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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-177897(P2017-177897A)
(43)【公開日】2017年10月5日
(54)【発明の名称】操舵装置の組立方法、及び操舵装置
(51)【国際特許分類】
   B62D 5/04 20060101AFI20170908BHJP
   F16H 25/22 20060101ALI20170908BHJP
   F16H 7/20 20060101ALI20170908BHJP
【FI】
   B62D5/04
   F16H25/22 Z
   F16H7/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-64678(P2016-64678)
(22)【出願日】2016年3月28日
(71)【出願人】
【識別番号】000146010
【氏名又は名称】株式会社ショーワ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 瞬
(72)【発明者】
【氏名】柴川 勢竜
【テーマコード(参考)】
3D333
3J049
3J062
【Fターム(参考)】
3D333CB02
3D333CB19
3D333CB31
3D333CC15
3D333CC18
3D333CD05
3D333CD14
3D333CD16
3D333CD21
3D333CE06
3J049AA01
3J049BH02
3J049CA04
3J062AA07
3J062AB12
3J062AB22
3J062AC07
3J062BA01
3J062CA35
3J062CD04
3J062CD12
3J062CD23
3J062CG83
(57)【要約】
【課題】ボールねじナットに対する従動プーリの固定を容易に行う。
【解決手段】操舵装置(1)の組立方法は、従動プーリ(304)とラックバー(208)とボールねじナット(501)とを有する操舵装置(1)の組立方法であり、従動プーリ(304)の回転を規制する回転規制工程と、回転規制工程により従動プーリ(304)の回転を規制した上で従動プーリ(304)をボールねじナット(501)に固定する固定工程とを含む。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータからのトルクがベルトを介して印加される従動プーリと、軸方向に移動して車輪を転舵する転舵軸と、前記従動プーリの回転を前記転舵軸の軸方向の移動に変換するボールねじナットとを有する操舵装置の組立方法であって、
前記従動プーリの回転を規制する回転規制工程と、
前記回転規制工程により前記従動プーリの回転を規制したうえで、前記従動プーリを前記ボールねじナットに固定する固定工程と
を含む操舵装置の組立方法。
【請求項2】
前記回転規制工程は、前記従動プーリに形成された回転規制用孔に対して治具を挿入することによって、前記従動プーリの回転を規制する請求項1に記載の組立方法。
【請求項3】
前記回転規制工程は、回転しない固定用プーリに巻き掛けられたベルトを、前記従動プーリに巻き掛けることによって、前記従動プーリの回転を規制する請求項1に記載の組立方法。
【請求項4】
前記回転規制工程は、前記従動プーリの外周に形成された複数の歯に嵌合する歯面が形成された治具を、前記従動プーリの外周に当接させることによって、前記従動プーリの回転を規制する請求項1に記載の組立方法。
【請求項5】
前記回転規制工程は、前記従動プーリの外周に設けられたフランジに形成された1又は複数の切欠きに治具を当接させることによって、前記従動プーリの回転を規制する請求項1に記載の組立方法。
【請求項6】
前記1又は複数の切欠きは、前記従動プーリの回転中心を挟んで互いに対向するよう形成された直線状の2つの切欠きであり、
前記回転規制工程は、前記直線状の2つの切欠きの双方に治具を当接させることによって、前記従動プーリの回転を規制する請求項1に記載の組立方法。
【請求項7】
モータからのトルクがベルトを介して印加される従動プーリであって、回転規制用孔が形成された従動プーリと、
軸方向に移動して車輪を転舵する転舵軸と、
前記従動プーリの回転を前記転舵軸の軸方向の移動に変換するボールねじナットと
を備えていることを特徴とする操舵装置。
【請求項8】
モータからのトルクがベルトを介して印加される従動プーリであって、外周に設けられたフランジに切欠きが形成されている従動プーリと、
軸方向に移動して車輪を転舵する転舵軸と、
