【解決手段】目標電流設定部(631A)と、制限電流設定部(632A)と、ソレノイドに供給の電流値を検出する電流センサ(633A)と、目標電流値、電流上限値、電流値を参照して、デューティ比を設定するデューティ比設定部(634A)と、デューティ比、電源電圧に応じた電流をソレノイドに供給する出力回路(635A)と、を備え、制限電流設定部は、デューティ比に応じて、電流上限値を変更するサスペンション制御装置(600)。
前記制限電流設定部は、前記デューティ比設定部によって設定されたデューティ比が所定の期間、所定の値以上となった場合に、前記制限電流値を段階的に低下させる、請求項1に記載のサスペンション制御装置。
前記制限電流設定部は、前記デューティ比設定部によって設定されたデューティ比と、前記電流検出部が検出した電流値との関係が予め定められた第1の関係を満たさなくなった場合に、前記制限電流値を段階的に低下させる、請求項1に記載のサスペンション制御装置。
前記制限電流設定部は、前記デューティ比設定部によって設定されたデューティ比と、前記電流検出部が検出した電流値との関係が予め定められた第2の関係を満たす場合に、前記制限電流値を、前記段階的に低下させる前の値に復帰させる、請求項2又は3に記載のサスペンション制御装置。
前記デューティ比設定部は、目標電流値と制限電流値とのうち、小さい方の値を目標とするデューティ比を設定する、請求項1から4の何れか1項に記載のサスペンション制御装置。
前記制限電流設定部は、前記各サスペンションに対応する新たな制限電流値を設定する処理として、各サスペンションに対応する制限電流値のうち、最も低い制限電流値を、各サスペンションに対応する新たな制限電流値として設定する、請求項6に記載のサスペンション制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
〔実施形態1〕
以下、本発明の実施形態1について、詳細に説明する。
【0012】
(車両900の構成)
図1は、本実施形態に係る車両900の概略構成を示す図である。
図1に示すように、車両900は、懸架装置(サスペンション)100、車体200、車輪300、タイヤ400、エンジン500、ECU(Electronic Control Unit)(サスペンション制御装置)600、発電装置700およびバッテリ800を備えている。
【0013】
タイヤ400が装着された車輪300は、懸架装置100によって車体200に懸架されている。車両900は、四輪車であるため、懸架装置100、車輪300およびタイヤ400については、それぞれ4つ設けられている。
【0014】
懸架装置100については、左側の前輪、右側の前輪、左側の後輪および右側の後輪の懸架装置100をそれぞれ、懸架装置100A、懸架装置100B、懸架装置100C、懸架装置100Dと称する。
【0015】
エンジン500には、発電装置700が付設されており、発電装置700によって生成された電力がバッテリ800に蓄積される。
【0016】
ECU600は、車両900が備える各種の電子機器を統括制御する。後述するように、懸架装置100に含まれる油圧緩衝装置1が備えるソレノイドバルブ50(
図2参照)の開閉は、ECU600によって制御される。この制御を可能とするために、ECU600からソレノイドバルブ50へ駆動電力を供給する電力線が配されている。
【0017】
なお、ECU600と、ECU600によって制御される懸架装置100とを、まとめてサスペンション装置とも呼ぶ。
【0018】
(懸架装置100の構成)
図2は、懸架装置100の構成を示す側面図である。懸架装置100A・B・C・Dは、本質的に同一の構成を有しているため、ここでは懸架装置100Aの構成について説明する。
図2に示すように、懸架装置100は、油圧緩衝装置1と、油圧緩衝装置1の外側に配置されたコイルスプリング2とを備えている。コイルスプリング2は、スプリングシート3およびスプリングシート4の間に保持されている。この懸架装置100の一端側はボルト5によって車体200に固定されており、他端側は車軸側取付部6を介して、車輪300の車軸に取り付けられている。
【0019】
車両900が路面から受けた衝撃は、コイルスプリング2が縮むことにより吸収される。油圧緩衝装置1は、コイルスプリング2の運動エネルギーを減衰させる力(減衰力)を発生させる。
【0020】
図3は、油圧緩衝装置1の構成を示す断面図である。
