(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-176834(P2017-176834A)
(43)【公開日】2017年10月5日
(54)【発明の名称】人工常温雪
(51)【国際特許分類】
A63C 19/10 20060101AFI20170908BHJP
H01F 1/06 20060101ALI20170908BHJP
【FI】
A63C19/10 D
H01F1/06 110
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-65838(P2017-65838)
(22)【出願日】2017年3月29日
(62)【分割の表示】特願2015-528826(P2015-528826)の分割
【原出願日】2012年8月27日
(71)【出願人】
【識別番号】513048047
【氏名又は名称】サン,イングイ
(74)【代理人】
【識別番号】100113608
【弁理士】
【氏名又は名称】平川 明
(74)【代理人】
【識別番号】100123319
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 武彦
(72)【発明者】
【氏名】サン,イングイ
【テーマコード(参考)】
5E040
【Fターム(参考)】
5E040AA03
5E040AB03
5E040BC05
5E040CA01
5E040CA20
5E040HB14
5E040HB17
5E040NN06
5E040NN13
(57)【要約】 (修正有)
【課題】天然雪の特性を効果よく模擬することができるとともに、製造が簡単で使いやすいし、環境温度と季節によるスキーへの制限を大幅に軽減し、スキー場の収益を大幅に向上させることができる人工常温雪、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】磁性を有する固体粒子を含む人工常温雪粒子からなり、前記固体粒子の残留磁気が1000〜9000ガウスの範囲内であり、前記固体粒子の表面に、その表面性質を変更可能な材料が付着しており、前記固体粒子の表面に、高分子材料層又は金属メッキ層が付着している。また、製造方法は、(1)粉砕装置で磁性材料を固体粒子に粉砕するステップと、(2)篩により所定の粒径で固体粒子を選別し、選別後の固体粒子の表面に、その表面性質を変更可能な材料層を付着させるステップと、(3)選別後の固体粒子を磁化するステップと、を含む。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スキー用の人工常温雪であって、磁性を有する固体粒子を含む人工常温雪粒子からなり、
前記固体粒子の残留磁気が1000〜9000ガウスの範囲内であり、
前記固体粒子の表面に、その表面性質を変更可能な材料が付着しており、
前記固体粒子の表面に、高分子材料層又は金属メッキ層が付着している、
ことを特徴とする人工常温雪。
【請求項2】
スキー場でのスキーに用いられ、勾配が異なるスキー滑走路に幅広く敷設されることを特徴とする請求項1に記載の人工常温雪。
【請求項3】
前記固体粒子の残留磁気が2000〜9000ガウスの範囲内にあることを特徴とする請求項1に記載の人工常温雪。
【請求項4】
前記高分子材料層はプラスチック、塗料又は高分子基複合材料であることを特徴とする請求項1に記載の人工常温雪。
【請求項5】
前記高分子材料層はポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル又はポリウレタンであり、もしくは、前記高分子材料層は焼付けワニスであることを特徴とする請求項4に記載の人工常温雪。
【請求項6】
前記高分子材料層は白色以外の色を有することを特徴とする請求項5に記載の人工常温雪。
【請求項7】
前記固体粒子はフェライト、強磁性材料又は希土類永久磁石材料であり、前記希土類永久磁石材料がネオジム磁石系希土類永久磁石材料であることが好ましいことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の人工常温雪。
【請求項8】
