【解決手段】トレーラ用車枠110は、第1及び第2メインフレーム101A,101Bと第1及び第2サスペンションブラケット103A,103Bと梁フレーム102Aとを有し、梁フレーム102Aと第1及び第2サスペンションブラケット103A,103Bに上部ガセットプレート21と第1及び第2下部ガセットプレート22A,22Bをそれぞれ固定し、第1及び第2ブレース26A,26Bを上部ガセットプレート21と第1及び第2下部ガセットプレート22A,22Bに第1及び第2高力ボルト25A,25Bを用いて摩擦接合することにより、補強構造2を車枠110に設ける。
貨物を支える車枠と、前記車枠の後部に設けられたタイヤと、前記タイヤから伝わる振動を吸収するサスペンション装置とを備えるトレーラに用いられ、前記車枠は、対向配置される第1及び第2メインフレームと、前記第1及び前記第2メインフレームに固定され、前記サスペンション装置を支える第1及び第2サスペンションブラケットと、前記第1及び前記第2サスペンションブラケットに対応する位置で前記第1及び前記第2メインフレームに架設される梁フレームとを有し、前記車枠を補強するトレーラ用車枠の補強構造であって、
前記梁フレームに固定される板状の上部ガセットプレートと、
前記第1サスペンションブラケットに固定される板状の第1下部ガセットプレートと、
前記第2サスペンションブラケットに固定される板状の第2下部ガセットプレートと、
前記上部ガセットプレートと前記第1下部ガセットプレートに、第1高力ボルトを用いて摩擦接合される第1ブレースと、
前記上部ガセットプレートと前記第2下部ガセットプレートに、第2高力ボルトを用いて摩擦接合される第2ブレースと、を有すること
を特徴とするトレーラ用車枠の補強構造。
【背景技術】
【0002】
従来より、物流では、トレーラをトラクタで牽引する牽引自動車が使用されている。トレーラは、車枠の前方に設けられた連結部がトラクタに連結され、車枠の後部に設けられたタイヤを地面に接地させた姿勢で、トラクタに引っ張られて走行する(例えば特許文献1参照)。
【0003】
具体的にトレーラの構造を説明する。
図9は、従来のトレーラ用車枠110の後部部分の側面図である。
図10は、従来のトレーラ100のサスペンションブラケット103A,103B,104A,104B,105A,105B付近の構造を示す図である。
図9に示すように、トレーラ100は、LNGタンクなどの貨物Cが車枠110に固定される。サスペンション装置116は、車枠110の後部に配設され、タイヤ109から伝わる上下方向の振動を吸収する。
【0004】
図9及び
図10に示すように、車枠110は、対向配置される第1及び第2メインフレーム101A,101Bに複数の梁フレーム102が架設されている。第1及び第2メインフレーム101A,101Bは、地面側に位置する面に、第1及び第2フロントサスペンションブラケット103A,103Bと、第1及び第2ミドルサスペンションブラケット104A,104Bと、第1及び第2リヤサスペンションブラケット105A,105Bとが前側から順に固定されている。
図10に示すように、第1及び第2フロントサスペンションブラケット103A,103Bは軸111を、第1及び第2ミドルサスペンションブラケット104A,104Bは軸112を、第1及び第2リヤサスペンションブラケット105A,105Bは軸113を介して連結されている。
【0005】
図9に示すように、第2フロントサスペンションブラケット103Bと第2ミドルサスペンションブラケット104Bと第2リヤサスペンションブラケット105Bには、サスペンション装置116のリーフスプリング114,115が連結されている。これと同様に、第1フロントサスペンションブラケット103Aと第1ミドルサスペンションブラケット104Aと第1リヤサスペンションブラケット105Aにも、リーフスプリング114,115が連結されている。尚、リーフスプリング114,115は、トレーラ100の重心を下げるために車軸108より下側に配設されている。
【0006】
図10に示すように、梁フレーム102Aは、第1及び第2フロントサスペンションブラケット103A,103Bに対応する位置で第1及び第2メインフレーム101A,101Bに架設されている。梁フレーム102Bは、第1及び第2ミドルサスペンションブラケット104A,104Bに対応する位置で、梁フレーム102Cは、第1及び第2リヤサスペンションブラケット105A,105Bに対応する位置で、第1及び第2メインフレーム101A,101Bに固定されている。梁フレーム102A,102B,102Cを第1及び第2メインフレーム101A,101Bに接合する構造は同様なので、ここでは、梁フレーム102Aを第1メインフレーム101Aに接合する構造のみを説明し、その他は説明を省略する。
【0007】
図11は、梁フレーム102Aの接合構造を示す図である。梁フレーム102Aは、第1フロントサスペンションブラケット103Aが固定される部分Y11の上方において第1メインフレーム101Aに端部が溶接されている。梁フレーム102Aは、前側と後ろ側にリブ106,107が配設されている。梁フレーム102Aは、リブ106,107に接合する部分の上側と下側に追加で溶接を施され、補強されている(図中Y2参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来のトレーラ100は、使用している間に、例えば
