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特開2017-175690充電装置、並びに、それを備えた電子機器用ケース及び電子機器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-175690(P2017-175690A)
(43)【公開日】2017年9月28日
(54)【発明の名称】充電装置、並びに、それを備えた電子機器用ケース及び電子機器
(51)【国際特許分類】
   H02N 11/00 20060101AFI20170901BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20170901BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20170901BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20170901BHJP
【FI】
   H02N11/00 A
   H02J7/00 303A
   H01M10/44 Q
   H01M10/48 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2016-56492(P2016-56492)
(22)【出願日】2016年3月22日
(71)【出願人】
【識別番号】500073630
【氏名又は名称】株式会社日経ビーピー
(74)【代理人】
【識別番号】110001782
【氏名又は名称】特許業務法人ライトハウス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】水野 伸二
(72)【発明者】
【氏名】松廣 勝仁
【テーマコード(参考)】
5G503
5H030
【Fターム(参考)】
5G503AA07
5G503BA01
5G503BB01
5G503DA04
5H030AA01
5H030AS14
5H030AS18
5H030BB07
5H030BB10
5H030FF41
(57)【要約】
【課題】
本発明は、温度勾配や太陽光を利用せずに、例えば、室温や体温程度の温度であっても十分な電力を発電することが可能であり、発電した電力によって電子機器に備えられた二次電池を充電することが可能な、充電装置を提供することを目的とする。
【解決手段】
本発明は、電子機器に備えられた二次電池の充電に用いる充電装置であって、分子の振動エネルギーを電気エネルギーに変換する発電部と、発電部が発電した電力を電子機器に供給する電力供給部とを備える、充電装置に関する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器に備えられた二次電池の充電に用いる充電装置であって、
分子の振動エネルギーを電気エネルギーに変換する発電部と、発電部が発電した電力を電子機器に供給する電力供給部とを備える、充電装置。
【請求項2】
さらに、発電部において発電された電力を蓄電する二次電池を備える、請求項1に記載の充電装置。
【請求項3】
さらに、電子機器に備えられた二次電池の充電状態を検知する検知手段と、電子機器に備えられた二次電池の充電状態に応じて、電力供給部から電子機器への電力の供給量を制御する制御部とを備える、請求項1又は2に記載の充電装置。
【請求項4】
発電部が、発電層を有する発電素子を含み、
発電層が、正極と負極との間に、発電補助材料と、半導体材料(α)と、荷電子帯の上端のエネルギー準位が半導体材料(α)の荷電子帯の上端のエネルギー準位より高く、かつ、伝導帯の下端のエネルギー準位が半導体材料(α)の伝導帯の下端のエネルギー準位よりも高い半導体材料(β)とを含む、請求項1〜3のいずれかに記載の充電装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の充電装置を備えた、電子機器用ケース。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかに記載の充電装置を備えた、電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分子の振動エネルギーを電気エネルギーに変換する発電素子を備えた充電装置、並びに、それを備えた電子機器用ケース及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、多機能携帯電話機(例えば、スマートフォン)や、タブレット端末、ノートパソコン、携帯型音楽プレーヤー、携帯型ゲーム機などの携帯型電子機器の多機能化や高性能化が進んでいる。
【0003】
しかし、このような多機能化や高性能化は、携帯型電子機器の性能を向上させる一方で、使用電力量を増加させ、携帯型電子機器に内蔵された二次電池(以下、バッテリともいう)の駆動時間を短くさせるといった問題を起こしていた。特に、多機能携帯電話機やタブレット端末などの携帯型端末は、日常生活における使用頻度が高いため、バッテリの駆動時間が短いことが大きな問題となっている。
【0004】
上記の問題を解決するため、例えば、携帯型電子機器に使用電力量を低減するようなプログラムを適用したり、携帯型の充電装置を取り付けたりして、バッテリの駆動時間を確保する技術が検討されている。特に、携帯型の充電装置は、携帯型電子機器に備えられたバッテリの起電力を回復するものであるため、利用価値が高い。
【0005】
このような携帯型の充電装置としては、例えば、携帯型端末装置の保護ケースに予備バッテリを内蔵させ、該予備バッテリによって充電を行なう装置(例えば、特許文献1)が提案されている。
【0006】
