【課題】吸入される空気や排出される空気の流れが天井によって阻害されにくくするとともに、ファン式薬剤放散装置が地震時等に天井から不意に落下しないように確実に取り付けることができるようにし、しかも、取り付け及び取り外し時の作業性を良好にする。
【解決手段】ファン式薬剤放散装置1は、装置本体2に固定されるビス103と、天井10に固定される天井側取付金具102とを備えている。天井側取付金具102は、固定部102aと、下に位置する窪み部102dとを有している。ビス103が天井側取付金具102に係合した状態で、ビス103と天井側取付金具102との水平方向への相対移動を阻止し、かつ、上下方向への相対移動を許容する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ファン式薬剤放散装置を天井に取り付けて使用する場合を想定すると、装置本体に形成されている放出口や薬剤保持体の通気孔が天井に接近することになる。こうなると、放出口から放出される空気の流れや、通気孔に吸入される空気の流れが天井によって阻害されることが考えられる。
【0006】
また、ファン式薬剤放散装置を天井に取り付ける場合、例えば薬剤保持体や電池を交換する等といった定期的なメンテナンス作業が必要になるので、取り付け及び取り外し時の作業性を良好にしたいという要求がある。一方で、地震時等にファン式薬剤放散装置が落下しないように確実に取り付けておくことも必要である。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ファン式薬剤放散装置に吸入される空気やファン式薬剤放散装置から排出される空気の流れが天井によって阻害されにくくするとともに、ファン式薬剤放散装置が地震時等に天井から不意に落下しないように確実に取り付けることができるようにし、しかも、取り付け及び取り外し時の作業性を良好にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、第1の発明は、
空気中に放散される薬剤を保持した薬剤保持体と、
上記薬剤保持体に送風する送風ファンと、
上記送風ファンを駆動するモーターと、
上記薬剤保持体、上記送風ファン及び上記モーターを収容するとともに、空気を吸入する吸入口及び吸入した空気を排出する排出口が形成された装置本体とを備え、
上記装置本体が天井に取り付けられ、上記モーターにより駆動された上記送風ファンによって上記吸入口から吸入された空気を上記薬剤保持体に送風して上記排出口から排出するように構成されたファン式薬剤放散装置において、
上記ファン式薬剤放散装置は、上記装置本体に固定される装置側取付部材と、天井に固定される天井側取付部材とを備え、
上記天井側取付部材は、天井に固定される固定部と、該固定部よりも下に位置する天井側係合部とを有し、
上記装置側取付部材は、上記天井側係合部に対して上方から係合する装置側係合部を有し、
上記天井側取付部材及び上記装置側取付部材の少なくとも一方には、上記装置側係合部が上記天井側係合部に係合した状態で、上記装置側取付部材と上記天井側取付部材との水平方向への相対移動を阻止し、かつ、上下方向への相対移動を許容する水平方向移動阻止部が設けられていることを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、ファン式薬剤放散装置を天井に取り付ける際には、装置本体に固定される装置側取付部材と、天井に固定される天井側取付部材とによって取り付けることが可能になる。このとき、装置側係合部が天井側係合部に上方から係合する。天井側係合部は天井への固定部よりも下に位置しているので、装置側係合部が天井側係合部に上方から係合した状態で、装置本体の取付位置が下がり、天井からの離間距離が長く確保される。これにより、装置本体の吸入口及び排出口が天井から下方へ離れるので、ファン式薬剤放散装置に吸入される空気やファン式薬剤放散装置から排出される空気の流れが天井によって阻害されにくくなり、薬剤が効率よく放散される。
【0010】
また、天井へ取り付けた状態では、装置側取付部材と天井側取付部材との水平方向への相対移動が水平方向移動阻止部によって阻止されるので、例えば地震等の際に装置側係合部と天井側係合部との係合が解除されることはなく、ファン式薬剤放散装置が天井から不意に落下することはない。
【0011】
一方、水平方向移動阻止部は、装置側取付部材と天井側取付部材との上下方向への相対移動は許容するので、装置本体を上方へ移動させることにより、天井側係合部と装置側係合部との係合状態を解除することが可能になる。