図11に示すように、梁フレーム102Aの下側とリブ106との溶接部分Y2に沿って亀裂Xが入り、車枠110が破損することがあった。その原因は、梁フレーム102A,102Cを第1及び第2メインフレーム101A,101Bに接合する部分の強度が不足することにあると、発明者らは考えた。そして、発明者らは強度不足の理由を次のように考えた。リーフスプリング114,115を車軸108の下側に配設したため、車軸108のスペースの分、リーフスプリング114,115と車枠110の間隔が長くなった。このため、サスペンションブラケット103A,103B,104A,104B,105A,105Bが長くなった。サスペンションブラケット103A,103B,104A,104B,105A,105Bが長くなったため、トレーラ100の旋回時、梁フレーム102A,102B,102Cと第1及び第2メインフレーム101A,101Bのそれぞれの接合部分において外力F2により発生するモーメントが大きくなり、強度が不足した。以下、具体的に説明する。
【0010】
図12は、旋回時にトレーラ100が受ける力を説明する図である。トレーラ100は、例えばトラクタに牽引されて車両の左方向に旋回する場合、対角位置にあるタイヤ109の中心を結ぶ線(図中点線X1,X2)の交点X3を中心に、左回りに回転する(図中矢印F1参照)。この場合、トレーラ100は、交点X3より前側に位置する第1及び第2フロントサスペンションブラケット103A,103Bには、車両左方向の外力F2が作用し、第1及び第2フロントサスペンションブラケット103A,103Bと第1及び第2メインフレーム101A,101Bとの接合部分に外力F2に対する反力F2xが車両右方向に発生する。一方、交点X3より後ろ側に位置する第1及び第2リアサスペンションブラケット105A,105Bには、車両右方向の外力F3が作用し、第1及び第2リアサスペンションブラケット105A,105Bと第1及び第2メインフレーム101A,101Bとの接合部分に外力F3に対する反力F3xが車両左方向に発生する。
【0011】
そのため、
図13に示すように、第1及び第2メインフレーム101A,101Bは、第1及び第2フロントサスペンションブラケット103A,103Bと接合する部分Y11,Y12が車両右方向に引っ張られる一方、第1及び第2リアサスペンションブラケット105A,105Bと接合する部分Y15,Y16が車両左方向に引っ張られ、ひねられるように変形しようとする。
【0012】
このとき、梁フレーム102Aは、外力F2と反力F2xにより張力F4が発生する。梁フレーム102Aは、第1及び第2メインフレーム101A,101Bとの接合部分に十分な強度がない場合、第1及び第2メインフレーム101A,101Bを支えきれず、第1及び第2メインフレーム101A,101Bが変形する。よって、
図14に示すように、梁フレーム102Aの下側とリブ106との溶接部分Y2に引き裂く方向の力が作用し、溶接部分Y2に応力が集中する。これに加えて、車枠110は、梁フレーム102Aにゆがみ変形が生じる。この場合、梁フレーム102Aは、溶接部分Y2付近で面外方向に曲げられるため、溶接部分Y2付近に高応力が発生する。つまり、溶接部分Y2には、ラーメン構造角部の応力集中と梁フレーム102Aの面外曲げ応力とが重畳的に作用する。このような応力集中が溶接部分Y2に繰り返し生じると、溶接部分Y2が疲労して亀裂Xを生じる。
【0013】
従って、従来の車枠110は、トレーラ100が車両左方向に対して急旋回する場合に、梁フレーム102Aと第1メインフレーム101Aとの接合部分の強度が外力F2に対して不足したために、破損したと考えられる。
【0014】
尚、上述したように、車枠110は、トレーラ100が車両左方向に旋回する場合、交点X3より後方にある第1及び第2リヤサスペンションブラケット105A,105Bに、車両左方向の反力F3xが発生する。そのため、梁フレーム102A側と同様に、梁フレーム102Cと第2メインフレーム101Bとの接合部分の強度が不足すると、第2メインフレーム101Bが変形し、梁フレーム102Cの下側と第2メインフレーム101Bのリブ106との溶接部分に亀裂が生じることがあった。
【0015】
発明者らは、上記原因の正当性を確認すべく、トレーラ100の旋回時に車枠110に生じる変形と応力を調べる解析を行った。これらの解析は、貨物Cを載せた車枠110を車両左方向に急旋回させた場合に、走行試験実測値10kNの外力F2が各サスペンションブラケット103A,103B,104A,104B,105A,105Bに作用することを条件に行った。
【0016】
図13は、車両左方向の急旋回時に車枠110に生じる変形を解析した結果を示す図である。トレーラ100が車両左方向に急旋回すると、第1及び第2フロントサスペンションブラケット103A,103Bが、第1及び第2メインフレーム101A,101Bに固定される部分Y11,Y12を支点に車両左方向(図中右側)に変形する。また、第1及び第2リヤサスペンションブラケット105A,105Bは、第1及び第2メインフレーム101A,101Bに固定された部分Y15,Y16を支点に車両右方向(図中左側)に変形する。第1及び第2ミドルサスペンションブラケット104A,104Bは、車両左右方向に殆ど変形しないものの、第1及び第2メインフレーム101A,101Bに固定される部分Y13,Y14を中心にねじれるように変形している。第1及び第2メインフレーム101A,101Bは、各サスペンションブラケット103A,103B,104A,104B,105A,105Bに引っ張られ、うねるように変形している。更に、梁フレーム102A,102Cが歪んでいる。
