【実施例1】
【0020】
はじめに、
図1を参照しながら実施例1に係るムラサキ科植物の栽培方法の基本構成について説明する。
図1は本発明の実施例1に係るムラサキ科植物の栽培設備を示す概念図である。
実施例1に係るムラサキ科植物の栽培方法は、
図1に示すように、屋外の地表面11上にムラサキ科植物9を植え付けて栽培する際に、その葉又は茎9aに波長390〜420nmの間にピークを有する紫色光12を人工的に照射することで、ムラサキ科植物9の根9bに蓄積される有用成分であるシコニン又はその誘導体の量を、紫色光12を照射しないムラサキ科植物9よりも増大させたものである。
一般にムラサキ科植物9では、植物体内において生合成されたシコニン又はその誘導体は根9bに蓄積される。
このため、ムラサキ科植物9から得られるシコニン又はその誘導体の量を増大させるためには、ムラサキ科植物9全体の収量、とりわけ、その根9bの収量を増加させることが有効であった(特許文献1,2を参照)。
これに対し、本発明の発明者らは鋭意研究の結果、ムラサキ科植物9の栽培時に、ムラサキ科植物9の葉又は茎9aに波長390〜420nmの間にピークを有する紫色光12を人工的に照射することで、根9bに蓄積されるシコニン又はその誘導体の量を増大させることができることを見出した。
【0021】
なお、ムラサキ科植物9の葉又は茎9aに、波長390〜420nmの間にピークを有する紫色光12を人工的に照射した際に、その根9bに蓄積されるシコニン又はその誘導体の量が増大する詳細なメカニズムについては現時点では解明されていないが、波長390〜420nmの間にピークを有する紫色光12は、光合成に利用し難い波長域の光であるためムラサキ科植物9にとってストレスになると考えられる。
そして、ムラサキ科植物9では紫色光12の照射によるストレスの付加が引き金となり、植物体内において抗菌作用等を有するシコニン又はその誘導体が生成されて根9bに蓄積されると考えられる。
この根拠として、ムラサキ科植物9に波長390〜420nmの間にピークを有する紫色光12を連続照射した場合と、紫色光12を間欠照射(照射と非照射の繰り返し)した場合とを比較すると、後者の方がムラサキ科植物9の根9bに蓄積されるシコニン又はその誘導体の量が増加する傾向が認められた。
【0022】
よって、実施例1に係るムラサキ科植物の栽培方法によれば、栽培するムラサキ科植物9の個体数を増やすことなしに、ムラサキ科植物9(特に根9b)から抽出されるシコニン又はその誘導体の量を増加させることができる。
この結果、実施例1に係るムラサキ科植物の栽培方法によれば、ムラサキ科植物9から効率良く有用成分であるシコニン又はその誘導体を得ることができる。よって、実施例1に係るムラサキ科植物の栽培方法によれば、生薬としてのシコニン又はその誘導体の生産性を向上することができる。
【0023】
ここで上述の実施例1に係る薬用植物ムラサキの栽培方法の基本構成に対して、任意で付加可能な技術内容について個別に説明する。
(1)紫色光12の照射時期について
通常、ムラサキ科植物9体内において生合成されたシコニン又はその誘導体は、根9bに一方的に蓄積され続けるのではなく、必要がなければ植物体内において生分解される、あるいは代謝されるなどして植物体内から消失してしまう。
このため、ムラサキ科植物9の栽培期間中の全期間にわたって波長390〜420nmの間にピークを有する紫色光12を照射し続けたからといって根9bに蓄積されるシコニン又はその誘導体の量を最大化できるわけではない。
従って、ムラサキ科植物9の栽培期間において、ムラサキ科植物9の収穫時点以前の、少なくとも1ヶ月間、好ましくは3ヶ月間、より好ましくは7ヶ月間、ムラサキ科植物9の葉又は茎9aに対して波長390〜420nmの間にピークを有する紫色光12を照射することで、より効率良く根9bに蓄積されるシコニン又はその誘導体の量を増大させることができる。
【0024】
(2)紫色光12の照射強度について
加えて、ムラサキ科植物9に波長390〜420nmの間にピークを有する紫色光12を照射する場合は、ムラサキ科植物9の葉又は茎9aの表面における紫色光12の照射強度を10W/m
2以上に設定することで、より好ましくは10〜45W/m
2の範囲内とすることでムラサキ科植物9に適度なストレスを与えることができ、これにより根9bにおけるシコニン又はその誘導体の蓄積量増大効果を発揮させることができる。
