【解決手段】少なくとも支持層2と剥離層1の2層からなる易剥離性シーラントフィルム10であって、支持層2が、線状低密度ポリエチレンが100〜70質量%及びプロピレン単独重合体が0〜30質量%の組成物からなり、剥離層1が、低密度ポリエチレンが40〜60質量%、高密度ポリエチレンが10〜20質量%、プロピレン単独重合体が20〜50質量%の組成物からなり、前記支持層2の前記プロピレン単独重合体のメルトフローレートが1g/10分〜9g/10分であり、前記剥離層1の前記プロピレン単独重合体のメルトフローレートが1g/10分〜9g/10分であることを特徴とする易剥離性シーラントフィルム10。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の易剥離性シーラントフィルムは、少なくとも支持層と剥離層の2層からなる。
図1に示すように、剥離層1は易剥離性シーラントフィルム10の一方の表面層を構成し被着体と貼り合わせられる際に被着体と接する面を構成し、容器や袋に使用される際には内容物に接触する内面を有する内層となる。支持層2は剥離層1に隣接する層である。本発明の易剥離性シーラントフィルムは、貼り合わせ後に剥離することが可能であり、剥離の際には、剥離層1と支持層2との間で剥離する層間剥離タイプのシーラントフィルムである。
層間剥離タイプの剥離を、
図2を用いて説明する。
図2は本発明の易剥離性シーラントフィルム10と基材7とが積層した蓋材(積層体20)と容器4との剥離の進行する様子をその断面図で図示したものである。
図2の例では、剥離開始時に易剥離性シーラントフィルム10の剥離層1が破断して剥離開始部6ができる。次に剥離開始部6から始まった易剥離性シーラントフィルム10の破壊が、剥離層1と支持層2との層間に沿って進行して剥離する。その後再び剥離層1がフランジ面5の幅と同じ長さで破断して剥離が終了する。これにより、容器4のフランジ面5に剥離層1の一部が剥離痕として残る。
図2及び3の例では説明の容易化のためフランジ面5の幅と同じ幅だけシーラントフィルムが貼り合わされているが、通常はフランジ面5の幅より狭い幅で貼り合わされる。
【0012】
<剥離層>
本発明の易剥離性シーラントフィルムにおける剥離層は、低密度ポリエチレンが40〜60質量%、高密度ポリエチレン10〜20質量%、プロピレン単独重合体が20〜50質量%の組成物からなる。
【0013】
(剥離層・低密度ポリエチレン)
本発明における低密度ポリエチレンは、高圧法低密度ポリエチレンである。
空気中の酸素又は過酸化物などラジカル開始剤を触媒とし、エチレンを1000〜4000気圧、100〜350℃の条件下で塊状重合して製造されるもので、一般に、ポリエチレン系樹脂の中でも分子中の長鎖分岐が長く且つ分岐数が多いことが知られている。
本発明における低密度ポリエチレンは、密度が0.915〜0.930g/cm
3、メルトフローレート(以下「MFR」という。)が0.5〜2.0g/10分であることが好ましい。
なお、本発明において密度とは、JIS K 7112 D法の密度勾配管法で測定された値である。また、MFRは、JIS K 7210により、荷重21.18Nで、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン及び線状低密度ポリエチレンのポリエチレン系樹脂の場合には190℃、後述するポリプロピレン系樹脂の場合には230℃の条件で測定された値である。
低密度ポリエチレンの密度が0.915g/cm
3未満であると剥離開始時にきれいに剥離層が破断して破壊されず、延びるため毛羽立ちや膜残りが生じやすくなる。低密度ポリエチレンのMFRが0.5g/10分〜2.0g/10分の範囲を外れると、インフレーション法による安定的な製膜が困難となりやすい。
【0014】
低密度ポリエチレンの含有量は、組成物の総質量に対し、40〜60質量%であり、50〜60質量%がより好ましい。
低密度ポリエチレンの含有量が上記数値範囲内であることにより、所望の剥離強度に調整することができ、且つ剥離面の外観を良好にすることができる。
