【解決手段】被写体8を収容する容器12を載置する載置台41と、容器12内の被写体8を撮影する撮影部18と、容器12および撮影部18の少なくとも一方を、撮影部18による撮影軌跡が容器12の周方向に延びるように駆動する駆動機構20と、を備え、撮影軌跡の面積が、載置台41の、容器12を載置した領域のうち少なくとも細胞観察エリアの面積以上である。
前記駆動機構が、前記容器の中心から外周縁部まで、又は前記容器の外周縁部から中心まで直線上に前記撮影部を駆動することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の細胞撮影装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし特許文献1に記載の顕微鏡観察装置では、細胞観察のために顕微鏡を用いているため、観察できる視野が狭くなり、培養容器内の一部の細胞しか観察できない。また、細胞は、本来は培養環境の整ったインキュベータの中に置かれて成長増殖するため、たとえ観察装置で環境を整えても、インキュベータと観察装置との間で細胞を出し入れする際、環境が変わり細胞に悪影響を与えるおそれがある。従って、観察も出来る限りインキュベータの中で長時間観察できることが望ましい。しかし、顕微鏡自体をインキュベータ内部に設置しようとする場合、インキュベータが大型化してしまう。
【0005】
そこで、この発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、培養容器の全体を観察すると共に、小型化できる細胞観察システムおよびこれに用いる細胞撮影装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明に係る細胞撮影装置は、被写体を収容する容器を載置する載置台と、
前記容器内の被写体を撮影する撮影部と、
前記容器および前記撮影部の少なくとも一方を、前記撮影部による撮影軌跡が前記容器の周方向に延びるように駆動する駆動機構と、
を備え、
前記撮影軌跡の面積が、前記載置台の、前記容器を載置した領域のうち少なくとも細胞観察エリアの面積以上である。
【0007】
この発明では、撮影部による撮影軌跡の面積が、載置台の、容器を載置した領域のうち少なくとも細胞観察エリアの面積以上であるため、撮影部は容器全体の被写体を撮影できる。また、載置台および撮影部の少なくとも一方を駆動するだけで撮影できるので、撮影装置の構成を簡単にして小型化できる。ここで、細胞観察エリアとは、容器において細胞が収容されるエリアのうち、撮影部が撮影することができるエリアを意味する。容器全体を意味する場合に加えて、容器の細胞が配置されたエリア(領域)全体を意味する場合もある。
【0008】
第2の発明に係る細胞撮影装置は、前記撮影部による撮影軌跡が、螺旋状である。
【0009】
この発明では、撮影部による撮影軌跡が螺旋状である。従って、撮影部が連続的に被写体を撮影できる。
【0010】
第3の発明に係る細胞撮影装置は、前記撮影部による撮影軌跡が、同心円上にある。
【0011】
この発明では、撮影部による撮影軌跡が同心円上にある。従って、容器が撮影部に対して相対的に回転しているときに、撮影部に対する容器の相対的な線状の移動を停止できる。
【0012】
第4の発明に係る細胞撮影装置は、前記撮影部は、前記容器の軸方向に前記被写体を撮影する写真機であり、
前記写真機が前記容器の内周側に位置するとき、前記写真機が前記容器の外周側に位置するときと比べて、前記写真機の単位時間当たりの撮影回数が減少する。
【0013】
この発明では、写真機が容器の内周側に位置するとき、写真機が容器の外周側に位置するときと比べて、写真機の単位時間当たりの撮影回数が減少する。従って、写真機が容器の内周側に位置するとき、写真機が撮影する画像の重複部分を減らすことができる。
【0014】
第5の発明に係る細胞撮影装置は、前記駆動機構が、前記容器の中心から外周縁部まで、又は前記容器の外周縁部から中心まで直線上に前記撮影部を駆動する。
【0015】
この発明では、駆動機構が、容器の中心から外周縁部まで、又は容器の外周縁部から中心まで直線上に撮影部を駆動する。撮影部が直線上に移動するので、簡単な構成で撮影部を移動させることができる。
【0016】
第6の発明に係る細胞撮影装置は、前記駆動機構が、
