【解決手段】それぞれヨーク片部13から延出する磁極片部18を有する対となる鉄心片10、11の帯状材12からの打抜き位置を、各鉄心片10、11のヨーク片部13が直線状となり、かつ、対となる鉄心片10、11が向い合い、一方の鉄心片11の隣り合う磁極片部18の間に、他方の鉄心片10の磁極片部18が配置される位置とし、帯状材12から打抜かれた各鉄心片10、11を積層する積層鉄心の製造方法及びその製造装置であり、帯状材12から、第1の金型により、一方の鉄心片11が有するヨーク片部13の背面側と磁極片部18の先端側とを同時に打抜いた後、第2の金型により、他方の鉄心片10が有するヨーク片部13の背面側と磁極片部18の先端側とを同時に打抜く。
それぞれヨーク片部から延出する磁極片部を有する対となる鉄心片の帯状材からの打抜き位置を、前記各鉄心片の前記ヨーク片部が直線状となり、かつ、対となる前記鉄心片が向い合い、一方の前記鉄心片の隣り合う前記磁極片部の間に、他方の前記鉄心片の前記磁極片部が配置される位置とし、前記帯状材から打抜かれた前記各鉄心片を積層する工程を含む積層鉄心の製造方法において、
前記帯状材から、一方の前記鉄心片が有する前記ヨーク片部の背面側と前記磁極片部の先端側とを同時に打抜いた後、他方の前記鉄心片が有する前記ヨーク片部の背面側と前記磁極片部の先端側とを同時に打抜くことを特徴とする積層鉄心の製造方法。
請求項1記載の積層鉄心の製造方法において、前記各鉄心片は、前記ヨーク片部が直線状の帯状鉄心片であり、前記積層鉄心は、直線状の前記各帯状鉄心片を積層した後、環状に曲げて形成されることを特徴とする積層鉄心の製造方法。
請求項1記載の積層鉄心の製造方法において、前記各鉄心片は、前記ヨーク片部が直線状の帯状鉄心片であり、前記積層鉄心は、直線状の前記各帯状鉄心片を環状に巻回しながら積層して形成されることを特徴とする積層鉄心の製造方法。
請求項1記載の積層鉄心の製造方法において、前記各鉄心片は、複数の分割鉄心片で構成され、前記積層鉄心は、前記各分割鉄心片が積層された分割積層鉄心を環状に配置して形成されることを特徴とする積層鉄心の製造方法。
請求項1〜4のいずれか1項に記載の積層鉄心の製造方法において、前記各鉄心片が有する前記ヨーク片部の背面側の打抜きは、前記ヨーク片部の長手方向に間隔をあけて行われ、該ヨーク片部の背面側の未打抜き部分を、前記帯状材から前記各鉄心片を分離する際に打抜くことを特徴とする積層鉄心の製造方法。
請求項1〜5のいずれか1項に記載の積層鉄心の製造方法において、前記各鉄心片の長手方向を、前記帯状材の搬送方向とは直交する方向に合わせて、対となる前記鉄心片の打抜きを順次行うことを特徴とする積層鉄心の製造方法。
請求項1〜5のいずれか1項に記載の積層鉄心の製造方法において、前記各鉄心片の長手方向を、前記帯状材の搬送方向に直交する方向とは異なる方向に合わせて、対となる前記鉄心片の打抜きを順次行うことを特徴とする積層鉄心の製造方法。
請求項1〜7のいずれか1項に記載の積層鉄心の製造方法において、前記各鉄心片が有する前記ヨーク片部の背面側と前記磁極片部の先端側を打抜く前に、隣り合う、一方の前記鉄心片が有する前記磁極片部の側部と、他方の前記鉄心片が有する前記磁極片部の側部との間を打抜くことを特徴とする積層鉄心の製造方法。
それぞれヨーク片部から延出する磁極片部を有する対となる鉄心片の帯状材からの打抜き位置を、前記各鉄心片の前記ヨーク片部が直線状となり、かつ、対となる前記鉄心片が向い合い、一方の前記鉄心片の隣り合う前記磁極片部の間に、他方の前記鉄心片の前記磁極片部が配置される位置とし、前記各鉄心片を前記帯状材から打抜いて積層する積層鉄心の製造装置において、