【0015】
(剥離層・高密度ポリエチレン)
本発明における高密度ポリエチレンは、密度が0.940〜0.965g/cm
3、MFRが15〜20g/10分のポリエチレンである。
密度が0.940g/cm
3未満であると、剥離部の外観が低下する傾向がある。
また、MFRが15g/10分未満であると、剥離時の毛羽立ちや糸引きを誘発し外観が悪化するため好ましくない。一方MFRが20g/10分を超えると製膜時の粘度が低下し製膜が困難となるため好ましくない。
剥離層における高密度ポリエチレンは、剥離時に剥離層が分断するときの毛羽立ちや糸引きの誘発を抑制し、剥離層の破断が延性的ではなく脆性的に破断しやすくなる特性を付与する成分である。
本発明における高密度ポリエチレンは、バルク法、溶液法、スラリー法、気相法等各種の製造プロセスで製造されたものが市場で入手可能でありいずれも好適に用いられる。
高密度ポリエチレンは、どのような触媒、方法によって製造されたものでも構わない。具体的に触媒としては、チーグラー・ナッタ触媒又はシングルサイト触媒等を使用して製造されたものがいずれも好適に用いられる。
一般にシングルサイト触媒によって得られるポリエチレンは、チーグラー・ナッタ触媒で製造されるものよりも分子量分布が狭く、本発明における高密度ポリエチレンでは、このような分子量分布が狭いものが、剥離強度のばらつきが小さくなるためより好適である。
【0016】
高密度ポリエチレンの含有量は、組成物の総質量に対し、10〜20質量%である。
高密度ポリエチレンの含有量が上記下限値以上であると、剥離面の外観を良好にすることができる。
高密度ポリエチレンの含有量が上記上限値以下であると、剛性を低くすることができ、剥離時のノッキングを抑制することができる。
【0017】
(剥離層・プロピレン単独重合体)
プロピレンモノマーの重合体であるポリプロピレン系樹脂は一般にその組成によりプロピレンの単独重合体であるホモポリプロピレンと、プロピレンとエチレンその他のオレフィンとの共重合体であるランダムポリプロピレン又はブロックポリプロピレンとに分類される。
本発明の剥離層に用いるプロピレン単独重合体は、前記のホモポリプロピレンに相当するポリプロピレン系樹脂である。ランダムポリプロピレン及びブロックポリプロピレンのプロピレン共重合体を用いると、剥離層に配合するポリエチレン成分との親和性が向上してしまい、剥離面にはむしり取られたような毛羽立ちが多くなり外観不良となるため好ましくない。
本発明において用いられるプロピレン単独重合体のMFRは、1.0g/10分〜9.0g/10分であり、1.0〜7.0g/10分がより好ましい。MFRが1g未満であると剥離強度が低くなるため好ましくない。MFRが9g/10分を超えると糸引きが激しくなり外観が悪くなるため好ましくない。また、一般にプロピレン単独重合体の密度は0.880g/cm
3〜0.920g/cm
3である。
プロピレン単独重合体は、被着体がポリプロピレンの場合に被着体との接着強化成分として作用するため、確実に層間剥離とすることに対して有効である。また、被着体がポリエチレンの場合は接着阻害成分となり剥離の態様が層間剥離からシーラントフィルムの剥離層側の面と被着体とが接触する面での界面剥離となるおそれがあるため配合量に注意を要する。
【0018】
プロピレン単独重合体の含有量は、組成物の総質量に対し、20〜50質量%であり、30〜40質量%がより好ましい。
プロピレン単独重合体の含有量が上記下限値以上であると、ポリエチレンを被着体とする用途では剥離強度を低くすることができ、易剥離性とすることができる。
プロピレン単独重合体の含有量が上記上限値以下であると、ポリプロピレンを被着体とする用途で剥離強度を低くすることができ、易剥離性とすることができる。
【0019】
組成物には本発明の目的を損なわない範囲で必要に応じて、ポリブテン等のポリオレフィン系樹脂、合成樹脂フィルムで用いられる酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、アンチブロッキング剤、着色剤その他の添加剤が配合されていてもよい。
