【解決手段】眼科装置は、被検眼の検査を行うための光学系と、検査の結果を処理することにより被検眼の状態を示す検査データを生成する処理部130と、光学系および処理部に関する所定の項目の設定の内容を示す設定情報を記憶する記憶部112と、設定情報が変更または破棄されるまでの間に実行される検査において、設定情報に示される設定の内容に基づき光学系および処理部を制御する制御部110とを有する。記憶部は、当該装置を用いて検査を行うことが許可された正規の被検者に関する正規個人認証情報をあらかじめ記憶する。眼科装置は、個人認証情報を制御部に入力する入力部と、入力部により入力された個人認証情報と正規個人認証情報とが一致するか判定する認証処理部134とを有する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
この発明に係る眼科撮影装置の実施形態の一例について、図面を参照しながら詳細に説明する。この発明に係る眼科撮影装置は、OCTを用いて眼底の断面像を形成する。この明細書では、OCTによって取得される画像をOCT画像と総称することがある。また、OCT画像を形成するための計測動作をOCT計測と呼ぶことがある。なお、この明細書に記載された文献の記載内容を、以下の実施形態の内容として適宜援用することが可能である。
【0020】
以下の実施形態ではスペクトラルドメインタイプのOCTを適用した場合について詳しく説明するが、他のタイプのOCTを用いる眼科撮影装置に対して、この発明に係る構成を適用することも可能である。また、実施形態に係る装置は、OCT以外の撮影機能を有していてもよい。この付加的な撮影機能の例として、前眼部および/または眼底の正面画像を取得する機能がある(たとえば特許文献5を参照)。
【0021】
[構成]
実施形態に係る眼科撮影装置の構成について説明する。
図1に示す眼科撮影装置1は、光学ユニット10と、コンピュータ100と、ユーザインターフェイス(UI)200とを有する。
【0022】
光学ユニット10、コンピュータ100およびユーザインターフェイス200は一体的に(つまり単一の筐体内に)設けられていてよい。或いは、これらは2つ以上の筐体内に分散配置されていてもよい。その場合、眼科撮影装置の一部が他の装置に設けられていてよい。たとえば、コンピュータ100の一部または全部を、パーソナルコンピュータや携帯端末(タブレット型コンピュータ、携帯電話、スマートフォン等)に設けることができる。また、ユーザインターフェイス200の一部または全部を、パーソナルコンピュータ、携帯端末、テレビ受像機、スマートテレビなどに設けることができる。
【0023】
〔光学ユニット10〕
光学ユニット10は、OCT計測を行うための光学系と、所定の光学素子を駆動する機構とを含む。光学系は、光源11からの光を測定光と参照光とに分割し、測定光の被検眼Eからの戻り光と参照光とを干渉させ、その干渉光を検出する。この光学系は、従来のスペクトラルドメインタイプのOCT装置と同様の構成を有する。すなわち、この光学系は、低コヒーレンス光(広帯域光)を参照光と測定光に分割し、被検眼Eを経由した測定光と参照光路を経由した参照光とを干渉させて干渉光を生成し、この干渉光のスペクトル成分を検出するように構成される。スペクトル成分の検出結果(検出信号)はコンピュータ100に送られる。
【0024】
スウェプトソースタイプのOCTが適用される場合、低コヒーレンス光源の代わりに波長掃引光源が設けられるとともに、干渉光をスペクトル分解する光学部材が設けられない。一般に、光学ユニット10の構成については、OCTのタイプに応じた公知の技術を任意に適用することができる。
【0025】
光源11は広帯域の低コヒーレンス光を出力する。この低コヒーレンス光は、たとえば、近赤外領域の波長帯(約800nm〜900nm程度)を含み、数十マイクロメートル程度の時間的コヒーレンス長を有する。なお、人眼では視認できない波長帯、たとえば1040〜1060nm程度の中心波長を有する近赤外光を低コヒーレンス光として用いてもよい。
【0026】
光源11は、スーパールミネセントダイオード(Super Luminescent Diode:SLD)や、LEDや、SOA(Semiconductor Optical Amplifier)等の光出力デバイスを含んで構成される。
【0027】
光源11から出力された低コヒーレンス光は、コリメートレンズ12により平行光束とされてビームスプリッタ13に導かれる。ビームスプリッタ13は、たとえば、所定割合の光を反射し、残りを透過させるハーフミラーである。ビームスプリッタ13は、この平行光束を測定光と参照光とに分割する。
【0028】
測定光とは被検眼Eに照射される光である(信号光などとも呼ばれる)。測定光の光路(測定光路)を形成する光学素子群は測定アームと呼ばれる(サンプルアームなどとも呼ばれる)。参照光とは、測定光の戻り光に含まれる情報を干渉信号として抽出するための基準となる光である。参照光の光路(参照光路)を形成する光学素子群は参照アームと呼ばれる。
【0029】
参照光路の一端はビームスプリッタ13であり、他端は参照ミラー14である。ビームスプリッタ13を透過した成分からなる参照光は、参照ミラー14により反射されてビームスプリッタ13に戻ってくる。
【0030】
参照ミラー14は、
図2に示す参照ミラー駆動部14Aにより、参照光の進行方向に沿って移動される。それにより、参照光路の長さが変更される。参照ミラー駆動部14Aは、測定光路の長さと参照光路の長さとを相対的に変更するように機能し、それにより測定光と参照光との干渉強度が最大となる深度が変更される。参照ミラー14と参照ミラー駆動部14Aは最大干渉深度変更部の一例である。また、参照ミラー駆動部14Aは第3の駆動部の一例である。
【0031】
この実施形態では参照光路の長さを変更する構成が適用されているが、この構成の代わりに、或いはこの構成に加えて、測定光路の長さを変更する構成を設けることができる。測定光路の長さの変更は、たとえば、入射する測定光を当該入射方向と反対方向に反射するコーナーキューブと、このコーナーキューブを当該入射方向および当該反射方向に移動させるための機構とにより実現される。
【0032】
ビームスプリッタ13に反射された成分からなる測定光は、測定光路に対して傾斜配置された固定ミラー15により偏向されてスキャナ16に導かれる。スキャナ16は、たとえば2軸光スキャナである。つまり、スキャナ16は、測定光を2次元的に偏向可能な構成を有する。スキャナ16は、たとえば、互いに直交する方向に偏向可能な2つのミラーを含むミラースキャナである。このミラースキャナは、たとえばMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)として構成される。他の例として、1つのミラースキャナとロータリープリズムとを用いてスキャナ16を構成することも可能である。
【0033】
スキャナ16から出力される測定光は、2次元的に偏向されたコリメート光である。この測定光は、リレーレンズ17により集束光とされ、眼底Efと共役な面(眼底共役面)Pcにおいて空中結像される。さらに、測定光は、合焦レンズとしての機能を有する対物レンズ19により再び集束光とされて被検眼Eに入射する。なお、眼底共役面Pcに配置された光学素子(ダイクロイックミラー18)については後述する。また、後述の視度補正レンズ27が測定光路に配置されている場合、測定光は、対物レンズ19を経由した後、視度補正レンズ27により屈折されて被検眼Eに入射する。
【0034】
対物レンズ19と鏡筒部19Aは、
図2に示す鏡筒駆動部19Bにより、測定光路に沿って移動される。対物レンズ19と鏡筒部19Aは、被検眼Eの屈折力に応じて光軸方向に移動される。それにより、眼底共役面Pcが眼底Efと共役な位置に配置される。その結果、測定光は、スポット光として眼底Efに投射される。対物レンズ19と鏡筒駆動部19Bは、被検眼Eに対する測定光の合焦位置を変更するための合焦位置変更部の一例である。また、鏡筒駆動部19Bは、対物レンズ19(合焦レンズ)を移動する第1の駆動部の一例である。なお、対物レンズ19とは別に合焦レンズを設ける構成を適用することも可能である。
【0035】
視度補正レンズ27は、合焦レンズと同様に被検眼Eに対する測定光の合焦位置を変更するものであるが、たとえば強度近視眼のように極端な屈折力を有する被検眼に対処するために測定光路に配置される光学素子である。視度補正レンズ27は、
図2に示すレンズ駆動部27Aにより測定光路に対して挿入/退避される。視度補正レンズ27とレンズ駆動部27Aは、被検眼Eに対する測定光の合焦位置を変更するための合焦位置変更部の一例である。また、レンズ駆動部27Aは、視度補正レンズ27を移動する第2の駆動部の一例である。
【0036】
なお、合焦位置変更部は、度数が異なる複数の視度補正レンズと、これら視度補正レンズのうち任意のものを選択的に測定光路に配置させる第2の駆動部とを有する構成であってもよい。また、たとえばアルバレッツレンズのように屈折力が可変に構成された光学素子を視度補正レンズとして用いることも可能である。このような視度補正用の光学素子は、たとえば、対物レンズ19と被検眼Eとの間の位置に配置される。
【0037】
眼底Efに照射された測定光は、眼底Efの様々な深さ位置において散乱(反射を含む)される。眼底Efによる測定光の後方散乱光(戻り光)は、往路と同じ経路を逆向きに進行してビームスプリッタ13に導かれる。
【0038】
ビームスプリッタ13は、測定光の戻り光と、参照光路を経由した参照光とを干渉させる。このとき、参照光路の長さとほぼ等しい距離を経由した戻り光の成分、つまり参照光路の長さに対して可干渉距離以内の範囲からの後方散乱光のみが、参照光と実質的に干渉する。ビームスプリッタ13を介して生成された干渉光は、分光器20に導かれる。分光器20に入射した干渉光は、回折格子21により分光(スペクトル分解)され、レンズ22を介してCCDイメージセンサ23の受光面に照射される。なお、
図1に示す回折格子21は透過型であるが、たとえば反射型の回折格子など、他の形態の分光素子を用いることも可能である。
【0039】
CCDイメージセンサ23は、たとえばラインセンサまたはエリアセンサであり、分光された干渉光の各スペクトル成分を検出して電荷に変換する。CCDイメージセンサ23は、この電荷を蓄積して検出信号を生成し、これをコンピュータ100に送る。
【0040】
前述したように、測定光路の眼底共役面Pcに相当する位置には、ダイクロイックミラー18が傾斜配置されている。ダイクロイックミラー18は、近赤外帯域の測定光を透過させ、可視帯域の光を反射するように構成されている。
【0041】
ダイクロイックミラー18を介して測定光路から分岐した光路には、フラットパネルディスプレイ(FPD)25と、レンズ26とが設けられている。フラットパネルディスプレイ25は、制御部110による制御を受けて情報を表示する。フラットパネルディスプレイ25に表示される情報として、被検眼Eに対して提示される各種の視標がある。このような視標の例として、自覚式視力検査用の視標(ランドルト環など)や、被検眼Eを固視させるための固視標などがある。
【0042】
フラットパネルディスプレイ25は、レンズ26を介して眼底共役面Pcと共役な位置(よって、眼底Efと共役な位置)に配置されている。フラットパネルディスプレイ25としては、たとえば液晶ディスプレイ(LCD)または有機ELディスプレイ(OELD)が用いられる。
【0043】
フラットパネルディスプレイ25から出力された可視光は、レンズ26を介してダイクロイックミラー18に反射される。さらに、この可視光は、対物レンズ19を介して被検眼Eに入射し、眼底Efに到達する。それにより、この可視光に基づく像(たとえば視標像)が眼底Efに投影される。
【0044】
なお、ダイクロイックミラー18の代わりに、ハーフミラー等の光学素子を設けてもよい。また、測定光路に対して挿入/退避できるように構成された反射ミラーを設けることも可能である。ダイクロイックミラー18やハーフミラーが設けられる場合、OCT計測と視標の投影を同時に行うことができる。一方、反射ミラーが設けられる場合には、OCT計測と視標の投影とが異なるタイミングで実行される。
