【解決手段】ワーク保持装置40は、工作機械10のテーブル14に取り付けられる。ワーク保持装置40は、周方向の表面に刃部を有する棒状の工具2にて貫通穴1aの内面が加工されるワーク1を保持する。ワーク保持装置40は、ワーク1が固定されるベース部材41と、工具2を支持する工具支持部材42と、ベース部材41に対して工具支持部材42を移動可能に支持する支持部43とを備える。支持部43は、工具支持部材42にて工具2を支持したときの工具2の長手方向に沿って、工具支持部材42がベース部材41に対して移動可能に形成されている。
【背景技術】
【0002】
従来からワークに形成された穴部の内径を広げる中ぐり加工が知られている。中ぐり加工では、穴部の径を大きくする他にも穴部の芯出しを行うことができる。ここで、ワークに形成された複数の穴部が所定の方向に並んで配置されている場合がある。この場合には、ワークを切削する工具を複数の穴部に通した状態にして、工具を回転すると共に工具を移動させることにより、複数の穴部の内面を加工することができる。
【0003】
例えば、内燃機関のシリンダブロックにおいて、クランクシャフトが配置される貫通穴を加工する場合がある。シリンダブロックには、互いに離間して下穴となる複数の貫通穴が予め形成されている。そして、外周面に複数の刃部を有する棒状の工具を貫通穴の内部に配置する。次に、工具を回転すると共に工具を移動することにより複数の貫通穴の内面を同時に加工することができる。このような加工方法は、ラインボーリング加工と称される。ラインボーリング加工では、複数の貫通穴が同軸状になるように加工することができる。
【0004】
特開2010−52069号公報においては、内燃機関のシリンダブロックに形成されたクランクシャフトを挿通する穴部を加工する工作機械が開示されている。この工作機械は、円柱状の工具と、工具により加工が行われる加工対象物と、工具の先端部を回転可能に支持し、工具の軸方向に動作可能である支持手段とを備えることが開示されている。
【0005】
実開平3−82130号公報においては、ラインボーリング加工を行う工具を自動的に交換する自動交換機が開示されている。この自動交換機は、加工ユニットの側方に配置されたマガジン装置と、グリッパー付き挿入装置とを備えることが開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
工作機械にてラインボーリング加工を行う場合には、上記の特開2010−52069号公報に開示されているように、予め主軸に工具の一方の端部をクランプさせる。次に、ワークをテーブルに固定する。そして、工作機械がワークまたは工具を移動することによりワークの貫通穴に工具を挿入する。そして、工具の他方の端部を支持した後に貫通穴の加工を行う。
【0008】
このように、ワークをテーブルに固定した後にワークの複数の貫通穴に工具を挿入するために、工作機械は、少なくとも工具の長さにおいて、ワークまたは工具を移動させる必要がある。たとえば、工具の長手方向に沿って延びるZ軸の方向において、工具またはワークを長距離にて移動させる必要がある。このために、工作機械が大型になるという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のワーク保持装置は、工作機械のテーブルに取り付けられ、周方向の表面に刃部を有する棒状の工具にて貫通穴の内面が加工されるワークを保持するワーク保持装置であって、ワークが固定されるベース部材と、工具を支持する工具支持部材と、ベース部材に対して工具支持部材を移動可能に支持する支持手段とを備える。工具支持部材は、工具の先端側の端部を支持する先端側支持部と、先端側支持部から離れて配置され、工具の基端側の端部を支持する基端側支持部と、先端側支持部および基端側支持部を連結する連結部とを含む。支持手段は、工具支持部材にて工具を支持したときの工具の長手方向に沿って、ベース部材に対して工具支持部材を移動可能に支持する。
【0010】
上記発明においては、ベース部材は、工作機械のパレット交換装置にてテーブルに着脱可能に形成されており、ベース部材にワークが固定され、更にワークの貫通穴に挿通された工具が工具支持部材に支持された状態で、テーブルに着脱可能に形成されることができる。
【0011】
上記発明においては、先端側支持部および基端側支持部は、互いに離れる方向に独立して移動可能に形成されており、工具支持部材は、先端側支持部と基端側支持部とが互いに離れる方向に、先端側支持部および基端側支持部のうち少なくとも一方を付勢する付勢手段を含むことができる。
【0012】