また、温度差によって発電を行なう熱電発電素子を携帯電話機の筐体内部表面に近接して配置して、熱電発電素子が発電した電力を携帯電話機の内蔵バッテリに供給して充電を行なう装置(例えば、特許文献2)や、太陽電池が発電した電力を携帯機器の内蔵バッテリに供給して充電を行なう装置(例えば、特許文献3)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実用新案登録第3135487号
【特許文献2】特開2011−66965号公報
【特許文献3】特開2011−19316号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1に記載されている充電装置は、発電能力を備えるものではないため、予備バッテリに内蔵された電力を使い果たすと、それ以上の充電ができなくなるという問題があった。
【0009】
特許文献2及び特許文献3に記載されている充電装置は、発電能力を備えるものであるため、上記のような問題は生じない。しかし、特許文献2で用いられている熱電発電素子は、2種類の異なる金属又は半導体を接合して、それらの両端に生じる温度勾配によって発電をする、いわゆるゼーベック効果を利用するものであり、携帯電話機の内部と表面との温度差程度では、十分な発電を行なうことは難しかった。また、特許文献3で用いられている太陽電池は、光起電力効果を利用して、太陽光などの光エネルギーを電力に変換するものであるため、曇りの日などの日射量が減少する条件下では発電効率が落ちてしまい、また、夜間やビルの中、地下鉄内、又はカバンの中などでは発電できないという問題があった。
【0010】
本発明は、上記のような課題を鑑みてなされたものである。すなわち、本発明の課題は、温度勾配や太陽光を利用せずに、例えば、室温や体温程度の温度であっても十分な電力を発電することが可能であり、発電した電力によって電子機器に備えられた二次電池を充電することが可能な、充電装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の要旨は、以下の通りである。
【0012】
[1]電子機器に備えられた二次電池の充電に用いる充電装置であって、分子の振動エネルギーを電気エネルギーに変換する発電部と、発電部が発電した電力を電子機器に供給する電力供給部とを備える、充電装置。
【0013】
[2]さらに、発電部において発電された電力を蓄電する二次電池を備える、上記[1]に記載の充電装置。
【0014】
[3]さらに、電子機器に備えられた二次電池の充電状態を検知する検知手段と、電子機器に備えられた二次電池の充電状態に応じて、電力供給部から電子機器への電力の供給量を制御する制御部とを備える、上記[1]又は[2]に記載の充電装置。
【0015】
[4]発電部が、発電層を有する発電素子を含み、発電層が、正極と負極との間に、発電補助材料と、半導体材料(α)と、荷電子帯の上端のエネルギー準位が半導体材料(α)の荷電子帯の上端のエネルギー準位より高く、かつ、伝導帯の下端のエネルギー準位が半導体材料(α)の伝導帯の下端のエネルギー準位よりも高い半導体材料(β)とを含む、上記[1]〜[3]のいずれかに記載の充電装置。
【0016】
[5]上記[1]〜[4]のいずれかに記載の充電装置を備えた、電子機器用ケース。
【0017】
[6]上記[1]〜[4]のいずれかに記載の充電装置を備えた、電子機器。
【発明の効果】
【0018】
本発明の充電装置は、分子の振動エネルギー(以下、熱エネルギーともいう)を電気エネルギーに変換する発電部を備えることにより、温度勾配や太陽光を利用せずに、例えば、室温や体温程度の温度であっても十分な電力を発電することが可能であるため、電子機器に備えられた二次電池への電力の供給を安定して行なうことができる。特に、スマートフォンなどの携帯端末は、上着の胸ポケットやズボンのポケット等に身に着けている場合が多いため、使用者の体温によって十分な電力を発電することが可能な本発明の充電装置は、スマートフォンなどの携帯端末用の充電装置として、好適に用いることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の充電装置の一例を示す模式的な構成図である。
図2】本発明の電子機器用ケースの一例を示す模式的な構成図である。
図3】本発明の充電装置における発電素子の一例を示す模式的な構成図である。
図4】本発明の実施の形態に係る、充電装置における発電素子の出力電圧及び出力電流を測定する試験装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明に係る充電装置について、図面を参照しつつ説明する。以下に説明する充電装置、並びに該装置を備えた電子機器用ケース及び電子機器は、本発明を実施するための形態の一つであり、本発明の趣旨に反しない限り、以下の実施の形態に限定されない。
【0021】
[充電装置]
図1は、本実施の形態に係る充電装置の模式的な構成図である。図1に示すように、本実施の形態に係る充電装置20は、複数の発電素子1を含む発電部21と、電力供給部22と、基板23と、配線24とを備える。
【0022】
発電部21は、熱エネルギーを電気エネルギーに変換する発電素子1を含むことによって、電気エネルギーを発生する機能を有する。図1は、5個の発電素子1が配線24を通じて直列に接続された状態を示すが、発電部21を構成する発電素子1の数やその接続形態はこれに限定されず、発電素子1の発電能力や、充電装置の用途に応じて適宜決定することができる。発電部21は、少なくとも1つの発電素子1を含んでいれば良く、また、発電素子1を複数含む場合の接続形態は、直列接続でも良いし、並列接続でも良い。なお、発電素子1については、後の段落にて詳述する。
【0023】
電力供給部22は、配線24によって発電部21と電気的に接続されており、外部の電子機器(例えば、多機能携帯電話機やタブレット端末などの携帯型端末)と電気的に接続するための接続端子(図示せず)を備えている。
【0024】
