【0022】
本実施例において、第1熱電変換素子2aはN型半導体材料から構成され、第2熱電変換素子2bはP型半導体材料から構成されている。また、第1熱電変換素子2a及び第2熱電変換素子2bは、X方向に沿って交互に4個(合計8個)ずつ配置されている。更に、隣接する第1熱電変換素子2a及び第2熱電変換素子2bは、第1電極3a及び第2電極3bを介して電気的に接続されている。そして、図1から分かるように、第1熱電変換素子2a及び第2熱電変換素子2bの形状は円柱状であり、例えばその直径は約5mmであり、高さ(Z方向の寸法)は約10mmである。なお、第1熱電変換素子2a及び第2熱電変換素子2bの形状はこのような形状に限定されることなく、例えば、角柱状であってもよい。
【0023】
第1電極3a及び第2電極3bは、同一の形状(平板状)を有し、例えば、銅板から形成されている。また、第1電極3aは、X方向に5個並設され、第2電極3bは、X方向に4個並設されている。そして、図1及び図2から分かるように、第1電極3a及び第2電極3bは、Z方向において、第1熱電変換素子2a及び第2熱電変換素子2bを挟むように配置されている。
【0024】
このような第1熱電変換素子2a、第2熱電変換素子2b、第1電極3a、及び第2電極3bの配置関係により、X方向に一直線上に延在する熱電変換モジュール1のレール形状が形成されることになる。また、このような第1熱電変換素子2a、第2熱電変換素子2b、第1電極3a、及び第2電極3bの配置関係により、第1熱電変換素子2a及び第2熱電変換素子2bが電気的に直列に接続されることになる。換言すると、本実施例においては、X方向に並設された、4個の第1熱電変換素子2a、4個の第2熱電変換素子2b、5個の第1電極3a、及び4個の第2電極3bから1つの直列回路が形成されている。なお、熱電変換モジュール1の両端に位置する第1電極3aが、外部接続用の引出電極として機能するため、熱電変換モジュール1にて生じた電力を外部に取り出すことが可能になる。
【0025】
ここで、第1電極3a及び第2電極3bは、銅板に限定されることなく、他の導電性材料(例えば、アルミニウム等の金属材料)によって形成されてもよい。また、第1電極3a及び第2電極3bの数量、形状は上述した内容に限定されることなく、第1熱電変換素子2a及び第2熱電変換素子2b(すなわち、起電力の大きさ)に応じて適宜変更することができる。更には、第1熱電変換素子2a及び第2熱電変換素子2bを並列に接続するように第1電極3a及び第2電極3bを配設してもよい。
【0026】
吸熱フィン4は、第2電極3bの熱電変換素子と接合した表面とは反対側の表面上に一体的に接合されている。本実施例において、吸熱フィン4は、熱伝導率が比較的高いSUS430を材料とする金属板である。熱電変換モジュール1が排ガス(熱)の流路上に設置された場合に、吸熱フィン4が当該排ガスに対して直接的に接触することになり、第2電極3bの温度をより上昇させることができる。これにより、第1電極3aと第2電極3bとの温度差をより生じさせ、優れた熱エネルギー効率にて吸熱を図って熱電変換モジュール1の発電量を向上させることができる。ここで、熱電変換モジュール1に設けられた4つの吸熱フィン4のそれぞれは、接合した第2電極3bの温度の上昇に寄与することになるが、熱電変換モジュール1全体としては、4つの吸熱フィン4からなる1つの吸熱部5により、熱電変換モジュール1の高温側の温度上昇がもたらされている。すなわち、熱電変換モジュール1においては、X方向に延在する1つの吸熱部5が4つの吸熱フィン4から構成されていることになる。
【0027】
なお、吸熱フィン4の幅(X方向)、厚み(Y方向)、及び高さ(Z方向)の寸法を変更し、吸熱フィン4の表面積を大きくすることができれば、第2電極3bの温度をより効率的に上昇させることができるが、吸熱フィン4の寸法は、熱電変換モジュール1に要求される発電量に応じて設定されることになる。
【0028】
(熱電変換モジュールの製造方法)
本実施例に係る熱電変換モジュール1の製造方法としては、製造装置を構成する通電加圧部材として機能する2つのパンチの間に、準備した第1熱電変換素子2a、第2熱電変換素子2b、第1電極3a、第2電極3b、及び吸熱フィン4を配置する。その後、2つのパンチを第1熱電変換素子2a、第2熱電変換素子2b、第1電極3a、第2電極3b、及び吸熱フィン4に向かって加圧しつつ電流を供給する。これにより、第1熱電変換素子2a及び第2熱電変換素子2bと、第1電極3a、第2電極3b、及び吸熱フィン4とが拡散接合(プラズマ接合)され、複数の第1熱電変換素子2a及び第2熱電変換素子2bが直列に接続され、1つのレール状の熱電変換モジュール1が形成される。このような通電加圧は、真空、窒素ガス、又は不活性ガス雰囲気のチャンバ内で行われる。
