特開2017-177005(P2017-177005A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ニチアス株式会社の特許一覧

特開2017-177005触媒コンバーター用保持材、触媒コンバーター用保持材の製造方法、触媒コンバーターおよび触媒コンバーターの製造方法
<>
  • 特開2017177005-触媒コンバーター用保持材、触媒コンバーター用保持材の製造方法、触媒コンバーターおよび触媒コンバーターの製造方法 図000004
  • 特開2017177005-触媒コンバーター用保持材、触媒コンバーター用保持材の製造方法、触媒コンバーターおよび触媒コンバーターの製造方法 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-177005(P2017-177005A)
(43)【公開日】2017年10月5日
(54)【発明の名称】触媒コンバーター用保持材、触媒コンバーター用保持材の製造方法、触媒コンバーターおよび触媒コンバーターの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/94 20060101AFI20170908BHJP
   F01N 3/28 20060101ALI20170908BHJP
【FI】
   B01D53/94 300
   F01N3/28 311N
   F01N3/28ZAB
   F01N3/28 311U
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2016-68294(P2016-68294)
(22)【出願日】2016年3月30日
(71)【出願人】
【識別番号】000110804
【氏名又は名称】ニチアス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002538
【氏名又は名称】特許業務法人あしたば国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100098682
【弁理士】
【氏名又は名称】赤塚 賢次
(74)【代理人】
【識別番号】100131255
【弁理士】
【氏名又は名称】阪田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100125324
【弁理士】
【氏名又は名称】渋谷 健
(72)【発明者】
【氏名】中島 章裕
(72)【発明者】
【氏名】磯村 和俊
(72)【発明者】
【氏名】及川 純
【テーマコード(参考)】
3G091
4D148
【Fターム(参考)】
3G091AB01
3G091BA10
3G091BA39
3G091GA06
3G091GB17Z
3G091HA27
4D148AA21
4D148BB02
4D148BB18
4D148CA01
4D148CA08
4D148CC02
4D148CC08
4D148CC10
4D148EA08
(57)【要約】      (修正有)
【課題】耐熱性に優れ、長期間使用した場合でも優れた耐久性を発揮し得ると、低コストに製造可能な保持性に優れた触媒コンバーター用保持材の提供。
【解決手段】触媒担体1と触媒担体1を収容するケーシング2との間隙に配設される触媒コンバーター用保持材3であって、アルミナ繊維、ムライト繊維、アルミナシリケート繊維、シリカ繊維および生体溶解性繊維から選ばれる一種以上の繊維からなる骨格繊維を含むとともに、内部にガラス溶融物が分散した繊維集成体からなり、前記骨格繊維同士が前記ガラス溶融物により固着されている触媒コンバーター用保持材3。前記ガラス溶融物が、軟化点700〜1000℃のガラス繊維の溶融物である触媒コンバーター用保持材3。前記骨格繊維とガラス繊維との合計量を100質量部としたときに、前記骨格繊維を50〜99.9質量部、ガラス溶融物を0.1〜50質量部含む、触媒コンバーター用保持材3。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒担体と当該触媒担体を収容するケーシングとの間隙に配設される触媒コンバーター用保持材であって、
アルミナ繊維、ムライト繊維、アルミナシリケート繊維、シリカ繊維および生体溶解性繊維から選ばれる一種以上の繊維からなる骨格繊維を含むとともに、内部にガラス溶融物が分散した繊維集成体からなり、
前記骨格繊維同士が前記ガラス溶融物により固着されている
ことを特徴とする触媒コンバーター用保持材。
【請求項2】
前記ガラス溶融物が、軟化点700〜1000℃のガラス繊維の溶融物である請求項1に記載の触媒コンバーター用保持材。
【請求項3】
前記骨格繊維とガラス繊維との合計量を100質量部としたときに、前記骨格繊維を50〜99.9質量部、ガラス溶融物を0.1〜50質量部含む請求項1または請求項2に記載の触媒コンバーター用保持材。
【請求項4】
前記ガラス溶融物が前記骨格繊維同士の成す交点に存在している請求項1〜請求項3のいずれかに記載の触媒コンバーター用保持材。
【請求項5】
前記触媒担体の外形形状と対応した形状を有する請求項1〜請求項4のいずれかに記載の触媒コンバーター用保持材。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれかに記載の触媒コンバーター用保持材を製造する方法であって、
アルミナ繊維、ムライト繊維、アルミナシリケート繊維、シリカ繊維および生体溶解性繊維から選ばれる一種以上の繊維からなる骨格繊維とガラス繊維とを含有する水性スラリーを、吸引脱水成形または抄造して湿潤成形体を得た後、前記ガラス繊維の軟化点以上の温度で加熱処理する
ことを特徴とする触媒コンバーター用保持材の製造方法。
【請求項7】
触媒担体と、当該触媒担体を収容するケーシングと、前記触媒担体およびケーシング間に配設される触媒コンバーター用保持材とを含み、
前記触媒コンバーター用保持材が、アルミナ繊維、ムライト繊維、アルミナシリケート繊維、シリカ繊維および生体溶解性繊維から選ばれる一種以上の繊維からなる骨格繊維を含むとともに、内部にガラス溶融物が分散した繊維集成体からなり、
前記骨格繊維同士が前記ガラス溶融物により固着されているとともに、前記ケーシングとの界面において前記骨格繊維と前記ケーシングとがガラス溶融物により固着され、前記触媒担体との界面において前記骨格繊維と触媒担体とがガラス溶融物により固着されている
ことを特徴とする触媒コンバーター。
【請求項8】
請求項7に記載の触媒担体と、当該触媒担体を収容するケーシングと、前記触媒担体およびケーシング間に配設される触媒コンバーター用保持材とを含む触媒コンバーターを製造する方法であって、
