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特開2017-179869観客席を有する建築構造物及びその施工方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-179869(P2017-179869A)
(43)【公開日】2017年10月5日
(54)【発明の名称】観客席を有する建築構造物及びその施工方法
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/35 20060101AFI20170908BHJP
   E04H 3/12 20060101ALI20170908BHJP
【FI】
   E04B1/35 Q
   E04H3/12 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-68502(P2016-68502)
(22)【出願日】2016年3月30日
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】水谷 太朗
(72)【発明者】
【氏名】河本 慎一郎
(72)【発明者】
【氏名】村瀬 正樹
(72)【発明者】
【氏名】菅野 貴孔
(72)【発明者】
【氏名】松土 智史
(57)【要約】
【課題】施工が容易な、観客席を有する建築構造物及びその施工方法を提供する。
【解決手段】観客席9を有する建築構造物1の施工方法であって、該建築構造物1は、柱4と水平梁5を備えた柱梁架構3と、水平面に対し斜め方向に延在して設けられ、前記柱梁架構3により支持された斜梁6を備え、前記観客席9は前記斜梁6上に設けられた構成とされ、この構成において、前記柱梁架構3を構築すること、鉄骨鉄筋コンクリートのプレキャスト材として製作された複数の斜梁部材10を長さ方向に接合して前記斜梁6を製作すること、前記斜梁6を、前記柱梁架構3上に接合すること、を含む、観客席9を有する建築構造物1の施工方法を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
観客席を有する建築構造物の施工方法であって、
該建築構造物は、柱と水平梁を備えた柱梁架構と、水平面に対し斜め方向に延在して設けられ、前記柱梁架構により支持された斜梁を備え、
前記観客席は前記斜梁上に設けられた構成とされ、
この構成において、前記柱梁架構を構築すること、
鉄骨鉄筋コンクリートのプレキャスト材として製作された複数の斜梁部材を長さ方向に接合して前記斜梁を製作すること、
前記斜梁を、前記柱梁架構上に接合すること、
を含む、観客席を有する建築構造物の施工方法。
【請求項2】
前記柱は、該柱に接合される最上段の前記水平梁から上方に突出する柱仕口部を備え、
前記水平梁は、該水平梁に接合される前記柱から、前記斜梁の接合される水平方向に突出する梁仕口部を備え、
前記斜梁を製作する際に、前記斜梁の接合時に前記柱及び前記水平梁の延在する方向に突出する接続部材を接合すること、
前記斜梁を接合する際に、前記接続部材を、前記柱仕口部及び前記梁仕口部に接合すること、
を含む、請求項1に記載の建築構造物の施工方法。
【請求項3】
前記斜梁の製作は、前記斜梁部材間で、前記斜梁部材のコンクリート部分の端部から突出した鉄骨及び主筋同士を接合すること、及び、
前記鉄骨及び前記主筋の接合部にコンクリートを打設すること、
を含む、請求項1または2に記載の建築構造物の施工方法。
【請求項4】
前記斜梁の製作は、前記斜梁部材間で、前記斜梁部材のコンクリート部分の端部から突出した鉄骨及び主筋同士を接合することを含み、
前記斜梁の接合後に、前記鉄骨及び前記主筋の接合部にコンクリートを打設すること、
を含む、請求項1または2に記載の建築構造物の施工方法。
【請求項5】
柱と水平梁を備えた柱梁架構と、
水平面に対し斜め方向に延在して設けられ、前記柱梁架構により支持された斜梁と、
該斜梁上に設けられた観客席と、
を備え、
