【解決手段】室R内部に壁材等として施工される消臭建築材料Aにおいて、室R内部に面する表面に消臭素子含有層3が形成され、消臭素子含有層3には、臭い成分を吸着により消臭する吸着消臭素子と、化学反応により消臭する化学反応消臭素子と、臭い成分を分解する光触媒とが露出した状態で設けられている。消臭建築材料Aは、光触媒が専用のUV−LED12からの紫外線の照射により励起状態になり、かつ室Rの内部の空気が専用の消臭送風装置10により励起状態の光触媒と吸着消臭素子及び化学反応消臭素子とに対し0.1m/s以上の風速で送られたときに、空気中に含まれる臭気強度3以上の特定臭い成分の全ての種類が消臭素子との接触により臭気強度2以下に低減される性能を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、このように消臭に配慮した様々な建築材料が上市されているが、実際には、これらの建築材料を居室に施工したとしても、消臭効果が体感できることが殆どないのが現状である。これは、消臭効果を謳った建築材料の性能確認方法と、実際の使用状況との乖離によるものである。
【0007】
一般に、消臭のメカニズムでは、化学消臭剤、光触媒、無機質多孔質吸着剤、化学吸着剤等の消臭剤に対し臭い成分(臭いの原因となる臭気物質)が接触したとき、化学消臭剤又は化学吸着剤であれば臭い成分の反応による化学変化が生じ、光触媒であれば臭い成分の酸化還元反応による分解が生じ、化学吸着剤又は無機多孔質吸着剤であれば臭い成分が吸着されることで、臭い成分が低減されていく。別の観点から見ると、消臭効果のある建築材料を施工したとしても、その建築材料の消臭剤に、臭い成分を含む汚染された空気が接触しない限り、消臭効果が発揮されないことが明らかである。
【0008】
一方、臭い成分は、その物質毎に検知閾値(臭い成分を感じる最低濃度)や臭気強度が異なり、空気中の臭い成分濃度を測定するために一般的に採用されている検知管により消臭試験で90%以上、或いは100%(検知管の検知限界濃度未満)の消臭効果がある場合でも、検知閾値が極めて低い臭い成分の場合は、臭いを感じてしまう場合がある。
【0009】
例えばプロピオン酸、n-酪酸、n-吉草酸等は検知閾値が低く、プロピオン酸の文献上の検知閾値は0.0057ppmであり、臭気強度3では0.069ppmである。n-酪酸の文献上の検知閾値は0.00019ppmであり、臭気強度3では0.0024ppmである。また、n-吉草酸の文献上の検知閾値は0.000037ppmであり、臭気強度3では0.0019ppmである。検知閾値とは、人間の感覚器官がその臭いを感じ始める濃度である。
【0010】
さらに、臭いの原因となる物質は多種多様であり、実際の生活シーンで発生すると想定される悪臭は、それら多種類の臭い成分が混合した複合臭である。従って、複合した臭い成分のいくつかが消臭されても、それ以外の臭い成分が残っていれば、検知管で100%消臭されたと仮定しても、結果的に消臭効果を体感することは困難である。
【0011】
本発明は斯かる諸点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、消臭を目的とする建築材料に工夫を加えることにより、生活シーンで発生する所定濃度以上の特定の臭い成分の種類を特定し、それら特定の臭い成分の全ての種類が低減又は消臭されたことを実感できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成すべく、この発明では、室毎に特定される臭いが多種類の臭い成分の混合臭であっても、それら特定の臭い成分の全ての種類に対し有効な消臭素子があることに着目し、室内に施工される建築材料の表面に、臭い成分を吸着又は化学反応により消臭する消臭素子を設け、消臭専用の送風装置により、室内の空気を強制的に建築材料表面の消臭素子に当てて、空気中の所定臭気強度以上の特定の臭い成分の全ての種類を消臭素子に接触させ、その臭い成分の消臭素子との接触機会を増やすようにした。
【0013】
具体的には、第1の発明は、室内に床材、壁材、天井材、開口部材又は造作部材として施工され、室内空気中の臭い成分を消臭するための消臭建築材料であって、室内に面する表面に、臭い成分を物理的又は化学的な吸着により消臭する消臭素子又は化学反応により消臭する消臭素子の少なくとも一方が露出又は塗料に内添した状態で設けられており、室内の空気が消臭送風装置により上記消臭素子に所定以上の風速で当てられたときに、該室内の空気中に含まれる臭気強度3以上の特定の臭い成分の全ての種類が、上記消臭素子との接触により臭気強度2以下に低減される性能を有することを特徴とする。
【0014】
