【課題】到達位置に十分な回収スペース又は揚重機の搬入及び設置スペースが確保できないとき、或いは分岐シールド機の上方に回収作業の邪魔となる既設構造物があるときであっても分岐シールド機を回収できる地下回収型上向きシールドクライムダウン工法を提供する。
【解決手段】分岐シールド機1を、カッタ5及びその駆動部6を一体に設けた内殻7と、内殻7を収容する外殻8とを備えて構成し、分岐シールド機1が目的の到達部へ到達した後、内殻7を外殻8から取り外し、内殻7を構築した立坑4から反力を取りながら立坑4に沿って降下させて主トンネル坑2内に回収するものである。
主トンネル坑内より分岐シールド機を上向きに発進させながら立坑を構築し、しかる後、前記分岐シールド機を再使用すべく回収するための地下回収型上向きシールドクライムダウン工法であって、
前記分岐シールド機を、カッタ及びその駆動部を一体に設けた内殻と、その内殻を収容する外殻とを備えて構成し、
前記分岐シールド機が目的の到達部へ到達した後、内殻を外殻から取り外し、その内殻を構築した立坑から反力を取りながら立坑に沿って降下させて前記主トンネル坑内に回収することを特徴とする地下回収型上向きシールドクライムダウン工法。
前記トンネル壁はセグメントを組立てて形成され、前記盛り替え装置は、前記セグメントからの反力で前記分岐シールド機の自重を受けるための反力ジャッキを有する請求項2に記載の地下回収型上向きシールドクライムダウン工法。
前記カッタは、外径が前記内殻の外径と同じかそれ以下に形成されたカッタ中央部と、前記カッタ中央部に脱着可能に設けられ外径が前記外殻の外径と同じかそれ以上に形成されたカッタ外延部とを備え、前記分岐シールド機で掘進するときは前記カッタ中央部と前記カッタ外延部とで地山を掘削し、前記立坑を構築後は、前記カッタ中央部から前記カッタ外延部を取り外し、そのカッタ外延部と前記内殻とを、構築した立坑を通して主トンネル坑内に回収する請求項1から3のいずれかに記載の地下回収型上向きシールドクライムダウン工法。
前記外殻の下端には、テールフレームが取り外し可能に設けられ、前記外殻には、分岐シールド機を推進させるシールドジャッキが前記テールフレーム内に延出して設けられた請求項1から4のいずれかに記載の地下回収型上向きシールドクライムダウン工法。
前記外殻には、分岐シールド機を推進させるシールドジャッキが取り外し可能に設けられると共に取り外した前記シールドジャッキを径方向内方にガイドするガイド装置が設けられ、前記内殻には、前記ガイド装置にガイドされて径方向内方に移動された前記シールドジャッキが移設されるジャッキホルダが設けられた請求項1から5のいずれかに記載の地下回収型上向きシールドクライムダウン工法。
前記内殻を前記主トンネル坑内に回収する際、前記立坑直下の前記主トンネル坑内に、複数の仮セグメントを組み立てて仮設台を仮設し、前記内殻が前記仮設台に至ったとき、前記ジャッキホルダに移設されたシールドジャッキを前記仮設台上に載せ、前記仮設台を上側から順次解体しつつ解体後の前記仮設台上に前記シールドジャッキを盛り替えて前記内殻を降下させる請求項6に記載の地下回収型上向きシールドクライムダウン工法。
前記外殻と前記内殻には、これら外殻及び内殻を結合するためのピンが脱着可能に設けられ、前記外殻から前記内殻を取り外すとき、前記外殻及び前記内殻から前記ピンを抜いて前記外殻と前記内殻との結合を解除する請求項1から7のいずれかに記載の地下回収型上向きシールドクライムダウン工法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好適な実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
【0013】
まず、本発明に係る地下回収型上向きシールドクライムダウン工法で用いる分岐シールド機について説明する。
【0014】
図1(a)及び