図3に示すように、油圧緩衝装置1は、第1シリンダ11の外側に第2シリンダ12が配され、さらにその外側にダンパケース13が配された3重管構造を有している。これら第1シリンダ11、第2シリンダ12およびダンパケース13は同軸に配置される。
【0021】
第1シリンダ11の内部にピストンロッド20が挿入され、ピストンロッド20の先端部に配されたピストン30が、第1シリンダ11の内壁面に対して摺動する。第1シリンダ11の内部空間には作動油が貯留されており、当該内部空間は、ピストン30によりピストン側油室A1とロッド側油室A2とに区画される。
【0022】
第1シリンダ11および第2シリンダ12の車軸側の端部には、ボトムユニット40が設けられると共に、第1シリンダ11および第2シリンダ12の車体側の端部には、ロッドガイド15が設けられている。これらボトムユニット40およびロッドガイド15によって、第1シリンダ11および第2シリンダ12の内部に形成される油室の両端部が規定される。
【0023】
ロッドガイド15には、開口部16が形成されており、この開口部16にピストンロッド20が挿入されている。
【0024】
第1シリンダ11の外壁面と第2シリンダ12の内壁面との間には、環状油室A3が形成されている。ロッドガイド15と第1シリンダ11の車体側端部との間には共用流路17が形成されており、環状油室A3とロッド側油室A2とは、共用流路17を介して連通している。
【0025】
第2シリンダ12の外壁面とダンパケース13の内壁面との間には、リザーバ室A4が形成されている。リザーバ室A4は、第1シリンダ11に出入りするピストンロッド20の容積を補償するための作動油を蓄える。
【0026】
ダンパケース13の側部には、油圧緩衝装置1において発生する減衰力を調整する電磁弁であるソレノイドバルブ50が設けられている。ソレノイドバルブ50は、第2シリンダ12の壁面とダンパケース13の壁面とを貫通する側方流路57に対して、バルブストッパ551によって固定されている。
【0027】
側方流路57の一方の開口部を通って、作動油が環状油室A3からソレノイドバルブ50の内部に流入する。側方流路57の他方の開口部には、突起部531aを有する弁体531が配されている。弁体531は、側方流路57の壁面およびバルブストッパ551を貫通する減衰流路561の開口面積を調節する。具体的には、突起部531aは、側方流路57の内壁面と嵌合し、減衰流路561の開口部に対する突起部531aの相対位置が変化することにより、減衰流路561の開口面積が調節される。
図3に示す例では、減衰流路561は複数形成されているが、減衰流路561は、少なくとも1つ形成されていればよい。
【0028】
減衰流路561を通過した作動油は、ソレノイドバルブ50のハウジングによって規定される円筒油室50bに流入した後、排出口58を通ってリザーバ室A4に流入する。
【0029】
ソレノイドバルブ50は、ソレノイド機構としてコイル511およびコア521を備えている。コイル511に通電することにより、弁体531をコア521から遠ざける電磁力が発生する。コイル511およびコア521は、弁体531が配された円筒油室50bとは区画された制御室50aに収納されている。
【0030】
なお、油圧緩衝装置1の減衰力を調整する電磁弁として、ソレノイドバルブ以外の電磁弁を用いてもよい。例えば、上記電磁弁として、電磁流体(磁性流体)を利用した電磁弁を用いてもよい。
【0031】
スプリング541は、バルブストッパ551と弁体531との間に設けられ、バルブストッパ551と弁体531との間隔が広がる方向にばね力を発揮する。スプリング541を設けることによって、弁体531がバルブストッパ551に近づく方向に移動したときに、バルブストッパ551に衝突することを防止できる。
【0032】
ピストン30には、ピストン側油室A1からロッド側油室A2へ作動油を流す圧側流路31が形成されており、圧側流路31の車体側の開口部には、圧側チェックバルブ32が配されている。
【0033】
ボトムユニット40には、リザーバ室A4からピストン側油室へ作動油を流す伸側流路41が形成されており、伸側流路41の車体側の開口部には、伸側チェックバルブ42が配されている。ボトムユニット40の車軸側の面には、ダンパケース13の底部14に向かって突出し、底部14と当接する環状突起部43が形成されている。この環状突起部43には底部流路44が形成されており、リザーバ室A4の作動油は、底部流路44を通って伸側流路41へ向かう。