前記帯状材から、一方の前記鉄心片が有する前記ヨーク片部の背面側と前記磁極片部の先端側とを同時に打抜き可能な第1のダイと第1のパンチを備えた第1の金型と、
前記第1の金型より下流側に配置され、他方の前記鉄心片が有する前記ヨーク片部の背面側と前記磁極片部の先端側とを同時に打抜き可能な第2のダイと第2のパンチを備えた第2の金型とを有することを特徴とする積層鉄心の製造装置。
請求項9記載の積層鉄心の製造装置において、前記第1のダイ及び前記第1のパンチと前記第2のダイ及び前記第2のパンチはそれぞれ、前記各鉄心片が有する前記ヨーク片部の背面側の打抜きを、前記ヨーク片部の長手方向に間隔をあけて行うことが可能で、
前記第1、第2の金型より下流側には、前記各鉄心片が有する前記ヨーク片部の背面側の残存する未打抜き部分を打抜き、前記帯状材から前記各鉄心片を分離可能な第3のダイと第3のパンチを備えた第3の金型が配置されていることを特徴とする積層鉄心の製造装置。
請求項9又は10記載の積層鉄心の製造装置において、前記第1、第2の金型より上流側には、隣り合う、一方の前記鉄心片が有する前記磁極片部の側部と、他方の前記鉄心片が有する前記磁極片部の側部との間を打抜き可能な第4のダイと第4のパンチを備えた第4の金型が配置されていることを特徴とする積層鉄心の製造装置。
【背景技術】
【0002】
積層鉄心の製造方法としては、例えば、以下に示す方法(A)〜(C)がある。
方法(A):帯状材から金型で打抜き形成された直線状の帯状鉄心片(一巻き分)を積層して帯状積層鉄心を形成し、これを環状に折り曲げて積層鉄心を形成する方法(特許文献1参照)。
方法(B):帯状材から金型で打抜き形成された直線状の帯状鉄心片を、環状に巻回しながら積層して積層鉄心を形成する方法(特許文献2参照)。
方法(C):帯状材から金型で打抜き形成された分割鉄心片(分割コア片)を積層した複数の分割積層鉄心を、環状に配置して積層鉄心を形成する方法。
【0003】
その際、方法(A)、(B)においては2列の帯状鉄心片を、方法(C)においては複数の分割鉄心片の分割ヨーク片部が直線状に並べられた2列の鉄心片群(以下、単に鉄心片群という)を、一方の列の隣り合う磁極片部間(スロット)に他方の列の磁極片部が配置されるように向い合わせた、即ち、各列の磁極片部が噛み合った状態のレイアウトで帯状材から打抜くことで、帯状材の歩留り(材料歩留り)を向上させることができる。
このとき、帯状材の歩留りを可能な限り向上させるため、向い合った2列の帯状鉄心片又は鉄心片群の位置をより近づけようとする場合、例えば、金型の配置の制約や寸法精度への影響により、磁極片部先端(例えば、内径側)を先に打抜き(先抜き)する必要があった。
【0004】
この磁極片部先端を先抜きする方法として、例えば、特許文献2や特許文献3には、打抜き工程の短縮や打抜きのバランス等を考慮して、2列の帯状鉄心片や鉄心片群の磁極片部先端を、同時に打抜きすることが記載されている。
また、特許文献2には、ヨーク片部背面(例えば、外径側)が別工程で2列同時に打抜きされることが記載されている。
【0005】
なお、前記した方法(A)においては、特許文献3のように、ブランク工程でヨーク片部背面を全て打抜いて、帯状材から帯状鉄心片を得ることができる。特に、帯状鉄心片が長い場合等、打抜きに大きな荷重が必要となる場合には、ブランク工程より前に、ヨーク片部背面の一部をスリット抜きしておき、ブランク工程においてその背面のスリット間を打抜くことにより、1工程のプレス荷重を軽減させることができる。この場合においても、各帯状鉄心片の磁極片部先端を同じ工程で同時に打抜きし、別工程でヨーク片部背面のスリットを同時抜きする方法が採られていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図4に示す2列の帯状鉄心片90、91(鉄心片群も同様)の打抜きにおいては、磁極片部92の先端からヨーク片部93の背面までの寸法Sが重要となる。このため、2列の帯状鉄心片90、91の各磁極片部92先端を同時に打抜きし、別工程で各ヨーク片部93背面を同時に打抜きする方法では、材料の伸び等の影響で、上記した寸法Sが安定しないという問題が発生した。なお、