【0045】
この実施形態ではマイケルソン型の干渉計を採用しているが、たとえばマッハツェンダー型など任意のタイプの干渉計を適宜に採用することが可能である。また、CCDイメージセンサに代えて、他の形態の受光素子、たとえばCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサなどを用いることが可能である。
【0046】
この実施形態では、ビームスプリッタ13に反射された光が測定光として用いられ、これを透過した光が参照光として用いられている。一方、これとは逆に、ビームスプリッタ13に反射された光を参照光として使用し、これを透過した光を測定光として使用する構成を適用することも可能である。その場合、測定アームと参照アームの配置が
図1とは逆になる。
【0047】
測定光および/または参照光の特性を変換する部材を設けることができる。たとえば、光減衰器(アッテネータ)や偏波調整器(偏波コントローラ)を、参照光路に設けることが可能である。光減衰器は、コンピュータ100の制御を受けて、参照光の光量を調整する。光減衰器は、たとえば、減光フィルタと、これを参照光路に対して挿入/退避させるための機構とを含む。偏波調整器は、コンピュータ100の制御を受けて、参照光の偏光状態を調整する。偏波調整器は、たとえば、参照光路に配置された偏光板と、これを回転させるための機構とを含む。これらは、測定光の戻り光と参照光との干渉強度を調整するために使用される。
【0048】
被検眼Eを撮影してその正面画像を取得するための正面画像取得光学系を設けることが可能である。この正面画像は、前眼部または眼底Efの画像である。正面画像取得光学系は、測定光路から分岐した光路を形成するものであり、たとえば従来の眼底カメラと同様の照明光学系と撮影光学系とを含む。照明光学系は、(近)赤外光または可視光からなる照明光を被検眼Eに照射する。撮影光学系は、被検眼Eからの照明光の戻り光(反射光)を検出する。撮影光学系は、測定光路と共通の合焦レンズ、および/または、測定光路とは独立した合焦レンズを有する。また、撮影光学系は、測定光路と共通の合焦レンズ(対物レンズ19、視度補正レンズ27など)、および/または、測定光路から独立した合焦レンズを有する。正面画像取得光学系の他の例として、従来のSLOと同様の光学系がある。
【0049】
正面画像取得光学系が設けられる場合、従来の眼底カメラと同様のアライメント光学系を設けることができる。アライメント光学系は、測定光路から分岐した光路を形成するものであり、被検眼Eに対する装置光学系の位置合わせ(アライメント)を行うための視標(アライメント視標)を生成する。アライメントは、測定光路(対物レンズ19の光軸)に対して直交する面に沿う方向(xy方向と呼ばれる)における位置合わせである。図示は省略するが、アライメント光学系は、アライメント光源(LED等)から出力された光束から2孔絞りによって2つのアライメント光束を生成する。2つのアライメント光束は、測定光路に対して傾斜配置されたビームスプリッタを介して測定光路に導かれ、被検眼Eの角膜に投影される。アライメント光束の角膜反射光は、正面画像取得光学系のイメージセンサによって検出される。
【0050】
アライメント光学系が設けられる場合、オートアライメントを実行することができる。具体的には、コンピュータ100のデータ処理部130は、正面画像取得光学系のイメージセンサから入力される信号を解析して2つのアライメント視標像の位置を特定する。さらに、制御部110は、特定された2つのアライメント視標像の位置に基づいて、イメージセンサの受光面の所定位置(たとえば中心位置)に2つの角膜反射光が重なって投影されるように、光学ユニット10をxy方向に移動させる。なお、光学ユニット10は、ユニット駆動部10Aによって移動される。
【0051】
また、正面画像取得光学系が設けられる場合、従来の眼底カメラと同様のフォーカス光学系を設けることができる。フォーカス光学系は、測定光路から分岐した光路を形成するものであり、眼底Efに対するフォーカシング(ピント合わせ)を行うための視標(スプリット視標)を生成する。図示は省略するが、フォーカス光学系は、フォーカシング光源(LED等)から出力された光束からスプリット視標板によって2つのフォーカシング光束を生成する。2つのフォーカシング光束は、測定光路に対して傾斜配置された反射部材を介して測定光路に導かれ、眼底Efに投影される。フォーカシング光束の眼底反射光は、正面画像取得光学系のイメージセンサによって検出される。
【0052】
フォーカス光学系が設けられる場合、オートフォーカスを実行することができる。具体的には、コンピュータ100のデータ処理部130は、正面画像取得光学系のイメージセンサから入力される信号を解析して2つのスプリット視標像の位置を特定する。さらに、制御部110は、特定された2つのスプリット視標像の位置に基づいて、イメージセンサの受光面に対して2つの眼底反射光が一直線上に投影されるように、フォーカス光学系の移動制御および合焦レンズの制御(たとえば対物レンズ19の移動制御)を行う。
【0053】
正面画像取得光学系が設けられる場合、オートトラッキングを行うことができる。オートトラッキングとは、被検眼Eの動きに合わせて光学ユニット10を移動させるものである。オートトラッキングを行う場合、事前にアライメントとフォーカシングが実行される。オートトラッキングは、たとえば次のようにして実行される。まず、正面画像取得光学系によって被検眼Eを動画撮影する。データ処理部130は、この動画撮影により得られるフレームを逐次に解析することで、被検眼Eの動き(位置の変化)を監視する。制御部110は、逐次に取得される被検眼Eの位置に合わせて光学ユニット10を移動させるようにユニット駆動部10Aを制御する。それにより、被検眼Eの動きに対して光学ユニット10をリアルタイムで追従させることができ、アライメントとピントが合った好適な位置関係を維持することが可能となる。
【0054】
〔制御系・データ処理系〕
実施形態に係る眼科撮影装置1の制御系およびデータ処理系について説明する。制御系およびデータ処理系の構成例を
図2に示す。
【0055】
制御系およびデータ処理系は、コンピュータ100を中心に構成される。コンピュータ100は、マイクロプロセッサ、RAM、ROM、ハードディスクドライブ、通信インターフェイスなどを含んで構成される。ハードディスクドライブ等の記憶装置には、眼科撮影装置1に各種処理を実行させるためのコンピュータプログラムが記憶されている。コンピュータ100は、特定の処理を実行する専用の回路基板を有していてよい。たとえばOCT画像を形成するための処理を実行する回路基板が設けられていてよい。
【0056】
(ユーザインターフェイス200)
コンピュータ100にはユーザインターフェイス200が接続されている。ユーザインターフェイス200には、表示部210と操作部220とが含まれる。表示部210は、フラットパネルディスプレイ等の表示デバイスを含む。操作部220は、眼科撮影装置1の筐体や外部に設けられたボタン、キー、ジョイスティック、操作パネル等の操作デバイスを含む。コンピュータ100がパーソナルコンピュータを含む場合、操作部220は、このパーソナルコンピュータの操作デバイス(マウス、キーボード、トラックパッド、ボタン等)を含んでいてよい。
【0057】
表示部210と操作部220は、それぞれ個別のデバイスとして構成される必要はない。たとえばタッチパネルのように、表示機能と操作機能とが一体化されたデバイスを用いることも可能である。その場合、操作部220は、このタッチパネルとコンピュータプログラムとを含んで構成される。操作部220に対する操作内容は、電気信号として制御部110に入力される。また、表示部210に表示されたグラフィカルユーザインターフェイス(GUI)と、操作部220とを用いて、操作や情報入力を行うようにしてもよい。
【0058】
(制御部110)
制御部110は、コンピュータ100に設けられている。制御部110は、マイクロプロセッサ、RAM、ROM、ハードディスクドライブ等を含んで構成される。制御部110には、主制御部111と記憶部112が設けられている。
【0059】
(主制御部111)
主制御部111は、眼科撮影装置1の各部の制御を行う。たとえば、主制御部111による制御の対象には、ユニット駆動部10A、光源11、参照ミラー駆動部14A、スキャナ16、鏡筒駆動部19B、CCD(イメージセンサ)23、フラットパネルディスプレイ25、表示部210、データ処理部130、および通信部140が含まれる。
【0060】
ユニット駆動部10Aは、測定光路(対物レンズ19の光軸)に沿う方向(z方向)と、z方向に対して直交する面に沿う方向(xy方向)とに、光学ユニット10を移動するための機構を有する。参照ミラー駆動部14Aは、参照光路に沿って参照ミラー14を移動する。鏡筒駆動部19Bは、測定光路に沿って対物レンズ19および鏡筒部19Aを移動する。レンズ駆動部27Aは、視度補正レンズ27を測定光路に対して挿脱する。或いは、レンズ駆動部27Aは、複数の視度補正レンズを選択的に測定光路に配置させる(全ての視度補正レンズを測定光路から退避させることもできる)。
【0061】
(記憶部112)
記憶部112は、各種のデータを記憶する。また、記憶部112には、眼科撮影装置1を動作させるための各種プログラムやデータが記憶されている。記憶部112に記憶されるデータは、眼科撮影装置1により取得されるデータと、あらかじめ記憶されるデータとを含む。
【0062】
眼科撮影装置1により取得されるデータとしては、OCT画像の画像データ、検査データ、正面画像の画像データなどがある。検査データとは、光学ユニット10による干渉光の検出結果を処理することにより生成される、被検眼の状態を示すデータである(詳細は後述する)。記憶部112にあらかじめ記憶されるデータとしては、設定情報や正規個人認証情報などがある。
【0063】
(設定情報)
設定情報は、光学ユニット10およびデータ処理部130に関する所定の項目の設定の内容が記録された情報である。設定情報はたとえば次の事項のうち少なくとも1つに関する設定内容を含む:(1)固視位置;(2)スキャンパターン;(3)合焦位置;(4)視度補正;(5)最大干渉深度;(6)解析処理。
【0064】
(1)「固視位置」は、被検眼Eを固視させる方向、つまりOCT計測が実行される被検眼Eの部位を示す。固視位置としては、黄斑およびその周囲のOCT計測を行うための固視位置、視神経乳頭およびその周囲のOCT計測を行うための固視位置、黄斑および視神経乳頭並びにこれらの周囲のOCT計測を行うための固視位置などがある。また、被検眼Eの任意の部位に対応する固視位置を設定することも可能である。固視位置は、たとえば、フラットパネルディスプレイ25による固視標の表示位置(画素の位置)を示す情報を含む。
【0065】
(2)「スキャンパターン」は、被検眼Eに対する測定光の投射位置をどのようなパターンに沿って移動させるかを示す。スキャンパターンとしては、1以上のラインスキャン(水平スキャン、垂直スキャン)、1以上のクロススキャン、ラジアルスキャン、サークルスキャンなどがある。また、3次元画像(3次元データセット)を取得する場合には、複数のラインスキャンの間隔が十分に狭く設定された3次元スキャンが適用される。
【0066】
(3)「合焦位置」は、OCT計測において適用されるフォーカス条件を示す。合焦位置は、たとえば、対物レンズ19の位置を示す情報を含む。
【0067】
(4)「視度補正」は、視度補正において適用される条件を示す。具体的には、被検眼Eの屈折力(視力値)を示す値、視度補正レンズの適用/非適用、視度補正レンズにより印加する屈折力を示す値などがある。
【0068】
(5)「最大干渉深度」は、OCT計測において適用される、測定光と参照光との干渉強度が最大となる深度を示す。最大干渉深度は、たとえば、参照ミラー14の位置を示す情報を含む。