本発明の工作機械は、前述のワーク保持装置と、ワーク保持装置を固定するテーブルと、工具を支持する主軸と、テーブルと主軸とを直線状に相対移動させる移動装置とを備える。ワーク保持装置は、テーブルに固定された時に、工具の長手方向がテーブルと主軸とを相対移動させる方向と平行になるように形成されている。
【0013】
上記発明においては、主軸は、工具が挿入される挿入部を有し、移動装置がテーブルと主軸とを相対的に移動することにより、工具支持部材と主軸とが接近し、主軸の挿入部に工具が挿入されるように形成されており、ワークを加工する時に、主軸が工具を回転する共に移動装置がテーブルと主軸とを相対的に移動することにより、ワークに対する工具の相対位置が変化してワークに形成された貫通穴の内面が加工されることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、棒状の工具をワークの貫通穴に挿通して中ぐり加工を行う工作機械に取り付けられ、工作機械の小型化を図ることができるワーク保持装置およびワーク保持装置を備える工作機械を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1から
図5を参照して、実施の形態におけるワーク保持装置およびワーク保持装置を備える工作機械について説明する。本実施の形態においては、数値制御式の工作機械を例示して説明する。本実施の形態の工作機械は、棒状に延びる工具を用いて下穴の内面を切削する中ぐり加工を行う。
【0017】
図1は、実施の形態における工作機械の概略部分断面図である。工作機械10は、工場等の床面に設置されるベッド12と、ベッド12の表面に立設するコラム16と、コラム16に支持された主軸ヘッド18とを備える。工作機械10は、工具2とワーク1とを相対移動させる移動装置を備える。
【0018】
本実施の形態の移動装置は、ワーク1に対して工具2をZ軸方向に相対移動させるZ軸移動装置を含む。ベッド12の上面には、Z軸ガイドレール36が固定されている。本実施の形態におけるZ軸ガイドレール36は、Z軸方向(
図1において左右方向)に延びるように配置されている。
【0019】
Z軸ガイドレール36は、テーブル14を支持する。テーブル14にはZ軸ガイドレール36と係合するスライダ37が固定されている。スライダ37は、Z軸ガイドレール36に沿って移動する。このために、テーブル14は、Z軸ガイドレール36に沿ってZ軸方向に移動する。テーブル14の上面には、ワーク1を保持するワーク保持装置40が取り外し可能なように固定される。Z軸移動装置は、テーブル14をZ軸方向に移動するためのサーボモータを含む。本実施の形態のZ軸移動装置は、テーブル14と主軸20とを直線状に相対移動させる移動装置として機能する。
【0020】
移動装置は、ワーク1に対して工具2をX軸方向に相対移動させるX軸移動装置を備える。ベッド12の上面には、X軸ガイドレール32が固定されている。本実施の形態におけるX軸は、Z軸に直交し、更に水平方向(
図1の紙面に垂直方向)に延びる。X軸ガイドレール32には、スライダ33を介してコラム16を支持している。コラム16は、X軸ガイドレール32に沿ってX軸方向に移動する。X軸移動装置は、コラム16をX軸の方向に移動させるサーボモータを含む。
【0021】
移動装置は、ワーク1に対して工具2をY軸方向に相対移動させるY軸移動装置を備える。コラム16において、ワーク1に対向する前面には、Y軸ガイドレール34が固定されている。Y軸ガイドレール34には、スライダ35を介して主軸ヘッド18が支持されている。スライダ35は、主軸ヘッド18に固定されている。主軸ヘッド18は、Y軸ガイドレール34に沿って、Y軸方向に移動する。主軸ヘッド18は、主軸20を回転自在に支持する。また、Y軸移動装置は、主軸ヘッド18をY軸の方向に移動させるサーボモータを含む。
【0022】
主軸20には工具2が装着される。主軸20には、工具2を回転させるためのモータが接続されている。このモータが駆動することにより主軸20が回転する。主軸20の回転力が工具2に伝達され、工具2を回転させることができる。本実施の形態における工作機械10は、工具2を回転させながら、コラム16、主軸ヘッド18、およびテーブル14の少なくとも一つの部材を、各軸の方向に移動させることにより、ワーク1を所望の形状に切削することができる。
【0023】
図2に、本実施の形態におけるワーク保持装置の概略破断図を示す。本実施の形態の工作機械10は、中ぐり加工のうちラインボーリング加工を実施する。
図1および
図2を参照して、工作機械10は、ワーク1を保持するワーク保持装置40を備える。ワーク1は、ワーク保持装置40を介してテーブル14に固定される。
【0024】
