【解決手段】生菌製剤の製造方法であって、無芽胞菌、トレハロース、乳タンパク質、アミノ酸、金属塩、および水を含む噴霧液を、多孔質担体に噴霧することを含み、前記噴霧液は、乾燥菌体として1重量部の前記無芽胞菌に対して、所定量の前記トレハロースを含む、生菌製剤の製造方法である。
前記噴霧液が、乾燥菌体として1重量部の前記無芽胞菌に対して、0.01〜5重量部の前記乳タンパク質を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の生菌製剤の製造方法。
前記噴霧液が、乾燥菌体として1重量部の前記無芽胞菌に対して、0.03〜10重量部の前記アミノ酸を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の生菌製剤の製造方法。
前記噴霧液が、乾燥菌体として1重量部の前記無芽胞菌に対して、0.02〜10重量部の前記金属塩を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の生菌製剤の製造方法。
前記金属塩が、Na、K、MgおよびCaからなる群から選択される元素の、硫酸塩、炭酸塩、リン酸塩、またはそれらの組み合わせである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の生菌製剤の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一側面は、生菌製剤の製造方法であって、無芽胞菌、トレハロース、乳タンパク質、アミノ酸、金属塩、および水を含む噴霧液を、多孔質担体に噴霧することを含み、前記噴霧液は、乾燥菌体として1重量部の前記無芽胞菌に対して、0.8重量部以上1.5重量部未満の前記トレハロースを含む、生菌製剤の製造方法である。本発明によれば、製剤化工程および保存中における微生物の生存率が向上された、無芽胞菌を含む生菌製剤の製造方法を提供することができる。本発明により上記のような効果が得られる詳細なメカニズムは依然として明確ではないが、以下のように推測される。すなわち、本発明では無芽胞菌の担体として多孔質担体を用い、これに直接無芽胞菌を噴霧している。これにより、製剤化後及び保存中の含水率が微生物にとって最適な値となるため、微生物の生存率が向上するものと考えられる。また、本発明では、噴霧液に存在するトレハロース、乳タンパク質、およびアミノ酸が微生物の安定化剤として製剤化工程における微生物に対するダメージを軽減するため、製剤化工程における生存率を高く維持することができるものと考えられる。さらに、本発明では、噴霧液中の無芽胞菌に対するトレハロース含有量の最適化により、製剤化工程のみならず、保存期間中における微生物の高い生存率をも達成される。本発明者らは、製剤中の微生物に対するトレハロースの含有量を多くすると、製剤化工程後の微生物の生存率は高くなるものの、保存期間中における微生物の生存率が低下してしまうという両立しがたい問題が存在することを見出した。これは、トレハロースの含有量が多い場合、おそらくはトレハロースによって微生物の生存に必要な自由水が奪われること、またはトレハロースの存在により製剤全体としての含水量が多くなり微生物が休眠状態にならないためであると推測される。
【0013】
上記問題に対し、本発明では、製剤化工程における噴霧液に金属塩を存在させることで、噴霧液中に含まれるトレハロースの含量をある程度高くしても、保存期間中における微生物の生存率の低下を防止し得ることを見出した。これは、トレハロースのみならず、金属塩が製剤中に共存することにより、製剤中の浸透圧が微生物にとって有利となるためであると推測される。なお上記メカニズムは推測であり、本発明の技術的範囲を制限するものでは無い。また、トレハロース、乳タンパク質、アミノ酸、および金属塩を、総称して「微生物保護剤」とも称する。
【0014】
以下、本発明の実施の形態を説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態のみには限定されない。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0015】
本明細書において、範囲を示す「X〜Y」は「X以上Y以下」を意味する。また、特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(20〜25℃)/相対湿度40〜50%RHの条件で測定する。
【0016】
<生菌製剤の製造方法>
本発明では、無芽胞菌、トレハロース、乳タンパク質、アミノ酸、金属塩、および水を含む噴霧液を、多孔質担体に噴霧することを含み、噴霧液中のトレハロースの量が、1重量部の無芽胞菌(乾燥菌体換算)に対して、0.8重量部以上1.5重量部未満であることを特徴とする。
【0017】