前記斜梁は鉄骨鉄筋コンクリートのプレキャスト材として製作された複数の斜梁部材を長さ方向に接合することにより製作されている、観客席を有する建築構造物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、観客席を有する建築構造物及びその施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
スタジアムやホール等の、観客席を有する建築構造物においては、観客席は、最後方上段からグラウンドやステージ等に向けて、下方に傾斜するように設けられた、斜梁上に設置されることが多い。
【0003】
このような建築構造物の例を、図7に示す。図7は、特許文献1に開示された、すり鉢状構造物を説明するものである。すり鉢状構造物100の内周面に沿って複数の斜梁101が放射状に設けられている。少なくとも隣接する斜梁101同士の間で一体形成されるスタンドスラブ102がこの斜梁101に接合されている。斜梁101は柱103で担持され、斜梁101とこの柱103との接合点Pに水平梁104の端部が接合され、スタンドスラブ102、斜梁101、柱103、水平梁104が一体に構成されている。観客スタンド105は、傾斜方向に階段状に設けられた個々のスタンド106によって構成されている。
【0004】
上記のような建築構造物において、柱や梁などの主要構造部材を鉄骨で構成した場合には、斜梁として、柱や梁と同様に鉄骨が用いられることが多い。特許文献2には、スタジアムなどの観客席を構築する場合において、斜梁として鉄骨を使用することが開示されている。
【0005】
しかし、鉄骨は剛性が高くないため、スポーツ等のイベントにおいて興奮した観客が騒ぎ、飛び跳ねたりした場合に、斜梁が大きく振動することがある。これにより、建築構造物を構成する部材が破損する、観客が振動を感じることで不安を覚える、建築構造物内に設置した電子機器等の各設備が、振動により破損し、または誤動作を起こす、等の問題が発生する可能性がある。
【0006】
したがって、特に建築構造物の振動を防ぐことが求められる場合においては、斜梁として、鉄骨ではなく、鉄骨鉄筋コンクリート(以下、SRCと呼称する)を使用する場合がある。この場合には、斜梁は、地組ヤードにおいて鉄骨に鉄筋を配筋し、基礎上に立設された柱の上に鉄筋が配筋された鉄骨を設置した後、鉄骨・鉄筋の周囲に型枠を設置し、コンクリートを打設することにより設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−284464号公報
【特許文献2】特開2001−164686号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
SRC製の斜梁を上記のような手法で製作する場合においては、型枠の設置、コンクリートの打設、及び脱型等の一連の作業を高所で行う必要があるため、施工が容易ではない。
斜めに設置された鉄骨・鉄筋の周囲へのコンクリートの打設は容易ではなく、コンクリートの品質の維持が困難であるという問題もある。
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、施工が容易な、観客席を有する建築構造物及びその施工方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。すなわち、本発明による観客席を有する建築構造物の施工方法は、該建築構造物は、柱と水平梁を備えた柱梁架構と、水平面に対し斜め方向に延在して設けられ、前記柱梁架構により支持された斜梁を備え、前記観客席は前記斜梁上に設けられた構成とされ、この構成において、前記柱梁架構を構築すること、鉄骨鉄筋コンクリートのプレキャスト材として製作された複数の斜梁部材を長さ方向に接合して前記斜梁を製作すること、前記斜梁を、前記柱梁架構上に接合すること、を含む。
このような構成によれば、斜梁を、鉄骨鉄筋コンクリートのプレキャスト材として製作された複数の斜梁部材を長さ方向に接合して製作した後に、柱梁架構上に接合するため、従来においては斜梁の製作において必要であった高所における型枠の設置作業を低減することが可能となり、これに伴い、型枠を支持する支保工の設置個所も低減することが可能となる。したがって、施工が容易となる。