【0034】
(圧側行程における作動油の流れ)
車両900が路面から衝撃力を受けると、ピストンロッド20が第1シリンダ11の内部に進入する(圧側行程)。この動作に伴いピストン30は、ピストン側油室A1の作動油を圧縮し、圧縮された作動油は、圧側流路31を通り、圧側チェックバルブ32を開いてロッド側油室A2へ流入する。
【0035】
その一方で、ピストンロッド20が第1シリンダ11の内部に進入することにより、第1シリンダ11の容積が減少するため、ロッド側油室A2の作動油は、共用流路17を通って環状油室A3へ流入する。環状油室A3に流入した作動油は、側方流路57を通ってソレノイドバルブ50の内部に流入し、減衰流路561を通過する。弁体531の突起部531aによって減衰流路561の開口面積が絞られているため、作動油が減衰流路561を通過することにより減衰力が発生する。
【0036】
減衰流路561を通って円筒油室50bに流入した作動油は、排出口58を通ってリザーバ室A4に流入する。
【0037】
(伸側行程における作動油の流れ)
ピストンロッド20が第1シリンダ11から退く行程(伸側行程)では、ピストン30によってロッド側油室A2の作動油が押し出され、共用流路17を通って環状油室A3へ流入する。環状油室A3に流入した作動油は、圧側行程と同様に、側方流路57および減衰流路561を通過し、減衰力を発生させる。
【0038】
減衰流路561を通って円筒油室50bに流入した作動油は、排出口58を通ってリザーバ室A4に流入する。
【0039】
ピストンロッド20が第1シリンダ11の外部へ移動することに伴い、ピストン側油室A1は負圧になる。そのため、リザーバ室A4の作動油は、底部流路44および伸側流路41を通り、伸側チェックバルブ42を開いてピストン側油室A1に流入する。
【0040】
(ソレノイドバルブ50の構成・機能)
図4は、本発明の実施形態1に係るソレノイドバルブ50の構成を示す断面図である。ソレノイドバルブ50は、ダンパケース13の側部に設けられる。そして、ソレノイドバルブ50は、
図4に示すように、ソレノイドシリンダ50Sと、ソレノイド機構部(ソレノイド)51と、吸込ポート52と、バルブストッパ53と、弁体54と、スプリング55と、吐出リング56とを備える。
【0041】
ソレノイドシリンダ50Sは、円筒形状の部材であって、軸方向の一方の開口がダンパケース13のケース開口13Hに対向するように設けられる。本実施形態では、ソレノイドシリンダ50Sは、ダンパケース13の側方にて、軸方向と交差する方向を向いて設けられる。
【0042】
ソレノイド機構部51は、コイル511と、ハウジング511Hと、プランジャ512と、磁性体513と、固定コア514を有している。
【0043】
コイル511は、プランジャ512の軸方向に沿って設けられ、ハウジング511Hに保持される。コイル511には、不図示の導線が接続され、導線を介して通電を受けることで磁界を発生させる。なお、コイル511に対する通電の制御は、不図示の制御部によって行われる。
【0044】
プランジャ512は、軸受を介して軸方向に移動可能にハウジング511Hに支持される。プランジャ512には、磁石などの磁性体513が固定して取り付けられる。そして、プランジャ512は、一端部側にて弁体54に接触する。
【0045】
固定コア514は、プランジャ512の軸方向において磁性体513よりも弁体54側に配置される。そして、固定コア514は、コイル511が通電されて発生した磁界を受けて励磁するように構成される。
【0046】
吸込ポート52は、概形が円筒形状をした部材である。そして、本実施形態では、吸込ポート52は、一端側開口部5211と、一端側開口部5211と比較しての径が大きくなる他端側開口部5212とを有している。そして、一端側開口部5211が外筒体121のジョイント部材12Gの内側にシール部材を介して嵌め込まれる。また、他端側開口部5212において吐出リング56を間に挟んでソレノイド機構部51に対向する。
【0047】
バルブストッパ53は、内側にオイルの環状流路53rが形成された、厚肉円筒状の部材である。そして、吸込ポート52の他端側開口部5212の内側に取り付けられる。
【0048】