本発明においては種々の無芽胞菌(芽胞非形成菌)を用いることができる。本明細書における「無芽胞菌」には酵母、細菌、かび等が含まれ、例えば、ヤロウィア属(Yarrowia)、キャンディダ属(Candida)、ピキア属(Pichia)、ハンセヌラ属(Hansenura)、サッカロマイセス属(Saccharomyces)、クルイベロマイセス属(Kluyveromyces)、トリコスポロン属(Trichosporon)、リポマイセス属(Lipomyces)、ロードトルラ(Rhodotorula)属、シゾサッカロマイセス属(Schizosaccharomyces)、ラクトバシラス属(Lactobacillus)、エンテロコッカス属(Enterococcus)、ラクトコッカス属(Lactococcus)、ビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium)、ストレプトコッカス属(Streptococcus)、エンテロバクター属(Enterobacter)、スフィンゴモナス属(Sphingomonas)、バークホルデリア(Burkholderia)属、ウェイセラ属(Weissella)、アシネトバクター属(Acinetobacter)、アクロモバクター属(Achromobacter)、アセトバクター属(Acetobacter)、アルカリゲネス属(Alcaligenes)、アルスロバクター属(Arthrobacter)、コリネバクテリウム属(Corynebacterium)、フラボバクテリウム属(Flavobacterium)、アルカニボラックス属(Alcanivorax)、アルカリバクテリウム属(Alkalibacterium)、ステノトロフォモナス属(Stenotrophomonas)、アスペルギルス属(Aspergillus)、ペニシリウム属(Penicillium)、ムコール属(Mucor)、リゾムコール属(Rhizomucor)、モルティエレラ属(Mortierella)、フザリウム属(Fusarium)、シュードモナス属(Pseudomonas)、リゾプス属(Rhizopus)、フミコラ属(Humicola)、アクレモニウム属(Acremonium)、アエロモナス属(Aeromonas)、ブレビバクテリウム属(Brevibacterium)、トリコデルマ属(Trichoderma)等に属する無芽胞菌が例示できるが、これらに限定されない。無芽胞菌は1種を単独で、または2種以上を混合して用いることができる。本発明においては、無芽胞菌として酵母が好適に用いられる。
【0018】
後述の排水処理方法に生菌製剤を用いる場合には、無芽胞菌としては、ヤロウィア属(Yarrowia)、キャンディダ属(Candida)、ピキア属(Pichia)、ハンセヌラ属(Hansenura)、サッカロマイセス属(Saccharomyces)、クルイベロマイセス属(Kluyveromyces)、トリコスポロン属(Trichosporon)、リポマイセス属(Lipomyces)、ロードトルラ(Rhodotorula)属、シゾサッカロマイセス属(Schizosaccharomyces)、ラクトバシラス属(Lactobacillus)、エンテロコッカス属(Enterococcus)等の酵母が好ましく用いられ、油分分解活性の高さから、ヤロウィア・リポリティカ ATCC48436、ヤロウィア・リポリティカ NBRC1548、ヤロウィア・リポリティカ LM02−011(受託番号NITE P−01813)、ヤロウィア・リポリティカ NBRC0746、ヤロウィア・リポリティカ NBRC1209のようなヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)、ヤロウィア YH−01のようなヤロウィア スピーシーズ(Yarrowia sp.)等のヤロウィア属の酵母を含むことがより好ましく、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)を含むことが更に好ましく、広範囲のpH領域で高い油分分解活性を有するという観点から、ヤロウィア・リポリティカ LM02−011(受託番号NITE P−01813)が特に好ましい。
【0019】
上記微生物の培養方法は、当該微生物が生育・増殖できるものであれば、いずれのものであってよい。例えば、微生物の培養に使用する培地は、固体または液体培地のいずれでもよく、また、使用する微生物が資化しうる炭素源、適量の窒素源、無機塩及びその他の栄養素を含有する培地であれば、合成培地または天然培地のいずれでもよい。通常、培地は、炭素源、窒素源および無機物を含む。
【0020】
微生物の培養において使用できる炭素源としては、使用する菌株が資化できる炭素源であれば特に制限されない。具体的には、微生物の資化性を考慮して、グルコース、フラクトース、セロビオース、ラフィノース、キシロース、マルトース、ガラクトース、ソルボース、グルコサミン、リボース、アラビノース、ラムノース、スクロース、α−メチル−D−グルコシド、サリシン、メリビオース、ラクトース、メレジトース、イヌリン、エリスリトール、グルシトール、マンニトール、ガラクチトール、N−アセチル−D−グルコサミン、デンプン、デンプン加水分解物、糖蜜、廃糖蜜等の糖類、麦、米等の天然物、グリセロール、メタノール、エタノール等のアルコール類、酢酸、乳酸、コハク酸、グルコン酸、ピルピン酸、クエン酸等の有機酸類、ヘキサデカン等の炭化水素などが挙げられる。上記炭素源は、培養する微生物による資化性を考慮して適宜選択される。
【0021】
また、微生物の培養において使用できる窒素源としては、肉エキス、ペプトン、ポリペプトン、酵母エキス、麦芽エキス、大豆加水分解物、大豆粉末、カゼイン、ミルクカゼイン、カザミノ酸、グリシン、グルタミン酸、アスパラギン酸等の各種アミノ酸、コーンスティープリカー、その他の動物、植物、微生物の加水分解物等の有機窒素源;アンモニア、硝酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウムなどのアンモニウム塩、硝酸ナトリウムなどの硝酸塩、亜硝酸ナトリウムなどの亜硝酸塩、尿素等の無機窒素源などが挙げられる。上記窒素源は、培養する微生物による資化性を考慮して適宜選択される。