電力供給部22は、外部の電子機器の充電端子と電気的に接続されることで、発電部21が発電した電力を該電子機器に供給し、該電子機器に備えられたバッテリを充電する。電力供給部22と外部の電子機器の充電端子とは、直接的に接続しても良く、導電ケーブルなどを経由して間接的に接続しても良いが、発電部21が発電した電力のロスを少なくするという観点から、直接的に接続することが好ましい。従って、電力供給部22の接続端子の形状は、外部の電子機器の充電端子の形状に適合する形状とすることが好ましい。
【0025】
電力供給部22は、外部の電子機器の充電端子と接続する接続端子の他に、該電子機器から出力される音声情報や映像情報を、他の電子機器等へと出力する出力端子(図示せず)を備えていても良い。一般的に、スマートフォンなどの多機能携帯電話機では、充電端子と外部機器への出力端子が同一であることが多く、充電中は他の電子機器への外部出力ができない場合が多いが、上記のような構成とすることによって、充電装置20の接続端子と外部の電子機器の充電端子とを接続したまま、つまり、該電子機器を充電しながらであっても、該電子機器からその他の電子機器への外部出力が可能となる。
【0026】
配線24は、複数の発電素子1間、及び発電部21と電力供給部22とを電気的に接続している。配線24の材料としては、特に限定されず、公知の材料を用いることができるが、例えば、銀を含む導電性ペーストや、太陽電池モジュールの集電体に用いられるようなAg、Ni、Cu、Sn、Au、V、Al及びPtからなる群より選択される少なくとも1種以上の金属並びにこれらを用いた合金、カーボン材料、又は透明導電材料(ITOなど)などを用いることが好ましい。上記の好ましい材料は抵抗値が低いため、配線24における電力のロスを抑えることができる。なお、上記の好ましい材料は、1種単独もしくは2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0027】
基板23は、発電部21と電力供給部22と配線24とを支持するものである。図1において、発電部21と電力供給部22と配線24とは、基板23上に形成されており、基板23上に固定されている。このような構成によって、各構成要素間の電気的な接続を確実で強固なものとし、充電装置20の物理的強度を向上させることができる。また、後述する電子機器用ケースへの適用も容易となる。
【0028】
なお、物理的強度をより向上させるという観点から、発電部21と電力供給部22と配線24とから構成される回路は、外部に露出しないように形成することが好ましく、例えば、基板23の内部に形成したり、絶縁性を有する保護部材によって覆われた構成としたりすることが好ましい。
【0029】
基板23の材料としては、絶縁性を有するものであれば特に限定されず、ガラス基板などの公知の材料を用いることができるが、例えば、軽量性及び柔軟性に優れるという観点からは、ポリイミド、ポリアミド、ポリイミドアミド、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等の合成樹脂を用いることが好ましい。
【0030】
また、これらの合成樹脂は、さらに、アルミナ、炭化珪素、シリカ、酸化マグネシウム等の絶縁性及び高熱伝導性を有するフィラーを含むことが好ましい。これらのフィラーを含むことにより基板23の熱伝導性が高くなるため、外部の電子機器が発する熱を発電素子1に効率的に伝達することができ、発電素子1の発電効率を向上させることができる。
【0031】
本発明の充電装置20は、発電素子1により、熱エネルギーを電気エネルギーに変換するものである。このことを別の側面から見ると、本発明の充電装置20は、発電能力を有すると同時に、吸熱効果を奏するものであるともいえる。従って、本発明の充電装置20を外部の電子機器に接触させて使用する場合、該電子機器の使用時における該電子機器本体の放熱を助成することができる。
【0032】
充電装置20は、発電部21において発電された電力を蓄電し、蓄電された電力を電力供給部22に供給する二次電池(図示せず)を備えることが好ましい。充電装置20が二次電池を備えることにより、発電部21において発生した余剰電力を貯蔵し、必要に応じて、該余剰電力を外部の電子機器へ供給することができる。例えば、外部の電子機器のバッテリ残量が十分な場合は、電力供給部22と該電子機器の充電端子とを接続せず、その間に発電部21において発生した電力を充電装置20の二次電池に蓄えることが可能となる。
【0033】
また、充電装置20は、外部の電子機器への電力供給を開始及び停止するスイッチなどを備えていることが好ましい。このような構成を採用することにより、例えば、電力供給部22と外部の電子機器の充電端子とを接続した状態においても、該電子機器のバッテリ残量が十分な場合は、発電部21において発生した電力を充電装置20の二次電池に蓄えることが可能となる。
【0034】
充電装置20は、外部の電子機器に備えられた二次電池の充電状態を検知する検知手段(図示せず)を備えることが好ましい。また、充電装置20は、外部の電子機器に備えられた二次電池の充電状態に応じて、電力供給部22から該電子機器への電力の供給量を制御する制御部(図示せず)を備えることが好ましい。充電装置20が、検知手段と制御部とを備えることで、外部の電子機器に備えられた二次電池の充電状態に応じて、自動的に適切な電力の供給を行なうことが可能となる。
【0035】
充電装置20の厚さとしては、特に限定されないが、例えば、0.5mm以上であることが好ましく、1mm以上であることがより好ましい。また、充電装置20の厚さは、10mm以下であることが好ましく、5mm以下であることがより好ましい。充電装置20の厚さが0.5mm未満の場合は、十分な発電能力を得ることが困難になる傾向にあり、また、充電装置20の厚さが10mmを越える場合は、充電装置としての機能に問題が生じることはないが、例えば、既存の多機能型電話機と既存の多機能型電話機用保護ケースとの間に充電装置20を配置して利用することが困難になる傾向にある。
【0036】
[発電素子]