図4中の符号94は、磁極片部92の先端側の打抜き部、符号95は、ヨーク片部93の背面側の打抜き部を示している。
この問題に対し、金型の位置を調整して対応することもできるが、前記寸法Sは個別に調整できないため、一方の列の寸法に問題がない場合でも、双方の列の寸法を調整することが必要となり、結果として、高精度の打抜きが困難となってしまう。
【0008】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、帯状材からの鉄心片の打抜きを、作業性よく高精度に実施可能な積層鉄心の製造方法及びその製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的に沿う本発明に係る積層鉄心の製造方法は、それぞれヨーク片部から延出する磁極片部を有する対となる鉄心片の帯状材からの打抜き位置を、前記各鉄心片の前記ヨーク片部が直線状となり、かつ、対となる前記鉄心片が向い合い、一方の前記鉄心片の隣り合う前記磁極片部の間に、他方の前記鉄心片の前記磁極片部が配置される位置とし、前記帯状材から打抜かれた前記各鉄心片を積層する工程を含む積層鉄心の製造方法において、
前記帯状材から、一方の前記鉄心片が有する前記ヨーク片部の背面側と前記磁極片部の先端側とを同時に打抜いた後、他方の前記鉄心片が有する前記ヨーク片部の背面側と前記磁極片部の先端側とを同時に打抜く。
【0010】
ここで、前記各鉄心片は、前記ヨーク片部が直線状の帯状鉄心片であり、前記積層鉄心は、直線状の前記各帯状鉄心片を積層した後、環状に曲げて形成することができる。
また、前記各鉄心片は、前記ヨーク片部が直線状の帯状鉄心片であり、前記積層鉄心は、直線状の前記各帯状鉄心片を環状に巻回しながら積層して形成することもできる。
そして、前記各鉄心片は、複数の分割鉄心片で構成され、前記積層鉄心は、前記各分割鉄心片が積層された分割積層鉄心を環状に配置して形成することもできる。
【0011】
本発明に係る積層鉄心の製造方法において、前記各鉄心片が有する前記ヨーク片部の背面側の打抜きは、前記ヨーク片部の長手方向に間隔をあけて行われ、該ヨーク片部の背面側の未打抜き部分を、前記帯状材から前記各鉄心片を分離する際に打抜くことが好ましい。
【0012】
なお、前記各鉄心片の長手方向を、前記帯状材の搬送方向とは直交する方向に合わせて、対となる前記鉄心片の打抜きを順次行うことができる。
また、前記各鉄心片の長手方向を、前記帯状材の搬送方向に直交する方向とは異なる方向に合わせて、対となる前記鉄心片の打抜きを順次行ってもよい。
【0013】
本発明に係る積層鉄心の製造方法において、前記各鉄心片が有する前記ヨーク片部の背面側と前記磁極片部の先端側を打抜く前に、隣り合う、一方の前記鉄心片が有する前記磁極片部の側部と、他方の前記鉄心片が有する前記磁極片部の側部との間を打抜くことが好ましい。
【0014】
前記目的に沿う本発明に係る積層鉄心の製造装置は、それぞれヨーク片部から延出する磁極片部を有する対となる鉄心片の帯状材からの打抜き位置を、前記各鉄心片の前記ヨーク片部が直線状となり、かつ、対となる前記鉄心片が向い合い、一方の前記鉄心片の隣り合う前記磁極片部の間に、他方の前記鉄心片の前記磁極片部が配置される位置とし、前記各鉄心片を前記帯状材から打抜いて積層する積層鉄心の製造装置において、
