(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-175816(P2017-175816A)
(43)【公開日】2017年9月28日
(54)【発明の名称】支持部材
(51)【国際特許分類】
H02G 11/00 20060101AFI20170901BHJP
【FI】
H02G11/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-60874(P2016-60874)
(22)【出願日】2016年3月24日
(31)【優先権主張番号】特願2016-26440(P2016-26440)
(32)【優先日】2016年2月15日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2016-54576(P2016-54576)
(32)【優先日】2016年3月17日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000145530
【氏名又は名称】株式会社潤工社
(72)【発明者】
【氏名】竹内 弘
【テーマコード(参考)】
5G371
【Fターム(参考)】
5G371AA05
5G371AA07
5G371BA01
5G371BA07
5G371CA07
(57)【要約】 (修正有)
【課題】駆動時の安定性を確保しつつ、長尺体の湾曲部における膨らみを効果的に抑制し、全体として高さを抑えて低背化が可能な往復移動機構を提供する。
【解決手段】往復移動機構1は、U字状に湾曲し、一端および/または他端が往復移動することにより延伸部2aと湾曲部2bを有する長尺体2を支持する支持部材5であり、長尺体の外側に配置されるとともに、長尺体の一端側に固定され、長尺体の延伸部の延伸方向に延びる固定部5aと、固定部に対し、回動部材5bを介して連結され、長尺体とは固定されない状態で長尺体の外側に配置され、長尺体との間に空間が形成された場合には、自重または付勢力によって回動可能な回動部5cと、を備える。固定部および回動部は、長尺体を部分的に支持しており、回動部は、少なくとも前記長尺体の延伸部の延伸方向と平行する位置から長尺体側とは反対方向への回動が回動部材によって規制されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
U字状に湾曲し、一端および/または他端が往復移動することにより延伸部と湾曲部を有する長尺体を支持する支持部材であり、
当該長尺体の外側に配置されるとともに、前記長尺体の一端側に固定され、前記長尺体の前記延伸部の延伸方向に延びる固定部と、
当該固定部に対し、回動部材を介して連結され、前記長尺体とは固定されない状態で前記長尺体の外側に配置され、前記長尺体との間に空間が形成された場合には、自重または付勢力によって回動可能な回動部と、を備え、
前記固定部および前記回動部は、前記長尺体を部分的に支持しており、前記回動部は、前記長尺体の湾曲部に対応する位置にある状態では前記固定部と接触せず、かつ前記回動部が前記長尺体の延伸部に対応する位置にある状態では前記固定部と係止し、少なくとも前記長尺体の延伸部の延伸方向と平行する位置から前記長尺体側とは反対方向への回動を規制する回動規制部によって、少なくとも前記長尺体の延伸部の延伸方向と平行する位置から前記長尺体側とは反対方向への回動が規制されていることを特徴とする支持部材。
【請求項2】
U字状に湾曲し、一端および/または他端が往復移動することにより延伸部と湾曲部を有する長尺体を支持する支持部材であり、
当該長尺体の外側に配置されるとともに、前記長尺体の一端側に固定され、前記長尺体の前記延伸部の延伸方向に延びる固定部と、
当該固定部に対し、回動機構を介して連結され、前記長尺体とは固定されない状態で前記長尺体の外側に配置され、前記長尺体との間に空間が形成された場合には、自重または付勢力によって回動可能な回動部と、を備え、
前記固定部および前記回動部は、前記長尺体を部分的に支持しており、前記回動機構は、前記回動部に対し、前記長尺体側とは反対方向への回動が規制されていることを特徴とする支持部材。