【0020】
<支持層>
本発明の易剥離性シーラントフィルムにおける支持層は、剥離層に隣接し易剥離性シーラントフィルムが剥離する際には、剥離層から層間剥離する層である。なお、このとき剥離層は被着体に接着した状態のままである。
支持層は、線状低密度ポリエチレン100〜70質量%及びプロピレン単独重合体0〜30質量%の組成物からなる。
【0021】
(支持層:線状低密度ポリエチレン)
線状低密度ポリエチレンは、密度が0.915g/cm
3〜0.930g/cm
3、MFRが0.5〜2.5g/10分であることが好ましい。
線状低密度ポリエチレンの密度が0.915g/cm
3未満であると毛羽立ちによる剥離外観の不良が発生しやすい。
密度が0.930g/cm
3を超えると、易剥離性シーラントフィルムの剛性が増加して剥離時にノッキングを起こしやすくなる。支持層は厚み比の観点から主層であり、MFRが2.5g/10分を超えると、インフレーション法による安定的な製膜が困難となりやすい。
線状低密度ポリエチレンは直鎖状低密度ポリエチレンということもあり、エチレンと、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン及び4−メチル−1−ペンテン等のα−オレフィンとの共重合体である。メタロセン触媒やシングルサイト触媒で重合された線状低密度ポリエチレンであることが製膜安定性がよいため好ましい。
【0022】
線状低密度ポリエチレンの含有量は、組成物の総質量に対し、100〜70質量%であり、80〜70質量%がより好ましい。
線状低密度ポリエチレンの含有量が上記数値範囲内であることにより、所望の剥離強度に調整することができ、且つ剥離面の外観を良好にすることができる。
【0023】
(支持層:プロピレン単独重合体)
本発明の支持層に用いるプロピレン単独重合体は、前述の本発明の剥離層に用いるプロピレン単独重合体と同様のプロピレン単独重合体である。剥離層と支持層に同一のプロピレン単独重合体を用いる事で、剥離強度が低下しすぎるのを防ぐことができるため好ましい。
支持層にプロピレン単独重合体を配合すると、剥離層との界面の接着強度が高まり、毛羽立ちや膜残りを発生させることなく易剥離性シーラントフィルムの剥離強度を高くすることができる。支持層に配合するプロピレン単独重合体が30質量%を超えると、剥離強度が増大して剥離界面の大きさや使用する消費者によっては開封が困難となるため好ましくない。
また、プロピレン単独重合体以外のブロック共重合体やランダム共重合体を用いることは外観不良となるから好ましくない。
【0024】
プロピレン単独重合体の含有量は、組成物の総質量に対し、30質量%以下であり、30〜10質量%が好ましく、30〜20質量%がより好ましい。
プロピレン単独重合体の含有量が上記数値範囲内であることにより、所望の剥離強度に調整することができ、且つ剥離面の外観を良好にすることができる。
【0025】
組成物には本発明の目的を損なわない範囲で必要に応じて、ポリブテン等のポリオレフィン系樹脂、合成樹脂フィルムで用いられる酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、アンチブロッキング剤、着色剤その他の添加剤が配合されていてもよい。
【0026】
本発明の易剥離性シーラントフィルムの総厚みは特に限定されるものではないが、およそ15μm〜100μmであり、好ましくは20μm〜50μmであり、さらに好ましくは30μm〜40μmである。15μm未満では共押出インフレーション法で安定した製膜が難しくなる。また易剥離性シーラントフィルムは、重量負荷の小さい蓋材あるいは軽量の内容物を収容する包装袋に使用される際には、50μmを超えると不必要な原価上昇の一因となる。
なお、厚みの測定は、総厚みについては接触型の機械式の厚み計、超音波や照射線の減衰率を使用した厚み計などの方法で測定することができる。また、フィルム断面を光学顕微鏡で観察することにより、総厚みだけでなく、剥離層及び支持層の厚みも測定できる。