図5に示すように、分岐シールド機1は、主トンネル坑2内から上向きに発進されて立坑4を構築する上向きシールドからなる。分岐シールド機1は、上端に位置され地山を掘削するためのカッタ5と、カッタ5を駆動する駆動部6と、カッタ5及び駆動部6を一体に設けた内殻7と、内殻7を収容すると共に周方向に分割可能(例えば、2つ割りに分割可能)に形成された外殻8とを備える。
【0015】
図1(a)及び
図1(b)に示すように、カッタ5は、後述する内殻7前方の地山を掘削すべく外径が内殻7の外径と同じに形成されたカッタ中央部9と、カッタ中央部9に脱着可能に設けられ後述する外殻8前方の地山を掘削すべく外径が外殻8の外径と同じに形成されたカッタ外延部10とを備える。カッタ中央部9は、回転軸となるセンターシャフト11と、センターシャフト11に径方向外方に延びて設けられた複数のカッタスポーク12とを備える。カッタスポーク12は、径方向の長さが後述する内殻7を超えないように形成されている。センターシャフト11及びカッタスポーク12にはそれぞれ地山を掘削するためのカッタビット13が複数設けられている。また、カッタスポーク12の先端には、凹部14が形成されており、後述するカッタ外延部10と嵌合するようになっている。カッタ外延部10は、カッタスポーク12の先端にカッタスポーク12を径方向外方に延長するように取り付けられる。具体的には、カッタ外延部10には、カッタスポーク12の凹部14と嵌合する凸部15が形成されている。また、カッタスポーク12の先端部とカッタ外延部10の凸部15とには、ピン孔16が形成されており、これらピン孔16にピン17が挿入されることでカッタスポーク12とカッタ外延部10とが一体に結合されるようになっている。なお、カッタ中央部9は、外径が内殻7の外径以下に形成されていてもよく、カッタ外延部10は、外径が外殻8の外径以上に形成されていてもよい。
【0016】
図1(a)及び
図1(c)に示すように、駆動部6は、センターシャフト11に同軸に設けられたギア18と、ギア18を回転駆動する複数台(具体的には5台)の油圧モータ19とを備える。油圧モータ19は、駆動部6の重心がセンターシャフト11近傍になるように周方向に分散して配置されている。また、センターシャフト11には、ロータリジョイント20が設けられており、ロータリジョイント20を介して加泥材等が供給されるようになっている。
【0017】
図1(a)及び
図2(a)に示すように、内殻7は、隔壁(バルクヘッド)7aを有する筒体状に形成されると共に、分岐シールド機1で構築する立坑4より小径に形成されている。内殻7の隔壁7aは、カッタ5後方に形成されるチャンバ21とシールド機内1aとを隔てる隔壁の一部として機能し、内殻7の上端を水密に塞ぐ。内殻7の隔壁7aには、カッタ5のセンターシャフト11が回転自在に設けられると共に、油圧モータ19が支持フレーム6aを介して設けられる。また、内殻7の隔壁7aには、排土装置22の排土管23がチャンバ21側に開口して設けられる。排土管23は、複数の短管23aを取り外し可能に継ぎ足して形成されている。また、排土管23には、ピンチバルブ24が設けられると共に、一対の排土ゲート25がピンチバルブ24の入口と出口とに位置して設けられている。
【0018】
またさらに、内殻7には、作業用吊りフレーム26と作業用足場27とが設けられる。作業用吊りフレーム26は、内殻7から下方に延びて形成されており、下端には、ホイストクレーン(図示せず)を走行可能に支持するレール29が環状に設けられている。レール29に支持されたホイストクレーンは主トンネル坑2からセグメント30や、後述する盛替え装置60の部品等を吊り上げるとき使用される。本実施の形態では、セグメント30は、RC(鉄筋コンクリート)セグメントからなる。
【0019】