【0069】
(6)「解析処理」は、光学ユニット10により取得されるデータに基づき実行される処理の内容、つまり取得される検査データの種別を示す。解析処理の例として、眼底層厚解析、ドルーゼン解析、乳頭形状解析などがある。眼底層厚解析は、眼底の所定の層組織(網膜、網膜のサブ組織、脈絡膜、強膜等)の厚さを求めるための解析処理である。ドルーゼン解析は、加齢黄斑変性症の診断材料として用いられるドルーゼン(老廃物の塊)の分布を求めるための解析処理である。乳頭形状解析は、眼底の断面像や3次元画像を解析して、網膜の孔部(切れ目、欠損部位)を検出して視神経乳頭の形状を求める解析処理である。また、乳頭形状解析では、視神経乳頭の傾き(形状の非対称性)を求めることもできる。なお、これら解析処理の詳細については後述する。
【0070】
被検者の左眼と右眼の双方のOCT計測を行う場合であって、特に左右で異なる設定が適用される場合には、左眼に関する設定情報(左眼用設定情報)と、右眼に関する設定情報(右眼用設定情報)とを別々に設けることが可能である。
【0071】
また、眼科撮影装置1を2以上の被検者が共用する場合であって、特に被検者ごとに異なる設定が適用される場合には、被検者ごとに個別の設定情報を設けることが可能である。
【0072】
設定情報の作成方法について説明する。眼科撮影装置1は、被検者に貸し出され、被検者の自宅等で使用される。設定情報の作成は、貸し出しの前に行われる。
【0073】
設定情報の作成方法の第1の例として、眼科撮影装置1のユーザインターフェイス200を用いることができる。たとえば、表示部210に表示された所定の設定画面に対し、光学ユニット10およびデータ処理部130に関する所定の項目の設定内容を、操作部220を用いて入力する。主制御部111は、入力された設定内容を含む設定情報を作成し、記憶部112に記憶させる。この場合、ユーザインターフェイス200がインターフェイス部として機能する。
【0074】
設定情報の作成方法の第2の例として、眼科撮影装置1に接続されたコンピュータ(外部コンピュータ1000)を用いることができる。外部コンピュータ1000はたとえば医師が使用するパーソナルコンピュータである。外部コンピュータ1000には、設定情報を作成するための機能(コンピュータプログラム)が搭載されている。外部コンピュータ1000のディスプレイには所定の設定画面が表示される。医師等は、この設定画面に対し、光学ユニット10およびデータ処理部130に関する所定の項目の設定内容を、操作デバイス(キーボード、マウス等)を用いて入力する。外部コンピュータ1000は、入力された設定内容を、通信回線2000(直接接続用のケーブルでもよい)を介して眼科撮影装置1に送信する。眼科撮影装置1は、外部コンピュータ1000から送信された設定内容を通信部140によって受信する。主制御部111は、受信された設定内容を含む設定情報を作成し、記憶部112に記憶させる。この場合、通信部140がインターフェイス部として機能する。なお、上記の例では、設定内容の入力および送信を外部コンピュータ1000が実行しているが、外部コンピュータ1000が設定情報の作成まで行なうよう構成することも可能である。
【0075】
設定情報の作成においては、被検眼Eの検査結果や検査条件、疾患名(その診断材料となるデータの種別など)などが参照される。たとえば、固視位置の設定は、過去のOCT計測において適用された固視位置や、疾患名を参照して行われる。スキャンパターンの設定は、過去のOCT計測において適用されたスキャンパターンや、疾患名を参照して行われる。合焦位置の設定は、過去のOCT計測において適用された合焦位置を参照して行われる。視度補正の設定は、過去のOCT計測において視度補正レンズが適用されたか否かを参照して、或いは過去の検査で取得された被検眼Eの視力値や屈折力を参照して行われる。最大干渉深度の設定は、過去のOCT計測において適用された最大干渉深度を参照して行われる。解析処理の設定は、過去の検査で適用された解析処理の種別や、疾患名を参照して行われる。
【0076】
検査結果、検査条件および/または疾患名と、設定内容との関係の具体例を説明する。黄斑の検査においては次のような設定内容を採用することができる:(1)固視位置としては、スキャン範囲に黄斑が含まれるような固視位置、たとえば測定光路の光軸の延長上に黄斑が位置するような固視位置が採用される;(2)スキャンパターンとしては、3次元スキャン、ラジアルスキャンおよび/またはラインスキャンが採用される;(3)合焦位置としては、過去に実施されたOCT計測において適用された合焦位置、または被検眼Eの測定値(眼軸長、屈折力等)から演算によって得られる合焦位置が採用される;(4)視度補正としては、過去に実施されたOCT計測における視度補正レンズの適用の有無、または被検眼Eの屈折力の測定値から得られる視度補正値などが採用される;(5)最大干渉深度としては、過去に実施されたOCT計測において適用された最大干渉深度、または被検眼Eの測定値(眼軸長、屈折力等)から演算によって得られる最大干渉深度が採用される。このとき、最大干渉深度として設定される眼底Efの部位(眼底の表面、注目する深部組織など)を参照することが可能である;(6)解析処理としては、眼底層厚解析(および標準的な層厚値との比較解析)が用いられる。なお、この眼底層厚解析では、たとえば網膜の厚さが求められる(網膜厚解析)。
【0077】
視神経乳頭の検査においては次のような設定内容を採用することができる:(1)固視位置としては、スキャン範囲に視神経乳頭が含まれるような固視位置、たとえば、測定光路の光軸の延長上に視神経乳頭が位置するような固視位置が採用される;(2)スキャンパターンとしては、3次元スキャンおよび/またはサークルスキャンが採用される;(3)合焦位置としては、過去に実施されたOCT計測において適用された合焦位置、または被検眼Eの測定値(眼軸長、屈折力等)から演算によって得られる合焦位置が採用される;(4)視度補正としては、過去に実施されたOCT計測における視度補正レンズの適用の有無、または被検眼Eの屈折力の測定値から得られる視度補正値などが採用される;(5)最大干渉深度としては、過去に実施されたOCT計測において適用された最大干渉深度、または被検眼Eの測定値(眼軸長、屈折力等)から演算によって得られる最大干渉深度が採用される。このとき、最大干渉深度として設定される眼底Efの部位(眼底の表面、注目する深部組織(たとえば網膜神経線維層)など)を参照することが可能である;(6)解析処理としては、眼底層厚解析(および標準的な層厚値との比較解析)および/または乳頭形状解析が用いられる。なお、この眼底層厚解析では、たとえば網膜神経線維層の厚さが求められる(RNFL厚解析)。
【0078】
緑内障の検査においては次のような設定内容を採用することができる:(1)固視位置としては、スキャン範囲に黄斑が含まれるような固視位置(たとえば測定光路の光軸の延長上に黄斑が位置するような固視位置)、および/または、スキャン範囲に視神経乳頭が含まれるような固視位置(たとえば測定光路の光軸の延長上に視神経乳頭が位置するような固視位置)が採用される;(2)スキャンパターンとしては、3次元スキャンが採用される;(3)合焦位置としては、過去に実施されたOCT計測において適用された合焦位置、または被検眼Eの測定値(眼軸長、屈折力等)から演算によって得られる合焦位置が採用される;(4)視度補正としては、過去に実施されたOCT計測における視度補正レンズの適用の有無、または被検眼Eの屈折力の測定値から得られる視度補正値などが採用される;(5)最大干渉深度としては、過去に実施されたOCT計測において適用された最大干渉深度、または被検眼Eの測定値(眼軸長、屈折力等)から演算によって得られる最大干渉深度が採用される。このとき、最大干渉深度として設定される眼底Efの部位(眼底の表面、注目する深部組織(たとえば網膜神経線維層)など)を参照することが可能である;(6)解析処理としては、網膜厚解析(および標準的な層厚値との比較解析)、RNFL厚解析(および標準的な層厚値との比較解析)、および/または乳頭形状解析が用いられる。
【0079】
加齢黄斑変性症の検査においては次のような設定内容を採用することができる:(1)固視位置としては、スキャン範囲に黄斑が含まれるような固視位置、たとえば測定光路の光軸の延長上に黄斑が位置するような固視位置が採用される;(2)スキャンパターンとしては、3次元スキャンが採用される;(3)合焦位置としては、過去に実施されたOCT計測において適用された合焦位置、または被検眼Eの測定値(眼軸長、屈折力等)から演算によって得られる合焦位置が採用される;(4)視度補正としては、過去に実施されたOCT計測における視度補正レンズの適用の有無、または被検眼Eの屈折力の測定値から得られる視度補正値などが採用される;(5)最大干渉深度としては、過去に実施されたOCT計測において適用された最大干渉深度、または被検眼Eの測定値(眼軸長、屈折力等)から演算によって得られる最大干渉深度が採用される。このとき、最大干渉深度として設定される眼底Efの部位(眼底の表面、注目する深部組織など)を参照することが可能である;(6)解析処理としては、網膜厚解析(および標準的な層厚値との比較解析)、および/またはドルーゼン解析が用いられる。
【0080】
設定情報の一部または全部を自動で作成することも可能である。その場合、主制御部111または外部コンピュータ1000は、被検眼Eの検査結果や検査条件、疾患名に関する情報を当該被検者の電子カルテから取得する。そして、取得された情報を含む設定情報が作成される。
【0081】
(正規個人認証情報)
正規個人認証情報は、眼科撮影装置1を用いて検査を行うことが許可された者(正規の被検者)の個人認証情報である。個人認証情報とは、眼科撮影装置1を用いて検査を行おうとしている者の個人認証を行うために使用される情報である。
【0082】
個人認証情報としては、文字列情報や画像情報が用いられる。文字列情報としては、医療機関にて付与された患者ID、被検者の氏名等の個人情報、被検者が任意に指定した文字列情報、ランダムに指定された文字列情報などがある。画像情報としては、生体認証情報(指紋パターン、虹彩パターン、静脈パターン、顔型パターンなど)、1次元コード、2次元コードなどがある。また、個人認証情報として音声パターンや筆跡パターンを用いることも可能である。
【0083】
正規個人認証情報は、眼科撮影装置1が被検者に貸し出される前に、眼科撮影装置1に入力される。正規個人認証情報が文字列情報である場合の入力方法としては、ユーザインターフェイス200または外部コンピュータ1000を用いた手入力、カードリーダ等の読取装置を用いた読み取り入力、電子カルテ等からの読み込みなどがある。また、正規個人認証情報が画像情報である場合の入力方法としては、カードリーダ等の読取装置を用いた読み取り入力、紙葉類に記載された情報のスキャン入力、電子カルテ等からの読み込み、生体認証情報入力装置(指紋読取装置、虹彩読取装置、静脈読取装置、顔型解析装置など)からの入力などがある。また、音声パターンが用いられる場合には、音声入力装置から正規個人認証情報が入力される。また、筆跡パターンが用いられる場合には、紙葉類に記載された情報を読み取ったスキャナから正規個人認証情報が入力される。
【0084】
眼科撮影装置1を用いた検査を行おうとする者は、所定の方法で個人認証情報を入力する。入力方法は、使用される個人認証情報の種別に対応する。つまり、眼科撮影装置1の使用に際して行われる個人認証情報の入力は、上記した正規個人認証情報の入力と同様の方法にて行われる。個人認証情報を入力するための構成要素は第2の入力部に相当する。
【0085】
第2の入力部の具体例として次のものがある:個人認証情報を手入力するためのユーザインターフェイス200;外部コンピュータ1000にて入力された個人認証情報を受信する通信部140;カード等の記録媒体に記録された個人認証情報を読み取る、カードリーダ等の読取装置;電子カルテ等に記録されている個人認証情報を受信する通信部140;紙葉類に記載された個人認証情報をスキャンするスキャナ;生体認証情報からなる個人認証情報を読み取る生体認証情報入力装置(指紋読取装置、虹彩読取装置、静脈読取装置、顔型解析装置など);聴覚情報からなる個人認証情報を入力するための音声入力装置。