前記従動プーリの回転を前記転舵軸の軸方向の移動に変換するボールねじナットと
を備えていることを特徴とする操舵装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操舵装置の組立方法、及び操舵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
操舵装置の一つとして、モータでアシスト力を発揮させる電動パワーステアリングシステム(Electric Power Steering System:以下、「EPS」という)が存在する。ベルト駆動式のEPSでは、操舵装置の組立時に、ベルトテンションの調整を行う。このような調整技術は多種多様に存在し、例えば特許文献1及び2にも開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−349862号公報
【特許文献2】特開2013−159203号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、操舵装置の組立時には、ボールねじナットに対する従動プーリの固定を容易に行えることが好ましい。
【0005】
本発明は、操舵装置の組立時に、ボールねじナットに対する従動プーリの固定が容易な操舵装置の組立方法、及び操舵装置を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的のもと、本発明に係る操舵装置の組立方法は、モータからのトルクがベルトを介して印加される従動プーリと、軸方向に移動して車輪を転舵する転舵軸と、前記従動プーリの回転を前記転舵軸の軸方向の移動に変換するボールねじナットとを有する操舵装置の組立方法であって、前記従動プーリの回転を規制する回転規制工程と、前記回転規制工程により前記従動プーリの回転を規制したうえで、前記従動プーリを前記ボールねじナットに固定する固定工程とを含む。
【0007】
また、本発明に係る操舵装置は、モータからのトルクがベルトを介して印加される従動プーリであって、回転規制用孔が形成された従動プーリと、軸方向に移動して車輪を転舵する転舵軸と、前記従動プーリの回転を前記転舵軸の軸方向の移動に変換するボールねじナットとを備えている。
【0008】
また、本発明に係る操舵装置は、モータからのトルクがベルトを介して印加される従動プーリであって、外周に設けられたフランジに切欠きが形成されている従動プーリと、軸方向に移動して車輪を転舵する転舵軸と、前記従動プーリの回転を前記転舵軸の軸方向の移動に変換するボールねじナットとを備えている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、操舵装置の組立時に、ボールねじナットに対する従動プーリの固定を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る操舵装置の概略構成の一例を模式的に示す模式図である。
図2】本発明の一実施形態に係る転舵力発生部周辺の断面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る変換機構周辺の断面図である。
図4】本発明の一実施形態に係る第2のハウジング内に配置されたボールねじナットを示す斜視図である。
図5】本発明の一実施形態に係る従動プーリを示す斜視図である。
図6】本発明の一実施形態に係る操舵装置の組立方法を説明するためのフロー図である。
図7】本発明の一実施形態に係る回転規制装置を用いて従動プーリの回転を規制している状態を示す図である。
図8】図中の(a)は、本発明の一実施形態に係る回転規制装置を用いて従動プーリの回転を規制している状態を示す図であり、(b)は、本発明の一実施形態に係る回転規制装置の側面図である。
図9】本発明の一実施形態に係る回転規制装置を用いて従動プーリの回転を規制している状態を示す図である。
図10】図中の(a)は、本発明の一実施形態に係る回転規制装置に適用される従動プーリの側面図であり、(b)は、本発明の一実施形態に係る従動プーリの正面図である。
図11】本発明の一実施形態に係る回転規制装置を用いて従動プーリの回転を規制している状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態について、図1図11を参照して説明する。
【0012】