この第1の発明では、室内に消臭建築材料が床材、壁材、天井材、開口部材又は造作部材として施工され、その消臭建築材料の室内に面する表面に消臭素子が露出又は塗料に内添した状態で設けられているので、その消臭建築材料表面の消臭素子に消臭送風装置により室内の空気が送られて当たると、その空気中に含まれる臭気強度3以上の特定臭い成分の全ての種類が消臭建築材料表面の消臭素子に接触し、それら特定の臭い成分の全ての種類が消臭素子による吸着又は化学反応により臭気強度3以上から臭気強度2以下に低減される。
【0015】
このとき、室内の空気は消臭送風装置により強制的に送られて消臭建築材料表面の消臭素子に当たるので、室内の空気を満遍なく確実に消臭建築材料表面に接触させることができ、臭気強度3以上の特定臭い成分の全ての種類が臭気強度2以下に低減される性能が確実に発揮される。
【0016】
また、消臭建築材料表面の消臭素子は、臭い成分を吸着により消臭するか又は化学反応により消臭する素子であるので、その臭い成分の消臭量が大きく、しかも素早く消臭して即効性が得られる。これらにより、室内での消臭効果を実感することができる。
【0017】
第2の発明は、第1の発明において、消臭建築材料は、紫外線により励起した光触媒が臭い成分を分解する消臭素子として表面に露出した状態で設けられており、その光触媒が消臭紫外線照射装置からの紫外線の照射により励起状態になり、かつ該励起状態の光触媒に室内の空気が消臭送風装置により所定以上の風速で送られたときに、その室内の空気中に含まれる臭気強度3以上の特定臭い成分の全ての種類が、上記励起状態の光触媒との接触による分解により臭気強度2以下に低減される性能を有することを特徴とする。
【0018】
この第2の発明では、室内に施工される消臭建築材料の表面に消臭素子としての光触媒がさらに設けられており、その消臭建築材料表面の光触媒(消臭素子)が消臭紫外線照射装置からの紫外線の照射により励起状態にあるときに、その光触媒に対し消臭送風装置により室内の空気が送られて当てられると、その空気中に含まれる臭気強度3以上の特定臭い成分の全ての種類が消臭建築材料表面の励起状態の光触媒に接触して、それら臭い成分が光触媒による分解により臭気強度3以上から臭気強度2以下に低減され又は臭気強度1以下に低減して消臭される。
【0019】
このとき、消臭建築材料表面の消臭素子が、臭い成分を吸着により消臭する消臭素子又は化学反応により消臭する消臭素子だけであると、吸着により消臭する消臭素子にあっては、吸着が飽和するとそれ以上は吸着しないとともに、吸着状態で温度変化等の条件が変化すると、逆に室内に放出する再放散が生じ、化学反応により消臭する消臭素子にあっては、化学反応が終わると消臭しなくなることが生じる虞れがある。これに対し、消臭建築材料表面に他の消臭素子として光触媒が設けられていることで、化学反応しない臭い成分や吸着されなかった臭い成分があったり、吸着後に放出された臭い成分があったりしても、それらの臭い成分は光触媒で分解されて消臭されることとなる。このことで、消臭効果をより一層高めることができる。
【0020】
第3の発明は、第2の発明において、消臭建築材料は、その表面の消臭素子が、臭い成分を吸着により消臭する消臭素子であり、この消臭素子により吸着された臭い成分が室内に放出されたときに、その臭い成分が光触媒により分解される性能を有することを特徴とする。
【0021】
この第3の発明では、消臭建築材料表面の消臭素子が臭い成分を物理吸着により消臭する素子であると、その消臭素子は、吸着状態で温度変化等の条件が変化したときに、物理吸着した臭い成分を逆に放出することが生じる。しかし、消臭建築材料表面に光触媒が設けられているので、吸着素子から吸着後に放出された臭い成分があっても、その臭い成分は光触媒で分解されて消臭されることとなり、消臭効果をより一層高めることができる。
【0022】
第4の発明は、第1〜第3の発明のいずれか1つにおいて、室は、1日のうち所定時間特定の目的に使用されるものであり、消臭建築材料は、室が特定の目的に使用されていない時間内に、室内の空気中に含まれる臭気強度3以上の特定の臭い成分の全ての種類が消臭素子との接触により臭気強度2以下に低減される性能を有することを特徴とする。
【0023】
この第4の発明では、1日のうち所定時間特定の目的に使用される室の内部に消臭建築材料が施工されているので、この消臭建築材料は、室が特定の目的に使用されていない時間内に、室内の空気中に含まれる臭気強度3以上の特定臭い成分の全ての種類を消臭素子との接触により臭気強度2以下に低減する。このことで、使用に供されていないときに室内の臭い成分が臭気強度2以下に低減されて、次に室の使用を開始する前に最大の消臭効果が得られることとなり、その開始時の消臭効果を実感できるようになる。
【0024】
第5の発明は、請求項1〜4の発明のいずれか1つにおいて、消臭素子が、活性炭と、ゼオライト及びアミノ化合物の親水性複合物とを少なくとも含むことを特徴とする。
