特開2017-178189(P2017-178189A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-178189(P2017-178189A)
(43)【公開日】2017年10月5日
(54)【発明の名称】船舶の熱源供給システム
(51)【国際特許分類】
   B63J 3/02 20060101AFI20170908BHJP
   B63J 3/04 20060101ALI20170908BHJP
   B63H 21/38 20060101ALI20170908BHJP
   B63H 21/32 20060101ALI20170908BHJP
   F01K 23/10 20060101ALI20170908BHJP
   F01D 15/10 20060101ALI20170908BHJP
   F02G 5/04 20060101ALI20170908BHJP
【FI】
   B63J3/02 D
   B63J3/04
   B63H21/38 A
   B63H21/32 Z
   F01K23/10 R
   F01D15/10 B
   F02G5/04 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-71407(P2016-71407)
(22)【出願日】2016年3月31日
(71)【出願人】
【識別番号】395008333
【氏名又は名称】株式会社大晃産業
(71)【出願人】
【識別番号】309027687
【氏名又は名称】株式会社KITA ENGINEERING
(71)【出願人】
【識別番号】599030688
【氏名又は名称】郵船商事株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】500067329
【氏名又は名称】エム・イー・エス特機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091306
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 友一
(74)【代理人】
【識別番号】100174609
【弁理士】
【氏名又は名称】関 博
(72)【発明者】
【氏名】松本 隆弘
(72)【発明者】
【氏名】猪原 祥行
(72)【発明者】
【氏名】藤木 信彦
(72)【発明者】
【氏名】真山 欣作
(72)【発明者】
【氏名】喜多 宏司
(72)【発明者】
【氏名】川田 剛
(72)【発明者】
【氏名】植木 修次
(72)【発明者】
【氏名】深井 孝一
(72)【発明者】
【氏名】尾野 一義
【テーマコード(参考)】
3G081
【Fターム(参考)】
3G081BA01
3G081BB10
3G081BC07
(57)【要約】
【課題】船舶の停泊期間が長期化する場合であっても、熱源の供給を安定させることができ、省スペース化、および省エネ化に適した船舶の熱源供給システムを提供する。
【解決手段】主機関12と発電機関14とを備える船舶の熱源供給システム10であって、主機関12の排気ガスから熱を回収する第1排熱回収器16と、発電機関14の排気ガスから熱を回収する第2排熱回収器18と、第1排熱回収器16と第2排熱回収器18によって回収された熱量により蒸気を生成し、当該蒸気を熱量供給部に供給する汽水分離器20と、を備えることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主機関と発電機関とを備える船舶の熱源供給システムであって、
前記主機関の排気ガスから熱を回収する第1排熱回収器と、
前記発電機関の排気ガスから熱を回収する第2排熱回収器と、
前記第1排熱回収器と前記第2排熱回収器によって回収された熱量により蒸気を生成し、当該蒸気を熱量供給部に供給する汽水分離器と、を備えることを特徴とする船舶の熱源供給システム。
【請求項2】
前記発電機関を複数備え、各発電機関に前記第2排熱回収器を備えると共に、
タービン式発電機を備え、
船舶内での消費熱量に応じて、余剰する前記第2排熱回収器の熱量により生成された水蒸気を前記タービン式発電機へ導く切替弁を備えたことを特徴とする請求項1に記載の船舶の熱源供給システム。
【請求項3】