図3は、本実施の形態にかかる、充電装置20の発電部21を構成する発電素子1の模式的な構成図である。本実施の形態に係る発電素子1は、図3に示すように、正極2と、ホール輸送層3と、発電層4と、負極5とがその順で配置された構造形態を有している。以下、発電素子1の構成について説明する。
【0037】
(正極、負極)
正極2及び負極5は、導電性材料であり、正極2の仕事関数が負極5の仕事関数と同じか高い材料を用いる。正極2の仕事関数が負極5の仕事関数より高いことが好ましい。
【0038】
正極2としては、特に限定されないが、例えば、インジウム錫酸化物(ITO)等の導電性酸化物材料、炭素材料、銅、銅合金、SUS430等のステンレス鋼、錫めっき銅、白金、金、又はタングステンもしくはその酸化物などを用いることができる。正極2の材料は、仕事関数を考慮して決定することができ、負極5の材料の仕事関数よりも高いことが好ましい。例えば、負極5にアルミニウムを用いた場合、正極2の材料としては、負極5の材料より仕事関数が高く、安価に入手できるという観点から、インジウム錫酸化物、銅、又は炭素材料が好ましい。負極5にインジウム錫酸化物を用いた場合は、正極2の材料としては、負極5の材料より仕事関数が高いという観点から、白金、金、又はタングステンもしくはその酸化物が好ましい。また、正極2の材料は他の金属にコーティングした形で用いてもよい。
【0039】
負極5としては、特に限定されないが、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、Mg−Alなどのマグネシウム合金、銀、又は亜鉛などを用いることができる。負極5の材料は、仕事関数を考慮して決定することができ、正極2の材料の仕事関数よりも低いことが好ましい。例えば、正極2に銅又は炭素材料を用いた場合、負極5の材料としては、正極2の材料より仕事関数が低く、安価に入手できるという観点から、アルミニウム、又は亜鉛が好ましい。正極2に白金又は金を用いた場合は、負極5の材料としては、インジウム錫酸化物が好ましい。また、負極5の材料は他の金属にコーティングした形で用いてもよい。
【0040】
正極2及び負極5の形状は特に限定されず、発電素子1の形状に応じた形状に加工することができる。例えば、発電素子1が、平面配置型用の発電素子1である場合には、正極2と負極5が対向して配置され、正極2と負極5の間にホール輸送層3及び発電層4が設けられる。
【0041】
なお、この平面配置型の発電素子1は、複数の発電素子1の正極2と負極5とを順次、直列に接続することで直列配置型の発電素子複合体にする、或いは、複数の発電素子1の正極2と負極5とを順次、並列に接続することで並列配置型の発電素子複合体にすることができる。発電素子複合体を構成する発電素子1の数や接続方法は、充電装置に求められる発電能力に応じて、適宜設計することができる。
【0042】
(ホール輸送層)
発電素子1は、正極2と発電層4との間に、ホール輸送層3を有することが好ましい。正極2と発電層4との間に、ホール輸送層3を有することによって、発電層4から正極2へのホールの取出しを安定化させ、発電効率を向上させることができ、また、逆電流が生じることを防止することができる。ホール輸送層3としては、ホール伝導が観測されるものであれば、特に限定されないが、例えば、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)−ポリ(スチレンスルホン酸)(PEDOT−PSS)、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)−ポリ(ビニルスルホン酸)、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリ(p−フェニレン)、ポリフルオレン、ポリ(p−フェニレンビニレン)、ポリチエニレンビニレン、グラフェン、などのp型導電性高分子;MoO、CuAlO、CuGaO、LiNiOなどのp型金属酸化物を用いることが好ましい。これらの中でも、ホールの移動度が高く、安価に入手できるという観点から、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)−ポリ(スチレンスルホン酸)又はMoOが好ましい。
【0043】
(電子輸送層)
図2には図示されていないが、発電素子1は、負極5と発電層4との間に、さらに電子輸送層を有することが好ましい。負極5と発電層4との間に電子輸送層の薄膜を設けることで、発電層4から負極5への電子の取出し効率を安定化させ、発電効率を向上させることができ、また、正孔が負極5側に流れることを防止できる傾向にある。電子輸送層に用いる材料としては、特に制限はないが、例えば、n型半導体材料などを用いることができる。電子輸送層に用いる材料の具体例としては、例えば、フッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化セシウム、酸化アルミニウム、酸化スズ、酸化リチウム、酸化マグネシウム、又は酸化カルシウムなどが挙げられる。これらの中でも、化学的に安定であるという観点から、フッ化リチウム、酸化アルミニウム、又は酸化スズを用いることが好ましい。
【0044】
(発電層)
発電層4は、発電補助材料と、半導体材料(α)と、半導体材料(β)とを含んだ層である。発電層4では、例えば、発電補助材料が分子の振動エネルギー(熱エネルギー)を吸収することよって赤外線を放射し、その放射された赤外線を、半導体材料(α)及び半導体材料(β)のエネルギー準位の差を利用して電気エネルギーに変換することができる。
【0045】