【0086】
眼科撮影装置1を2人以上の被検者が共用する場合、各被検者についての正規個人認証情報が記憶部112にあらかじめ記憶される。
【0087】
(画像形成部120)
画像形成部120は、CCDイメージセンサ23からの検出信号に基づいて、被検眼Eの2次元断面像の画像データを形成する。この処理には、従来のスペクトラルドメインタイプのOCTと同様に、ノイズ除去(ノイズ低減)、フィルタ処理、分散補償、FFT(Fast Fourier Transform)などの処理が含まれている。他のタイプのOCTが適用される場合、画像形成部120は、そのタイプに応じた公知の処理を実行する。
【0088】
画像形成部120は、たとえば、専用の回路基板および/またはマイクロプロセッサを含んで構成される。なお、この明細書では、「画像データ」と、それに基づく「画像」とを同一視することがある。
【0089】
(データ処理部130)
データ処理部130は、各種のデータ処理を実行する。たとえば、データ処理部130は、画像形成部120により形成された画像に対して画像処理を施す。その一例として、データ処理部130は、断面位置が異なる複数の2次元断面像に基づいて、被検眼Eの3次元画像の画像データを形成することができる。3次元画像の画像データとは、3次元座標系により画素の位置が定義された画像データを意味する。3次元画像の画像データとしては、3次元的に配列されたボクセルからなる画像データがある。この画像データは、ボリュームデータ或いはボクセルデータなどと呼ばれる。ボリュームデータに基づく画像を表示させる場合、データ処理部130は、このボリュームデータに対してレンダリング処理(ボリュームレンダリングやMIP(Maximum Intensity Projection:最大値投影)など)を施して、特定の視線方向から見たときの擬似的な3次元画像の画像データを形成する。また、データ処理部130は、3次元画像の任意の断面を画像化することができる(MPR(Multi−Planar Reconstruction):断面変換)。
【0090】
また、3次元画像の画像データとして、複数の断面像のスタックデータを形成することも可能である。スタックデータは、複数の走査線に沿って得られた複数の断面像を、走査線の位置関係に基づいて3次元的に配列させることで得られる画像データである。すなわち、スタックデータは、元々個別の2次元座標系により定義されていた複数の断面像を、1つの3次元座標系により表現する(つまり1つの3次元空間に埋め込む)ことにより得られる画像データである。データ処理部130は、スタックデータに基づくMPR処理を行うことが可能である。
【0091】
データ処理部130は、たとえば、マイクロプロセッサ、RAM、ROM、ハードディスクドライブ、所定のデータ処理専用の回路基板などを含んで構成される。ハードディスクドライブ等の記憶装置には、後述のデータ処理をマイクロプロセッサに実行させるコンピュータプログラムがあらかじめ格納されている。
【0092】
データ処理部130は、検査データ生成部131と、静止判定部132と、左右判定部133と、認証処理部134と、監視処理部135とを有する。
【0093】
(検査データ生成部131)
検査データ生成部131は、光学ユニット10による干渉光の検出結果を処理することにより、被検眼Eの状態を示す検査データを生成する。検査データ生成部131は処理部の一例である。検査データ生成部131が処理する「干渉光の検出結果」は、たとえば次のいずれかである:(1)CCDイメージセンサ23から出力される信号;(2)画像形成部120により形成された画像データ;(3)画像形成部120が実行する処理の中間段階で得られるデータ(つまり、画像データ形成処理の途中で得られるデータ);(4)CCDイメージセンサ23から出力される信号を画像形成部120以外の構成要素によって処理して得られるデータ。
【0094】
検査データ生成部131が実行する処理の例を説明する。第1の例として、検査データ生成部131は、光学ユニット10による干渉光の検出結果に基づいて眼底Efの層厚情報を生成することができる。この場合、検査データ生成部131は、層厚情報生成部として機能し、前述の眼底層厚解析(網膜厚解析、RNFL厚解析など)を実行する。さらに、検査データ生成部131は、眼底層厚解析により取得された層厚情報と標準的な層厚値との比較解析を行うことが可能である。
【0095】
眼底層厚解析は、干渉光の検出結果に基づいて、眼底Efの所定の層組織の厚さ(分布)を求める処理である。その一例として網膜厚解析について説明する。他の層組織の厚さを求める場合も同様の処理が実行される。
【0096】
網膜厚解析では、たとえば眼底Efの断面像や3次元画像を解析することにより、当該スキャン範囲の一部または全部における網膜の厚さ分布を求める。なお、網膜厚には様々な定義がある。たとえば、内境界膜から内顆粒層(視細胞の内接・外接)までの厚さを網膜厚とする場合、内境界膜から網膜色素上皮層までの厚さを網膜厚とする場合などがある。網膜厚解析で求める網膜厚はこのような定義のうちのいずれかである。
【0097】
網膜厚解析は、たとえば次のようにして実行される。まず、眼底EfのOCT画像を解析して、所定の境界部位(たとえば内境界膜と網膜色素上皮層)に相当する画像領域を特定する。そして、特定された境界部位の間の画素数をカウントして網膜厚(深度方向の距離)を求める。なお、OCT画像を解析して眼底の層の厚さを求める処理は、たとえば本出願人による特開2007−325831号公報、特開2008−206684号公報、特開2009−61203号公報、特開2009−66015号公報などに説明されている。
【0098】
網膜厚の比較解析は、網膜厚解析により求められた網膜厚と、あらかじめ記憶された標準データ(Normative data)とを比較する解析処理である。Normative dataは、健常眼の網膜厚の標準値(標準厚)である。Normative dataは、健常眼の網膜厚を多数計測し、その計測結果の統計値(平均値、標準偏差など)を求めることにより作成される。比較解析は、被検眼Eの網膜厚が健常眼のそれの範囲に含まれるか否か判定するものである。なお、比較解析は、疾患のある眼における網膜厚の範囲を求め、網膜厚解析により得られた網膜厚が当該範囲に含まれるか否か判定する処理であってよい。
【0099】
検査データ生成部131はドルーゼン解析を実行できるように構成されていてよい。ドルーゼン解析は、たとえばOCT画像を解析することにより、そのスキャン範囲の一部または全部におけるドルーゼンの分布状態を求める解析処理である。この分布状態には、眼底Efにおけるドルーゼンの位置やサイズ(面積、体積、径)などが含まれる。
【0100】
ドルーゼン解析は、たとえば、OCT画像を解析してブルッフ膜に相当する画像領域と網膜色素上皮に相当する画像領域とを特定し、これら画像領域の間の画素値に基づいて小さな略円形の隆起形状に相当する画像領域をドルーゼン(の候補)として特定することにより実行できる。このような形状に基づく画像領域の特定処理は、たとえば、当該形状のテンプレートとの画像マッチングによって行うことが可能である。さらに、検査データ生成部131は、このようにして特定されたドルーゼンに相当する画像領域に基づいて、ドルーゼンの位置、個数、サイズなどを求める。また、取得されたドルーゼンの分布にもとづいて、加齢黄斑変性症の状態の評価情報を生成することができる。
【0101】
なお、前述の正面画像取得光学系が設けられている場合であって、眼底Efの撮影が可能である場合には、眼底Fの撮影画像に基づいてドルーゼン解析を行うことができる。このドルーゼン解析は、たとえば、撮影画像の各画素の画素値が所定範囲に含まれるか判定し、所定範囲に含まれる画素を特定することにより実行される。撮影画像がカラー画像である場合、ドルーゼンは特徴的な色(黄白色)で描写されるので、この特徴的な色に相当する画素値の範囲が上記所定範囲としてあらかじめ設定される。また、撮影画像がモノクロ画像である場合、ドルーゼンは特徴的な明るさ(輝度)で描写されるので、この特徴的な輝度に相当する画素値の範囲が上記所定範囲としてあらかじめ設定される。また、ドルーゼンの標準的な形状(小さな略円形の隆起形状)に基づくテンプレートマッチングなどを行うことによって、ドルーゼンに相当する画像領域を特定することも可能である。
【0102】
乳頭形状解析は、眼底Efの断面像や3次元画像を解析して網膜の孔部(切れ目、欠損部位)を検出し、視神経乳頭の形状を求める解析処理を含んでいてよい。乳頭形状解析は、たとえば、断面像等を解析して視神経乳頭及びその近傍の網膜表面に相当する画像領域を特定し、特定された画像領域を解析してその大域的形状や局所的形状(凹凸)を表すパラメータ(乳頭形状パラメータ)を求める。乳頭形状パラメータの例として、視神経乳頭のカップ径、ディスク径、リム径、乳頭深さなどがある。
【0103】
また、乳頭形状解析は、視神経乳頭の傾き(形状の非対称性)を求める解析処理を含んでいてよい。この解析処理は、たとえば次のようにして実行される。まず、検査データ生成部131は、視神経乳頭を含む領域をスキャンして得られた3次元画像を解析して乳頭中心を特定する。次に、検査データ生成部131は、乳頭中心を中心とする円形領域を設定し、この円形領域を放射状に分割して複数の部分領域を得る。続いて、検査データ生成部131は、円形領域の断面像を解析することで、各ピクセル位置における所定層(たとえば網膜色素上皮層)の高さ位置を求める。さらに、検査データ生成部131は、各部分領域における所定層の高さ位置の平均値を算出する。次に、検査データ生成部131は、乳頭中心に関して対向位置に相当する一対の部分領域について得られた一対の平均値を比較することにより、この対向方向における眼底Efの傾斜を求める。そして、検査データ生成部131は、複数の対向方向について得られた傾斜に基づいて、上記円形領域における眼底Efの傾斜の分布を示す傾斜分布情報を生成する。なお、生成された傾斜分布情報(およびその標準的な分布を示す情報)に基づいて、疾患の状態の評価情報を生成することができる。
【0104】
以上に説明した検査データはOCT計測の結果に基づくものであるが、検査データは他の検査の結果を含んでいてもよい。その一例として、フラットパネルディスプレイ25が自覚式視力検査用の視標(ランドルト環など)を表示可能である場合、検査データ生成部131は、自覚式視力検査の結果を含む検査データを生成することが可能である。
【0105】
自覚式視力検査は、被検眼Eに提示された視標に対して被検者が応答することによって行われる。検査データ生成部131は、所定のコンピュータプログラムにしたがい、被検者の応答の正否を判定する処理と、その判定結果に応じて次に提示される視標を決定する処理とを繰り返し行う。主制御部111は、検査データ生成部131により決定された視標をフラットパネルディスプレイ25に表示させる。このような処理を繰り返し行うことにより、検査データ生成部131は被検眼Eの視力値を決定し、この視力値を含む検査データを生成する。
【0106】
(静止判定部132)
静止判定部132は、光学ユニット10により取得されるデータに基づいて被検眼Eが実質的に静止しているか否か判定する(静止判定処理)。「実質的に静止している」には、被検眼Eが静止している場合だけでなく、OCT計測に影響を与えない程度の動きを被検眼Eが行なっている場合も含まれる。この動きの許容範囲は、あらかじめ任意に設定される。
【0107】
静止判定処理の例を説明する。第1の例として、測定光の戻り光の強度に基づく静止判定処理がある。測定光の戻り光の強度は、アライメントが合っている状態において最大となる(角膜からの正反射が最大となるため)。戻り光の強度の検出は、たとえば、戻り光の一部をフォトディテクタ等で検出することによって得られる。静止判定部132は、戻り光の強度の時間変化に基づいて、被検眼Eが実質的に静止しているか判定することができる。また、戻り光の強度は干渉光の強度に影響するので、CCDイメージセンサ23からの信号の強度の時間変化に基づいて静止判定を行うことも可能である。