アルミナ繊維、ムライト繊維、アルミナシリケート繊維、シリカ繊維および生体溶解性繊維から選ばれる一種以上の繊維からなる骨格繊維とガラス繊維とを含有する水性スラリーを、吸引脱水成形または抄造して湿潤成形体を得た後、
当該湿潤成形体または当該湿潤成形体の乾燥処理物を前記触媒担体と前記触媒担体を収容するケーシングとの間隙に配設した状態で前記ガラス繊維の軟化点以上の温度で加熱処理する
ことを特徴とする触媒コンバーターの製造方法。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒コンバーター用保持材、触媒コンバーター用保持材の製造方法、触媒コンバーターおよび触媒コンバーターの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両には、そのエンジンの排気ガス中に含まれる一酸化炭素、炭化水素、窒素酸化物等の有害成分を除去するために、排気ガス浄化用触媒コンバーターが積載されている。このような触媒コンバーターは、一般に、図1に断面図で示すように、筒状に形成された触媒担体1と、触媒担体1を収容する金属製のケーシング2と、触媒担体1に装着されて触媒担体1とケーシング2との間隙に介装される保持材3とから構成されている。
【0003】
触媒担体1としては、例えばコージェライト等からなる円筒状のハニカム状成形体に貴金属触媒等が担持されたものが一般的であるため、触媒担体1とケーシング2との間隙に介装される保持材3には、高温耐熱性を有するとともに、自動車の走行中に振動等によって触媒担体1がケーシング2に衝突して破損しないように触媒担体1を安全に保持する機能と、触媒担体1とケーシング2との間隙から未浄化の排気ガスが漏れないようにシールする機能とを兼ね備えることが必要とされている(例えば、特許文献1(特開2003−286837号公報)参照)。
そこで、従来より、アルミナ繊維等のセラミック繊維を単独であるいは混合し、所定厚でマット状に集成した保持材が提案されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−286837号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記触媒コンバーター用保持材を構成するアルミナ繊維は、耐熱性および弾性回復力に優れることから、触媒コンバーター用保持材の構成材として使用した場合に、優れた触媒担体保持性能及び排気ガスシール性能を発揮することができる。
【0006】
従来より、高温下で使用する触媒コンバーター用保持材の構成材料として、耐熱性等に優れたアルミナ繊維等のセラミック繊維は必須とされてきた。
しかしながら、アルミナ繊維等のセラミック繊維は、一般に高価であることから触媒コンバーター用保持材の高コスト化を招き易い。
また、本発明者等の検討によれば、触媒コンバーター用保持材は、長期間使用した場合には、未浄化の排気ガスによって浸食(風食)されて劣化し易くなり、触媒担体がケーシング内で位置ずれを生じてシール性等を低下させ易くなることから、かかる浸食を受け難く耐久性に優れ、触媒コンバーターの保持性に優れたものが求められるようになっていた。
【0007】
従って、本発明は、耐熱性に優れ、長期間使用した場合であっても優れた耐久性を発揮し得るとともに、低コストに製造可能な保持性に優れた触媒コンバーター用保持材、当該触媒コンバーター用保持材の製造方法、触媒コンバーターおよび触媒コンバーターの製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明者等が鋭意検討を行った結果、触媒担体と当該触媒担体を収容するケーシングとの間隙に配設される触媒コンバーター用保持材であって、アルミナ繊維、ムライト繊維、アルミナシリケート繊維、シリカ繊維および生体溶解性繊維から選ばれる一種以上の繊維からなる骨格繊維を含むとともに、内部にガラス溶融物が分散した繊維集成体からなり、前記骨格繊維同士が前記ガラス溶融物により固着されている触媒コンバーター用保持材により、上記技術課題を解決し得ることを見出し、本知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、
(1)触媒担体と当該触媒担体を収容するケーシングとの間隙に配設される触媒コンバーター用保持材であって、アルミナ繊維、ムライト繊維、アルミナシリケート繊維、シリカ繊維および生体溶解性繊維から選ばれる一種以上の繊維からなる骨格繊維を含むとともに、内部にガラス溶融物が分散した繊維集成体からなり、
前記骨格繊維同士が前記ガラス溶融物により固着されている
ことを特徴とする触媒コンバーター用保持材、
(2)前記ガラス溶融物が、軟化点700〜1000℃のガラス繊維の溶融物である上記(1)に記載の触媒コンバーター用保持材、
(3)前記骨格繊維とガラス繊維との合計量を100質量部としたときに、前記骨格繊維を50〜99.9質量部、ガラス溶融物を0.1〜50質量部含む上記(1)または(2)に記載の触媒コンバーター用保持材、
(4)前記ガラス溶融物が前記骨格繊維同士の成す交点に存在している上記(1)〜(3)のいずれかに記載の触媒コンバーター用保持材、
(5)前記触媒担体の外形形状と対応した形状を有する上記(1)〜(4)のいずれかに記載の触媒コンバーター用保持材、
(6)上記(1)〜(5)のいずれかに記載の触媒コンバーター用保持材を製造する方法であって、
アルミナ繊維、ムライト繊維、アルミナシリケート繊維、シリカ繊維および生体溶解性繊維から選ばれる一種以上の繊維からなる骨格繊維とガラス繊維とを含有する水性スラリーを、吸引脱水成形または抄造して湿潤成形体を得た後、前記ガラス繊維の軟化点以上の温度で加熱処理する
ことを特徴とする触媒コンバーター用保持材の製造方法、
(7)触媒担体と、当該触媒担体を収容するケーシングと、前記触媒担体およびケーシング間に配設される触媒コンバーター用保持材とを含み、
前記触媒コンバーター用保持材が、アルミナ繊維、ムライト繊維、アルミナシリケート繊維、シリカ繊維および生体溶解性繊維から選ばれる一種以上の繊維からなる骨格繊維を含むとともに、内部にガラス溶融物が分散した繊維集成体からなり、
前記骨格繊維同士が前記ガラス溶融物により固着されているとともに、前記ケーシングとの界面において前記骨格繊維と前記ケーシングとがガラス溶融物により固着され、前記触媒担体との界面において前記骨格繊維と触媒担体とがガラス溶融物により固着されている
ことを特徴とする触媒コンバーター、
(8)上記(7)に記載の触媒担体と、当該触媒担体を収容するケーシングと、前記触媒担体およびケーシング間に配設される触媒コンバーター用保持材とを含む触媒コンバーターを製造する方法であって、
アルミナ繊維、ムライト繊維、アルミナシリケート繊維、シリカ繊維および生体溶解性繊維から選ばれる一種以上の繊維からなる骨格繊維とガラス繊維とを含有する水性スラリーを、吸引脱水成形または抄造して湿潤成形体を得た後、