発電補助材料は、振動エネルギーを赤外線に変換し放射することが可能な赤外線放射材料であることが好ましい。赤外線放射材料としては、特に限定されないが、赤外線の吸収強度の大きい物質、例えば、二酸化ケイ素、シリコーン、カーボン、又はフェライトなどを用いることが好ましい。赤外線の吸収強度が大きい物質は、赤外線の放射強度も大きいため、強い赤外線を放射することができ、発電効率が高くなる。上記の物質の中でも、特に、赤外線の吸収強度が大きく、また安価であるという理由から、二酸化ケイ素を用いることがより好ましい。なお、上記の赤外線放射材料は、1種単独もしくは2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0046】
赤外線の吸収強度は、赤外分光法、近赤外分光法、またはラマン分光法など公知の方法によって測定することができる。発電補助材料としては、例えば、近赤外分光法を用いて測定した場合、赤外領域(例えば、波数12500〜4000cm−1)において、吸光度が1以上となるピークを有することが好ましい。発電補助材料が、赤外領域において、吸光度が1以上となるピークを有する場合は、赤外線の吸収強度及び放射強度が大きくなるため、発電効率を向上させることができる。
【0047】
発電補助材料の平均粒径は、入手の容易さや組成物作製上の問題がない範囲で各種の大きさのものを選択することができるが、発電補助材料の平均粒径は、4〜100nmであることが好ましく、4〜40nmであることがより好ましい。発電補助材料の平均粒径が4nm未満の場合は、赤外線放射材料としての特徴を示さなくなる傾向にあり、平均粒径が100nmを超えると、発電補助材料の体積が大きくなるため、体積あたりの赤外線の吸収強度(放射強度)が低下し、発電効率が下がる傾向にある。なお、本明細書において、平均粒径とは一次粒子の平均粒径をいい、原料の段階では走査型電子顕微鏡(SEM)によって測定することができ、組成物を構成した後も走査型電子顕微鏡(SEM)によって測定することができる。
【0048】
発電層4には、発電補助材料から放射された赤外線を電気エネルギーに変換するために、半導体材料(α)及び半導体材料(β)が含まれる。半導体材料(β)は、荷電子帯の上端のエネルギー準位が半導体材料(α)の荷電子帯の上端のエネルギー準位より高く、かつ、伝導帯の下端のエネルギー準位が半導体材料(α)の伝導帯の下端のエネルギー準位よりも高い半導体材料が用いられる。半導体材料(α)の荷電子帯の上端と、半導体材料(β)の荷電子帯の上端とのエネルギー差は、2.0eV以下であることが好ましく、0.9eV以上であることがより好ましく、1.7eV以下であることがより好ましい。また、半導体材料(α)の伝導帯の下端と、半導体材料(β)の伝導帯の下端とのエネルギー差は、2.0eV以下であることが好ましく、0.9eV以上であることがより好ましく、1.7eV以下であることがより好ましい。
【0049】
発電素子1における発電のメカニズムは明らかではないが、半導体材料(α)が相対的に電子受容体のような役割を果たし、半導体材料(β)が相対的に電子供与体のような役割を果たすことで、赤外線の光エネルギーを電気エネルギーに変換するものと考えられる。具体的には、次のような現象が起こっていると推測される。
【0050】
半導体材料(α)および半導体材料(β)それぞれの伝導帯および荷電子帯のエネルギー差が、例えば、2.0eV以下であることにより、赤外線が半導体材料(α)または半導体材料(β)に照射された場合、半導体材料(α)と半導体材料(β)との接合面において、半導体材料(β)の伝導帯に存在していた電子が半導体材料(α)の伝導帯へと移動し、半導体材料(α)の価電子帯に存在していたホールが半導体材料(β)の価電子帯へと移動し、電荷分離状態を形成する。そして、電子は半導体材料(β)よりもエネルギー準位が低い半導体材料(α)の伝導帯を移動して正極2へ流れ、ホールは半導体材料(β)の荷電子帯を移動して負極5へと流れることで、外部回路に電流が流れるものと思われる。
【0051】
発電補助材料が熱エネルギーを吸収した場合、その熱エネルギーは、最終的に、半導体材料(α)及び半導体材料(β)によって、電気エネルギーに変換される。このことを別の側面から見れば、発電補助材料、半導体材料(α)、及び半導体材料(β)を有する素子は、吸熱反応を行っていると捉えることもできる。従って、発電補助材料、半導体材料(α)、及び半導体材料(β)を有する素子は、例えば、電子機器などの冷却手段として用いることも可能である。
【0052】
半導体材料(α)は、化学的安定性や電子移動度が高いことから、二酸化スズが好ましい。半導体材料(β)は、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化タングステン、及び酸化亜鉛からなる群より選ばれる少なくとも1種以上の材料を含むことが好ましい。半導体材料(α)に二酸化スズを用いた場合、半導体材料(β)としては、半導体材料(α)に比べてエネルギー準位が高く、また、正極2の材料より仕事関数が低いといった観点から、酸化チタン、酸化ニオブ、酸化タンタル、又は酸化亜鉛などが好ましい。上記した好ましい半導体材料(α)と、好ましい半導体材料(β)との組合せは、荷電子帯の上端同士及び伝導帯の下端同士のエネルギー差が2.0eV以下であるという条件、さらには、0.9eV以上で、1.7eV以下であるという条件を満たしている。なお、半導体材料(α)及び半導体材料(β)は、1種単独もしくは2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0053】
半導体材料(α)及び半導体材料(β)の平均粒径は、入手の容易さや組成物作製上の問題がない範囲で各種の大きさのものを選択することができるが、半導体材料(α)の平均粒径は、4〜100nmであることが好ましく、4〜10nmであることがより好ましい。半導体材料(α)の平均粒径が4nm未満の場合は、半導体としての特徴を示さなくなる傾向にあり、平均粒径が100nmを超えると、半導体材料(α)の体積が大きくなるため、体積あたりの発電効率が下がる傾向にある。
【0054】