【請求項3】
前記回動部は、前記長尺体を内側に挟持した状態で連結された係止部をさらに備えており、当該係止部は、前記長尺体の湾曲に応じて前記回動部に付勢力を付与することを特徴とする請求項2に記載の支持部材。
【請求項4】
U字状に湾曲し、一端および/または他端が往復移動することにより延伸部と湾曲部を有する長尺体を支持する支持部材であり、
当該長尺体の外側に配置されるとともに、前記長尺体の一端側に固定され、前記長尺体の前記延伸部の延伸方向に延びる固定部と、
当該固定部に対し、回動部材を介して連結され、前記長尺体とは固定されない状態で前記長尺体の外側に配置され、前記長尺体との間に空間が形成された場合には、自重または付勢力によって回動可能な回動部と、を備え、
前記固定部および前記回動部は、前記長尺体を部分的に支持しており、前記回動部は、少なくとも前記長尺体の延伸部の延伸方向と平行する位置から前記長尺体側とは反対方向への回動が前記回動部材によって規制されていることを特徴とする支持部材。
【請求項5】
前記回動部材は、前記回動部が前記長尺体の湾曲部に対応する位置にある状態では前記固定部と接触せず、かつ前記回動部が前記長尺体の延伸部に対応する位置にある状態では前記固定部と接触し、前記少なくとも前記長尺体の延伸部の延伸方向と平行する位置から前記長尺体側とは反対方向への回動を規制する回動規制部をさらに備えることを特徴とする、請求項4に記載の支持部材。
【請求項6】
前記回動部は、前記長尺体を内側に挟持した状態で連結された係止部をさらに備えており、当該係止部は、前記長尺体の湾曲に応じて前記回動部に付勢力を付与することを特徴とする請求項4または5に記載の支持部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、電子部品製造装置等のロボット、工作機械、クレーン、プリンタ等において、往復移動する移動部と固定部等との間に配置され、U字状に湾曲するとともに、一端および/または他端が往復移動することにより直線部と湾曲部を有するケーブル・チューブ等の長尺体を支持する支持部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、チップマウンタ等の半導体製造装置は、ノズルに吸着したチップ型の電子部品をプリント基板・ウエハ等の所定箇所まで移動させ、当該箇所に搭載するために、モータ等で駆動され、X−Yの2軸等で往復移動する機構を備えている。従来、かかる往復移動機構には、電気ケーブルやエアの流路となるチューブ等で構成された長尺体を備えており、この長尺体の構成如何によっては、湾曲によって生じる反力から、
図5に示すとおり、U字状に湾曲した状態で、固定部4と、この固定部よりも上方に配置され、かつ水平方向に往復移動可能な移動部3とに接続された長尺体2の湾曲部2c付近が大きく膨らむことによって、高さ方向の大きさを抑えることができず、低背化が阻害され(H1>H2)、装置全体のコンパクト化が阻害される結果となっていた。
【0003】
このような問題を防止するために、
図6に示すとおり、支持部材111が金属板(例えば、SUS板)で構成されるとともに、長尺体2の外側(同図の上側)に配置され、一端部が移動部3に接続されるとともに、移動部3から水平方向に延びる支持部材111とを備える往復移動機構が存在する(先行技術文献1参照)。
【0004】
このように、従来は、U字状に湾曲可能な長尺体2を板状の支持部材111で抑え込むことによって、長尺体2の膨らみを抑制し、低背化を図るようにしている。しかしながら、かかる構成では、支持部材111は板状のものであるため、直線状態しか取り得ることができず、移動部3の往復移動に応じて長尺体2の形状に対応して湾曲することができない。このため、
図7(A)および(B)に示すとおり、移動部3の移動距離に応じて支持部材111の長さが設定され、長尺体2の湾曲による膨らみがより大きくなる湾曲部2c付近まで支持部材111を配置することができず、結果として低背化に大きく寄与するものではない。また仮に長尺体2の湾曲部2c付近まで伸びる支持部材111を配置した場合(