当該湿潤成形体または当該湿潤成形体の乾燥処理物を前記触媒担体と前記触媒担体を収容するケーシングとの間隙に配設した状態で前記ガラス繊維の軟化点以上の温度で加熱処理する
ことを特徴とする触媒コンバーターの製造方法
を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、触媒コンバーター用保持材が、骨格繊維間にガラス溶融物が分散しており、骨格繊維同士がガラス溶融物により固着された繊維固着物を含むマット状物からなるものであることにより、前記骨格繊維によって優れた耐熱性を発揮し得るとともに、骨格繊維同士がガラス溶融物によって固着されているために、骨格繊維同士が強固に固定された優れた耐久性を発揮することができる。
このため、本発明によれば、耐熱性に優れ、長期間使用した場合であっても優れた耐久性を発揮し得るとともに、低コストに製造可能な保持性に優れた触媒コンバーター用保持材、当該触媒コンバーター用保持材の製造方法、触媒コンバーターおよび触媒コンバーターの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】従来および本発明に係る触媒コンバーター用保持材を装着した触媒コンバーターの例を模式的に示す断面図である。
図2】本発明に係る触媒コンバーター用保持材の内部構造を示す走査型電子顕微鏡写真(1000倍拡大写真)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
先ず、本発明に係る触媒コンバーター用保持材について説明する。
本発明に係る触媒コンバーター用保持材は、触媒担体と当該触媒担体を収容するケーシングとの間隙に配設される触媒コンバーター用保持材であって、アルミナ繊維、ムライト繊維、アルミナシリケート繊維、シリカ繊維および生体溶解性繊維から選ばれる一種以上の繊維からなる骨格繊維を含むとともに、内部にガラス溶融物が分散した繊維集成体からなり、前記骨格繊維同士が前記ガラス溶融物により固着されていることを特徴とするものである。
【0013】
本発明に係る触媒コンバーター用保持材は、骨格繊維として、(1)アルミナ繊維、(2)ムライト繊維、(3)アルミナシリケート繊維、(4)シリカ繊維および(5)生体溶解性繊維から選ばれる一種か、または上記繊維から選ばれる二種以上を含む。
【0014】
本発明に係る触媒コンバーター用保持材において、アルミナ繊維とは、アルミナ(Al)を主成分とする非晶質繊維または多結晶質繊維を意味し、Alを90〜99質量%、SiOを1〜10質量%含むものが好適であり、Alを95〜99質量%、SiOを1〜5質量%含むものがより好適であり、Alを97〜99質量%、SiOを1〜3質量%含むものがさらに好適である。
【0015】
本発明に係る触媒コンバーター用保持材において、ムライト繊維とは、アルミナ(Al)およびシリカ(SiO)を主成分とする非晶質繊維または多結晶質繊維を意味し、Alを60〜90質量%、SiOを10〜40質量%含むものが好適であり、Alを70〜85質量%、SiOを15〜30質量%含むものがより好適であり、Alを72〜80 質量%、SiOを20〜28質量%含むものがさらに好適である。
【0016】
本発明に係る触媒コンバーター用保持材において、アルミナシリケート繊維とは、アルミナ(Al)およびシリカ(SiO)を主成分とする非晶質繊維または多結晶質繊維を意味し、Alを30〜60質量%、SiOを40〜70質量%含むものが好適であり、Alを35〜60質量%、SiOを40〜65質量%含むものがより好適であり、Alを40〜60質量%、SiOを40〜60質量%含むものがさらに好適である。
【0017】
本発明に係る触媒コンバーター用保持材において、シリカ繊維とは、シリカ(SiO)を主成分とする非晶質繊維または多結晶質繊維を意味し、Alを1〜20質量%、SiOを80〜99質量%含むものが好適であり、Alを1〜10質量%、SiOを90〜99質量%含むものがより好適であり、Alを1〜5質量%、SiOを95〜99質量%含むものがさらに好適である。
【0018】
本発明に係る触媒コンバーター用保持材において、生体溶解性繊維としては、生体内で分解される溶解性(分解性)を有する無機繊維であれば特に限定されないが、生体内での溶解性が付与された人造非晶質無機繊維を挙げることができ、例えば、40℃における生理食塩水中の溶解率が1質量%以上であり、1000℃で8時間加熱した場合の加熱収縮率が5%以下である無機繊維が好ましい。
【0019】
なお、本出願書類において、上記生理食塩水中の溶解率は、以下の方法で測定した値を意味するものとする。
すなわち、まず、生体溶解性繊維を200メッシュ以下に粉砕して調製された試料1gおよび生理食塩水150mLを三角フラスコ(容積300mL)に入れ、40℃ のインキュベーターに設置した後、上記三角フラスコに毎分120回転で50時間水平振動を加えて濾過し、次いで濾液に含有されている元素をICP発光分析装置により定量する。この定量された元素含有量、試験前の試料組成および試験前の試料重量に基づいて試験前の試料から濾液中に溶出した元素量の割合(溶解による試料の重量減少率)を表す溶解度を求めることができる。
【0020】
また、本出願書類において、加熱収縮率は、以下の方法で測定した値を意味するものとする。
すなわち、測定試料を電気炉中1000℃で8時間加熱し、加熱前後の試料の長さを測定し、加熱前の試料の長さをLmm、加熱後の長さをLmmとしたときに、次式により求める。
加熱線収縮率(%)={(L−L)/L}×100
【0021】
本発明に係る触媒コンバーター用保持材において、骨格繊維は、平均長さが0.1〜20mmであるものが好ましく、0.1〜10mmであるものがより好ましく、0.1〜5mmであるものがさらに好ましい。
上記骨格繊維の平均長さは、骨格繊維100本の長さを光学顕微鏡で測定したときの算術平均値を意味する。
【0022】
本発明に係る触媒コンバーター用保持材において、骨格繊維は、モノフィラメントまたはマルチフィラメントであることが好ましい。
【0023】
また、触媒コンバーター用保持材を構成する繊維集成体は、骨格繊維を含む繊維を一方向または交互に交差するように配設したものを意味し、湿式製法により得られた湿式成形物を適宜乾燥処理したものであることが好ましい。
【0024】
本発明に係る触媒コンバーター用保持材は、内部にガラス溶融物が分散しており、骨格繊維同士がガラス溶融物により固着された繊維集成体からなる。
本発明に係る触媒コンバーター用保持材は、保持材の内部全体にガラス溶融物が分散したものであることが好ましい。
【0025】
本発明に係る触媒コンバーター用保持材において、ガラス溶融物としては、その軟化点が骨格繊維の融点よりも低い軟化点を有するものから適宜選択することができ、軟化点700〜1000℃のガラスの溶融物であることが好ましく、軟化点750〜950℃のガラスの溶融物であることがより好ましく、軟化点800〜900℃のガラスの溶融物であることがさらに好ましい。