前記帯状材から、一方の前記鉄心片が有する前記ヨーク片部の背面側と前記磁極片部の先端側とを同時に打抜き可能な第1のダイと第1のパンチを備えた第1の金型と、
前記第1の金型より下流側に配置され、他方の前記鉄心片が有する前記ヨーク片部の背面側と前記磁極片部の先端側とを同時に打抜き可能な第2のダイと第2のパンチを備えた第2の金型とを有する。
【0015】
本発明に係る積層鉄心の製造装置において、前記第1のダイ及び前記第1のパンチと前記第2のダイ及び前記第2のパンチはそれぞれ、前記各鉄心片が有する前記ヨーク片部の背面側の打抜きを、前記ヨーク片部の長手方向に間隔をあけて行うことが可能で、
前記第1、第2の金型より下流側には、前記各鉄心片が有する前記ヨーク片部の背面側の残存する未打抜き部分を打抜き、前記帯状材から前記各鉄心片を分離可能な第3のダイと第3のパンチを備えた第3の金型が配置されていることが好ましい。
【0016】
本発明に係る積層鉄心の製造装置において、前記第1、第2の金型より上流側には、隣り合う、一方の前記鉄心片が有する前記磁極片部の側部と、他方の前記鉄心片が有する前記磁極片部の側部との間を打抜き可能な第4のダイと第4のパンチを備えた第4の金型が配置されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る積層鉄心の製造方法及びその製造装置は、帯状材から対となる鉄心片を打抜く際に、それぞれの鉄心片について、ヨーク片部の背面側と磁極片部の先端側を同時に打抜くので、磁極片部の先端からヨーク片部の背面までの寸法の精度を向上できる。また、鉄心片を打抜く際に、それぞれの鉄心片に対して、金型の位置調整を行うことができるため、金型の位置調整が容易になり、位置調整に要する時間も短縮できる。
従って、帯状材からの鉄心片の打抜きを、作業性よく高精度に実施できる。
【0018】
また、各鉄心片のヨーク片部の背面側の打抜きを、ヨーク片部の長手方向に間隔をあけて行う場合、この打抜き工程でのプレス荷重を軽減できる。
【0019】
そして、噛み合った磁極片部の対向する側部間を打抜く場合、この打抜きによって帯状材に伸びが発生する。このため、この打抜きの後、各鉄心片が有するヨーク片部の背面側と磁極片部の先端側を同時に打抜くことで、磁極片部の先端からヨーク片部の背面までの寸法の精度を向上できるので、例えば、金型の位置調整の回数を減少できる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
まず、本発明の一実施の形態に係る積層鉄心の製造方法で製造する積層鉄心について、
図1、
図2を参照しながら説明する。
【0022】
積層鉄心は、インナーロータ型に使用する固定子鉄心(ステータ)である。
この積層鉄心は、対となる鉄心片10、11を複数組積層して形成されている。
鉄心片10、11はそれぞれ、厚みが、例えば、0.10〜1.2mm程度の電磁鋼板やアモルファス等からなる帯状材(薄板条材)12から打抜き形成されるものである。なお、
図1、
図2においては、説明の便宜上、帯状材12の幅(鉄心片10、11の長手方向の長さ)を狭くして記載している。
【0023】