前記固体粒子の粒径は0.1〜4mmであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の人工常温雪。
【請求項9】
(1)粉砕装置で磁性材料を固体粒子に粉砕するステップと、
(2)篩により所定の粒径で固体粒子を選別し、選別後の固体粒子の表面に、その表面性質を変更可能な材料層を付着させるステップと、
(3)選別後の固体粒子を磁化するステップと、
を含み、
前記固体粒子の残留磁気が1000〜9000ガウスの範囲内であり、
前記材料層は高分子材料層又は金属メッキ層である、
ことを特徴とする人工常温雪の製造方法。
【請求項10】
固体粒子に付着している材料層に着色するステップをさらに含むことを特徴とする請求項9に記載の人工常温雪の製造方法。
【請求項11】
前記固体粒子の残留磁気が2000〜9000ガウスの範囲内にあることを特徴とする請求項9に記載の人工常温雪の製造方法。
【請求項12】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の人工常温雪を含むことを特徴とするスキー滑走路。
【請求項13】
複数の永久磁石ブロックからなる強磁性層を含み、前記永久磁石ブロックは極性が一致しているようにスキー滑走路のベース部に並べられ、人工常温雪の下方に強磁性層を形成することを特徴とする請求項12に記載のスキー滑走路。
【請求項14】
前記固体粒子の残留磁気が、2000〜2300ガウスの範囲内にあることを特徴とする請求項1に記載の人工常温雪。
【請求項15】
前記固体粒子の粒径は1〜3mmであることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の人工常温雪。
【請求項16】
前記固体粒子の粒径は2mmであることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の人工常温雪。
【請求項17】
前記固体粒子の残留磁気が2000〜2300ガウスの範囲内にあることを特徴とする請求項9に記載の人工常温雪の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は人工常温雪、その製造方法及びそれからなるスキー滑走路に関する。特に季節や温度に制限されないスキー用の人工雪及びそれからなるスキー滑走路に関する。該人工雪は、勾配が異なるスキー滑走路に敷設される。
【背景技術】
【0002】
スキーは幅広く人気があるスポーツであるが、一定の気候条件に制限されている。例えば、環境温度が低くなければ天然雪が形成できない。そのため、天然雪を利用するこのスポーツは環境温度や季節に制限されている。特にスキー場では、環境温度、季節や積雪量に制限されているので、スキー場の営業時間が限られ、スキー滑走路の形成コスト及び作業量が多大である。従って、スキー場の収益にとって、これらの制限条件の影響は非常に大きい。
【0003】
スキー場では、環境温度や季節の影響をできる限り低減して積雪量を向上させるために、一般的には製雪機により水で雪を製造し、製造された人工雪でスキー滑走路を形成する。この方法では、多大な水やエネルギーが消費され、雪の製造時間が長くてコストが非常に高いだけではなく、依然として環境温度や季節にかなり制限されている。
【0004】
この主流的な方法以外に、環境温度や季節によるスキーへの影響を低減し、スキーを簡単に楽しめるために、現在、天然雪が少ないという課題を解決するための方法は他二つある。
【0005】
1つの方法において、有機材料粒子で水を吸収し膨張して人工雪を製造する。該人工雪
と天然雪との類似性を向上させるために、この方法において、製造中に有機架橋剤を用いて粒子間の集合性を改良し、タルクなどの無機物質を用いて粒子の流動性を向上させる技術案もある。この方法では、依然として多大な水が消費され、製造工程が複雑であるとともに、製造された人工雪の特性が理想的ではなく、水分の蒸発も課題となる。
【0006】