作業用足場27は、内殻7に下方に延びて設けられた複数の上部柱部61と、複数の上部柱部61に吊持され後述する盛替え装置60の基礎として機能する上部基礎フレーム62と、上部基礎フレーム62に下方に延びて設けられた複数の回収用ジャッキ63と、回収用ジャッキ63の伸縮端側(下端側)に設けられた上部デッキ部65と、回収用ジャッキ63の伸縮端に掛け渡して設けられ後述する盛替え装置60の基礎として機能する下部基礎フレーム66と、下部基礎フレーム66に下方に延びて設けられた複数の下部柱部67と、複数の下部柱部67に吊持される下部デッキ部68とを備える。
【0020】
図1(a)及び(d)に示すように、上部基礎フレーム62及び下部基礎フレーム66は、排土装置22を囲む矩形枠状に形成されており、上下に対向して配置されている。また、上部基礎フレーム62と下部基礎フレーム66との間には、上部基礎フレーム62に対する下部基礎フレーム66の移動を上下方向のみに規制するための昇降ガイド64が複数設けられている。昇降ガイド64は、上下に延びる二重筒からなり、一方の筒が上部基礎フレーム62に固定されると共に他方の筒が下部基礎フレーム66に固定される。昇降ガイド64は、内殻7の中心軸の周囲に周方向に略等間隔となるように配置されている。回収用ジャッキ63は、隣接する昇降ガイド64間に配置されると共に、内殻7の中心軸の周囲に周方向に略等間隔となるように配置されている。
【0021】
上部デッキ部65は、セグメント30を組み立てるとき、或いは回収用ジャッキ63の基端側(上端側)に盛替え装置60を構築するときに用いられる。下部デッキ部68は、組み立てたセグメント30と地山との間に裏込め材(図示せず)を注入するとき、或いは回収用ジャッキ63の伸縮端側に盛替え装置60を構築するときに用いられる。
【0022】
盛替え装置60は、構築した立坑4のトンネル壁4aから反力を取るときトンネル壁4aに係合するものであり、上部基礎フレーム62及び下部基礎フレーム66に伸縮自在な反力ジャッキ69を複数放射状に設けることで回収用ジャッキ63の基端側と伸縮端側に構築される。反力ジャッキ69は、内殻7の半径方向に伸縮してトンネル壁4aに係脱される。また特に、伸縮端側の盛替え装置60の反力ジャッキ69の取付位置は、分岐シールド機1が目的の地下構造物3に到達したとき、立坑4のセグメント30のグラウトホール(図示せず)と同軸上となるように予め設定されている。また、基端側の盛替え装置60の反力ジャッキ69の取付位置は、回収用ジャッキ63が伸長又は縮退されたとき、立坑4のセグメント30のグラウトホールと同軸上となるように予め設定されている。
【0023】
図1(a)及び
図2(a)、(b)に示すように、外殻8は、筒状に形成され内殻7の外周を覆う内壁部34と、内壁部34より外周側に配置され立坑4のサイズに応じた径の筒状に形成された外壁部35と、内壁部34及び外壁部35の上端間を塞ぐ環状蓋部36とを備える。内壁部34は、内殻7と同じ長さに形成されている。外壁部35は、内壁部34より長く形成されている。内壁部34より下方に延びる外壁部35には、分岐シールド機1を推進させるシールドジャッキ37が取り外し可能に、かつ、外壁部35の周方向に沿って複数設けられ、外壁部35の下端には、セグメント30の組み立て空間を形成するテールフレーム38が取り外し可能に設けられている。シールドジャッキ37は、シリンダロッド37aが下側、シリンダ部37bが上側となる姿勢で外殻8に取り付けられている。シールドジャッキ37は下部がテールフレーム38内に延出されており、テールフレーム38内で組み立てられたセグメント30から反力を取ることで推進力を得るようになっている。
【0024】
また、
図3及び