具体的には、各鉄心片10、11は、直線状のヨーク片部13と、このヨーク片部13から延出する複数の磁極片部18を有する直線状の帯状鉄心片であり、積層鉄心の製造に際しては、直線状となった複数の帯状の鉄心片10と複数の帯状の鉄心片11を積層した後、帯状の鉄心片10と帯状の鉄心片11の積層体(帯状積層鉄心)をそれぞれ環状に折り曲げ、この2つの積層体を積層して形成する(前記した方法(A))。なお、鉄心片(帯状鉄心片)の長さが短い場合は、2つの帯状鉄心片の積層体(帯状積層鉄心)をそれぞれ半円状に折り曲げ、環状に配置して形成することもできる。
【0024】
この鉄心片10、11は、1枚の帯状材から打抜いたものであるが、帯状材を複数枚(例えば、2枚、更には3枚以上)重ねた状態で打抜いたものでもよい。
また、ヨーク片部13は、半径方向の幅が同じであるが、部分的に狭くしてもよい。
そして、積層方向に隣り合う鉄心片10同士と、積層方向に隣り合う鉄心片11同士は、それぞれかしめ部(後述するかしめ孔34、38、かしめ突起35、39)で連結されているが、かしめ、樹脂(熱硬化性樹脂(例えば、エポキシ樹脂)や熱可塑性樹脂)、接着剤、及び、溶接のいずれか1又は2以上を用いて、連結することもできる。
【0025】
なお、積層鉄心を形成する複数の鉄心片は、例えば、以下の構成にすることもできる。
各鉄心片は、直線状のヨーク片部と、このヨーク片部から延出する複数の磁極片部を有する直線状の帯状鉄心片で、ヨーク片部の長さが長いものであり、積層鉄心の製造に際しては、直線状となった各帯状鉄心片を環状に巻回しながら積層して形成する(前記した方法(B))。
この場合、各鉄心片の帯状材からの打抜きは、各鉄心片の長手方向を、帯状材の搬送方向に合わせて行う。
【0026】
また、
図3に示す各鉄心片10a、11aは、複数の分割鉄心片16で構成され、各分割鉄心片16の分割ヨーク片部15が不連続となったものであり、積層鉄心の製造に際しては、各分割鉄心片16が積層されて構成される複数の分割積層鉄心を、環状に配置して形成する(前記した方法(C))。
なお、各分割鉄心片16は、1つの分割ヨーク片部15から1つの磁極片部17が延出しているが、複数の磁極片部が延出してもよい。
【0027】
鉄心片10、11を積層して形成した積層鉄心は、環状のヨーク部と、このヨーク部の内周側に一体的に連接した複数の磁極部とを有している。
このヨーク部と磁極部は、それぞれヨーク片部13と複数の磁極片部18を有する鉄心片10、11を複数積層することで、積層されたヨーク片部13と、積層された磁極片部18から形成されている。なお、磁極片部18は、帯状材12に対してスロット19を打抜くことで、形成される。
【0028】
続いて、本発明の一実施の形態に係る積層鉄心の製造方法について、
図1、
図2を参照しながら説明する。
積層鉄心の製造方法は、積層鉄心の製造装置(図示しない)を用いて、厚みが0.10〜1.2mm程度の帯状材12を所定ピッチで搬送しながら、対となる鉄心片10、11を複数組打抜き、この鉄心片10、11を順次積層して形成する方法であり、A工程〜K工程を有している。なお、A工程〜K工程の各工程にはそれぞれ金型(図示しない)が配置され、これらの金型で、積層鉄心の製造装置が構成されている。
【0029】
上記した対となる鉄心片10、11の帯状材12からの打抜き位置は、各鉄心片10、11のヨーク片部13が直線状となり、かつ、対となる鉄心片10と鉄心片11とが向い合い(対向配置され)、一方の鉄心片11の隣り合う磁極片部18の間に、他方の鉄心片10の磁極片部18が噛み合う状態で配置される位置にしている。
なお、帯状材12からの一対の鉄心片10、11の打抜きは、各鉄心片10、11の長手方向を、帯状材12の搬送方向とは直交する方向(帯状材12の幅方向)に合わせて、順次行う。
以下、詳しく説明する。
【0030】
(A工程)
ここでは、帯状材12に対し、パイロット孔20、21の打抜きを行う。
