さらに下記(D)成分を含む請求項1〜8のいずれかに記載の樹脂組成物であって、下記式(I)を満たし、メルトフローインデックスが5〜200g/10分であり、前記(B)成分の含有量が5〜20質量%である樹脂組成物。
(D)温度230℃、荷重2.16kgにおけるメルトフローインデックスが0.1〜100g/10分であり、かつ前記(A)成分よりメルトフローインデックスが低い結晶性熱可塑性樹脂
X/Y≧7・・・(I)
(式(I)中、Xは、JIS7161により測定した、前記樹脂組成物からなる成形体の引張強度の値(単位:MPa)であり、Yは前記樹脂組成物中に含まれる前記(B)成分の含有割合(単位:質量%)である。)
前記(D)成分からなる樹脂ペレットの混合量が、前記樹脂ペレット混合物から得られる樹脂組成物のメルトフローインデックスが5〜200g/10分となり、かつ、前記樹脂ペレット混合物全体における前記(B)成分の含有量が5〜20質量%となる量である請求項16に記載の樹脂ペレット混合物の製造方法。
前記(D)成分の混合量αが、前記(A)〜(C)成分の合計量100質量部に対して0<α≦1900質量部である請求項16又は17に記載の樹脂ペレット混合物の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、単位炭素繊維量あたりの引張強度の向上効果に優れる樹脂組成物を提供すること、及び当該樹脂組成物を製造することができる樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、従来の炭素繊維複合材料の補強効率が低い原因を鋭意検討した結果、樹脂組成物を製造(混練)する際に炭素繊維が折損することに起因することを見出した。
本発明者らは、上記の知見に基づきさらに検討を重ねた結果、特定の組成を有する樹脂組成物を用いることによって炭素繊維の折損が抑制され、補強効率を向上することができることを見出し、本発明を完成した。
本発明によれば、以下の樹脂組成物等が提供される。
1.下記(A)〜(C)成分を下記の割合で含む樹脂組成物。
(A)温度230℃、荷重2.16kgにおけるメルトフローインデックスが30〜2000g/10分である結晶性熱可塑性樹脂 50〜89質量%
(B)炭素繊維 10〜40質量%
(C)マレイン酸変性ポリプロピレン 1〜10質量%
2.前記(A)成分がポリプロピレンである1に記載の樹脂組成物。
3.前記(A)成分がホモポリマーである1又は2に記載の樹脂組成物。
4.前記(A)成分の分子量分布が2以上のピークを有する1〜3のいずれかに記載の樹脂組成物。
5.前記(B)成分の平均繊維径が2〜10μmである1〜4のいずれかに記載の樹脂組成物。
6.前記(C)成分の200℃で測定した粘度が2000〜50000mPa・sである1〜5のいずれかに記載の樹脂組成物。
7.前記(C)成分の酸価が10〜500mgKOH/gである1〜6のいずれかに記載の樹脂組成物。
8.前記(C)成分の温度190℃、荷重2.16kgにおけるメルトフローインデックスが30〜3000g/10分である1〜7のいずれかに記載の樹脂組成物。
9.さらに下記(D)成分を含む1〜8のいずれかに記載の樹脂組成物であって、下記式(I)を満たし、メルトフローインデックスが5〜200g/10分であり、前記(B)成分の含有量が5〜20質量%である樹脂組成物。
(D)温度230℃、荷重2.16kgにおけるメルトフローインデックスが0.1〜100g/10分であり、かつ前記(A)成分よりメルトフローインデックスが低い結晶性熱可塑性樹脂
X/Y≧7・・・(I)
(式(I)中、Xは、JIS7161により測定した、前記樹脂組成物からなる成形体の引張強度の値(単位:MPa)であり、Yは前記樹脂組成物中に含まれる前記(B)成分の含有割合(単位:質量%)である。)
10.前記(D)成分の含有量αが、前記(A)〜(C)成分の合計量100質量部に対して0<α≦1900質量部である9に記載の樹脂組成物。
11.前記(D)成分がポリプロピレンである9又は10に記載の樹脂組成物。
12.前記(D)成分がホモポリマーである9〜11のいずれかに記載の樹脂組成物。
13.前記(D)成分がブロックポリマーである9〜11のいずれかに記載の樹脂組成物。
14.9〜13のいずれかに記載の樹脂組成物を成形してなる成形体。
15.1〜8のいずれかに記載の樹脂組成物に前記(D)成分を混練する、9〜13のいずれかに記載の樹脂組成物の製造方法。
