(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-17985(P2017-17985A)
(43)【公開日】2017年1月19日
(54)【発明の名称】モータの放熱構造
(51)【国際特許分類】
H02K 5/20 20060101AFI20161222BHJP
H02K 7/14 20060101ALI20161222BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20161222BHJP
【FI】
H02K5/20
H02K7/14 A
H05K7/20 H
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-131195(P2016-131195)
(22)【出願日】2016年7月1日
(31)【優先権主張番号】104121565
(32)【優先日】2015年7月2日
(33)【優先権主張国】TW
(71)【出願人】
【識別番号】501164676
【氏名又は名称】周 文三
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】周 文三
【テーマコード(参考)】
5E322
5H605
5H607
【Fターム(参考)】
5E322AA01
5E322BA01
5E322BB03
5H605AA01
5H605BB05
5H605CC01
5H605CC02
5H605DD07
5H605DD11
5H605EA02
5H605GG04
5H607AA02
5H607BB01
5H607BB07
5H607BB14
5H607CC03
5H607DD03
5H607DD19
5H607FF04
5H607JJ03
(57)【要約】
【課題】複数の放熱経路により効果的に放熱を行う放熱モータを提供する。
【解決手段】放熱モータは、ハウジング1、回転軸8、前カバー6及び放熱ファン7を備える。ハウジング1は、内部空間15を有し、一端に前面開口部10が形成され、他端に閉止した後壁11が形成される。回転軸8は、ハウジング1内に回転可能に取付けられ、後壁から延びた回転軸8は、一端に出力端80が設けられ、他端に連結端89が設けられる。前カバー6は、ディスク状であり、軸孔61を有する中心ハブ60が中央部に形成される。中心ハブ60の軸孔61には回転軸8が挿設される。放熱ファン7は、回転軸8の連結端89に嵌着されて回転軸8と同期で回転し、前カバー6の中心ハブ60外周の3つの周縁部には、プレス成形により前カバー6から一部分離された導風フィン63と、導風フィン63に対応する空気取込み孔64と、が間隔をあけて形成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング、回転軸、前カバー及び放熱ファンを備えたモータの放熱構造であって、
前記ハウジングは、内部空間を有し、一端に前面開口部が形成され、他端に閉止した後壁が形成され、前記後壁には、複数の排風口が間隔をあけて形成され、
前記回転軸は、前記ハウジング内に回転可能に取付けられ、前記後壁から延びた前記回転軸は、一端に出力端が設けられ、他端に連結端が設けられ、
前記前カバーは、ディスク状であり、軸孔を有する中心ハブが中央部に形成され、前記中心ハブの前記軸孔には前記回転軸が挿設され、
前記放熱ファンは、前記回転軸の前記連結端に嵌着されて前記回転軸と同期で回転し、前記前カバーの前記中心ハブ外周面の3つの周縁部には、プレス成形により前記前カバーから一部分離された導風フィンと、前記導風フィンに対応する空気取込み孔と、が間隔をあけて形成され、前記放熱ファンが回転して発生した円形状に回る空気流が、前記前カバーの前記導風フィンにより遮られ、前記空気取込み孔を介して前記ハウジング内へ直接進入することを特徴とする、モータの放熱構造。
【請求項2】
前記導風フィンは、前記前カバー上に立設し、
前記前カバーの水平面Vを基準とし、
前記導風フィンの前記回転軸側の前記前カバーの前記水平面Vに対する立設角度θ1は、θ1≧90度であることを特徴とする、請求項1に記載のモータの放熱構造。
【請求項3】
前記ハウジングの周面上には、少なくとも1つの完全に貫通された対流孔が形成され、前記対流孔を介して前記ハウジングの内部及び外部の空気流が流通することを特徴とする、請求項1に記載のモータの放熱構造。
【請求項4】
装着カラーの2つの対をなす縁部には、ベースの一側辺のシースが延設され、
前記シースには、前記ベースの他側辺の装着筒が延設され、前記ハウジング内に設けたダボロッドが前記装着筒に嵌着されるため、導電用途の導電挿入片が前記シースに嵌合されて前記シースの外部へ延び、前記ハウジングの前記前面開口部に前記装着カラーが固定されることを特徴とする、請求項1に記載のモータの放熱構造。
【請求項5】
前記前カバーの周縁上には、中心に向かって凹んだ大切欠きが形成され、
前記装着カラーに前記前カバーが結合されると、前記装着カラーの前記シースに前記大切欠きが噛合されて固定されることを特徴とする、請求項4に記載のモータの放熱構造。
【請求項6】
前記前カバーの周縁上には、中心に向かって凹んだ小切欠きが形成され、前記装着カラーと結合される前記前カバーが前記ハウジングの前記前面開口部に結合され、前記ハウジングの前記前面開口部の縁部の位置決めフックは、前記小切欠きに挿入されて前記前カバーに係合されることを特徴とする、請求項5に記載のモータの放熱構造。