図8(A)参照)には、移動部3の往復移動によって支持部材111が往復移動機構を収容する筺体や他の部材に衝突してしまうため、使用できない。
【0005】
以上のように、湾曲によって膨らむ長尺体を抑え込むために、単に板状の支持部材を外側から配置し、長尺体を抑え込むだけでは、往復移動機構全体の低背化を効果的に実現することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014−216578号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上のように、近年の半導体製造装置をはじめとした製造装置は、製造される製品の多機能化・高機能化に伴う高密度化・高精度化が求められる一方、製造機器としても小型化・低背化等が益々要求されることが多く、往復移動機構にも全体として高さを抑えて低背化が可能な技術が切望されている。
【0008】
本発明は、上記のような課題に鑑みなされたものであり、多種多様な製造装置において使用でき、長尺体の湾曲部における膨らみを効果的に抑制し、全体として高さを抑えて低背化が可能な往復移動機構を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
即ち、上記目的達成のため、本発明の支持部材は、U字状に湾曲し、一端および/または他端が往復移動することにより延伸部と湾曲部を有する長尺体を支持し、長尺体の外側に配置されるとともに、長尺体の一端側に固定され、長尺体の延伸部の延伸方向に延びる固定部と、固定部に対し、回動部材を介して連結され、長尺体とは固定されない状態で長尺体の外側に配置され、長尺体との間に空間が形成された場合には、自重または付勢力によって回動可能な回動部と、を備え、固定部および前記回動部は、長尺体を部分的に支持しており、回動部は、長尺体の湾曲部に対応する位置にある状態では固定部と接触せず、かつ回動部が前記長尺体の延伸部に対応する位置にある状態では固定部と係止し、少なくとも前記長尺体の延伸部の延伸方向と平行する位置から長尺体側とは反対方向への回動を規制する回動規制部によって、少なくとも長尺体の延伸部の延伸方向と平行する位置から長尺体側とは反対方向への回動が規制されていることを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、支持部材は、U字状に湾曲した長尺体に対し、部分的に支持しており、長尺体を全体的に支持した場合と比較して、支持部材全体の高さを低減することができ、長尺体の膨らみを低減させるだけでなく、ひいては長尺体と支持部材とを組み合わせた往復移動機構全体の低背化を図ることができる。
【0011】
また、支持部材の回動部は、長尺体の湾曲部に対応する位置にある状態では固定部と接触せず、かつ回動部が長尺体の延伸部に対応する位置にある状態では固定部と接触し、少なくとも長尺体の延伸部の延伸方向と平行する位置から長尺体側とは反対方向への回動を規制する回動規制部を有しており、少なくとも長尺体の延伸部の延伸方向と平行する位置から長尺体側とは反対方向への回動が回動部材によって規制されている。このため、回動機構によって長尺体側とは反対方向への回動が規制されているため、U字状に湾曲し、湾曲部の反力によって膨らむ長尺体の膨らみを抑え込むことができる。
【0012】
さらには、回動部は、長尺体とは固定されない状態で固定部に連結しており、かつ長尺体との間に空間が形成された場合には、自重または付勢力によって回動可能である。すなわち、長尺体の往復移動に伴い、長尺体に対し、回動部が支持する場所が延伸部から湾曲部に変化することにより回動部が長尺体側に回動し、長尺体に追従した状態で回動する。したがって、往復移動のストローク方向において湾曲部よりも外側に支持部材が突出することがなく、往復移動機構を収容する筺体や他の部材に支持部材が衝突することを回避できるだけでなく、このストローク方向における往復移動機構全体のコンパクト化を実現することができる。
【0013】
また回動部は、長尺体を内側に挟持した状態で連結された係止部をさらに備えていることが好ましい。これにより、係止部は、長尺体の湾曲に応じて回動部に付勢力がさらに付与され、回動部のより円滑な回動が可能になる。