【0108】
第2の例として、前述の正面画像取得光学系が設けられている場合には、次のような静止判定処理を実行することが可能である。まず、正面画像取得光学系を用いて被検眼Eを動画撮影する。それにより、所定の時間間隔で被検眼Eの正面画像(フレーム)が得られる。静止判定部132は、逐次に入力される正面画像を解析し、被検眼Eの特徴部位を検出する。この特徴部位は、前眼部像においてはたとえば瞳孔(またはその中心)であり、眼底像においてはたとえば視神経乳頭(またはその中心)、黄斑(またはその中心)、血管、疾患部である。さらに、静止判定部132は、時系列で入力される正面画像における特徴部位の位置の変化を監視することにより、被検眼Eが実質的に静止しているか判定することができる。
【0109】
(左右判定部133)
左右判定部133は、被検眼Eが左眼であるか右眼であるか判定する(左右判定処理)。左眼判定処理は、眼科撮影装置1を用いて左右両眼の検査を行う場合に実行される。左右いずれか一方の眼の検査のみ行う場合、たとえば、検査対象の眼が左眼であるか右眼であるかを示す情報が記憶部112にあらかじめ記憶される。
【0110】
なお、一方の眼のみが検査対象である場合であっても、誤って他方の眼の検査を行なってしまう事態を防止するために、左右判定処理を行なってもよい。つまり、たとえば左眼が検査対象として設定されている場合において、左右判定処理を行った結果、被検眼Eが右眼であると判定されたときに、所定の報知情報を出力するように構成することができる。この報知情報は、たとえば、表示部210若しくはフラットパネルディスプレイ25による表示情報、または図示しない音声出力部による聴覚情報である。また、測定光が可視成分を含んでいる場合においては、測定光を点滅させるなどして報知を行うことが可能である。
【0111】
左右判定処理の例を説明する。第1の例として、ユニット駆動部10Aに対する制御状態に基づく左右判定処理がある。本例は、左眼を検査するときと、右眼を検査するときとで、光学ユニット10の位置が異なる構成が適用される場合に用いられる。前述のように、光学ユニット10は、主制御部111がユニット駆動部10Aを制御することによって移動される。主制御部111は、ユニット駆動部10Aを制御する度に、その制御内容を左右判定部133に送信する。左右判定部133は、主制御部111から入力される制御内容に基づいて、光学ユニット10が左眼を検査するための位置に配置されているか、または右眼を検査するための位置に配置されているか判定する。なお、左眼を検査するための位置の範囲、および、右眼を検査するための位置の範囲は、それぞれあらかじめ設定されている。
【0112】
第2の例として、前述の正面画像取得光学系が設けられている場合には、正面画像を解析することによって左右判定処理を行うことが可能である。正面画像が前眼部像である場合、たとえば瞼の形状に基づいて目頭側および目尻側を特定でき、それにより被検眼Eが左眼か右眼かを判定することが可能である。また、正面画像が眼底像である場合、視神経乳頭の位置、黄斑の位置、視神経乳頭と黄斑との位置関係、血管の走行状態などによって、被検眼Eが左眼か右眼かを判定することができる。
【0113】
上記のように、左右判定部133は、被検眼Eが左眼であるか右眼であるかを自動で判定する機能を有する。この判定結果は制御部110に入力される。左右判定部133は、被検眼Eが左眼であるか右眼であるかを示す情報を制御部110に入力する第1の入力部として機能する。一方、このような自動判定機能を設けないことも可能である。たとえば、被検眼Eが左眼であるか右眼であるかを、被検者(または補助者)が操作部220を介して入力する。この場合、操作部220が第1の入力部に相当する。
【0114】
(認証処理部134)
前述したように、制御部110は、第2の入力部から個人認証情報の入力を受ける。制御部110は、入力された個人認証情報を、記憶部112に記憶されている正規個人認証情報とともに認証処理部134に送る。認証処理部134は、この個人認証情報と正規個人認証情報とが一致するか判定する。認証処理部134は、その判定結果を制御部110に送る。
【0115】
なお、眼科撮影装置1を2以上の被検者が共用する場合、つまり2人以上の正規の被検者が存在する場合、前述したように、各被検者の正規個人認証情報が記憶部112に記憶されている。制御部110は、個人認証情報の入力を受けたときに、記憶部112に記憶されている全ての正規個人認証情報を、入力された個人認証情報とともに認証処理部134に送る。認証処理部134は、入力された個人認証情報が、これら正規個人認証情報のいずれかに一致するか判定する。換言すると、認証処理部134は、入力された個人認証情報に一致する正規個人認証情報を探索する。
【0116】
(監視処理部135)
監視処理部135は、眼科撮影装置1の所定部位の動作状態を監視する。たとえば、監視処理部135は、眼科撮影装置1の所定部位の誤動作、破損、故障などを検出する。或いは、監視処理部135は、眼科撮影装置1の所定部位について、誤動作、破損、故障のおそれがあることを検出する。その具体例として、監視処理部135は、累積動作時間を計測し、その計測結果が所定の閾値を超えたことを検出する。
【0117】
監視対象となる眼科撮影装置1の部位は、任意のハードウェアおよび/または任意のソフトウェアを含んでいてよい。ハードウェアとしては、マイクロプロセッサ、RAM、ROM、ハードディスクドライブ、通信インターフェイス、光源、光学素子、受光素子、アクチュエータ、機構、ケーブルなどがある。ソフトウェアとしては、装置制御用のコンピュータプログラム、データ処理用のコンピュータプログラムなどがある。
【0118】
所定部位の動作状態の監視方法の例を説明する。監視処理部135は、監視対象のハードウェアに関する物理量を検出し、その検出値が許容範囲に属するか判定することによって、当該ハードウェアに異常が発生しているか判定する。このような処理の例として次のものがある:熱を検出し、所定の温度以上であるか判定する;機構が発する音を検出し、その周波数等によって異常音であるか否か判定する;エンコーダ等によりハードウェアの変位を検出し、機構の異常動作やガタツキが発生しているか否か判定する。
【0119】
監視方法の他の例として、所定のデータをマイクロプロセッサに入力し、処理されたデータが正常であるか否かによって、マイクロプロセッサが正常に動作しているか否か、或いはコンピュータプログラムが正常であるか否かを判定することができる。
【0120】
(通信部140)
通信部140は、外部装置との間でデータ通信を行う。データ通信の方式は任意である。たとえば、通信部140は、インターネットに準拠した通信インターフェイス、LANに準拠した通信インターフェイス、近距離通信に準拠した通信インターフェイスなどを含む。また、データ通信は有線通信でも無線通信でもよい。
【0121】
通信部140は、通信回線2000を介して、あらかじめ規定された外部コンピュータ1000との間でデータ通信を行う。なお、外部コンピュータ1000は、1つ以上の任意の個数設けられる。外部コンピュータ1000としては、医療機関に設置されたサーバ、医師が使用する端末、眼科撮影装置1のメーカ(または、販売会社、メンテナンス事業者、若しくはレンタル事業者など)のサーバ、メーカ等の担当者が使用する端末などがある。
【0122】
通信部140による送受信されるデータは暗号化されていてもよい。その場合、制御部110(またはデータ処理部130)は、送信データを暗号化する暗号化処理部と、受信データを復号する復号化処理部とを有する。
【0123】
[動作]
実施形態に係る眼科撮影装置1の動作について説明する。
【0124】
眼科撮影装置1の動作例を
図3Aおよび
図3Bに示す。この動作例において、眼科撮影装置1は、医療機関等において設定が施された後、被検者の自宅等に設置されて使用される。眼科撮影装置1の操作は被検者(またはその補助者)によって行われる。
図3Aは、眼科撮影装置1が被検者の自宅等に設置されるまでの流れを示している。
図3Bは、眼科撮影装置1の設置から返却まで流れ、特に被検者の自宅等における眼科撮影装置1の使用形態を示している。
【0125】
(S1:設定用アプリケーションを起動する)
まず、医療機関等において眼科撮影装置1の動作に関する設定が行われる。そのために、設定用のアプリケーションプログラムが起動される。このアプリケーションプログラムは、眼科撮影装置1または外部コンピュータ1000にインストールされている。前述のように、設定作業は眼科撮影装置1または外部コンピュータ1000を用いて行われる。アプリケーションプログラムは、設定作業のために用いられる装置にインストールされている。
【0126】
(S2:所定項目の設定内容を入力する)
医師等は、たとえば前述の要領で、光学ユニット10およびデータ処理部130に関する所定の項目の設定内容を入力する。
【0127】
(S3:設定情報を作成する)
主制御部111は、たとえば前述の要領で、ステップS2において入力された設定内容を含む設定情報を作成する。
【0128】
(S4:設定情報を記憶する)
主制御部111は、たとえば前述の要領で、ステップS3で作成された設定情報を記憶部112に記憶させる。設定情報には、たとえば、固視位置の設定内容、スキャンパターンの設定内容、合焦位置の設定内容、視度補正の設定内容、解析処理の設定内容などが含まれる。
【0129】
(S5:被検者の自宅等に装置が設置される)
ステップS4における設定情報の記憶が完了した後、眼科撮影装置1は被検者の自宅等に搬送される。そして、眼科撮影装置1は、被検者の自宅等に設置される。このとき、眼科撮影装置1を安定的に設置するための取付具などを用いることができる。次のステップから
図3Bを参照する。
【0130】
(S11:検査開始)
検査開始の指示を行う。この指示は、たとえば、電源オン操作、検査開始ボタンの押下、個人認証情報の入力などである。
【0131】
個人認証情報の入力が行われる場合、たとえば前述の要領で個人認証情報の入力が行われる。認証処理部134は、入力された個人認証情報と、記憶部112にあらかじめ記憶された正規個人認証情報とが一致するか判定する。認証処理部134は、その判定結果を制御部110に送る。入力された個人認証情報と正規個人認証情報とが一致している場合、検査に移行する。一方、入力された個人認証情報と正規個人認証情報とが一致していない場合、主制御部111は、個人認証情報の再入力を促すメッセージを、表示によりまたは音声により出力する。主制御部111は、不一致との判定が所定回数(たとえば3回)に達するまでメッセージの出力を繰り返す。不一致との判定が所定回数を超えた場合、主制御部111は、眼科撮影装置1による検査を禁止する。さらに、主制御部111は、通信部140を制御し、検査が禁止されたこと(認証エラーが生じたこと)を示す情報を外部コンピュータ1000に送信する。医師やメーカの担当者は、外部コンピュータ1000を介して認証エラーが生じたことを認識し、検査の禁止を解除するための所定の作業を行う(電話にて確認するなど)。また、検査の禁止を解除するための処理を外部コンピュータ1000が行うように構成してもよい。たとえば、外部コンピュータ1000は、被検者等が所有する携帯端末やコンピュータに個人確認用の情報を送信する。この情報に基づきパスワード入力が行われる。外部コンピュータ1000は、入力されたパスワードの正否に基づいて、入力した者が正規の被検者であるか否か判定する。入力した者が正規の被検者であると判定された場合、外部コンピュータ1000は、検査の禁止を解除するための情報を眼科撮影装置1に送る。主制御部111は、外部コンピュータ1000から受信した情報に基づいて、検査の禁止を解除する。
【0132】
(S12:第1回目の検査か?)