また、本発明に係る触媒コンバーター用保持材において、ガラス溶融物としては、上記軟化点を有するガラス繊維の溶融物であることがより好ましい。
【0026】
上記軟化点を有するガラスとしては、Eガラス、Cガラス、Sガラス、Dガラス等から選ばれる一種以上を挙げることができる。
【0027】
本発明に係る触媒コンバーター用保持材において、ガラス溶融物がガラス繊維の溶融物である場合、係るガラス繊維は、平均長さが、0.1〜20mmであるものが好ましく、0.1〜10mmであるものがより好ましく、0.1〜5mmであるものがさらに好ましい。
上記ガラス繊維の平均長さは、ガラス繊維100本の長さを光学顕微鏡で測定したときの算術平均値を意味する。
【0028】
本発明に係る触媒コンバーター用保持材において、ガラス繊維は、モノフィラメントまたはマルチフィラメント等の種々の形態を採ることができ、集束された繊維ストランドを集めて一定の長さに切断したチョップドストランドであってもよい。
【0029】
本発明に係る触媒コンバーター用保持材は、上記骨格繊維とガラス繊維との合計量を100質量部とした場合に、上記骨格繊維を、乾燥状態で、50〜99.9質量部含むものであることが好ましく、60〜99質量部含むものであることがより好ましく、70〜90質量部含むものであることがさらに好ましい。
また、本発明に係る触媒コンバーター用保持材は、上記骨格繊維とガラス繊維との合計量を100質量部とした場合に、上記ガラス溶融物を、乾燥状態で、0.1〜50質量部含むものであることが好ましく、1〜40質量部含むものであることがより好ましく、10〜30質量部含むものであることがさらに好ましい。
【0030】
本発明に係る触媒コンバーター用保持材が、骨格繊維として、アルミナ繊維および生体溶解性繊維を含む場合は、骨格繊維の総量を100質量%とした場合に、乾燥状態で、アルミナ繊維を1〜99質量%、生体溶解性繊維を1〜99質量%含むことが好ましく、アルミナ繊維を20〜80質量%、生体溶解性繊維を20〜80質量%含むことがより好ましく、アルミナ繊維を40〜60質量%、生体溶解性繊維を40〜60質量%含むことがさらに好ましい。
【0031】
本発明に係る触媒コンバーター用保持材が、骨格繊維およびガラス溶融物を、各々上記割合で含むものであることにより、優れた耐熱性および耐久性を容易に発揮することができる。
【0032】
本発明に係る触媒コンバーター用保持材は、上記ガラス溶融物が上記骨格繊維同士の成す交点に存在していることが好ましい。
図2は、本発明に係る触媒コンバーター用保持材の一例の走査型電子顕微鏡写真であり、図2に例示するように、本発明に係る触媒コンバーター用保持材は、繊維状の骨格繊維同士の成す交点においてガラス溶融物が存在することにより、骨格繊維同士が強固に固着され、骨格繊維の強度を向上させ、骨格繊維の位置ずれを抑制して、触媒コンバーターの耐久性を向上させることができる。
【0033】
本発明に係る触媒コンバーター用保持材は、繊維集成体中に、上記骨格繊維およびガラス溶融物とともに、本発明の効果を奏する範囲内において、必要に応じて、さらに有機バインダーおよび無機バインダーから選ばれる一種以上のバインダー等を含んでもよい。
【0034】
本発明に係る触媒コンバーター用保持材は、繊維集成体中に、乾燥状態で、骨格繊維およびガラス溶融物を、合計で、80〜100質量%含むことが好ましく、85〜99質量%含むことがより好ましく、90〜98質量%含むことがさらに好ましい。
また、本発明に係る触媒コンバーター用保持材において、繊維集成体中における上記骨格繊維およびガラス溶融物以外の成分の含有割合は、乾燥状態で、0〜20質量であることが適当であり、1〜15質量%であることがより適当であり、2〜10質量%であることがさらに適当である。
【0035】
本出願書類において、繊維集成体とは、多数の繊維が互いに絡み合って、板状またはシート状等の一定の形態に成形されたものを意味する。
【0036】
本発明に係る触媒コンバーター用保持材において、繊維集成体の厚さは、5〜20mmであることが好ましく、6〜15mmであることがより好ましく、7〜10mmであることがさらに好ましい。
【0037】
また、本発明に係る触媒コンバーター用保持材を構成する繊維集成体は、嵩密度が、0.10〜0.30g/cmであるものが好ましく、0.13〜0.25g/cmであるものがより好ましく、0.15〜0.20g/cmであるものがさらに好ましい。
【0038】
本発明に係る触媒コンバーター用保持材を構成する繊維集成体の厚さおよび嵩密度が上記範囲にあることにより、触媒コンバーター用保持材として、加工性に優れ、優れた弾性率及び強度を有するものを容易に提供することができる。
【0039】
本発明に係る触媒コンバーター用保持材の形状は特に制限されず、板状またはシート状であってもよいし、配設対象となる触媒担体の外形形状に対応した形状を有するものであってもよい。
本発明に係る触媒コンバーター用保持材は、骨格繊維間に安価なガラス溶融物が分散しており、骨格繊維同士がガラス溶融物により固着された繊維集成体からなるものであることにより、骨格繊維によって優れた耐熱性を発揮し得るとともに、骨格繊維同士がガラス溶融物によって固着されているために、骨格繊維同士が強固に固定された優れた耐久性を発揮することができる。
このため、本発明によれば、耐熱性に優れ、長期間使用した場合であっても優れた耐久性を発揮し得るとともに、低コストに製造可能な保持性に優れた触媒コンバーター用保持材を提供することができる。
本発明に係る触媒コンバーター用保持材は、例えば、以下に示す本発明に係る触媒コンバーター用保持材の製造方法により、好適に製造することができる。
【0040】
次に、本発明に係る触媒コンバーター用保持材の製造方法について説明する。
本発明に係る触媒コンバーター用保持材の製造方法は、本発明に係る触媒コンバーター用保持材を製造する方法であって、アルミナ繊維、ムライト繊維、アルミナシリケート繊維、シリカ繊維および生体溶解性繊維から選ばれる一種以上の繊維からなる骨格繊維とガラス繊維とを含有する水性スラリーを、吸引脱水成形または抄造して湿潤成形体を得た後、前記ガラス繊維の軟化点以上の温度で加熱処理することを特徴とするものである。
【0041】
本発明に係る触媒コンバーター用保持材の製造方法において、骨格繊維およびガラス繊維の詳細は、上述したとおりである。
【0042】
本発明に係る触媒コンバーター用保持材の製造方法において、水性スラリー中に含まれる骨格繊維とガラス繊維との合計量を100質量部とした場合、上記水性スラリーは、骨格繊維50〜99.9質量部と、ガラス繊維 0.1〜50質量部とを含むものであることが好ましく、骨格繊維60〜99質量部と、ガラス繊維1〜40質量部とを含むものであることがより好ましく、骨格繊維70〜90質量部と、ガラス繊維10〜30質量部とを含むものであることがさらに好ましい。