【0012】
第2の発明は、第1の発明において、
上記装置本体の上壁部には、上記送風ファンによる送風空気を案内するための案内部が下方へ窪むように形成され、
上記案内部の内方には、上記装置側取付部材が取り付けられることを特徴とする。
【0013】
すなわち、装置本体の上壁部に案内部が窪むように形成されている場合には、その案内部がデッドスペースになってしまう。この発明では、案内部の内方に装置側取付部材を取り付けることができるので、案内部の内方を有効に活用することが可能になる。
【0014】
第3の発明は、第2の発明において、
上記装置側取付部材は頭部を有するネジであり、上側に該頭部が位置するように上記装置本体に取り付けられ、
上記天井側取付部材には、上記ネジの頭部が挿入される挿入孔が形成され、該挿入孔は水平方向に長い形状とされ、該挿入孔の長手方向一側は上記ネジの頭部の外径よりも広い開口幅を有する一方、該挿入孔の長手方向他側は上記ネジの頭部の外径よりも狭い開口幅を有し、該挿入孔の長手方向一側が他側に比べて上方に位置付けられ、
上記装置側係合部は、上記ネジの頭部であり、
上記天井側係合部は、上記挿入孔における長手方向他側の縁部であることを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、ファン式薬剤放散装置を天井に取り付ける際には、装置本体に固定されたネジの頭部を、天井側取付部材の挿入孔における長手方向一側から挿入する。そして、ネジの頭部を挿入孔の縁部よりも上方へ突出させた状態で、ネジを挿入孔における長手方向他側に相対移動させる。これにより、ネジの頭部が挿入孔における長手方向他側の縁部に対して上方から係合してファン式薬剤放散装置が天井に取り付けられた状態になる。つまり、ネジの頭部を挿入孔に挿入した後、ネジを挿入孔における長手方向他側に相対移動させるだけでファン式薬剤放散装置を天井に簡単に取り付けることが可能になる。
【0016】
第4の発明は、第1の発明において、
上記天井側係合部は、下方へ窪む凹状に形成されていることを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、装置側係合部を天井側係合部に対して上方から係合させると、天井側係合部が下方へ窪む凹状であることから、装置側係合部が天井側係合部に嵌まるようになる。
【0018】
第5の発明は、第1の発明において、
上記装置側係合部及び上記天井側係合部は係合状態で上下方向に重なるように配置され、
上記水平方向移動阻止部は、上記装置側係合部から下方へ突出する突出部で構成されていることを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、装置側係合部及び天井側係合部が上下方向に重なることで係合状態になる。このとき、突出部が装置側係合部から下方へ突出しているので、天井側係合部が装置側係合部に対して水平方向に移動しようとした際、突出部に当たることになり、装置側取付部材と天井側取付部材との水平方向への相対移動が確実に阻止される。
【発明の効果】
【0020】
第1の発明によれば、ファン式薬剤放散装置を天井に取り付ける際に装置側係合部が天井側係合部に上方から係合したとき、天井側係合部が天井への固定部よりも下に位置しているので、装置本体の取付位置を下げることができ、ファン式薬剤放散装置に吸入される空気やファン式薬剤放散装置から排出される空気の流れが天井によって阻害されにくくなる。また、装置側係合部を天井側係合部に上方から係合させることで装置側取付部材と天井側取付部材との水平方向への相対移動が水平方向移動阻止部によって阻止される。これにより、例えば地震等にファン式薬剤放散装置が天井から不意に落下することはない。さらに、装置本体を上方へ移動させることにより、天井側係合部と装置側係合部との係合状態を容易に解除することができ、取り付け及び取り外し時の作業性を良好にすることができる。
【0021】
第2の発明によれば、送風ファンによる送風空気を案内するための案内部を装置本体の上壁部に下方へ窪むように形成し、案内部の内方に装置側取付部材が取り付けられるので、案内部の内方を有効に活用することができる。
【0022】
第3の発明によれば、ネジの頭部を天井側取付部材の挿入孔に挿入した後、ネジを挿入孔における長手方向他側に相対移動させるだけでファン式薬剤放散装置を天井に簡単に取り付けることができる。