図4(a)、(b)に示すように、外殻8には、取り外したシールドジャッキ37を径方向内方にガイドするガイド装置39が設けられており、分岐シールド機回収時に内殻7に設けられるジャッキホルダ40にシールドジャッキ37を容易に移動できるようになっている。ガイド装置39は、シールドジャッキ37の上部をガイドする上部ガイド41と、シールドジャッキ37の下部をガイドする下部ガイド42とを備える。下部ガイド42は、シールドジャッキ37を支持すべく内殻7から径方向内方に延びて形成されシールドジャッキ37を径方向内方にガイドするガイド溝43を有する支持ブラケット44と、シールドジャッキ37のシリンダ34b下部に設けられ支持ブラケット44上に載置されると共に支持ブラケット44にボルト・ナットで着脱可能に締結される締結プレート45とを備える。上部ガイド41は、外殻8から径方向内方に平行に延びる一対のガイド板41aからなり、ガイド板41a間にシールドジャッキ37の上部を位置させることでシールドジャッキ37の上部を外殻8の径方向内方にガイドするようになっている。
【0025】
ジャッキホルダ40は、ガイド溝43に沿って内殻7の半径方向内方に移動されたシールドジャッキ37を受けると共に固定する。具体的には、ジャッキホルダ40は、板状に形成されシールドジャッキ37を受ける受け溝40aを有する。ジャッキホルダ40は、受け溝40a内に受け入れたシールドジャッキ37の締結プレート45と締結されることでシールドジャッキ37を固定する。
【0026】
図1(a)及び
図2(a)、(c)に示すように、テールフレーム38は、外殻8の外壁部35と同径の筒状に形成されている。テールフレーム38の上端には、径方向内方に延びると共にシールドジャッキ37との干渉を回避するための回避溝46が形成されたテール側取付フランジ47が設けられている。テール側取付フランジ47は、外殻8に径方向内方に延びて設けられた外殻側取付フランジ48とボルト・ナットで取り外し可能に締結される。また、テールフレーム38は周方向に分割可能に形成されており、主トンネル坑2から発進中の分岐シールド機1に取り付けられるようになっている。
【0027】
図1(a)及び
図2(a)に示すように、内殻7と外殻8は、ピン49を介して一体に結合されるようになっている。具体的には、内殻7と外殻8には、径方向にピン49を挿入するためのピン受け部材50、51が設けられており、これらピン受け部材50、51のピン孔50a、51aに同一のピン49を挿入するようになっている。ピン49及びピン孔50a、51aは、内殻7側が外殻8側より小径に形成されており、外殻8の外周側からピン孔50a、51a内にピン49を挿抜できるようになっている。なお、ピン49及びピン孔50a、51aは、外殻8側が内殻7側より小径に形成され、内殻7の内周側からピン孔50a、51a内にピン49を挿抜するものとしてもよい。
【0028】
また、外殻8と内殻7との間には、止水用のシール52が設けられている。
【0029】
次に、分岐シールド機1を用いた立坑4の構築方法について述べる。
【0030】
図5に示すように、主トンネル坑2から鉛直上方の既設地下構造物(図示せず)に向けて分岐シールド機1を発進させ、立坑4を構築する場合、予め主トンネル坑2の上壁のうち分岐シールド機1を発進させる位置の上壁をモルタル等から成る掘削可能壁(図示せず)で形成しておく。また、予め掘削可能壁の鉛直下方に、分岐シールド機1を発進させるための反力架台53を設置しておき、反力架台53上から分岐シールド機1を発進させる。このとき、反力架台53は、スケルトンセグメントからなる仮セグメント72と、ラッパセグメント53aとを組み立てて形成される。仮セグメント72を組み立てて形成される筒状体72aは、立坑4よりも小径である。ラッパセグメント53aは、径が異なる筒状体72aと立坑4とを接続するように上方に向けて拡径するラッパ状に形成されている。また、カッタ5は、カッタ中央部9にカッタ外延部10が取り付けられた状態としておき、テールフレーム38は分岐シールド機1から取り外され、かつ、周方向に分割された状態にしておく。反力架台53上の分岐シールド機1は、反力架台53から反力を取りながら掘削可能壁を掘削して上方に掘進する。シールドジャッキ37が1セグメント分伸長したら周方向に複数配置されたシールドジャッキ37のうちの一部を一時的に縮退させつつそのシールドジャッキ37の位置の反力架台53上にセグメント30を組み立て、順次セグメント30を組み立てながら分岐シールド機1を鉛直上方に掘進させる。そして、分岐シールド機1が予め取り外しておいたテールフレーム38よりも長い距離掘進したら、分岐シールド機1の外殻8にテールフレーム38を取り付け、分岐シールド機1をさらに掘進させる。