16.1〜8のいずれかに記載の樹脂組成物を含む樹脂ペレットに下記(D)成分を含む樹脂ペレットを混合する、樹脂ペレット混合物の製造方法。
(D)温度230℃、荷重2.16kgにおけるメルトフローインデックスが0.1〜100g/10分であり、かつ前記(A)成分よりメルトフローインデックスが低い結晶性熱可塑性樹脂
17.前記(D)成分からなる樹脂ペレットの混合量が、前記樹脂ペレット混合物から得られる樹脂組成物のメルトフローインデックスが5〜200g/10分となり、かつ、前記樹脂ペレット混合物全体における前記(B)成分の含有量が5〜20質量%となる量である16に記載の樹脂ペレット混合物の製造方法。
18.前記(D)成分の混合量αが、前記(A)〜(C)成分の合計量100質量部に対して0<α≦1900質量部である16又は17に記載の樹脂ペレット混合物の製造方法。
19.16〜18のいずれかに記載の製造方法によって樹脂ペレット混合物を製造し、前記樹脂ペレット混合物を混練する工程を含む樹脂組成物の製造方法。
20.15又は19に記載の製造方法によって樹脂組成物を製造し、前記樹脂組成物を混練し、成形する工程を含む成形体の製造方法。
21.下記(A)〜(C)成分を下記の割合で混練する工程を含む樹脂組成物の製造方法。
(A)温度230℃、荷重2.16kgにおけるメルトフローインデックスが30〜2000g/10分である結晶性熱可塑性樹脂 50〜89質量%
(B)炭素繊維 10〜40質量%
(C)マレイン酸変性ポリプロピレン 1〜10質量%
22.前記混練前における前記(B)成分の平均繊維長が2〜12mmである21に記載の樹脂組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、単位炭素繊維量あたりの引張強度の向上効果に優れる樹脂組成物、及び当該樹脂組成物を製造することができる樹脂組成物が提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[第1の樹脂組成物]
本発明の一態様に係る第1の樹脂組成物は下記(A)〜(C)成分を下記の割合で含む。
(A)温度230℃、荷重2.16kgにおけるメルトフローインデックスが30〜2000g/10分である結晶性熱可塑性樹脂 50〜89質量%
(B)炭素繊維 10〜40質量%
(C)マレイン酸変性ポリプロピレン 1〜10質量%
上記の組成を採用することにより、混練時の炭素繊維の折損を抑制することができるため、炭素繊維をより原形を留めた状態で(A)成分中に分散させることができる。また、第1の樹脂組成物を他の樹脂と混練する場合にも炭素繊維の折損が抑制されるため、第1の樹脂組成物を中間組成物とすることで、炭素繊維の添加量が低くても引張強度に優れる目的組成物を製造することができる。
以下、各成分について説明する。尚、本明細書において、「x〜y」は「x以上、y以下」の数値範囲を表すものとする。
また、好ましいとされている規定は任意に採用することができる。即ち、好ましいとされている一の規定を、好ましいとされている他の一又は複数の規定と組み合わせて採用することができる。好ましいもの同士の組み合わせはより好ましいと言える。
【0009】
((A)成分:結晶性熱可塑性樹脂)
結晶性熱可塑性樹脂は、上記のメルトフローインデックスを満たしていれば特に制限はない。ホモポリマー、ランダムポリマー、ブロックポリマーのいずれであってもよく、好ましくはホモポリマーである。
(C)成分のマレイン酸変性ポリオレフィンは、マレイン部が炭素繊維と結合し、オレフィン部が結晶性熱可塑性樹脂と分子絡みすることによって、炭素繊維と結晶性熱可塑性樹脂を連結していると考えられている。当該結合様式によれば、結合先の結晶性熱可塑性樹脂として結晶性が高いオレフィン部を有するホモポリマーを用いることによって、フィラー周辺のポリマーが高い弾性率を有するため、成形品の弾性率を効率よく向上することができる。
【0010】
(A)成分としては、例えば、ポリプロピレン系樹脂やポリエチレン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂等が挙げられる。この中でも、軽量で成形加工が容易であり耐薬品性にも優れることから、ポリプロピレン系樹脂が好ましい。
【0011】
ポリプロピレン系樹脂としては、ホモポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、ブロックポリプロピレン等が挙げられる。