【請求項7】
前記前カバーには、装着円孔が形成され、前記ハウジング内部に設けられた位置決め部にネジが螺着され、前記装着カラーに前記前カバーが結合されると、前記回転軸の最外端に前記連結端が設けられることを特徴とする、請求項6に記載のモータの放熱構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータの放熱構造に関し、特に、モータに設けられた複数の放熱経路により効果的に放熱を行い、モータのハウジング内に熱が溜まってしまうことを防いで、モータ運転の最高出力パワーを得て、モータの運転効率を高めるとともに、モータの使用寿命を延ばす、モータの放熱構造に関する。
【背景技術】
【0002】
現代の科学技術分野においてモータは広く利用されている動力機器である。しかし高パワーの大型モータ又は低パワーの小型モータであっても、モータのロータが回転すると、モータのハウジング内に熱が溜まり易く、モータが運転する際に発生する熱を適時排出させる放熱構造が足りない場合、モータ内部に溜まった熱により磁石の磁力が低下し、それに伴ってモータの運転効率が次第に低下し、一定の温度に達すると、電機子中のエナメル線などの絶縁物が破壊されたり、エナメル線に短絡が起きてモータ全体が焼損したりするなどの虞があった。このような欠点を改善するために、現在よく利用されている技術は、モータ中心に設けられた回転軸の一端に設けられた放熱ファンにより、モータの運転中に上昇する温度を抑制する技術であるが、このような技術は、放熱ファンが空気流をモータのハウジング外周表面に吹き付けるだけであり、モータのハウジング内へ空気流を直接送りこんでモータ内部の熱を適時放出させることはできなかった。そのため、従来技術では使用するモータのハウジング内に熱が溜まり易いという欠点を改善することはできなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の第1の目的は、モータが有する複数の放熱経路により効果的に放熱を行うモータの放熱構造を提供することにある。
本発明の第2の目的は、ハウジングの前面開口部に前カバーを結合し、前カバー及び放熱ファンが発生させる空気流は、両者がモータの回転軸の軸線方向で互いに対向し、前カバーの中心ハブの外周面には、プレス成形により、間隔をあけて導風フィンと、導風フィンに対応する空気取込み孔と、が複数形成され、円形状に回る大部分の空気流が導風フィンにより遮られ、空気取込み孔を介してモータのハウジングの内部空間に空気流が直接進入し、モータが運転するときのハウジングの内部空間に発生する熱を適時放出する、複数の放熱経路を有するモータの放熱構造を提供することにある。
本発明の第3の目的は、ハウジングの周面上に形成された少なくとも1つの完全に貫通された対流孔により、モータのハウジングの内部及び外部の空気流を流通させ、モータが運転するときのハウジングの内部空間に発生する熱を対流孔を介して適時放出し、モータの内部空間を効果的に冷却して温度を下げる、モータの放熱構造を提供することにある。
本発明の第4の目的は、高温環境下で放熱モータを運転する場合でも、放熱モータが焼損することを防ぎ、放熱モータを70℃の密閉空間で長時間連続運転するテストでも焼損することがなかった、モータの放熱構造を提供することにある。
【図面の簡単な説明】
【0004】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係るモータを示す分解斜視図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態に係るモータを示す斜視図である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施形態に係るモータの別の角度からの斜視図である。
【
図4】
図4は、本発明の一実施形態に係るモータに、前カバーの導風フィン及び導風フィンに対応した空気取込み孔を介して空気流を進入させ、モータのハウジング内に溜まった熱を放出する使用状態の説明図である。
【
図5】
図5は、本発明の一実施形態に係るモータを示す平面図である。
【
図6】
図6は、本発明の一実施形態に係るモータに、空気流を進入させてモータのハウジング内に溜まった熱を放出する使用状態の説明図である。
【
図7】
図7は、本発明の一実施形態に係るモータのハウジング内の高温の空気流を、ハウジングの後壁の排風口を介して放出する使用状態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0005】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、これによって本発明が限定されるものではない。
【0006】
モータの動作原理及び内部の関連構造は既によく知られた公知技術であるため本明細書では詳しく述べない。
【0007】
図1〜
図3を参照する。
図1〜