図1は、本実施形態に係る操舵装置の概略構成の一例を模式的に示す模式図である。図1に示すように、操舵装置1は、運転者による操舵操作を受け付ける操舵部10、操舵部10が受け付けた操舵操作に応じて車輪400を転舵する転舵部20、及び制御部(図1において不図示)を備えている。なお、以下に説明する操舵装置1では、モータでアシスト力を発揮させる電動パワーステアリングシステム(以下、EPSという)を採用しているが、これは本実施形態を限定するものではなく、(1)操舵部10と転舵部20との間のトルク伝達経路を機械的に接続又は遮断することが可能であり、(2)前記トルク伝達経路が遮断された状態において、操舵部10が受け付けた操舵操作に応じて車輪400の転舵角を電気的に制御するステアバイワイヤ方式を採用してもよい。
【0013】
(操舵部10)
図1に示すように、操舵部10は、操舵部材102、ステアリングシャフト104、第1の自在継手106、及び中間シャフト108を備えており、操舵部材102、ステアリングシャフト104、及び中間シャフト108は、互いにトルク伝達可能に接続されている。ここで、「トルク伝達可能に接続」とは、一方の部材の回転に伴い他方の部材の回転が生じるように接続されていることを指し、例えば、一方の部材と他方の部材とが一体的に成形されている場合、一方の部材に対して他方の部材が直接的又は間接的に固定されている場合、及び、一方の部材と他方の部材とが継手部材等を介して連動するよう接続されている場合を少なくとも含む。
【0014】
本実施形態においては、ステアリングシャフト104の上端は、操舵部材102に固定され、操舵部材102と一体的に回転する。また、ステアリングシャフト104の下端と、中間シャフト108の上端とは、第1の自在継手106を介して互いに連動するように接続されている。
【0015】
なお、「上端」とは、運転者の操舵操作に応じた操舵力の伝達経路において上流側の端部(すなわち、入力側の端部)のことを指し、「下端」とは、操舵力の伝達経路において下流側の端部(すなわち、出力側の端部)のことを指す(以下同様)。
【0016】
また、操舵部材102の例として、図1に示すように、円環状のステアリングホイールを例に挙げたが、これは本実施形態を限定するものではなく、運転者による操舵操作を受け付けることができるものであれば他の形状や機構を有するものであってもよい。
【0017】
(転舵部20)
転舵部20は、操舵部10が受け付けた運転者の操舵操作に応じて、車輪400を転舵させるための構成である。
【0018】
図1に示すように、転舵部20は、第2の自在継手(自在継手)202、ピニオンシャフト(入力軸)204、ピニオンギヤ206、ラックバー(転舵軸)208、タイロッド210、ナックルアーム212、及び転舵力発生部220を備えている。中間シャフト108、ピニオンシャフト204、及びピニオンギヤ206は、互いにトルク伝達可能に接続されている。
【0019】
本実施形態では、ピニオンギヤ206は、ピニオンシャフト204の下端に固定され、ピニオンシャフト204と一体的に回転する。中間シャフト108の下端とピニオンシャフト204の上端とは、第2の自在継手202を介して互いに連動するように接続されている。
【0020】
ラックバー208は、ピニオンギヤ206の回転に応じて車輪400を転舵させるための構成であり、ラックバー208には、ピニオンギヤ206と噛み合うラック歯が形成されている。
【0021】
上記のように構成された操舵装置1では、運転者が操舵部材102を介した操舵操作を行うと、ピニオンギヤ206が回転し、ラックバー208の軸方向に沿って、ラックバー208が変位する。これにより、ラックバー208の両端に設けられたタイロッド210、及び、タイロッド210に連結されたナックルアーム212を介して、車輪400が転舵される。
【0022】
なお、図1に示す例では、ピニオンシャフト204とラックバー208との間の操舵力の伝達をピニオンギヤ206及びラック歯によって行う構成を例に挙げたが、これは本実施形態を限定するものではなく、ピニオンシャフト204とラックバー208との間の操舵力を伝達できるものであれば、他の構成であってもよい。
【0023】
(転舵力発生部220)
図2は、本実施形態に係る転舵力発生部周辺の断面図である。図2に示すように、転舵力発生部220は、モータ300、駆動プーリ303、従動プーリ304、ベルト305、変換機構306、第1のハウジング401、及び第2のハウジング402等を備えて構成されている。
【0024】
モータ300は、出力軸302を有している。駆動プーリ303は、出力軸302と一体的に回転するように設けられている。ベルト305は、駆動プーリ303と従動プーリ304とに巻き掛けられており、駆動プーリ303から従動プーリ304にトルクを伝達可能となっている。すなわち、従動プーリ304には、モータ300からのトルクがベルト305を介して印加される。