【0017】
図14は、車両左方向の急旋回時に第1フロントサスペンションブラケット103A付近に生じる変形を示す図である。図中P21部分に示すように、車枠110は、溶接部分Y2に沿って変位量が変わっている。これより、溶接部分Y2から車両右方向へ折れ曲がるように変形することが分かる。そして、溶接部分Y2には、引き裂く方向の力F6,F7が作用することがわかる。これに加えて、梁フレーム102Aの第1メインフレーム101A側の端部をみると、上端側より下端側の方が変位量が大きくなっている。これより、梁フレーム102Aは、ゆがみ変形を生じ、下端側を上端側よりも面外方向に押し出すように変形していることがわかる。
【0018】
図15は、車両左方向の急旋回時に第1フロントサスペンションブラケット103A付近に生じる応力を解析した結果を示す図である。図中P21に示すように、車枠110は、溶接部分Y2に沿って、応力が集中している。
【0019】
よって、以上の解析結果より、発明者らが考えた車枠110の破損原因は正当であることが、裏付けられた。
【0020】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、車枠を簡単に補強して、トレーラが急旋回を繰り返しても車枠の破損を防止できるトレーラ用車枠の補強構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の一態様は、次のような構成を有している。
(1)貨物を支える車枠と、前記車枠の後部に設けられたタイヤと、前記タイヤから伝わる振動を吸収するサスペンション装置とを備えるトレーラに用いられ、前記車枠は、対向配置される第1及び第2メインフレームと、前記第1及び前記第2メインフレームに固定され、前記サスペンション装置を支える第1及び第2サスペンションブラケットと、前記第1及び前記第2サスペンションブラケットに対応する位置で前記第1及び前記第2メインフレームに架設される梁フレームとを有し、前記車枠を補強するトレーラ用車枠の補強構造であって、前記梁フレームに固定される板状の上部ガセットプレートと、前記第1サスペンションブラケットに固定される板状の第1下部ガセットプレートと、前記第2サスペンションブラケットに固定される板状の第2下部ガセットプレートと、前記上部ガセットプレートと前記第1下部ガセットプレートに、第1高力ボルトを用いて摩擦接合される第1ブレースと、前記上部ガセットプレートと前記第2下部ガセットプレートに、第2高力ボルトを用いて摩擦接合される第2ブレースと、を有することを特徴とする。
【0022】
上記構成では、第1及び第2ブレースが梁フレームと第1及び第2サスペンションブラケットとの間にトラス状に設けられているので、トレーラが急旋回する場合に第1及び第2サスペンションブラケットや第1及び第2メインフレーム、梁フレームが殆ど変形しない。よって、上記構成によれば、車枠を簡単に補強して、トレーラが急旋回を繰り返しても車枠の破損を防止できる。
【0023】
具体的には、トレーラは、車枠が対角位置にあるタイヤの中心を結ぶ線の交点を中心に回転することにより旋回する。このとき、第1及び第2サスペンションブラケットに外力が作用する。上記構成では、車枠は、第1ブレースが、上部ガセットプレートを介して梁フレームに連結されると共に、第1下部ガセットプレートを介して第1サスペンションブラケットに連結されており、梁フレームと第1サスペンションブラケットと第1ブレースとの間にトラス構造が構成されている。第1サスペンションブラケットと第1メインフレームとの接合部分に作用する力は、第1ブレースと第1メインフレームに分散される。これと同様に、第2ブレースにも、力が分散される。そのため、梁フレームが第1及び第2メインフレームに接合する部分には、補強構造を備えない場合より小さい力が作用する。これにより、第1及び第2メインフレームが梁フレームに支えられて変形しにくくなり、第1及び第2サスペンションブラケットの変形が抑制される。これに加え、梁フレームは、上部ガセットプレートに補強されて歪みにくく、第1及び第2メインフレームに接合する付近で曲がりにくい。よって、梁フレームが第1及び第2メインフレームに接合する部分に生じる応力が低減し、車枠の破損を防ぐことができる。
【0024】
特に、第1及び第2ブレースは、第1及び第2高力ボルトを用いて上部ガセットプレートや第1下部ガセットプレートや第2下部ガセットプレートに摩擦接合されている。そのため、第1及び第2ブレースは、上部ガセットプレートや第1下部ガセットプレートや第2下部ガセットプレートに接触する面積が広く、第1及び第2サスペンションブラケットに作用する外力を上部ガセットプレートや第1下部ガセットプレートや第2下部ガセットプレートに広く分散させる。よって、上記構成の補強構造は、トレーラの旋回時に、第1及び第2ブレースが上部ガセットプレートや第1及び第2下部ガセットプレートに接合する部分を変形させにくく、第1及び第2サスペンションブラケットや梁フレーム、第1及び第2メインフレームの変形を効率良く抑制できる。
【0025】
また、上部ガセットプレートと第1及び第2下部ガセットプレートは、板状のため、比較的軽量であり、梁フレームや第1及び第2サスペンションブラケットに固定しやすい。また、高力ボルトを使用することでトルクを管理しやすい。よって、補強構造を設ける場合の作業性が良い。
【0026】