【0031】
分岐シールド機1が十分掘進されたら、反力架台53を撤去する。これにより、立坑4直下の作業エリアを拡げることができ、セグメント供給をより効率よく容易に行うことができる。
【0032】
図6(a)に示すように、分岐シールド機1が既設の地下構造物3内に到達したら、分岐シールド機1の回収作業と、分岐シールド機1の受け入れ準備作業とを開始する。このとき、分岐シールド機1の到達位置は、テールフレーム38が地下構造物3外にはみ出す位置に設定されている。
図8(a)に示すように、受け入れ準備作業では、主トンネル坑2内に内殻7を載置するための回収台70を設置し、回収台70上に受架台70aを設置する。
【0033】
図6(b)に示すように、分岐シールド機1の回収作業は、まず、構築した立坑4のセグメント30に分岐シールド機1のテールフレーム38を固定し、
図6(b)及び
図3に示すように、作業用吊りフレーム26にジャッキホルダ40を取り付け、外殻8に設けられたシールドジャッキ37をジャッキホルダ40に移設する。
【0034】
図3及び
図4に示すように、シールドジャッキ37は、下部ガイド42の締結プレート45が支持ブラケット44上をスライドすることで上下方向の位置をガイドされると共に、水平方向の位置をガイド溝43及びガイド板41aでガイドされる。このため、人手でも容易にシールドジャッキ37の移設作業を行うことができる。ジャッキホルダ40に移設されたシールドジャッキ37は、内殻7の外周部に環状に配置される。
【0035】
この後、
図6(b)に示すように、排土管23を順次分解しつつ分解した排土管23をセグメント搬入用のホイストクレーン等で主トンネル坑2内に回収する。
【0036】
また、
図6(b)及び
図1(d)に示すように、上部基礎フレーム62及び下部基礎フレーム66に複数の反力ジャッキ69を放射状に設けることで回収用ジャッキ63の基端側と伸縮端側に盛替え装置60を構築し、
図6(c)に示すように、伸縮端側の盛替え装置60の反力ジャッキ69を伸長させる。これにより、反力ジャッキ69が立坑4のセグメント30のグラウトホールに挿入され、伸縮端側の盛替え装置60が立坑4に係止される。
【0037】
しかる後、カッタ中央部9からカッタ外延部10を取り外すと共に、外殻8及び内殻7からピン49を抜き取る。これにより、カッタ5は立坑4内を通過可能なサイズとなり、内殻7は外殻8に対して昇降可能となる。
【0038】
この後、
図7(a)、(b)、(c)、(d)に示すように、回収用ジャッキ63を伸縮させつつ立坑4に係止される盛替え装置60を交互に切り換えて内殻7を降下させる。具体的には、
図7(a)に示すように、回収用ジャッキ63を縮退させて外殻8内で内殻7を降下させ、
図7(b)に示すように、基端側の盛替え装置60の反力ジャッキ69を伸長させたのち伸縮端側の盛替え装置60の反力ジャッキ69を縮退させる。これにより、立坑4に係止される盛替え装置60が伸縮端側から基端側に切り替わる。この後、
図7(c)に示すように、回収用ジャッキ63を伸長させて伸縮端側の盛替え装置60を降下させ、
図7(d)に示すように、伸縮端側の盛替え装置60の反力ジャッキ69を伸長させたのち基端側の盛替え装置60の反力ジャッキ69を縮退させる。これにより、立坑4に係止される盛替え装置60が基端側から伸縮端側に切り替わり、盛替え装置60及び回収用ジャッキ63が
図7(a)の状態に戻る。以降、
図7(a)、(b)、(c)、(d)に示す動作を繰り返すことで内殻7は降下する。
【0039】