ホモポリプロピレンはプロピレンの単独重合体であり、ランダムポリプロピレンはエチレンとプロピレンのランダム共重合体であり、ブロックポリプロピレンはホモポリプロピレンとエチレン・プロピレン・ラバーからなる複合重合体である。これらは従来公知の方法によって得られるものを用いることができる。
【0012】
(A)成分の温度230℃、荷重2.16kgにおけるメルトフローインデックス(以下、「MI」とも言う。)は30〜2000g/10分であり、好ましくは40〜1600g/10分である。250〜1200g/10分、又は400〜750g/10分としてもよい。このような範囲であれば、炭素繊維の折損を抑制する効果に優れる。また、混練性、射出成形性にも優れる。
2種類以上の樹脂の混合物を(A)成分として用いる場合、当該混合物のMIが上記範囲であればよい。
(A)成分のMIは、JISK7210−1に基づき試験温度230℃、荷重2.16kgで測定する。
【0013】
(A)成分の分子量分布は、好ましくは2以上のピークを有する。(A)成分として2種類以上の原料を用いる場合、通常、分子量分布は2以上のピークを有する。
樹脂と炭素繊維の混練に際し、炭素繊維は繊維束の状態で供給される場合が多い。このとき、溶融樹脂から受けるせん断力が大きければ、繊維束を効率的に開繊(ばらけ)させることができると一見思われる。しかしながら、樹脂粘度が高いとせん断力は大きいが、高粘度樹脂は繊維間への含浸性が悪く、繊維束中のフィラメント間に浸み込まない。そのため、せん断力はフィラメント間のすべりを生じさせ、束の最外層に加わったせん断力は最外層(と数層)を剥離するだけで、束を開繊するには至らない。一方、樹脂の粘度が低く含浸性が良好であると、含浸した樹脂を介して内部のフィラメントにせん断力が伝わるため、容易に開繊することができる。以上より、一定のせん断力と含浸性を達成するために、高粘度樹脂と低粘度樹脂を含むこと、即ち分子量分布が2以上のピークを有することが好ましい。さらに、低粘度樹脂を含むことにより、フィラメントの含浸性に優れるため、高い製品強度が確保できる。
【0014】
(A)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。第1の樹脂組成物中における(A)成分の含有量は、50〜89質量%であり、好ましくは55〜80質量%であり、より好ましくは60〜75質量%である。このような範囲であれば混練性に優れる。
【0015】
((B)成分:炭素繊維)
炭素繊維は、有機繊維を加熱炭素化処理して得られる繊維であり、アクリル繊維から得られるPAN(Polyacrylonitrile)系炭素繊維、ピッチ(石油、石炭、コールタール等の副生成物)から得られるピッチ系炭素繊維等が挙げられるがこれらに限定されない。
【0016】
炭素繊維の平均繊維径は好ましくは2〜10μmであり、より好ましくは5〜8μmである。平均繊維径が上記の範囲であれば、繊維が折れにくく補強効果が得やすい。
平均繊維径は、走査型電子顕微鏡(SEM)により炭素繊維を観察して任意に選択した1000本について直径を測定して求める。成形品の場合、当該成形品の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)によって観察し、上記と同様に求める。
【0017】
他の成分と混練する前の炭素繊維の平均繊維長は、好ましくは2〜12mmであり、より好ましくは3〜10mmである。5〜8mm、6〜7mmとしてもよい。このような範囲であれば、十分な引張強度を確保することができる。また、混練性にも優れる。
平均繊維長は、任意の100個の炭素繊維束についてそれぞれ長さを測定して求める。
【0018】
第1の樹脂組成物中における(B)成分の含有量は10〜40質量%であり、好ましくは15〜35質量%である。20〜30質量%としてもよい。このような範囲であれば、十分な引張強度を確保することができる。また、混練性、射出成形性にも優れる。
【0019】
((C)成分:マレイン酸変性ポリプロピレン)
(C)成分はマレイン酸で変性されたポリプロピレンである。(C)成分を加えることにより、(A)成分と(B)成分の相溶性が向上することができる。
(C)成分は、(A)成分以外のポリマーである。
【0020】
(C)成分の200℃で測定した粘度は、好ましくは2000〜50000mPa・sであり、より好ましくは5000〜30000mPa・sである。