弁体54は、円柱状の部材であって、さらに中央部において軸方向に円柱状に突出する先端部54pを有している。そして、弁体54は、先端部54pがバルブストッパ53に対向するように設けられ、先端部54pが環状流路53rに嵌り込むように構成される。また、弁体54は、バルブストッパ53と逆側にてプランジャ512から力を受けて軸方向に移動する。
【0049】
スプリング55は、バルブストッパ53と弁体54との間に設けられる。そして、バルブストッパ53と弁体54との間隔が広がる方向にばね力を発揮する。
【0050】
吐出リング56は、円柱状の部材であって、外周面において周方向に円形の開口を複数備えている。吐出リング56は、バルブストッパ53、弁体54およびスプリング55の周囲に位置して、後述の絞り部Vを通過したオイルをシリンダ内室50Rに吐き出す。
【0051】
そして、本実施形態では、バルブストッパ53の環状流路53rと弁体54の先端部54pとによって、ソレノイドバルブ50におけるオイルの絞り部Vを形成する。すなわち、本実施形態のソレノイドバルブ50では、絞り部Vにてオイルの流路断面を絞ることによって減衰力を発生させる。さらに、ソレノイド機構部51のプランジャ512によって、バルブストッパ53に対する弁体54の距離を変化させることによって、オイルの流れの流路断面積を変化させて減衰力を調整する。
【0052】
なお、サスペンション内の油として電磁流体を用いてもよい。また、ソレノイド機構部51には比例ソレノイドを用いることができる。比例ソレノイドとは、供給される電流値の大きさによってプランジャ512の突出位置が変化するソレノイドである。比例ソレノイドを用いれば、例えば、デューティ比を適宜変更することにより、プランジャ512の突出位置を自在に調整することができる。
【0053】
(ECU600の構成)
図5は、本実施形態に係るECU600の構成を示すブロック図である。ECU600は、統合制御部602、ソレノイド制御部603A〜Dを備えている。統合制御部602は、ソレノイド制御部603A〜Dのそれぞれと通信可能であり、特に、電流上限値(制限電流値)を送受信する。電流上限値とは、ソレノイド制御部603A、603B、603C、および、603Dがそれぞれソレノイド機構部51A、51B、51C、および、51Dに供給する各電流の上限値のことを指す。
【0054】
ソレノイド制御部603A〜Dは、統合制御部602と電流上限値を送受信するとともに、当該電流上限値に基づいて、それぞれソレノイド機構部51A〜Dに供給する電流値を調整する。
【0055】
ソレノイド機構部51A、51B、51C、および、51Dは、それぞれFL(前左輪)、FR(前右輪)、RL(後左輪)、および、RR(後右輪)のサスペンションの減衰力を制御する。
【0056】
(ソレノイド制御部603Aの構成)
図6は、本実施形態に係るソレノイド制御部603Aの構成を示すブロック図である。
図6に示すように、ソレノイド制御部603Aは、目標電流設定部631A、制限電流設定部632A、電流センサ(電流検出部)633A、デューティ比設定部634A、および、出力回路(電流出力部)635Aを備えている。
【0057】
目標電流設定部631Aは、ソレノイド機構部51Aに供給する電流の目標値(目標電流値)を設定する。詳細には、目標電流設定部631Aは、車両900の走行状態に応じて、各輪に関して個別に目標電流値を設定する。目標電流値の設定の仕方は本実施形態を限定するものではないが、例えば、懸架装置100Aに関する目標減衰力やストローク速度等に応じて設定される。
【0058】
制限電流設定部632Aは、ソレノイド機構部51Aに供給する電流の上限値を設定する。制限電流設定部632Aは、デューティ比設定部634Aによって設定されたデューティ比に応じて、電流上限値を変更する。これにより、サスペンションの減衰力を制御するソレノイド機構部51Aに供給される電流値を適切に調整することができる。制限電流設定部632Aは、電流センサ633Aが検出した電流値に応じて、電流上限値を変更してもよい。そして、制限電流設定部632Aは、統合制御部602と通信可能であり、統合制御部602に、変更した電流上限値を送信し、その応答として電流上限値を受信し、受信した電流上限値を設定する。
【0059】