【0025】
この第5の発明によると、活性炭の有する消臭効果と、ゼオライト及びアミノ化合物の親水性複合物の消臭効果との組み合わせにより、最も好ましい消臭効果が得られる。
【0026】
第6の発明は、室内に床材、壁材、天井材、開口部材又は造作部材として施工され、室内の空気を消臭するための消臭建築材料と、この消臭建築材料の表面に室内の空気を送る消臭送風装置と、消臭建築材料の表面に紫外線を照射する消臭紫外線照射装置とを備えた消臭システムであって、上記消臭建築材料は、その室内に面する表面に、臭い成分を吸着により消臭する消臭素子又は化学反応により消臭する消臭素子の少なくとも一方と光触媒とが露出した状態で設けられていて、光触媒が上記消臭紫外線照射装置による紫外線の照射により励起状態となり、かつ室内の空気が上記消臭送風装置により上記消臭素子及び励起状態の光触媒に対して所定以上の風速で当てられたときに、該室内の空気中に含まれる臭気強度3以上の特定の臭い成分の全ての種類が、上記消臭素子との接触により臭気強度2以下に低減される性能を有することを特徴とする
第6の発明は、第1の発明と同様に、室内に消臭建築材料が施工され、その消臭建築材料の室内に面する表面に消臭素子及び光触媒が露出した状態で設けられており、その消臭建築材料表面の光触媒に消臭紫外線照射装置からの紫外線が照射されて光触媒が励起状態となり、その励起状態の光触媒と消臭素子とに対し消臭送風装置により室内の空気が当てられると、空気中に含まれる臭気強度3以上の特定臭い成分の全ての種類が消臭建築材料表面の消臭素子及び光触媒に接触して、それらの臭い成分が消臭素子による吸着もしくは化学反応又は光触媒による分解により臭気強度3以上から臭気強度2以下に低減されて消臭される。
【0027】
このとき、室内の空気は消臭送風装置により強制的に送られて消臭建築材料表面の消臭素子及び光触媒に当てられるので、室内の空気を満遍なく確実に消臭建築材料表面に接触させることができ、臭気強度3以上の特定臭い成分の全ての種類が臭気強度2以下に低減される性能が確実に発揮される。
【0028】
また、消臭建築材料表面の消臭素子は、臭い成分を吸着により消臭するか又は化学反応により消臭する素子であるので、その臭い成分の消臭量が大きく、しかも素早く消臭して即効性が得られる。そして、消臭素子で化学反応しない臭い成分や吸着されなかった臭い成分があったり、吸着後に放出された臭い成分があったりしても、それらの臭い成分は光触媒で分解されて消臭されるので、消臭効果をより一層高めることができる。よって、室内での消臭効果を実感することができる。
【発明の効果】
【0029】
以上説明したように、本発明によると、室内に施工される消臭建築材料として、室内に面する表面に、臭い成分を吸着又は化学反応により消臭する消臭素子を露出状態で設け、この消臭素子に室内の空気が消臭送風装置により送られて当てられたときに、室内の空気中に含まれる臭気強度3以上の特定臭い成分の全ての種類を消臭素子との接触により臭気強度2以下に低減するようにしたことにより、室内の空気を消臭送風装置により強制的に消臭建築材料表面の消臭素子に接触させ、その空気中の臭い成分を消臭素子で吸着又は化学反応させて大きな消臭量でかつ素早く消臭でき、室内の空気に含まれる特定の臭い成分の全ての種類を臭気強度2以下へ低減して大きな消臭効果が得られ、室内での消臭効果を実感することができる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
【0032】
図2は、建物において、本発明の実施形態に係る消臭建築材料Aが施工された室R(部屋)の内部を示し、この室Rの内部で消臭建築材料Aは例えば壁材として使用されている。この壁材を構成する消臭建築材料Aは、通常一般の建築材料(壁材)と同様に施工されるものであるが、消臭機能を有する。
【0033】
図1に拡大して示すように、消臭建築材料Aは、建築材料の基部をなす基材1を有し、その基材1において、例えば室Rの内側に面する表面には消臭素子含有層3が形成され、この消臭素子含有層3には、図示しないが消臭素子が室内側に露出して室内空気と接触可能な状態で含まれている。この消臭素子は、多種類(この実施形態では最大で26種類)の臭い成分(臭気物質)を同時に吸着して消臭する吸着消臭素子、もしくはそれら臭い成分を同時に化学反応により消臭する化学反応消臭素子の一方又は両方と、励起状態にあるときにそれら臭い成分を分解して消臭する光触媒(消臭素子)とが組み合わされたものとされている。これら3種類の消臭素子を基材1表面の消臭素子含有層3に室内側に露出した状態で設ける場合、例えば消臭素子を塗料に混ぜて塗布して基材1表面に塗膜を形成したり、消臭素子を繊維に吹き付け、その繊維を基材1表面に貼り付けたり、或いは消臭素子を粉体で基材1表面に固着したりして設けられている。