粘度は、JISK7252−1〜JISK7252−4に基づいて測定する。粘度が上記の範囲であれば、(A)成分の樹脂と十分な分子絡みが得られ、また、単位添加量に対するマレイン部(フィラー結合部)が十分で隣り合う分子同士の干渉を抑制できるため、製品強度が得られ易い。
【0021】
(C)成分の酸価は、好ましくは10〜500mgKOH/gであり、より好ましくは20〜100mgKOH/gである。
酸価は、ISO2114に基づいて測定する。酸価が上記の範囲であれば、マレイン酸部(フィラーとの結合部)を十分確保でき、また、分子絡みが長くなるため、高い強度を得やすい。
【0022】
(C)成分の温度190℃、荷重2.16kgにおけるメルトフローインデックスは、好ましくは30〜3000g/10分であり、より好ましくは50〜2500g/10分であり、さらに好ましくは65〜2000g/10分であり、特に好ましくは75〜1500g/10分である。このような範囲であれば、混練性、射出成形性に優れる。
(C)成分のMIは、JISK7210−1に基づき試験温度190℃、荷重2.16kgで測定した値である。
【0023】
第1の樹脂組成物中における(C)成分の含有量は1〜10質量%であり、好ましくは2〜8質量%である。3〜7質量%、又は4〜5質量%としてもよい。このような範囲であれば、(A)成分と(B)成分の相溶性向上効果に優れる。
【0024】
(任意成分)
第1の樹脂組成物は、任意成分として、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、滑剤、結晶核剤、軟化剤、帯電防止剤、充填剤、顔料等を任意の量で含んでもよい。
これらの成分を含む場合、任意成分を除いた場合の成分(A)〜(C)が上記の含有量(質量%)を満たす。
【0025】
第1の樹脂組成物は、本質的に、成分(A)、成分(B)、及び成分(C)からなってもよい(consisting essentially of)。第1の樹脂組成物の、例えば70%質量以上、80質量%以上、又は90質量%以上が、成分(A)、成分(B)、及び成分(C)であってもよい。また、第1の組成物は、成分(A)、成分(B)、及び成分(C)のみからなってもよい(consisting of)。この場合、本発明の効果を損なわない範囲で不可避不純物を含んでもよい。
【0026】
[第1の樹脂組成物の製造方法]
第1の樹脂組成物は、上記(A)〜(C)成分を混練することにより製造することができる。混練条件は特に制限されないが、通常260〜280℃、撹拌速度100〜200rpmの条件で行う。
【0027】
[第2の樹脂組成物]
本発明の一態様である第2の樹脂組成物は、第1の樹脂組成物がさらに(D)成分を含む組成物である。(D)成分は、温度230℃、荷重2.16kgにおけるメルトフローインデックスが0.1〜100g/10分であり、かつ前記(A)成分よりメルトフローインデックスが低い結晶性熱可塑性樹脂である。
【0028】
(D)成分の結晶性熱可塑性樹脂の種類は上記(A)成分と同様であり、ポリプロピレン系樹脂が好ましい。(D)成分としてホモポリプロピレンを用いると弾性率・耐薬品性の面で好ましい。一方、(D)成分としてブロックポリプロピレンを用いると耐衝撃性の面で好ましい。
【0029】
(D)成分のメルトフローインデックスは、0.1〜100g/10分であり、1〜80g/10分、2〜65g/10分、又は5〜55g/10分としてもよい。このような範囲であれば、十分な引張強度を確保することができる。また、混練性、射出成形性にも優れる。
(D)成分のMIは、JISK7210−1に基づき試験温度230℃、荷重2.16kgで測定した値である。
【0030】
第2の樹脂組成物における(D)成分の含有量αは、第1の樹脂組成物100質量部に対して、通常、0<α≦1900質量部を満たし、好ましくは20〜1750質量部であり、より好ましくは33〜1250質量部であり、さらに好ましくは75〜600質量部である。
上記の範囲であれば、後述する第2の樹脂組成物の製造方法において、経済的、エネルギー的優位性をより確保しやすくなり、成形が容易となる。
【0031】
第2の樹脂組成物における(B)成分の含有量は5〜20質量%であり、10〜20質量%としてもよい。炭素繊維の含有量が上記の範囲であれば十分な補強が得られ、かつ、成形が容易である。また、成形機内での可塑化行程でも炭素繊維の折損は起こるため、上記の範囲とする事が好ましい。
【0032】
第2の樹脂組成物は、下記式(I)を満たす。
X/Y≧7・・・(I)