電流センサ633Aは、ソレノイド機構部51Aに供給されている電流の電流値を検出する。デューティ比設定部634Aは、目標電流値と、電流上限値と、電流センサ633Aが検出した電流値とを参照して、デューティ比を設定する。例えば、デューティ比設定部634Aは、目標電流値と電流上限値とのうち、小さい方の値を目標とするデューティ比を設定する。これにより、ソレノイド機構部51Aに適切な電流を供給することができる。出力回路635Aは、デューティ比設定部634Aによって設定されたデューティ比と電源605の電圧(電源電圧)とに応じた電流をソレノイド機構部51Aに供給する。
【0060】
ソレノイド制御部603B、603C、および、603Dは、ソレノイド制御部603Aと同様の構成を備えている。
【0061】
(ソレノイド制御部603Aの処理)
図7は、本実施形態に係るソレノイド制御部603Aの処理を示すフローチャートである。本処理は、車両900がイグニッションオンの状態になった後、0.1秒ごとに繰り返し行われる。ソレノイド制御部603B、603C、および、603Dは、本処理と同様の処理を行う。
【0062】
ソレノイド制御部603Aにおいて、制限電流設定部632Aは、FLデューティ比がDth以上であるか否かを判定する(S701)。Dthは、電力不足の状態になっているか否かを判定するための閾値である。Dthは、例えば、99.7[%]であってもよいし、他の値であってもよい。
【0063】
FLデューティ比がDth以上でない、すなわち、FLデューティ比がDth未満である場合(S701のNO)、制限電流設定部632Aは、FLデューティ比がFL電流検出値×N以下であるか否かを判定する(S702)。Nは、所定の電流値を実現する余力があるか否かを判定するための閾値である。Nは、1.6[A]の電流値に対して61.4という値になるが、他の値であってもよい。
【0064】
FLデューティ比がFL電流検出値×N以下である場合(S702のYES)、制限電流設定部632Aは、FLデューティフラグをリセットする(S703)。FLデューティフラグは、電力不足の状態の継続時間をカウントするためのフラグである。そして、制限電流設定部632Aは、FL電流上限値にImaxを設定する(S704)。Imaxは、FL電流上限値の最大値であり、1.6[A]であってもよいし、他の値であってもよい。
【0065】
S702の判定において、FLデューティ比がFL電流検出値×N以下でない、すなわち、FLデューティ比がFL電流検出値×Nよりも大きい場合(S702のNO)、制限電流設定部632Aは、処理を終了する。
【0066】
S701の判定において、FLデューティ比がDth以上である場合(S701のYES)、制限電流設定部632Aは、メモリに格納されたFLデューティフラグの値を呼び出し、FLデューティフラグに1を加算し(S705)、加算後のFLデューティフラグの値を保存する。
【0067】
続いて、制限電流設定部632Aは、FLデューティフラグが80以上か否かを判定する(S706)。「80」は、電力不足の状態が十分継続しているか否かを判定するための時間の閾値であり、0.1秒(本処理の起動周期)×80=8秒を意味する。なお、「80」は、他の値であってもよい。
【0068】
FLデューティフラグが80以上である場合(S706のYES)、制限電流設定部632Aは、FL電流上限値がIminよりも大きいか否かを判定する(S707)。Iminは、FL電流上限値の最小値であり、1.3[A]であってもよいし、他の値であってもよい。
【0069】
FL電流上限値がIminよりも大きい場合(S707のYES)、制限電流設定部632Aは、FL電流上限値から0.01[A/100ms]を減算する(S708)。「0.01」は、1秒間に0.1[A]の割合で減算することを意味する。なお、「0.01」は、他の値であってもよい。
【0070】
S706の判定においてFLデューティフラグが80以上でない、すなわち、FLデューティフラグが80未満である場合(S706のNO)、または、S707の判定においてFL電流上限値がIminよりも大きくない、すなわち、FL電流上限値がImin以下である場合(S707のNO)には、制限電流設定部632Aは、処理を終了する。
【0071】
上記の処理において、制限電流設定部632Aは、デューティ比設定部634Aによって設定されたデューティ比が8秒間(所定の期間)、Dth(所定の値)以上となった場合に、FL電流上限値を段階的に低下させる。これにより、ソレノイド機構部51Aに供給される電流値が高止まりしてしまうといった現象を抑制できる。
【0072】