もう一つの方法において、水ではなく固体材料で、天然雪からなるスキー滑走路の特性を模擬する。この方法において、有機粒子と固体潤滑剤を混合して人工雪を製造し、固体潤滑剤で粒子間に一定の粘着性及び流動性を付与する技術案がある。プラスチックブラシなどの人工設備のみでスキー時の感覚を模擬する技術案もある。このような技術案には、ナイロンなどの高分子材料からなるブラシを傾斜路などの位置に幅広く設置し、スキーボードがプラスチックブラシ上を滑る。この技術案は「歯ブラシスキー」と呼ばれることがある。また、各ブラシの先端を円弧状に形成し、「きのこスキー」と呼ばれる技術案もある。これらの方法は雪なしスキーと総称される。天然スキーと比べ、従来技術によるスキー時の感覚及び効果は相当な差があるとともに、その製造や使用は複雑であり、製造されたスキー滑走路を天然雪を使用するスキー滑走路として使用することもできない。
【0007】
現在のスキー場では、水で雪を製造して積雪量を向上させる方法が主流である。上記2つの代替方法の使用範囲は非常に限られ、大規模に使用できる人工雪の製造方法はまだ発明されていない。そのため、天然雪の特性を効果よく模擬することができるとともに、製造が簡単で使いやすいし、水で雪を製造する技術の代わりに大規模に使用できる技術を研究する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、天然雪の特性を効果よく模擬することができるとともに、製造が簡単で使いやすいし、環境温度と季節によるスキーへの制限を大幅に軽減し、スキー場の収益を大幅に向上させることができる人工常温雪を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
よって、本発明は、スキー用の人工常温雪であって、磁性を有する固体粒子を含む人工常温雪粒子からなる人工常温雪を提供する。
【0010】
好ましくは、該人工常温雪はスキー場でのスキーに用いられ、勾配が異なるスキー滑走路に幅広く敷設される。
【0011】
好ましくは、スキー時に色々な感覚を楽しめるために、前記粒子の残留磁気が1000〜9000ガウスの範囲内の任意の数値であってよい。具体的には2000〜9000ガウスであり、より具体的には2000〜2300ガウスである。固体粒子がフェライトである場合に、残留磁気が2000〜2300ガウスであることは好ましい。
【0012】
本発明は、本発明の人工常温雪を含むスキー滑走路をさらに提供する。
【0013】
好ましくは、該スキー滑走路は複数の永久磁石ブロックからなる強磁性層をさらに含み、前記永久磁石ブロックは極性が一致しているようにスキー滑走路のベース部に並べられ、人工常温雪の下方に強磁性層を形成する。
【0014】
本発明は磁性材料が有する磁性により天然雪の特性を模擬する。最も重要なのは、人工雪で以下の2つの課題を解決することができる。(1)集合可能性。即ち、雪粒子が天然雪のように集合して所定の形状になる安定的な分布になり、勾配が異なるスキー滑走路に付着する。(2)減衰分散性。即ち、集合して所定の形状となる人工雪は天然雪のように外力により変形しやすく、減衰するように成形されて分散し、さらにより小さい集合体又は単独の粒子に分散する。これはスキー時に必要な特性であり、スキーヤーへ減速、方向制御ないし制動のための抵抗力を提供することができる。
【0015】
磁性を有する固体粒子の外に、固体粒子の表面性質を変更可能な材料層、例えば高分子材料層又は金属メッキ層を付着させることにより、磁性を有する固体粒子の表面性質を変更することができる。粒子の表面に潤滑性を付与し、粒子とスキーボードとの間の摩擦力を小さくするとともに、天然雪粒子間、及び天然雪とスキーボードとの間の相互作用方式をさらに模擬することができる。
【0016】
本発明は、
(1)非磁性材料を本体として磁性材料を含む固体粒子を製造するステップと、
(2)篩により所定の粒径で前記固体粒子を選別するステップと、
(3)選別後の固体粒子を磁化するステップと、
を含む人工常温雪の製造方法をさらに提供する。
【0017】
好ましくは、前記方法は、前記選別ステップと磁化ステップとの間に、選別後の固体粒子の表面に、固体粒子の表面性質を変更可能な材料層を付着させるステップをさらに含む。
【0018】
好ましくは、前記材料層は高分子材料層である。
【0019】
好ましくは、前記方法は、固体粒子に付着している材料層に着色するステップをさらに含む。