この点をより具体的に説明すると、紫色光12の照射強度を10W/m
2、30W/m
2に設定した場合は、30W/m
2に設定した場合の方がシコニン又はその誘導体の蓄積量増大効果が大きかった。他方、紫色光12を照射しなかった試験区(Cont.)と、紫色光12の照射強度を60W/m
2に設定して照射した場合とを比較すると、照射強度を60W/m
2に設定した場合の方がシコニン又はその誘導体の蓄積量増大効果が大きいものの、紫色光12の照射強度を30W/m
2に設定した場合との比較では、シコニン又はその誘導体の蓄積量に大差はなかった。このため、紫色光12の照射強度が30W/m
2を超える場合は、シコニン又はその誘導体の蓄積量増大効果が発揮される一方で、紫色光12の照射に伴う強光阻害が起きて、シコニン又はその誘導体の蓄積量増大効果が相殺されている可能性がある。
【0025】
(3)紫色光12の照射時間帯について
また、ムラサキ科植物9の葉又は茎9bに対し、日の出及び/又は日没時点を基準にして、その前後3時間のうちの少なくとも1時間の間、紫色光12を照射してもよい。
より具体的に説明すると、例えば、ある日の日の出時刻が6:00、日没時刻が18:00である場合は、紫色光12の照射時間帯を下記(a)〜(c)のいずれかのように設定すればよい。
(a)3:00〜9:00までの6時間の内の少なくとも1時間
(b)15:00〜21:00までの6時間の内の少なくとも1時間
(c)上記(a)の時間帯、及び、上記(b)の時間帯
この場合も、根9bにおけるシコニン又はその誘導体の蓄積量増大効果を発揮させることができる。
例えば、ムラサキ科植物9に対し、波長390〜420nmの間にピークを有する紫色光12を、一日のうちの4−8時までの4時間照射してもよい。この場合、根9bにおけるシコニン又はその誘導体の蓄積量増大効果を発揮させることができる。
さらに、例えば、上記時間帯(一日のうちの4−8時までの4時間)に加えて、一日のうちの16−20時までのさらに4時間紫色光12の照射を追加してもよい。この場合、根9bにおけるシコニン又はその誘導体の蓄積量増大効果を一層高めることができる。
つまり、日の出及び/又は日没時点を基準にして、その前後3時間のうちの少なくとも1時間以上人工的に紫色光12を葉又は茎9aに照射することで、根9bにおけるシコニン又はその誘導体の蓄積量を増加させることができる。なお、この紫色光12の照射時間の「1時間」とは、ムラサキ科植物9の葉又は茎9aに実質的に紫色光12が当たっている時間を意味している。従って、ムラサキ科植物9に対して紫色光12を間欠照射する場合、葉又は茎9aに実質的に紫色光12を1時間照射するには、間欠照射(例えば、15分間照射、45分間非照射の繰り返し)を4時間行う必要がある。
また、このように日の出及び/又は日没時点を基準にして、その前後3時間にムラサキ科植物9の葉又は茎9aに対して人工的に紫色光12を照射する場合は、ムラサキ科植物9において紫色光12が光ストレスとしてとして認識されやすくなり、その根9bにおけるシコニン又はその誘導体の蓄積量を効率的に増加させることができると考えられる。
【0026】
(4)紫色光12の照射方法について
さらに、ムラサキ科植物9に波長390〜420nmの間にピークを有する紫色光12を間欠照射してもよい。つまり、ムラサキ科植物9に対して、紫色光12を点灯と消灯を繰り返しながら照射してもよい。
この場合、ムラサキ科植物9の根9bに効率良くシコニン又はその誘導体を蓄積させることができる。
より具体的には、ムラサキ科植物9の葉又は茎9aに対して紫色光12を、一日における所望時間の間で、かつ、1時間のうちの15分間照射、残りの45分間は消灯することを繰返す間欠照射を行うことで、根9bにおけるシコニン又はその誘導体の蓄積量増加効果を発揮させることができる。
【0027】
なお、上記技術内容(1)〜(4)のそれぞれは、上述の実施例1に係る薬用植物ムラサキの栽培方法の基本構成にそれぞれ単独で付加してもよいし、2つ以上の技術内容を適宜組み合わせて付加してもよい。
いずれの場合も、ムラサキ科植物9の根9bにおけるシコニン又はその誘導体の蓄積量を増加させることができる。
【0028】
ここで
図1を参照しながら、実施例1に係る薬用植物ムラサキの栽培方法を実現するための具体的な栽培設備について詳細に説明する。