また、制限電流設定部632Aは、デューティ比設定部634Aによって設定されたデューティ比と、電流センサ633Aが検出した電流値との関係が予め定められた「FLデューティ比≦FL電流検出値×N」(第2の関係)を満たす場合に、FL電流上限値を、段階的に低下させる前の値Imaxに復帰させる。これにより、ソレノイド機構部51Aに供給される電流値を元の値に戻すことができる。
【0073】
図8は、本実施形態に係るソレノイド制御部603Aによって制御されたデューティ比、電流上限値、および、電圧の経時変化を示すグラフである。
図8の横軸は時間を示し、縦軸にはデューティ比設定部634Aによって設定されたデューティ比、ソレノイド機構部51Aに供給される電流の上限値、および、電源605の電圧が示されている。
【0074】
ソレノイド制御部603Aは、電源605の電圧が低下すると(
図8における時点t
1)、ソレノイド機構部51Aに供給される電流の上限値を維持するために、デューティ比を徐々に上げる。次いで、デューティ比が100%に近づいた状態で所定の時間(例えば8秒)経過するとソレノイド制御部603Aは、電流上限値を段階的に下げる処理を開始する(
図8における時点t
2)。電流上限値が所定の最小値まで下がると、ソレノイド制御部603Aは、その最小値を維持する。そして、電圧低下状態が解消すると、ソレノイド制御部603Aは、電流上限値を元の電流値に復帰させる(
図8における時点t
3)。
【0075】
(統合制御部602の処理)
図9は、本実施形態に係る統合制御部602の処理を示すフローチャートである。本処理は、0.1秒ごとの、ソレノイド制御部603A、603B、603C、および、603Dの各処理が終了する度に行われる。
【0076】
まず、統合制御部602は、FL電流上限値、FR電流上限値、RL電流上限値、および、RR電流上限値を取得する(S901)。詳細には、統合制御部602は、制限電流設定部632AからFL電流上限値を取得し、制限電流設定部632BからFR電流上限値を取得し、制限電流設定部632CからRL電流上限値を取得し、制限電流設定部632DからRR電流上限値を取得する。
【0077】
次に、統合制御部602は、取得したFL電流上限値、FR電流上限値、RL電流上限値、および、RR電流上限値のうち、最小値を特定する(S902)。
【0078】
そして、統合制御部602は、特定した最小値を、FL電流上限値、FR電流上限値、RL電流上限値、および、RR電流上限値に設定する(S903)。詳細には、統合制御部602は、特定した最小値を、制限電流設定部632A、632B、632C、および、632Dにそれぞれ送信する。
【0079】
上記の処理に対応して、制限電流設定部632Aは、FLのサスペンションに対応する電流上限値を参照して、FLのサスペンションに対応する新たな電流上限値を設定する処理を行う。これにより、各サスペンションに対応する電流上限値に応じて、各サスペンションのソレノイドに供給される電流値を適切に調整することができる。
【0080】
詳細には、制限電流設定部632Aは、FLのサスペンションに対応する新たなFL電流上限値を設定する処理として、各サスペンションに対応する電流上限値のうち、最も低い電流上限値を、FLのサスペンションに対応する新たな電流上限値として設定する。これにより、ソレノイド機構部51Aに供給される電流値を抑制することができる。ソレノイド制御部603B、603C、および、603Dの各制限電流設定部に関しても、同様の処理を行う。
【0081】
〔実施形態2〕
本発明の実施形態2では、ソレノイド制御部603Aが、実施形態1とは異なる条件により、電流上限値を低下させる。
【0082】
図10は、本発明の実施形態2に係るデューティ比と、電流との関係を示すグラフである。当該グラフにおいて、デューティ比設定部634Aによって設定されたデューティ比が横軸、ソレノイド機構部51Aに供給される電流が縦軸になっている。
図10において、デューティ比と、電流との対応を示す点が、線形関係(第1の関係)を示す斜線の範囲内にある(例えば、点Wの)場合、ソレノイド制御部603Aは、電流上限値を変更しない。一方、当該点が斜線の範囲よりも下方にある(例えば、点Zの)場合、ソレノイド制御部603Aは、電流上限値を低下させる。
【0083】