【0043】
本発明に係る触媒コンバーター用保持材の製造方法において、骨格繊維として、例えばアルミナ繊維および生体溶解性繊維を使用する場合は、水性スラリー中に含まれる骨格繊維の総量を100質量%とした場合に、アルミナ繊維を1〜99質量%、生体溶解性繊維を1〜99質量%含むことが好ましく、アルミナ繊維を20〜80質量%、生体溶解性繊維を20〜80質量%含むことがより好ましく、アルミナ繊維を40〜60質量%、生体溶解性繊維を40〜60質量%含むことがさらに好ましい。
【0044】
本発明に係る触媒コンバーター用保持材の製造方法においては、水性スラリーを形成するために、上記骨格繊維とガラス繊維を水性溶媒中に添加するとともに、さらに、該溶媒中に、有機バインダー等のバインダーを添加してもよい。
【0045】
上記有機バインダーとしては、澱粉、高分子凝集剤、パルプおよび適当なエマルジョンから選ばれる一種以上を挙げることができる。
【0046】
本発明に係る触媒コンバーター用保持材の製造方法において、溶媒中に添加する有機バインダー種類および添加量は、所望の大きさのフロックを形成するために適宜選択すればよい。
有機バインダーは、固形物の形態で水性溶媒中に添加してもよいし、懸濁液又は溶液等の形態で添加してもよい。
【0047】
本発明に係る触媒コンバーター用保持材の製造方法において、上記水性スラリー中に含まれる骨格繊維とガラス繊維との合計量を100質量部とした場合に、上記水性スラリーは、有機バインダーを0〜20質量部含むことが好ましく、1〜15質量部含むことがより好ましく、2〜10質量部含むことがさらに好ましい。
【0048】
本発明に係る触媒コンバーター用保持材の製造方法においては、上記有機バインダーを用いることにより、得られる脱水成形体または抄造物に十分な曲げ強度を付与しつつ、スラリー中で材料を凝集させフロックを形成させるように機能して、得られる脱水成形体または抄造物を低密度で嵩高な構造にして十分な弾力性を付与することができる。
【0049】
本発明に係る触媒コンバーター用保持材の製造方法において、スラリー形成時に使用される溶媒としては、特に制限されないが、水や極性有機溶媒等が挙げられる。
水としては、蒸留水、イオン交換水、水道水、地下水、工業用水等を挙げることができ、また、極性有機溶媒としては、エタノール、プロパノール等の1価のアルコール類、エチレングリコール等の2価のアルコール類を挙げることができる。これらのうち、上記溶媒としては、作業環境の悪化がなく環境への負荷がない点で水が好ましい。
【0050】
スラリー中に含まれる全固形分濃度は、0.05〜5質量%であることが好ましく、0.1〜2質量%であることがより好ましく、0.2〜1質量%であることがさらに好ましい。スラリー中に含まれる全固形分濃度が0.05質量%未満であると脱水成形または抄造工程で除去する水性媒体の量が多くなり過ぎるので製造効率が低下し易くなり、また、5質量%を超えると、スラリー中に固形分が均一に分散し難くなる。
【0051】
本発明に係る触媒コンバーター用保持材の製造方法においては、上記スラリーを脱水成形または抄造して湿潤成形体を得る。
脱水成形方法としては、公知の方法を採用することができ、特に制限されないが、底部に網が設置された成形型中にスラリーを流し込み、溶媒を吸引する吸引脱水成形法や、加圧脱水成形法を挙げることができる。
なお、本出願においては、水性スラリー形成時に用いる溶媒として水以外のものを用いる場合もあるが、水以外の溶媒を脱溶媒して成形する場合も含めて、脱水成形と呼ぶものとする。
【0052】
抄造方法としては、公知の方法を採用することができ、特に制限されないが、帯状の多孔質担体上にフローボックスからスラリーを流し出すフローオン法や、ハチェック式抄造法や長網式抄造法などスラリーを連続的に抄造し得る方法を挙げることができる。
【0053】
本発明に係る触媒コンバーター用保持材の製造方法において、攪拌槽等で作製した水性スラリーを、上記脱水成形または抄造するために成形型や貯留槽等に搬送する際には、上記攪拌槽の下部に成形型や貯留槽等を配置する等して、水性スラリーの自重により移送してもよいし、ポンプ等を使用して移送してもよい。
【0054】
湿潤成形体は、得ようとする触媒コンバーター用保持材に相似する形状を有するものが適当であり、例えば、板状、シート状または触媒担体の外形形状に対応した形状を挙げることができる。ここで、製造工程において、品質としての嵩密度を一定の範囲に保つために、湿潤成形体を必要に応じてプレスしてもよい。
また、例えば得ようとする保持材の形態が筒状である場合には、円筒状のメッシュ部材(例えば円筒形金網)を用いて上記スラリーを吸引脱水成形し、適宜下記乾燥処理を施した後、円筒状のメッシュ部材を取り除けばよい。
【0055】
上記方法で得られた湿潤成形体は、適宜、乾燥処理に付される。
乾燥処理は、公知の乾燥機により行うことができ、乾燥温度は、100〜250℃が好ましく、150〜220℃がより好ましく、170〜200℃がさらに好ましい。また、乾燥時間は、5〜60分間が好ましく、7〜30 分間がより好ましく、9〜20分間がさらに好ましい。
本発明に係る触媒コンバーター用保持材の製造方法においては、さらに必要に応じて打ち抜き処理等の加工処理を施して、所望形状を有する湿潤成形体や乾燥処理物としてもよい。
【0056】
本発明に係る触媒コンバーター用保持材の製造方法においては、上記湿潤成形体または上記湿潤成形体の乾燥処理物を上記ガラス繊維の軟化点以上の温度で加熱処理する。
上記加熱処理は、上記湿潤成形体または上記湿潤成形体の乾燥処理物を触媒担体と当該触媒担体を収容するケーシングとの間隙に配設した状態で行うことが好ましい。
上記配設は、例えば、円筒状の触媒担体を用いる場合は、当該円筒状の触媒担体の周囲に上記湿潤成形体または上記湿潤成形体の乾燥処理物を適宜巻き付けた後、筒状のケーシングを半割状にした下部ケーシング内に収容し、次いで同じく筒状のケーシングを半割状にした上部ケーシングを重ね合わせ、ボルト等で接合することにより筒状物とすることにより行うことができる。
【0057】
加熱処理は、公知の加熱炉により行うことができ、加熱温度は、ガラス繊維が溶融する温度であれば特に制限されないが、700〜1100℃が好ましく、850〜1000℃がより好ましい。
また、加熱時間は、1〜60分間が好ましく、1〜30分間がより好ましく、1〜10分間がさらに好ましい。
【0058】
上記加熱処理は、上記湿潤成形体または上記湿潤成形体の乾燥処理物を触媒担体と当該触媒担体を収容するケーシングとの間隙に配設して触媒コンバーターに対応する形態とした上で、さらに自動車内部に配設した状態でエンジンを駆動させることにより発生する燃料の燃焼熱により加熱処理してもよい。