発電層4の構造としては、特に限定されず、例えば、積層構造としてもよく、バルクヘテロジャンクション構造としてもよいが、発電効率を向上させるという観点からは、バルクヘテロジャンクション構造とすることが好ましい。
【0055】
赤外線の照射強度は、光源からの距離の二乗に反比例する。赤外線の照射強度の減衰を防止し、発電効率を向上させる観点からは、発電補助材料、半導体材料(α)、及び半導体材料(β)は、それぞれ粒子状のものを用いて、発電層4中に均一に分散させることが好ましく、発電層4中に最密充填構造又は最密充填構造に近い構造をとるように配列させることがより好ましい。
【0056】
発電補助材料、半導体材料(α)、及び半導体材料(β)を発電層4中に均一に分散させるためには、各粒子を溶媒中に分散させ、その分散液を遠心分離などの公知の方法を用いて固形分と液分を分離させ、その固形分を十分に洗浄して得られる粉末を用いて、発電層4を形成することが好ましい。分散させる溶媒としては、発電補助材料、半導体材料(α)、及び半導体材料(β)を溶解させないものであれば、特に制限はないが、安全に使用でき、また安価であることから、水を用いることが好ましい。
【0057】
また、発電層4を形成する際において、半導体材料(β)としては、上記したような金属酸化物の粒子そのものを直接、分散媒に添加するのではなく、加水分解などによって該金属酸化物を生成することが可能な金属酸化物の前駆体を添加しても良い。金属酸化物の前駆体としては、特に限定されないが、例えば、塩化チタン、塩化ニオブ、塩化タンタル、塩化亜鉛などの金属塩化物や、チタンアルコキシド、ニオブアルコキシド、タンタルアルコキシド、亜鉛アルコキシドなどの金属アルコキシドを用いることが好ましい。
【0058】
発電層4の全質量は、発電補助材料と半導体材料(α)と半導体材料(β)との和からなる。半導体材料(α)の含有量は、発電層4の全質量に対して、1〜30質量%であることが好ましく、10〜25質量%であることがより好ましい。半導体材料(α)の含有量が発電層4の全質量に対して1質量%未満の場合は、赤外線を十分に電力に変換することができず、発電効率が低下する傾向にあり、30質量%を超えても、それ以上の発電効率の向上は見られない傾向にある。同様に、半導体材料(β)の含有量は、発電層4の全質量に対して、1〜30質量%であることが好ましく、5〜30質量%であることがより好ましい。半導体材料(β)の含有量が発電層4の全質量に対して1質量%未満の場合は、赤外線を十分に電力に変換することができず、発電効率が低下する傾向にあり、30質量%を超えても、それ以上の発電効率の向上は見られない傾向にある。
【0059】
また、半導体材料(α)及び半導体材料(β)の混合比(半導体材料(α)/半導体材料(β))は、特に限定されないが、質量比で、1/5〜2/1の範囲にあることが好ましい。半導体材料(α)及び半導体材料(β)の混合比が上記の範囲にあることで、赤外線を電気エネルギーへと変換する効率が向上し、発電効率を向上させることができる傾向にある。
【0060】
発電層4の厚さは、発電素子1の作製方法によって異なり、特に限定されないが、例えば0.05μm〜1000μmの範囲内であることが好ましい。発電層4の厚さが0.05μm未満だと、短絡を起こしやすくなる傾向にあり、発電層4の厚さが1000μmを超えると、発電層4の内部抵抗が高くなる傾向にあり、また、電荷分離した電子とホールが再結合しやすくなることにより変換効率が下がる傾向にある。
【0061】
発電層4は、発電補助材料、半導体材料(α)及び半導体材料(β)の混合物によって形成された層であるが、本発明の効果を阻害しない範囲で、他の無機物や有機物を含んでいてもよい。
【0062】
(発電素子の作製方法)
発電素子1の作製方法は、特に限定されず、各種公知の方法で作製することができる。例えば、正極2上に、p型導電性高分子を滴下又は塗布することで、ホール輸送層3を形成することができる。次いで、ホール輸送層3上に、発電補助材料、半導体材料(α)、及び半導体材料(β)を溶媒に均一に分散させた分散液を滴下又は塗布することで、発電層4を形成することができる。最後に、発電層4上に、真空蒸着やスパッタリング等の方法を用いて、負極5を形成することができる。
【0063】
こうして作製された発電素子1は、平面的な直列構造又は並列構造になるように接続することができる。複数の発電素子1を直列に接続して発電素子複合体を構成する場合、隣り合う発電素子の正極2と負極5とを、カシメ、圧接、ロウ付け等で接続して直列構造にすることができる。また、発電素子1を並列接続して発電素子複合体を構成する場合、長く延びる電極に、発電素子1の正極2と負極5とをそれぞれ、カシメ、圧接、ロウ付け等で接続して並列構造にすることができる。
【0064】
このような発電素子複合体は、複数の発電素子1を接続して1次元的(直列配置)又は二次元的(並列配置)に作製することができるが、厚さ方向に積層して三次元的な立体構造にすることもできる。
【0065】
発電素子1や発電素子複合体において、発電素子1に水分が侵入するのを避けることが好ましい。水分の侵入防止手段としては、周囲を封止材で充填したり、全体を封止材で覆ったりすることが好ましい。こうした水分の侵入防止手段により、発電素子1の発電電流値の低下を抑制することができる。
【0066】
[電子機器用ケース]
図2は、本実施の形態に係る充電装置20を備えた電子機器用ケース25の模式的な構成図である。図2において、充電装置20の各構成は図1と同様であるため、その符号番号及び説明は省略する。
【0067】
図2に示すように、充電装置20は、電子機器用ケース25における電子機器の背面が接する側(電子機器用ケースの内側)に配置すること、すなわち、電子機器用ケース25を電子機器に装着した際、充電装置20と電子機器とが接触するように設けられていることが好ましい。このような構成により、電子機器が発生する熱を効率的に吸収することができ、発電素子1の発電効率を向上させることができる。
【0068】