(2)(1)の構成において、前記第1及び前記第2ブレースは、一対の帯状のブレース部材を備え、一方のブレース部材が前記上部ガセットプレートの前側に配設され、他方のブレース部材が前記上部ガセットプレートの後ろ側に配設されていることが好ましい。
【0027】
上記構成では、第1及び第2ブレースが一対の帯状のブレース部材で構成されるので、扱い易い。また、第1ブレースは、一対のブレース部材を上部ガセットプレートと第1下部ガセットプレートの前側と後ろ側に接触させて第1高力ボルトで連結するので、部材間で中立面をオフセットしなくても良い。そのため、一対のブレース部材は、トレーラの旋回時に引張・圧縮力が作用しても、偏心曲げモーメントが生じにくく、両端部分や中央部分に生じる応力を低減できる。第2ブレースも同様である。よって、上記構成によれば、第1及び第2ブレースを取り付ける作業を行いやすく、トレーラの旋回時に第1及び第2ブレースを構成するブレース部材が変形しにくい。
【0028】
(3)(1)又は(2)に記載の構成において、前記第1及び前記第2下部ガセットプレートは、一体に設けられていることが好ましい。
【0029】
上記構成では、第1及び第2下部ガセットプレートを一体に設けることで部品点数を減らすことができる。
【発明の効果】
【0030】
従って、本発明によれば、車枠を簡単に補強して、トレーラが急旋回を繰り返しても車枠の破損を防止できるトレーラ用車枠の補強構造を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下に、本発明に係るトレーラ用車枠の補強構造の実施形態について図面に基づいて説明する。
【0033】
(第1実施形態)
図1は、本発明の実施形態に係るトレーラを示す図である。トレーラ1は、「トレーラ用車枠の補強構造2,3」(以下「補強構造2,3」ともいう。)を備える点を除き、
図9〜
図11に示すトレーラ100と同様に構成されている。よって、ここでは、補強構造2,3を中心に説明する。以下では、まず、補強構造2,3の構成を説明する。それから、補強構造2を取り付ける作業を説明する。その後、トレーラ1の動作を説明してから、補強構造2,3を備える車枠110に生じる変形と応力の解析結果を説明する。そして、補強構造2を考案するまでの過程を説明する。これらの説明の中でトレーラ100と共通する構成については、
図10及び
図12に使用した符号と同じ符号を図面又は説明に使用し、適宜説明を省略する。
【0034】
<補強構造2の構成について>
図2は、
図1のサスペンションブラケット103A,103B,104A,104B,105A,105B付近の構造を示す図である。補強構造2は、梁フレーム102A,102Cを補強する位置に設けられている。ここでは、梁フレーム102A側の補強構造2に基づいて説明する。
【0035】
図3は、前側の梁フレーム102Aに設けた補強構造2を拡大した図である。補強構造2は、上部ガセットプレート21と、第1及び第2下部ガセットプレート22A,22Bと、第1及び第2ブレース26A,26Bと、第1及び第2高力ボルト25A,25Bとで構成されている。
【0036】
上部ガセットプレート21は、梁フレーム102Aに一体的に固定されている。上部ガセットプレート21は、梁フレーム102Aの地面側に位置する下面に溶接されている。第1及び第2下部ガセットプレート22A,22Bは、第1及び第2フロントサスペンションブラケット103A,103Bに一体的に固定されている。第1下部ガセットプレート22Aは、板状をなし、第1フロントサスペンションブラケット103Aの内側面と軸111に溶接されている。第2下部ガセットプレート22Bは、第2フロントサスペンションブラケット103Bの内側面と軸111に溶接されている。上部ガセットプレート21と第1及び第2下部ガセットプレート22A,22Bは、板厚が同じにされ、同一平面上に配置されている。
【0037】
第1ブレース26Aは、上部ガセットプレート21と第1下部ガセットプレート22Aとの間に斜めに配置され、一端部が上部ガセットプレート21に、他端部が第1下部ガセットプレート22Aにそれぞれ固定される。そのため、梁フレーム102Aと第1フロントサスペンションブラケット103Aと第1ブレース26Aとの間には、トラス構造が構成され、第1フロントサスペンションブラケット103Aに作用する力が、第1ブレース26Aと第1メインフレーム101Aに分散されるようになっている。また、第2ブレース26Bは、上部ガセットプレート21と第2下部ガセットプレート22Bとの間に斜めに配置され、両端部が上部ガセットプレート21と第2下部ガセットプレート22Bに固定される。そのため、梁フレーム102Aと第2フロントサスペンションブラケット103Bと第2ブレース26Bとの間には、トラス構造が構成され、第2フロントサスペンションブラケット103Bに作用する力が、第2ブレース26Bと第2メインフレーム101Bに分散されるようになっている。
【0038】
図2に示すように、上部ガセットプレート21と第1及び第2下部ガセットプレート22A,22Bは、軽量化するために、第1及び第2ブレース26A,26Bとの接合に必要のない角部を切り欠いている。
【0039】
図2及び
図3に示すように、第1ブレース26Aは、一対のブレース部材23A,24Aを備える。ブレース部材23A,24Aは、本実施形態においては、角を切り欠いた平鋼を使用している。ブレース部材23A,24Aは、上部ガセットプレート21と第1下部ガセットプレート22Aの前側に位置する面と後ろ側に位置する面に両端部を面接触させた状態で、第1高力ボルト25Aを用いて上部ガセットプレート21と第1下部ガセットプレート22Aに摩擦接合されている。第1高力ボルト25Aは、ブレース部材23Aと上部ガセットプレート21とブレース部材24Aを貫いて締結されている。また、第1高力ボルト25Aは、ブレース部材23Aと第1下部ガセットプレート22Aとブレース部材24Aを貫いて締結されている。