【0059】
上記加熱処理を施すことにより、ガラス繊維が溶融してガラス溶融物となり、骨格繊維同士を強固に固着することができる。上記ガラス溶融物は、例えば図2に例示するように、繊維状の骨格繊維同士の成す交点に存在することにより、骨格繊維同士を強固に固着して骨格繊維の強度を向上させるとともに、骨格繊維の位置ずれを抑制して、触媒コンバーターの耐久性を向上させることができる。
【0060】
本発明の方法においては、このようにして簡便かつ低コストに耐久性および保持性に優れた触媒コンバーター用保持材を製造することができる。
得られる触媒コンバーター用保持材の詳細は、上述したとおりである。
【0061】
本発明によれば、耐熱性に優れ、長期間使用した場合であっても優れた耐久性および保持性を発揮し得る触媒コンバーター用保持材を簡便かつ低コストに製造することができる。
【0062】
次に、本発明に係る触媒コンバーターについて説明する。
本発明に係る触媒コンバーターは、触媒担体と、当該触媒担体を収容するケーシングと、前記触媒担体およびケーシング間に配設される触媒コンバーター用保持材とを含み、前記触媒コンバーター用保持材が、アルミナ繊維、ムライト繊維、アルミナシリケート繊維、シリカ繊維および生体溶解性繊維から選ばれる一種以上の繊維からなる骨格繊維を含むとともに、内部にガラス溶融物が分散した繊維集成体からなり、前記骨格繊維同士が前記ガラス溶融物により固着されているとともに、前記ケーシングとの界面において前記骨格繊維と前記ケーシングとがガラス溶融物により固着され、前記触媒担体との界面において前記骨格繊維と触媒担体とがガラス溶融物により固着されていることを特徴とするものである。
【0063】
本発明に係る触媒コンバーターにおいて、触媒コンバーター用保持材の詳細は、本発明に係る触媒コンバーター用保持材の説明で述べたとおりである。
【0064】
本発明に係る触媒コンバーターにおいて、触媒担体としては特に制限されず、公知の排気ガス浄化用触媒を担持する担体から選択することができ、例えば、コージェライト等からなる円筒状のハニカム状成形体に貴金属触媒等が担持されたもの等を挙げることができる。また、触媒担体の形態も特に制限されず、例えば円筒形状等を挙げることができる。
【0065】
本発明に係る触媒コンバーターにおいて、ケーシングとしても、内部に触媒担体および触媒コンバーター用保持材を収容し得るものであれば特に制限されない。
【0066】
ケーシングの形態も特に制限されないが、触媒担体の形状に対応した形状を有するものであることが好ましく、例えば触媒担体が円筒形状である場合、ケーシングの形状も円筒形状であることが好ましい。
【0067】
ケーシングの構成材料も所望の耐熱性を有するものであれば特に制限されず、公知のものから適宜選択され、通常は、ステンレス鋼、鉄等の金属製のものから適宜選択される。
【0068】
本発明に係る触媒コンバーターは、触媒コンバーター用保持材が繊維集成体からなり、係る繊維集成体が、骨格繊維同士を固着しているとともに、骨格繊維とケーシングとを固着し、さらには骨格繊維と触媒担体とを固着するガラス溶融物を含むものであるために、当該ガラス溶融物が骨格繊維同士のみならず、骨格繊維とケーシング、骨格繊維と触媒とを各々固着して、触媒担体とケーシングとを強固に固定することができる。
【0069】
このため、本発明によれば、耐熱性に優れ、長期間使用した場合であっても優れた耐久性を発揮し得るとともに、低コストに製造可能な触媒コンバーターを提供することができる。
【0070】
本発明に係る触媒コンバーターは、以下に示す触媒コンバーターの製造方法により好適に製造することができる。
【0071】
次に、本発明に係る触媒コンバーターの製造方法について説明する。
本発明に係る触媒コンバーターの製造方法は、触媒担体と、当該触媒担体を収容するケーシングと、前記触媒担体およびケーシング間に配設される触媒コンバーター用保持材とを含む触媒コンバーターを製造する方法であって、アルミナ繊維、ムライト繊維、アルミナシリケート繊維、シリカ繊維および生体溶解性繊維から選ばれる一種以上の繊維からなる骨格繊維とガラス繊維とを含有する水性スラリーを、吸引脱水成形または抄造して湿潤成形体を得た後、当該湿潤成形体または当該湿潤成形体の乾燥処理物を前記触媒担体と前記触媒担体を収容するケーシングとの間隙に配設した状態で前記ガラス繊維の軟化点以上の温度で加熱処理することを特徴とするものである。
【0072】
本発明に係る触媒コンバーターの製造方法は、本発明に係る触媒コンバーター用保持材の製造方法において、湿潤成形体または湿潤成形体の乾燥処理物を作製した後、湿潤成形体または湿潤成形体の乾燥処理物を触媒担体と当該触媒担体を収容するケーシングとの間隙に配設し、得ようとする触媒コンバーターに対応する形態とした状態で加熱処理することが必須とされる以外は、本発明に係る触媒コンバーター用保持材の製造方法と同様であり、その詳細については、本発明に係る触媒コンバーター用保持材の製造方法の説明で述べたとおりである。
【0073】
上記加熱処理を施すことにより、ガラス繊維が溶融してガラス溶融物となり、当該ガラス溶融物は、骨格繊維同士を強固に固着するとともに、ケーシングとの界面において骨格繊維とケーシングとを固着し、触媒担体との界面において骨格繊維と触媒担体とを固着して、骨格繊維の強度を向上させるとともに、骨格繊維の位置ずれを高度に抑制して、触媒コンバーターの耐久性を向上させることができる。
【0074】
本発明の方法においては、簡便かつ低コストに耐久性および保持性に優れた触媒コンバーターを製造することができる。
【0075】
以下、本発明を実施例および比較例によりさらに詳細に説明するが、本発明は以下の例により何ら限定されるものではない。
【0076】
(実施例1)
1.触媒コンバーター用保持材の形成材作製
骨格繊維であるアルミナ繊維(Al含有割合96質量%、SiO含有割合4質量%)50質量部に対し、E−ガラス(軟化点840℃)製ガラス繊維50質量部と、有機バインダーであるアクリル樹脂10質量部とを水に分散させることにより、水性スラリー(固形分濃度1.0質量%)を調製した。
次いで、底部に金網を有する脱水成形型に水性スラリーを流し込み、脱水成形して湿潤成形体を得た後、得られた湿潤成形体の全体を、その厚さが均一となるように圧縮しながら、200℃で乾燥することにより、触媒コンバーター用保持材の形成材(縦375mm、横80mm、厚さ7.4mm、面密度1224g/m)を得た。
【0077】
2.触媒コンバーター用保持材および触媒コンバーターの作製
図1に示す断面形状を有する触媒コンバーター用保持材3を有する触媒コンバーターを作製した。