【0034】
上記吸着消臭素子は、臭い成分を物理的又は化学的に臭い成分を吸着して消臭するものであり、物理的に吸着する消臭剤としては、例えば活性炭、活性白土、ゼオライト、珪藻土、シリカゲル、リン酸ジルコニウム等の多孔質の無機材料が主に用いられ、好適には活性炭が用いられる。この吸着消臭素子の特徴は、吸着による消臭速度が速く、消臭容量も大きいが、原因となる臭い成分の濃度が低下したり、室温等の環境温度が上昇したりすると、吸着した消臭成分を放出してしまう特性を有し、吸収持続性が低い。
【0035】
また、化学反応消臭素子は、臭い成分を化学反応によって吸着又は分解するもので、例えば酸性の臭い成分に対しては、アルカリ性の消臭剤、アルカリ性の臭い成分に対しては酸性の消臭剤が好適に用いられ、好ましくは、物理吸着機能を有する消臭素子の表面に水素イオン、水酸化物イオン、アミノ基、銅イオンなどの金属イオンを担持させたものが用いられる。好適には、ゼオライトとアミノ化合物の複合物が用いられ、最も好適にはゼオライトとアミノ化合物の親水性複合物(商品名「ダッシュライトM」株式会社シナネンゼオミック社製)が用いられる。この化学反応消臭素子の特徴は、反応による消臭速度が速く、消臭容量も大きくて、複数種類に臭い成分に対応できるが、反応成分が全て反応してしまうと、消臭機能が消失して、やはり吸収持続性が低い。
【0036】
さらに、光触媒は、紫外線の照射により励起状態になり、臭い成分をラジカル分解するもので、例えば二酸化チタン(TiO
2)や酸化タングステン、チタン酸ストロンチウム、硫化亜鉛、窒化ガリウム、酸化ガリウム等が用いられる。この光触媒の特徴は、分解による消臭速度が遅く、消臭容量も小さい反面、紫外線がある限り臭い成分を分解できるので、半永久的な消臭が可能であり、持続性が高い。
【0037】
一方、
図2に示すように、上記室Rの内部には、消臭建築材料A(壁材)の表面の消臭素子含有層3の消臭素子に室R内部の空気を接触させるための例えばファン装置等からなる専用の消臭送風装置10が設けられている。この消臭送風装置10は室R内の例えば天井部Cに固定されており、室Rの内部の空気を消臭送風装置10から消臭建築材料A(壁材)表面の消臭素子に所定以上の風速で送って吹き当てるようになっている。その風速は、消臭素子に空気が連続して接触できる程度であればよく、例えば0.1m/s以上が好ましい。
【0038】
消臭送風装置10は、常時作動状態(送風状態)に保たれて室R内部の空気を絶えず消臭素子に吹き当てるようにしてもよい。その他、図示しないが、例えば、臭い成分を検出するセンサを設けて、そのセンサにより臭気強度3以上の臭い成分が検出されたときのみに消臭送風装置10を送風作動するようにしたり、1日のうちの特定時間帯に消臭送風装置10により送風するようにしたり、或いは室R内の人の在室や扉の開閉を検知して、その後に一定時間送風するようにしたりしてもよい。
【0039】
また、消臭送風装置10としては、新たに消臭のための装置を設けるのではなく、24時間換気のための換気装置を利用してもよく、この場合も、その風速は、消臭素子に空気が連続して接触できる程度であればよく、例えば0.1m/s以上が好ましい。
【0040】
そして、消臭建築材料Aは、上記室R内部の空気が消臭送風装置10により送られて表面の消臭素子含有層3における吸着消臭素子、化学反応消臭素子及び光触媒に所定以上の風速で吹き当てられたときに、該室R内の空気中に含まれる臭気強度3以上の臭い成分からなる、室Rに特定(特有)の臭い成分の全ての種類が、該臭い成分の上記消臭素子との接触により臭気強度2以下に低減される(臭気強度1以下に低減されるときは「消臭」される)性能を有している。
【0041】
また、
図2に示すように、室Rの内部には、上記消臭建築材料A表面の消臭素子としての光触媒を励起状態にするための紫外線を照射する消臭紫外線照射装置としての専用のUV−LED12(紫外線LEDランプ)が例えば天井部Cに固定された状態で設けられている。このUV−LED12は、上記消臭送風装置10と連動して作動するのが好ましく、UV−LED12を常時作動状態にして光触媒に紫外線を照射するようにしたり、臭い成分を検出するセンサを設けて、そのセンサによる臭い成分の検出時にUV−LED12を作動するようにしたり、1日のうちの特定時間帯にUV−LED12により紫外線を照射するようにしたり、或いは室Rの人の在室や扉の開閉を検知して、その後に一定時間照射するようにしたりすればよい。また、UV−LED12は、室R内の照明装置(図示せず)と併用して、その照明装置に隠蔽されるように設けることもでき、そうすれば室R内の景観に馴染んで違和感がなくなる。
【0042】