【0022】
微生物の培養に使用できる無機物としては、マグネシウム、マンガン、カルシウム、ナトリウム、カリウム、銅、鉄及び亜鉛などの、リン酸塩、塩酸塩、硫酸塩、酢酸塩、炭酸塩、重炭酸塩、塩化物等のハロゲン化物などが挙げられる。上記無機物は、培養する微生物による資化性を考慮して適宜選択される。また、上記無機物を1種または2種以上選択して使用することができる。また、培地中に、必要に応じて、界面活性剤等を添加してもよい。
【0023】
本発明の微生物の培養は、通常の方法によって行える。例えば、微生物の種類によって、好気的条件下または嫌気的条件下で、微生物を培養する。前者の場合には、微生物の培養は、振盪あるいは通気攪拌などによって行われる。また、微生物を連続的にまたはバッチで培養してもよい。培養条件は、培地の組成や培養法によって適宜選択され、本発明の微生物が増殖できる条件であれば特に制限されず、培養する微生物の種類に応じて適宜選択されうる。通常は、培養温度が、好ましくは15〜40℃、より好ましくは25〜35℃である。また、培養に適当な培地のpHは、好ましくは3〜11、より好ましくは3.5〜10.5である。
【0024】
なお、本発明では、無芽胞菌を湿菌体として噴霧液に用いてもよいし、凍結乾燥等により乾燥した菌体として噴霧液に用いてもよいが、後述する各微生物保護剤の添加量は、無芽胞菌を乾燥菌体に換算した量に対する値である。
【0025】
噴霧液中の無芽胞菌の量は特に制限されないが、例えば、噴霧液中に乾燥菌体として1〜20質量%となる量であり、好ましくは5〜15重量%となる量である。
【0026】
本発明で用いる噴霧液はトレハロースを含み、噴霧液中のトレハロースの量が、乾燥菌体として1重量部の無芽胞菌に対して、0.8重量部以上1.5重量部未満であることを特徴とする。噴霧液中のトレハロースの量が0.8重量部未満であると製剤化工程直後における微生物の生存率が低下し、1.5重量部以上であると生菌製剤の保存期間中の微生物の生存率が低下する。微生物の製剤化工程後における生存率と保存期間中の生存率とのさらなる好適なバランスの観点から、噴霧液中のトレハロース含有量は、乾燥菌体換算で1重量部の無芽胞菌に対して、好ましくは0.9重量部を超えて1.5重量部未満であり、より好ましくは1重量部以上1.4重量部以下である。
【0027】
なお、本発明においては、トレハロース以外の二糖類、たとえばスクロース、ラクトース、マルトース等のトレハロース以外の二糖類を、1種単独でまたは2種以上を混合して、トレハロースと併用してもよい。この場合、トレハロース以外の二糖類の含有量は、乾燥菌体として1重量部の無芽胞菌に対して、例えば0.01質量部以上0.8質量部未満であり、好ましくは0.1質量部以上0.5質量部以下である。
【0028】
噴霧液が含む乳タンパク質としては特に制限されず、従来公知の各種の乳タンパク質を含む材料を用いることができる。全脂粉乳のような乳脂肪分の多い原料を用いることもできるが、グリーストラップで使用するような油脂分解用生菌製剤を製造する場合は、製剤中の油分は少ない方が好ましいので、例えば、好ましい具体例としては、カゼイン、カゼインナトリウム、ホエイ、濃縮ホエイ、ホエイタンパク質濃縮物(WPC)、ホエイタンパク質分離物(WPI)、ホエイパウダー、スキムミルク、乳タンパク濃縮物(MPC)、脱脂粉乳、α−ラクトアルブミン、β−ラクトグロブリン等が例示でき、これらを1種単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。乳タンパク質原料としてスキムミルクや脱脂粉乳のようなラクトースを含む材料を用いることで、二糖類としてラクトースを噴霧液に添加する原料としても使用できる。
【0029】
噴霧液中の乳タンパク質の含有量は、本発明の所望の効果が達成される限りにおいて、特に制限されない。製剤化工程における微生物の生存率の観点から、好ましくは、噴霧液が、乾燥菌体として1重量部の前記無芽胞菌に対して、0.01〜5重量部の乳タンパク質を含み、より好ましくは0.02〜1重量部の乳タンパク質を含み、更に好ましくは0.05〜0.5重量部の乳タンパク質を含む。
【0030】
噴霧液が含むアミノ酸は、例えばグリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、グルタミン、グルタミン酸、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、リジン、セリン、スレオニン、メチオニン、トリプトファン、ヒスチジン、アルギン、プロリン、チロシン、およびこれらの誘導体が例示できる。噴霧液がアミノ酸を含むことにより、製剤化工程における微生物の生存率が向上する。アミノ酸の誘導体としては、アミノ酸の塩(例えば、カリウム塩、ナトリウム塩)、エステル体、水和物、溶媒和物等が例示できる。上記のアミノ酸は、1種を単独で、または2種以上を混合して用いることができる。上記のうち、製剤化工程における微生物の生存率の観点から、アミノ酸はグリシン、アラニン、およびこれらの誘導体からなる群から選択される1種以上であることが好ましく、グリシンおよびその誘導体から選択される1種以上であることが更に好ましい。
【0031】