【0023】
第4の発明によれば、天井側係合部が下方へ窪む凹状に形成されているので、装置側係合部が天井側係合部に嵌まるようになり、装置側係合部と天井側係合部との係合が解除され難くなる。
【0024】
第5の発明によれば、係合状態にある装置側係合部及び天井側係合部を上下方向に重なるように配置し、装置側係合部から下方へ突出する突出部を設けたので、装置側取付部材と天井側取付部材との水平方向への相対移動を確実に阻止できる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0027】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係るファン式薬剤放散装置1を示すものである。ファン式薬剤放散装置1は、例えば住居や事務所、工場、各種店舗等の天井100(
図8等に示す)に取り付けられて使用される。
図3及び
図4に示すように、ファン式薬剤放散装置1は、装置本体2と、下側薬剤保持体5、5と、上側薬剤保持体6、6と、電池7と、モーター8と、送風ファン9とを備えている。装置本体2は、上側ケーシング部材10と、下側ケーシング部材20とを備えている。下側薬剤保持体5、5、上側薬剤保持体6、6、電池7、モーター8及び送風ファン9は、装置本体2に収容されている。上側ケーシング部材10及び下側ケーシング部材20は、図示しないネジ等の締結部材や爪嵌合構造によって一体化されており、下側薬剤保持体5、5、上側薬剤保持体6、6、電池7等を交換する際には、上側ケーシング部材10及び下側ケーシング部材20を分離することができるようになっている。
【0028】
上側ケーシング部材10は、装置本体2の略上半部を構成する樹脂製部材であり、
図1等で定義する左右方向に長い形状である。尚、各図における「上」とはファン式薬剤放散装置1を天井100に取り付けた状態で上になる側であり、「下」とはファン式薬剤放散装置1を天井100に取り付けた状態で下になる側である。
【0029】
上側ケーシング部材10は、上壁部11と、上壁部11の長手方向に延びる両縁部からそれぞれ下方へ向かって湾曲しながら延びる側壁部12、12と、上壁部11の短手方向に延びる両縁部からそれぞれ下方へ向かって略真っ直ぐに延びる端壁部13、13とを有しており、全体として下端面全体が開放する半割形状となっている。
図1及び
図2等に示すように、端壁部13には、開口部13aが形成されている。
【0030】
図1や
図3等に示すように、上側ケーシング部材10の側壁部12、12の上端部には、それぞれ、装置本体2の内部に吸入した空気を排出するための排出口14が形成されている。排出口14は、側壁部12の左右方向に長いスリット状に開口しており、この実施形態では、各側壁部12に複数の排出口14が上下に並ぶように、かつ、左右方向にも並ぶように形成されている。排出口14が側壁部12、12の上端部に形成されていることにより、ファン式薬剤放散装置1を天井100に取り付けた状態で排出口14が天井100に接近することになる。
【0031】
図4に示すように、上側ケーシング部材10の内部には、4組のモーター8及び送風ファン9が左右方向に並ぶように設けられている。すなわち、上側ケーシング部材10の内部には、送風ファン9を駆動するためのモーター8が固定されるモーター固定板19が配設されている。モーター固定板19は、上側ケーシング部材10の一方の側壁部12から他方の側壁部12に亘るように、かつ、一方の端壁部13から他方の端壁部13に亘るように略水平方向に延びている。モーター固定板19の上面に、4つのモーター8が左右方向に略等しい間隔をあけて配置され、固定されている。モーター8の姿勢は、その出力軸が上下方向に延びる姿勢とされており、出力軸はモーター8の本体部分から上方へ突出している。4つのモーター8は、上側ケーシング部材10の内部の左右方向中央部近傍において、出力軸が左右方向に延びる仮想直線上に位置するように配置される。モーター8は、排出口14よりも下で、かつ、側壁部12、12の下端よりも上に位置している。
【0032】
モーター8の出力軸に送風ファン9の回転中心部が固定されて出力軸と送風ファン9とが一体に回転するようになっている。送風ファン9は、下側薬剤保持体5、5及び上側薬剤保持体6、6に送風するためのものであり、軸流ファンである。送風ファン9は、排出口14よりも下に位置している。送風ファン9の内方にモーター8が位置するようになっている。