図8(a)に示すように、上部基礎フレーム62が降下可能な限界の高さ、すなわち、回収用ジャッキ63を伸長させると下部基礎フレーム66に設けられた反力ジャッキ69が立坑4より下方となって立坑4から反力を取れない状態となる高さまで降下したら、上部デッキ部65及び下部デッキ部68の外周部を解体して回収すると共に、伸縮端側の盛替え装置60を解体して回収する。この後、
図8(b)に示すように、下部デッキ部68、上部デッキ部65、回収用ジャッキ63及び昇降ガイド64を解体して回収する。
【0040】
この後、
図9(a)に示すように、受架台70a上に仮セグメント72を組み立ててシールドジャッキ37を載せるための仮設台71を設置し、シールドジャッキ37を伸長させてシールドジャッキ37を仮設台71上に載せる。仮設台71は、筒状に形成され、主トンネル坑2及び立坑4内で自立する。仮セグメント72は、分岐シールド機1を発進させるとき主トンネル坑2内に設置した反力架台53のもの(
図5参照)を流用する。仮セグメント72は、仮設台71を周方向に分割すると共に軸方向に分割した形状に形成されている。
【0041】
この後、仮設台71を上側から順次解体しつつ解体後の仮設台71上にシールドジャッキ37を盛り替えて内殻7を降下させる。具体的には、仮設台71の最上段の仮セグメント72を予め決めた順番で順次解体するに際し、解体すべき仮セグメント上に載ったシールドジャッキ37を縮退させたのち、その仮セグメントを解体し、縮退させたシールドジャッキ37を伸長させて1段低くなった仮設台71上に盛り替えるという動作を仮設台71の全周に亘って繰り返す。この後、全シールドジャッキ37を縮退させることで内殻7を下降させることができる。
【0042】
図9(b)に示すように、内殻7が立坑4より下方の主トンネル坑2内まで下降したら、ピンチバルブ24の出口側の排土ゲート25を解体すると共に、ピンチバルブ24を解体する。この後、
図10(a)に示すように、別途用意されると共に予め周方向に分割された外殻8を仮設台71を中心として環状に組み立てる。
図10(b)に示すように、回収台70上にレール82を敷設すると共に、レール82上に一対の搬送台車83を走行させ、これら搬送台車83を仮設台71の両側に位置させる。しかる後、外殻8をチェーンブロック84で所定高さまで持ち上げ、外殻8に一対の搬送台車83を取り付ける。ここでいう所定高さとは、シールドジャッキ37が受架台70a上に直接載り、かつ、伸長された状態のときの内殻7の高さである。この後、再度仮設台71を解体しつつ解体後の仮設台71上又は受架台70a上にシールドジャッキ37を盛り替えて内殻7を降下させる。
図11(a)に示すように、シールドジャッキ37が受架台70a(
図10(b)参照)上に載り、内殻7が外殻8の高さまで降下したら内殻7と外殻8をピン49にて固定する。このようにして内殻7、外殻8及び搬送台車83が一体にされたら、カッタ中央部9にカッタ外延部10を取り付け、シールドジャッキ37を縮退させて受架台70a(
図10(b)参照)から浮上させ、受架台70aを撤去する。これにより、搬送台車83の走行が自由となる。
図11(b)に示すように、搬送台車83を次の立坑構築位置まで走行させ、その立坑構築位置で、回収した内殻7、外殻8、カッタ中央部9等を用いて分岐シールド機1を組み立て、発進させる。
【0043】
なお、地下構造物3から外殻8を回収する場合、
図6(c)に示すように、伸縮端側の盛替え装置60が立坑4に係止されたのち、外殻8を周方向に分解し、分解した外殻8をカッタ中央部9上や内殻7の隔壁7a上などに固定し、内殻7と一緒に回収台70上に回収するとよい。また、反力ジャッキ69は、セグメント30のグラウトホールに挿入され、グラウトホールから反力を取るものとしたが、これに限るものではない。反力ジャッキ69は、例えばセグメント30に予め設けられたボルト締結用のボルトボックス(図示せず)等から反力をとるものであってもよい。
【0044】