前記容器の中心と外周縁部との間を前記容器に対して相対的に前記撮影部を直線上に駆動する直線駆動部と、
前記撮影部に対して相対的に前記容器を回転駆動する回転駆動部と、
を有する。
【0017】
この発明では、駆動機構が直線駆動部と回転駆動部とを有する。これにより、容器と撮影部との相対移動を確実に行うことができる。
【0018】
第7の発明に係る細胞撮影装置は、
モータと、前記モータに駆動される駆動歯車と、前記駆動歯車と噛合する従動歯車とを備え、
前記直線駆動部は、前記従動歯車と一体的に回転する傘歯車と噛合することで前記撮影部を駆動し、
前記回転駆動部は、前記載置台が前記従動歯車と噛合することで前記容器を駆動する。
【0019】
この発明では、直線駆動部は、従動歯車と一体的に回転する傘歯車と噛合することで撮影部を駆動する。回転駆動部は、載置台が従動歯車と噛合することで容器を駆動する。これにより、1つのモータで直線駆動部および回転駆動部が作動するので、駆動機構の制御が容易になる。
【0020】
第8の発明に係る細胞観察システムは、上記細胞撮影装置と、
前記細胞撮影装置を収容可能なインキュベータと、
前記細胞撮影装置で撮影された一連の画像を合成して合成画像を形成する画像合成部、および前記画像合成部から得た画像を出力する画像出力部を有する制御部と、
を備えた。
【0021】
この発明では、制御部が、細胞撮影装置で撮影された一連の画像を合成して合成画像を形成する画像合成部、および画像合成部から得た画像を出力する画像出力部を有する。従って、容器内に収容された被写体の全体を観察できる。
【発明の効果】
【0022】
第1の発明では、撮影部による撮影軌跡の面積が、載置台の、容器を載置した領域のうち少なくとも細胞観察エリアの面積以上であるため、撮影部は容器全体の被写体を撮影できる。また、載置台および撮影部の少なくとも一方を駆動するだけで撮影できるので、細胞撮影装置の構成を簡単にして小型化できる。
【0023】
第2の発明では、撮影部による撮影軌跡が螺旋状である。従って、撮影部が連続的に被写体を撮影できる。
【0024】
第3の発明では、撮影部による撮影軌跡が同心円上にある。従って、容器が撮影部に対して相対的に回転しているときに、撮影部に対する容器の相対的な線状の移動を停止できる。
【0025】
第4の発明では、写真機が容器の内周側に位置するとき、写真機が容器の外周側に位置するときと比べて、写真機の単位時間当たりの撮影回数が減少する。従って、写真機が容器の内周側に位置するとき、写真機が撮影する画像の重複部分を減らすことができる。
【0026】
第5の発明では、駆動機構が、容器の中心から外周縁部まで、又は容器の外周縁部から中心まで直線上に撮影部を駆動する。撮影部が直線上に移動するので、簡単な構成で撮影部を移動させることができる。
【0027】
第6の発明では、駆動機構が直線駆動部と回転駆動部とを有する。これにより、容器と撮影部との相対移動を確実に行うことができる。
【0028】
第7の発明では、直線駆動部は、従動歯車と一体的に回転する傘歯車と噛合することで撮影部を駆動する。回転駆動部は、載置台が従動歯車と噛合することで容器を駆動する。これにより、1つのモータで直線駆動部および回転駆動部が作動するので、駆動機構の制御が容易になる。
【0029】
第8の発明では、制御部が、細胞撮影装置で撮影された一連の画像を合成して合成画像を形成する画像合成部、および画像合成部から得た画像を出力する画像出力部を有する。従って、容器内に収容された被写体の全体を観察できる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態を添付図面に従って説明する。
【0032】
図1は、本発明の細胞撮影装置10を適用するインキュベータ5を示す。これらインキュベータ5と細胞撮影装置10とが細胞観察システム1を構成している。インキュベータ5は、細胞の成長や増殖に必要な環境を整えて細胞を培養する開閉可能な筐体である。インキュベータ5は、細胞培養用の容器であるディッシュ12を内部に収容し、温度、湿度およびCO
2濃度などを一定に保持する。このインキュベータ5に細胞撮影装置10が格納されているので、細胞を培養する所望の条件下で細胞を観察できる。
【0033】
<第1実施形態>
図2および
図3に示すように、第1実施形態に係る細胞撮影装置10は、ディッシュ12と、撮影部18と、駆動機構20とを備えている。本実施形態では、ディッシュ12の下側に撮影部18と駆動機構20とが配置されている。なお、