【0020】
一方、本発明は、
(1)磁性材料を含む固体粒子を製造するステップと、
(2)篩により所定の粒径で、磁性材料を含む固体粒子を選別するステップと、
(3)選別後の固体粒子を磁化するステップと、
を含む人工常温雪の製造方法をさらに提供する。
【0021】
好ましくは、前記方法は、前記選別ステップと磁化ステップとの間に、選別後の固体粒子の表面に、その表面性質を変更可能な材料層を付着させるステップをさらに含む。
【0022】
好ましくは、前記方法は、固体粒子に付着している材料層に着色するステップをさらに含む。
【0023】
好ましくは、前記磁性材料を含む固体粒子を製造するステップは、粉砕されまたは溶融された磁性材料と、溶融された固体粒子の本体材料とを混合してから粒子化し、磁性材料を含む固体粒子を形成する工程を含む。
【0024】
好ましくは、前記非磁性材料を本体として磁性材料を含む固体粒子を製造するステップは、本体材料が溶融されたまま磁化し、磁場の強磁力により、本体に含まれる磁性材料を自動的に配列して、又は極性の配向を同一とする工程を含む。
【発明の効果】
【0025】
本発明は天然雪を模擬する独創的な発明であり、以下の利点を有する。
1.天然雪の特性を効果よく模擬することができるとともに、製造が簡単で使いやすいし、大規模に天然雪の代わりにスキー滑走路を形成することができる。
2.人工常温雪のみからなるスキー滑走路を形成することができるだけではなく、天然雪と共にスキー滑走路を形成することもできる。
3.スキー場の営業時間を大いに延長し、雪の製造コストを大幅に低減し、スキー場の収益を大幅に向上させることができる。本発明の人工常温雪の使用は、時期と温度に制限されない。夏に敷設し、冬に天然雪で覆って、季節の遷移中に天然雪と混合してスキー滑走路を形成することで、スキーシーズンの時間を延長することができ、四季に渡るほど延長することもできる。特に、天然雪の量が少ない地域のスキー場において人工雪の製造に多大な時間やコストがかかる現状を改善することができる。そして、本発明の人工雪により、スキー滑走路の形成作業を簡素化し、人力コスト及び時間コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の人工常温雪の一つの実施例の一つの雪粒子を示す図面である。
【
図2】本発明の人工常温雪の一つの雪粒子に含まれる固体粒子の一つの実施例を示す図面である。該固体粒子は非磁性材料を本体として磁性材料を含む。
【
図3】本発明の人工常温雪からなる第1実施例のスキー滑走路を示す一部の断面図である。そのうち、天然雪が本発明の人工常温雪を覆う。
【
図4】本発明の人工常温雪のみからなる第2実施例のスキー滑走路を示す一部の断面図である。
【
図5】本発明の人工常温雪からなる第3実施例のスキー滑走路を示す一部の断面図である。そのうち、本発明の人工常温雪の下方に永久磁石ブロックが敷設されている。
【発明を実施するための形態】
【0027】
ここに記載の実施例は本発明の特定された具体的な実施形態であり、本発明の構想を説明し、解釈して例示するものであり、本発明の実施形態及び本発明の範囲に対する制限と
見なすことができない。ここに記載の実施例以外、当業者は本願の特許請求の範囲及び明細書に記載の内容に基づき、他の自明な技術案を採用することができる。これらの技術案は、ここに記載の実施例をもとに、いかなる自明な入れ替え及び変更を行う技術案を含む。
【0028】
本発明の図面は概略図であり、本発明の構想を説明し、各部分の形状及び相互関係を概略に示すものである。また、閲覧及び図面作成を簡単にするのために、図示しているサイズの比例が拡大され又は縮小されることがある。同一の符号で類似している部分を示す。
【0029】
図1は本発明の人工常温雪の一つの雪粒子1を概略に示す図面である。本発明の一つの好ましい実施例において、人工常温雪はスキーに用いられ、複数の雪粒子1からなる。該雪粒子1は磁性を有する固体粒子2を含み、固体粒子2の表面に、その表面性質を変更可能な材料3が付着しており、該材料は固体粒子2の表面に白色である。付着している表面性質を変更可能な材料層3は例えば高分子材料層又は金属メッキ層である。