上記消臭送風装置10及びUV−LED12は、外部商用電源、乾電池、充電可能な蓄電池、太陽電池等の各種電源からの電力を受けて作動するようにすることができる。また、消臭送風装置10については、エアコンを消臭専用の送風装置に機能させるようにすることもでき、その場合、エアコンは、本来の空気調和以外の目的で消臭建築材料Aに対し送風するようにすればよい。
【0043】
そして、消臭建築材料Aは、上記光触媒がUV−LED12による紫外線の照射により励起状態になり、かつその励起状態の光触媒に室Rの内部の空気が消臭送風装置10により所定以上の風速で送られて吹き当てられたときに、やはり、室Rの内部の空気中に含まれる臭気強度3以上の、室Rに特定(特有)の臭い成分の全ての種類が、該特定臭い成分の上記励起状態の光触媒との接触による分解により、臭気強度2以下に低減される(臭気強度1以下に低減されるのは「消臭」される)性能を有している。
【0044】
また、消臭建築材料Aは、その表面の消臭素子含有層3における吸着消臭素子により吸着された臭い成分が室Rの内部に放出されたときに、該臭い成分が上記励起状態にある光触媒により分解される性能を有している。
【0045】
この実施形態においては、室Rの内部に壁材として施工されて室R内部の空気を消臭するための上記消臭建築材料Aと、室R内部の天井部Cに設けられて、消臭建築材料A表面の消臭素子に室R内部の空気を送る消臭送風装置10と、室R内部の天井部Cに設けられ、消臭建築材料Aの表面の消臭素子としての光触媒に紫外線を照射するUV−LED12とにより、その室R内を消臭するための消臭システムが構成されている。
【0046】
上記臭気強度とは、一般社団法人繊維評価技術協議会におけるSEKマーク繊維製品認証基準の消臭加工に基づいて設定される強度であり、以下のように設定される。
【0047】
対象となる全ての臭い成分の臭い成分の各々について溶剤に溶かし、その溶液をサンプル瓶に滴下してサンプル瓶内で所定濃度のガスを生成し、そのサンプル瓶内の臭気の有無を官能評価する。
【0048】
この官能評価では、複数の官能評価実施者について、予め、T&Tオルファクトメータを用いてβ-フェニルエチルアルコール(バラ臭)、メチルシクロペンテノロン(カラメル臭)、Iso-吉草酸(靴下臭)、Υ-ウンデカラクトン(桃臭)及びスカトール(糞便臭)の5つの臭気により嗅覚異常がないことを確認した後、それら複数の官能評価実施者が各サンプル瓶内のガスの臭いを嗅いだときに感じる程度を臭気強度1〜5として設定している。
【0049】
すなわち、臭気強度1は「臭いを感じない」であり、臭気強度2は「臭いを感じるが弱い」であり、臭気強度3は「らくに臭いを感知できる」であり、臭気強度4は「強い臭い」であり、臭気強度5は「強烈な臭い」である。従って、臭気強度3以上とは「吸気を感じる」程度である。
【0050】
上記室R内部の空気中に含まれる臭い成分(臭気物質)は、例えばホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ノナナール、t-2-ノネナール、酢酸、プロピオン酸、n-酪酸、Iso-酪酸、n-吉草酸、Iso-吉草酸、カプロン酸(ヘキサン酸)、アンモニア、インドール、スカトール、ピリジン、メチルメルカプタン、硫化水素、硫化メチル、二硫化メチル、トリメチルアミン、ブタノール、アセトン、ジェオスミン、2-メチルイソボルネオール、2,4,6-トリクロロアニソール、トルエンの26種類の中から、複数種類が複合されたものである。
【0051】
上記室Rは、1日中使用されるものであってもよいが、1日のうち所定時間だけ特定の目的に使用されるものである場合、消臭建築材料A(室Rの壁材)は、その室Rが特定の目的に使用されていない時間内に、室R内部の空気中に含まれる臭気強度3以上の特定臭い成分(臭気物質)の全ての種類が消臭素子との接触により臭気強度2以下に低減される性能を有していてもよい。
【0052】
具体的には、このような室Rは、例えば各住宅のトイレ、洗面所、台所、玄関、或いは高齢者用住宅の集合ルームや病院等の病室が対象である。
【0053】
室Rがトイレである場合、その空気中の臭い成分には糞便臭及び尿臭が含まれており、このトイレ内に壁材として施工される消臭建築材料Aは、トイレ特有の臭気強度3以上の糞便臭及び尿臭を含む臭い成分の全ての種類が消臭素子との接触により臭気強度2以下に低減される性能を有する。糞便臭及び尿臭とは、上記26種類の臭い成分のうち、例えばアンモニア、トリメチルアミン、アセトアルデヒド、ノナナール、プロピオン酸、n-酪酸、n-吉草酸、Iso-吉草酸、インドール、スカトール、メチルメルカプタン、硫化水素、硫化メチル、二硫化メチル、ブタノール、アセトンの16種類の臭い成分が複合されたものであり、これらがトイレにおける特定の臭い成分となる。
【0054】