図1に示すように、実施例1に係るムラサキ科植物の栽培設備1Aは、地表面11に植え付けられたムラサキ科植物9の周囲にフレーム構造2を配し、このフレーム構造2により補光装置6aを直接又は間接的に保持又は固定することで、ムラサキ科植物9の葉又は茎9aに波長390〜420nmの間にピークを有する紫色光12を照射可能に構成してなるものである。
そして、
図1に示すようなムラサキ科植物の栽培設備1Aを用いてムラサキ科植物9を栽培することで、根9bにおけるシコニン又はその誘導体の蓄積量を増大させることができる。
【0029】
さらに、
図1に示すように、実施例1に係るムラサキ科植物の栽培設備1Aでは、ムラサキ科植物9を、地表面11上に立設した中空管体4中に培養土5を充填したものに植え込んでもよい。この場合、ムラサキ科植物9を地表面11に直に植え付ける場合に比べて、根9bの水平方向への広がりを抑えて中空管体4内に太い主根を効率良く生育させることができる。この結果、ムラサキ科植物9の根9bの収量を容易に増加させることができるので、この根9bから抽出されるシコニン又はその誘導体の量も多くなる。よって、ムラサキ科植物9の栽培時に中空管体4を用いることで、シコニン又はその誘導体の収量を増加させることができる。
さらに、中空管体4を用いてムラサキ科植物9を育てる場合は、地表面11を掘り起こすことなく根9bを収穫することができるので、その収穫作業を容易にするというメリットも有する。
また、中空管体4として、例えば、合成樹脂製(例えば、塩化ビニル等)のパイプや紙筒等を使用することができる。
【0030】
さらに、ムラサキ科植物9を中空管体4を用いて栽培する場合は、培養土5を充填した中空管体4と地表面11の間に、複数の貫通孔8aが穿設された目皿8を介設しておいてもよい。
この場合、ムラサキ科植物9が、中空管体4の下端から地表面11中に主根(根9b)を伸ばすのを抑制できる。これにより、ムラサキ科植物9の根9bの収穫時に、地表面11中に伸びた根9bの一部が切断されて収穫できなくなるという不具合を防止できる。
【0031】
続いて、
図2を参照しながら実施例1に係るムラサキ科植物の栽培設備1Aについてより詳細に説明する。
図2は本発明の実施例1に係るムラサキ科植物の栽培設備における格子部材の概念図である。
図1に記載されたものと同一部分については同一符号を付し、その構成についての説明は省略する。
ムラサキ科植物9を中空管体4に植え付ける場合は、
図1,2に示すように、フレーム構造2に格子部材3を設け、この格子部材3の空隙3aに中空管体4を収容保持するとともに、格子部材3に補光装置6aを固設してもよい。
この場合、格子部材3を備えることで、中空管体4の保持構造と、補光装置6aの保持構造を1つの構成により実現することができる。
また、格子部材3を備えることで、補光装置6aをムラサキ科植物9の葉又は茎9aの間近に配することができるので、光源7aから発せられる光の強度が弱くとも、ムラサキ科植物9に対して適度なストレスを付加することが可能になる。
この結果、ムラサキ科植物9の根9bに蓄積されるシコニン又はその誘導体の量を増大させることができる。
【0032】
なお、
図1に示すムラサキ科植物の栽培設備1Aでは、格子部材3に支柱10aを着脱可能に固設し、この支柱10aの所望位置に、砲弾型のLEDを複数集合させてなる光源7aを複数備えた補光装置6aを用いる場合を例に挙げて説明している。なお、支柱10a上における光源7aの取付け位置は自由に変更することができる。
また、光源として
図1に示すような砲弾型のLEDを複数集合させてなる光源7aを用いる場合は、光源7aからの発熱量も小さいので、ムラサキ科植物9の葉又は茎9aに光源7aを近接した場合でも、ムラサキ科植物9の葉又は茎9aに熱による障害が起こり難い。
【0033】
また、実施例1に係る薬用植物ムラサキの栽培方法では、ムラサキ科植物9における紫色光12の照射部位を葉又は茎9aに特定している。
一般に、植物体では葉以外の部位においても感光性を有する場合がある。例えば、茎が葉緑素を備える場合は、茎も葉と同様に感光性を有している。
そして、本発明ではこのような植物の感光性を利用して植物体(特に、ムラサキ科植物9)に光によるストレスを与えることで、根9bにおけるシコニン又はその誘導体の蓄積量を増加させている。
従って、実施例1に係る薬用植物ムラサキの栽培方法では、感光性を有する茎のみに390〜420nmの間にピークを有する紫色光12を照射するだけでも、目的とする効果を十分に発揮させることができる。
【実施例3】
【0035】
