特開2017-179625(P2017-179625A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-179625(P2017-179625A)
(43)【公開日】2017年10月5日
(54)【発明の名称】編み地の製造方法
(51)【国際特許分類】
   D06P 5/00 20060101AFI20170908BHJP
   D04B 21/06 20060101ALI20170908BHJP
   D04B 21/10 20060101ALI20170908BHJP
   D04C 1/10 20060101ALI20170908BHJP
【FI】
   D06P5/00 A
   D04B21/06
   D04B21/10
   D04C1/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2016-64915(P2016-64915)
(22)【出願日】2016年3月29日
(71)【出願人】
【識別番号】514244550
【氏名又は名称】アートボーン企画株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095430
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 勲
(72)【発明者】
【氏名】中村 さゆみ
(72)【発明者】
【氏名】竹内 弘二
【テーマコード(参考)】
4H057
4H157
4L002
4L046
【Fターム(参考)】
4H057AA01
4H057AA02
4H057DA51
4H157AA01
4H157AA02
4H157DA51
4L002AA02
4L002AA03
4L002AA05
4L002AA06
4L002AA07
4L002AB01
4L002AB02
4L002AC01
4L002CA00
4L002CB02
4L002DA01
4L002DA04
4L002EA00
4L002FA01
4L046AA11
4L046AD01
4L046BA00
4L046BB00
(57)【要約】
【課題】製造する生機の用途を柔軟に設定可能にし、売れ残りをなくし、資源の無駄がなく、シーズンに関係なく安定な生産を可能にする編み地の製造方法を提供する。
【解決手段】全幅に亘って形成された基本組織12と、基本組織12の所定の位置に施された柄組織14とを有する編み地10の製造方法である。基本組織12の編み糸の太さに対して、柄組織14の編み糸の太さが、2倍〜6倍である。柄組織14の編み糸の、編成される生機の幅全体における平均本数を、基本組織12の編み糸の平均本数の24%〜55%に設定して、生機を編成する。生機を染色する際に、生機のウェール方向の幅を、染色時の収縮により所望の生地厚になるように設定して染色を行う。同じ生機から、薄いレース調の生地から、冬用の厚い生地まで、所望の設定により選択的に製造する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
全幅に亘って形成された基本組織と、この基本組織の所定の位置に施された柄組織とを有する編み地の製造方法であって、
前記基本組織の編み糸の太さに対して、前記柄組織の編み糸の太さが2倍〜6倍であり、前記柄組織の編み糸の、編成される生機の幅全体における平均本数を、前記基本組織の編み糸の平均本数の24%〜55%に設定して前記生機を編成し、
前記生機を染色する際に、前記生機のウェール方向の幅を、染色時の収縮により所望の生地厚になるように設定して染色を行い、同じ生機から薄い生地から厚い生地まで、前記設定により任意に前記所望の生地厚に製造することを特徴とする編み地の製造方法。
【請求項2】
前記基本組織を形成した編み糸は、合成樹脂の繊維から成る編み糸である請求項1記載の編み地の製造方法。
【請求項3】
前記柄組織を形成した編み糸は、短繊維の編み糸である請求項1記載の編み地の製造方法。
【請求項4】
前記生機を染色する際に、前記生機のウェール方向の幅を所定の値に設定して、染色時の収縮を調節して、レース調の生地または冬用の地厚の生地を選択的に製造する請求項1,2又は3記載の編み地の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、レース生地やその他衣料の生地として利用可能な編み地の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1、2に示されるチュール編み組織を備えたレース生地や、その他の衣料の編み物の生地は、編み機で編成された直後の生機から、所定の収縮・伸張度合いに設定されて染色工程を経て、種々の用途に生地になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−83473号公報
【特許文献2】特開2006−265763号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1,2に開示されチュールレース編み地は、所定の刺繍糸や柄糸により模様が施されて、所望の厚みの生地に仕上げられる。しかし、一般的に衣料やその他布製品は、需要を予測して生産するものであり、特に布地は生産者が各工程により別れており、生産工程における上流側の製造者による編み地は、その生産量を予測してある程度余分に生産しなければならない。編み物の製造において最も上流側の生産品である生機は、欠品になると、下流側の製品製造において大きな問題となるので、余剰な生産をせざるを得ず、過剰在庫や商品サイクルの変化により、多くの売れ残りが生じることも多いものであった。売れ残った生機は、格安で売りさばいたり、廃棄して処分しなければならず、労力や資源の無駄になっていた。
【0005】
この発明は、上記背景技術に鑑みて成されたものであり、製造する生機の用途を柔軟に設定可能にし、売れ残りをなくし、資源の無駄がなく、シーズンに関係なく安定な生産を可能にする編み地の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、全幅に亘って形成された基本組織と、この基本組織の所定の位置に施された柄組織とを有する編み地の製造方法であって、前記基本組織の編み糸の太さに対して、前記柄組織の編み糸の太さが2倍〜6倍であり、前記柄組織の編み糸の、編成される生機の幅全体における平均本数を、前記基本組織の編み糸の平均本数の24%〜55%に設定して前記生機を編成し、前記生機を染色する際に、前記生機のウェール方向の幅を、染色時の収縮により所望の生地厚になるように設定して染色を行い、同じ生機から薄い生地から厚い生地まで、前記設定により任意に前記所望の生地厚に製造する編み地の製造方法である。