【0029】
(熱電変換ユニットの構造)
次に、図3を参照しつつ、本実施例に係る熱電変換ユニット10について説明する。ここで、図3は、本実施例に係る熱電変換ユニット10の構成を示す概略上面図である。図3に示すように、熱電変換ユニット10は、エンジンユニット20の排気方向の下流に設置されている。すなわち、熱電変換ユニット10は、エンジンユニット20から排気される排ガスの熱を利用して発電を行うことになる。
【0030】
また、熱電変換ユニット10は、5つの熱電変換モジュール1から構成されている。より具体的には、5つの熱電変換モジュール1は、その延在方向が当該流路と平行となるように、排ガス(熱)の流路(図3において矢印にて示す)に沿って並設されている。すなわち、図1図2及び図3のX方向、Y方向、Z方向は共通している。更に、5つの熱電変換モジュール1は、千鳥状に配設されている。そして、熱電変換ユニット10においては、5つの熱電変換モジュール1から個別に電力を取り出せるような配線を行ってもよく、或いは5つの熱電変換モジュール1を電気的に直列に接続して、1つの大きな電力を取り出せるようにしてもよい。ここで、5つの熱電変換モジュール1は、例えば、エンジンユニット20と排ガスを外部に排出するための排気ユニット(図示せず)との間に設けられた接続管(図示せず)内に設けられることになる。
【0031】
なお、熱電変換ユニット10を構成する5つの熱電変換モジュール1のいずれかを選択して説明する場合には、熱電変換モジュール1a、1b、1c、1d、1eのいずれかとして説明とする。各熱電変換モジュールに設けられた吸熱部5についても同様に、いずれかを選択して説明する場合には、吸熱部5a、5b、5c、5d、5eのいずれかとして説明する。
【0032】
図3に示すように、熱電変換ユニット10においては、熱電変換モジュール1が排ガスの流路に沿って千鳥状に設けられているため、熱電変換モジュール1と同様にX方向に向かって並設されている吸熱フィン4a〜4dから構成される吸熱部5も千鳥状に配設されていることになる。このような千鳥状に吸熱部5が配設されることにより、吸熱部5のそれぞれは、エンジンユニット20から排出された排ガスに対して良好に接触することが可能となる。すなわち、吸熱部5のそれぞれは、他の吸熱部5の存在によって排ガスとの接触が阻害されることがなくなり、十分な吸熱を行うことができる。例えば、図3において矢印で示した排ガスの流路から分かるように、吸熱部5a、5b、5cの存在によって吸熱部5a、5b、5cの下流側における排ガスの流量が減少することになるが、吸熱部5d、5eに対しては吸熱部5a、5b、5cの隙間を経由して排ガスが到達するため、下流側に位置する吸熱部5d、5eにおいても、優れた熱エネルギー効率にて吸熱を図ることができる。そして、熱電変換ユニット10としては、下流側においても十分な発電量を得ることができるため、全体として発電量が向上することになる。
【0033】
なお、本実施例においては、上流側に位置する熱電変換モジュール1a〜1cの吸熱部5a〜5cと、下流側に位置する熱電変換モジュール1d〜1eの吸熱部5d〜5eとは、同じ形状で同一の表面積を有していたが、下流側における排ガスの温度低下を考慮して、下流側の吸熱部5d〜5eの表面積を上流側の吸熱部5a〜5cの表面積よりも大きくしてもよい。すなわち、上述した接続管内における温度分布に応じて、熱電変換モジュール1ごとに吸熱部5及び吸熱フィン4の寸法及び表面積を適宜設定してもよい。これにより、排ガス経路の下流側においても十分な発電を実現できるように、熱電変換ユニット10の発電量をより向上させることができる。
【0034】
また、熱電変換モジュール1の形状はレール状に限定されることなく、X−Y方向に広がりを備えるような他の形状であってもよい。このような場合であっても、熱電変換ユニット10において、熱電変換モジュール1の吸熱部5が他の熱電変換モジュール1の吸熱部5の吸熱を阻害しないように、例えば、吸熱部5を千鳥状に配置することが重要となる。
【0035】
<変形例>
(他の熱電変換モジュールの構造)
次に、図4乃至図7を参照しつつ、熱電変換モジュールの各変形例について、詳細に説明する。ここで、図4は変形例1に係る熱電変換モジュール101の上面図であり、図5は変形例2に係る熱電変換モジュール201の側面図であり、図6は変形例3に係る熱電変換モジュール301の側面図であり、図7は変形例4に係る熱電変換モジュール401の正面図である。なお、各変形例においては、上述した実施例と同一の構造及び部材については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0036】