【0014】
また本発明の支持部材は、U字状に湾曲し、一端および/または他端が往復移動することにより延伸部と湾曲部を有する長尺体を支持し、長尺体の外側に配置されるとともに、長尺体の一端側に固定され、長尺体の前記延伸部の延伸方向に延びる固定部と、固定部に対し、回動部材を介して連結され、長尺体とは固定されない状態で長尺体の外側に配置され、長尺体との間に空間が形成された場合には、自重または付勢力によって回動可能な回動部と、を備え、固定部および回動部は、長尺体を部分的に支持しており、回動部は、少なくとも前記長尺体の延伸部の延伸方向と平行する位置から長尺体側とは反対方向への回動が回動部材によって規制されていることを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、支持部材は、U字状に湾曲した長尺体に対し、部分的に支持しており、長尺体を全体的に支持した場合と比較して、支持部材全体の高さを低減することができ、長尺体の膨らみを低減させるだけでなく、ひいては長尺体と支持部材とを組み合わせた往復移動機構全体の低背化を図ることができる。
【0016】
また、支持部材の回動部は、回動部材によって少なくとも前記長尺体の延伸部の延伸方向と平行する位置から長尺体側とは反対方向への回動が回動部材によって規制されているため、U字状に湾曲し、湾曲部の反力によって膨らむ長尺体の膨らみを抑え込むことができる。
【0017】
さらには、回動部は、長尺体とは固定されない状態で固定部に連結しており、かつ長尺体との間に空間が形成された場合には、自重または付勢力によって回動可能である。すなわち、長尺体の往復移動に伴い、長尺体に対し、回動部が支持する場所が延伸部から湾曲部に変化することにより回動部が長尺体側に回動し、長尺体に追従した状態で回動する。したがって、往復移動のストローク方向において湾曲部よりも外側に支持部材が突出することがなく、往復移動機構を収容する筺体や他の部材に支持部材が衝突することを回避できるだけでなく、このストローク方向における往復移動機構全体のコンパクト化を実現することができる。
【0018】
また回動部は、長尺体を内側に挟持した状態で連結された係止部をさらに備えていることが好ましい。これにより、係止部は、長尺体の湾曲に応じて回動部に付勢力がさらに付与され、回動部のより円滑な回動が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施形態の往復移動機構の構成を模式的に示す図である。
【
図2】本発明の実施形態の往復移動機構の主要部の構成を示す図であり、(A)は断面図、(B)は側面図、(C)は平面図である。
【
図3】本発明の実施形態による移動部の位置に応じた状態を模式的に示す図であり、(A)は初期状態、(B)移動の途中状態、(C)は移動の終盤状態を示す図である。
【
図4】本発明の実施形態による回動規制部の機能を説明するための図であり、(A)は固定部および回動部を模式的に示す図であり、(B)は支持部材が長尺体の湾曲部に対応する位置にある状態の回動規制部の周辺を模式的に部分拡大図であり、(C)は支持部材が長尺体の延伸部に対応する位置にある状態の回動規制部の周辺を模式的に部分拡大図である。
【
図5】従来技術および比較例1の構成を模式的に示す図である。
【
図6】従来技術および比較例2の構成を模式的に示す図である。
【
図7】従来技術の構成および動作を模式的に示す図であり、(A)は初期状態、(B)は移動の終盤状態を示す図である。
【
図8】従来技術の構成および動作を模式的に示す図であり、(A)は初期状態、(B)は移動の終盤状態を示す図である。
【
図9】本実施形態、比較例1および2の移動部のストロークに応じた往復移動機構全体の高さを示すグラフである。
【
図10】本発明の第2実施形態を説明するための図である。
【
図11】本発明の第3実施形態を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に説明する実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが本発明の成立に必須であるとは限らない。以下、図面を用いて説明する。