すなわち、触媒担体1として、外径110mmの円筒型セラミックス製触媒担体を用い、係る触媒担体の外面に上記触媒コンバーター用保持材の形成材(縦375mm、横80mm、厚さ7.4mm、面密度1224g/m)を巻き付けて組立体を作製した。
次いで、ケーシング2として、内径118mmの円筒型中空状ステンレス製ケーシングを用い、係るケーシングの長手方向の一方の端部から、表面に巻き付けた保持材を圧縮した状態で上記組立体を挿入することにより、触媒コンバーターの仮組物を作製した。
次いで、上記仮組物を電気炉中に配置して、(上記ガラス繊維の軟化点を超える温度である)900℃で30分間加熱処理することにより、触媒担体1とケーシング2間に触媒コンバーター用保持材3が介装された触媒コンバーターを作製した。
上記触媒コンバーター用保持材3は、厚さが4mmで、嵩密度が0.3g/cmであるものであった。
上記触媒コンバーター用保持材3を、走査型電子顕微鏡を用いて倍率1000倍で観察したときの電子顕微鏡写真を図2に示す。図2に示すように、触媒コンバーター用保持材3は、骨格繊維であるアルミナ繊維同士の成す交点にガラス繊維の溶融物が存在することにより、骨格繊維同士が固着されていた。
また、上記触媒コンバーター用保持材3は、ケーシング2との界面において骨格繊維であるアルミナ繊維とケーシング2とがガラス繊維の溶融物によって固着され、触媒担体1との界面において骨格繊維であるアルミナ繊維と触媒担体1とがガラス繊維の溶融物によって固着されていた。
【0078】
(比較例1)
実施例1の「2.触媒コンバーター用保持材および触媒コンバーターの作製」工程において、電気炉中での加熱処理温度を900℃から(上記ガラス繊維の軟化点未満の温度である)700℃に変更した以外は、実施例1と同様に処理して、触媒担体1とケーシング2間に触媒コンバーター用保持材3が介装された触媒コンバーターを作製した。
【0079】
(比較例2)
実施例1の「2.触媒コンバーター用保持材および触媒コンバーターの作製」工程において、電気炉中での加熱処理を施さなかった以外は、実施例1と同様に処理して、触媒担体1とケーシング2間に触媒コンバーター用保持材3が介装された触媒コンバーターを作製した。
【0080】
(実施例2)
実施例1の「1.触媒コンバーター用保持材の形成材作製」工程において、水性スラリーとして、骨格繊維であるアルミナ繊維(Al含有割合96質量%、SiO含有割合4質量%)70質量部に対し、E−ガラス(軟化点840℃)製ガラス繊維30質量部と、有機バインダーであるアクリル樹脂10質量部とを水に分散させることにより調製した水性スラリー(固形分濃度1.0質量%)を用いた以外は、実施例1と同様にして「1.触媒コンバーター用保持材の形成材作製」工程と「2.触媒コンバーター用保持材および触媒コンバーターの作製」工程とを施すことにより、触媒担体1とケーシング2間に触媒コンバーター用保持材3が介装された触媒コンバーターを作製した。
上記触媒コンバーター用保持材3は、厚さが4mmで、嵩密度が0.3g/cmであるものであった。
上記触媒コンバーター用保持材3を走査型電子顕微鏡を用いて倍率1000倍で観察したところ、触媒コンバーター用保持材3は、骨格繊維であるアルミナ繊維同士の成す交点にガラス繊維の溶融物が存在することにより、骨格繊維同士が固着されていた。
また、上記触媒コンバーター用保持材3は、ケーシング2との界面において骨格繊維であるアルミナ繊維とケーシング2とがガラス繊維の溶融物によって固着され、触媒担体1との界面において骨格繊維であるアルミナ繊維と触媒担体1とがガラス繊維の溶融物によって固着されていた。
【0081】
(比較例3)
実施例2の「2.触媒コンバーター用保持材および触媒コンバーターの作製」工程において、電気炉中での加熱処理温度を900℃から(上記ガラス繊維の軟化点未満の温度である)700℃に変更した以外は、実施例2と同様に処理して、触媒担体1とケーシング2間に触媒コンバーター用保持材3が介装された触媒コンバーターを作製した。
【0082】
(比較例4)
実施例2の「2.触媒コンバーター用保持材および触媒コンバーターの作製」工程において、電気炉中での加熱処理を施さなかった以外は、実施例2と同様に処理して、触媒担体1とケーシング2間に触媒コンバーター用保持材3が介装された触媒コンバーターを作製した。
【0083】
(実施例3)
実施例1の「1.触媒コンバーター用保持材の形成材作製」工程において、水性スラリーとして、骨格繊維であるアルミナ繊維(Al含有割合96質量%、SiO含有割合4質量%)90質量部に対し、E−ガラス(軟化点840℃)製ガラス繊維10質量部と、有機バインダーであるアクリル樹脂10質量部とを水に分散させることにより調製した水性スラリー(固形分濃度 1.0質量%)を用いた以外は、実施例1と同様にして「1.触媒コンバーター用保持材の形成材作製」工程と「2.触媒コンバーター用保持材および触媒コンバーターの作製」工程とを施すことにより、触媒担体1とケーシング2間に触媒コンバーター用保持材3が介装された触媒コンバーターを作製した。
上記触媒コンバーター用保持材3は、厚さが4mmで、嵩密度が0.3g/cmであるものであった。
上記触媒コンバーター用保持材3を走査型電子顕微鏡を用いて倍率1000倍で観察したところ、触媒コンバーター用保持材3は、骨格繊維であるアルミナ繊維同士の成す交点にガラス繊維の溶融物が存在することにより、骨格繊維同士が固着されていた。
また、上記触媒コンバーター用保持材3は、ケーシング2との界面において骨格繊維であるアルミナ繊維とケーシング2とがガラス繊維の溶融物によって固着され、触媒担体1との界面において骨格繊維であるアルミナ繊維と触媒担体1とがガラス繊維の溶融物によって固着されていた。
【0084】
(比較例5)
実施例3の「2.触媒コンバーター用保持材および触媒コンバーターの作製」工程において、電気炉中での加熱処理温度を900℃から(上記ガラス繊維の軟化点未満の温度である)700℃に変更した以外は、実施例3と同様に処理して、触媒担体1とケーシング2間に触媒コンバーター用保持材3が介装された触媒コンバーターを作製した。
【0085】
(比較例6)
実施例3の「2.触媒コンバーター用保持材および触媒コンバーターの作製」工程において、電気炉中での加熱処理を施さなかった以外は、実施例3と同様に処理して、触媒担体1とケーシング2間に触媒コンバーター用保持材3が介装された触媒コンバーターを作製した。
【0086】
(比較例7)
実施例1の「1.触媒コンバーター用保持材の形成材作製」において、水性スラリーとして、骨格繊維であるアルミナ繊維(Al含有割合96質量%、SiO含有割合4質量%)100質量部に対し、有機バインダーであるアクリル樹脂10質量部を水に分散させることにより調製した水性スラリー(固形分濃度1.0質量%)を用いた以外は、実施例1と同様にして「1.触媒コンバーター用保持材の形成材作製」工程と「2.触媒コンバーター用保持材および触媒コンバーターの作製」工程とを施すことにより、触媒担体1とケーシング2間に触媒コンバーター用保持材3が介装された触媒コンバーターを作製した。