図4に示すように、変形例1に係る熱電変換モジュール101は、熱電変換モジュール1とは異なり、吸熱フィン4a〜4dが千鳥状に配設されている。すなわち、熱電変換モジュール101においては、吸熱フィン4が他の吸熱フィン4の吸熱を阻害しないように配設されていることになる。このような吸熱フィン4の配設により、下流側(+X側)に位置する吸熱フィン4c、4dにおいても優れた熱エネルギー効率にて吸熱を図ることができ、下流側に位置する電極間においても温度差をより大きくすることができる。これにより、熱電変換モジュール101自体の発電量も向上させることができる。
【0037】
なお、1つの熱電変換モジュール101において吸熱フィン4を千鳥状に配設することにより、上述した実施例のように熱電変換モジュール101を千鳥状に配設しなくても、熱電変換ユニット10の発電量の向上を十分に図れることもある。これは、熱電変換ユニット10全体として、吸熱フィン4が千鳥状に配設されることになり、上流側(−X側)に配設される熱電変換モジュール101が下流側に位置する熱電変換モジュール101の吸熱を阻害する恐れが低減されるためである。
【0038】
次に、図5に示すように、変形例2に係る熱電変換モジュール201は、熱電変換モジュール1とは異なり、共通する1枚の吸熱フィンから吸熱部205が構成されている。当該吸熱フィンの形状は、X−Z平面において台形となっており、下流側(+X側)に位置する部分の表面積が上流側(−X側)に位置する部分の表面積よりも大きくなっている。換言すると、熱電変換モジュール201において、吸熱部205は、排ガスの流路の下流側に向って、その高さが大きくなっている。これにより、より下流側においても優れた熱エネルギー効率にて吸熱を図ることができ、下流側に位置する電極間においても温度差をより大きくすることができる。そして、このような吸熱部205の構造により、熱電変換モジュール201自体の発電量が向上することになる。
【0039】
ここで、熱電変換モジュール201は第1熱電変換素子2a及び第2熱電変換素子2bを直列に接続した構造を有しているため、吸熱部205は電気絶縁体から構成されていることが必要となる。例えば、吸熱部205には、窒化アルミニウム、又は酸化アルミニウムを用いることができる。
【0040】
次に、図6に示すように、変形例3に係る熱電変換モジュール301は、熱電変換モジュール1とは異なり、互いに表面積が異なる4つの吸熱フィン304a、304b、304c、304dから1つの吸熱部305が形成されている。より具体的には、吸熱フィン304のそれぞれは、第2電極3bと接合する端部と反対側の端部が傾斜しており、下流側(+X側)に進むにつれて、その高さ(Z方向の寸法)が徐々に大きくなっている。また、4つの吸熱フィン304も、下流側に位置するものほどその寸法が大きくなり、表面積も大きくなっている。すなわち、熱電変換モジュール301においては、吸熱部305は、排ガスの流路の下流側に向って、その高さが大きくなっている。
【0041】
このような吸熱部305の構造により、より下流側においても優れた熱エネルギー効率にて吸熱を図ることができ、下流側に位置する電極間においても温度差をより大きくすることができる。そして、このような吸熱部305の構造により、熱電変換モジュール301自体においても、発電量を向上することができる。
【0042】
次に、図7に示すように、変形例4に係る熱電変換モジュール401は、熱電変換モジュール1とは異なり、第2電極3bに対する吸熱フィン403の傾斜角度が互いに相違している。より具体的には、4つの吸熱フィン403a〜403dは、排ガスの流路に沿って並設されているものの、最も上流側(−X側)に位置する吸熱フィン403aから最も下流側(+X側)に位置する吸熱フィン403dに向って、第2電極3bに対する吸熱フィン403の傾斜角度が大きくなるように、吸熱フィン403の傾きが設定されている。例えば、第2電極3bに対する吸熱フィン403aの傾斜角度θ1が約30°であり、第2電極3bに対する吸熱フィン403bの傾斜角度θ2が約70°であり、第2電極3bに対する吸熱フィン403cの傾斜角度θ3が約110°であり、第2電極3bに対する吸熱フィン403dの傾斜角度θ4が約150°であってもよい。
【0043】
このように、第2電極3bに対する傾斜角度が互いに異なる吸熱フィン404a〜404dから吸熱部405が構成されることにより、吸熱フィンの千鳥配置の効果と同様に、吸熱フィン404が他の吸熱フィン404の吸熱を阻害しないように配設されていることになる。このような吸熱フィン404の配設により、下流側(+X側)に位置する吸熱フィン404においても優れた熱エネルギー効率にて吸熱を図ることができ、下流側に位置する電極間においても温度差をより大きくすることができる。これにより、熱電変換モジュール401自体の発電量も向上することができる。