【0033】
図3に示すように、モーター固定板19における送風ファン9の直下方には、空気流通孔19aが該モーター固定板19を貫通するように形成されている。モーター固定板19よりも下側の空間と上側の空間とが空気流通孔19aを介して連通している。
【0034】
モーター固定板19の上面における短手方向両側には、電池収容部18がそれぞれ設けられている。電池収容部18は、モーター固定板19の上面から上方へ膨出するように形成されている。電池収容部18の内部に電池7が収容されている。電池収容部18は上側ケーシング部材10の左右方向両端部近傍に亘って設けられており、複数の電池7が電池収容部18に収容されて、各モーター8に電力を供給するように構成されている。
【0035】
尚、図示しないが、装置本体2には電源スイッチが設けられており、この電源スイッチと、モーター8と、電池7とによって電気回路が構成されている。使用者が電源スイッチをONにすると電池7から電力がモーター8に供給される一方、使用者が電源スイッチをOFFにすると電池7からの電力供給が停止する。
【0036】
上述したように、重量物である電池7及びモーター8が上側ケーシング部材10の内部に収容されているので、装置本体2の重心は上下方向中央部よりも上に位置することになる。装置本体2の左右方向の重心位置は、装置本体2の左右方向の略中心部に位置している。
【0037】
図4にも示すように、上側ケーシング部材10の上壁部11には、送風ファン9による送風空気を案内するための案内部17が下方へ窪むように形成されている。案内部17は、送風ファン9の配設位置に対応する部位にそれぞれ形成されており、この実施形態では4つの案内部17が形成されている。案内部17の中心部が最も下に位置する下端部となっており、案内部17の下端部は、送風ファン9の上端部と僅かな隙間をあけて対向するように配置されている。案内部17の下端部以外の部分は、該下端部の中心部から離れるに従って上に位置するように湾曲形成されている。送風ファン9によって送風される空気は、案内部17の湾曲形状に沿うように流れて排出口14に達するようになっている。
【0038】
案内部17の形成により、上側ケーシング部材10の上壁部11には4つの凹部15が左右方向に並ぶように形成されることになる。凹部15の底面は、略水平に延びる円形状をなしている。また、凹部15の内周面は、案内部17の形状に対応して底面の中心部から離れるに従って上に位置するように湾曲形成されている。
【0039】
図1に示すように、上側ケーシング部材10の左側に設けられる凹部15の内方には、底面から上方へ突出する1つ筒部16aと、複数の補強板部16bとが一体成形されている。筒部16aの突出方向は略鉛直方向であり、筒部16aの上端部は、上側ケーシング部材10の上壁部11よりも下に位置している。筒部16aの内側には、上方からネジ103が螺合することによって固定されるようになっている。
図6及び
図7に示すように、ネジ103は、上側に頭部が位置するように装置本体2に取り付けられる。
図8に示すように、ネジ103の頭部が上側ケーシング部材10の上壁部11の上面から上方へ突出するように、該ネジ103が筒部16aに螺合している。ネジ103は、例えばタッピングビス等で構成することができる。
【0040】
補強板部16bは、凹部15の底面から上方へ延びるとともに、筒部16aの外周面から放射状に延び、凹部15の内周面に連なっている。補強板部16bによって筒部16aと凹部15の内周面とが連結されて筒部16aの倒れが抑制される。
【0041】
同様に、上側ケーシング部材10の右側に設けられる凹部15の内方にも筒部16aと補強板部16bとが一体成形されており、筒部16aにはネジ103が螺合している。2本のネジ103は、本発明の装置側取付部材であり、ファン式薬剤放散装置1を構成する部材である。ネジ103、103は、装置本体2の左右両側に設けられることになる。尚、上側ケーシング部材10の左右方向中央側の凹部15の内方に筒部16aと補強板部16bを設けて筒部16aにネジ103を螺合させてもよい。
【0042】
図1に示すように、上側ケーシング部材10の上壁部11には、4つの凹部15を囲むように段部11aが形成されている。段部11aには、
図5に示すような蓋部材3が嵌まるようになっている。蓋部材3は、ネジ103を筒部16aに螺合させていない状態で段部11aに嵌めることができるようになっており、ファン式薬剤放散装置1を天井100に取り付ける際には段部11aから取り外す。