噴霧液中のアミノ酸の含有量は、本発明の所望の効果が達成される限りにおいて、特に制限されない。製剤化工程における微生物の生存率の観点から、好ましくは、噴霧液が、乾燥菌体として1重量部の前記無芽胞菌に対して、0.03〜10重量部のアミノ酸を含み、より好ましくは0.1〜5重量部のアミノ酸を含み、さらに好ましくは0.1〜3重量部のアミノ酸を含む。なお、噴霧液が2種以上のアミノ酸を含む場合、上記数値は、2種以上の合計量を示す。
【0032】
噴霧液が含む金属塩は、例えばナトリウム(Na)、カリウム(K)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)、銅(Cu)などの金属元素の、硫酸塩、亜硫酸塩、次亜硫酸塩、過硫酸塩、チオ硫酸塩、炭酸塩、リン酸塩、ピロリン酸、塩酸塩、硝酸塩、亜硝酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、酪酸塩、クエン酸塩、シュウ酸塩、ハロゲン化物(たとえば、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物)等が例示できるが、これらに限定されない。噴霧液が金属塩を含むことにより、噴霧液中におけるトレハロースの含量を0.8重量部以上1.5重量部未満としても、保存期間中における微生物の生存率の低下を防止し得る。金属塩は、より具体的には、例えば、硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、次亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、過硫酸ナトリウム、リン酸一ナトリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、酢酸ナトリウム、硝酸ナトリウム、亜硝酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、シュウ酸ナトリウム、塩化ナトリウム、硫酸カリウム、亜硫酸カリウム、次亜硫酸カリウム、チオ硫酸カリウム、炭酸カリウム、過硫酸カリウム、リン酸一カリウム、リン酸二カリウム、リン酸三カリウム、酢酸カリウム、硝酸カリウム、亜硝酸カリウム、酢酸カリウム、クエン酸カリウム、シュウ酸カリウム、塩化カリウム、硫酸マグネシウム、亜硫酸マグネシウム、チオ硫酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、第一リン酸マグネシウム、第二リン酸マグネシウム、第三リン酸マグネシウム、ピロリン酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、亜硝酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、クエン酸マグネシウム、シュウ酸マグネシウム、塩化マグネシウム、硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウム、チオ硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、硝酸カルシウム、亜硝酸カルシウム、酢酸カルシウム、クエン酸カルシウム、シュウ酸カルシウム、塩化カルシウム等が例示できる。上記の金属塩は、1種を単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
【0033】
保存期間中における微生物の生存率が特に優れるという観点から、金属塩が、Na、K、MgおよびCaからなる群から選択される元素の、硫酸塩、炭酸塩、リン酸塩、またはそれらの組み合わせであることが好ましく、Mgおよび/またはCaの硫酸塩であることがより好ましい。なお、上記の「金属塩」には、金属塩の水和物や溶媒和物も含まれる。
【0034】
噴霧液中の金属塩の含有量は、本発明の所望の効果が達成される限りにおいて、特に制限されない。保存期間中における微生物の生存率の観点から、好ましくは、噴霧液が、乾燥菌体として1重量部の前記無芽胞菌に対して、0.02〜10重量部の金属塩を含み、より好ましくは0.05〜1.5重量部の金属塩を含み、更に好ましくは0.1〜1重量部の金属塩を含む。なお、噴霧液が2種以上の金属塩を含む場合、上記数値は、2種以上の合計量を示す。
【0035】
噴霧液が含む水は、水道水、蒸留水、イオン交換水、純水、超純水など、いずれを使用してもよいが、不純物の少ない蒸留水、イオン交換水、純水、または超純水を用いることが好ましい。メタノール、エタノール、プロパノール等の低級アルコールや、アセトンなどの極性溶媒を、本発明の目的効果が損なわれない程度において水に添加した混合液を用いてもよい。
【0036】
噴霧液には、上記の各成分のほか、本発明の目的効果が阻害されない範囲において、任意に、例えばグルコース、フルクトース等の単糖類;スクロース、ラクトース、マルトース等のトレハロース以外の二糖類;シクロデキストリン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、結晶セルロース、コーンスターチ等の多糖類;大豆タンパク等のタンパク質;大豆ペプチド、ゼラチン、ペプトン、トリプトン等のタンパク加水分解物やペプチド;大豆油、菜種油、パーム油、ゴマ油、オリーブ油等の油脂;アスコルビン酸やその塩、トコフェロール等のビタミン類;ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル等の界面活性剤;ポリエチエレングリコール、グリセリンなどを添加してもよい。