【0040】
また、第2ブレース26Bは、一対のブレース部材23B,24Bが上部ガセットプレート21と第2下部ガセットプレート22Bに第2高力ボルト25Bを用いて締結されている。構造の詳細は、第1ブレース26Aと同様のため省略する。
【0041】
尚、
図2に示すように、梁フレーム102A,102B,102Cは、補強プレート10が端部に溶接されることにより、補強されている。また、第1及び第2メインフレーム101Aは、リブ106に沿って補強プレート11が溶接され、補強されている。
【0042】
<補強構造3の構成について>
図2に示すように、補強構造3は、梁フレーム102Bに対応して設けられている。第1及び第2ミドルサスペンションブラケット104A,104Bは、第1及び第2フロントサスペンションブラケット103A,103Bと第1及び第2リヤサスペンションブラケット105A,105Bより地面側に突出して設けられ、軸112が軸111,113より下方に配設されている。そのため、補強構造3の第1及び第2下部ガセットプレート31A,31Bは、補強構造2の第1及び第2下部ガセットプレート22A,22Bと形状並びに固定構造が相違する。また、補強構造3は、第3下部ガセットプレート32と、第3及び第4ブレース36A,36Bを備える点が、補強構造2と相違する。
【0043】
具体的には、補強構造3は、板状の第1及び第2下部ガセットプレート31A,31Bが第1及び第2ミドルサスペンションブラケット104A,104Bの内側面に溶接されている。第3下部ガセットプレート32は、板状をなし、軸112に対して梁フレーム102B側へ突出するように溶接されている。上部ガセットプレート21と第1〜第3下部ガセットプレート31A,31B,32は、板厚が同じにされ、同一平面上に配置されている。
【0044】
第1及び第2ブレース26A,26Bは、補強構造2と同様、第1及び第2高力ボルト25A,25Bを用いてブレース部材23A,24A,23B,24Bが上部ガセットプレート21と第1及び第2下部ガセットプレート31A,31Bに摩擦接合されている。第3及び第4ブレース36A,36Bは、第1及び第2ブレース26A,26Bと同様、ブレース部材33A,34A,33B,34Bが高力ボルト35A,35Bを用いて第1〜第3下部ガセットプレート31A,31B,32に摩擦接合されている。
【0045】
<補強構造2を取り付ける作業について>
補強構造2は、新規に組み立てられた車枠110や、既存の車枠110に、取り付けられる。すなわち、上部ガセットプレート21の一辺を梁フレーム102Aの下面に突き合わせて溶接する。また、第1及び第2下部ガセットプレート22A,22Bの隣り合う二辺を第1及び第2フロントサスペンションブラケット103A,103Bの内側面と軸111に突き合わせて溶接する。そして、ブレース部材23A,24Aの一端部で上部ガセットプレート21を挟み込み、ブレース部材23A,24Aの他端部で第1下部ガセットプレート22Aを挟み込んだ後、第1高力ボルト25Aで締結する。これにより、第1ブレース26Aが上部ガセットプレート21と第1下部ガセットプレート22Aに摩擦接合される。これと同様に、第2ブレース26Bを上部ガセットプレート21と第2下部ガセットプレート22Bに摩擦接合する。
【0046】
上部ガセットプレート21と第1及び第2下部ガセットプレート22A,22Bは、板状であるので、軽量である。そのため、作業者は、上部ガセットプレート21や第1及び第2下部ガセットプレート22A,22Bを梁フレーム102Aや第1及び第2フロントサスペンションブラケット103A,103Bまで持ち上げて溶接しやすい。また、ブレース部材23A,24A,23B,24Bが帯状(平たい板状)であるので、軽量で扱いやすい。また、第1及び第2ブレース26A,26B(ブレース部材23A,24A,23B,24B)を高力ボルト25A,25Bを用いて固定するので、作業者はトルクを管理しやすい。よって、本実施形態によれば、補強構造2を車枠110に設ける作業を簡単に行える。
【0047】
<トレーラ1の動作について>
続いて、本実施形態に係るトレーラ1の動作を説明する。トレーラ1は、
図12に示すトレーラ100と同様、旋回する場合には、対角位置にあるタイヤ109の中心を結ぶ線の交点X3を中心に回転する。第1及び第2フロントサスペンションブラケット103A,103Bには、車両左方向の外力F2が作用する。また、第1及び第2リアサスペンションブラケット105A,105Bには、車両右方向の外力F3が作用する。
【0048】
この場合、
図3に示すように、第1フロントサスペンションブラケット103Aは、第1メインフレーム101Aに連結する部分に反力F2xが発生すると共に、第1メインフレーム101Aに固定される部分Y11を支点として梁フレーム102Aから離れる方向に変形しようとする。特に、リーフスプリング114が車軸108の下側に設けられている場合、リーフスプリング114を車軸108の上側に設ける場合より、第1フロントサスペンションブラケット103Aにかかる反力F2xが強くなる。
【0049】