【0030】
実際の必要によって該磁性を有する固体粒子2の粒径を設定することができる。例えば、スキー滑走路の異なる位置に、粒径が異なる固体粒子2を使用してよい。固体粒子2の粒径は4mmより大きくてよいし、0.1〜4mmであってよい。より好ましくは1〜3
mmであってよい。さらにより好ましくは2mmである。粒径範囲及びサイズが異なる上記固体粒子からなる人工常温雪は異なる特性を有し、特に1〜3mmの粒径範囲が最も広く適用され、性能も比較的に優れる。必要によって固体粒子2を球形、楕円形、三角形、方形、不規則な多角形など任意の形状に製造してよい。
【0031】
なお、上記好ましい実施例における人工常温雪の固体粒子はその表面性質を変更するための表面被覆層を有するが、本発明は、固体粒子にその表面性質を変更する材料層を付着させなければならないと限らない。
【0032】
人工常温雪を構成する固体粒子2が磁性を有するので、これらの固体粒子の間に磁力により顕著な吸収力がある。よって、これらの固体粒子は集合可能性だけではなく、減衰分散性も有する。この二種の特性は天然雪を模擬するために最も重要な特性である。集合可能性とは、雪粒子1が天然雪のように集合して所定の形状になる安定的な分布になり、勾配が異なるスキー滑走路に付着できる特性である。減衰分散性とは、集合して所定の形状となる人工雪は天然雪のように外力により変形しやすく、減衰するように成形されて分散し、さらにより小さい集合体又は単独の粒子に分散する特性である。これはスキー時に必要な特性であり、スキーヤーへ減速、方向制御ないし制動のための抵抗力を提供することができる。
【0033】
前記磁性を有する固体粒子2は
図1に示す磁性材料粒子であってよいし(
図1に示す固体粒子2は磁性材料のみからなる)、非磁性材料を本体として磁性材料を含む粒子であってよい。
図2は固体粒子2のもう一つの実施例を示す図面である。この固体粒子2は非磁性材料4を本体として磁性材料5を含む粒子である。磁性を有する固体粒子2は非磁性材料を本体として磁性材料を含む粒子である場合に、固体粒子の非磁性材料4は金属、有機材料、無機非金属材料のうちから選択されるいずれか一種の材料であってよい。磁性材料5は固体粒子の本体4内に分布してよいし、固体粒子の本体4に嵌められ、又は固体粒子の本体4に囲まれてよい。上記のように、本発明は、固体粒子の表面にその表面性質を変更する材料層を付着させなければならないと限らない。例えば、固体粒子の本体が有機高分子材料である場合に、明らかであるように、固体粒子の表面にさらに有機高分子材料を付着させることは適宜に選択できる事項に過ぎず、金属メッキ層を付着させることも適宜に選択できる事項に過ぎない。本発明は具体的な実施形態により、固体粒子の表面にその表面性質を変更する材料層を付着させるか否かを適宜に選択することができる。
【0034】
図1、
図2に示す固体粒子2の磁性材料はフェライト、又はFe、Co、Niなどの強磁性材料、又は希土類永久磁石材料であってよい。本発明に所要の磁性材料の量が大きいので、好ましくは、フェライト磁石材料又はネオジム磁石系希土類永久磁石材料のような値段の低い材料を使用する。スキー滑走路が雪粒子1の集合可能性および減衰分散性への要求を満たすように、実際の必要によって固体粒子2の残留磁気を設定することができる。例えば、固体粒子2の残留磁気が1000〜9000ガウス(Gs)の範囲内に設定されてよいし、具体的には2000〜9000ガウス(Gs)の範囲内に設定されてよく、例えば3000ガウス、又は4000ガウスであってよい。残留磁気が強ければ強いほど、雪粒子1の間の吸収力が強くなり、減衰分散性による減衰が大きくなる。磁性材料がフェライトである場合に、好ましくは、、残留磁気が2000〜2300ガウスであり、雪粒子1の集合可能性および減衰分散性を活かすことができる。
【0035】
雪粒子の磁性材料は、例えばフェライトと希土類永久磁石材料との混合物のような異なる磁性材料の混合物であってよい。