室Rが洗面所である場合、その空気中の臭い成分には、カビ臭、洗濯物臭及びその生乾き臭が含まれており、この洗面所内に壁材として施工される消臭建築材料Aは、洗面所特有の臭気強度3以上のカビ臭、洗濯物臭及びその生乾き臭を含む全ての種類の臭い成分が消臭素子との接触により臭気強度2以下に低減される性能を有する。上記カビ臭、洗濯物臭及びその生乾き臭とは、上記26種類の臭い成分のうち、例えば二硫化メチル、ブタノール、アセトン、ジェオスミン、2-メチルイソボルネオール、2,4,6-トリクロロアニソール、ジェオスミン、2-メチルイソボルネオール、2,4,6-トリクロロアニソール、n-酪酸、Iso-酪酸、n-吉草酸、Iso-吉草酸、硫化水素、プロピオン酸、アセトアルデヒド、ノナナール、t-2-ノネナール、酢酸、Iso-吉草酸、カプロン酸(ヘキサン酸)、アンモニア、インドールの23種類の臭い成分が複合されたものであり、これらが洗面所における特定の臭い成分となる。
【0055】
室Rが台所である場合、その空気中の臭い成分には生ゴミ臭が含まれている。この台所内に壁材として施工される消臭建築材料Aは、台所特有の臭気強度3以上の生ゴミ臭を含む全ての種類の臭い成分が消臭素子との接触により臭気強度2以下に低減される性能を有する。生ゴミ臭とは、上記26種類の臭い成分のうち、例えばホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、酢酸、プロピオン酸、n-酪酸、Iso-酪酸、n-吉草酸、Iso-吉草酸、カプロン酸(ヘキサン酸)、アンモニア、メチルメルカプタン、硫化水素、硫化メチル、二硫化メチル、トリメチルアミンの15種類の臭い成分が複合されたものであり、これらが台所における特定の臭い成分となる。
【0056】
尚、台所には、生ゴミ臭以外に調理等による臭いが発生するが、この臭いはレンジフードにより室R外に放出されるので、台所の不使用時に生ゴミ臭を消臭できればよい。
【0057】
室Rが玄関である場合、その空気中の臭い成分にはペット臭、生ゴミ臭、トイレ臭、糞便臭、尿臭、靴下臭、体臭、高齢者臭、たばこ臭、排水孔臭及びカビ臭が含まれており、この玄関内に壁材として施工される消臭建築材料Aは、玄関特有の臭気強度3以上の上記臭い成分を含む全ての種類の臭い成分が消臭素子との接触により臭気強度2以下に低減される性能を有する。ペット臭、生ゴミ臭、糞便臭、尿臭、靴下臭、体臭、高齢者臭、たばこ臭、排水孔臭及びカビ臭は、例えば上記26種類の全ての臭い成分が複合されたものであり、これらが玄関における特定の臭い成分となる。玄関は、人が通る空間であって、その人により様々な臭い成分が持ち込まれるエリアであるので、消臭すべき臭い成分の種類が多くなっている。
【0058】
高齢者用住宅の集合ルームは、高齢者が日中の活動を行うための部屋であり、その内部の空気中に含まれる臭い成分には高齢者臭が含まれている。そして、この部屋内に壁材として施工される消臭建築材料Aは、表面の消臭素子により、室Rの内部の空気中の高齢者臭を含む臭気強度3以上の全ての種類の臭い成分が消臭素子との接触により臭気強度2以下に低減される性能を有する。高齢者臭とは、上記26種類の臭い成分のうち、例えばアセトアルデヒド、ノナナール、t-2-ノネナール、酢酸、Iso-吉草酸、カプロン酸(ヘキサン酸)、アンモニア、インドールの8種類の臭い成分が複合されたものであり、これらが高齢者用住宅の集合ルームにおける特定の臭い成分となる。
【0059】
室Rが病院等の病室である場合、その空気中の臭い成分には病室臭が含まれており、この病室の内部に壁材として施工される消臭建築材料Aは、病室特有の臭気強度3以上の病室臭を含む全ての種類の臭い成分が消臭素子との接触により臭気強度2以下に低減される性能を有する。病室臭とは、上記26種類の臭い成分のうち、例えばアセトアルデヒド、プロピオン酸、n-酪酸、n-吉草酸、Iso-吉草酸、アンモニア、インドール、メチルメルカプタン、硫化水素、硫化メチル、トリメチルアミン、トルエンの12種類の臭い成分が複合されたものであり、これらが病室における特定の臭い成分となる。
【0060】
したがって、この実施形態においては、室Rの内部に壁材として消臭建築材料Aが施工され、その消臭建築材料Aにおいて室R内部に面する表面に消臭素子含有層3が形成され、その消臭素子含有層3に吸着消臭素子及び化学反応消臭素子が露出した状態で設けられているので、
図3に示すように、消臭送風装置10が作動し、その消臭送風装置10から室Rの内部の空気が消臭建築材料A表面に送られて吹き当てられると、空気中に含まれる臭い成分(臭気物質)が消臭建築材料A表面の消臭素子に接触する。そして、消臭建築材料Aは、室Rに特有の特定臭気強度3以上の臭い成分の全ての種類を臭気強度2以下に低減できる消臭性能を有しているので、この消臭性能により、室Rの内部の空気中の臭気強度3以上の特定臭い成分の全ての種類が、消臭素子との接触による吸着又は化学反応により臭気強度3以上から低減されて、「臭いを感じるがそれは弱い」程度の臭気強度2になるか、或いはさらに「臭いを感じない」臭気強度1以下になって消臭される。