【0044】
なお、1つの熱電変換モジュール401において吸熱フィン404の傾斜角度を互いに相違させることにより、上述した実施例のように熱電変換モジュール401を千鳥状に配設しなくても、熱電変換ユニット10の発電量の向上を十分に図れることもある。これは、熱電変換ユニット10全体としても、上流側(−X側)に配設される熱電変換モジュール401の吸熱フィン404が、下流側に位置する熱電変換モジュール401の吸熱フィン404に対する排ガスの接触(すなわち、吸熱フィン404の吸熱)を阻害するおそれが低減されるためである。
【0045】
(他の熱電変換ユニットの構造)
次に、図8及び図9を参照しつつ、熱電変換ユニットの変形例について、詳細に説明する。ここで、図8は変形例5に係る熱電変換ユニット510の上面図であり、図9は変形例5に係る熱電変換ユニット501の正面図である。なお、変形例5においては、上述した実施例と同一の構造及び部材については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0046】
図8に示すように、変形例5に係る熱電変換ユニット501において、4つの熱電変換モジュール501a〜501dは、排ガスの流路に沿って並設されているとともに、マトリックス状に配設されている。一方、図8及び図9から分かるように、上流側(−X側)に配設される熱電変換モジュール501a、501bと、下流側(+X側)に配設される熱電変換モジュール501c、501dとは、それぞれが備える吸熱フィンの第2電極3bに対する傾斜角度が異なっている。具体的に、熱電変換モジュール501aにおいて、第2電極3bに対する吸熱フィン504a1、504b1、504c1、504d1の傾斜角度θ5は約45°である。同様に、熱電変換モジュール501bにおいて、第2電極3bに対する吸熱フィン504a2、504b2、504c2、504d2の傾斜角度θ5も約45°である。一方、熱電変換モジュール501cにおいて、第2電極3bに対する吸熱フィン504a3、504b3、504c3、504d3の傾斜角度θ5は約135°であり、熱電変換モジュール501dにおいても、第2電極3bに対する吸熱フィン504a4、504b4、504c4、504d4の傾斜角度θ5は約135°である。以下において、各吸熱フィンを選択して説明しない場合には、単に吸熱フィン504とも称する。
【0047】
変形例5においては、上流側と下流側の吸熱フィン(すなわち、吸熱部)の傾斜角度が異なっているため、熱電変換モジュール501a〜501dのそれぞれの吸熱フィン504は、エンジンユニット20から排出された排ガスに対して良好に接触することが可能となる。すなわち、熱電変換モジュール501a〜501dのそれぞれの吸熱部は、他の熱電変換モジュールの吸熱部の存在によって排ガスとの接触が阻害されることがなくなり、十分な吸熱を行うことができる。例えば、図8において矢印で示した排ガスの流路から分かるように、熱電変換モジュール501aの吸熱フィン504a1〜504d1の存在によって熱電変換モジュール501aの下流側における排ガスの流量が減少することになるが、熱電変換モジュール501cの吸熱フィン504a3〜504d3に対しては熱電変換モジュール501aと熱電変換モジュール501bと間の空間を経由して排ガスが到達するため、下流側に位置する吸熱フィン504a3〜504d3においても、優れた熱エネルギー効率にて吸熱を図ることができる。そして、熱電変換ユニット510としては、下流側においても十分な発電量を得ることができるため、全体として発電量が向上することになる。
【0048】
なお、変形例5においては、熱電変換モジュール501a〜501dのそれぞれに設けられている吸熱フィン504の形状、寸法、及び表面積は同一としているが、変形例3のように下流に向けて表面積が大きくなるようにしてもよく、或いは変形例2のように1枚の吸熱フィンとしてもよい。また、変形例1の千鳥配置を本変形例5に組み合わせるようにして、熱電変換モジュール501a〜501dを構成してもよい。当然のことながら、本変形例5における熱電変換モジュール501a〜501dの配置を上述した実施例のように千鳥状に配設してもよい。いずれの場合であっても、排ガスの排気経路の形状、及び温度分布に応じて、各構成を適宜変更及び組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0049】
1 熱電変換モジュール
2a 第1熱電変換素子
2b 第2熱電変換素子
3a 第1電極
3b 第2電極
4 吸熱フィン
5 吸熱部
10 熱電変換ユニット
20 エンジンユニット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9