しかし、第1フロントサスペンションブラケット103Aは、第1下部ガセットプレート22A、第1ブレース26A(ブレース部材23A,24A)、上部ガセットプレート21を介して梁フレーム102Aに連結され、梁フレーム102Aと第1ブレース26Aとの間でトラス構造を構成する。そのため、第1ブレース26Aは、トレーラ1が車両左方向に旋回する際に第1フロントサスペンションブラケット103Aを梁フレーム102A側へ向かって引っ張って(図中矢印F11参照)、第1フロントサスペンションブラケット103Aの変形を阻止する。この時、従来技術において第1フロントサスペンションブラケット103Aと第1メインフレーム101Aとの接合部分に作用した張力F4は、第1ブレース26Aと第1メインフレーム101Aに分散される。そのため、梁フレーム102Aが第1メインフレーム101Aやリブ106,107に接合する部分に作用する引き裂く方向の力F6,F7は、補強構造2がない場合より小さくなる。これに加え、梁フレーム102Aは、上部ガセットプレート21に補強されて歪みにくく、第1メインフレーム101Aに接合する端部付近で面外方向に曲げられにくい。よって、図中P1に示す梁フレーム102Aの下側に生じる応力は、小さくなる。
【0050】
一方、第2フロントサスペンションブラケット103Bに、外力F2によって、第2メインフレーム101Bに固定される部分Y12を支点として梁フレーム102Aが近づく方向に変形しようとする。しかし、第2フロントサスペンションブラケット103Bは、第2下部ガセットプレート22B、第2ブレース26B(ブレース部材23B,24B)、上部ガセットプレート21を介して梁フレーム102Aに連結され、梁フレーム102Aと第2ブレース26Bとの間でトラス構造を構成する。そのため、第2ブレース26Bは、第2フロントサスペンションブラケット103Bと梁フレーム102Aとの間で突っ張って(図中F12参照)、第2フロントサスペンションブラケット103Bの変形を阻止する。この時、従来技術においてこの箇所に発生していた張力F4(厳密には圧縮力)は、第2ブレース26Bと第2メインフレーム101Bに分散される。そのため、梁フレーム102Aが第1メインフレーム101Aやリブ106,107に接合する部分に作用する力は、補強構造2を備えない場合より小さくなる。これに加え、梁フレーム102Aは、上部ガセットプレートに補強されて歪みにくく、第2メインフレーム101Bに接合する付近で曲がりにくい。
【0051】
このように、車枠110は、補強構造2を備えることにより、梁フレーム102Aの端部が第1及び第2メインフレーム101A,101Bやリブ106に接合する部分の強度が高くなる。そのため、第1及び第2メインフレーム101A,101Bは、第1及び第2フロントサスペンションブラケット103A,103Bに外力F2が作用しても、梁フレーム102Aに支えられて変形しにくくなる。つまり、梁フレーム102Aが第1及び第2メインフレーム101A,101Bに接合する部分に生じる応力が低減する。
【0052】
また、これと同様にして、第1及び第2リヤサスペンションブラケット105A,105Bの変形も抑制される。
【0053】
従って、トレーラ1は、急旋回を繰り返しても、梁フレーム102A,102Cの接合部分に応力が集中しないので疲労破壊を生じしにくく、車枠110が破損しにくい。
【0054】
尚、第1及び第2ミドルサスペンションブラケット104A,104Bは、外力F2,F3に対する反力F2x,F3xを発生しても、補強構造3の第1及び第2ブレース26A,26Bと第3及び第4ブレース36A,36Bに支えられて変形しにくい。よって、車枠110は、第1及び第2ミドルサスペンションブラケット104A,104Bと第1及び第2メインフレーム101A,101Bとの接合する部分Y13,Y14が破損しにくい。
【0055】
ここで、第1ブレース26Aは、第1高力ボルト25Aを用いて上部ガセットプレート21と第1下部ガセットプレート22Aに摩擦接合されている。そのため、第1ブレース26Aと上部ガセットプレート21との接触面積、及び、第1ブレース26Aと第1下部ガセットプレート22Aとの接触面積が、広い。これにより、第1ブレース26Aは、第1フロントサスペンションブラケット103Aに作用する外力F2を、第1下部ガセットプレート22Aや上部ガセットプレート21に広く分散させる。これと同様に、第2ブレース26Bも、第2フロントサスペンションブラケット103Bに作用する外力F2を上部ガセットプレート21と第2下部ガセットプレート22Bに広く分散させる。よって、補強構造2は、トレーラ1が旋回する場合に、第1及び第2ブレース26A,26Bが上部ガセットプレート21や第1又は第2下部ガセットプレート22A,22Bに接合する部分を強く押して変形させにくく、第1及び第2フロントサスペンションブラケット103A,103Bや梁フレーム102A、第1及び第2メインフレームの変形を効率良く抑制できる。
【0056】