これにより、帯状材12の幅方向両側にパイロット孔20が、帯状材12の幅方向中央部にパイロット孔21が、それぞれ所定ピッチで形成される。なお、パイロット孔21は、形成しなくてもよいし、帯状材12の幅に応じて、帯状材12の幅方向に間隔をあけて複数個所設けることもできる。
【0031】
(B工程)
ここでは、帯状材12の幅方向両側(パイロット孔20より内側)に、帯状材12の搬送方向を長手方向とする幅狭のスリット22、23を形成する。
これにより、帯状材12の幅方向両側に、鉄心片10、11の長手方向の一端部が形成される。
【0032】
(C工程)
ここでは、帯状材12の鉄心片10、11を形成する領域(スリット22とスリット23の間、以下同様)に対し、帯状材12の幅方向に渡って、対となるスリット24、25を所定ピッチで複数形成する。この一対のスリット24、25は、第4の金型(図示しない)により、隣り合う、一方の鉄心片11の磁極片部18の側部と、他方の鉄心片10の磁極片部18の側部との間を打抜くことで形成される。なお、第4の金型は、スリット24、25の輪郭形状に対応した第4のダイと第4のパンチを備えている。
これにより、帯状材12の幅方向に渡って、各鉄心片10、11の磁極片部18の側面が形成される。
また、スリット22とスリット24の間、及び、スリット23とスリット24の間にも、それぞれ幅狭のスリット26、27を形成する。
これにより、帯状材12の幅方向両側に、鉄心片10、11の長手方向の他端部が形成される。
【0033】
(D工程)
ここでは、帯状材12の鉄心片10、11を形成する領域に対し、帯状材12の幅方向に渡って、幅狭のスリット28と打抜き部29を複数形成する。この複数のスリット28と打抜き部29は、第1の金型(図示しない)により、鉄心片11のヨーク片部13の背面側と磁極片部18の先端側とを同時に打抜くことで形成される。なお、第1の金型は、スリット28と打抜き部29の輪郭形状に対応した第1のダイと第1のパンチを備えている。
【0034】
ここで、ヨーク片部13の背面側の打抜きは、ヨーク片部13の長手方向に間隔をあけて行われる。なお、この打抜きによって形成されるスリット28は、複数(ここでは、9個程度)の磁極片部18に渡る長さを有している。
これにより、鉄心片11のヨーク片部13の背面が部分的に形成される。
また、鉄心片11の磁極片部18の先端側の打抜きは、一対のスリット24、25の搬送方向上流側の端部が連結されるように、帯状材12の幅方向に渡って所定ピッチで行われる。
これにより、鉄心片11の磁極片部18の先端面が形成されると共に、鉄心片10のスロット19が形成される。
【0035】
(E工程)
ここでは、帯状材12の鉄心片10、11を形成する領域に対し、帯状材12の幅方向に渡って、幅狭のスリット30と打抜き部31を複数形成する。この複数のスリット30と打抜き部31は、第1の金型より下流側に配置された第2の金型(図示しない)により、鉄心片10が有するヨーク片部13の背面側と磁極片部18の先端側とを同時に打抜くことで形成される。なお、第2の金型は、スリット30と打抜き部31の輪郭形状に対応した第2のダイと第2のパンチを備えている。
なお、鉄心片10のヨーク片部13の背面側の打抜きと、磁極片部18の先端側の打抜きは、上記したD工程と同様である。
【0036】
これにより、鉄心片10のヨーク片部13の背面が部分的に形成されると共に、鉄心片10の磁極片部18の先端面と鉄心片11のスロット19が形成される。
上記したように、第1、第2の金型より上流側に、第4の金型を配置することで、各鉄心片10、11が有するヨーク片部13の背面側と磁極片部18の先端側を打抜く前に、鉄心片10、11の噛み合った磁極片部18の隣り合う側部間を打抜くことができる。