本実施の形態におけるワーク1は、内部にピストンが配置される内燃機関のシリンダブロックである。ワーク1には、ピストンを支持するためのクランクシャフトが挿通される。本実施の形態においては、クランクシャフトを挿通する貫通穴1aの内面を切削する。複数の貫通穴1aは、互いに離間して形成されている。ワーク1には、下穴として、予め定められた径の貫通穴1aが形成されている。ワークとしては、この形態に限られず、中ぐり加工を行う任意のワークを採用することができる。
【0025】
本実施の形態の工具2は、棒状に形成されているラインボーリング工具である。工具2は、棒状に延びる工具本体21と、工具本体21の周方向の表面に配置された刃部22とを有する。複数の刃部22は、互いに離れて配置されている。本実施の形態の複数の刃部22は、ワーク1の複数の貫通穴1aに対応する位置に配置されている。
【0026】
ワーク保持装置40は、ワーク1が固定されるベース部材41を含む。ベース部材41は、ワーク1の高さを調整する為の架台49を含む。ワーク1は、架台49に固定されている。ワーク1を加工する場合には、ベース部材41はテーブル14に固定される。本実施の形態におけるベース部材41は、ワーク1が固定されるパレットとしての機能を有する。ワーク保持装置40は、パレット交換装置にてテーブル14から着脱可能に形成されている。
【0027】
本実施の形態におけるワーク保持装置40は、ワーク1を保持するとともに工具2を支持する。ワーク保持装置40は、工具2を支持する工具支持部材42を備える。工具支持部材42は、工具2の先端側の端部を支持する先端側支持部46と、工具の基端側の端部を支持する基端側支持部47を有する。先端側支持部46と基端側支持部47とは、互いに離れて配置されている。工具支持部材42は、先端側支持部46と基端側支持部47とを連結する連結部48を含む。先端側支持部46および基端側支持部47は、連結部48から立設するように形成されている。
【0028】
先端側支持部46には、挿入穴46aが形成されている。挿入穴46aには、軸受け51が配置されている。軸受け51は、工具2の先端側の端部を回転可能に支持する。軸受け51は、工具2の先端の端部を取り外し可能にクランプするように形成されている。一方で、軸受け51は、工具2を取りつけた後に工具2の抜ける方向に力が加わっても、工具支持部材42から抜けないように形成されている。
【0029】
基端側支持部47には、挿入穴47aが形成されている。挿入穴47aには、工具2を挿通する軸受け53が配置されている。軸受け53の嵌合穴53aは、工具本体21のテーパ形状の部分が嵌合するように形成されている。工具本体21は、軸受け53により、基端側支持部47に回転可能に支持されている。本実施の形態では、テーパ形状により嵌合される例を説明しているが、この形態に限られず、例えば、嵌合する部分は円筒形状の嵌合穴を有する軸受けと、肩形状を有する工具本体とを組み合わせて形成されていても構わない。
【0030】
ワーク保持装置40は、ベース部材41に対して工具支持部材42を移動可能に支持する支持手段として、支持部43を備える。支持部43は、ベース部材41に固定されたガイドレール44と、ガイドレール44に係合し、ガイドレール44に沿って移動するスライダ45とを含む。スライダ45は、工具支持部材42に固定されている。ガイドレール44は、ワーク保持装置40がテーブル14に取り付けられた時に、Z軸方向に延びるように形成されている。支持部43は、工具支持部材42が工具2を支持したときの工具2の軸方向に沿って、工具支持部材42がベース部材41に対して移動するように形成されている。
【0031】
このように、工具支持部材42は、ベース部材41に対して移動可能に形成されている。または、ベース部材41は、矢印81に示すように、停止した工具支持部材42に対して移動できるように形成されている。工具支持部材42は、ワーク保持装置40がテーブル14に固定されたときに、工具2の長手方向がテーブル14の移動方向と平行になるように形成されている。本実施の形態においては、ベース部材41がベッド12に対して停止した状態である時に、工具支持部材42がZ軸方向に移動するように形成されている。
【0032】
ワーク保持装置40は、ベース部材41に対して工具支持部材42が移動しないように工具支持部材42を一時的に固定したり固定を解除したりする固定機構を備える。工具2にてワーク1の切削を行う時に、固定機構は、固定を解除する。また、工具2にてワーク1の切削を行う時以外は、ベース部材41に対して工具支持部材42が移動しないように、固定機構により工具支持部材42を固定することができる。
【0033】