【0043】
下側ケーシング部材20は、装置本体2の略下半部を構成する樹脂製部材であり、上側ケーシング部材10と同様に左右方向に長い形状である。下側ケーシング部材20は、底壁部21と、底壁部21の長手方向に延びる両縁部からそれぞれ上方へ向かって湾曲しながら延びる側壁部22、22と、底壁部21の短手方向に延びる両縁部からそれぞれ上方へ向かって略真っ直ぐに延びる端壁部23、23とを有しており、全体として上端面全体が開放する半割形状となっている。
【0044】
上側ケーシング部材10と下側ケーシング部材20とを組み合わせると、上側ケーシング部材10の下方への開放部分と、下側ケーシング部材20の上方への開放部分とが一致する。このとき、上側ケーシング部材10の側壁部12、12の下端部と、下側ケーシング部材20の側壁部22、22の上端部とが当接し、また、上側ケーシング部材10の端壁部13、13の下端部と、下側ケーシング部材20の端壁部23、23の上端部とが当接して左右方向に長い箱状をなす。
【0045】
下側ケーシング部材20の側壁部22、22の上部には、それぞれ、空気を吸入するための吸入口24が形成されている。吸入口24は、左右方向に長いスリット状に形成されており、装置本体2の内部におけるモーター固定板19よりも下側の空間と連通している。尚、吸入口24の形成位置は側壁部22、22の下側であってもよい。また、吸入口24は複数形成してもよい。
【0046】
図3及び
図4に示すように、下側ケーシング部材20の内部には、下側薬剤保持体5、5及び上側薬剤保持体6、6が収容されている。下側薬剤保持体5、5は、下側ケーシング部材20の下側において左右方向に並ぶように配置され、下側保持部材26によって下側ケーシング部材20に対して着脱可能に保持されている。下側薬剤保持体5、5は同じものであり、各下側薬剤保持体5は、プリーツ成形された不織布等からなる薬剤含浸部材5aを備えている。薬剤含浸部材5aには、空気中に放散される薬剤として、例えば害虫忌避剤、殺虫剤、芳香剤等のうち、少なくとも1種が含浸されている。この薬剤は、常温で揮発性を有する薬剤である。
【0047】
上側薬剤保持体6、6は、下側ケーシング部材20の上側において左右方向に並ぶように配置され、上側保持部材27によって下側ケーシング部材20に対して着脱可能に保持されている。上側薬剤保持体6、6は、下側薬剤保持体5、5の上に重なっている。上側薬剤保持体6、6は下側薬剤保持体5、5と同様に構成されており、プリーツ成形された不織布等からなる薬剤含浸部材6aを備えている。下側薬剤保持体5の薬剤含浸部材5aと、上側薬剤保持体6の薬剤含浸部材6aとが上下方向に重なることになり、吸入口24から吸入された空気は、下側薬剤保持体5の薬剤含浸部材5aを通過した後、上側薬剤保持体6の薬剤含浸部材6aを通過するようになっている。
【0048】
つまり、ファン式薬剤放散装置1は、モーター8により駆動された送風ファン9によって吸入口24から吸入された空気を下側薬剤保持体5、5及び上側薬剤保持体6、6に送風し、薬剤含浸部材5a、6aを通過することで薬剤を含んだ空気を排出口14から排出するように構成されている。
【0049】
装置本体2は、
図6や
図7に示す天井側取付金具(天井側取付部材)102を2つ備えており、天井側取付金具102とネジ103とによって天井100に対して着脱可能に取り付けられる。2つの天井側取付金具102は共に同じものである。天井側取付金具102は、装置本体2の左右方向に長く延びる形状であり、長手方向の両側(左右方向の両側)には、天井100に固定される固定板部(固定部)102aがそれぞれ設けられている。固定板部102aは、天井100に沿って延びており、固定ビス101によって天井100に固定される。天井側取付金具102の左側の固定板部102aには、左側傾斜板部102bが連なっている。左側傾斜板部102bは、左側の固定板部102aの右端から右側へ向かって下降傾斜しながら延びている。左側傾斜板部102bの右端には、右側へ向かって延びる水平板部102cが連なっている。水平板部102cの右端には、下方へ窪む凹状に形成された窪み部102dが連なっている。窪み部102dの右端には、右側傾斜板部102eが連なっている。右側傾斜板部102eは、右側へ行くほど上に位置するように傾斜している。右側傾斜板部102eの右端は、天井側取付金具102の右側の固定板部102aに連なっている。
【0050】