また、高所における施工が容易となり、また作業量が低減することで、作業員の安全性が高まる。
また、斜梁は、鉄骨鉄筋コンクリートのプレキャスト材として製作された複数の斜梁部材を長さ方向に接合して製作されているため、斜めに設置された鉄骨・鉄筋の周囲へのコンクリートの打設作業を少なくすることが可能であり、これによりコンクリートの品質を向上させることができる。
また、斜梁は、鉄骨鉄筋コンクリートのプレキャスト材として製作された複数の斜梁部材を長さ方向に接合して製作されているため、現場での複雑な配筋作業を低減することができる。したがって、施工が容易となるとともに、配筋精度を向上させることができる。
また、一本の斜梁を柱梁架構上に接合するに当たり、複数の部材を各々揚重して柱梁架構上で接合して斜梁を形成するのではなく、製作済みの斜梁を揚重して柱梁架構上に接合するため、部材の揚重回数が一回で済み、これにより工期を短縮することが可能となる。
【0011】
本発明の一態様においては、前記柱は、該柱に接合される最上段の前記水平梁から上方に突出する柱仕口部を備え、前記水平梁は、該水平梁に接合される前記柱から、前記斜梁の接合される水平方向に突出する梁仕口部を備え、観客席を有する建築構造物の施工方法は、前記斜梁を製作する際に、前記斜梁の接合時に前記柱及び前記水平梁の延在する方向に突出する接続部材を接合すること、前記斜梁を接合する際に、前記接続部材を、前記柱仕口部及び前記梁仕口部に接合すること、を含む。
斜梁を、柱や水平梁に直接接合する場合においては、柱や水平梁と斜梁の成す角度が垂直ではないため取り合いが複雑となり、作業が容易ではない。しかし、上記のような構成によれば、斜梁は接続部材を備えており、接続部材を柱仕口部及び梁仕口部に接合することで、斜梁が柱梁架構に接合されている。接続部材は、斜梁の接合時に柱及び水平梁の延在する方向に突出しており、柱仕口部は上方に、梁仕口部は水平方向に、それぞれ突出しているため、接続部材と、柱仕口部及び梁仕口部の接合は、互いに向かい合うように位置する端面同士を接合することで行われる。したがって、施工を容易に行うことが可能となる。
また、柱仕口部と斜梁の接続部材の接合位置が、足場から例えば1m程度の作業が容易となるような高さに位置するように、柱仕口部と斜梁の接続部材の各々の長さを任意に決定することが可能であり、このような場合においては、施工を更に容易に行うことが可能となる。
【0012】
本発明の一態様においては、前記斜梁の製作は、前記斜梁部材間で、前記斜梁部材のコンクリート部の端部から突出した鉄骨及び主筋同士を接合すること、及び、前記鉄骨及び前記主筋の接合部にコンクリートを打設すること、を含む。
このような構成によれば、斜梁の製作は、斜梁部材間で、斜梁部材のコンクリート部の端部から突出した鉄骨及び主筋同士を接合し、鉄骨及び主筋の接合部にコンクリートを打設することを含み、これらの斜梁の製作作業は斜梁を柱梁架構上へ設置する前に行われるため、柱梁架構上への斜梁の接合後に、斜梁に対してコンクリートの打設を行うことが不要である。したがって、施工が容易となる。
【0013】
本発明の一態様においては、前記斜梁の製作は、前記斜梁部材間で、前記斜梁部材のコンクリート部の端部から突出した鉄骨及び主筋同士を接合することを含み、前記斜梁の接合後に、前記鉄骨及び前記主筋の接合部にコンクリートを打設すること、を含む。
このような構成によれば、斜梁部材間の、鉄骨及び前記主筋の接合部へのコンクリートの打設は、斜梁の柱梁架構上への接合後であるため、斜梁の柱梁架構上への揚重時においては、斜梁の重量を低減することが可能となる。したがって、揚重性能の高くない揚重機を使用できる可能性が高まり、これにより施工費を低減することが可能となる。
また、斜梁部材間の、鉄骨及び主筋の接合部へのコンクリートの打設は、斜梁の柱梁架構上への接合後であるが、斜柱の大部分はプレキャスト材として形成されており、柱梁架構への接合時にはコンクリートが打設されているため、柱梁架構への接合後にコンクリートを打設すべき鉄骨及び主筋の接合部は、斜柱全体の内、非常に限定的な部分となっている。したがって、施工が容易である。