図2は細胞撮影装置10の平面図であり、駆動機構20は現れないが、説明の便宜上、図示している。後述する
図10および
図12についても同様である。
【0034】
ディッシュ12は、底壁13を備えた円筒形状の透明なガラス製容器であり、被写体である細胞8(
図5参照)を内部に収容する。またディッシュ12は、後述する載置台41に載置されている。
【0035】
撮影部18は、ディッシュ12の下方から軸方向上方に向かって、ディッシュ12内の細胞8を撮影する。撮影部18は、例えば小型USBなどの写真機である。撮影部18は、駆動機構20の後述する保持台33に保持され、駆動機構20によりディッシュ12の中心からディッシュ12の外周縁部まで、又はディッシュ12の外周縁部からディッシュ12の中心まで駆動される。すなわち、撮影部18は、ディッシュ12の中心とディッシュ12の外周縁部上の任意の点との間をディッシュ12の径方向に直線上に移動する。撮影部18がディッシュ12の中心に位置するとき、撮影部18の中心とディッシュ12の中心とが一致する。撮影部18がディッシュ12の外周縁部に位置するとき、撮影部18の中心とディッシュ12の外周縁部の任意の点とが一致する。
【0036】
駆動機構20はディッシュ12の下方に配置され、ディッシュ12を支持する箱状の筐体14の内部に配置されている。駆動機構20が筐体14に収容されているので、ディッシュ12と駆動機構20とを上下に積層して配置し、細胞撮影装置10を小型化できる。駆動機構20は、撮影部18による撮影軌跡がディッシュ12の周方向に延びるようにディッシュ12と撮影部18とを駆動する。なお、撮影部18による撮影軌跡がディッシュ12の周方向に延びるとは、撮影軌跡が平面視で螺旋状であることも同心円上にあることも包含する。
【0037】
駆動機構20は、モータ21と、モータ21に駆動される駆動歯車22と、駆動歯車22と噛合する従動歯車23と、従動歯車23と一体的に回転する第1傘歯車24と、直線駆動部30と、回転駆動部40とを備えている。従動歯車23と第1傘歯車24とは一体に設けられ、同軸周りに回転する。
【0038】
モータ21と駆動歯車22と従動歯車23と第1傘歯車24とは、後述する載置台41の平面視で外方に配置されている。同様に平面視で、載置台41の外方から載置台41の中心に向かって、駆動歯車22、従動歯車23および載置台41が、この順に配置されている。言い換えれば、従動歯車23が、駆動歯車22と載置台41との間に配置されている。
【0039】
直線駆動部30は、前述したように、ディッシュ12の中心とディッシュ12の外周縁部上の任意の点との間を移動するように撮影部18を駆動する。直線駆動部30は、筐体14に回転可能に支持された送りねじ31と、送りねじ31に螺合するナット32と、ナット32に固定された保持台33とを有する。
【0040】
送りねじ31は載置台41の半径よりも長く、平面視で載置台41の径方向に直線上に延びている。水平方向に配置された送りねじ31の先端には、第1傘歯車24と噛合する第2傘歯車34が設けられている。
【0041】
駆動歯車22、従動歯車23および第1傘歯車24を介してモータ21の回転力が第2傘歯車34に伝達されることで、送りねじ31は軸周りに回転する。送りねじ31が回転すると、ナット32を介して保持台33と撮影部18とが水平方向(送りねじ31の長手方向)に移動する。すなわち、直線駆動部30は、第1傘歯車24と噛合することで撮影部18を駆動する。
【0042】
回転駆動部40は、ディッシュ12を回転可能に保持する円板状の載置台41からなる。載置台41は、筐体14の上壁に配置され、ベアリング16を介して筐体14に支持されている。載置台41と駆動歯車22と従動歯車23とは、水平方向の同一平面上に配置されている。
【0043】
載置台41には、載置台41の外周縁から中心を超えて径方向に延びる切欠き42が形成されている。この切欠き42は、平面視で撮影部18の移動範囲と対応する位置に設けられている。これにより、撮影部18は載置台41を介さずに直接、ディッシュ12を撮影できる。
【0044】
載置台41の外周縁の側面にはねじ溝43が刻設され、このねじ溝43が従動歯車23と噛合する。駆動歯車22および従動歯車23を介してモータ21の回転力がねじ溝43に伝達されることで、載置台41およびディッシュ12が同軸周りに回転する。すなわち、回転駆動部40は、載置台41が従動歯車23と噛合することでディッシュ12を回転駆動する。