【0027】
本発明の易剥離性シーラントフィルムにおける剥離層の厚みは、全厚みの10〜20%が好適である。
剥離層の厚みが上記下限値以上であると、共押出インフレーション製膜で均一な厚みの剥離層を得ることができる。
剥離層の厚みが上記上限値以下であると、剥離時に不可欠な剥離層の破断強度、すなわち剥離開始の抵抗を低下させることができ、大きな力で剥離する必要がないため、破断後に続く剥離の際に内容物が飛散することを防止できる。
具体的な剥離層の厚みとしては4μm〜10μmとすることが好ましい。
【0028】
本発明の易剥離性シーラントフィルムにおける支持層の厚みは、全厚みの80〜90%が好適である。
具体的な支持層の厚みとしては、およそ10μm〜90μmであり、20μm〜50μmとすることが好ましい。
【0029】
(製造方法)
本発明の易剥離性シーラントフィルムの製造方法は、本発明の易剥離性シーラントフィルムをインフレーション成形で製造することを特徴とする。具体的には、剥離層や支持層の組成物を構成する低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、プロピレン単独重合体及び線状低密度ポリエチレンの樹脂成分と、必要に応じて添加剤とを予め又は製膜時に混合する事により行われる。具体的方法としては、各成分をタンブラー、ヘンシェルミキサー等で混合後、製膜機に投入する方法、タンブラー、ヘンシェルミキサーで混合後、単軸押出機、2軸押出機、バンバリーミキサー、ニーダ等を用いて溶融混合する方法が挙げられる。
一般に、フィルムの製造方法には製膜機としてTダイを使用したキャスト法及びリングダイを使用したインフレーション法があり、本発明のように多層フィルムの場合には共押出しにより製造される。インフレーション法と比較して、Tダイを使用したキャスト法では、商業生産設備が大きくなり樹脂組成の異なるフィルムを製造する際の樹脂置換に消費する樹脂量が多いこと、製膜温度が高温であり原料樹脂の熱ダメージが懸念されることなどの観点から本発明の易剥離性シーラントフィルムにおいては、共押出インフレーション法を採用する。また、共押出インフレーション法には、水冷式又は空冷式があるが、空冷式が、製膜速度が速く幅広の製膜が可能であることから好ましい。
本発明では、本発明の特定の組成割合とすることで共押出インフレーション法で安定して製膜することを可能とした。
【0030】
詳細は定かではないが、共押出インフレーション法での製膜に適している理由は次のように考えられる。
本発明の易剥離性シーラントフィルムの支持層及び剥離層は共にポリエチレン系樹脂とポリプロピレン系樹脂の組成物からなる。ポリエチレン系樹脂はポリプロピレン系樹脂より融点が低い。したがって、製膜時には溶融しやすいポリエチレン系樹脂と溶融しにくいポリプロピレン系樹脂が溶融した状態で同時に存在している。
Tダイを使用したキャスト法での製膜時には、溶融したポリエチレン系樹脂の中で溶融しにくいポリプロピレン系樹脂は、製膜時の樹脂の流れ方向に対して直角の方向よりも樹脂の流れ方向により強く配向し、糸状に引き延ばされたまま冷却ロールで急冷されたフィルムとなる。この引き延ばされたポリプロピレン系樹脂が剥離界面の糸引きに繋がっているものと考えられる。
インフレーション法での製膜時には、溶融したポリエチレン系樹脂の中の溶融しにくいポリプロピレン系樹脂は、製膜時の樹脂の流れ方向に対して直角の方向と樹脂の流れ方向の両方に引き延ばされて、空冷で穏やかに冷却される。キャスト法のように糸状に引き延ばされたまま急冷されたフィルムとはならない。したがって剥離時に糸引きが発生することが抑制されるものと考えられる。なおインフレーション法での製膜時のブロー比は糸引きを防止する観点から2〜3とすることが好ましい。
【0031】
(易剥離性シーラントフィルムの作用効果)