図7に示すように、天井側取付金具102には、ネジ103の頭部が挿入される挿入孔102fが形成されている。挿入孔102fは、装置本体2の左右方向(水平方向)に長い形状とされ、水平板部102cから窪み部102dに亘って連続している。挿入孔102fの長手方向一側(装置本体2の左側)はネジ103の頭部の外径よりも広い開口幅を有する一方、該挿入孔102fの長手方向他側(装置本体2の右側)はネジ103の頭部の外径よりも狭い開口幅を有している。そして、挿入孔102fの左側の開口幅の広い部分は水平板部102cに形成され、挿入孔102fの右側の開口幅の狭い部分は窪み部102dに形成されているので、挿入孔102fの左側は右側に比べて上方に位置付けられている。
【0051】
次に、上記のように構成されたファン式薬剤放散装置1を天井100に取り付ける要領について説明する。装置本体2の筒部16a、16aにはそれぞれネジ103を螺合させることによって固定しておく。一方、天井100には、
図8に示すように天井側取付金具102、102を固定ビス101によって固定しておく。このとき、各天井側取付金具102の固定板部102a、102aにそれぞれ固定ビス101を貫通させて天井100に螺合させる。
【0052】
その後、
図8に示すように、装置本体2のネジ103の頭部を、各天井側取付金具102の挿入孔102fの左側の直下方に配置する。そして、
図9に示すように、装置本体2を上方へ移動させてネジ103の頭部を挿入孔102fの左側に下方から挿入する。このとき、挿入孔102fの左側の開口幅は、ネジ103の頭部の外径よりも広いので、ネジ103の頭部を挿入孔102fの左側に容易に挿入することができる。
【0053】
しかる後、
図10に示すように、装置本体2を右側へ移動させてネジ103の頭部が挿入孔102fの右側の開口幅が狭い部分に位置するようにする。挿入孔102fの右側の開口幅はネジ103の頭部の外径よりも狭いので、挿入孔102fにおける右側の縁部に対してネジ103の頭部が上方から係合する。この実施形態では、ネジ103の頭部が装置側係合部であり、挿入孔102fにおける右側の縁部が天井側係合部である。
【0054】
ネジ103の頭部が挿入孔102fにおける右側の縁部に係合した状態では、挿入孔102fにおける右側が窪み部102dに形成されているので、装置本体2の自重によってネジ103の頭部が窪み部102dの内方に位置することになる。これにより、ネジ103と天井側取付金具102との水平方向への相対移動が阻止される。一方、ネジ103の頭部と天井100との間には隙間があるので、装置本体2を上方へ押すことによってネジ103と天井側取付金具102との上下方向への相対移動は許容される。つまり、天井側取付金具102に窪み部012dを設けたことで、ネジ103と天井側取付金具102との水平方向への相対移動を阻止しながら、上下方向への相対移動は許容することができる。本発明の水平方向移動阻止部は窪み部012dで構成されている。
【0055】
ネジ103と天井側取付金具102との水平方向への相対移動が装置本体2の自重によって阻止されるので、例えば地震等の際にネジ103と天井側取付金具102との係合が解除されることはなく、ファン式薬剤放散装置1が天井100から不意に落下することはない。
【0056】
また、天井側取付金具102に窪み部012dは固定板部102a、102aよりも下に位置しているので、ネジ103の頭部が挿入孔102fにおける右側の縁部に上方から係合した状態で、装置本体1の取付位置が下がり、天井100からの離間距離が長く確保される。これにより、装置本体1の吸入口24及び排出口14が天井100から下方へ離れるので、ファン式薬剤放散装置1に吸入される空気やファン式薬剤放散装置1から排出される空気の流れが天井100によって阻害されにくくなり、薬剤が効率よく放散される。
【0057】
一方、天井側取付金具102の窪み部012dは、下方に窪んでいるだけなので、ネジ103を天井側取付金具102に対して上方へ移動させることができる。これにより、装置本体2を上方へ移動させてネジ103の頭部を挿入孔102fの左側に持ってくることができ、ネジ103の頭部を挿入孔102fの左側から下方へ抜いてネジ103と天井側取付金具102との係合状態を容易に解除することができる。したがって、ファン式薬剤放散装置1の取り付け及び取り外し時の作業性を良好にすることができる。
【0058】