図2に示す固体粒子2の実施例において、非磁性材料の本体4に含まれる複数の磁性材料5は同一種類の磁性材料粒子であってよいし、フェライトとネオジム磁石系希土類永久磁石材料との混合物のような異なる磁性材料の混合物であってよい。希土類永久磁石材料の残留磁気はフェライトの残留磁気より大きくなれるので、フェライトと希土類永久磁石材料とを混合することで固体粒子の残留磁気を大きくすることができる。つまり、固体粒子2の間の吸収力が大きくなり、人工常温雪が分散時により強い減衰を発生させる。固体粒子2の間の吸収力を大きくするために、磁性材料5の極性の配向が一致しているように
図2に示す固体粒子2を形成してよい。
【0036】
上記のように、固体粒子の表面に付着している固体粒子の表面性質を変更可能な材料層3は高分子材料層又は金属メッキ層であってよい。前記高分子材料はプラスチック、塗料又は高分子基複合材料である。より具体的に、前記高分子材料はポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)又はポリウレタンである。高分子材料層は焼付けワニスであってよい。固体粒子の外に固体粒子の表面性質を変更可能な材料層を付着させることにより、磁性を有する固体粒子の表面性質を変更することができる。粒子の表面に潤滑性を付与し、粒子とスキーボードとの間の摩擦力を小さくするとともに、天然雪粒子間、及び天然雪とスキーボードとの間の相互作用方式をさらに模擬することができる。
【0037】
また、白色以外に、本発明の人工常温雪を他の色に製造してよい。特に、高分子材料を使用することで、確実に着色することも簡単になり、粒子が赤、青、緑など様々な色を有するようになる。これにより、人工雪の適用性が改善され、スキーヤーの視覚感覚を向上させて楽しさを向上させることができる。
【0038】
本発明の人工常温雪は保存も使用も非常に便利であり、単独でスキー滑走路を形成してよいし、天然雪とともにスキー滑走路を形成してよい。そして、本発明の人工常温雪は水を使用しないとともに、性質が不安定な物質を使用せず、環境には非常に優しい。
【0039】
図3は本発明の人工常温雪と天然雪とからなる第1実施例のスキー滑走路を示す一部の断面図である。
図3において、天然雪6は本発明の人工常温雪7を覆い、本発明の人工常温雪7はベース部8に積もられている。ベース部8として天然敷地又は人工敷地が挙げられる。図示しているように起伏があるスロープに形成されたので、天然雪6と人工常温雪7とは勾配があるスキー滑走路を構成する。天然雪6と人工常温雪7とは0度も含む勾配が異なるスキー滑走路を構成する。本実施例のスキー滑走路において、天然雪6の代わりに、大量の人工常温雪7を使用し、天然雪6の使用量が大幅に減少したが、天然雪のみからなるスキー滑走路と比べ、スキー時の感覚はほとんど同じである。また、従来技術と比
べ、人工常温雪7でスキー滑走路を形成することにより、スキー滑走路の形成作業は非常に簡素化されて便利になる。
【0040】
図4は本発明の人工常温雪のみからなる第2実施例のスキー滑走路を示す一部の断面図である。
図3に示す実施例との相違点は、第2実施例において天然雪を全く使用せず、人工常温雪7がベース部8に積もられてスキー滑走路を構成することである。このようなスキー滑走路は全く時間と温度に制限されない。
【0041】
なお、
図3に示す実施例において、天然雪6は人工常温雪7を覆ってスキー滑走路を構成するが、天然雪6を人工常温雪7と均一又は不均一に混合してスキー滑走路を構成してよい。即ち、天然雪と本発明の人工常温雪によりスキー滑走路を形成する実施形態は様々あり、必要性及び実際の状況によって天然雪と人工常温雪の比例や敷設方式を設定することができる。
【0042】
図5は本発明の人工常温雪からなる第3実施例のスキー滑走路を示す一部の断面図である。
【0043】
図3に示す実施例と比べ、第3実施例のスキー滑走路は複数の永久磁石ブロック9からなる強磁性層を含み、前記永久磁石ブロック9は極性が一致しているようにスキー滑走路のベース部8に並べられ、人工常温雪7の下方に強磁性層を形成する。人工常温雪7を構成する雪粒子1は永久磁石ブロック9の強磁力により、極性の配向が自動的に配列でき、雪粒子1の極性の配向ができる限り一致しているようになれる。よって、雪粒子1の間の吸収力が強くなり、雪粒子1同士間により強い分散抵抗力が発生できる。上記のように、減衰分散性は本発明の人工常温雪が模擬している最も重要な特性の1つであり、雪粒子1