溶融製膜により製造される易剥離性シーラントフィルムの剥離時に毛羽立ち、膜残り、ノッキングが生じる原因は定かではないが、フィルム中の被着体と同材質の主成分と接着性を阻害する異種材の副成分の粘度比が不適正である場合、溶融製膜において製膜と平行方向に副成分が繊維状に配向しやすくこれが剥離時に毛羽立ち、膜残り、ノッキングなどの現象につながり、程度によっては商品価値を低下させてしまうと考えられる。
本発明の易剥離性シーラントフィルムは、剥離層と支持層の各樹脂を特定の割合の組成とすることにより、溶融製膜しても、前記の粘度比が不適正となることが回避され、これにより剥離時に毛羽立ち、膜残り、ノッキングなどの商品価値を低下させる状況を回避できたものと考えられる。さらに、インフレーション法によれば、配向し難いので、より毛羽立ち等を防止できる。
【0032】
(積層体)
本発明の積層体は、本発明の易剥離性シーラントフィルムと基材とからなる。本発明の易剥離性シーラントフィルムの支持層側に基材が貼り合わせられ積層されている。
具体的な基材としては、ポリエステル、ポリアミド、ポリプロピレン等からなる一軸あるいは二軸延伸フィルム、及びそれらにアルミニウム、シリカ、アルミナ等の無機物を蒸着してなるフィルム、紙、金属箔等が挙げられる。基材は1種又は2種以上を積層して用いてもよい。また、これらの基材には着色、印刷等の加工を施すことができるので、美粧性、ガスバリア性、遮光性、耐ピンホール性、耐カール性等に優れた易剥離性の積層体を得ることができる。
易剥離性シーラントフィルムと基材との積層は、接着剤を用いてドライラミネーション法で積層する方法、ポリエチレンを介して押出サンドイッチラミネーション法で積層する方法、あるいは隣接して積層するフィルムがポリエチレンであれば加熱ロールを用いて熱貼合するサーマルラミネート法等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
基材の厚みは、6〜40μmが好ましく、12〜30μmがより好ましい。
【0033】
(積層体の用途)
本発明の積層体は、これを袋状に製袋した包装袋として、また、カップ状又はトレー状の容器の易剥離性の蓋材として用いることができる。
【0034】
(蓋付き容器)
本発明の容器は、本発明の積層体を備えた蓋材と容器とからなる蓋付き容器である。
本発明の易開封性フィルムを用いて積層された蓋材は、内表面がポリエチレンあるいはポリプロピレンであるカップ状、トレー状等の容器と熱接着により貼り合わせられて使用される。具体的には液状又は固形状の内容物を容器内に充填又は収容した後、容器のフランジ部などの接着部に剥離層側が接触するように蓋材を載置し、前記蓋材と容器本体とを熱板や超音波など加熱手段を用いて溶融密封することにより内容物が封入された本発明の容器が得られる。
容器側の剥離面には蓋材を剥離した後、易剥離性シーラントフィルムの剥離層に相当する部分が残っている。したがって、容器本体又は蓋材のいずれか又はその両方の剥離面に、シールが施された部分の剥離痕が形成される。剥離痕は、蓋材の剥離前には容器本体と蓋材とが確実にシールされていたことの証明となる。このように剥離痕からシール状態を視認できることは、製品として出荷された後、一度も開封されていないことの証明となるため重要である。
【0035】
(包装袋)
本発明の包装袋は、本発明の積層体を剥離層が内側となるように袋状に製袋したものである。積層体をその剥離層の面同士で張り合わせた面々ヒートシール部を有する袋である。包装される内容物としては加工肉、煮豆、米飯、おつまみなどの各種食品が挙げられる。
【0036】
本発明の易剥離性シーラントフィルムを用いた積層体からなる蓋材や包装袋は、蓋材を剥離した後の容器本体の剥離面や、包装袋の剥離後の剥離面に糸引き状の毛羽立ちがない。また、カップ容器の開口部にフィルム状の膜残りがなく、剥離時のノッキングもない。
本発明の易剥離性シーラントフィルムは、被着体と貼り合わせた後、剥離する際には、剥離開始時に剥離開始部で剥離層が破断した後に、剥離層と支持層との間で剥離が進行する界面剥離タイプのシーラントフィルムである。