【0014】
また、本発明による観客席を有する建築構造物は、柱と水平梁を備えた柱梁架構と、水平面に対し斜め方向に延在して設けられ、前記柱梁架構により支持された斜梁と、該斜梁上に設けられた観客席と、を備え、前記斜梁は鉄骨鉄筋コンクリートのプレキャスト材として製作された複数の斜梁部材を長さ方向に接合することにより製作されている。
このような構成によれば、上記の施工方法が適用可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、施工が容易な、観客席を有する建築構造物及びその施工方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態として示した観客席を有する建築構造物の側面図である。
図2】本発明の実施形態として示した観客席を有する建築構造物において使用する、斜梁の平面図である。
図3】本発明の実施形態として示した観客席を有する建築構造物において使用する斜梁の、製作状況を示す断面図である。
図4】本発明の実施形態として示した観客席を有する建築構造物の施工手順を示す、施工中の建築構造物の側面図である。
図5】本発明の実施形態として示した観客席を有する建築構造物の施工手順を示す、施工中の建築構造物の側面図である。
図6】本発明の実施形態として示した観客席を有する建築構造物の施工方法の変形例における、施工中の建築構造物の側面図である。
図7】従来のすり鉢状構造物の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0018】
図1は、本発明の実施形態として示した観客席9を有する建築構造物1の側面図である。
【0019】
本実施形態、及び後述する本実施形態の変形例においては、建築構造物1が、グラウンド2を有するスタジアム1である場合を説明するが、建築構造物1はステージを有するホールや、スクリーンを備える映画館等、他の施設であっても構わない。以下、図1等に示される側面図において、グラウンド2側の方向を「前方」、その反対側を「後方」、前方と後方を結ぶ方向に水平面内で交差する方向を「横方向」と適宜称する。
【0020】
スタジアム1は、柱4と水平梁5を備えた柱梁架構3を備えている。柱4は、図示しない基礎上に立設されている。水平梁5は、隣接する柱4間に、水平方向Xに架設されている。本実施形態においては、柱4及び水平梁5は鉄骨製である。柱4の高さは、スタジアム1のグラウンド2に向かう方向、すなわち前方に進むに従い、低くなっている。
【0021】
柱4は、当該柱4に接合される最上段の水平梁5から上方に突出する柱仕口部4aを備えている。柱仕口部4aは、柱4が、最上段の水平梁5を跨いで延在するように設けられている。柱仕口部4aの長さは、柱仕口部4aの上端4bが、斜梁6接合時に作業者が使用する、図示しない足場の上面から、例えば1m程度の高さに位置するように決定されている。
【0022】
水平梁5は、当該水平梁5に接合される最も端の柱4から、斜梁6の接合される水平方向Xに突出する梁仕口部5aを備えている。梁仕口部5aは、水平梁5が、最も端の柱4を跨いで延在するように設けられている。梁仕口部5aの長さは、梁仕口部5aの先端5bが斜梁6に接触しない程度に、斜梁6にできるだけ近い位置に位置するように、決定されている。
【0023】
上記のような柱梁架構3に支持されるように、斜梁6が、水平面に対し斜め方向に延在して設けられている。図2、3を用いて、本実施形態における斜梁6を説明する。図2は、斜梁6の平面図であり、図3は、製作途中の斜梁6を示す断面図である。
【0024】
斜梁6は、SRCのプレキャスト材として製作された複数の斜梁部材10を長さ方向に接合して製作されている。斜梁部材10は、図3に示されるように、鉄骨20、主筋21、コンクリート部22、及び、肋筋23を備えている。
【0025】