(式(I)中、Xは、JIS7172により測定した、樹脂組成物からなる成形体の引張強度の値(単位:MPa)であり、Yは樹脂組成物中に含まれる前記(B)成分の含有割合(単位:質量%)である。)
X/Yは、好ましくは7.5以上、さらに好ましくは8.0以上である。
【0033】
式(I)は、添加した炭素繊維の、補強効果への寄与率を示すものである。第2の樹脂組成物はX/Yが7以上であることから、添加した炭素繊維量に対する補強効率が極めて大きい。
【0034】
第2の樹脂組成物は、メルトフローインデックスが5〜200g/10分であり、好ましくは6〜150g/10分であり、より好ましくは8〜120g/10分であり、さらに好ましくは10〜90g/10分である。
通常、射出成型グレードとして販売されている樹脂組成物は10〜50g/10分程度のものが多い。メルトフローインデックスが上記の範囲であれば、バリが出にくく、流動性不足による製品ショートが起こりにくく、成形が容易である。
【0035】
第2の樹脂組成物のメルトフローインデックスは下記の手順で算出される。
(1)片対数座標を用意する(X通常軸、Y対数軸)。X軸には、第1の樹脂組成物と(D)成分の割合を示す0〜100%までの目盛を与える。原点は(D)成分0%、第1の樹脂組成物100%であり、終点は(D)成分100%、第1の樹脂組成物0%である。Y軸には、温度230℃、荷重2.16kgで測定したMIを示す目盛を対数で与える。
(2)X=100を通るY軸との平行線上に、(A)成分のMIをプロットする(プロット1)。Y軸上に(D)成分のMIをプロットする(プロット2)。
プロット1と2を直線で結ぶ。
(3)得られた直線において、第2の樹脂組成物における当該2成分の割合(X)をあてはめ、対応するMI(Y)を得る。
【0036】
第2の樹脂組成物は、本質的に、成分(A)、成分(B)、成分(C)、及び成分(D)からなってもよい(consisting essentially of)。第1の樹脂組成物の、例えば70%質量以上、80質量%以上、又は90質量%以上が、成分(A)、成分(B)、成分(C)、及び成分(D)であってもよい。また、第1の組成物は、成分(A)、成分(B)、成分(C)、及び成分(D)のみからなってもよい(consisting of)。この場合、本発明の効果を損なわない範囲で不可避不純物を含んでもよい。
【0037】
[第2の樹脂組成物の製造方法]
第2の樹脂組成物は、第1の樹脂組成物に上記(D)成分を混練することによって製造することができる。(D)成分の量は上記の通りである。
MIが比較的高い(A)成分を主成分とする第1の樹脂組成物を用いることにより、炭素繊維の折損を抑制することができ、第2の樹脂組成物の補強効果を確保することができる。
【0038】
上記の製造方法は、第2の樹脂組成物に望まれる炭素繊維濃度のペレットを混練により製造し成形する製造方法と比較して、経済的、エネルギー的に優位である。主に、混練工程に通す原料量が少なくて済むことによる。上記の製造方法においては、第1の樹脂組成物を通常では考えられない高流動のものとすることにより、炭素繊維の折損を軽減している。
【0039】
当該製造方法をフルコンパウンド法と比較した場合、より省エネルギーで樹脂組成物を製造することができる。また、樹脂中に炭素繊維を通して成形を行う引抜成形法は、ペレットの中心部に繊維束が存在する形状であるため分散不良が生じやすいが、上記の製造方法によればより均一な分散が可能である。また、引抜成形法は特殊な製造装置が必要であるため、生産拠点が限られる、製造装置が複雑・高価になる、熟練工が必要となる等の短所があるが、上記の製造方法はそれらの弊害がない。
【0040】
当該製造方法は特別な製造装置を必要とせず、従来の混練機で生産可能である。混練条件は特に制限されないが、通常250〜280℃、撹拌速度100〜200rpmの条件で行う。
ここで、第1の樹脂組成物をペレット形状とし、ペレット形状の(D)成分と混合することによってペレット混合物とすることができる。当該ペレット混合物を混練することで第2の樹脂組成物とすることができる。
第1の樹脂組成物からなるペレットの長軸の平均長は、通常、3〜12mmであり、好ましくは4〜10mmであり、より好ましくは5〜9mmである。
【0041】
第2の樹脂組成物を成形することで得られる成形体は、自動車、産業資材、建材、電子・電気機器、OA機器、機械分野の各種材料に用いることができる。
【実施例】
【0042】
実施例1〜10、比較例1、2
[ペレット及び試験片の製造]