前記第1排熱回収器により回収される熱量と前記第2排熱回収器により回収される熱量との差分に対応する容量の補助ボイラーを備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の船舶の熱源供給システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶の熱源供給システムに係り、特に停泊中の船舶における熱源供給における省エネ化に好適な熱源供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
大型船舶における燃料の加熱、調理、給湯、暖房などに用いられる熱量は従来、船舶に備えつけられた補助ボイラーにより生成される大量の蒸気によりまかなわれてきた。近年では、省エネ化の傾向により、主機関から発生する排ガスの熱を回収し、これを利用するシステムが提案されている。
【0003】
例えば特許文献1に開示されている船舶には、主機関の排熱を回収して蒸気を加熱する排ガスエコノマイザを備え、この排ガスを利用して生成した蒸気によりタービンを駆動して電力を得るというシステムが搭載されている。
【0004】
また、特許文献2、3に開示されているシステムは、主機関の排熱を回収して蒸気を生成する機関を持つものであるが、排熱により生成された蒸気により得られる熱の一部を蓄熱する蓄熱器を備え、主機関が停止する停泊時に、この蓄熱器に蓄えられた熱を利用するというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−89451号公報
【特許文献2】特開2012−117697号公報
【特許文献3】特開2015−17771号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2、3に開示されている船舶のシステムは、いずれも蒸気タービンを備え、主機関の排熱により生成された蒸気により発電を行うことで発電機関の出力を低減することを基本として構成されている。また、特許文献2には、エンジン発動機を冷却する熱を利用して熱量を回収し、この熱量も蓄熱に寄与させる旨が記載されている。このようなシステムによれば、排熱により生成された蒸気を利用して発電と共に蓄熱を行うため、主機関が停止している停泊時であっても、蓄熱器に蓄えられた熱を利用して発電や熱源供給を行うことができるため、省エネ化に貢献することができると考えられる。
【0007】
しかし、特許文献2、3に開示されているような構成のシステムでは、停泊期間が長くなり、蓄熱器に蓄えられた熱量が消費されてしまった場合には、熱源の確保が困難となってしまう。なお、特許文献2には、停泊中の電力を賄うための発電機を冷却する際に得られる熱エネルギーを蓄熱に寄与させる旨の示唆があるものの、供給温度は100℃以下であると共に、絶対的な熱量が少ない。このため、現実的には、長期停泊時における熱源を確保するための大型のボイラーを備える必要が生じることとなり、結果として、省スペース化、および省エネ化に逆行する結果を招く虞がある。
【0008】
そこで本発明では、船舶の停泊期間が長期化する場合であっても、熱源の供給を安定させることができ、省スペース化、および省エネ化に適した船舶の熱源供給システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明に係る船舶の熱源供給システムは、主機関と発電機関とを備える船舶の熱源供給システムであって、前記主機関の排気ガスから熱を回収する第1排熱回収器と、前記発電機関の排気ガスから熱を回収する第2排熱回収器と、前記第1排熱回収器と前記第2排熱回収器によって回収された熱量により蒸気を生成し、当該蒸気を熱量供給部に供給する汽水分離器と、を備えることを特徴とする。
【0010】
また、上記特徴を有する船舶の熱源供給システムは、前記発電機関を複数備え、各発電機関に前記第2排熱回収器を備えると共に、タービン式発電機を備え、船舶内での消費熱量に応じて、余剰する前記第2排熱回収器の熱量により生成された水蒸気を前記タービン式発電機へ導く切替弁を備えるようにすると良い。
【0011】
このような特徴を有することにより、余剰分となる水蒸気を有効利用して電力を得ることができる。これにより、発電機関の稼働率を抑えることができ、省エネ化に寄与することができる。
【0012】
また、上記特徴を有する船舶の熱源供給システムでは、前記第1排熱回収器により回収される熱量と前記第2排熱回収器により回収される熱量との差分に対応する容量の補助ボイラーを備えるようにしても良い。
【0013】
このような特徴を有することにより、第2排熱回収器により得られる熱量が小さなものであっても、船舶が停止している期間の熱源を安定して確保することができる。この際、補助ボイラーは、従来に比べて容量の小さなものとすることができるため、省スペース化に寄与することができる。