また、外殻8は土中に残置してもよい。この場合、分岐シールド機1は、カッタ5が解体可能な程度に地下構造物3内に到達すればよく、地下構造物3は、カッタ5が収容可能な高さがあればよい。地下構造物3の高さがカッタ5と外殻8とを収容可能な程度に高くない場合、外殻8を土中に残置することで地下構造物3の床を掘り下げる工事を省略又は軽減でき、施工コストを低減できる。
【0045】
このように、分岐シールド機1が目的の到達部たる地下構造物3へ到達した後、内殻7を外殻8から取り外し、内殻7を構築した立坑4から反力を取りながら立坑4に沿って降下させて主トンネル坑2内に回収するものとしたため、到達位置に十分な回収スペースが確保できないときや分岐シールド機1の前方に回収作業の邪魔となる既設構造物があるときであっても、分岐シールド機1を容易に回収することができる。そして、分岐シールド機1を揚重機等で吊り下げて回収するものではないため、揚重機等の搬入及び設置スペースを確保する必要がなく、分岐シールド機1を容易かつ確実に回収できる。
【0046】
また、分岐シールド機1の内殻7の中央下部には予め回収用ジャッキ63が設けられ、分岐シールド機1が地下構造物3へ到達した後、回収用ジャッキ63の基端側と伸縮端側に、半径方向に伸縮して立坑4のトンネル壁4aに係脱する上下の盛替え装置60を構築し、上下の盛替え装置60で立坑4から反力を取って内殻7を支持しつつ回収用ジャッキ63を伸ばして内殻7を降下させるものとしたため、分岐シールド機1で立坑4を構築する際には、上部デッキ部65及び下部デッキ部68上での作業が盛替え装置60等に邪魔されることはなく効率よく作業でき、分岐シールド機1を回収する際には、大型の回収用ジャッキ63を主トンネル坑2から吊り上げる必要がなく、分岐シールド機1を容易に効率よく回収できる。
【0047】
盛り替え装置60は、セグメント30からの反力で分岐シールド機1の自重を受けるための反力ジャッキ69を有するものとしたため、通常のセグメント30を組み立ててなるトンネル壁4aに容易に係脱できる。
【0048】
カッタ5は、外径が内殻7の外径と同じかそれ以下に形成されたカッタ中央部9と、カッタ中央部9に脱着可能に設けられ外径が外殻8の外径と同じかそれ以上に形成されたカッタ外延部10とを備え、分岐シールド機1で掘進するときはカッタ中央部9とカッタ外延部10とで地山を掘削し、立坑4を構築後は、カッタ中央部9からカッタ外延部10を取り外し、カッタ外延部10と内殻7とを、構築した立坑4を通して主トンネル坑2内に回収するものとしたため、カッタ5を簡易な構造で容易に小さくでき、立坑4を挿通可能なサイズにできる。
【0049】
外殻8の下端には、テールフレーム38が取り外し可能に設けられ、外殻8には、分岐シールド機1を推進させるシールドジャッキ37がテールフレーム38内に延出して設けられるものとしたため、主トンネル坑2から分岐シールド機1を発進させるべく主トンネル坑2内でセグメント30を組み立てるとき、セグメント30を露出させた状態で効率よく作業を行うことができる。
【0050】
外殻8には、シールドジャッキ37が取り外し可能に設けられると共に取り外したシールドジャッキ37を径方向内方にガイドするガイド装置39が設けられ、内殻7には、ガイド装置39にガイドされて径方向内方に移動されたシールドジャッキ37が移設されるジャッキホルダ40が設けられるものとしたため、シールドジャッキ37を内殻7と一緒に効率よく回収できると共に、分岐シールド機1を主トンネル坑2内に降ろすときには推進手段として利用でき、分岐シールド機1を再度組み立てる際には、内殻7の外周に外殻8を設け、ジャッキホルダ40から外殻8側にシールドジャッキ37をスライド移動させることでシールドジャッキ37を効率よく外殻8に移設できる。
【0051】