【0025】
従動プーリ304は、ボールねじナット501に固定されている。より具体的には、従動プーリ304は、ボールねじナット501にボルト締結によって固定されている。したがって、駆動プーリ303から従動プーリ304に伝達されたトルクは、ボールねじナット501に伝達される。
【0026】
変換機構306は、従動プーリ304の回転運動をラックバー208の軸方向の直線運動に変換するための構成である。図2に例示した変換機構306では、螺旋溝308が形成された内周面を有するナットであって、モータ300が発生させるトルクによって回転駆動されるボールねじナット501と、ラックバー208の外周面に形成され、ボールねじナット501の螺旋溝308と同じピッチを有する螺旋溝309と、ボールねじナット501の螺旋溝308及びラックバー208の螺旋溝309によって挟持された複数の転動用ボール(不図示)とによって構成される所謂ボールねじ機構が採用されている。
【0027】
ただし、変換機構306の具体的構成は上記の例に限定されるものではなく、従動プーリ304の回転運動をラックバー208の軸方向の直線運動に変換するものであれば他の構成であってもよい。
【0028】
(ハウジング)
図3は、本実施形態に係る変換機構306周辺の断面図である。図3に示すように、第1のハウジング401は、ラックバー208の一部、変換機構306の一部、及び従動プーリ304を収容する。一方、第2のハウジング402は、第1のハウジング401に対して固定されており、ラックバー208の他の一部、及び変換機構306の他の一部を収容する。また、第2のハウジング402には、車体に対して固定するためのマウント部403が形成されている。なお、第1のハウジング401及び第2のハウジング402の少なくとも一部は、一体的に形成されたものであってもよい。
【0029】
(操舵装置の組立方法)
本実施形態に係る組立方法について、図4及び図5を参照しながら、図6に沿って説明する。図4は、第2のハウジング402内に配置されたボールねじナット501を示す斜視図であり、図5は、従動プーリ304を示す斜視図である。また、図6は、本実施形態に係る操舵装置1の組立方法を説明するためのフロー図である。
【0030】
本実施形態に係る組立方法は、嵌合工程、回転規制及び固定工程を含むものである。以下、各工程について具体的に説明する。なお、特にことわりのない限り、本明細書に記載の各工程は、作業者の手作業によって行われてもよいし、各工程の一部又は全部を、作業装置等を用いて自動的に行ってもよい。
【0031】
図4に示すように、第2のハウジング402内には、ラックバー208の外周にボールねじナット501が配置されている。ボールねじナット501には、従動プーリ304をボルト締結するためのボルト孔601が形成されている。
【0032】
一方、図5に示すように、従動プーリ304には、ボルトが貫通するボルト用孔602、従動プーリ304の回転を規制するための1つ以上の第1の回転規制用孔603及び1つ以上の第2の回転規制用孔604、ならびにラックバー208が貫通する軸孔605が形成されている。従動プーリ304の外周面には、複数の歯608が形成されており、当該外周面にベルト305が巻き掛けられる。
【0033】
嵌合工程では、従動プーリ304の軸孔605にラックバー208を通し、従動プーリ304をボールねじナット501に対して嵌める(図6のステップS1;以下、S1と略記する)。
【0034】
続いて、回転規制工程では、従動プーリ304の回転を規制する(S2)。従動プーリ304は回転可能な状態となっているため、本工程では、その従動プーリ304の回転を規制する。従動プーリ304の回転を規制する具体的な方法については後述する。
【0035】
回転規制工程により従動プーリ304の回転を規制したうえで、固定工程において、従動プーリ304をボールねじナット501に固定する。具体的には、従動プーリ304のボルト用孔602を介して、ボールねじナット501のボルト孔601にボルトを通して締結することにより、ボールねじナット501に対して従動プーリ304が固定される。
【0036】
固定工程においては、従動プーリ304の回転は規制されているため、締結方向にボルトを回転させた場合に従動プーリ304とボールねじナット501とが一緒に回転してしまうことを防ぐことができ、ボルト締結に必要なトルクを加えることが容易である。そのため、操舵装置1の組立時に、ボールねじナット501に対する従動プーリ304の固定を容易に行うことができる。これにより、操舵装置1の組立に要する時間を短縮化できると共に、操舵装置1の量産性を向上させることができる。