これにより、磁極片部18の隣り合う側部間を打抜くことによって発生する帯状材の伸びが、磁極片部18の先端からヨーク片部13の背面までの寸法精度に及ぼす影響を低減できる。
【0037】
(F工程)
ここでは、帯状材12に対し、パイロット孔32、33の打抜きを行う。
このパイロット孔32は、前記したA工程で、帯状材12の幅方向両側に形成された搬送方向に隣り合うパイロット孔20の間に形成する。
また、パイロット孔33は、帯状材12の搬送方向に隣り合う一対の鉄心片10、11と一対の鉄心片10、11との間(ここでは、前記したA工程で形成されたパイロット孔21の近傍)に形成する。
これにより、打抜きの際の寸法精度が更に高められる。
同時に、帯状材12の鉄心片11を形成する領域に対し、積層体の最下層となる鉄心片11にかしめ孔34を形成する。なお、かしめ孔34の形成は別工程で行ってもよい。
【0038】
(G工程)
ここでは、帯状材12の鉄心片11を形成する領域に対し、積層体の最下層以外となる鉄心片11にかしめ突起35の形成を行う。
(H工程)
ここでは、前記したD工程において、スリット28を形成する際に、ヨーク片部13の背面側に残存させた未打抜き部36、37を打抜く。この打抜きは、第1、第2の金型より下流側に配置され、第3のダイと第3のパンチを備えた第3の金型(図示しない)により実施できる。
これにより、鉄心片11が、帯状材12から分離されると共に、かしめ孔34が形成された鉄心片11の上に、かしめ突起35が形成された複数の鉄心片11を順次かしめ積層できる(複数の鉄心片11を積層する工程)。
【0039】
(I工程)
ここでは、帯状材12の鉄心片10を形成する領域に対し、積層体の最下層となる鉄心片10にかしめ孔38の形成を行う。
(J工程)
ここでは、帯状材12の鉄心片10を形成する領域に対し、積層体の最下層以外となる鉄心片10にかしめ突起39の形成を行う。
【0040】
(K工程)
ここでは、前記したE工程において、スリット30を形成する際に、ヨーク片部13の背面側に残存させた未打抜き部40、41を打抜く。この打抜きは、前記したH工程で使用した第3の金型と略同様の構成の金型(図示しない)により実施できる。
これにより、鉄心片10が、帯状材12から分離されると共に、かしめ孔38が形成された鉄心片10の上に、かしめ突起39が形成された複数の鉄心片10を順次かしめ積層できる(複数の鉄心片10を積層する工程)。
【0041】
以上の方法で製造した帯状の鉄心片10と帯状の鉄心片11の積層体(帯状積層鉄心)をそれぞれ環状に折り曲げ、この2つの積層体を積層することで、積層鉄心を製造できる。
【0042】
なお、
図3に示すように、各鉄心片10a、11aが、複数の分割鉄心片16で構成され、各分割鉄心片16の分割ヨーク片部15が不連続となっている場合も、上記した方法と略同様の方法で帯状材から打抜くため、ここでは、上記したC工程〜E工程に対応するC´工程〜E´工程について簡単に説明する。なお、
図3においては、各鉄心片10a、11aを構成する隣り合う分割鉄心片16が離れた状態について説明しているが、接していてもよい。
【0043】
(C´工程)
ここでは、帯状材の鉄心片10a、11aを形成する領域に対し、帯状材の幅方向に渡って、対となるスリット42、43を所定ピッチで複数形成する。この一対のスリット42、43は、隣り合う、一方の鉄心片11aの磁極片部17の側部と、他方の鉄心片10aの磁極片部17の側部との間を打抜くことで形成される。
これにより、帯状材の幅方向に渡って、各鉄心片10a、11aの磁極片部17の側面が形成される。