【0087】
(比較例8)
実施例1の「1.触媒コンバーター用保持材の形成材作製」工程において、水性スラリーとして、骨格繊維であるアルミナ繊維(Al含有割合96質量%、SiO含有割合4質量%)100質量部に対し、有機バインダーであるアクリル樹脂10質量部を水に分散させることにより調製した水性スラリー(固形分濃度1.0質量%)を用い、さらに「2.触媒コンバーター用保持材および触媒コンバーターの作製」工程において、電気炉中での加熱処理温度を900℃から(上記ガラス繊維の軟化点未満の温度である)700℃に変更した以外は、実施例1と同様に処理して、触媒担体1とケーシング2間に触媒コンバーター用保持材3が介装された触媒コンバーターを作製した。
【0088】
(比較例9)
実施例1の「1.触媒コンバーター用保持材の形成材作製」工程において、水性スラリーとして、骨格繊維であるアルミナ繊維(Al含有割合96質量%、SiO含有割合4質量%)100質量部に対し、有機バインダーであるアクリル樹脂10質量部を水に分散させることにより調製した水性スラリー(固形分濃度1.0質量%)を用い、さらに「2.触媒コンバーター用保持材および触媒コンバーターの作製」工程において電気炉中での加熱処理を行わなかった以外は、実施例1と同様に処理して、触媒担体1とケーシング2間に触媒コンバーター用保持材3が介装された触媒コンバーターを作製した。
【0089】
(初期面圧の測定)
実施例1〜実施例3および比較例1〜比較例9の「1.触媒コンバーター用保持材の形成材作製」工程で各々得られた触媒コンバーター用保持材の形成材を、各実施例または比較例における「2.触媒コンバーター用保持材および触媒コンバーターの作製」工程での加熱条件下(900℃で30分間加熱、700℃で30分間加熱または非加熱)で処理した後、その嵩密度が0.30g/ cmになるまで10mm/分間の速度で圧縮して初期面圧を測定した。
結果を表1に示す。
【0090】
(摩擦係数の測定)
上記各実施例および比較例で得られた触媒コンバーターにおいて、ケーシング2と触媒コンバーター用保持材3との間の摩擦係数を測定した。
すなわち、実施例1〜実施例3および比較例1〜比較例9の「1.触媒コンバーター用保持材の形成材作製」工程で各々得られた触媒コンバーター用保持材の形成材を、各実施例または比較例における「2.触媒コンバーター用保持材および触媒コンバーターの作製」工程で使用したケーシング2と同一材質(SUS429)の平板上に載置し、その嵩密度が0.30g/cmになるまで圧縮した状態で、各実施例または比較例における加熱条件下(900℃で30分間加熱、700℃で30分間加熱または非加熱)で処理した後、上記0.30g/cmの嵩密度が維持されるように錘を載せた条件で、錘を横方向に5mm/分の速度で引っ張ることで引張荷重を測定し、測定された引張荷重を錘の重量により与えられる垂直荷重で除算することにより摩擦係数を算出した。
結果を表1に示す。なお、実施例1〜実施例3においては保持材3とケーシング2に対応する平板が固着しており、摩擦係数が1.00以上になることから、表1では摩擦係数値として(最低値である)1.00を記載している。
【0091】
(保持力の測定)
上記各実施例および比較例で各々得られた触媒担体1とケーシング2間に触媒コンバーター用保持材3が介装された触媒コンバーターにおいて、触媒コンバーター内における触媒コンバーター用保持材3の保持力を以下の方法で測定した。
すなわち、実施例1〜実施例3および比較例1〜比較例9で各々得られた触媒コンバーターにおいて、上述した方法で測定した圧縮時嵩密度(0 .30g/cm)における初期面圧値および摩擦係数、保持材3の面積(375mm×80mm)の積により保持力(N)を算出した。
結果を表1に示す。
【0092】
(総合判定)
以下の基準により、総合判定を行った。
○:保持力が2500N以上であり、かつ摩擦係数が0.5以上である。
×:保持力が2500N未満であるか、または摩擦係数が0.5未満である。
結果を表1に示す。
【0093】
【表1】
【0094】
表1に示すように、実施例1〜実施例3および比較例1〜比較例6で得られたガラス繊維を含む触媒コンバーター用保持材と、比較例7〜比較例9で得られたガラス繊維を含まない触媒コンバーター用保持材とを比較すると、アルミナ繊維よりもガラス繊維の方が面圧が低いために、実施例1〜実施例3および比較例1〜比較例6で得られたガラス繊維を含む触媒コンバーター用保持材の方が保持材の初期面圧も低い傾向にあり、また、ガラス繊維の軟化点以上の温度で加熱処理して得られた実施例1〜実施例3で得られた触媒コンバーター用保持材は、ガラス繊維の軟化点未満の温度で加熱処理して得られた比較例1、比較例3および比較例5で得られた触媒コンバーター用保持材よりも初期面圧がさらに低くなる傾向にある。
【0095】
しかしながら、表1より、実施例1〜実施例3で得られたガラス繊維を含む触媒コンバーター用保持材は、特定の骨格繊維とガラス溶融物を含む繊維集成体からなり、上記骨格繊維同士が上記ガラス溶融物により固着され、また、係る保持材を構成する骨格繊維がさらに触媒担体およびケーシングと固着していることにより、骨格繊維同士、骨格繊維と触媒担体、骨格繊維とケーシングが各々強固に固定されるため、摩擦係数が高く、初期面圧の低下を補って保持力が高く、耐熱性に優れるとともに、長期間使用した場合であっても優れた耐久性を発揮し得るものであることが分かる。
【0096】
一方、表1より、比較例1〜比較例6で得られた触媒コンバーターは、ガラス繊維を構成するガラスの軟化点未満の温度で加熱処理するか、加熱処理せずに作製されたものであり、比較例7〜比較例9で得られた触媒コンバーターは、ガラス繊維を使用せずに作製されたものであることから、触媒コンバーター用保持材を構成する骨格繊維同士がガラス溶融物により固着されることがなく、また触媒コンバーター用保持材を構成する骨格繊維が触媒担体やケーシングと固着されることもないことから、保持力および摩擦係数が低く、長期間使用した場合に耐久性に劣るものであることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明によれば、耐熱性に優れ、長期間使用した場合であっても優れた耐久性を発揮し得るとともに、低コストに製造可能な保持性に優れた触媒コンバーター用保持材、当該触媒コンバーター用保持材の製造方法、触媒コンバーターおよび触媒コンバーターの製造方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0098】
1 触媒担体
2 ケーシング
3 保持材
図1
図2