本実施の形態における工具2は、継手23を介して工具ホルダ24に連結されている。工具ホルダ24は、主軸20に形成された挿入部20aに挿入される。そして、主軸20は、工具ホルダ24を保持する。本実施の形態では、工具ホルダ24と工具本体21との間には、継手23が配置されている。本実施の形態の継手23は、オルダム継手である。継手23は、工具本体21の中心軸と主軸20の回転軸とが一致しない場合でも主軸20の回転力を工具2に伝達する機能を有する。
【0034】
継手23としては、オルダム継手に限られず、工具2が工具支持部材42にて支持された時の工具2の中心軸と、主軸20の回転軸とがずれていても、主軸20の回転力を工具2に伝達することができる任意の継手を採用することができる。また、工具2の中心軸を主軸20の回転軸に一致させることができる場合には、継手23は配置されていなくても構わない。
【0035】
図3に、本実施の形態における工作機械のブロック図を示す。工作機械10は、各軸に取り付けられた各軸サーボモータ39を制御する制御装置11を備える。制御装置11は、バスを介して互いに接続されたCPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、およびROM(Read Only Memory)等を有する演算処理装置を含む。制御装置11には、加工プログラム71が入力される。制御装置11は、加工プログラム71に基づいて、各軸サーボモータ39を駆動する。そして、工作機械10は、ワーク1に対する工具2の相対位置を変更しながらワーク1を加工することができる。
【0036】
本実施の形態における工作機械10は、ワークを自動的に交換する自動交換装置としてのパレット交換装置4を備える。パレット交換装置4は、制御装置11に制御されている。パレット交換装置4は、予め定められた場所に配置されているワーク保持装置40を搬送して、テーブル14に固定する。また、パレット交換装置4は、テーブル14に固定されているワーク保持装置40をテーブル14から取り外して、予め定められた場所まで搬送することができる。
【0037】
本実施の形態におけるベース部材41は、パレットとして機能するために、パレット交換装置4は、ベース部材41をテーブル14に取り付けたり、テーブル14から取り外したりすることができる。特に、本実施の形態において、パレット交換装置4は、ベース部材41にワーク1が固定され、さらに、工具支持部材42に工具2が取り付けられた状態にて、ベース部材41をテーブル14に取り付けたりテーブル14から取り外したりすることができる。
【0038】
本実施の形態における工作機械10では、ワーク保持装置40をテーブル14に固定する前に、ワーク1および工具2をワーク保持装置40に取り付ける。例えば、作業者は、工作機械10から離れた作業場所において、ワーク1をベース部材41に固定するとともに、工具2を工具支持部材42に取りつける。
【0039】
始めに、ワーク保持装置40の固定機構は、ベース部材41に対して工具支持部材42が移動しないように、工具支持部材42を固定する。作業者は、ワーク保持装置40の架台49の上面にワーク1を固定する。架台49の高さは、ワーク1の貫通穴1aの中心軸の高さと、工具2の中心軸の高さとが一致するように形成されている。次に、作業者は、工具支持部材42に配置された軸受け53の嵌合穴53aに工具2を挿通する。作業者は、工具2をワーク1の複数の貫通穴1aに挿通する。工具2には、継手23および工具ホルダ24が連結されている。そして、作業者は、挿入穴46aに配置されている軸受け51に工具2の先端を配置する。工具本体21の先端側の端部を軸受け51にて支持する。工具2は、工具支持部材42に回転可能に支持される。
【0040】
ワーク1および工具2をワーク保持装置40に取り付ける作業では、作業者は、ワーク1の貫通穴1aの中心軸と、工具2の中心軸とが一致するように位置合わせの調整を実施する。例えば、作業者は、架台49の上面におけるワーク1の位置を調整することができる。
【0041】
次に、パレット交換装置4は、工具2およびワーク1が配置されたワーク保持装置40をテーブル14の上面に配置して、ワーク保持装置40をテーブル14に固定する。工具2の長手方向(工具2の延びる方向)がテーブル14の移動方向と平行になる。
【0042】
図4は、テーブルにワーク保持装置を配置したときの加工前の工作機械の概略図である。工具2に連結された工具ホルダ24は、主軸20から離れている。Z軸移動装置は、工具ホルダ24と主軸20とが近接するように、テーブル14を配置することが好ましい。
【0043】