【0037】
噴霧液の固形分量は、多孔質担体への噴霧が可能であれば特に制限されないが、生産性等の観点から、噴霧液全体中の例えば3〜70重量%であり、好ましくは20〜50重量%である。噴霧液の調製方法も特に制限されず、上記した噴霧液に含まれる各成分を水に添加し、必要に応じて撹拌して調製する。
【0038】
本発明においては、有機または無機の多孔質担体を広く利用することができる。多孔質担体に上記のような微生物保護剤を含む噴霧液を噴霧すると、多孔質担体を用いない場合や、多孔質以外の担体に噴霧した場合と比較して、製剤化工程後の微生物の生存率を向上できる。
【0039】
本発明において用いられうる多孔質担体の材料としては、特に制限されるものではないが、例えば、珪藻土、パーライト、バーミキュライト、タルク、クレー、ゼオライト、ベントナイト、カオリン、炭酸カルシウム、活性白土、二酸化チタン、珪砂、軽石、活性炭、カーボンブラック、グラファイト、ポリ乳酸、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル等が例示できるが、これらに限定されない。製剤化工程後の微生物の生存率の観点から、多孔質担体としては、珪藻土、および活性炭からなる群から選択されることが好ましい。
【0040】
なお、本明細書において「多孔質」とは、担体の表面に多数の小さな気泡状の空隙を有する状態をいう。好ましくは、多孔質担体の嵩密度(タッピング嵩密度)が0.01〜2g/mlである。上記のような嵩密度の多孔質担体を用いることにより、製剤化工程後の微生物の生存率をより一層向上できる。多孔質担体の嵩密度は、より好ましくは0.05〜1.5g/mlであり、更に好ましくは0.2〜1g/mlである。なお、上記の嵩密度は、タッピング嵩密度測定法により測定した値である。
【0041】
製剤化工程後の微生物の生存率の観点から、担体は、平均粒径(直径、体積基準)が1〜300μmの粒子状であることが好ましく、平均粒径(直径、体積基準)が10〜200μmの粒子状であることがより好ましく、30〜150μmであることが更に好ましい。なお、担体の粒径は、レーザー回折法にて測定した値である。
【0042】
上記の多孔質担体に対して、上述した無芽胞菌と微生物保護剤とを含む噴霧液を噴霧して製剤化する。多孔質担体への噴霧液の噴霧は、流動層造粒機を用いて行うことが好ましい。すなわち、本発明の一実施形態では、生菌製剤の製剤化が流動層造粒法によって行われる。流動層造粒法により製剤化することにより、無芽胞菌と微生物保護剤とを含む無芽胞菌含有層を比較的低温で多孔質担体上に形成することができる。このため、製剤化工程における生存率の向上の観点から有利である。また、流動層造粒法により製剤化することにより、上記の無芽胞菌含有層を均一に多孔質担体上に形成することができる、という点においても有利である。
【0043】
多孔質担体に対する噴霧液の噴霧量は任意に設定でき、特に制限されるものではないが、1重量部の多孔質担体に対して、噴霧液の固形分として、例えば、0.1〜10重量部となる割合であり、好ましくは0.5〜2重量部となる割合である。
【0044】
噴霧液は、通常は50〜300g/分程度の速度で多孔質担体へ噴霧される。
【0045】
流動層造粒法により製剤化する場合は、温風の温度は微生物の耐熱性等を考慮して適宜設定すればよいが、例えば、入口温度30〜60℃であり、好ましくは35〜50℃である。流動層の温度も微生物の耐熱性等を考慮して適宜設定すればよいが、例えば、温度30〜60℃であり、好ましくは35〜50℃である。噴霧後、噴霧液を噴霧した多孔質担体を流動層造粒機内でそのまま乾燥してもよいし、別途乾燥機で乾燥してもよい。
【0046】
粉末化した生菌製剤は、用途に応じて、公知のコーティング剤で表面の一部または全部を被覆してもよい。また、滑沢剤(例えば、タルク、マイカ、シリカ、ステアリン酸マグネシウム)、乾燥剤(酸化カルシウム、シリカゲル)、フィラーなどの粉末を、任意の割合で生菌製剤と混合し、混合製剤としてもよい。また、所望の粒度となるように製剤を粉砕したり、分級をしたりしてもよい。
【0047】
保存期間中の微生物の生存率の観点から、製剤化後の生菌製剤の水分含量は、3〜8重量%であることが好ましく、4.5〜7.5重量%であることがより好ましい。
【0048】
<生菌製剤>
本発明の第二の側面は、多孔質担体上に無芽胞菌含有層が形成されてなる生菌製剤であって、前記無芽胞菌含有層が、乾燥菌体として1重量部の前記無芽胞菌に対して、0.8重量部以上1.5重量部未満のトレハロース、0.01〜5重量部の乳タンパク質、0.03〜10重量部のアミノ酸、および0.02〜10重量部の金属塩を含む、生菌製剤に関する。かような生菌製剤は、製剤化工程および保存中における生存率に優れたものとなる。本発明の第二の側面における無芽胞菌、トレハロース、乳タンパク質、アミノ酸、金属塩、および多孔質担体を含む各構成要素については、第一の側面について上記した内容が適宜改変されて適用され得る。無芽胞菌含有層における各微生物保護剤の量としても、噴霧液について上記した乾燥菌体換算した無芽胞菌に対する相対量を採用することができる。
【0049】
上記のような生菌製剤は、本発明の第一の側面に係る製造方法により製造することができる。