また、送風ファン9による送風空気を案内するための案内部17を装置本体2の上壁部11に下方へ窪むように形成し、案内部17の内方にネジ103を取り付けるようにしたので、案内部17の内方を有効に活用することができる。
【0059】
(実施形態2)
図11〜
図14は、本発明の実施形態2に係るものである。この実施形態2では、天井100への取付構造が実施形態1とは異なるだけであり、装置本体2は実施形態1と同じである。以下、実施形態1と同じ部分には同じ符号を付して説明を省略し、異なる部分について詳細に説明する。
【0060】
すなわち、装置本体2の上壁部11の左右方向両側には、実施形態1のネジ103の代わりに、装置側取付金具(装置側取付部材)104がそれぞれ締結固定されている。装置側取付金具104は、装置本体2の短手方向に延びており、長手方向両側に装置本体2に固定される固定板部104a、104aが設けられている。各固定板部104aには、傾斜板部104bが連なっている。傾斜板部104b、104bは、装置側取付金具104の長手方向中央部へ近づくほど上に位置するように傾斜している。傾斜板部104b、104bの間には水平板部(装置側係合部)104cが設けられている。
【0061】
天井側取付金具105は、装置本体2の左右方向に長い板状に形成されている。天井側取付金具105の左右方向の寸法は、装置側取付金具104、104の左右方向の離間寸法よりも十分に長く設定されている。天井側取付金具105の長手方向中間部は、固定ビス101によって天井100に固定される固定板部105aである。天井側取付金具105の右側には、下方へ窪む凹状に形成された右側窪み部(天井側係合部)105dが設けられている。右側窪み部105dの右端部には、上方へ屈曲した右側屈曲部105bが設けられている。
【0062】
また、天井側取付金具105の左側には、下方へ窪む凹状に形成された左側窪み部(天井側係合部)105eが設けられている。左側窪み部105eの左右方向の寸法は、右側窪み部105dの左右方向の寸法よりも長く設定されている。左側窪み部105eの左端部には、上方へ屈曲した左側屈曲部105cが設けられている。
【0063】
次に、上記のように構成されたファン式薬剤放散装置1を天井100に取り付ける要領について説明する。装置本体2の上壁部11にはそれぞれ装置側取付金具104、104を締結固定しておく。一方、天井100には、
図12に示すように天井側取付金具105を固定ビス101によって固定しておく。このとき、各天井側取付金具105の固定板部105aに固定ビス101を貫通させて天井100に螺合させる。
【0064】
その後、装置本体2を天井側取付金具105の下方に配置した後、
図13に示すように、装置本体2の左側の装置側取付金具104と上壁部11との間に天井側取付金具105の左側窪み部105eを差し込む。このとき、左側窪み部105eの左右方向の寸法の方が右側窪み部105dの左右方向の寸法よりも長く設定されているので、深く差し込むことができ、右側窪み部105dを、装置本体2の右側の装置側取付金具104よりも右側に配置できる。
【0065】
しかる後、
図14に示すように、装置本体2を左側へ移動させて、装置本体2の右側の装置側取付金具104と上壁部11との間に天井側取付金具105の右側窪み部105dを差し込む。これにより、右側の装置側取付金具104の水平板部104cが右側窪み部105dに対して上方から係合し、また、左側の装置側取付金具104の水平板部104cが左側窪み部105eに対して上方から係合する。この係合した状態で、右側の装置側取付金具104の水平板部104cが右側窪み部105dに嵌まり、また、左側の装置側取付金具104の水平板部104cが左側窪み部105eに嵌まる。このとき、右側屈曲部105bが右側の装置側取付金具104の右側に位置し、左側屈曲部105cが左側の装置側取付金具104の左側に位置しているので、装置側取付金具104と天井側取付金具105との水平方向の相対移動が右側屈曲部105b及び左側屈曲部105cによって阻止される。一方、右側屈曲部105b及び左側屈曲部105cは装置側取付金具104の上方には位置していないので、装置側取付金具104と天井側取付金具105との上下方向への相対移動は許容する。つまり、右側屈曲部105b及び左側屈曲部105cは、本発明の水平方向移動阻止部に相当する。
【0066】
実施形態2によれば、実施形態1と同様に、ファン式薬剤放散装置1に吸入される空気やファン式薬剤放散装置1から排出される空気の流れが天井100によって阻害されにくくなる。また、ファン式薬剤放散装置1が地震時等に天井100から不意に落下しないように確実に取り付けることができ、しかも、取り付け及び取り外し時の作業性を良好にすることができる。