【0044】
(D´工程)
ここでは、帯状材の鉄心片10a、11aを形成する領域に対し、帯状材の幅方向に渡って、幅狭のスリット44と打抜き部45を複数形成する。この複数のスリット44と打抜き部45は、鉄心片11aが有する複数の分割ヨーク片部15の背面側と磁極片部17の先端側とを同時に打抜くことで形成される。
ここで、分割ヨーク片部15の背面側の打抜きは、分割ヨーク片部15の長手方向に間隔46aをあけて行われる。なお、この打抜きによって形成されるスリット44は、隣り合う磁極片部17に渡る長さを有している。
これにより、鉄心片11aの分割ヨーク片部15の背面が部分的に形成される。
また、磁極片部17の先端側の打抜きは、一対のスリット42、43の搬送方向上流側の端部が連結されるように、帯状材の幅方向に渡って所定ピッチで行われる。
これにより、鉄心片11aの磁極片部17の先端面が形成されると共に、鉄心片10aのスロット19aが形成される。
【0045】
(E´工程)
ここでは、帯状材の鉄心片10a、11aを形成する領域に対し、帯状材の幅方向に渡って、幅狭のスリット47と打抜き部48を複数形成する。この複数のスリット47と打抜き部48は、鉄心片10aが有する複数の分割ヨーク片部15の背面側と磁極片部17の先端側とを同時に打抜くことで形成される。
なお、分割ヨーク片部15の背面側の打抜きと、磁極片部17の先端側の打抜きは、上記したD´工程と同様である。
これにより、鉄心片10aの分割ヨーク片部15の背面が部分的に形成されると共に、鉄心片10aの磁極片部17の先端面と鉄心片11aのスロット19aが形成される。
【0046】
なお、隣り合う分割ヨーク片部15間の隙間46の打抜きについては、
図2のH工程とK工程に対応する工程よりも前に行えばよい。
また、隙間46がない、即ち、隣り合う分割鉄心片16が接している場合には、隣り合う分割ヨーク片部15の切断を行う。この切断方法としては、一方の分割ヨーク片部15を、他方の分割ヨーク片部15に対し押し下げて切断した後、押し戻して再度同一平面とする方法等が考えられる。なお、この切断は、E´工程よりも後(下流側)の工程で行うことが好ましい。
【0047】
以上のように、本発明の積層鉄心の製造方法及びその製造装置を用いることで、帯状材からの鉄心片の打抜きを作業性よく高精度に実施できる。
【0048】
以上、本発明を、実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。例えば、前記したそれぞれの実施の形態や変形例の一部又は全部を組合せて本発明の積層鉄心の製造方法及びその製造装置を構成する場合も本発明の権利範囲に含まれる。
前記実施の形態においては、本発明の積層鉄心の製造方法及びその製造装置を、固定子積層鉄心の内側に回転子積層鉄心が隙間を有して配置されたインナーロータ型の固定子積層鉄心の製造に適用した場合について説明したが、固定子積層鉄心の外側に回転子積層鉄心が隙間を有して配置されるアウターロータ型の固定子積層鉄心の製造に適用することもでき、また、回転子積層鉄心の製造に適用することもできる。
【0049】
そして、前記実施の形態においては、帯状材からの一対の鉄心片の打抜きを、各鉄心片の長手方向が、帯状材の搬送方向とは直交する方向となるようにして行った。しかし、各鉄心片の長手方向を、帯状材の搬送方向に直交する方向とは異なる方向、例えば、帯状材の搬送方向や搬送方向に対して斜め方向(例えば、特許第4330420号公報参照)に合わせて行うこともできる。
また、D(D´)工程とE(E´)工程以外の工程は、任意に組み合わせたり、また、複数の工程に分けたりすることができる。