【0037】
(回転規制工程の例−1)
以下には、回転規制工程において、従動プーリ304の回転を規制する具体的な方法の1つ目の例を説明する。図7は、本例に係る回転規制装置700を用いて従動プーリ304の回転を規制している状態を示す図である。
【0038】
図7に示すように、本例に係る回転規制装置700は、治具部701、第1の支持柱704及び第2の支持柱705を基台706上に有している。第1の支持柱704及び第2の支持柱705は、第2のハウジング402を支持しており、例えば、第2のハウジング402のマウント部403が第2の支持柱705に固定される。
【0039】
治具部701は、治具702と、治具702を支持する支持部703とを備えて構成されており、基台706上において、ラックバー208の軸方向にスライド可能に配置されている。治具702は、例えば、従動プーリ304の第1の回転規制用孔603に嵌合する形状、すなわち第1の回転規制用孔603と相補的な形状を有している。
【0040】
この治具部701を、基台706上をスライドさせて、治具702を従動プーリ304の第1の回転規制用孔603に挿入することにより、従動プーリ304の回転が規制される。これは、従動プーリ304の第1の回転規制用孔603に治具702が挿入されることにより、従動プーリ304がそれ以上回転しないように規制されるためである。
【0041】
なお、治具702の形状は、第1の回転規制用孔603に嵌合する形状に限定されず、他の形状であってもよい。例えば、治具702は、第1の回転規制用孔603に挿入可能なピン形状であってもよい。この場合、従動プーリ304をボールねじナット501に固定する際、締結方向にボルトを回転させても治具702が歯止めとなり、従動プーリ304の回転が規制される。
【0042】
また、以上では、治具702を従動プーリ304の第1の回転規制用孔603に挿入する構成を示したが、本例はこれに限定されない。例えば、治具702を従動プーリ304の第2の回転規制用孔604に挿入させてもよい。
【0043】
この場合、治具702は、第2の回転規制用孔604を貫通して、ボールねじナット501にも挿入させてもよい。これにより、ボールねじナット501の回転も規制することができるため、締結方向にボルトを回転させた場合に従動プーリ304とボールねじナット501とが一緒に回転してしまうことをより効果的に防ぐことができ、ボルト締結に必要なトルクを加えることがより容易になる。
【0044】
また、治具部701は1つであっても複数であってもよい。複数の治具部701を用いる場合は、複数の治具702をそれぞれ従動プーリ304の第1の回転規制用孔603又は第2の回転規制用孔604に挿入すればよい。
【0045】
(回転規制工程の例−2)
以下には、回転規制工程において、従動プーリ304の回転を規制する具体的な方法の2つ目の例を説明する。図8の(a)は、本例に係る回転規制装置710を用いて従動プーリ304の回転を規制している状態を示す図であり、(b)は、本例に係る回転規制装置710の側面図である。
【0046】
図8の(a)に示すように、回転規制装置710は、支持部711に取り付けられた固定用プーリ712を基台713上に有している。固定用プーリ712は、回転しないプーリであり、固定用プーリ712には、ベルト714が巻き掛けられている。
【0047】
この固定用プーリ712に巻き掛けられたベルト714を、従動プーリ304に巻き掛けることにより、従動プーリ304の回転が規制される。これは、固定用プーリ712は回転しないため、当該固定用プーリ712に巻き掛けられたベルト714も回転せず、これにより当該ベルト714が巻き掛けられた従動プーリ304もそれ以上回転しないように規制されるためである。
【0048】
なお、図8の(b)に示すように、回転規制装置710では、図中の左側からベルト714を固定用プーリ712から容易に取り外しすることができる。このように、回転規制装置710では、ベルト714を固定用プーリ712から容易に取り外しできるように構成されていることが好ましい。これにより、ベルト714の固定用プーリ712への巻き掛けから、ベルト714の固定用プーリ712からの取り外しまでに要する時間を短縮することができ、結果的に操舵装置1の組立に要する時間を短縮化できる。
【0049】
(回転規制工程の例−3)
以下には、回転規制工程において、従動プーリ304の回転を規制する具体的な方法の3つ目の例を説明する。図9は、本例に係る回転規制装置720を用いて従動プーリ304の回転を規制している状態を示す図である。
【0050】