【0021】
図1は、本発明の第1実施形態の支持部材の構成を模式的に示す図である。
図2は、本発明の第1実施形態の往復移動機構の主要部の構成を示す図であり、U字状に湾曲した長尺体およびそれに沿って配置された支持部材を示す側面図である。
【0022】
なお、本実施形態の往復移動機構は、例えば、チップマウンタのモータ等で駆動される可動ユニットとして往復移動する機構の移動部と固定部との間に配置されて使用されるものであり、その長尺体は、電気ケーブルやエアの流路となるチューブ等を組み合わせた全体として弾性を有する帯状体として構成される。但し、以下の説明では、その往復移動機構の要部のみを示し、ステージ、フィーダ、モータ等、実際のチップマウンタが備える他の構成は省略している。
【0023】
図1に示すように、本実施形態の往復移動機構1は、4本のケーブルを長手方向に平坦状に配列したものを互いに融着したフラットケーブルからなる長尺体2を上下(同図の上下方向)に湾曲させて配置したものであり、水平方向(同図の左右方向)に往復移動可能な移動部(第1移動部)3と、この移動部3よりも下方に固定配置された固定部(第2固定部)4と、この移動部3および固定部4に接続された長尺体2と、この長尺体2の外側(同図における上方)に配置され、一端部側が移動部3に接続された支持部材5とを備えている。
【0024】
なお、本実施形態では、上方に移動部3、下方に固定部4を配置しているが、これに限定されるものではなく、上方および下方に少なくとも一方、または両方に移動部が配置されていてもよいことはもちろんである。
【0025】
また、
図1に示すように、往復移動機構1の長尺体2は、長手方向の一部分が湾曲することによって、上側延伸部(第1延伸部)2a、湾曲部2bおよび下側延伸部(第2延伸部)2cを有しており、湾曲した状態でその長手方向の一端側と他端側がそれぞれ上述した移動部3と固定部4間に配置される複数のケーブル・チューブ等の集合体(組合わせ体)として構成され、集合体(組合わせ体)に対し自立性を有するように構成されている。
【0026】
本実施形態では、長尺体2は、ポリウレタン製のチューブや電気ケーブルを複数本、互いに近接させて融着等することにより組み合わされて構成されており、
図2に示す例では、計4本のケーブルで構成されている。
【0027】
また、支持部材5は、長尺体2の上側延伸部2aの外側に配置され、長尺体2の一端側にある移動部3に接続され、長尺体2の上側延伸部2aの延伸方向に延びる固定部5aと、この固定部5aの他端側において回転機構(回動部材)5bを介して連結された回動部5cを備えている。また、
図2に示すように、回動部5cの基端側には、断面L字状の回動規制部5dが設けられている。が固定部5aおよび回動部5cはいずれも、SUSで構成された板状のものであり、それぞれ所定の長さを有している(固定部5aは110mm、回動部5cは85mm)。回動機構(回動部材)5bが回動部5cの長尺体側とは反対方向への回動を規制(本実施形態では、180度以上の回動が規制)することにより、長尺体2をその外側から押圧・支持するように構成されている。回動機構(回動部材)5bとしては、回動部5cの回動を規制できるものであればよく、本実施形態では、固定部5aと回動部5cのそれぞれの端部を、例えば蝶番状に連結させたものである。
【0028】
次に、本実施形態の往復移動機構1の動作について、
図3を用いて説明する。
図3は往復移動機構1動作について、初期状態(同図(A))、移動の途中状態(同図(B))、移動の終盤状態(同図(C))を示している。同図(A)に示す初期状態においては、長尺体2の上側延伸部(第1延伸部)2aの長さが、他の状態と比較して最大になっており、この状態において、支持部材5の回動部5cの先端(他端)は、長尺体2の上側延伸部2aのうち湾曲部2b側に対応する位置にある。
【0029】
この状態において、上述したように、回動機構(回動部材)5bが回動部5cの長尺体2側とは反対方向への回動を規制されているため、長尺体2の湾曲によって生じる反力を抑制し、長尺体2をその外側から押圧・支持し、長尺体2の膨らみを低減する。
【0030】