本実施形態においては、斜梁部材10の幅方向における断面は矩形形状となっており、したがって、コンクリート部22は直方体形状をなしている。鉄骨20は、コンクリート部22内に埋設されており、鉄骨20の端部20aが、コンクリート部22の端部22aから、長さ方向に突出している。主筋21は、コンクリート部22の側面22bと鉄骨20の間に位置して、鉄骨20と同様にコンクリート部22に埋設されており、主筋21の端部21aが、コンクリート部22の端部22aから、長さ方向に突出している。鉄骨20及び主筋21を囲うように、肋筋23が配筋されて、コンクリート部22に埋設されている。
【0026】
図3に示されるように、長さ方向に隣接する斜梁部材10の、鉄骨20の端部20a同士がつき合わされている。鉄骨20の端部20aを跨ぐように、つき合わされた2本の鉄骨20の側面に鋼板25が設けられ、鋼板25と鉄骨20を高力ボルト26で固定することにより、2本の鉄骨が接合されている。
【0027】
また、鉄骨20と同様に、長さ方向に隣接する斜梁部材10の、主筋21の端部21a同士がつき合わされている。つき合わされた2本の主筋21の端部21a間には、機械式継手24が設けられており、各主筋21の端部21aが機械式継手24の互いに反対側に位置する2つの開口の各々に挿入されて、固定されている。
【0028】
これにより、斜梁部材10間で、斜梁部材10のコンクリート部22の端部22aから突出した鉄骨20及び主筋21同士が接合されている。
【0029】
上記のように接合された、鉄骨20及び主筋21の接合部には、コンクリート部22の端部22aからから突出した鉄骨20及び主筋21を囲うように、肋筋27が配筋されている。この接合部にはコンクリートが打設されて、図2に示されるような斜梁部材接合部11が形成されている。斜梁部材接合部11の表面は、隣接する斜梁部材10のコンクリート部22の側面22bと連続するように形成されている。
【0030】
斜梁6は、柱接続部材(接続部材)12、及び梁接続部材(接続部材)13を備えている。柱接続部材12は、後述するように斜梁6を柱梁架構3上に接合したときに、柱4の延在する方向に突出するように、斜梁6に設けられている。斜梁6上における柱接続部材12の接合位置や、柱接続部材12の長さは、斜梁6を柱梁架構3上に接合したときに、柱接続部材12の端部12aが、図1に示される柱仕口部4aの上端4bに突き合わされて、柱接続部材12と柱仕口部4aが一直線上に納まるように決定されている。
【0031】
梁接続部材13は、後述するように斜梁6を柱梁架構3上に接合したときに、水平梁5の延在する方向に突出するように、斜梁6に設けられている。斜梁6上における梁接続部材13の接合位置や、梁接続部材13の長さは、斜梁6を柱梁架構3上に接合したときに、梁接続部材13の端部13aが、図1に示される梁仕口部5aの先端5bに突き合わされて、梁接続部材13と梁仕口部5aが一直線上に納まるように決定されている。
【0032】
柱及び梁接続部材12、13は、上記した端部12a、13aとは反対側の端部が、斜梁部材10を形成するコンクリート部22を貫通して、図3に示される斜梁部材10の鉄骨20に接触するように位置せしめられており、この接触面において、鉄骨20に溶接されている。
【0033】
上記のように形成された斜梁6は、図1に示されるように、柱梁架構3上に接合されている。斜梁6の柱接続部材12は、その端部12aが、柱梁架構3の対応する柱4の柱仕口部4aにつき合わされて、溶接により接合されている。また、斜梁6の梁接続部材13は、その端部13aが、柱梁架構3の対応する水平梁5の梁仕口部5aにつき合わされて、溶接により接合されている。
【0034】
斜梁6上には観客席9が設けられている。より具体的には、斜梁6の上には、斜梁上コンクリート部7を介して、床面が後方に向けて階段状にせりあがるように、段床8が設けられており、段床8の上に観客席9が設けられている。
【0035】
次に、図1から図5を用いて、上記の観客席9を有する建築構造物1の施工方法を説明する。
【0036】