【0061】
このとき、室R内部の空気が消臭送風装置10により強制的に送られて消臭建築材料A表面に吹き当てられるので、室Rの内部の空気が満遍なく消臭建築材料A表面に当たって消臭素子に確実に接触するようになり、消臭建築材料Aにおいて、臭気強度3以上の特定臭い成分の全ての種類を臭気強度2以下に低減する消臭性能が確実に発揮される。
【0062】
また、臭建築材料表面の消臭素子は、臭い成分を吸着により消臭するか又は化学反応により消臭する素子を含んでいるので、その臭い成分の消臭量が大きく、しかも素早く消臭して即効性が得られる。
【0063】
さらに、室Rの内部に施工される消臭建築材料A表面の消臭素子含有層3には、吸着消臭素子及び化学反応消臭素子に加え、同じ消臭素子としての光触媒が露出した状態で設けられているので、
図3に示すように、UV−LED12が作動して紫外線が出力され、その紫外線が消臭建築材料A表面の光触媒に照射されたとき、その光触媒は励起状態になる。この励起状態の光触媒に対し消臭送風装置10により室Rの内部の空気が送られて吹き当てられると、その空気中に含まれる臭気強度3以上の特定臭い成分の全ての種類が励起状態の光触媒に接触して、やはり、それら全ての種類の臭い成分が光触媒による分解により臭気強度3以上から臭気強度2以下に低減される。
【0064】
そして、仮に、消臭建築材料A表面の消臭素子含有層3に吸着消臭素子又は化学反応消臭素子だけが設けられている場合、吸着消臭素子にあっては、吸着が飽和するとそれ以上は吸着しないとともに、吸着状態で温度変化等の条件が変化すると、逆に放出することが生じ、また、化学反応消臭素子にあっては、化学反応が終わると消臭しなくなることが生じる虞れがある。しかし、この実施形態では、消臭建築材料A表面に他の種類の消臭素子として光触媒が設けられているので、化学反応しない臭い成分や吸着されなかった臭い成分があったり、吸着後に放出された臭い成分があったりしても、それらの臭い成分は光触媒で分解されて消臭される。その結果、消臭効果をより一層高めることができる。
【0065】
室Rが、1日のうち所定時間特定の目的に使用されるものである場合、そのように使用される室Rの内部に消臭建築材料Aが壁材として施工されているので、この消臭建築材料Aは、室Rが特定の目的に使用されていない時間内に、室R内部の空気中に含まれる臭気強度3以上の特定臭い成分の全ての種類を消臭素子との接触により臭気強度2以下に低減する。このことで、使用に供されていない間に室Rの内部の臭い成分が臭気強度2以下に低減され、換言すると、次に室Rの使用を開始する前に最大の消臭効果が得られることとなり、その開始時の消臭効果を実感できるようになる。
【0066】
具体的に、室Rがトイレであると、そのトイレが誰にも使用されていない間に、そのトイレ内の空気中の糞便臭及び尿臭を含むトイレ特有の臭い成分が臭気強度2以下に低減される。このことで、トイレの使用開始時の消臭効果を実感することができる。
【0067】
また、室Rが洗面所であると、洗面所が誰にも使用されていない間に、その洗面所内の空気中のカビ臭、洗濯物臭及びその生乾き臭を含む洗面所特有の臭い成分が臭気強度2以下に低減される。このことで、洗面所の使用開始時の消臭効果を実感することができる。
【0068】
室Rが台所であると、その台所が使用されていない間に、その台所内の空気中の生ゴミ臭を含む台所特有の臭い成分が臭気強度2以下に低減される。このことで、台所の使用開始時の消臭効果を実感することができる。
【0069】
また、室Rが玄関である場合、その玄関が使用されていないときに、その玄関の空気中のペット臭、生ゴミ臭、トイレ臭、糞便臭、尿臭、靴下臭、体臭、高齢者臭、たばこ臭、排水孔臭及びカビ臭を含む玄関特有の臭い成分が臭気強度2以下に低減される。このことで、玄関の使用開始時の消臭効果を実感することができる。
【0070】
室Rが高齢者の日中の活動を行うための集合ルームであると、その集合ルーム内で高齢者が日中の活動を行わない夜間等で、その集合ルーム内の空気中の高齢者臭を含む臭い成分が臭気強度2以下に低減される。このことで、集合ルームの翌日の使用開始時の消臭効果を実感することができる。
【0071】
さらに、室Rが病室である場合、その病室が使用されていない状態にある間、その病室内の空気中の病室臭を含む病室特有の臭い成分が臭気強度2以下に低減される。このことで、病室の使用開始時の消臭効果を実感することができる。
【0072】
(その他の実施形態)