また、長尺体2の湾曲によって生じる反力は長尺体2の湾曲部2bに近いほど大きくなるものの、支持部材5の回動部5cの先端(他端)が、長尺体2の上側延伸部2aのうち湾曲部2b側に対応する位置にあるため、支持部材5の先端(他端)が、長尺体2の上側延伸部2aのうち移動部3側に対応する位置にある場合、すなわち前述した従来技術と比較して、長尺体2の反力をより効果的に支持することができる。
【0031】
次に、上記の初期状態から、移動部3が水平方向に移動し、
図3(B)に示す移動の途中状態に差し掛かったときには、長尺体2の湾曲部2bの形状により、長尺体2と回動部5cとの間に空間が形成される。これに伴い同図に示すように、回動部5cが自重により下方(長尺体側)に回動する。これにより、回動部5cが移動部3の移動に伴い、水平方向に直線的に突出し続ける状態を回避することができ、図示しない筺体や他の装置に当接することを回避することができ、駆動時の安定性を向上させることができる。
【0032】
次に、上記の移動の途中段階からさらに移動部の移動部3の移動が進み、移動の終盤状態(
図3(C))に達した状態ときには、長尺体2の上側延伸部2aの長さが最小となっている。この状態において回動部5cは、下方に長尺体2が存在しない状態となり、自重により垂直方向に延びる位置まで回動する。
【0033】
次に、
図4を用いて、上記の動作における支持部材5の回動規制部5dの周辺の動作を説明する。同図(A)は固定部および回動部を模式的に示す側面図である。説明の便宜上、支持部材5のみを示しており、長尺体2は省略している。また同図(B)および(c)は、同図(A)の破線内を拡大して示す図であり、同図(B)は支持部材が長尺体の湾曲部に対応する位置にある状態の回動規制部の周辺を模式的に部分拡大側面図であり、同図(C)は支持部材が長尺体の延伸部に対応する位置にある状態の回動規制部の周辺を模式的に部分拡大側面図である。
【0034】
同図(B)に示すように、回動部5aが長尺体2の湾曲部2bに対応する位置にある状態では、回動規制部5dは回動部5aに係止(当接)していない。これ対し、同図(C)に示すように、回動部5aが長尺体2の延伸部2aに対応する位置にある状態、回動規制部5dが回動部5aを外側(同図の上側)から係止(当接)・支持し、少なくとも前記長尺体の延伸部の延伸方向と平行する位置から前記長尺体側とは反対方向への回動を規制する。
【0035】
以上のように、移動部3の往復移動の動作の中で、第2延伸部2c側には支持部材本体が配置されることはなく、回動部5cが第2延伸部2cの下方に配置されることがないため、この下方の分の支持部材本体の高さを削減することができ、支持部材5と長尺体2を含めた全体の高さをさらに低減することができる。
【0036】
次に、
図5を用いて、比較例1について説明する。この比較例1の往復移動機構100では、第1実施形態の往復移動機構と比較し、支持部材5を排除した構成、すなわち長尺体2のみが移動部3および固定部4に接続されており、他の構成は第1実施形態と同じである。
【0037】
次に、
図6を用いて、比較例2について説明する。この比較例2の往復移動機構110では、第1実施形態の往復移動機構と比較し、支持部材5を従来例と同様、所定の厚さ(本比較例では2mm)の金属板(この比較例2では、SUS)111を用いて長尺体2の上側を押さえる構成を採用しており、金属板111は所定の長さ(この比較例では150mm)を有し、長尺体の上側に配置され、一端部が移動部に接続されている。他の構成は第1実施形態と同じである。
【0038】
次に、
図9を用いて、本実施形態と比較例1および2それぞれの構成によって生じる往復移動機構全体の高さを比較する。
【0039】
図9に示す高さは、往復移動機構全体の高さを示している。ここでは本実施形態、比較例1および2の長尺体の長さを600mm、本実施形態の支持部材5の長さを300mm、移動部3の固定部の設置台からの高さを120mmとする。また、上述した
図3(A)に示されるような初期状態における長尺体2の第1上側延伸部2aが最大となる長さを400mmとし、この初期状態における移動部3と固定部4の距離を350mmとし、本実施形態の支持部材本体の曲げRを50mmにしている。さらに、移動部3のストロークを600mmとし、