まず、図4に示されるように、図示しない基礎上に柱4を立設し、隣接する柱4間に水平梁5を架設することにより、柱梁架構3を構築する。このとき、各柱4に関して、当該柱4に接合される最上段の水平梁5から上方に突出する柱仕口部4aを形成するように、また、各水平梁5に関して、当該水平梁5に接合される最も端の柱4から、斜梁6の接合される水平方向Xに突出する梁仕口部5aを形成するように、柱梁架構3を構築する。
【0037】
次に、図2図3に示されるように、SRCのプレキャスト材として製作された複数の斜梁部材10を工場から現場に搬入し、これを基に、地組ヤードで斜梁部材10を長さ方向に接合して、斜梁6を製作する。これにはまず、斜梁部材10間で、斜梁部材10のコンクリート部22の端部22aから突出した鉄骨20及び主筋21同士を接合する。
【0038】
具体的には、長さ方向に隣接する斜梁部材10の、鉄骨20の端部20a同士をつき合わせ、鉄骨20の端部20aを跨ぐように、つき合わされた2本の鉄骨20の側面に鋼板25を設け、鋼板25と鉄骨20を高力ボルト26で固定することにより、2本の鉄骨20を接合する。また、長さ方向に隣接する斜梁部材10の、主筋21の端部21a同士をつき合わせ、つき合わされた2本の主筋21の端部21a間に機械式継手24を設け、各主筋21の端部21aを機械式継手24の互いに反対側に位置する2つの開口の各々に挿入して、固定する。鉄骨20及び主筋21を囲うように肋筋27を配筋する。
【0039】
鉄骨20及び主筋21の接合部に、地組ヤードでコンクリートを打設して、図2に示されるように斜梁部材接合部11を形成する。このコンクリートの打設においては、完成した斜梁6が揚重クレーンの揚重容量を超えないように注意する必要がある。
【0040】
斜梁部材10には、斜梁6の柱梁架構3上への接合時に柱4及び水平梁5の延在する方向に突出するように、柱及び梁接続部材12、13が設けられている。柱及び梁接続部材12、13は、工場での斜梁部材10の製作時において、コンクリート部22を形成するコンクリートの打設前に、端部を鉄骨20に溶接されることにより、接合されている。
【0041】
柱接続部材12は、斜梁6を柱梁架構3上に接合したときに、柱4の延在する方向に突出するように、鉄骨20に接合されている。斜梁6上における柱接続部材12の斜梁6の接合位置や、柱接続部材12の長さは、斜梁6を柱梁架構3上に接合したときに、柱接続部材12の端部12aが、図1に示される柱仕口部4aの上端4bに突き合わされて、柱接続部材12と柱仕口部4aが一直線上に納まるように決定されている。
【0042】
梁接続部材13は、斜梁6を柱梁架構3上に接合したときに、水平梁5の延在する方向に突出するように、鉄骨20に接合されている。斜梁6上における梁接続部材13の接合位置や、梁接続部材13の長さは、斜梁6を柱梁架構3上に接合したときに、梁接続部材13の端部13aが、図1に示される梁仕口部5aの先端5bに突き合わされて、梁接続部材13と梁仕口部5aが一直線上に納まるように決定されている。
【0043】
上記のように製作した斜梁6を揚重クレーンで揚重して、図5に示されるように、柱梁架構3上に位置せしめたうえで、柱梁架構3に接合する。このとき、柱及び梁接続部材12、13の各々を、柱仕口部4a及び梁仕口部5aに接合する。すなわち、斜梁6の柱接続部材12に関しては、その端部12aを、柱梁架構3の対応する柱4の柱仕口部4aにつき合わせて、溶接により接合する。また、斜梁6の梁接続部材13に関しては、その端部13aを、柱梁架構3の対応する水平梁5の梁仕口部5aにつき合わせて、溶接により接合する。
【0044】
最後に、図1に示されるように、斜梁6上に斜梁上コンクリート部7を介して段床8を設け、更に段床8の上に観客席を設ける。
【0045】
次に、上記の実施形態として示した、観客席9を有する建築構造物1及びその施工方法の作用、効果について説明する。
【0046】
上記したような観客席9を有する建築構造物1の施工方法においては、斜梁6を、SRCのプレキャスト材として製作された複数の斜梁部材10を長さ方向に接合して製作した後に、柱梁架構3上に接合するため、従来においては斜梁の製作において必要であった高所における型枠の設置作業を低減することが可能となり、これに伴い、型枠を支持する支保工の設置個所も低減することが可能となる。