包装袋の剥離面には、開封した後、一方の剥離層側に他方の剥離層の一部が付着する。つまり、一方の剥離層側に剥離痕が形成される。剥離痕は、上述の通り包装袋が確実にシールされていたことの証明になる。
【0037】
(剥離強度)
本発明の容器の蓋材の剥離強度は易開封性というためにはJIS K 7127に準じて引張速度300mm/minで蓋材と容器を掴み、引っ張ったときの強度を3N/15mm幅〜16N/15mm幅とすることが好ましく、5N/15mm幅〜13N/15mm幅とすることがより好ましい。
また包装袋の場合には、同様の測定法で測定して、袋の内側で剥離層同士が接着している面々ヒートシール部の剥離強度を3N/15mm幅〜19N/15mm幅とすることが好ましく、7N/15mm幅〜15N/15mm幅とすることがより好ましい。
ここで、本発明の易剥離性シーラントフィルムを用いた積層体において剥離は剥離開始部及び剥離終了部以外は剥離層と支持層との層間で進行するから、剥離強度とは、剥離層と支持層との層間強度を指す。従って本願発明の被着体の種類に拘わらず、またシール温度も広い温度帯域に渡って一定の剥離強度を示すから有用である。
【実施例】
【0038】
以下に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0039】
<使用した樹脂>
・LLDPE:線状低密度ポリエチレン、日本ポリエチレン株式会社製のメタロセン系ポリエチレン「ハーモレックス NF375B」、密度=0.921g/cm
3、MFR=1.0g/10分
・HDPE:高密度ポリエチレン、日本ポリエチレン株式会社製「ノバテックHD HJ490N」、密度=0.958g/cm
3、MFR=20.0g/10分
・LDPE:低密度ポリエチレン、日本ポリエチレン株式会社製高圧法低密度ポリエチレン「ノバテックLD LM360」、密度=0.928g/cm
3、MFR=0.9g/10分
・PP1:プロピレンの単独重合体、サンアロマー株式会社製「PL600A」、密度=0.9g/cm
3、MFR=7.0g/10分
・PP2:プロピレンのブロック共重合体、サンアロマー株式会社製「PM671A」、密度=0.9g/cm
3、MFR=7g/10分
・PP3:プロピレンのランダム共重合体、日本ポリプロピレン株式会社製「WFX4」、密度=0.9g/cm
3、MFR=7g/10分
・PP4:プロピレンの単独重合体、サンアロマー株式会社製「PM801A」、密度=0.9g/cm
3、MFR=13g/10分
・PP5:プロピレンの単独重合体、サンアロマー株式会社製「PL300A」、密度=0.9g/cm
3、MFR=1.2g/10分
・PP6:プロピレンの単独重合体、サンアロマー株式会社製「PM802A」、密度=0.9g/cm
3、MFR=20g/10分
【0040】
<使用した被着体>
・被着体1:市販のポリプロピレン製丸型カップ容器、フランジ部の外径が90mm、内径が76mm。
・被着体2:市販のポリエチレン製丸型カップ容器、フランジ部の外径が90mm、内径が76mm。
【0041】
<製膜>
表1及び2に記載された原料を使用し、次の空冷式インフレーション3層製膜機を用いて次の条件で行い、総厚み35μmの2層の易剥離性シーラントフィルムを得た。得られた易剥離性シーラントフィルムのうち、剥離層の厚みが5μmであり、支持層の厚みが30μmであった。
・剥離層押出機A:外径40mm、圧縮比3のスクリューを装備した押出機
(押出温度は230℃)
・支持層押出機B:外径65mm、圧縮比2.5のスクリューを装備した押出機
(押出温度は230℃)
・支持層押出機C:外径40mm、圧縮比3のスクリューを装備した押出機
(押出温度は190℃)
ダイス:外径120mm、リップ間隔3.5mm、温度230℃
ブロー比:2.3、製膜速度22m/分。
【0042】
<積層体の作製>
得られた易剥離性シーラントフィルムの支持層側に表面濡れ張力が42mN/mとなるようにコロナ放電処理を施した。