尚、上記実施形態では、消臭建築材料Aを室R内の壁材として使用した場合を例示している。消臭建築材料Aは、壁材の他に、室R内に例えば床材、天井材、開口部材又は造作部材として使用することができる。
【0073】
また、上記実施形態では、消臭建築材料Aの表面に設けられる消臭素子を、吸着消臭素子又は化学反応消臭素子の少なくとも一方と光触媒とが組み合わされたものとしているが、吸着消臭素子又は化学反応消臭素子の少なくとも一方だけでもよい。しかし、化学反応消臭素子で反応しない臭い成分や吸着消臭素子で吸着されなかった臭い成分があったり、或いは吸着消臭素子で吸着後に放出された臭い成分があったりしても、それらの臭い成分を光触媒で分解して消臭できる点で、光触媒を含むように組み合わせるのが好ましい。
【実施例】
【0074】
次に、具体的に実施した実施例について説明する。
【0075】
(臭気強度の設定)
上記実施形態に記載の臭い成分をなす26の臭い成分の各々について、臭気強度を設定した。具体的には、26種類の臭い成分の各々について、溶媒10ml又は50mlに臭い成分毎の所定量の臭い成分を溶かした溶液をサンプル瓶に所定量滴下して、サンプル瓶内の臭い成分が、
図4に示す調整濃度及び臭気強度になるように調整した。
【0076】
(実施例1)
ロックウール吸音板を基材として、酢酸ビニル系エマルション下塗り塗料に、活性炭(大阪ガスケミカル(株)製の商品名「粒状白鷺FPG−1」)を10重量%添加し、スプレーガンにて400g/m
2の塗布量で塗装して180℃で90秒乾燥させ、アクリル系エマルション上塗り塗料に、ゼオライト系化学消臭剤((株)シナネンゼオミック製の商品名「ダッシュライトM」)を5重量%添加し、83g/m
2の塗布量で塗装して180℃で90秒乾燥させて評価サンプルを得た。
【0077】
(実施例2)
実施例1にて作製した評価サンプルに、可視光応答型光触媒(昭和電工(株)製の商品名「ルミレッシュCT−S2」)をTiO
2:アクリル系エマルション:水=2:0.3:97.7の比で調整し、50g/m
2の塗布量で評価サンプルの上に塗装し、TiO
2が1g/m
2の評価サンプルを得た。
【0078】
(比較例1)
比較例1として、消臭機能を有する窯業系デザインタイル「エコカラットプラス」(LIXIL社製)を用いた。
【0079】
(比較例2)
比較例2として、消臭機能を有するメラミン化粧板「セラール消臭セルラス」(アイカ工業社製)を用いた。
【0080】
(臭気強度の評価)
実施例及び比較例の消臭建築材料のサンプル(表面の面積70cm
2)を容積460mLのサンプル瓶に投入して、そのサンプル瓶に、目的の室で発生する特定の臭い成分となる臭い成分をそれぞれのサンプル瓶に注入し、20〜25℃の温度条件下でサンプル瓶内のガスをスターラーにより0.1m/sの風速で撹拌しながら2時間反応させ、各サンプルによる消臭効果を発揮させた。また、光触媒が設けられたサンプルは、そのサンプルに対しサンプル瓶外から紫外線を1mW/m
2の紫外線強度で照射して反応させた。
【0081】
その後、サンプル瓶内のガスの臭気の有無を官能評価した。この官能評価では、既述の如く、複数の官能評価実施者について、T&Tオルファクトメータを用いてバラ臭、カラメル臭、靴下臭、桃臭及び糞便臭の5つの臭気により嗅覚異常がないことを確認し、それら複数の官能評価実施者が各サンプル瓶内の空気の臭いを嗅いだときに感じる程度を臭気強度として設定した。
【0082】
すなわち、臭気強度1は「やっと感知できるにおい」であり、臭気強度2は「何のにおいであるかがわかる弱いにおい」であり、臭気強度3は「らくに感知できるにおい」であり、臭気強度4は「強いにおい」であり、臭気強度5は「強烈なにおい」である。従って、臭気強度3以上とは「容易に臭気を感じる」程度である。その結果を
図5及び
図6に示す。尚、
図5はペット臭に限定したものであり、このペット臭は、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、酢酸、プロピオン酸、n-酪酸、Iso-酪酸、カプロン酸(ヘキサン酸)、アンモニア、メチルメルカプタン、硫化水素、硫化メチル、二硫化メチル、トリメチルアミンの13種類の臭い成分が含まれており、これら臭い成分がペット飼育空間における特定の臭い成分の全ての種類になる。そして、この
図5において臭気強度3〜5は×で、また臭気強度2は△で、さらに臭気強度1は○でそれぞれ表している。
【0083】
この
図5及び
図6によると、比較例1,2では、一部の臭い成分について臭気強度2以下が得られているものの、残りの物質については臭気強度3であった。これに対し、実施例1,2では、全ての種類の臭い成分で臭気強度2以下であった。このことから、本発明に係る消臭建築材料によれば、空気中に含まれる臭気強度3以上の臭い成分の全ての種類を臭気強度2以下に低減できる性能を有することが判る。