【0047】
また、上記のような構成によれば、斜梁6は柱及び梁接続部材12、13を備えており、柱及び梁接続部材12、13を柱4及び水平梁5の柱仕口部4a及び梁仕口部5aに接合することで、斜梁6が柱梁架構3に接合されている。柱及び梁接続部材12、13は、斜梁6の接合時に柱4及び水平梁5の延在する方向に突出しており、柱仕口部4aは上方に、梁仕口部5aは水平方向に、それぞれ突出しているため、柱及び梁接続部材12、13の柱仕口部4a及び梁仕口部5aへの接合は、互いに向かい合うように位置する端面同士を接合することで行われる。
【0048】
また、斜梁6の製作は、斜梁部材10間で、斜梁部材10のコンクリート部22の端部22aから突出した鉄骨20及び主筋21同士を接合し、鉄骨20及び主筋21の接合部にコンクリートを打設することを含み、これらの斜梁6の製作作業は斜梁6を柱梁架構3上へ設置する前に地組ヤードで行われるため、柱梁架構3上への斜梁6の接合後に、斜梁6に対してコンクリートの打設を行うことが不要である。
【0049】
更に、柱仕口部4aと斜梁6の柱接続部材12の接合位置が、足場から例えば1m程度の、作業が容易となるような高さに位置するように、任意に決定することが可能である。
【0050】
以上の理由により、施工を容易に行うことが可能となる。
【0051】
上記のように、高所における施工が容易となり、また作業量が低減することで、作業員の安全性が高まる。
【0052】
また、斜梁6は、SRCのプレキャスト材として製作された複数の斜梁部材10を長さ方向に接合して製作されているため、現場での複雑な配筋作業を低減することができる。したがって、施工が容易となるとともに、配筋精度を向上させることができる。
【0053】
また、斜梁6は、SRCのプレキャスト材として製作された複数の斜梁部材10を長さ方向に接合して製作されているため、斜めに設置された鉄骨・鉄筋の周囲へのコンクリートの打設作業を少なくすることが可能であり、これによりコンクリートの品質を向上させることができる。
【0054】
また、一本の斜梁6を柱梁架構3上に接合するに当たり、複数の部材を各々揚重して柱梁架構3上で接合して斜梁6を形成するのではなく、製作済みの斜梁6を揚重して柱梁架構3上に接合するため、部材の揚重回数が一回で済み、これにより工期を短縮することが可能となる。
【0055】
また、斜梁6はSRCのプレキャスト材として製作された複数の斜梁部材10を長さ方向に接合して製作されているため、斜梁部材10同士の接合を現場で行う場合においては、プレキャスト材の工場から現場までの運搬が容易となる。
【0056】
(実施形態の変形例)
次に、図6を用いて、本発明の実施形態として示した観客席を有する建築構造物及びその施工方法の変形例を説明する。本変形例における観客席を有する建築構造物の施工方法は、上記実施形態における建築構造物の施工方法とは、斜柱6の鉄骨20及び主筋21の接合部へのコンクリートの打設は、斜柱6の柱梁架構3への接合前に地組ヤードで行うのではなく、斜柱6の柱梁架構3への接合後に行われる点が異なっている。
【0057】
本変形例において施工される建築構造物30は、上記実施形態において説明した建築構造物1と同じであるが、以下に記載するように、施工方法が異なっている。
【0058】
まず、上記実施形態と同様に、図4に示されるように、図示しない基礎上に柱4を立設し、隣接する柱4間に水平梁5を架設することにより、柱梁架構3を構築する。柱仕口部4a及び梁仕口部5aも、上記実施形態と同様に形成する。
【0059】
次に、上記実施形態と同様に、図3に示されるように、SRCのプレキャスト材として製作された複数の斜梁部材10を工場から現場に搬入し、これを基に、地組ヤードで斜梁部材10を長さ方向に接合する。この接合においても、上記実施形態と同様に、鉄骨20、主筋21同士を接合し、肋筋27を配筋する。柱及び梁接続部材12、13は、工場での斜梁部材10の製作時に、鉄骨20に予め溶接されている。
【0060】