次に、Z軸移動装置は、矢印83に示すように、テーブル14を移動する。工具支持部材42と主軸20とが接近する。工具支持部材42に支持された工具2は、主軸20に向かって移動する。そして、矢印84に示すように、工具ホルダ24が主軸20の挿入部20aに挿入される。そして、主軸20は、工具ホルダ24を保持する。工具2は、主軸20に連結される。この後に、ワーク保持装置40の固定機構は、工具支持部材42の固定を解除する。ベース部材41は、工具支持部材42に対してZ軸方向に自由に移動する状態になる。
【0044】
次に、
図1を参照して、主軸ヘッド18が主軸20を回転することにより、工具2が中心軸の周りに自転する。継手23が配置されていることにより、工具2の中心軸と主軸20の回転軸とが厳密に一致にしていなくても、工具2を回転させることができる。
【0045】
次に、Z軸移動装置は、矢印82に示す様に、テーブル14をZ軸方向に移動することにより、工具2の刃部22にて、ワーク1の貫通穴1aの内面を加工することができる。テーブル14がZ軸方向に移動することにより、ベース部材41に固定されたワーク1が矢印81に示すZ軸方向に移動する。ところが、工具2は、主軸20に連結されているために、工具支持部材42および工具2は移動せずに、Z軸方向においては一定の位置に維持される。このために、工具2に対してワーク1が相対的にZ軸方向に移動して、貫通穴1aの内面を切削することができる。このように、加工する時に、移動装置がテーブル14と主軸20とを相対的に移動することにより、ワーク1に対する工具2の相対位置が変化して、貫通穴1aの加工を行うことができる。
【0046】
このように、本実施の形態の工作機械10は、ワーク1を加工する時に、主軸20が工具2を回転する共にZ軸移動装置がテーブル14を移動することにより、工具2に対してワーク1が直線状に移動してワーク1に形成された貫通穴1aの内面を加工することができる。
【0047】
工具2の位置は工具支持部材42にて定められる。また、工具支持部材42に対するワーク1の位置合わせは、工作機械10にワーク保持装置40が配置される前に行われている。このために、高い精度でワーク1の貫通穴1aを加工することができる。また、本実施の形態においては、複数の刃部22は、複数の貫通穴1aの位置に対応して配置されているために、複数の貫通穴1aを一度に加工することができる。また、複数の貫通穴1aの中心軸が揃うように加工することができる。
【0048】
図4を参照して、ワーク1の加工が完了した時には、Z軸移動装置は、矢印85に示すように、テーブル14をコラム16から離れる向きに移動する。主軸20は、工具ホルダ24の連結を解除する。工具ホルダ24は、
図4に示す様に、主軸20から離れた位置に配置される。
【0049】
次に、パレット交換装置4は、ワーク保持装置40のベース部材41を保持する。パレット交換装置4は、テーブル14からワーク保持装置40を取り外す。そして、パレット交換装置4は、ワーク保持装置40を工作機械10から離れた予め定められた場所に移動することができる。そして、作業者は、ワーク保持装置40から工具2およびワーク1を取り外すことができる。
【0050】
本実施の形態における工作機械10では、ワーク保持装置40においてワーク1に工具2を予め挿通する。そして、この状態で、ワーク保持装置40を工作機械10に配置する。このために、ワークをテーブルに固定した後に、工具の延びる方向に長い距離にてワークまたは工具を移動させる必要がなく、工作機械を小型にすることができる。例えば、従来の技術の工作機械においては、工具を主軸に取り付けた後に、テーブルに取り付けたワークを移動することにより、ワークの貫通穴に工具を挿通する。このために、テーブルは、工具の延びる方向に長い距離にて移動する必要がある。しかしながら、本実施の形態のワーク保持装置を用いた場合には、テーブルの移動距離は、工具を主軸に連結させる長さと、刃部にてワークを加工できる長さを考慮すれば良い。このために、テーブルの移動距離を短くすることができる。
【0051】
また、本実施の形態のワーク保持装置を用いることにより、ワークの貫通穴に工具を挿通する作業を工作機械において実施する必要がないため、工作機械にて要する加工時間を短くすることができる。すなわち、工具をワークに挿通させる時間を削減することができて、工作機械におけるワークの加工時間を短くすることができる。このため、工作機機械は、多くのワークを加工することができる。
【0052】
本実施の形態における工作機械は、パレット交換装置がテーブルにワーク保持装置を着脱するように形成されているが、この形態に限られず、作業者が、テーブルにワーク保持装置を取り付けたり、テーブルからワーク保持装置を取り外したりしても構わない。