【0007】
前記基本組織を形成した編み糸は、合成樹脂の繊維から成る編み糸である。また、前記柄組織を形成した編み糸は、短繊維の編み糸でも良い。
【0008】
前記生機を染色する際に、前記生機のウェール方向の幅を所定の値に設定して、染色時の収縮を調節して、レース調の生地または冬用の地厚の生地を選択的に製造するものである。
【発明の効果】
【0009】
この発明の編み地の製造方法によれば、1種類の生機で、編み目に空間の多いレース生地や、布厚が厚い冬用の生地等に形成することができ、無駄なく生機を使用することができる。これにより、編み地の製造を、過剰な在庫や欠品が生じることがなく、年間を通して安定な生産が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】この発明の一実施形態の生機の編組織を示す模式図である。
図2】この実施形態の編み地の製造工程を説明するフローである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、この発明の実施形態の編み地の製造方法について、図面に基づいて説明する。この発明の一実施形態の編み地10は、図1に示すように、基本組織であるチュール組織12に柄組織14が施されたレース生地である。チュール組織12は、亀甲状の組織に形成され規則的に並んだ編み目である空間12aを有している。チュール組織12に設けられる柄組織14は、編み糸により、所定の筬により、チュール組織12に加えて編成される。
【0012】
編み地10を構成する編み糸は、チュール組織12の編み糸の太さに対して、柄組織14の編み糸の太さが2倍〜6倍、好ましくは4倍〜5倍の太さに設定される。例えばチュール組織12の編み糸の太さが30デニールの場合、柄組織14の編み糸は、60デニール〜180デニールに設定される。柄組織14の編み糸がこれより細いと、収縮させて編み地を形成したときの生地厚が十分に厚くならず、編み糸の太さが上記値よりも太いと、夏用のレース調の生地には適さないという問題があるからである。
【0013】
さらに、柄組織14の編み糸の、編成される生機の幅全体における平均本数が、チュール組織12の編み糸の平均本数の24%〜55%、好ましくは30%〜45%に設定される。柄組織14の編み糸平均本数がこれより少ないと、収縮させて編み地を形成したときの生地厚が十分に厚くならず、柄組織14の編み糸平均本数がこれより多いと、十分な空間が編み目にできない状態になり、夏用のレース調の生地には適さないという問題があるからである。例えば、1インチ当たりチュール組織12の編み糸の本数が28本の場合、柄組織14の編み糸の本数は、7本〜15本となるように柄が設定される。
【0014】
編み地10の編み糸の種類は、チュール組織12の編み糸の繊維は、ポリエステルやナイロンの合成繊維のモノフィラメント糸で、弾性糸、非弾性糸ともに利用可能であるが、弾性糸が好ましい。柄組織14の編み糸の繊維は、合成繊維のモノフィラメント糸の他、ウールや綿の短繊維の編み糸でも良い。
【0015】
この実施形態の編み地10の製造は、図2のフローに示すように、先ず、編み機により、所定数の筬を用いて、チュール組織12及び柄組織14の生機を編成する(s1)。ここでは、シーズンに関わりなく、通年で必要な生機を製造する。そして、編成された生機は、ニーズに応じて染色工程に送られ、所定の温度、及び伸縮率で染色される。このとき、シーズン、用途に合わせて、生機から生地にする所定の収縮の割合を設定する(s2)。例えば、夏用の生地として、図1に示すレース調の編み地10を製造する場合、生機の状態からのウェール方向の幅の収縮割合を、最小限の値、例えばウェール方向の幅が5%収縮した状態に設定する。逆に冬用の厚い生地を製造する場合は、収縮率を30%程度に設定する。染色時の温度は、チュール組織12の糸がポリエステルの場合130℃で30分程度、ナイロンの場合80℃〜95℃で60分程度である。この温度での染色時に、何も力を加えないと生機は30%程度縮むが、この実施形態では、染色時の収縮量を、上記の通り最初に設定した所定の値となるように、ウェール方向の幅を設定して染色する(s3)。従って、冬用の生地にする場合、加熱による収縮に任せて染色を行う。これにより、生地厚の厚い冬用の生地ができあがる(s3)。この後、その生地の幅で乾燥し、所望の用途、厚さの編み地である生地が仕上がる(s4)。
【0016】
この実施形態の編み地10は、編成時に、チュール組織12の編み糸に対して、柄組織14の編み糸の太さを2倍〜6倍、好ましくは4倍〜5倍の太さに設定し、さらに、柄組織14の編み糸の、編成される生機のウェール方向の幅全体における平均本数が、チュール組織12の編み糸の平均本数の24%〜55%に、好ましくは30%〜45%に設定して編成を行う。この条件で生機を編成することにより、編成直後の生機の薄い生地の状態から、染色工程において、設定した所望の生地厚の編み地を得ることができる。編み地である生地厚の設定は、染色工程に移す際に、染色時に生機を固定する幅を所定の値に固定し、所望の収縮率になるように設定して染色工程を行う。これにより、生機から編み地を形成する際に、薄いレース調の編み地から、厚い冬用の編み地まで、所望の厚さで所望の用途の編み地である生地を形成することができる。
【0017】
この実施形態の編み地10の製造方法によれば、所定の条件の生機を編成し、後の染色工程において生機の収縮の割合を必要に応じた値に設定して染色を行い、所望の編み目の大きさや生地の厚さの編み地を形成することができる。これにより、1種類の生機を編成するだけで良く、シーズンを問わず安定に生機を製造することができ、生機の不足や過剰な生産を無くし、常時適切な生産量で、欠品することなく供給することが可能となる。
【0018】
なお、この発明の編み地は、上記実施形態に限定されるものではなく、基本組織は、図1に示す6コースチュール組織以外の4コースチュール組織や、その他各種メッシュの編み組織でも良く、編み目に空間を有した組織であれば良く、柄組織も任意の柄を基本組織に編み込むことができるものである。
【符号の説明】
【0019】
10 編み地
12 チュール組織
12a 空間
14 柄組織
図1
図2