【0045】
前述したように、直線駆動部30の第2傘歯車34が第1傘歯車24と噛合することで撮影部18を直線上に駆動する。また、回転駆動部40のねじ溝43が従動歯車23と噛合することでディッシュ12を回転駆動する。従って駆動機構20において、直線駆動部30と回転駆動部40とが連動して駆動する。このことから、撮影部18とディッシュ12とが連動して駆動される。また、1つのモータ21で直線駆動部30と回転駆動部40とを駆動するので、制御が容易になる。
【0046】
以上に述べた細胞観察システム1は制御部50を有し、制御部50によって制御される。
図4に示すように、制御部50の入力側は、例えばユーザが撮影部18の撮影条件などを入力する入力部51に接続されている。この入力部51はインキュベータ5の外側に設置されている。
【0047】
制御部50の出力側は、モータ駆動部52とカメラ制御部53と記録部54と上位コンピュータ55とに接続されている。モータ駆動部52とカメラ制御部53と記録部54とはインキュベータ5の内部に格納され、上位コンピュータ55はインキュベータ5の外側に配置されている。
【0048】
モータ駆動部52は、モータ21の回転速度などの信号をモータ21に送信する。カメラ制御部53は、撮影タイミングなどの信号を撮影部18に送信する。記録部54は、撮影部18で撮影された画像データを取り込んで記録する。記録された画像データは、無線LANを経由して上位コンピュータ55に送信される。このように無線で画像データを上位コンピュータ55に送信できるので、ディッシュ12をインキュベータ5に頻繁に出し入れする必要が無い。
【0049】
上位コンピュータ55は、画像合成部56と細胞判定部57と画像出力部58とを有する。画像合成部56は、撮影部18で撮影された一連の画像データを合成する。細胞判定部57は、画像合成部56で合成された合成画像から細胞8の位置を特定する。画像出力部58は、画像合成部56から得た画像を出力する。
【0050】
<実施例>
上記構成の細胞撮影装置10の実施例について説明する。
【0051】
ディッシュ12は、直径が60mmである。ディッシュ12内に収容された細胞8の大きさは、例えば約10μmである。この細胞8を撮影するため、撮影部18として縦寸法L1が2mm、横寸法L2が3mmの撮影領域S(撮影サイズ、
図9参照)である2000画素の写真機を用いる。
【0052】
図5に示す初期位置では、撮影部18の中心とディッシュ12の外周縁部上の任意の点とが一致している。この初期位置から、載置台41の中心に向かって直線駆動部30が撮影部18を移動させると共に、回転駆動部40が載置台41を図中、時計回りに回転させる(
図6参照)。
【0053】
このとき、ディッシュ12の外周縁部の周方向長さは約188.5mmであり、この長さを撮影サイズの縦寸法2mmで割ると94.25となる。従って、ディッシュ12の1回転分の360度を95分割して撮影すれば、ディッシュ12の外周縁部近傍を周方向に隙間なく撮影できる。従って、一度撮影した後、その次の撮影までの間のディッシュ12の回転角度を、360度/95分割=3.82度に設定する。
【0054】
撮影部18に関しては、ディッシュ12が1回転している間に、ディッシュ12の中心に向けて撮影部18をディッシュ12の横寸法L2と同じ3mmだけ移動させる。一度撮影した後、その次の撮影までの間の撮影部18の移動距離を、3mm/95分割=0.0315mmに設定する。撮影部18が移動している間、駆動機構20は、ディッシュ12の回転駆動を続けている
【0055】
以上の条件で撮影を続け、ディッシュ12の外周側から内周側に撮影部18が移動するに従って、一度撮影した画像と、その次に撮影した画像とで重複する部分が増える(
図8参照)。このため、撮影部18がディッシュ12の内周側に位置するとき、撮影部18がディッシュ12の外周側に位置するときと比べて、撮影部18の単位時間当たりの撮影回数を減少させる。ただし、連続して撮影した画像間で重複する部分を減らすため、撮影部18がディッシュ12の内周側に位置するとき、撮影部18がディッシュ12の外周側に位置するときと比べて、ディッシュ12の回転速度を早くしても良い。
【0056】
更に撮影を続けると、