図3に示すように、本発明の一実施形態に係るモータの放熱構造は、内部空間15を有するハウジング1を含む。ハウジング1の一端には、前面開口部10が形成される。開口部10の縁部には、複数の位置決めフック12が間隔をあけて形成される。ハウジング1の他端には、閉止した後壁11が形成される。後壁11には、複数の排風口14が間隔をあけて形成される。ハウジング1の周面上に形成された少なくとも1つの完全に貫通された対流孔13により、ハウジング1の内部及び外部の空気流を流通させる。ハウジング1の内部空間15内には、モータ構造に必要な部品(例えば、ロータ2、コイル3及び磁石4)が設置され、ハウジング1の後壁11及び前面開口部10の軸線上には回転軸8が配設される。後壁11から延びた回転軸8は、一端に出力端80が設けられる。出力端80には、関連した伝動部材が接続される。回転軸8が回転するとそれに伴いモータが作動する。前述したモータのハウジング1の外周には、金属からなる電導コイル9が外嵌され、電導コイル9が導磁作用を有するため、モータが作動するときの運転効率が向上する。
【0008】
装着カラー5の2つの対をなす縁部には、ベースの一側辺のシース51,52が延設される。シース51,52には、ベースの他側辺の装着筒53,54が延設され、ハウジング1内に設けたダボロッド83,84が装着筒53,54に嵌着されるため、導電用途の導電挿入片81,82がシース51,52に嵌合されてシース51,52の外部へ延び、ハウジング1の前面開口部10に装着カラー5が固定される。
【0009】
前カバー6は、ディスク状であり、軸孔61を有する中心ハブ60が中央部に形成される。中心ハブ60外周面の3つの周縁部には、プレス成形により前カバーから一部分離された導風フィン63と、導風フィン63に対応する空気取込み孔64と、が間隔をおいて複数形成される。導風フィン63は、前カバー6上に立設し、前カバー6の水平面Vを基準とする(
図6を参照する)。複数の導風フィン63の回転軸8側の前カバーの水平面Vに対する立設角度θ1は、θ1≧90度である。前カバー6の周縁上には、中心に向かって凹んだ大切欠き621及び小切欠き622が形成され、装着カラー5に前カバー6が結合されると、装着カラー5のシース51,52に大切欠き621が噛合されて固定される。装着カラー5と結合される前カバー6がハウジング1の前面開口部10に結合され、前述したハウジング1の前面開口部10の縁部に設けられた位置決めフック12は、小切欠き622に挿入されて前カバー6に係合される。勿論、前カバー6には、装着円孔65が形成され、ハウジング1内部に設けられた位置決め部(図示せず)にネジ(図示せず)が螺着され、装着カラー5に前カバー6が結合されると、回転軸8の最外端(即ち連結端89)が中心ハブ60の軸孔61から延び、中心ハブ60内に軸受(図示せず)が覆われるため、回転軸8は円滑に回転することができる。
【0010】
放熱ファン7は、軸孔70を有する。放熱ファン7は、軸孔70を介して回転軸8の連結端89に嵌着される。
【0011】
図2及び
図3は、ハウジング1、装着カラー5、前カバー6及び放熱ファン7を組み合わせた状態を示す。
図5に示すように、モータの回転軸8が動作すると、放熱ファン7が同期で回転し、円形状に回る空気流が発生し、放熱ファン7の右側(
図5で示された方向で見て右側)の気流が吸引されて放熱ファン7の左側へ案内され、複数の放熱経路を介してハウジング1の内部空間15に空気流が進入し(
図6を参照する)、モータの運転によりハウジング1の内部空間15に発生する熱を適時、効率良く放出する。本発明の複数の放熱経路の構造設計及びその発生効果を
図4、
図6及び
図7に示す。前カバー6及び放熱ファン7に発生する空気流は、両者がモータの回転軸8の軸線方向で互いに対向しているため、円形状に回る空気流の大部分が導風フィン63により遮られ、
図4、
図6及び
図7の経路Aに沿って、ハウジング1の対流孔13と、ハウジング1の後壁11の排風口14とを介し、モータの運転により内部空間15に発生する熱を適時放出する。
図6の経路Bに沿って、円形状に回る空気流が前カバー6の導風フィン63により画成された円形面積範囲の外側部分より大きい部分がハウジング1の外周を介してハウジング1の外表面に吹き付けられ、外部のハウジング1が同時に放熱され、複数の放熱経路が形成されて高い放熱作用を得る。このように経路B及び経路Aにより放熱の相乗効果が得られるため、モータが熱により損壊することを防ぐことができる。
【0012】
上述したことから分かるように、本発明のモータのハウジング1の前面開口部10の端部の前カバー6に形成された複数の導風フィン63及び空気取込み孔64により放熱経路Aが形成される。放熱経路Bを介して放熱ファン7により発生された円形状に回る空気流の外周部分がハウジング1の外表面に吹き付けられ、ハウジング1の外側も同時に放熱される。このように複数の放熱経路を形成して効率良く放熱を行い、モータのハウジング1内に熱が溜まることを防ぎ、モータ運転の最高出力パワーを得て、モータの運転効率を高めるとともに、モータの使用寿命を延ばす。このように本発明は、高温環境下で放熱モータを運転しても、放熱モータが焼損することを防ぐことができるため、実用的で進歩性を有する。
【符号の説明】
【0013】
1 ハウジング
2 ロータ
3 コイル
4 磁石
5 装着カラー
6 前カバー
7 放熱ファン
8 回転軸
9 電導コイル
10 前面開口部
11 後壁
12 位置決めフック
13 対流孔
14 排風口
15 内部空間
51 シース
52 シース
53 装着筒
54 装着筒
60 中心ハブ
61 軸孔
63 導風フィン
64 空気取込み孔
65 装着円孔
70 軸孔
80 出力端
81 導電挿入片
82 導電挿入片
83 ダボロッド
84 ダボロッド
89 連結端
621 大切欠き
622 小切欠き