【0050】
<排水処理方法>
本発明の第三の側面は、本発明の第二の側面に係る生菌製剤を、油分を含む排水に接触させる工程を含み、生菌製剤中の無芽胞菌として、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)を含む、排水処理方法に関する。ヤロウィア属の酵母は油分分解活性が高い油分分解性微生物であるため、排水処理用の生菌製剤に含まれる無芽胞菌として適している。以下、
図1を参酌しながら、本側面に係る排水処理方法についてより詳細に説明する。なお、本発明の排水処理方法が、
図1に限定されるものでは無い。
【0051】
図1は、グリーストラップ10による排水処理(廃水処理)の仕組みを模式的に表している。本発明に係る方法において、上記の生菌製剤は、グリーストラップ10に排出する前の排水にあらかじめ添加されていても良いが、典型的には、排水処理槽1中の排水へ添加される。但し、本発明に係る排水処理方法は、上記生菌製剤と油分含有排水とを接触させることができる限り特に限定されない。
【0052】
グリーストラップ10は、埋設式、可動式など、設置形態は特に制限されない。埋設式の場合、例えば厨房や食品加工場において、排水路に流出した排水が残渣受け3に注ぎ込まれるように、グリーストラップ10を埋設する。可動式の場合、例えば、シンクの排水溝の下部に残渣受け3が位置するようにグリーストラップ10を設置する。
【0053】
図1において、排水は、矢印の方向へ流れる。なお、グリーストラップ10への排水の投入は、回分式であっても連続式であっても良い。油分含有排水は、残渣受け3を通じて排水処理槽1へと流れ込む。このとき、生ゴミ等の残渣の全部または一部は残渣受け3で捕集されるが、大部分の油分は残渣受け3を通過して排水処理槽1へと流入する。排水処理槽1へ流入した油分6は水面5へ向かって浮上し、仕切り板2aと2cとで仕切られた空間に集まる。従って、油分分解性微生物を含む生菌製剤を排水に加えない場合、仕切り板2aと2cとで仕切られた空間で油分6が次第に凝集し、スカムを形成することとなる。
【0054】
生菌製剤をグリーストラップ10に適用した場合、排水処理槽1にて(主として、仕切り板2aと2cとで仕切られた空間にて)、油分を含む排水と生菌製剤(油分分解性微生物)とが接触することとなる。本発明に係る生菌製剤に含まれるヤロウィア・リポリティカは油分の分解活性が高く、資化性を有するため、油分6の凝集を抑制し、スカムが形成されることを有効に防止し得る。特に、ヤロウィア・リポリティカ LM02−011株は、広範なpH領域(例えば、pH3.0〜11.0)においても高い油分分解活性を備える。これにより、排水のpHに依存せず、油分がトラップ管4を通じて外部環境へ流出することを防止し、環境保全の観点からも利点がある。
【0055】
本発明に係る方法において使用される生菌製剤は、例えば、排水中へ添加され、排水と接触させられる。生菌製剤を容器に収容してグリーストラップ内に設置し、容器に排水を通液させることにより生菌製剤と排水とを接触させることもできる。これにより、排水と共に油分分解性微生物が流出して菌数が低下することを防止し得る。
【0056】
本発明にかかる方法において、排水に生菌製剤を添加して接触させる場合、添加する菌量は任意に設定できる。排水に添加する生菌製剤の量は、特に制限されるものではないが、排水に含まれる油分1gに対して、製剤中の生菌数として例えば1×10
4〜1×10
12CFUであり、好ましくは1×10
5〜1×10
11CFUである。あるいは、排水に含まれる油分1gに対して、生菌製剤を、例えば0.1mg〜100gであり、好ましくは1mg〜5gである。または、グリーストラップ内の排水に対して、製剤中の生菌数として例えば1×10
6〜1×10
12CFU/L、より好ましくは1×10
7〜1×10
11CFU/Lとなるような量であってもよい。あるいは、グリーストラップ内の排水に対して、生菌製剤を、例えば10mg〜1000g/Lであり、好ましくは0.5g〜50g/Lである。
【0057】
排水を外部環境へ排出する際、生菌製剤が排水と共にグリーストラップ外へと排出される場合があるので、本発明においては、グリーストラップ(排水)に、定期的に生菌製剤を添加してもよい。添加する間隔は特に制限されないが、例えば、1回/3時間、1回/24時間、または2〜3日に1回の間隔で添加するのが好ましい。添加する方法は特に制限されず、排水が連続的にグリーストラップに流入する場合には、排水に混在させて添加してもよいし、グリーストラップ内の排水に直接、添加してもよい。厨房のシンクなどの排水口から生菌製剤を添加すれば、洗浄により排出される排水とともに、生菌製剤をグリーストラップ内に導入することができる。
【0058】
本明細書において「油分」とは、トリグリセリド、ジグリセリドおよびモノグリセリドのようなアシルグリセロールを50重量%以上含む(例えば、65重量%以上、好ましくは80重量%以上、より好ましくは90重量%以上(上限100重量%)のグリセリド類を含む)食用または工業用油脂、ならびに脂肪酸を指す。油脂は、ステロール、リン脂質等のアシルグリセロール以外の脂質を含むものであっても良い。
【0059】