詳細には、ソレノイド制御部603Aにおいて、制限電流設定部632Aは、デューティ比設定部634Aによって設定されたデューティ比と、電流センサ633Aが検出した電流値との関係が予め定められた線形関係を満たさなくなった場合に、電流上限値を段階的に低下させる。これにより、ソレノイド機構部51Aに供給される電流が適切でない値で維持されるといった現象を抑制することができる。
【0084】
なお、ソレノイド制御部603B、603C、および、603Dは、ソレノイド制御部603Aと同様の処理を行う。
【0085】
〔実施形態3〕
本発明の実施形態3では、ソレノイド制御部603Aが、実施形態1とは異なる方法により、電流上限値を復帰させる。
【0086】
実施形態3に係るECU600において、ソレノイド制御部603Aは、電流上限値を、段階的に低下させる前の値に復帰させる際に、当該電流上限値を段階的に復帰させる。例えば、
図7において、ソレノイド制御部603Aは、S704の処理の代わりに、「FL電流上限値がImaxより小さいか否かを判定し、FL電流上限値がImaxより小さい場合に、FL電流上限値に0.01[A]を加算し、FL電流上限値がImax以上である場合に、加算をしない」という処理を行う。この処理により、ソレノイド制御部603Aの起動周期である0.1秒毎に、FL電流上限値は、Imaxに達するまで0.01[A]ずつ加算される。
【0087】
なお、ソレノイド制御部603B、603C、および、603Dは、ソレノイド制御部603Aと同様の処理を行う。
【0088】
〔実施形態4〕
本発明の実施形態4では、統合制御部602が、実施形態1とは異なる方法により、電流上限値を設定する。
【0089】
一般に、目標電流値は各輪において異なり得るので、実施形態4に係るECU600は、電流上限値を各輪に対して異ならせてもよい。例えば、統合制御部602が、各輪の目標電流値の比を保つように、各輪の電流上限値を調整する構成としてもよい。具体的には、FL、FR、RL、および、RRに対する目標電流値を、それぞれ、I_tar_FL、I_tar_FR、I_tar_RL、及びI_tar_RRと表し、電流上限値を、それぞれ、I_lim_FL、I_lim_FR、I_lim_RL、及びI_lim_RRと表すとすると、統合制御部602は、
I_tar_FL:I_tar_FR:I_tar_RL:I_tar_RR= I_lim_FL:I_lim_FR:I_lim_RL:I_lim_RR
となるように各上限電流値を設定する構成としてもよい。
【0090】
以上の実施形態に係る構成によれば、エンジン駆動に限らず、モータ駆動も含めて、自動車のサスペンション、4輪のサスペンションに対して、ソレノイドに供給される電流値を適切に調整することができるという有利な効果を奏する。
【0091】
〔ソフトウェアによる実現例〕
ECU600の制御ブロック(特に統合制御部602およびソレノイド制御部603A、603B、603C、603D)は、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現してもよいし、CPU(Central Processing Unit)を用いてソフトウェアによって実現してもよい。
【0092】
後者の場合、ECU600は、各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行するCPU、上記プログラムおよび各種データがコンピュータ(またはCPU)で読み取り可能に記録されたROM(Read Only Memory)または記憶装置(これらを「記録媒体」と称する)、上記プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)などを備えている。そして、コンピュータ(またはCPU)が上記プログラムを上記記録媒体から読み取って実行することにより、本発明の目的が達成される。上記記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。また、上記プログラムは、該プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介して上記コンピュータに供給されてもよい。なお、本発明は、上記プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
【0093】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。