内殻7を主トンネル坑2内に回収する際、立坑4直下の主トンネル坑2内に、複数の仮セグメント72を組み立てて仮設台71を仮設し、内殻7が仮設台71に至ったとき、ジャッキホルダ40に移設されたシールドジャッキ37を仮設台71上に載せ、仮設台71を上側から順次解体しつつ解体後の仮設台71上にシールドジャッキ37を盛り替えて内殻7を降下させるものとしたため、内殻7から下方に延びる作業用足場27等を解体しながら内殻7を主トンネル坑2内の回収台70上に回収することができる。
【0052】
外殻8と内殻7には、外殻8及び内殻7を結合するためのピン49が脱着可能に設けられ、外殻8から内殻7を取り外すとき、ピン49を抜いて外殻8と内殻7との結合を解除するものとしたため、簡易な構造で確実に外殻8と内殻7を脱着できる。
【0053】
また、外殻8と内殻7との間には、止水用のシール52が設けられるものとしたため、内殻7、外殻8間からの浸水を簡易な構造で防止できる。
【0054】
なお、カッタ5は、回収時にカッタ中央部9からカッタ外延部10を取り外すものとしたが、これに限るものではない。例えば、カッタ中央部9に対してカッタ外延部10を掘進方向前方等に折り畳み可能に形成しておき、回収時にカッタ外延部10を折り畳むものとしてもよく、カッタスポーク12をテレスコピック状に伸縮可能に形成しておき、回収時に径方向に縮めるものとしてもよい。
【0055】
また、主トンネル坑2から鉛直上方に掘進した分岐シールド機1を回収する方法について説明したが、これに限るものではない。分岐シールド機は、斜め上方に掘進するものであっても回収できる。
【0056】
図12(a)、(b)に示すように、回収用ジャッキ63の基端側と伸縮端側に盛替え装置60を構築するとき、回収用ジャッキ63の基端側と伸縮端側にトンネル壁4aに沿って走行するガイドローラ80を設置するとよい。具体的には、上部基礎フレーム62及び下部基礎フレーム66の外周に鋼材を矩形枠状に組み付けて外周フレーム81を形成し、外周フレーム81の四隅にガイドローラ80を取り付けるとよい。また、この場合、外周フレーム81は、四隅が盛替え装置60の反力ジャッキ69からトンネル壁4aの周方向に離間されるように配置するとよい。
【0057】
このように、回収用ジャッキ63の基端側と伸縮端側に盛替え装置60を構築するとき、回収用ジャッキ63の基端側と伸縮端側にトンネル壁4aに沿って走行するガイドローラ80を設置することにより、立坑4内で降下する内殻7の姿勢を安定させることができると共に、作業用足場27等が立坑4のトンネル壁4aに当接するのを防ぐことができ、内殻7を傾斜した立坑4に沿って確実に回収できる。
【0058】
また、セグメント30はRCセグメントからなるものとしたが、鋼製セグメントからなるものであってもよい。鋼製セグメントは、外周面を形成するスキンプレート86を有すると共にスキンプレート86から内周側に突起する主桁87、縦リブ(図示せず)及び継手板(図示せず)等を有し、内周側が凸凹に形成されている。また、主桁87はスキンプレート86の上下両端から内周側に突起されている。このため、
図13(a)、(b)に示すように、回収用ジャッキ63の基端側と伸縮端側にトンネル壁4aに沿って滑る固定ソリ85を設置するとよい。固定ソリ85は、上下に延びるように配置されると共に、複数のセグメント30に跨がる長さに形成されるとよい。固定ソリ85は、複数のセグメント30に跨がる長さに形成されることで常に複数の主桁87に跨がることとなり、複数の主桁87に沿って滑ることができる。具体的には、固定ソリ85は、セグメント幅(セグメント30の上下寸法)の2倍以上の長さに形成されるとよい。
【0059】
また、鋼製セグメントの場合、盛替え装置60の反力ジャッキ69を例えば主桁87上に載せる等して主桁87に係合させて主桁87から反力を取るとよい。一般に鋼製セグメントは、グラウトホール(図示せず)より主桁87の方が強度が高い。また、補強が必要な場合、グラウトホールより主桁87の方が容易に補強できる。なお、反力ジャッキ69は、鋼製セグメントに設けられたリブ等から反力を取るものであってもよい。