この処理面と厚み12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを、二液硬化型のドライラミネート接着剤を用いて積層し、積層体を得た。
【0043】
(実施例1〜5、比較例1〜3)
<蓋付き容器の作製>
得られた積層体の易剥離性シーラントフィルムの剥離層側を、ポリプロピレン製及びポリエチレン製の丸型カップ容器の天面のフランジ面に載置して蓋材とし、リング状の天面ヒートシール装置を用いて、表1に示した温度で、圧力=0.2MPa、時間=1.0秒で熱接着を行い、蓋付き容器を作製した。
【0044】
(実施例6〜9)
<包装袋の作製>
上記得られた積層体の易剥離性シーラントフィルムの剥離層側どうしを重ね合わせ、表2に示した温度で、圧力=0.2MPa、時間=0.5秒で熱接着を行い、包装袋を作製した。
【0045】
<剥離強度の測定>
作製した蓋付き容器及び包装袋を幅15mmの試験片に裁断しJIS K 7127に準じて引張速度300mm/minで引っ張ったときの値を測定して剥離強度とした。
【0046】
<剥離外観の評価>
剥離外観は、作製した蓋付き容器及び包装袋を手指でつかんで、消費者が剥離することを想定して剥離作業を行い、剥離後の剥離面を目視観察して評価した。蓋付き容器では、剥離面の両面の毛羽立ちの有無と、膜残りの有無を次の基準で評価し、包装袋では毛羽立ちの有無を評価した。
・毛羽立ち
○:繊維上の樹脂が観察されない状態(毛羽立ちなし)。
×:両剥離面に引き伸ばされた繊維状の樹脂が付着した状態(毛羽立ちあり)。
・膜残り
○:容器内部に張り出して残ったフィルムが観察されない状態(膜残りなし)。
×:透明な薄いフィルム片が被着体内側で観察される状態(膜残りあり)。
評価結果を表1及び2に示す。
【0047】
<インフレーション製膜適性>
インフレーション製膜特性は、製膜時にダイスから出て垂直上方に立ち上がる筒状フィルムが膨らんでできる中空筒状フィルム(以下「バブル」ともいう。)を目視観察して次の基準で評価した。
〇:バブルがまるで止まって見えるぐらいにバブルが安定している。
×:バブルの直径が変化する、バブルが左右にゆれるなどしてバブルが安定しない。
評価結果を表1及び2に示す。
【0048】
<ノッキングの評価>
作製した蓋付き容器を手指でつかんで、消費者が剥離することを想定して剥離作業を行い、ノッキングの有無を次の基準で評価した。
○:スムーズに剥離できた(ノッキングなし)。
×:剥離時に引っかかりを感じた(ノッキングあり)。
評価結果を表1及び2に示す。
【0049】
【表1】
【0050】
【表2】
【0051】
実施例1〜実施例5は、170℃〜210℃の広い温度範囲で安定した一定の範囲内の層間剥離による剥離強度を示し、安定した剥離強度を得るためのシール可能な温度幅が広かった。
実施例2、3では、支持層に、プロピレン単独重合体を含むことにより、実施例1よりも高い剥離強度で易剥離性を示した。
実施例4では、実施例1に対し剥離層のプロピレン単独重合体・高密度ポリエチレン比率を増やしたことにより、実施例1の剥離強度より高い値を示し、膜残りも無かった。
実施例5では、MFRが1.2g/10分のプロピレン単独共重合体を用いたことにより、実施例1と比較し低い剥離強度を示したが、剥離外観は良好であった。
比較例1では、実施例1に対し、剥離層にプロピレンブロック共重合体を用いたところ、膜残り・毛羽立ちが発生した。
比較例2では、実施例1に対し、剥離層にプロピレンランダム共重合体を用いたところ、膜残り・毛羽立ちが発生した。
比較例3では、実施例1に対し、剥離層にMFRが9g/10分超のプロピレン単独重合体を用いたところ、膜残りは発生しなかったが、毛羽立ちが発生した。
比較例4では、MFRが20g/10分のプロピレン単独重合体を用いたところ、製膜時にバブルが不安定となりインフレーション成形性が不適であった。
実施例6〜実施例9では、170℃〜210℃の広い温度範囲で安定した一定の範囲内の剥離強度を示し、安定した剥離強度を得るためのシール可能な温度幅が広かった。
実施例6〜9では、高い剥離強度で易剥離性を示した。