【0067】
(実施形態3)
図15〜
図20は、本発明の実施形態3に係るものである。この実施形態3では、天井100への取付構造が実施形態1とは異なるだけであり、装置本体2は実施形態1と同じである。以下、実施形態1と同じ部分には同じ符号を付して説明を省略し、異なる部分について詳細に説明する。
【0068】
すなわち、装置本体2の上壁部11の左右方向両側には、実施形態1のネジ103の代わりに、装置側取付金具(装置側取付部材)107がそれぞれ締結固定されている。装置側取付金具107は、装置本体2の短手方向に延びており、装置本体2の上壁部11に締結固定される固定板部107aと、固定板部107aから上方へ延びる縦板部107bと、縦板部107bから装置本体1の外方へ向けて突出する上板部(装置側係合部)107cとを有している。
図17に示すように、上板部107cには、奥側突出部107dと、手前側突出部107eとが下方へ突出するように形成されている。奥側突出部107dは、その下端部が固定板部107aに達するまで突出している。一方、手前側突出部107eの突出量は奥側突出部107dの突出量よりも小さく設定されており、手前側突出部107eの下端部と固定板部107aとの間に隙間が形成されている。
【0069】
天井側取付金具108の上部には、固定ビス101によって天井100に固定される固定板部(固定部)108aが設けられている。天井側取付金具108の固定板部108aには下方へ延びる縦板部108bが連なっている。さらに、縦板部108bの下端部には、下板部(天井側係合部)108cが水平方向に延びるように形成されている。下板部108cは、装置側取付金具107の手前側突出部107eの下端部と固定板部107aとの間から、固定板部107aと上板部107cとの間に挿入することができるようになっている。
【0070】
次に、上記のように構成されたファン式薬剤放散装置1を天井100に取り付ける要領について説明する。装置本体2の上壁部11にはそれぞれ装置側取付金具107、107を締結固定しておく。一方、天井100には、
図16に示すように天井側取付金具108を固定ビス101によって固定しておく。このとき、各天井側取付金具108の固定板部108aに固定ビス101を貫通させて天井100に螺合させる。
【0071】
その後、装置本体2を天井側取付金具108の近傍に配置した後、
図18に示すように、天井側取付金具108の下板部108cを、装置側取付金具107の手前側突出部107eの下端部と固定板部107aとの間から、固定板部107aと上板部107cとの間に挿入する。
図19に示すように、固定板部107aが、奥側突出部107dと、手前側突出部107eとの間に位置するまで装置本体2を移動させると、
図20に示すように、装置本体2を下方へ移動させて上板部107cが下板部108cに対して上方から重なった状態で係合する。上板部107cが下板部108cに係合した状態では、奥側突出部107dと、手前側突出部107eとの間に固定板部107aが位置しているので、天井側取付金具108と装置側取付金具107との水平方向への相対移動が阻止される。一方、上板部107cと天井100との間には隙間があるので、装置本体2を上方へ押すことで、装置側取付金具107を天井側取付金具108に対して上方へ移動させることができ、上下方向への相対移動は許容される。つまり、奥側突出部107dと、手前側突出部107eは、本発明の水平方向移動阻止部である。
【0072】
実施形態3によれば、実施形態1と同様に、ファン式薬剤放散装置1に吸入される空気やファン式薬剤放散装置1から排出される空気の流れが天井100によって阻害されにくくなる。また、ファン式薬剤放散装置1が地震時等に天井100から不意に落下しないように確実に取り付けることができ、しかも、取り付け及び取り外し時の作業性を良好にすることができる。
【0073】
尚、上記実施形態1〜3では、ファン式薬剤放散装置1を天井100に取り付ける場合について説明したが、これに限らず、ファン式薬剤放散装置1は図示しない壁に取り付けることもできる。また、ファン式薬剤放散装置1は図示しない載置台に置いて使用することもできる。
【0074】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。