表1に示す(A)成分及び(C)成分をプリブレンドしたものをトップフィードし、表1に記載の(B)成分をサイドフィードし、2軸押出機「TEX37」(株式会社東芝機械製)によって溶融混練して炭素繊維強化ポリプロピレンペレット(樹脂組成物1)を得た。溶融混練のシリンダ温度は260℃、ダイス温度は260℃とした。得られたペレットの長軸の平均長さは6mmであった。
得られたペレットと表1に記載の(D)成分からなるペレットを混合してペレット混合物とし、このペレット混合物から「JSW180AD」射出成形機(株式会社日本製鋼所製)によって、JISK7161に基づく試験片(樹脂組成物2)を作製した。成形温度は230℃、金型温度は50℃とした。
表1における(A)〜(C)成分の量は(A)〜(C)成分の合計量に対する各成分の割合(質量%)を示し、(D)成分の量は(A)〜(C)成分の合計量を100質量部としたときの(D)成分の質量部を示す。
【0043】
用いた各成分は以下の通りである。
((A)成分)
・ホモポリプロピレン樹脂:商品名「PWH00N」(サンアロマー株式会社製)
・ホモポリプロピレン樹脂:商品名「H−700」(プライムポリマー株式会社製)
曲げ弾性率:1400MPa(JISK7171に基づき測定)
ノッチ付シャルピー衝撃強度:4.2kJ/m
2(JISK7111に基づき測定)
(A)成分全体のMIは表1に示す。また、実施例1〜10で用いた(A)成分はいずれも分子量分布が2つのピークを有するものであることを確認した。
【0044】
((B)成分)
・炭素繊維:商品名「TR06UL B6R」(PAN系炭素繊維:三菱レイヨン株式会社製)
平均繊維径:7μm
平均繊維長:6mm
結束剤:ウレタン系化合物
シランカップリング剤:モノアミノシラン
【0045】
((C)成分)
・マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂:商品名「H−1100P」(山陽化成株式会社製)
変性率:3.6%
粘度:26000mPa・s(200℃)
メルトフローインデックス:250g/10分
【0046】
((D)成分)
・ホモポリプロピレン樹脂:商品名「J−700GP」(プライムポリマー株式会社製)
・ブロックポリプロピレン樹脂:商品名「J−762GP」(プライムポリマー株式会社製)
引張弾性率:1050MPa(JISK7162に基づき測定)
曲げ弾性率:1100MPa(JISK7171に基づき測定)
ノッチ付シャルピー衝撃強度:14kJ/m
2(JISK7111に基づき測定)
・ブロックポリプロピレン樹脂:商品名「J−185」(プライムポリマー株式会社製)
引張弾性率:1450MPa(JISK7162に基づき測定)
ノッチ付シャルピー衝撃強度:65kJ/m
2(JISK7111に基づき測定)
・ブロックポリプロピレン樹脂:商品名「J−466」(プライムポリマー株式会社製)
引張弾性率:900MPa(JISK7162に基づき測定)
曲げ弾性率:950MPa(JISK7171に基づき測定)
ノッチ付シャルピー衝撃強度:66kJ/m
2(JISK7111に基づき測定)
・ブロックポリプロピレン樹脂:商品名「J−966」(プライムポリマー株式会社製)
曲げ弾性率:900MPa(JISK7171に基づき測定)
ノッチ付シャルピー衝撃強度:45kJ/m
2(JISK7111に基づき測定)
(D)成分のMIは表1に示す。
【0047】
[樹脂組成物2の評価]
得られた試験片(樹脂組成物2)について以下の評価を行った。結果を表1に示す。尚、表1中「−」は試験を行っていないことを示す。
【0048】
(引張強度)
JISK7161に基づいて成形体を作製し、成形体の引張強度を求めた。
【0049】
(分散性)
試験片について目視で観察を行い、分散不良がある場合を「×」、ない場合を「〇」とした。
【0050】
(クリープ特性)
JISK7115に基づき試験を行い、80℃、34MPaにおける試験片の破断時間(単位:時間)を測定した。
【0051】
(疲労特性)
ASTM試験片(12.5mm×3.2mm断面)について、スパン50mm、中央集中荷重により、10Hzで荷重Xから0.05Xの間で正弦波連続過重負荷を行った。Xを150N→140N→130Nと変化させた場合の破断回数が10の7乗回を超えたときの荷重を測定した。
本測定では電磁力式疲労試験機「MMT−250N」、コントローラ「4826」、パワーアンプ「MMT」(いずれも株式会社島津製作所製)を用いた。
【0052】
【表1】