その後、上記実施形態においては、鉄骨20及び主筋21の接合部に、地組ヤードでコンクリートを打設して、図2に示されるように斜梁部材接合部11を形成したが、本変形例においてはこれに代えて、鉄骨20、主筋21同士が接合され、肋筋27が配筋された状態の斜梁6を、揚重クレーンで揚重して、図6に示されるように、柱梁架構3上に接合する。このとき、柱及び梁接続部材12、13を、柱仕口部4a及び梁仕口部5aの各々に接合する。すなわち、斜梁6の柱接続部材12に関しては、その端部12aを、柱梁架構3の対応する柱4の柱仕口部4aにつき合わせて、溶接により接合する。また、斜梁6の梁接続部材13に関しては、その端部13aを、柱梁架構3の対応する水平梁5の梁仕口部5aにつき合わせて、溶接により接合する。
【0061】
そして、鉄骨20及び主筋21の接合部を型枠で囲い、コンクリートを打設して、図5に示されるように斜梁部材接合部11を形成する。
【0062】
最後に、上記実施形態と同様に、図1に示されるように、斜梁6上に斜梁上コンクリート部7を介して段床8を設け、更に段床8の上に観客席を設ける。
【0063】
上記のような施工方法によれば、斜梁部材10間の、鉄骨20及び主筋21の接合部へのコンクリートの打設は、斜梁6の柱梁架構3上への接合後であるため、斜梁6の柱梁架構3上への揚重時においては、斜梁6の重量を低減することが可能となる。したがって、揚重性能の高くない揚重機を使用できる可能性が高まり、これにより施工費を低減することが可能となる。
【0064】
本変形例が、上記実施形態と同様の効果を奏することはいうまでもない。
なお、斜梁部材10間の、鉄骨20及び主筋21の接合部へのコンクリートの打設は、斜梁6の柱梁架構3上への接合後であるが、斜柱6の大部分はプレキャスト材として形成されており、柱梁架構3への接合時にはコンクリートが打設されているため、柱梁架構3への接合後にコンクリートを打設すべき鉄骨20及び主筋21の接合部は、斜柱6全体の内、非常に限定的な部分となっている。したがって、施工が容易であるという、上記実施形態が奏する効果は大きく損なわれない。
【0065】
なお、本発明の観客席を有する建築構造物及びその施工方法は、図面を参照して説明した上述の実施形態及び変形例に限定されるものではなく、その技術的範囲において他の様々な変形例が考えられる。
【0066】
例えば、上記実施形態においては、斜梁6を柱梁架構3上に接合する前に、地組ヤードで鉄骨20及び主筋21の接合部にコンクリートを打設して斜梁部材接合部11を形成した。また、上記変形例においては、斜梁6を柱梁架構3上に接合した後に、鉄骨20及び主筋21の接合部を型枠で囲い、コンクリートを打設して、斜梁部材接合部11を形成した。
しかし、これらに限られず、例えば、斜梁6を柱梁架構3上に接合する前に、地組ヤードで一部の接合部にコンクリートを打設して斜梁部材接合部11を形成し、一部の斜梁部材接合部11が形成された斜梁6を柱梁架構3上に接合した後に、残りの接合部を型枠で囲い、コンクリートを打設して、残りの斜梁部材接合部11を形成してもよい。これにより、例えば柱梁架構3上に接合した後のコンクリート打設作業が困難な接合部のみに対して、地組ヤードでコンクリートを打設して斜梁部材接合部11を形成することが可能となり、施工の容易性と、使用する揚重機の性能を落とすことによる施工費の低減の良好なバランスを得ることが可能となる。
【0067】
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態及び変形例で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0068】
1、30 建築構造物(スタジアム)
2 グラウンド
3 柱梁架構
4 柱
4a 柱仕口部
5 水平梁
5a 梁仕口部
6 斜梁
7 斜梁上コンクリート部
8 段床
9 観客席
10 斜梁部材
11 斜梁部材接合部
12 柱接続部材(接続部材)
13 梁接続部材(接続部材)
20 鉄骨
21 主筋
22 コンクリート部
22a 端部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7