【発明の効果】
【0014】
上記のような特徴を有する船舶の熱源供給システムによれば、船舶の停泊期間が長期化する場合であっても、熱源の供給を安定して行うことが可能となる。また、省スペース化、および省エネ化を好適に実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1の実施形態に係る船舶の熱源供給システムの構成を示すブロック図である。
図2】第2の実施形態に係る船舶の熱源供給システムの構成を示すブロック図である。
図3】第2の実施形態に係る船舶の熱源供給システムの応用形態を示す図である。
図4】第3の実施形態に係る船舶の熱源供給システムの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の船舶の熱源供給システムに係る実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0017】
本実施形態に係る船舶の熱源供給システム(以下、単に熱源供給システム10と称す)を適用する船舶は、動力の確保を担う主機関12と、電力の確保を担う発電機関14を有する。主機関12と発電機関14は、いずれもディーゼルエンジンにより構成されている。このような機関構成が成された船舶では、一般的なヒートバランスとして、主機関12の有効熱量が49%とした場合、排熱量が51%で、そのうちの25%が排ガスに含まれるとされている。そして、発電機関14に関しては、その有効熱量は主機関12よりも低く45%とされ、残りの排熱量55%のうち、実に33%もの熱量が排ガスに含まれるとされている。このため、主機関12はもちろん、主機関12に比べて出力が小さい発電機関14に関しても、その排ガスエネルギーを利用する有効性が高いことを見出すことができる。
【0018】
このため、実施形態に係る主機関12の排気経路には、第1排熱回収器16が備えられている。第1排熱回収器16としては、例えば、排ガスエコノマイザーを挙げることができる。第1排熱回収器16には、主機関12から排出される排気ガスを挿通させる排ガス挿通路16aと、排ガス挿通路16aに挿通される排ガスから熱を回収するための熱交換経路16bが備えられている。このような構成とすることで、主機関12から排出される排ガスにより、熱交換経路16b内の気体、あるいは液体を加熱することが可能となる。
【0019】
また、発電機関14の排気経路には、第2排熱回収器18が備えられている。第2排熱回収器18としては、例えば、排熱回収型サイレンサーを挙げることができる。図1に示す形態では、発電機関14を複数設け、各発電機関14に対して第2排熱回収器18を設ける構成としている。第2排熱回収器18にも、第1排熱回収器16と同様に、発電機関14から排出される排気ガスを挿通させる排ガス挿通路18aと、排ガス挿通路18aに挿通される排ガスから熱を回収するための熱交換経路18bが備えられている。このような構成とすることで、第1排熱回収器16と同様に、発電機関14から排出される排ガスにより、熱交換経路18b内の気体、あるいは液体を加熱することが可能となる。
【0020】
第1排熱回収器16の熱交換経路16bと、第2排熱回収器18の熱交換経路18bは共に、汽水分離器20に接続されている。このような構成とすることで、汽水分離器20内に貯留された水が、第1排熱回収器16または/および第2排熱回収器18により加熱され、高温な水蒸気に変換されて貯留されることとなる。
【0021】
汽水分離器20の蒸気供給経路は、機関部22や、デッキ24、およびホテル26などの各フロアに接続されている。このような構成とすることで、汽水分離器20に貯留された蒸気を機関部22やデッキ24、およびホテル26などにおける調理や給湯、暖房などのサービスのために用いることが可能となる。
【0022】
このような構成の熱源供給システム10によれば、船舶が停泊し、主機関12の稼働が停止している場合でも、発電機関14の排ガスにより効果的な熱回収を行うことができる。これにより汽水分離器20内に蒸気を蓄えることができ、機関部22やデッキ24、およびホテル26等への熱源の供給が可能となる。よって、船舶の停泊期間が長期化する場合であっても、熱源の供給を安定させることができ、従来必須とされていた大容量大スペースの補助ボイラーが不要となる。
【0023】
これにより、船舶内に配備する機器の省スペース化と、省エネ化の双方を実現することが可能となる。
【0024】