油脂としては、各種の動植物性油脂が含まれ、例えば、オリーブ油、キャノーラ油、ココナッツ油、ごま油、米油、米ぬか油、サフラワー油、大豆油、トウモロコシ油、菜種油、パーム油、パーム核油、ひまわり油、綿実油、やし油、落花生油、カカオ脂、牛脂、ラード、鶏油、魚油、鯨油、バター、マーガリン、ファットスプレッド、ショートニング等の食用油脂;およびアマニ油、ジャトロファ油、トール油、ハマナ油、ひまし油、ホホバ油等の工業用油脂;が例示できるが、好ましくはグリーストラップが設置されることが多いレストラン等で頻繁に排出される食用油脂である。
【0060】
脂肪酸としては、特に限定されるものではないが、例えば、酪酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、デカン酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、ヘプタデカン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸等の飽和脂肪酸;デセン酸、ミリストレイン酸、ペンタデセン酸、パルミトレイン酸、ヘプタデセン酸、オレイン酸、イコセン酸、ドコセン酸、テトラコセン酸、ヘキサデカジエン酸、ヘキサデカトリエン酸、ヘキサデカテトラエン酸、リノール酸、α−リノレン酸、γ−リノレン酸、オクタデカテトラエン酸、イコサジエン酸、イコサトリエン酸、イコサテトラエン酸、アラキドン酸、イコサペンタエン酸、ヘンイコサペンタエン酸、ドコサジエン酸、ドコサテトラエン酸、ドコサペンタエン酸、ドコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸等の不飽和脂肪酸;が挙げられる。脂肪酸は、食用または工業用油脂が分解されて生じたものであっても良い。
【0061】
排水中の油分の含有量は、特に制限されない。排水中に含まれる油分は、2種類以上であっても良い。
【0062】
本発明の方法において、本発明に係る生菌製剤に加えて、油分をより効率的に減少させる観点から、他の成分を排水に添加してもよい。他の成分としては、例えば、リパーゼやホスホリパーゼ等の油分分解性酵素、pH調整剤などが挙げられる。
【0063】
油分分解性酵素としては、たとえば、シュードモナス(Pseudomonas)属、アスペルギルス(Aspergillus)属、バチルス(Bacillus)属、ペニシリウム(Penicillium)属、リゾプス(Rhizopus)属、リゾムコール(Rhizomucor)属、ムコール(Mucor)属、ペシロマイセス(Paecilomyces)属、リゾクトニア(Rhizoctonia)属、アブシディア(Absidia)属、アクロモバクター(Achromobacter)属、エロモナス(Aeromonas)属、アルテルナリア(Alternaria)属、アウレオバシジウム(Aureobasidium)属、ボーベリア(Beauveria)属、クロモバクター(Chromobacter)属、コプリヌス(Coprinus)属、フザリウム(Fusarium)属、ゲオトリクム(Geotricum)属、フミコラ(Humicola)属、ハイホジーマ(Hyphozyma)属、ラクトバチルス(Lactobacillus)属、メタリジウム(Metarhizium)属、ロドスポリジウム(Rhodosporidium)属、トリコデルマ(Trichoderma)属、ヤロウィア(Yarrowia)属、キャンディダ(Candida)属、ピキア(Pichia)属、ハンセヌラ(Hansenula)属、サッカロマイセス(Saccharomyces)属、クルイベロマイセス(Kluyveromyces)属、および/またはトリコスポロン(Trichosporon)属から得ることができる。
【0064】
市販の油分分解性酵素としては、リパーゼMY、リパーゼOF、リパーゼPL、リパーゼQLM(名糖産業株式会社);リパーゼA「アマノ(登録商標)」6、リパーゼDF「アマノ(登録商標)」15、リパーゼG「アマノ(登録商標)」50、リパーゼAY「アマノ(登録商標)」30SD、リパーゼR「アマノ(登録商標)」、リパーゼMER「アマノ(登録商標)」、ニューラーゼ(登録商標)F(アマノエンザイム株式会社);スミチーム(登録商標)NLS、スミチーム(登録商標)RLS(新日本化学工業株式会社);リリパーゼ(登録商標)A−10D、リリパーゼ(登録商標)AF−5、PLA2ナガセ(ナガセケムテックス株式会社);エンチロンAKG−2000、エンチロンLP、エンチロンLPG(洛東化成工業株式会社);Lipolase(登録商標)100T、Lipolase(登録商標)100L、Palatase20000L、Lipex(登録商標)100T、Lipex(登録商標)100L、Lipozyme(登録商標)RMIM、Lipozyme(登録商標)TLIM、Novozyme(登録商標)435FG(ノボザイムズ社製);ピカンターゼA、ピカンターゼR800(ディー・エス・エムジャパン社製)等が挙げられる。これらを2種以上組み合わせて用いることもできる。
【0065】
油分分解性酵素の量は、酵素が油分と反応できれば特に制限されないが、排水に含まれる油分1gに対して、10〜2,000Uで用いることが好ましい。より好ましくは50〜1,500U、さらに好ましくは100〜1,000Uである。または、グリーストラップの容量に対して、好ましくは1,000〜100,000U/L、より好ましくは2,000〜80,000U/Lとなるような量であってもよい。なお、油分分解性酵素の活性単位(U)は、37℃、pH7の条件で1分間に1μモルの脂肪酸を遊離する酵素量である。
【0066】