図9に示すように、回転規制装置720は、第1の治具部721及び第2の治具部725を基台729上に有している。第1の治具部721は、第1の治具723が第1の支持部722に取り付けられている。一方、第2の治具部725は、第2の治具727と、第2の治具727を支持する第2の支持部726とを備えて構成されており、基台729上において、ラックバー208の軸方向にスライド可能に配置されている。
【0051】
この際、第1の治具723は、従動プーリ304の外周面に形成された複数の歯608に嵌合する形状、すなわち複数の歯608と相補的な形状を有した歯面724を有している。また、第2の治具部725は、従動プーリ304の外周面に形成された複数の歯608に嵌合する形状、すなわち複数の歯608と相補的な形状を有した歯面728を有している。
【0052】
この第2の治具部725を、基台729上をスライドさせて、従動プーリ304を両側から第1の治具部721及び第2の治具部725で挟み込むことにより、従動プーリ304の回転が規制される。これは、従動プーリ304を両側から第1の治具部721及び第2の治具部725で挟み込み、従動プーリ304の外周面に形成された複数の歯608が第1の治具部721の歯面724と、第2の治具部725の歯面728とに嵌合することにより、従動プーリ304がそれ以上回転しないように規制されるためである。
【0053】
(回転規制工程の例−4)
以下には、回転規制工程において、従動プーリ304の回転を規制する具体的な方法の4つ目の例を説明する。図10の(a)は、本例に係る回転規制装置730に適用される従動プーリ304Aの側面図であり、(b)は、従動プーリ304Aの正面図である。また、図11は、本例に係る回転規制装置730を用いて従動プーリ304の回転を規制している状態を示す図である。
【0054】
まず、従動プーリ304Aについて説明する。図10の(a)に示すように、従動プーリ304Aは、外周面の上縁部及び下縁部のそれぞれに第1のフランジ606A及び第2のフランジ606Bが形成されている。図10の(b)に示すように、第1のフランジ606A及び第2のフランジ606Bには、それぞれ1又は複数の切欠きが形成されている。本図では、従動プーリ304Aの回転中心を挟んで互いに対向するように2つの切欠き(第1の切欠き部607A及び第2の切欠き部607B)が形成されている。第1の切欠き607A及び第2の切欠き607Bは、直線状でもよいし、他の形状であってもよい。
【0055】
続いて、回転規制装置730について説明する。図11に示すように、回転規制装置730は、第1の治具部731及び第2の治具部734を基台737上に有している。第1の治具部731は、第1の治具733が第1の支持部732に取り付けられている。一方、第2の治具部734は、第2の治具736と、第2の治具736を支持する第2の支持部735とを備えて構成されており、基台737上において、ラックバー208の軸方向にスライド可能に配置されている。
【0056】
この第2の治具部734を、基台737上をスライドさせて、従動プーリ304を両側から第1の治具部721及び第2の治具部725で挟み込むことにより、従動プーリ304Aの回転が規制される。これは、従動プーリ304を両側から第1の治具部731及び第2の治具部734で挟み込み、従動プーリ304Aの第1のフランジ606A及び第2のフランジ606Bに形成された第1の切欠き607A及び第2の切欠き607Bに、第1の治具部731及び第2の治具部734が当接することにより、従動プーリ304Aはそれ以上回転しないように規制されるためである。
【0057】
なお、図10の(b)に示したように、従動プーリ304Aには、当該従動プーリ304Aの回転中心を挟んで互いに対向するように直線状の2つの切欠き(第1の切欠き607A及び第2の切欠き607B)が形成されていることが好ましい。これにより、第1の切欠き607A及び第2の切欠き607Bのそれぞれに第1の治具733及び第2の治具736を当接させることによって、より効果的に従動プーリ304Aの回転を規制することができる。
【0058】
また、本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0059】
1 操舵装置
10 操舵部
20 転舵部
208 ラックバー(転舵軸)
220 転舵力発生部
300 モータ
304,304A 従動プーリ
306 変換機構
501 ボルトねじナット
700〜730 回転規制装置
図1
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図11