実施例3に係るムラサキ科植物の栽培設備について
図4を参照しながら説明する。
図4は本発明の実施例3に係るムラサキ科植物の栽培設備を示す概念図である。なお、
図1乃至
図3に記載されたものと同一部分については同一符号を付し、その構成についての説明は省略する。
実施例3に係るムラサキ科植物の栽培設備1Cは、補光装置6c以外の構成は実施例1又は実施例2に係るムラサキ科植物の栽培設備1A,1Bと同じである。従って、ここでは補光装置6cについて詳細に説明する。
補光装置6cは、格子部材3に架設される支柱10cに、例えば、390〜420nmの間にピークを有する紫色光12を発する高出力のLEDからなる光源7cを備え、ムラサキ科植物9の鉛直上方側からその葉又は茎9aに紫色光12を照射できるよう構成されてなるものである。
このような補光装置6cによれば、ムラサキ科植物9の葉又は茎9aの全域にくまなく390〜420nmの間にピークを有する紫色光12を照射することができる。
また、光量や照射範囲を調整することで、一つの補光装置で複数のムラサキ科植物に照射することもでき、これにより、補光装置6aや補光装置6bを用いる場合に比べて、設置台数を減らすことができるという利点がある。植物の生育に必要な太陽光を出来るだけ遮らないように、設置台数や設置位置を調整したり、補光装置の光源部以外の例えば電源部等(図示せず)は植物の上方以外に設置することが望ましい。
光源7cは、紫色光12を照射可能なものであれば特に限定されないが、砲弾型LEDより高出力な表面実装型LEDやCOB(Chip On Board)型LEDを単数あるいは複数個使用したものを採用することができる。
また、光源7cはLED以外でもよく、この場合は、ハロゲンランプや放電ランプ等と波長選択フィルターとを組み合わせて用いることで390〜420nmの間にピークを有する紫色光12を照射することもできる。
なお、
図4ではフレーム構造2に設けられる格子部材3に支柱10c及び光源7cを着脱可能に固設する場合を例に挙げて説明しているが、格子部材3を設けることなくフレーム構造2に直接支柱10c及び光源7cを固設してもよい。
上述のような実施例3に係るムラサキ科植物の栽培設備1Cは、実施例1,2に係るムラサキ科植物の栽培設備1A,1Bと同じ効果を有する。
【0036】
以下に、本発明に係る薬用植物ムラサキの栽培方法による効果を確認するために行った試験結果について
図5乃至
図7を参照しながら説明する。
はじめに、表1を参照しながら試験1〜3の実施条件について説明する。
【0037】
【表1】
【0038】
上表1に示すように、試験1ではムラサキ科植物9(ムラサキ属ムラサキ、学名:Lithospermum erythrorhizon Siebold et Zucc)に対して390〜420nmの間にピークを有する紫色光12を照射する際に、連続照射と間欠照射、及び、照射時間が根9bにおけるシコニン又はその誘導体の蓄積量に与える影響について調べた。
また、試験2では、ムラサキ科植物9に対して390〜420nmの間にピークを有する紫色光12を照射する際の照射時期が、根9bにおけるシコニン又はその誘導体の蓄積量に与える影響について調べた。
さらに、試験3では、ムラサキ科植物9に対して390〜420nmの間にピークを有する紫色光12を間欠照射する際に、ON/OFFの切替えタイミングが、根9bにおけるシコニン又はその誘導体の蓄積量に与える影響について調べた。
【0039】
なお、上表1中の試験2,3において、照射装置が補光装置6aから補光装置6bに変更されているのは、ムラサキ科植物9の草丈の変化によるものである。
より具体的に説明すると、植え付け直後のムラサキ科植物9は、草丈が低い時期は補光装置6aのみで植物体全体に波長390〜420nmの間にピークを有する紫色光12を照射することが可能であるが、その生育に伴い補光装置6aだけではムラサキ科植物9の葉又は茎9aの全域に紫色光12を照射することが困難になった。そこで、ムラサキ科植物9の株間に補光装置6bを配置して葉又は茎9aの全域に紫色光12が照射されるようにした。
試験1〜3はともに
図1,3に示すようなムラサキ科植物の栽培設備1A,1Bを用いて行い、各試験区とも上表1に示す条件以外のムラサキ科植物9の栽培条件は同じになるようにした。また、各試験区においてムラサキ科植物9のサンプル数はそれぞれ下記のように設定した。
・試験1:20本/区
・試験2:12本/区