グリーストラップは、油分含有排水を連続的に導入し、処理後の排水を連続的に排出する形態であってもよいし、油分含有排水を導入し、一括して処理した後に、処理後の排水を一括して排出する形態であってもよい。
【0067】
また、本発明の方法において、生菌製剤と油分とを接触させる際の温度、すなわちグリーストラップ内の排水の温度としては、任意に設定することができる。また、生菌製剤と油分とを接触させる際のpH、すなわちグリーストラップ内の排水のpHとしても、任意に設定することができる。一般的には、温度は、例えば10〜60℃であり、20〜50℃が好ましく、25〜40℃がより好ましい。pHは例えば3〜10であり、pH4〜9が好ましく、pH5〜8がさらに好ましい。さらに、必要に応じて、排水基準を満たす範囲で、曝気等により排水にエアレーションを行っても良い。
【実施例】
【0068】
本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。
【0069】
(培養液の調製)
ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)LM02−011株(平成26年3月6日付で、独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター(千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8)に寄託されており、その受託番号は、NITE P−01813である。)を下記の液体培地に接種して、ジャーファーメンターにて30℃で48時間(撹拌速度:300rpm)培養し、培養液を得た。
【0070】
液体培地の作製方法: 終濃度が0.18%(w/v)ポリペプトン、0.12%(w/v)肉エキス、0.07%(w/v)NaHCO
3、0.005%(w/v)NaCl、0.002%(w/v)KCl、0.002%(w/v)CaCl
2・2H
2O、0.003%(w/v))MgSO
4・7H
2Oとなるように純水に溶解した。塩酸にてpH5に調整後、オートクレーブ滅菌したものを液体培地とした。
【0071】
(実施例1)
得られた培養液を10分間遠心分離(×10,000g)し、菌体を回収した。得られた菌体に対して下記表1の比率で各成分を蒸留水に添加し、混合して噴霧液を調製した。なお、乳タンパク質としては、固形分中にタンパク質を35重量%、乳糖を52重量%の割合で含むスキムミルクを用いた。
【0072】
流動層造粒機(FA−LAB−1、株式会社パウレック社)に300gの珪藻土(平均粒径75μm、嵩密度0.33g/ml、ラヂオライト(登録商標)♯3000、昭和化学工業株式会社)をセットした。珪藻土に対して、1077gの上記噴霧液を143g/分の速度で噴霧するとともに、40℃の温風を送風して内容物を流動させた状態で乾燥させた。噴霧後、引き続いて流動層造粒機内で40℃の温風を40分間送風して、造粒物を乾燥させた。これにより、生菌製剤を得た。生菌製剤の水分含量は5.5重量%であった。
【0073】
(実施例2)
実施例1における珪藻土に代えて、活性炭(平均粒径25μm、嵩密度0.33g/ml、梅蜂印H−C、太平化学産業株式会社)を用いた以外は実施例1と同様の手法により、生菌製剤を得た。生菌製剤の水分含量は5.1重量%であった。
【0074】
(比較例1)
実施例1における珪藻土に代えて、多孔質ではない麦ふすま(担体の表面に多数の小さな気泡状の空隙を有しない)を用い、噴霧液の組成を下記表1のように変更した以外は実施例1と同様の手法により、生菌製剤を得た。
【0075】
(比較例2〜7)
噴霧液の組成を下記表1のように変更した以外は実施例1と同様の手法により、それぞれ生菌製剤を得た。
【0076】
【表1】
【0077】
(製剤化工程における生存率)
実施例、比較例において用いた噴霧液中の生菌数に対する、製剤化直後(温風乾燥から60分以内)における生菌製剤中の生菌数を求めた。すなわち、噴霧液および生菌製剤を、100倍量の蒸留水中(25℃)で1分間撹拌して段階希釈し、得られた希釈液を寒天培地(組成:上記液体培地に、終濃度20重量%となるように寒天を添加したもの)の表面に塗布した。菌を30℃で48時間培養した後、寒天培地上に形成されたコロニー数を計測した。コロニー数から、噴霧液1g当たりの生菌数および製剤1g当たりの生菌数を算出した。懸濁液1g当たりの生菌数、スプレーした液量、および噴霧液中の菌以外の成分の量から生菌製剤1g当たりの生菌数の理想値(生存率100%に相当する。)を算出した。製剤化工程における生存率は、生菌数の理想値に対する生菌製剤1g当たりの生菌数を100分率として算出した。
【0078】
(生菌製剤の保存中における生存率)
作製後の生菌製剤を、遮光ガラスバイアル瓶内に封入し、23℃で保存した。保存から7日後、14日後、および21日後における生菌製剤1g当たりの生菌数を、上記と同様の手法により求めた。
【0079】
(結果)
図2に示すように、実施例で得られた生菌製剤は、製剤化工程における生菌率に優れていた。また、
図3に示すように、実施例で得られた生菌製剤は、製剤化工程のみならず、保存期間中においても高い生存率を示した。特に、多孔質担体として珪藻土を用いた場合、活性炭を用いた場合よりもさらに高い生存率を示した。トレハロース量の多い比較例3や、金属塩を含まない比較例7では、製剤化直後の生存率は高かったものの、保存時の生存率に劣っていた。