また、本実施形態では、第1及び第2ブレース26A,26Bが一対の帯状のブレース部材23A,24A,23B,24Bで構成されるので、軽量で、扱い易い。また、第1ブレース26Aは、一対のブレース部材23A,24Aを上部ガセットプレート21と第1下部ガセットプレート22Aの前側と後ろ側に接触させて第1高力ボルト25Aで連結するので、部材間で中立面をオフセットしなくても良い。そのため、一対のブレース部材23A,24Aは、トレーラの旋回時に引張・圧縮力が作用しても、偏心曲げモーメントが生じにくく、両端部分や中央部分に生じる応力を低減できる。第2ブレース26Bも同様である。更に、ブレース部材23A,24A,23B,24Bは、それ単体では強度が低い。しかし、第1ブレース26Aは、一対のブレース部材23A,24Aを上部ガセットプレート21と第1下部ガセットプレート22Aの前側と後ろ側に接触させて第1高力ボルト25Aで連結するので、一対のブレース部材23A,24Aが極近くに配置されてあたかも1つの部材として機能し、強度が向上する。第2ブレース26Bもこれと同様である。よって、本実施形態によれば、第1及び第2ブレース26A,26Bを取り付ける作業を行いやすく、トレーラ1の旋回時に第1及び第2ブレース26A,26Bを構成するブレース部材23A,24A,23B,24Bが変形しにくい。
【0057】
以上説明したように、本実施形態は、貨物Cを支える車枠110と、車枠110の後部に設けられたタイヤ109と、タイヤ109から伝わる振動を吸収するサスペンション装置116とを備えるトレーラ1に用いられる。車枠110は、対向配置される第1及び第2メインフレーム101A,101Bと、第1及び第2メインフレーム101A,101Bに固定され、サスペンション装置116を支える第1及び第2フロントサスペンションブラケット103A,103B(第1及び第2リヤサスペンションブラケット105A,105B、第1及び第2ミドルサスペンションブラケット104A,104B)と、第1及び第2フロントサスペンションブラケット103A,103B(第1及び第2リヤサスペンションブラケット105A,105B、第1及び第2ミドルサスペンションブラケット104A,104B)に対応する位置で第1及び第2メインフレーム101A,101Bに架設される梁フレーム102A(102C,102B)とを有する。本実施形態は、その車枠110を補強するトレーラ用車枠の補強構造2(3)である。補強構造2(3)は、梁フレーム102A(102C,102B)に固定される板状の上部ガセットプレート21と、第1フロントサスペンションブラケット103A(第1リヤサスペンションブラケット105A、第1ミドルサスペンションブラケット104A)に固定される板状の第1下部ガセットプレート22A(31A)と、第2フロントサスペンションブラケット103B(第2リヤサスペンションブラケット105B、第2ミドルサスペンションブラケット104B)に固定される板状の第2下部ガセットプレート22B(31B)とを有する。そして、補強構造2(3)は、上部ガセットプレート21と第1下部ガセットプレート22A(31A)に、第1高力ボルト25Aを用いて摩擦接合される第1ブレース26Aと、上部ガセットプレート21と第2下部ガセットプレート22B(31B)に、第2高力ボルト25Bを用いて摩擦接合される第2ブレース26Bと、を有する。そのため、補強構造2(3)は、例えば、第1及び第2ブレース26A,26Bが梁フレーム102Aと第1及び第2サスペンションブラケット103A,103Bとの間にトラス状に設けられているので、トレーラ1が急旋回する場合に第1及び第2サスペンションブラケット103A,103Bや第1及び第2メインフレーム101A,101B、梁フレーム102Aが殆ど変形しない。また、リヤ側の補強構造2や中央の補強構造3も同様である。よって、上記構成によれば、車枠を簡単に補強して、トレーラ1が急旋回を繰り返しても車枠の破損を防止できる。
【0058】
<補強構造2を備える車枠110に生じる変形と応力の解析結果について>
発明者らは、補強構造2を備えるトレーラ1が旋回時に車枠110に生じる変形と応力を調べる解析を行った。これらの解析は、補強構造2,3を備えない従来のトレーラ100について行ったものと同様、貨物Cを載せた車枠110を車両左方向に急旋回させた場合に、走行試験実測値10kNの外力F2が各サスペンションブラケット103A,103B,104A,104B,105A,105Bに作用することを条件に行った。
【0059】
図4は、本発明の実施形態に係るトレーラ1の変形解析結果を示す図である。図中P1に示すように、梁フレーム102Aから第1フロントサスペンションブラケット103Aまで変位量が同程度であり、車枠110は、補強構造2を備えることにより第1フロントサスペンションブラケット103Aとメインフレーム101Aの変形が、
図14と比較して抑制されている。また、上部ガセットプレート21と第1ブレース26Aと第1下部ガセットプレート22Aは、変位量が梁フレーム102A及び第1フロントサスペンションブラケット103Aと同程度であり、変形が抑制されている。
【0060】
図5は、本発明の実施形態に係るトレーラ1の応力解析結果を示す図である。トレーラ1は、図中P1に示す梁フレーム102Aの下側の応力が高い。しかし、トレーラ1は、
図14に示す補強構造2を備えないトレーラ100と比べると(
図14中P21参照)、梁フレーム102Aの下側に生じる応力が小さい。また、ブレース部材23A,24Aは、
図5中P2に示すように中央付近の応力が高いが、
図5中P3,P4に示すように上部ガセットプレート21と第1下部ガセットプレート22Aに接合する端部付近の応力が上部ガセットプレート21及び第1下部ガセットプレート22Aの応力と同程度である。よって、第1ブレース26A(ブレース部材23A,24A)は、端部に生じる応力を上部ガセットプレート21と第1下部ガセットプレート22Aに広く分散させていることがわかる。
【0061】
以上の解析結果より、トレーラ1は、補強構造2を備えることにより、第1フロントサスペンションブラケット103Aと梁フレーム102Aの接合部分に生じる応力が低減することが裏付けられた。そのため、トレーラ1は、車両左方向への急旋回を繰り返しても、梁フレーム102Aの接合部分に生じる応力が小さいので、リブ106等に亀裂が生じにくい。