ステップS11にて検査開始の指示が受け付けられると、主制御部111は、今回の検査が、被検者の自宅等に眼科撮影装置1が設置されてから第1回目の検査であるか判定する。この処理は、たとえば、検査が行われる度にその履歴(ログ)を記憶部112に保存する構成を適用し、かつ、自宅等への設置前に検査履歴(検査ログ)をリセットしておくことにより実現できる。今回の検査が第2回目以降の検査であると判定された場合(S12:NO)、ステップS13をスキップしてステップS14へ移行する。一方、今回の検査が第1回目の検査であると判定された場合(S12:YES)、ステップS13に移行する。
【0133】
(S13:設定情報に基づき各部を設定する)
ステップS12において今回の検査が第1回目の検査であると判定された場合(S12:YES)、主制御部111は、ステップS4で記憶部112に記憶された設定情報に基づいて、光学ユニット10およびデータ処理部130に含まれる該当部分の設定を行う。この処理は、たとえば次の動作のうちのいずれかを含む:固視位置の設定内容に基づく、フラットパネルディスプレイ25における固視標(自覚式検査用の視標でもよい)の表示位置の設定;スキャンパターンの設定内容に基づく、スキャナ16の制御内容の設定;合焦位置の設定内容に基づく、対物レンズ19の移動制御;視度補正の設定内容に基づく、視度補正レンズ27の移動制御;最大干渉深度の設定内容に基づく、参照ミラー14の移動制御;解析処理の設定内容に基づく、検査データ生成部131の動作内容(つまり、使用されるコンピュータプログラム)の選択。
【0134】
なお、
図3Bに示す処理の流れから分かるように、ステップS23において設定情報が変更または破棄されるまでの間に行われる各回の検査において、ステップS13で行われた設定がそのまま適用される。
【0135】
また、ステップS4に示す設定情報の記憶処理よりも後の任意のタイミングにおいて、設定情報に基づく各部の設定処理を行うことが可能である。たとえば、被検者の自宅等に眼科撮影装置1を搬送する前に当該設定処理を行うことも可能である。しかし、この動作例では、搬送時に設定にズレが生じることを考慮し、搬送後に設定処理を行なっている。なお、搬送時にズレが生じるおそれがあるのは特に光学素子の配置であるから、それ以外の設定(固視位置の設定、スキャンパターンの設定、解析処理の設定)を搬送前に行うようにしてもよい。
【0136】
また、ステップS13の設定に加えて、オートアライメント、オートフォーカス(
合焦位置の微調整)、オートトラッキング、最大干渉深度の微調整、光量調整、偏光調整などを行なってもよい。オートアライメント、オートフォーカス、およびオートトラッキングは、前述の要領で実施される。最大干渉深度の微調整は、たとえば、ラインスキャンを繰り返し実行し、それにより得られる断面像の動画像から眼底Efの所定部位(眼底表面、網膜神経線維層など)の位置を特定し、この所定部位がフレームの所定位置に配置されるように参照ミラー14の位置を調整することにより行われる。また、光量調整は光減衰器を制御する事により行われ、偏光調整は偏波調整器を制御することにより行われる。
【0137】
(S14:自覚式視力検査を開始する)
この動作例では、被検眼Eの検査としてOCT計測と自覚式視力検査が行われる。より具体的には、自覚式視力検査の途中の段階でOCT計測を実行する。主制御部111は、まず、自覚式視力検査を開始する。すなわち、あらかじめ決定された検眼プログラムに基づいて最初の視標が提示される。
【0138】
このとき、主制御部111は、設定情報に含まれる固視位置の設定内容に基づくフラットパネルディスプレイ25の表示位置に、自覚式視力検査用の視標を表示させることができる。たとえば、円環の一部が欠損した形状のランドルト環が視標として用いられる場合、固視位置の設定内容に対応する位置に当該欠損部位が配置されるようにランドルト環を表示させることができる。より一般に、視標のうち被検者が特に注目する部分が固視位置の設定内容に対応する位置に配置されるように、フラットパネルディスプレイ25に視標を表示させることができる。それにより、OCT計測を行うための固視標としての機能を自覚式視力検査用の視標に付与することができる。
【0139】
(S15:被検眼が静止した?)
自覚式視力検査の開始を受けて、主制御部111は、被検眼Eの静止判定処理を開始させる。この静止判定処理は、たとえば前述の要領で、静止判定部132などによって実行される。静止判定処理は、少なくとも、被検眼Eが実質的に静止していると判定されるまで実行される(S15:NO)。被検眼Eが実質的に静止していると判定されたら(S15:YES)、ステップS16に移行する。
【0140】
自覚式視力検査の開始から所定時間経過しても被検眼Eが静止したと判定されない場合、或いは、自覚式視力検査が所定の段階まで進んでも被検眼Eが静止したと判定されない場合などにおいて、警告を行うことができる。この警告は、たとえば、主制御部111が、上記のような警告タイミングの到来を検知し、表示部210または音声出力部を制御することによって行われる。
【0141】
この動作例では自覚式視力検査の途中の段階でOCT計測を行なっているが、これら検査を行うタイミングは任意である。たとえば、自覚式視力検査の終了後にOCT計測を行うように、または、OCT計測を行った後に自覚式視力検査を行うように、制御を行うことが可能である。
【0142】
(S16:OCT計測を行う)
ステップS15において被検眼Eが実質的に静止していると判定されたこと(S15:YES)に対応し、主制御部111は、光学ユニット10に被検眼EのOCT計測を実行させる。このOCT計測は、設定情報に含まれる設定内容(たとえば固視位置の設定内容、スキャンパターンの設定内容、合焦位置の設定内容、視度補正の設定内容)にて実行される。
【0143】
(S17:解析処理を行う)
検査データ生成部131は、OCT計測により取得されたデータに基づいて解析処理を実行する。この解析処理は、設定情報に含まれる解析処理の設定内容に基づいて行われる。具体的には、眼底層厚解析、ドルーゼン解析、乳頭形状解析などが行われる。
【0144】
(S18:自覚式視力検査を終了する)
ステップS14で開始された自覚式視力検査において、被検眼Eの視力値は、検眼プログラムに応じて逐次に提示される視標に対する被検者の応答に基づいて決定される。視力値の決定とともに自覚式視力検査は終了となる。よって、自覚式視力検査の終了タイミングは、ステップS14より後の任意のタイミングである。
【0145】
(S19:検査データを生成する)
検査データ生成部131は、解析処理により取得されたデータと、自覚式視力検査により取得されたデータとを含む検査データを生成する。
【0146】
(S20:検査データを送信する)
主制御部111は、通信部140を制御し、ステップS19で生成された検査データを外部コンピュータ1000に向けて送信させる。
【0147】
検査日時、被検者および/または被検眼Eの識別情報、眼科撮影装置1の識別情報などの付帯情報を、検査データとともに送信してもよい。なお、検査日時は、主制御部111(システムソフトウェア)に搭載された日時・時刻機能によって得られる。また、外部コンピュータ1000などから日時・時刻情報の提供を受けてもよい。各種識別情報は、事前に記憶部112に記憶されている。
【0148】
(S21:検査終了)
ステップS20において検査データが送信されたら、今回の検査は終了となる。被検者は、電源オフなどの操作を行う。
【0149】
(S22:装置を返却するか?)