図3(C)に示される移動の終盤状態における第1上側延伸部2aが最小となる長さを100mmにしている。
【0040】
図9に示されるように、比較例1の長尺体のみで構成したものは、移動部の移動に伴い、長尺体の湾曲部の反力が大きくなり、往復移動機構全体の高さが150〜180mmの間を山なりに記録している。また、比較例2に関しては、金属板が短く、長尺体2の膨らみがより大きくなる湾曲部側を支持することができず、0〜300mmの段階では140mmから170mm付近まで往復移動機構全体の高さが高くなる結果となった。これに対し、本実施形態の往復移動機構1は、ストローク間で往復移動機構全体の高さが120mmを超えることがなく、低背化を実現できていた。
【0041】
次に、
図10を用いて本発明の第2実施形態を説明する。第2実施形態の支持部材は、上述した第1実施形態と比較して、回動機構(回動部材)が異なるとともに、レイアウトとして上下方向に移動部が往復移動する構成になっており、その他の構成は同じである。同図に示すように回動機構(回動部材)5eは、第1実施形態と同様、蝶番状の構成を有しているとともに、固定部5aおよび回動部5cを内向きに折り曲げるように付勢するばね(図示せず)が組み込まれている。
【0042】
上記の構成によれば、移動部3が上下方向に移動するようなレイアウトであっても、動作に応じて回動部5cが、初期状態(同図(A))から途中状態(同図(B))を経て、終盤状態(同図(C))に至るまでに、長尺体2との間に空間ができることにより、ばねの付勢力によって長尺体2側に回動する。したがって、上述した第1実施形態と同様、水平方向(同図の左右方向)の長さを支持し、抑え込めるだけなく、高さ方向(同図の上下方向)の高さを低減することができ、往復移動機構全体のコンパクト化を実現することができる。
【0043】
次に、
図11を用いて本発明の第3実施形態を説明する。第3実施形態の支持部材は、上述した第1実施形態と比較して、長尺体の第1延伸部2a側ではなく第2延伸部2c側を下側から支持するものであり、また、支持部材5に連結された係止部材がさらに設けられている。その他の構成は同じである。係止部材6は、長尺体の内側に配置され、ロール状の形状を有し、長尺体2の幅方向に延びるように配置され、両端部が支持部材5の回動部5bの先端部において連結されている。同
図11(A)〜(C)に示されるように、移動部3の移動に伴い、長尺体2の湾曲部2bの形状にそって、係止部6が回動部5bに長尺体側(内側)への付勢力を付与するため、回動部5bのより円滑な回動が可能になる。
【0044】
なお、本実施形態の往復移動機構は、第1実施形態に示すように上下に湾曲させたものに限らず、第2実施形態に示すように、左右に湾曲させてもよいことはもちろんである。また、長尺体2は上記の構成に限られるものではなく、ケーブルおよび/またはチューブの組み合わせにより、断面形状がフラット状のものや、融着せずに単に複数のケーブルおよび/またはチューブを束にしたものでもよい。
【0045】
さらには、本実施形態の移動部3は、水平方向に移動する構成を採用していたが、長尺体の膨らみを抑制できる範囲において、往復移動するものであればよく、例えば水平方向に対し、傾斜する方向に移動してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、その長手方向の一端側と他端側がそれぞれ往復移動機構の固定部と移動部間又は移動部相互間に配置され、その一部が湾曲して使用される長尺体及びその外側に配置される支持部材を有する往復移動機構であれば、その大きさ・材質・用途の如何を問わず広く適用可能である。また、本発明に係る往復移動機構は、例えば機械加工ライン、半導体製造装置、電子部品実装装置等に組み込まれたロボット走行装置等にも適用が可能である。
【符号の説明】
【0047】
2 長尺体
2a 上側延伸部(延伸部)
2b 湾曲部
3 移動部
5 支持部材
5a 固定部
5b 回動機構(回動部材)
5c 回動部
5d 回動規制部
5e 回動機構(回動部材)
6 係止部