図7に示すように、撮影部18の中心とディッシュ12の中心とが一致して撮影が完了する。初期位置から撮影を始め、撮影が完了するまでの撮影軌跡は螺旋状(
図8参照)である。また、撮影軌跡の面積が載置台41の、ディッシュ12を載置した領域の底面積以上である。撮影軌跡の面積とは、一連の撮影における最初の撮影から最後の撮影までの間に撮影された領域の合計面積である。なお、最初の撮影は初期位置で行われ、最後の撮影は撮影の完了位置で行われる。
【0057】
[本実施形態の細胞撮影装置の特徴]
本実施形態の細胞撮影装置10には以下の特徴がある。
【0058】
本実施形態の細胞撮影装置10では、撮影部18による撮影軌跡の面積が載置台41の、ディッシュ12を載置した領域の面積以上であるため、撮影部18はディッシュ12全体(底壁13の全面)の細胞8を撮影できる。また、後述するように載置台41(ディッシュ12)および撮影部18の少なくとも一方を駆動するだけで撮影できるので、細胞撮影装置10の構成を簡単にして小型化できる。
【0059】
なお、撮影部18による撮影軌跡の面積が載置台41の、ディッシュ12を載置した領域のうち少なくとも細胞観察エリアの面積以上であれば、本発明に包含される。ここで、細胞観察エリアとは、ディッシュ12において細胞8が収容されるエリアのうち、撮影部18が撮影することができるエリアを意味する。ディッシュ12全体を意味する場合に加えて、ディッシュ12の細胞が配置されたエリア(領域)全体を意味する場合もある。例えば、撮像部18がカメラ、ディッシュ12が透明容器であり、内部全体が細胞8の成長・繁殖する培地となっている場合、ディッシュ12のうち撮影部18と対向する面、つまりディッシュ12の底面全体が細胞観察エリアとする。また、ディッシュ12の一部に培地がある場合、その培地がある部分(底面)を細胞観察エリアとしても良い。この細胞観察エリアは、予め設定されていても良いし、載置台41に載置するディッシュ12(容器)の種類や大きさによって適宜変更可能としても良い。
【0060】
本実施形態の細胞撮影装置10では、撮影部18による撮影軌跡が螺旋状である。従って、撮影部18が連続的に細胞8を撮影できる。
【0061】
本実施形態の細胞撮影装置10では、撮影部18がディッシュ12の内周側に位置するとき、撮影部18がディッシュ12の外周側に位置するときと比べて、撮影部18の単位時間当たりの撮影回数が減少する。従って、撮影部18がディッシュ12の内周側に位置するとき、撮影部18が撮影する画像の重複部分を減らすことができる。
【0062】
本実施形態の細胞撮影装置10では、駆動機構20が、ディッシュ12の中心から外周縁部まで、又はディッシュ12の外周縁部から中心まで直線上に撮影部18を駆動する。撮影部18が直線上に移動するので、簡単な構成で撮影部18を移動させることができる。
【0063】
本実施形態の細胞撮影装置10では、撮影部18が移動している間、駆動機構20はディッシュ12の回転駆動を続ける。これにより、撮影部18は螺旋状に連続して細胞8を撮影できる。
【0064】
本実施形態の細胞撮影装置10では、駆動機構20が、直線駆動部30と回転駆動部40とを連動して駆動する。これにより、直線駆動部30と回転駆動部40とのいずれか一方を他方に従動させることで、駆動機構20の構成を簡単にできる。
【0065】
本実施形態の細胞撮影装置10では、直線駆動部30は、従動歯車23と一体的に回転する第1傘歯車24と噛合することで撮影部18を駆動する。回転駆動部40は、載置台41が従動歯車23と噛合することでディッシュ12を駆動する。これにより、1つのモータ21で直線駆動部30および回転駆動部40が作動するので、駆動機構20の制御が容易になる。
【0066】
本実施形態の細胞撮影装置10では、制御部50が、細胞撮影装置10で撮影された一連の画像を合成して合成画像を形成する画像合成部56、および画像合成部56から得た画像を出力する画像出力部58を有する。従って、ディッシュ12内に収容された細胞8の全体を観察できる。
【0067】
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明だけではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0068】
<第2実施形態>