以上のような検査が、眼科撮影装置1の返却まで繰り返し行われる(S22:NO)。装置の返却は、たとえば、自宅等での検査(経過観察等)の終了、装置の交換、装置のメンテナンス、設定情報の変更などを理由として行われる。装置の返却の決定を受けて(S22:YES)、眼科撮影装置1は医療機関やメーカ等に搬送される。
【0150】
(S23:設定情報を変更/破棄する)
医療機関の医師やメーカ等の担当者は、ステップS4において眼科撮影装置1に記憶された設定情報を変更または破棄する。以上で、この動作例の説明は終了となる。
【0151】
(他の動作例)
眼科撮影装置1の他の動作例について、上記動作例との相違点を中心に説明する。
【0152】
被検者は、所定の時間間隔(たとえば毎日、隔日)で検査を行うように医師等から指示を受ける。この時間間隔またはそれより長い期間(まとめて「所定の期間」と称する)を示す情報が記憶部112にあらかじめ記憶される。主制御部111は、自宅等で実際に行われた検査の間隔をモニタする。この処理は、たとえば前述の検査履歴(検査ログ)を参照して行われる。検査が所定の期間行われなかった場合、つまり検査データの生成が所定の期間実行されなかったとき、主制御部111は、通信部140を制御し、外部コンピュータ1000に報知情報を送信する。この報知情報は、検査が所定の期間行われなかったことを示す情報を含む。
【0153】
左眼と右眼の双方の検査を自宅等で行う場合がある。その場合、設定情報には、左眼用設定情報と右眼用設定情報とが含まれる。つまり、
図3AのステップS2において両眼に関する設定内容がそれぞれ入力され、ステップS3において両眼の設定内容を含む設定情報が作成され、ステップS4において両眼の設定内容を含む設定情報が記憶部112に記憶される。また、ステップS11において被検眼Eが左眼であるか右眼であるかを示す情報が、第1の入力部(左右判定部133または操作部220)から主制御部111に入力される。主制御部111は、入力された情報に基づいて左眼用設定情報および右眼用設定情報の一方を選択し、選択された設定情報に基づいてステップS13の設定処理を行う。また、当該設定情報に基づく左眼または右眼の検査の終了(ステップS18)を受けて、主制御部111は、検査対象の眼を切り替える旨のメッセージ(視覚情報または聴覚情報)を出力させる。また、左右両眼をそれぞれ受け入れる双眼アイピースが設けられている場合、主制御部111は、光学ユニット10を制御し、視標の提示対象および測定光の照射対象を切り替えるための動作を実行させる。この切り替え動作は、たとえば、ミラー、偏光素子、波長選択素子などを駆動して、光束の案内先を左眼用アイピースと右眼用アイピースとの間で切り替えるものである。両眼の検査が終了したら、ステップS19において両眼の検査結果を含む検査データが生成され、ステップS20においてこの検査データが外部コンピュータ1000に送信され、今回の検査は終了となる(S21)。
【0154】
眼科撮影装置1を2人以上の被検者が共用する場合がある。その場合、被検者ごとの設定情報が記憶部112に記憶される。つまり、
図3AのステップS2において各被検者に関する設定内容がそれぞれ入力され、ステップS3において各被検者の設定情報が作成され、ステップS4において各被検者の設定情報が記憶部112に記憶される。また、記憶部112には、各被検者の正規個人認証情報が記憶される。ステップS11において個人認証情報の入力が行われる。主制御部111は、入力された個人認証情報と一致する正規個人認証情報を探索し、その正規個人認証情報に対応する設定情報を特定する。そして、主制御部111は、特定された設定情報に基づいてステップS13の設定処理を行う。
【0155】
眼科撮影装置1により取得された検査データを装置内部に蓄積することができる。具体的には、ステップS19より後のタイミングで、主制御部111は、ステップS19で生成された検査データを記憶部112に記憶させる。このとき、検査データに検査日時を対応付けて記憶させることができる。また、被検眼Eが左眼であるか右眼であるか示す情報や、被検者の識別情報を、検査データに対応付けて記憶させることもできる。
【0156】
眼科撮影装置1の動作状態の異常が検出されたことを報知することができる。動作状態の異常の検出は、監視処理部135によって行われる。第1の報知方法は、外部コンピュータ1000を介した報知である。すなわち、監視処理部135により動作状態の異常が検出されたときに、主制御部111は、異常発生を示す情報を外部コンピュータ1000に送信するように通信部140の制御を行う。第2の報知方法は、被検者に対する報知である。すなわち、監視処理部135により動作状態の異常が検出されたときに、主制御部111は、異常発生を示す報知情報(視覚情報および/または聴覚情報)を出力するように表示部210および/または音声出力部を制御する。表示部210や音声出力部は情報出力部の例である。このような報知処理は、任意のタイミングで実行される。検査を行なっているときに異常が検出された場合、即時に報知処理を行なってもよいし、検査の終了後に報知処理を行なってもよい。また、異常の発生部位に応じて報知方法や報知タイミングを違えるようにしてもよい。たとえば、光学ユニット10の異常が検出された場合、主制御部111は、検査中であれば検査を中断し、かつ、外部コンピュータ1000および被検者の双方に即時に報知を行う。また、解析処理に関する部分の異常が検出された場合、主制御部111は、解析処理の前段階(OCT計測、自覚式視力検査)まで処理を実行させた後に、取得されたデータとともに報知情報を外部コンピュータ1000に送信する。
【0157】
[効果]
眼科撮影装置1は、実施形態に係る眼科撮影装置の一例である。以下、実施形態に係る眼科撮影装置の効果について説明する。
【0158】
眼科撮影装置は、光学系(たとえば光学ユニット10)と、処理部(たとえば検査データ生成部131)と、出力部(たとえば表示部210および/または通信部140)と、インターフェイス部(たとえば通信部140および/またはユーザインターフェイス200)と、記憶部(たとえば記憶部112)と、制御部(たとえば主制御部111)とを有する。
【0159】
光学系は、光源(たとえば光源11)からの光を測定光と参照光とに分割し、被検眼を経由した測定光を参照光と干渉させ、それにより得られた干渉光を検出する。処理部は、光学系による干渉光の検出結果を処理することにより、被検眼の状態を示す検査データを生成する。インターフェイス部は、処理部により生成された検査データを出力する。インターフェイス部は、光学系および処理部に関する所定の項目の設定を行うために用いられる。記憶部は、インターフェイス部を介して行われた設定の内容を示す設定情報を記憶する。制御部は、設定情報が変更または破棄されるまでの間に実行される複数回の検査のそれぞれにおいて、設定情報に示される設定の内容に基づき光学系および処理部を制御する。
【0160】
このような眼科撮影装置によれば、装置の動作内容を規定する設定情報が一旦設定されると、この設定情報が変更または破棄されるまでの間、この設定情報に基づいて検査が実行される。このような構成は、医療機関に設置されて被検眼がランダムに切り替わることを想定した従来の眼科撮影装置とは異なっている。また、あらかじめ作成された設定情報に基づいて各回の検査が実行されるので、面倒な設定操作や調整操作を検査の度に実施する必要がない。したがって、実施形態に係る眼科撮影装置によれば装置に関する知識や経験を有しない者であっても容易に検査を行うことが可能である。
【0161】
実施形態に係る眼科撮影装置は、上記のようなOCT計測機能だけでなく、自覚式視力検査機能を有していてよい。その場合、光学系は、制御部による制御を受けて視力検査用の視標を表示するフラットパネルディスプレイ(たとえばフラットパネルディスプレイ25)を含む。光学系は、このフラットパネルディスプレイから出力された光束を被検眼に導くことにより視標を被検眼に提示する。さらに、実施形態に係る眼科撮影装置は、光学系により提示された視標に対する被検者の応答を入力するための操作部(たとえば操作部220)を有する。処理部は、操作部を用いて入力された応答の内容に基づき被検眼の視力値を求め、この視力値を含む検査データを生成する。
【0162】
この検査データは、OCT計測に基づく検査結果と、自覚式視力検査の結果の一方または双方を含む。つまり、OCT計測のみが実施された場合には前者が検査データに含まれ、自覚式視力検査のみが実施された場合には後者が検査データに含まれ、OCT計測および自覚式視力検査が実施された場合には前者および後者が検査データに含まれる。
【0163】
このような構成によれば、OCT計測により得られる被検眼の形態的なデータだけでなく、自覚式視力検査による機能的なデータも取得することが可能である。したがって、被検眼の状態をより広い角度から検査することができる。加えて、このような検査を自宅等で行うことが可能である。よって、投薬等の医療行為をより適切なタイミングで行うことを可能にする。
【0164】
設定情報は、固視位置についての設定内容を含んでいてよい。その場合、制御部は、この固視位置についての設定内容に基づいて、被検眼を固視させるための固視標をフラットパネルディスプレイに表示させることができる。それにより、被検眼の目的の部位のOCT計測を行うことが可能である。なお、固視標は、自覚式視力検査用の視標でもよいし、固視専用の視標でもよい。
【0165】
制御部は、フラットパネルディスプレイに視標を表示させる制御を行なっているときに、光学系に干渉光を検出させる制御を実行することができる。つまり、自覚式視力検査を行なっている間に、OCT計測を実施することができる。それにより、検査時間の短縮を図ることができる。
【0166】
実施形態に係る眼科撮影装置は、光学的に取得されるデータに基づいて被検眼が実質的に静止しているか否か判定する静止判定部(たとえば静止判定部132)を有していてよい。その場合、静止判定部により被検眼が実質的に静止していると判定されたときに、制御部は、光学系に干渉光を検出させる制御を実行することができる。つまり、被検眼が実質的に静止しているタイミングでOCT計測を実施することができる。それにより、眼の動きに起因するOCT計測の失敗を防止することが可能である。
【0167】
光源が赤外光を出力し、かつ、フラットパネルディスプレイが可視光を出力するように構成することができる。その場合、光学系は、光源からの赤外光に基づく測定光の光路と、フラットパネルディスプレイから出力された可視光の光路とを合成するダイクロイックミラー(たとえばダイクロイックミラー18)を含み、このダイクロイックミラーを介して測定光および可視光を被検眼に導くように構成されていてよい。この構成によれば、OCT計測と視標の提示とを同軸の光学系で行うことができる。
【0168】
出力部は、医療機関に設置された第1のコンピュータ(たとえば外部コンピュータ1000)と通信回線(通信回線2000)を介して通信することが可能な第1の通信部(たとえば通信部140)を含んでいてよい。その場合、制御部は、処理部により生成された検査データと被検眼の識別情報とを第1のコンピュータに送信するように第1の通信部を制御することができる。この構成によれば、被検眼を明確に特定しつつ検査データを送信することが可能である。なお、被検眼の識別情報は、被検眼の識別が可能な形態を有する情報であればよく、たとえば被検者に付与された識別情報、被検眼に付与された識別情報、眼科撮影装置に付与された識別情報などであってよい。
【0169】
第1の通信部は、医療機関に設置された第2のコンピュータ(たとえば外部コンピュータ1000)と通信回線(たとえば通信回線2000)を介して通信することが可能であってよい。その場合、処理部による検査データの生成が所定の期間実行されなかったときに、制御部は、第2のコンピュータに報知情報を送信するように第1の通信部を制御することが可能である。この構成によれば、検査が予定通りに行われなかったことを医療機関側に報知することができる。それにより、検査を予定通りに行うように被検者に指示をすることができる。
【0170】