【0062】
<補強構造2を考案するまでの過程について>
発明者らは、本実施形態の補強構造2を考案する前に、いくつかの補強構造を検討した。その一つを
図6に示す。
図6に示す比較例の補強構造40は、断面がL形の鋼材41A,41Bを上部ガセットプレート21と第1及び第2下部ガセットプレート22A,22Bの片面に斜めに配置し、鋼材41A,41Bの両端部を上部ガセットプレート21と第1及び第2下部ガセットプレート22A,22Bにそれぞれ溶接することにより、トラス構造を構成する点が、補強構造2と相違している。
【0063】
発明者らは、補強構造40を備えるトレーラ43について、変形と応力を調べる解析を行った。これらの解析は、本実施形態のトレーラ1について行った解析と同様、貨物Cを載せた車枠110を車両左方向に急旋回させた場合に、走行試験実測値10kNの外力F2が各サスペンションブラケット103A,103B,104A,104B,105A,105Bに作用することを条件に行った。
【0064】
図7は、比較例の補強構造40を備えるトレーラ43に関し、車両左方向の急旋回時に第1フロントサスペンションブラケット103A付近に生じる変形を解析した結果を示す図である。トレーラ43の車枠110は、梁フレーム102Aと第1及び第2フロントサスペンションブラケット103A,103Bと鋼材41A,41Bとでトラス構造を構成しても、第1及び第2フロントサスペンションブラケット103A,103Bがメインフレーム101A,101Bと接合する部分Y11,Y12を支点に変形してしまっていた。例えば、第1メインフレーム101Aが第1フロントサスペンションブラケット103Aと固定される部分Y11を引っ張られて変形していた。これにより、車枠110は、図中P11に示すように、梁フレーム102Aとメインフレーム101Aとを引き裂く方向の力が作用した。これに加え、梁フレーム102Aや鋼材41A,41Bにねじれ変形が生じていた。
【0065】
図8は、比較例の補強構造40を備えるトレーラ43に関し、車両左方向の急旋回時に第1フロントサスペンションブラケット103A付近に生じる応力を解析した結果を示す図である。図中P11に示すように、梁フレーム102Aの下側に応力が集中している。そして、図中P13,P14に示すように、上部ガセットプレート21と第1下部ガセットプレート22Aは、鋼材41Aに溶接されている部分の応力が高くなっている。更に、図中P12に示すように、鋼材41Aの中央部の応力が高くなっている。
【0066】
よって、トレーラ43は、車両左方向に急旋回する場合、上部ガセットプレート21と第1及び第2下部ガセットプレート22A,22Bが鋼材41A,41Bの端部に溶接された部分に荷重がかかって変形し、第1及び第2フロントサスペンションブラケット103A,103Bが車両左方向に変形してしまう。
【0067】
その原因について、鋼材41A,41Bの溶接部分に応力が集中するためと考えた。そこで、発明者らは、鋼材41A,41Bを高力ボルトで摩擦接合する構成を考案した。また、鋼材41A,41Bの中立面は、上部ガセットプレート21と第1及び第2下部ガセットプレート22A,22Bの中立面とオフセットしている。そのため、鋼材41A,41Bは、引張・圧縮力が作用すると、偏心曲げモーメントが発生する。この引張・圧縮力に曲げモーメントが加わるために、鋼材41A,41Bの端部付近と中央部分に高い応力が発生する。特に、接合部で力の流れが不連続になるため、溶接部で応力が集中する。また、作業性を向上させるには、部材を軽量化する必要がある。そこで、発明者らは、帯状のブレース部材23A,24Aを上部ガセットプレート21と第1下部ガセットプレート22Aを挟むように配置して第1高力ボルト25Aを締結する補強構造2を考案した。このように、2枚の帯状のブレース部材23A,24Aにすることにより、偏心曲げによる応力が解消されると共に、部材を軽量化して作業性を向上させることができる。よって、本実施形態の補強構造2は、発明者らが、鋭意工夫を重ね、応力や変形を様々な角度から分析して車枠の強度を向上させると共に、作業性を向上させたものである。
【0068】
尚、本発明は、上記実施形態に限定されることなく、色々な応用が可能である。
例えば、第1及び第2ブレース26A,26Bを1本の太い棒状のブレースとし、両端部に上部ガセットプレート21や第1又は第2下部ガセットプレート22A,22Bを挿入する溝を形成し、その溝の両側に位置する突片で上部ガセットプレート21や第1又は第2下部ガセットプレート22A,22Bを挟むようにしても良い。この場合、例えば第1高力ボルト25Aを第1ブレースに設けた一方の突片から上部ガセットプレート21、第1ブレースに設けた他方の突片に貫き通して締結することにより、第1ブレースを上部ガセットプレート21に摩擦接合する。第1ブレースの反対側に位置する端部や第2ブレースも同様に第1下部ガセットプレート22Aや上部ガセットプレート21、第2下部ガセットプレート22Bに摩擦接合する。この場合、第1及び第2ブレースは、ブレース部材23A,24A,23B,24Bより重量が大きくなるが、1部品で構成されるため、補強構造の部品点数を減らしてコストダウンできる。
また例えば、第1及び第2下部ガセットプレート22A,22Bは、1枚の板で一体に設けても良い。この場合、補強構造の部品点数を減らすことができる。