の間におけるより強い分散抵抗力により、より大きな減衰分散性への要求を満たすことができる。永久磁石ブロック9からなる強磁性層のサイズはスキー滑走路表面のサイズとほぼ同一であってよいし、必要に応じてスキー滑走路表面のサイズより小さくしてよい。永久磁石ブロック9は例えば10cm×10cmの正方形であってよい。
【0044】
以下、本発明の人工常温雪の製造方法に関する実施例を説明する。
【0045】
前記固体粒子2が磁性材料のみからなる本発明の人工常温雪は、以下のステップを含む方法で製造することができる。即ち、
(1)粉砕装置で磁性材料を固体粒子に粉砕するステップと、
(2)篩により所定の粒径で固体粒子を選別するステップと、
(3)選別後の固体粒子の表面に、その表面性質を変更可能な材料層を付着させるステップと、
(4)前記材料層が付着している固体粒子を磁化するステップと、
を含む人工常温雪の製造方法である。
【0046】
なお、固体粒子の表面に、その表面性質を変更可能な材料層を付着させる必要がない場合に、上記方法は上記ステップ(3)を含まない。
【0047】
前記材料層が高分子材料層であることが好ましく、金属メッキ層であってよい。
【0048】
さらに、上記方法は、固体粒子に付着している材料層に着色するステップを含んでよい。
【0049】
本発明の人工常温雪の固体粒子2は前記非磁性材料を本体として磁性材料を含む粒子である場合に、その製造方法は以下のステップを含む。即ち、
(1)非磁性材料を本体として磁性材料を含む固体粒子を製造するステップと、
(2)篩により所定の粒径で、非磁性材料を本体として磁性材料を含む固体粒子を選別するステップと、
(3)選別後の固体粒子を磁化するステップと、
を含む人工常温雪の製造方法である。
【0050】
さらに、製造された固体粒子の表面性質を変更する必要がある場合に、上記方法は前記選別ステップと磁化ステップとの間に、選別後の固体粒子の表面に、表面性質を変更可能な材料層を付着させるステップを含んでよい。
【0051】
さらに、上記方法は、固体粒子に付着している材料層に着色するステップを含んでよい。
【0052】
非磁性材料を本体として磁性材料を含む固体粒子2を製造するときに、固体粒子の本体は金属、有機材料、無機非金属材料のうちから必要に応じて選択される材料であってよい。好ましくは、粉砕されまたは溶融された磁性材料と、溶融された本体材料とを混合してから粒子化してなる、非磁性材料を本体として磁性材料を含む固体粒子である。固体粒子の本体が有機高分子材料である場合に、前記記載を参照すると、選別後の固体粒子の表面に、その表面性質を変更可能な材料層を付着させるステップは必要ではない。
【0053】
非磁性材料を本体として磁性材料を含む固体粒子の間の分散減衰を大きくするために、即ち固体粒子の間の吸収力を大きくするために、粉砕されまたは溶融された磁性材料と、溶融された本体材料とを混合してから粒子化する工程に、好ましくは、本体材料が溶融されたまま磁化し、磁場の強磁力により、本体に含まれる磁性材料を自動的に配列して、又は極性の配向を同一とする。
【0054】
上記二種類の製造方法において、所要の固体粒子の粒径によって篩のメッシュを設定してよい。例えば、4〜10目であってよいし、より具体的には、5、8、9目等であってよい。
【0055】
本発明の人工常温雪により、天然雪の特性を効果よく模擬することができるとともに、製造が簡単で使いやすいし、スキー滑走路の形成作業を簡素化して大規模に天然雪の代わりにスキー滑走路を形成することができる。従って、環境温度と季節によるスキーへの制限を大幅に軽減し、スキー場の営業時間を延長してスキー場の収益を大幅に向上させることができる。
【0056】
以上、本発明の人工常温雪の実施形態を説明した。上記のように、本発明の人工常温雪の形状、サイズなどの具体的な特徴は、上記特徴の作用によって設定することができる。このような設定は全て当業者が実行できる事項である。また、当業者は上記各実施形態の特徴を組み合わせて変更することができて、本発明の目的が実現できればよい。本発明の保護範囲は、本願の特許請求の範囲に準ずる。