・試験3:12本/区
【0040】
図5は試験1の試験結果を示すグラフである。なお、
図5では、390〜420nmの間にピークを有する紫色光12の照射を行わなかった試験区(
図5中の「Cont.」)のシコニン又はその誘導体の蓄積量の平均値を1.0とし、これに対する試験区A〜Cのシコニン又はその誘導体の蓄積量の平均値をその比で示した。
また、各試験においてシコニン又はその誘導体の蓄積量を、[ムラサキ科植物9の根の重量(g)]×[アセチルシコニン含量(%)]の式により得られた数値とし、各試験区毎に定量して求めた。なお、「根の重量(g)」は生重量、乾物重のいずれでもよい。
図5に示すように、試験1の結果、390〜420nmの間にピークを有する紫色光12を連続照射した試験区Aにおいてシコニン又はその誘導体の蓄積量は、紫色光12を照射しなかった試験区「Cont.」と比較して増加する傾向が認められた。従って、ムラサキ科植物9に対して390〜420nmの間にピークを有する紫色光12を照射することで、その根9bにおけるシコニン又はその誘導体の蓄積量を増加させることができることが確認された。さらに、ムラサキ科植物9に対して紫色光12の間欠照射を行った試験区B,Cでは、試験区Aよりもシコニン又はその誘導体の蓄積量が顕著に増加する傾向が認められた。
従って、試験1の結果から、ムラサキ科植物9の根9bにおけるシコニン又はその誘導体の蓄積量を増加させるには、紫色光12を連続照射するよりも間欠照射した方が、その効果が高くなることが示された。
さらに、試験1では紫色光12を、4−8時までの4時間のみ間欠照射(紫色光12の実質的な照射時間は1時間)を行った試験区Cよりも、4−8時の4時間及び16−18時の4時間の合計8時間(紫色光12の実質的な照射時間は2時間)照射を行った試験区Bの方が、根9bにおけるシコニン又はその誘導体の蓄積量が多かった。従って、ムラサキ科植物9に対して、4−8時の4時間のみ(日没時刻を基準にその前後3時間のうちの少なくとも1時間のみ)紫色光12を照射するだけでも、根9bにおけるシコニン又はその誘導体の蓄積量の増大効果が発揮される可能性は極めて高い。
【0041】
図6は試験2の試験結果を示すグラフである。なお、
図6では、390〜420nmの間にピークを有する紫色光12の照射を行わなかった試験区(
図5中の「Cont.」)のシコニン又はその誘導体の蓄積量の平均値を1.0とし、これに対する試験区D,Eのシコニン又はその誘導体の蓄積量の平均値をその比で示した。
図6に示すように、試験2の結果、ムラサキ科植物9の栽培期間中の全期間にわたって390〜420nmの間にピークを有する紫色光12の照射を行った場合(試験区D)と、ムラサキ科植物9の栽培期間中の後期にのみ紫色光12の照射を行った場合(試験区E)はともに、試験区「Cont.」よりもシコニン又はその誘導体の蓄積量が増加する傾向が認められた。
また、試験区Dと試験区Eとを比較すると、シコニン又はその誘導体の蓄積量に大差は認められなかった。この結果から、ムラサキ科植物9の根9bに含有されるシコニン又はその誘導体の蓄積量を増加させるには、収穫時期以前の所望期間の間(より具体的には、収穫時期以前の少なくとも1ヶ月間、好ましくは3ヶ月間、より好ましくは7ヶ月間)、波長390〜420nmの間にピークを有する紫色光12を照射するだけでもムラサキ科植物9の根9bにおけるシコニン又はその誘導体の蓄積量を増加させることができると考えられる。
【0042】
図7は試験3の試験結果を示すグラフである。なお、
図7では、390〜420nmの間にピークを有する紫色光12の照射を行わなかった試験区(
図7中の「Cont.」)のシコニン又はその誘導体の蓄積量の平均値を1.0とし、これに対する試験区F,Gのシコニン又はその誘導体の蓄積量の平均値をその比で示した。
図7に示すように、ムラサキ科植物9の葉又は茎9aに対して紫色光12を間欠照射する際に、紫色光12の照射時間の合計を一定にし、紫色光12の照射状態と非照射状態を頻繁に切り替えた場合(試験区G)と、そうでない場合(試験区F)とでは、根9bにおけるシコニン又はその誘導体の蓄積量の平均値に大きな差は認められなかった。
よって、試験3の結果から、ムラサキ科植物9の葉又は茎9aに紫色光12を間欠照射する場合、紫色光12照射のON/OFFの切替えを頻繁に行った方が、その根9bにより多くのシコニン又はその誘導体を蓄積させることができる可能性が高いことが示唆された。