次に、本発明の船舶の熱源供給システムに係る第2の実施形態について、図2を参照して説明する。本実施形態に係る熱源供給システム10Aの殆どの構成は、上述した第1の実施形態に係る熱源供給システム10と同様である。よって、その機能を同一とする箇所には、図面に同一符号を付して、詳細な説明を省略することとする。本実施形態に係る熱源供給システム10Aと、上記実施形態に係る熱源供給システム10との相違点としては、主機関12稼働時に汽水分離器20に供給される主機関12と発電機関14からの熱量(水蒸気によるもの)のうちの、余剰分を発電に利用する構成とした点にある。
【0025】
具体的には、発電機28と、この発電機28により電力を生成するための蒸気タービン30を備える構成とした。そして、各第2排熱回収器18における熱交換経路18bの排出ポート側には、生成された水蒸気の送り出し先を切り替える切替弁32を配置した。切替弁32の排出側ポートの一方は、汽水分離器20に接続され、他方は、蒸気タービン30に接続される構成とした。
【0026】
このような構成とされる本実施形態の熱源供給システム10Aによれば、第1排熱回収器16と第2排熱回収器18により生成される蒸気の熱量と、船舶内で消費される熱量とを比較した際に、余剰することとなる熱量に応じた水蒸気を蒸気タービン30に導き、電力の確保に寄与させることができる。このような構成とすることで、発電機関14の稼働率を減らすことができ、省エネ化に寄与することができる。
【0027】
なお、その他の効果については、上述した第1の実施形態に係る熱源供給システム10と同様である。ここで、図2に示す形態では、第2排熱回収器18により生成される水蒸気のうちの余剰分となる水蒸気の送り出し先を切替弁32により切り替えて、直接蒸気タービン30へ送る構成としている。しかしながら、本実施形態の熱源供給システム10Aとしては、余剰分の熱量にあたる水蒸気を間接的に蒸気タービン30に送るようにしても良い。具体的には、図3に示すように、第2排熱回収器18により生成された水蒸気を一旦、汽水分離器20に送り、汽水分離器20から、余剰分の熱量にあたる水蒸気を蒸気タービン30に送るというものである。このような構成とする場合、汽水分離器20と蒸気タービン30との間の経路には、ストップバルブ32aを設けるようにすると良い。熱量に余剰分が無い場合には、ストップバルブ32aを閉塞し、船舶の機関部22やデッキ24、およびホテル26等への熱源として水蒸気を優先使用させることが可能となるからである。
【0028】
次に、本発明の船舶の熱源供給システムに係る第3の実施形態について、図4を参照して説明する。本実施形態に係る熱源供給システム10Bも、その殆どの構成は、上述した第1の実施形態に係る熱源供給システム10と同様である。よって、その機能を同一とする箇所には、図面に同一符号を付して、詳細な説明を省略することとする。本実施形態に係る熱源供給システム10Bと、上記実施形態に係る熱源供給システム10との相違点としては、発電機関14の排熱回収により賄いきれない熱量を補うための補助ボイラー34を備えた点にある。
【0029】
一般的に、発電機関14の出力は、主機関12の出力に比べて非常に小さなものとされている。このため、発電機関14の排ガスから熱量を回収して蒸気を生成したとしても、船舶内における熱量の消費状態によっては、これを賄いきれなくなる虞がある。このため、従来に比べて容量の小さな補助ボイラー34を、汽水分離器20への蒸気供給用に備える構成としている。
【0030】
設置する補助ボイラー34の容量としては、例えば、主機関12の排熱によって生成される蒸気量の割合を10、発電機関14の排熱によって生成される蒸気量の割合を2〜3.5とした場合、補助ボイラー34の容量は、生成される蒸気の6.5〜8割を賄うことができるものであると良い。
【0031】
このような構成とした場合でも、主機関12の排熱によって生成される蒸気量の全てを賄う容量の補助ボイラーを備える場合に比べ、小さな容量の補助ボイラーとすることができる。このため、上記第1、2の実施形態に係る熱源供給システム10,10Aと同様に、省スペース化と省エネ化の双方に寄与することが可能となる。
【符号の説明】
【0032】
10,10A,10B………熱源供給システム、12………主機関、14………発電機関、16………第1排熱回収器、16a………排ガス挿通路、16b………熱交換経路、18………第2排熱回収器、18a………排ガス挿通路、18b………熱交換経路、20………汽水分離器、22………機関部、24………デッキ、26………ホテル、28………発電機、30………蒸気タービン、32………切替弁、32a………ストップバルブ、34………補助ボイラー。
図1
図2
図3
図4