眼科撮影装置を用いて一被検者の両眼の検査が行われる場合において、両眼の設定情報を選択的に使用することができる。たとえば、実施形態に係る眼科撮影装置は、被検眼が左眼であるか右眼であるかを示す情報を制御部に入力する第1の入力部(たとえば操作部220または左右判定部133)を有する。記憶部には、設定情報として、一被検者の左眼に関する左眼用設定情報と、右眼に関する右眼用設定情報とが記憶される。制御部は、第1の入力部により入力された情報に基づいて左眼用設定情報および右眼用設定情報の一方を選択し、選択された設定情報に基づいて光学系および処理部の制御を実行することができる。この構成によれば、それぞれの眼に応じた好適な設定条件を用いて両眼の検査を行うことが可能である。
【0171】
検査を受けようとする眼が左右いずれの眼かを自動で判定することができる。たとえば、第1の入力部は、被検眼が左眼であるか右眼であるか判定し、その判定結果を制御部に入力する左右判定部(たとえば左右判定部133)を含んでいてよい。その場合、制御部は、左右判定部により入力された判定結果に基づいて左眼用設定情報および右眼用設定情報の一方を選択し、選択された設定情報に基づいて光学系および処理部の制御を実行することができる。この構成によれば、被検眼が左右いずれの眼であるかの設定を手動で行う必要がない。
【0172】
被検者を認証する機能を設けることができる。たとえば、記憶部は、眼科撮影装置を用いて検査を行うことが許可された正規の被検者に関する正規個人認証情報をあらかじめ記憶している。加えて、実施形態に係る眼科撮影装置は、個人認証情報を制御部に入力する第2の入力部(たとえば操作部220、読取装置、生体認証情報入力装置)と、入力された個人認証情報と正規個人認証情報とが一致するか判定する認証処理部(たとえば認証処理部134)とを有する。さらに、制御部は、認証処理部により個人認証情報と正規個人認証情報とが一致しないと判定された場合、光学系および処理部の動作を禁止することができる。一方、個人認証情報と正規個人認証情報とが一致すると判定された場合には、設定情報に基づいて光学系および処理部の制御を実行することにより検査が行われる。この構成によれば、正規の被検者のみが当該装置を用いて行うことができる。
【0173】
複数の被検者が眼科撮影装置を共用することが可能である。たとえば、記憶部には、2以上の正規の被検者のそれぞれについて、正規個人認証情報と設定情報とが関連付けられて記憶されている。認証処理部は、第2の入力部により入力された個人認証情報に一致する正規個人認証情報が記憶部に記憶されているか判定する。入力された個人認証情報に一致する正規個人認証情報が記憶されていると判定された場合、制御部は、この正規個人認証情報に関連付けられた設定情報に基づいて光学系および処理部の制御を実行する。この構成によれば、複数の被検者が眼科撮影装置を共用できるとともに、被検者ごとの設定情報を正確に使い分けて検査を行うことが可能である。
【0174】
光学系の設定情報は、スキャンパターンの設定内容を含んでいてよい。その場合、光学系は、測定光で被検眼をスキャンするためのスキャナ(たとえばスキャナ16)を含む。制御部は、OCT計測を実行するときに、設定情報に含まれるスキャンパターンについての設定内容に基づいてスキャナを制御することができる。この構成によれば、被検眼についてあらかじめ設定された好適なスキャンパターンを用いてOCT計測を行うことが可能である。
【0175】
光学系の設定情報は、OCT計測における合焦位置の設定内容を含んでいてよい。その場合、光学系は、測定光の合焦位置を変更するための合焦位置変更部を含む。制御部は、設定情報に含まれる合焦位置についての設定内容に基づいて合焦位置変更部を制御する。この構成によれば、被検眼についてあらかじめ設定された好適な合焦状態でOCT計測を行うことが可能である。
【0176】
合焦位置変更部は、光学系に設けられた合焦レンズ(たとえば対物レンズ19および/または他の合焦レンズ)と、この合焦レンズを光軸に沿って移動する第1の駆動部(たとえば鏡筒駆動部19B)とを有していてよい。この場合、設定情報は、合焦レンズの位置を示す情報を含む。制御部は、設定情報に示された位置に合焦レンズを配置させるように第1の駆動部を制御する。それにより、測定光の合焦位置の調整を自動で行うことができる。また、合焦レンズとして対物レンズ19が用いられる場合、光学系に設けられる光学素子の個数の減少、ひいては光学系の構成の簡素化を図ることができる。
【0177】
また、合焦位置変更部は、視度補正レンズ(たとえば視度補正レンズ27)と、この視度補正レンズを光学系に対して挿脱する第2の駆動部(たとえばレンズ駆動部27A)とを有していてよい。この場合、設定情報は、視度補正レンズが使用されるか否かを示す情報を含む。制御部は、視度補正レンズが使用されることが設定情報に示されている場合、視度補正レンズを光学系に挿入させるように第2の駆動部を制御する。それにより、被検眼の屈折率に応じた視度補正を自動で行うことができる。
【0178】
光学系の設定情報は、測定光と参照光との干渉強度が最大となる最大干渉深度についての設定内容を含んでいてよい。その場合、光学系は、最大干渉深度を変更するための最大干渉深度変更部(たとえば参照ミラー14および参照ミラー駆動部14A)を含む。制御部は、最大干渉深度についての設定内容に基づいて最大干渉深度変更部を制御する。それにより、最大干渉深度の調整を自動で行うことができる。
【0179】
光学系の設定情報に最大干渉深度の設定内容が含まれている場合、次のような構成を適用することが可能である。光学系は、ビームスプリッタ(たとえばビームスプリッタ13)と、測定アームと、参照アームとを含む。ビームスプリッタは、光源からの光を測定光と参照光とに分割する。測定アームは、測定光を被検眼に導き、測定光の被検眼からの戻り光をビームスプリッタに導く測定光路に相当する。参照アームは、参照光をビームスプリッタに向けて反射するミラー(たとえば参照ミラー14)を含む参照光路に相当する。光学系は、ビームスプリッタを介して得られた測定光の戻り光と参照光との干渉光を検出する。最大干渉深度変更部は、上記ミラー(たとえば参照ミラー14)と、参照アームの光軸の方向に沿ってミラーを移動する第3の駆動部(たとえば参照ミラー駆動部14A)とを含む。最大干渉深度の設定内容は、ミラーの位置を示す情報を含む。制御部は、設定情報に示された位置にミラーを配置させるように第3の駆動部を制御する。この構成によれば、最大干渉深度の設定内容に応じて参照光路の長さを変更することにより、最大干渉深度の調整を実現することができる。なお、光ファイバを用いて光(光源からの光、測定光、参照光、および干渉光のうちの1つ以上の光)を導くように、光学系を構成することも可能である。また、測定光路の長さを変更する機構を設けることも可能である。
【0180】
処理部の設定情報は、所望の解析処理を行うための設定内容を含んでいてよい。この場合、設定情報は、処理部(たとえば検査データ生成部131)が実行する処理の内容を含む。たとえば、処理部は、光学系による干渉光の検出結果に基づいて眼底の層厚情報を生成する層厚情報生成部(たとえば検査データ生成部131)を含んでいてよい。処理部が実行する処理の内容として層厚情報を生成する処理が含まれている場合、制御部は、検査データとして、層厚情報生成部に層厚情報を生成させる。それにより、眼底層厚解析が実行される。なお、ドルーゼン解析や乳頭形状解析などの他の解析処理を行わせる場合についても同様である。このような構成によれば、所望の解析処理を選択的に行うことが可能である。
【0181】
制御部は、処理部により検査データが生成される度に、その検査データを日時情報と関連付けて記憶部(たとえば記憶部112)に記憶させることができる。それにより、検査日時と検査データ(検査の履歴)を眼科撮影装置内に蓄積することができる。この構成が適用される場合、蓄積されたデータをまとめて外部装置(たとえば外部コンピュータ1000)に送信することが可能である。
【0182】
実施形態に係る眼科撮影装置の動作状態を遠隔監視することができる。たとえば、実施形態に係る眼科撮影装置は、その所定部位の動作状態を監視する監視処理部(たとえば監視処理部135)を有する。出力部は、通信回線(たとえば通信回線2000)を介して第3のコンピュータ(たとえば外部コンピュータ1000)と通信することが可能な第2の通信部(たとえば通信部140)を含む。制御部は、監視処理部により動作状態の異常が検出されたときに、異常発生を示す情報を第3のコンピュータに送信するように第2の通信部を制御する。この構成によれば、眼科撮影装置に異常が発生したことを外部コンピュータ1000を介して報知することができる。
【0183】
また、異常の発生を被検者やその補助者に報知することも可能である。たとえば、実施形態に係る眼科撮影装置は、視覚情報および/または聴覚情報を出力する情報出力部(たとえば表示部210および/または音声出力部)を有する。制御部は、前記監視処理部により動作状態の異常が検出されたときに、異常発生を示す報知情報を出力するように情報出力部を制御する。この構成によれば、眼科撮影装置に異常が発生したことを被検者等に報知することができるので、検査を中止したり、外部の担当者に連絡したりすることが可能である。
【0184】
実施形態に係る眼科撮影装置は、次のような構成を有していてもよい。光学系(たとえば光学ユニット10)は、被検眼を固視させるための固視標を提示するための固視標提示部を含む。固視標提示部としては、たとえばフラットパネルディスプレイ(フラットパネルディスプレイ25)が用いられる。また、設定情報は、固視位置についての設定内容を含む。制御部(たとえば主制御部111)は、固視位置についての設定内容に基づいて、固視標提示部に固視標を提示させる。この構成によれば、被検眼の目的の部位のOCT計測を行うことが可能である。
【0185】
以上に説明した構成は、この発明を好適に実施するための一例に過ぎない。よって、この発明の要旨の範囲内における任意の変形(省略、置換、付加等)を適宜に施すことが可能である。
【0186】
たとえば、実施形態に係る眼科撮影装置の使用に伴い費用が発生する場合、その費用に関する情報を外部コンピュータに送信する構成や、眼科撮影装置内に記憶する構成を適用することが可能である。
【0187】
前者の例として、眼科撮影装置は、検査を行う度に、その検査種別(たとえば、OCT計測および解析処理、並びに自覚式視力検査)を示す情報を、患者識別情報とともに、通信回線を介して、医療機関等に設置されたコンピュータ(病院情報システム(HIS)など)に送る。この処理は、たとえば、主制御部111が、送信される情報を作成し、通信部140を制御して当該情報を送信させることにより行われる。医療機関側においては、眼科撮影装置から受信した情報に基づいて、眼科撮影装置を用いて実施された検査に関する保険点数や患者が負担する費用額を算出し、当該患者のレセプト情報を作成する。
【0188】
後者の例として、眼科撮影装置は、検査を行う度に、その検査種別(および検査日時など)を記憶する。この処理は、たとえば、主制御部111が、記憶される情報を作成し、これを記憶部112に記憶させることにより行われる。さらに、眼科撮影装置は、所定のタイミングで、記憶された情報を出力する。この出力タイミングは、たとえば、医療機関側のコンピュータからの要求時、眼科撮影装置の返却時などである。また、所定の期日ごと(たとえば毎週月曜日、毎月第1月曜日)に、情報を出力するようにしてもよい。情報の出力方法としては、通信回線を介して行う方法、可搬記録媒体(たとえば半導体メモリ)に記録する方法、記録紙媒体等に印刷する方法などがある。医療機関側においては、出力された情報に基づいて、眼科撮影装置を用いて実施された検査に関する保険点数や患者が負担する費用額を算出し、当該患者のレセプト情報を作成する。
【0189】
上記の実施形態を実現するためのコンピュータプログラムを、コンピュータによって読み取り可能な任意の記録媒体に記憶させることができる。この記録媒体としては、たとえば、半導体メモリ、光ディスク、光磁気ディスク(CD−ROM/DVD−RAM/DVD−ROM/MO等)、磁気記憶媒体(ハードディスク/フロッピー(登録商標)ディスク/ZIP等)などを用いることが可能である。
【0190】
また、インターネットやLAN等のネットワークを通じてこのプログラムを送受信することも可能である。