また、充電装置20は、電子機器用ケース25を電子機器に装着した際、充電装置20の電力供給部22が電子機器の充電端子と接続可能なように配置されていることが好ましい。
【0069】
充電装置20を電子機器用ケース25に固定する方法としては、特に制限されず、接着剤やネジなどによって固定したり、電子機器用ケース25に充電装置20を係止するための係止部を設けたり等、公知の方法を用いることができる。
【0070】
また、電子機器と充電装置20とは、充電端子と電力供給部22とにおいて、結合した状態とすることが可能であるため、単に電子機器用ケース25内に充電装置20を配置するような構成にしてもよい。
【0071】
上述のように充電装置20は、熱エネルギーを電気エネルギーに変換する発電素子1を利用するものであり、吸熱効果を有するものであるため、電子機器用ケース25の材料は、電子機器の放熱問題を特段考慮せずともよく、公知のものをいずれも採用することができる。
【0072】
電子機器用ケース25の構造や形状は、特に限定されず、電子機器用ケース25が装着される電子機器の構造や形状に応じて、適宜決定することができる。例えば、電子機器用ケース25が多機能携帯電話機に装着するものである場合、多機能携帯電話機の側面や背面に設けられているボタンやイヤホンジャック、カメラなどを、電子機器用ケース25を装着したまま使用可能とするため、適宜開放部(穴)等が設けられていてもよい。
【0073】
[電子機器]
本発明の電子機器は、熱エネルギーを電気エネルギーに変換する発電部を備える上記のような充電装置が、電子機器の内部に設けられたものである。
【0074】
本発明の電子機器においては、充電装置の電力供給部は、電子機器に内蔵されたバッテリに直接電力を供給するように設計しても良い。上述のように、上記充電装置は、電力を発生させるとともに、吸熱効果を奏するものであるから、電子機器のバッテリ駆動時間を延長させるだけではなく、CPU等から発生する熱を吸収することも可能である。従って、本発明の電子機器は、バッテリ駆動時間が長く、電子機器から発せられる熱量が少ないものとなる。
【0075】
[用途]
本発明の充電装置20は、種々の電子機器に適用することができ、例えば、多機能携帯電話機(例えば、スマートフォン)や、タブレット端末、ノートパソコン、携帯型音楽プレーヤー、携帯型ゲーム機、デジタルカメラ、ビデオカメラなどの携帯型電子機器の充電装置として好適に用いることができる。特に、多機能携帯電話機やタブレット端末などの携帯型端末は、保護ケースに収納して用いられることが多いため、保護ケースの内部に収納可能な本発明の充電装置は、非常に有用である。また、本発明の充電装置は体温程度の温度によって十分な電力を発電することが可能であるため、携帯型端末の中でも、上着の胸ポケットやズボンのポケット等に身に着けて所持することの多いスマートフォン用の充電装置として、特に有用である。
【0076】
以下に参考例を示して、本実施の形態に係る、リモコン装置の発電部を構成する発電素子をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0077】
[参考例1]
[二酸化ケイ素、酸化ニオブ、及び二酸化スズの混合粉末の調製]
五塩化ニオブ(純正化学株式会社製)25質量部をエタノール200質量部に溶解させた。次に、該五塩化ニオブ・エタノール溶液2.5質量部と、二酸化ケイ素の20%水分散体(日産化学工業株式会社製、「ST−O−40」、平均粒径40nm)10質量部と、二酸化スズの20%水分散体(ユニチカ株式会社製、酸化スズゾル「AS20I」、平均粒径7nm)1.5質量部とを、混合し撹拌した。該混合水分散体中で、五塩化ニオブは加水分解され、酸化ニオブとなった。次に、得られた二酸化ケイ素粒子、酸化ニオブ粒子、及び二酸化スズ粒子を含む混合水分散体から、固形分を分離した。得られた固形分を十分に洗浄した後、100℃で乾燥させることで、二酸化ケイ素粒子、酸化ニオブ粒子、及び二酸化スズ粒子からなる参考例1の混合粉末を得た。混合水分散体における二酸化ケイ素の20%水分散体、五塩化ニオブ・エタノール溶液、及び二酸化スズの20%水分散体の混合割合、及び混合粉末における各成分の含有率を、表1に示す。
【0078】
[参考例2〜5]
混合水分散体における混合割合を表1に示すように変更したこと以外は、参考例1と同様の方法を用いて、参考例2〜5の混合粉末を得た。混合粉末における各成分の含有率を、表1に示す。
【0079】
【表1】
【0080】
発電素子を以下のように作製した。先ず、平板状の銅部材を正極2として準備した。次いで、平板状のアルミニウム部材を負極5として準備し、アルミニウム部材上に1.8cm×1.5cmの窓を開けた厚さ0.8mmの両面テープを貼り付けた。両面テープの窓に、参考例1で得られた二酸化ケイ素粒子(平均粒径:40nm)、酸化ニオブ粒子、及び二酸化スズ粒子(平均粒径:7nm)からなる混合粉末を充填し、発電層4を形成した。発電層4の厚さは、両面テープの厚さと同じく、0.8mmである。最後に、上記の正極2を両面テープ上に積層させ、発電素子を得た。参考例2〜5で得られた混合粉末についても、同様の方法を用いて、発電素子を作製した。
【0081】
(評価)
図3に示す試験装置を用いて、上記のようにして得られた発電素子の出力電流及び出力電圧を測定した。図3に示す試験装置では、負極5、抵抗負荷10、スイッチ11、電流計13、正極2を、この順でリード線によって接続し、回路を形成している。また、この回路に抵抗負荷10の両端の電圧を測定できるように電圧計12が接続されている。また、温度調節器8によって温度調節が可能なヒーター6上に、負極5が下側に、正極2が上側になるようにして、発電素子1が設置されている。また、ヒーター6上の発電素子1が設置されていない部分には、温度センサ9が設置されており、ヒーター6の温度が測定できる。断熱材7は、正極2とヒーター6とを上下から挟み込むように、対向して設置されている。なお、抵抗負荷10の抵抗は、1kΩ、10kΩ、100kΩ、又は∞に変化させて測定した。電流計13及び電圧計12は、FLUKE社製のデジタルマルチメーター 8808Aを用いた。また、Z、Cp、L、tanδは、日置電機株式会社製のLCRハイテスタ3532−50を用いて測定した。測定は、ヒーター6の温度を29℃(室温)、又は100℃に変化させて行った。測定結果を表2に示す。