第1実施形態では、撮影部18と載置台41とを共に駆動した。しかし駆動機構20が、ディッシュ12の中心と外周縁部との間をディッシュ12に対して相対的に撮影部18を直線上に駆動する直線駆動部30と、撮影部18に対して相対的にディッシュ12を回転駆動する回転駆動部40と、を有する種々の変形例が考えられる。これにより、ディッシュ12と撮影部18との相対移動を確実に行うことができる。
【0069】
具体的には、撮影部18と載置台とのいずれか一方を駆動しても同様の効果を得ることができる。
図10および
図11に示すように、載置台を筐体14と一体にし、ディッシュ12を筐体14の上壁(本実施形態における載置台に相当)に載置して固定し、撮影部18だけを駆動しても良い。
【0070】
この細胞撮影装置10では、撮影部18が、直線駆動部30と回転駆動部47とにより駆動される。第1実施形態と同じ構成のモータ21、駆動歯車22、従動歯車23および第1傘歯車24は、ベアリング16を介して筐体14に支持される回転ケース61に保持されている。筐体14の上部には、回転駆動部47を構成し、従動歯車23と噛合する固定歯車48が固定されている。直線駆動部30は、従動歯車23に駆動されて回転する回転ケース61内に格納されている。直線駆動部30の構成は前記実施形態と同様であるので、同一の要素には同一の符号を付して説明を省略する。
【0071】
モータ21を駆動すると駆動歯車22が回転し、従動歯車23は固定歯車48の外周に沿って移動する。これにより、回転ケース61が軸周りに回転する。同時に撮影部18が直線駆動部30に駆動され、ディッシュ12の径方向に移動する。これらの動作が合わさることで、撮影部18は平面視で螺旋状に移動する。
【0072】
前記第2実施形態では、筐体14に一体化した載置台を駆動せず撮影部18だけを駆動した。しかし撮影部18を固定し、載置台だけを駆動することで、撮影部18が平面視で螺旋状に移動する構成を採用しても良い。
【0073】
第1実施形態および第2実施形態では、直線駆動部30と回転駆動部40,47とを1つのモータ21で駆動した。しかし
図12および
図13に示すように、直線駆動部30と回転駆動部40とをそれぞれ別のモータ21,62で駆動してもよい。この駆動機構20は、従動歯車23が第1傘歯車24を有さず、回転駆動部40を駆動するモータ21と別のモータ62で直線駆動部30が直接、駆動される点で第1実施形態と異なる。この構成により、平面視で撮影部18を同心円L3上に駆動し、この同心円L3の径を変更して撮影することで撮影軌跡の面積が載置台41の、ディッシュ12を載置した領域の底面積以上とすることができる。また、撮影部18による撮影軌跡が同心円上にあることで、ディッシュ12が撮影部18に対して回転しているときに、撮影部18の直線上の移動を停止できる。
【0074】
前記実施形態ではディッシュ12の下方に細胞撮影装置10を配置したが、ディッシュ12の上方に細胞撮影装置10を配置してもよい。
【0075】
前記実施形態では、撮影部18が直線上に移動したが、曲線状に移動しても同様の効果を得ることができる。また前記実施形態では、撮影部18がディッシュ12の外周縁部から中心に向かって移動したが、ディッシュ12の中心から外周縁部に向かって移動してもよい。
【0076】
前記第1実施形態では、送りねじ31で撮影部18を駆動したが、これに限定されない。載置台41の底面に平面視が螺旋状の溝を彫り、この溝に嵌るカムが移動することで撮影部18を駆動しても良い。これにより、送りねじ31と第2傘歯車34とが不要になり、構成を簡略化できる。
【0077】
前記実施形態では、撮影部18がディッシュ12の底壁13の全体を撮影した。しかし、一度撮影すると、上位コンピュータ55がおおよその細胞位置を特定できる。このため、ディッシュ12の外周部のみに細胞8が存在する場合は、外周部だけ撮影しても良い。また、ディッシュ12の中心部付近のみに細胞8が存在する場合、中心部付近のみを撮影してもよい。これにより、画像の撮影時間や合成時間を短縮できる。
【0078】
撮影部18とは、可視光線、赤外線、紫外線含む光に限定されず、音波、電磁波等の検出波を受光する受光部を意味する。検出波の照射部(照射源)は、細胞撮影装置10側にあっても良いし、インキュベータ5側にあっても良い。
【0079】
モータ21の電源として電池を採用し得るが、消費電力によっては外部電源を接続しても良い。この場合、電池切れの心配が無い。