【0053】
図5に、本実施の形態における他のワーク保持装置の概略部分断面図を有する。他のワーク保持装置55は、連結部48が凹部を有する第1の部分48aと、凹部に嵌合する嵌合部を有する第2の部分48bとを含む。工具支持部材42において、先端側支持部46および基端側支持部47は、互いに離れる方向に独立して移動可能に形成されている。ワーク保持装置55は、先端側支持部46および基端側支持部47のうち少なくとも一方を付勢する付勢手段としての付勢部材61を備える。本実施の形態における付勢部材61は、コイルスプリングにより構成されている。付勢部材61は、第1の部分48aの凹部の内部に配置されている。
【0054】
先端側支持部46および基端側支持部47は、付勢部材61により、矢印86に示すように互いに離れる向きに付勢されている。先端側支持部46は、基端側支持部47から離れる向きに付勢される。ところが、工具2の先端側の端部が軸受け51に支持されているために、先端側支持部46から工具2が抜けることが防止される。また、工具本体21のテーパ形状の部分が嵌合穴53aに接触することにより、工具2が基端側支持部47から抜けることが防止される。工具2には両端が引っ張られる向きに力が加わる。このために、工具2および工具支持部材42の剛性を向上させることができる。この結果、工具2を回転させた時に、工具2が振動したり、がたついたりすることを抑制できる。そして、工作機械10は、ワーク1の加工精度を向上させることができる。
【0055】
また、本実施の形態の他のワーク保持装置55は、ワーク1に加えて工具2が取り付けられた状態で搬送される。このために、搬送途中に工具2が振動したりがたついたりすることを抑制できる。たとえば、パレット交換装置4は、付勢部材61の付勢力により安定した状態にてワーク保持装置55を搬送することができる。
【0056】
なお、付勢手段としては、コイルスプリングに限られず、基端側支持部および先端側支持部のうち少なくとも一方を付勢する任意の手段を採用することができる。例えば、付勢手段は、油圧により基端側支持部および先端側支持部を付勢しても構わない。
【0057】
本実施の形態の工作機械10は、加工期間中に、工具2の長手方向(Z軸方向)にテーブル14が移動する一方で、主軸20は工具2の長手方向に移動しないように形成されている。工作機械は、この形態に限られず、工具の長手方向に沿って主軸とテーブルとが相対移動するように形成されていれば構わない。すなわち、工作機械は、テーブルと主軸とを直線状に相対移動させる移動装置を備えていれば構わない。ワーク保持装置は、テーブルに固定された時に、工具の長手方向がテーブルと主軸とを相対移動させる方向と平行になるように形成することができる。
【0058】
そして、ワーク保持装置をテーブルに配置した後に、移動装置がテーブルと主軸とを相対的に移動することにより、工具支持部材と主軸とが接近し、主軸の挿入部に工具が挿入されるように形成することができる。ワークの加工期間中には、主軸が工具を回転する共に移動装置がテーブルと主軸とを相対的に移動することにより、ワークに対する工具の相対位置が変化してワークに形成された貫通穴の内面を加工することができる。
【0059】
例えば、工作機械は、主軸をZ軸方向に移動可能に形成し、テーブルはZ軸方向には移動しないように形成することができる。この工作機械では、ワークおよび工具を配置したワーク保持装置をテーブルに固定する。移動装置が主軸をZ軸方向に移動することにより、主軸の挿入部に工具が挿入されて、工具が主軸に支持される。そして、ワークを加工する時には、テーブルはZ軸方向の位置が維持された状態で、主軸をZ軸方向に移動する。テーブルは移動せずに、工具が工具支持部材と共にZ軸方向に移動する。ワークに対する工具の相対的な位置が変化して、ワークの貫通穴の内面を加工することができる。または、工作機械は、主軸をZ軸方向に移動可能に形成し、更に、テーブルをZ軸方向に移動可能に形成しても構わない。移動装置が主軸およびテーブルのうち少なくとも一方を移動することにより、テーブルと主軸とを直線状に相対移動させることができる。
【0060】
本実施の形態の工作機械は、3個の直動軸を有するが、この形態に限られず、主軸に工具を装着したときに、工具の長手方向に沿ってテーブルおよび主軸の少なくとも一方が移動可能に形成されている任意の工作機械を採用することができる。
【0061】
上述のそれぞれの図において、同一または相等する部分には同一の符号を付している。なお、上記の実施の形態は例示であり発明を限定するものではない。また、実施の形態においては、特許請求の範囲に示される実施の形態の変更が含まれている。