【0082】
【表2】
【0083】
(参考例6〜13)
混合水分散体における混合割合を表3に示すように変更したこと以外は、参考例1と同様の方法を用いて、参考例6〜13の混合粉末を得た。混合粉末における各成分の含有率を、表3に示す。
【0084】
【表3】
【0085】
発電素子を以下のように作製した。先ず、平板状の銅部材を正極2として準備した。次いで、平板状のアルミニウム部材を負極5として準備し、アルミニウム部材上に1cm×1cmの窓を開けた厚さ0.8mmの両面テープを貼り付けた。両面テープの窓に、参考例6で得られた二酸化ケイ素粒子(平均粒径:40nm)、酸化ニオブ粒子、及び二酸化スズ粒子(平均粒径:7nm)からなる混合粉末を充填し、発電層4を形成した。発電層4の厚さは、両面テープの厚さと同じく、0.8mmである。最後に、上記の正極2を両面テープ上に積層させ、発電素子を得た。参考例7〜13で得られた混合粉末についても、同様の方法を用いて、発電素子を作製した。
【0086】
[評価]
参考例6〜13で得られた混合粉末を用いて作製した発電素子について、上記と同様の方法により、出力電流及び出力電圧を測定した。参考例6〜13で得られた発電素子についての測定結果を表4に示す。
【0087】
【表4】
【0088】
[二酸化ケイ素、酸化チタン、及び二酸化スズの混合粉末の調製]
(参考例14)
四塩化チタン(和光純薬工業株式会社製)25質量部をエタノール100質量部に溶解させた。次に、該四塩化チタン・エタノール溶液1.98質量部と、二酸化ケイ素の20%水分散体(日産化学工業株式会社製、「ST−O−40」、平均粒径40nm)5質量部と、二酸化スズの20%水分散体(ユニチカ株式会社製、酸化スズゾル「AS20I」、平均粒径7nm)1質量部とを、混合し撹拌した。該混合水分散体中で、四塩化タンタルは加水分解され、酸化チタンとなった。次に、得られた二酸化ケイ素粒子、酸化タンタル粒子、及び二酸化スズ粒子を含む混合水分散体から、固形分を分離した。得られた固形分を十分に洗浄した後、100℃で乾燥させることで、二酸化ケイ素粒子、酸化タンタル粒子、及び二酸化スズ粒子からなる参考例14の混合粉末を得た。混合水分散体における二酸化ケイ素の20%水分散体、四塩化ニオブ・エタノール溶液、及び二酸化スズの20%水分散体の混合割合、及び混合粉末における各成分の含有率を、表5に示す。
【0089】
(参考例15〜18)
混合水分散体における混合割合を表5に示すように変更したこと以外は、参考例14と同様の方法を用いて、参考例15〜18の混合粉末を得た。混合粉末における各成分の含有率を、表5に示す。
【0090】
【表5】
【0091】
酸化ケイ素粒子、酸化ニオブ粒子、及び二酸化スズ粒子からなる混合粉末の代わりに、参考例14の混合粉末を用いて発電層4を形成したこと以外は、参考例6と同様の方法により、発電素子を作製した。参考例15〜18で得られた混合粉末についても、参考例14と同様の方法により、発電素子を作製した。
【0092】
[評価]
参考例14〜18で得られた混合粉末を用いて作製した発電素子について、上記と同様の方法により、出力電流及び出力電圧を測定した。測定結果を表6に示す。
【0093】
【表6】
【0094】
[二酸化ケイ素、酸化タンタル、及び二酸化スズの混合粉末の調製]
(参考例19)
四塩化タンタル(和光純薬工業株式会社製)5質量部をエタノール45質量部に溶解させた。次に、該四塩化タンタル・エタノール溶液1質量部と、二酸化ケイ素の20%水分散体(日産化学工業株式会社製、「ST−O−40」、平均粒径40nm)5質量部と、二酸化スズの20%水分散体(ユニチカ株式会社製、酸化スズゾル「AS20I」、平均粒径7nm)0.75質量部とを、混合し撹拌した。該混合水分散体中で、四塩化チタンは加水分解され、酸化チタンとなった。次に、得られた二酸化ケイ素粒子、酸化チタン粒子、及び二酸化スズ粒子を含む混合水分散体から、固形分を分離した。得られた固形分を十分に洗浄した後、100℃で乾燥させることで、二酸化ケイ素粒子、酸化チタン粒子、及び二酸化スズ粒子からなる参考例19の混合粉末を得た。混合水分散体における二酸化ケイ素の20%水分散体、四塩化ニオブ・エタノール水溶液、及び二酸化スズの20%水分散体の混合割合、及び混合粉末における各成分の含有率を、表7に示す。
【0095】
(参考例20〜23)
混合水分散体における混合割合を表7に示すように変更したこと以外は、参考例19と同様の方法を用いて、参考例20〜23の混合粉末を得た。混合粉末における各成分の含有率を、表7に示す。
【0096】
【表7】
【0097】
酸化ケイ素粒子、酸化ニオブ粒子、及び二酸化スズ粒子からなる混合粉末の代わりに、参考例19の混合粉末を用いて発電層4を形成したこと以外は、参考例6と同様の方法により、発電素子を作製した。参考例20〜23で得られた混合粉末についても、参考例19と同様の方法により、発電素子を作製した。
【0098】
[評価]
参考例19〜23で得られた混合粉末を用いて作製した発電素子について、上記と同様の方法により、出力電流及び出力電圧を測定した。測定結果を表8に示す。
【0099】
【表8】
【符号の説明】
【0100】
1 発電素子
2 正極(正極板)
3 ホール輸送層
4 発電層
5 負極(負極板)
6 ヒーター
7 断熱材
8 温度調節器
9 温度センサ
10 抵抗負荷
11 スイッチ
12 電圧計
13 電流計
20 充電装置
21 発電部
22 電力供給部
23 基板
24 配線
25 電子機器用ケース
図1
図2
図3
図4