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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-18(P2017-18A)
(43)【公開日】2017年1月5日
(54)【発明の名称】浮魚礁
(51)【国際特許分類】
   A01K 61/75 20170101AFI20161209BHJP
【FI】
   A01K61/00 317
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-114573(P2015-114573)
(22)【出願日】2015年6月5日
(11)【特許番号】特許第5784854号(P5784854)
(45)【特許公報発行日】2015年9月24日
(71)【出願人】
【識別番号】000192615
【氏名又は名称】神鋼建材工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100109058
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 敏郎
(72)【発明者】
【氏名】田島 武
(72)【発明者】
【氏名】阪上 正英
(72)【発明者】
【氏名】高山 博史
【テーマコード(参考)】
2B003
【Fターム(参考)】
2B003AA03
2B003BB08
2B003CC04
(57)【要約】
【課題】複数の係留索を有する構造において個々の係留索の切断を早期に発見することが可能な浮魚礁を提供する。
【解決手段】浮魚礁1は、海水に浮いて魚を蝟集する構成を有する魚礁本体2と、第1端部9が魚礁本体2に取り付けられた複数の主係留索3と、複数の主係留索3のそれぞれの第2端部10に取り付けられ、魚礁本体2を海中に浮いた状態で主係留索3を介して当該魚礁本体2を海底に係留する第1アンカー4と、海水に浮くことが可能で、かつ、海面に浮上したときに警報を発する構成を有する複数の係留索用警報部5と、を備えている。複数の係留索用警報部5は、複数の主係留索3のそれぞれにおける主係留索3が切れたときに海面に到達可能な位置に取り付けられている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
海水に浮いて魚を蝟集する構成を有する魚礁本体と、
第1端部と第2端部とを有する長尺の線状部材であり、前記第1端部が前記魚礁本体に取り付けられた複数の主係留索と、
前記複数の主係留索のそれぞれの前記第2端部に取り付けられ、前記魚礁本体を海中に浮いた状態で前記主係留索を介して当該魚礁本体を海底に係留する第1アンカーと、
前記海水に浮くことが可能で、かつ、海面に浮上したときに警報を発する構成を有する複数の係留索用警報部と、
を備えており、
前記複数の係留索用警報部は、前記複数の主係留索のそれぞれにおける前記主係留索が切れたときに海面に到達可能な位置に取り付けられている、
浮魚礁。
【請求項2】
前記複数の主係留索は、前記魚礁本体から側方に離れる方向に延びるように前記第1端部が前記魚礁本体に取り付けられた複数の横方向索を含む、
請求項1に記載の浮魚礁。
【請求項3】
前記係留索用警報部は、前記主係留索の延びる方向における当該係留索用警報部と前記第1アンカーとの距離が当該第1アンカーが設置された位置の水深以上になるような前記主係留索上の位置において、当該主係留索に取り付けられている、
請求項1または2に記載の浮魚礁。
【請求項4】
前記係留索用警報部は、前記主係留索の延びる方向における当該係留索用警報部と前記魚礁本体との距離が海面から当該魚礁本体までの距離以上になるような前記主係留索上の位置において、当該主係留索に取り付けられている、
請求項1から3のいずれかに記載の浮魚礁。
【請求項5】
前記主係留索に浮力を与える浮力付与部をさらに備えている
請求項1から4のいずれかに記載の浮魚礁。
【請求項6】
前記複数の係留索用警報部は、それぞれ固有の警報を発することが可能な構成を有する、
請求項1から5のいずれかに記載の浮魚礁。
【請求項7】
前記魚礁本体から下方に延びるように前記魚礁本体の下部に取り付けられた副係留索と、
前記副係留索の下端部に取り付けられ、前記副係留索を介して前記魚礁本体を当該海底に係留する第2アンカーと、
をさらに備えている、
請求項1から6のいずれかに記載の浮魚礁。
【請求項8】
前記海水に浮くことが可能で、かつ、海面に浮上したときに警報を発する構成を有し、前記魚礁本体に取り付けられた本体用警報部をさらに備えている、
請求項1から7のいずれかに記載の浮魚礁。
【請求項9】
前記本体用警報部は、前記魚礁本体に連結索を介して取り付けられている、
請求項8に記載の浮魚礁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚を蝟集する本体部を海中に浮かして使用される浮魚礁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、海洋に生息する魚類を蝟集や滞留させるために、魚礁を海中に沈めることが行われる。魚礁には、種々の形態が存在するが、魚を蝟集する本体部を海中に浮かして使用される、いわゆる中層浮魚礁と呼ばれる魚礁が存在する。
【0003】
この中層浮魚礁は、一般的には、特許文献1に記載されているように、海中に浮いて魚を蝟集する本体部と、海底に着地したアンカーと、当該本体部をアンカーに連結する1本の係留索とを有している。このような浮魚礁では、本体部は、当該本体部の下部に取り付けられた1本の係留索を介してアンカーに連結されることにより、海中の所定の位置および深さに位置決めされ、海中に浮いた状態で魚を蝟集することが可能である。
【0004】
上記のような中層浮魚礁は、本体部が一本の係留索で係留されているため、潮の流れなどによって、本体部が移動しやすく不安定である。そのため、本体部自体が係留索を中心に横方向(水平方向)に回転することにより、係留索に撚れやねじれ(キンク)が生じるおそれがある。その結果、係留索が早期に疲労するおそれがあり、中層浮魚礁を海中で長期安定した使用における信頼性の向上が難しい。
【0005】
そこで、本発明者は、近年、本体部を複数の係留索に係留して長期間安定した使用を可能にする浮魚礁を種々研究している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−14675号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、本体部を複数の係留索で係留した構造では、それぞれの係留索の係留状態を確認することが難しいという問題がある。すなわち、複数の係留索のうちの1本が切れただけでは、切れたことを確認しにくいという問題がある。例えば、本体部が1本の係留索のみで係留している場合には、警報器を本体部やその近傍の部位に取り付けておけば、1本の係留索が切れたときに、本体部が海面まで浮上して警報器が警報用の電波を発信することにより、本体の浮上時に係留索の切断を確認することが可能である。しかし、複数の係留索によって本体部を係留する構造の浮魚礁では、そのうちの1本の係留索が切れただけでは本体部が海面まで浮上しない場合があり、その場合、警報器が作動しないので、係留索の切断を確認できないという問題がある。したがって、係留索の切断についての発見が遅れ、浮魚礁を早期に補修できないという問題がある。
【0008】
本発明はかかる問題を解消するものであり、複数の係留索を有する構造において個々の係留索の切断を早期に発見することが可能な浮魚礁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、浮魚礁の本体が複数の係留索によって係留された構造において、当該複数の係留索の少なくとも1本が切れたときに当該切断に応じて警報装置が確実に警報を発することが可能な浮魚礁を開発するに至った。
【0010】
すなわち、本発明の浮魚礁は、海水に浮いて魚を蝟集する構成を有する魚礁本体と、第1端部と第2端部とを有する長尺の線状部材であり、前記第1端部が前記魚礁本体に取り付けられた複数の主係留索と、前記複数の主係留索のそれぞれの前記第2端部に取り付けられ、前記魚礁本体を海中に浮いた状態で前記主係留索を介して当該魚礁本体を海底に係留する第1アンカーと、前記海水に浮くことが可能で、かつ、海面に浮上したときに警報を発する構成を有する複数の係留索用警報部と、を備えており、前記複数の係留索用警報部は、前記複数の主係留索のそれぞれにおける前記主係留索が切れたときに海面に到達可能な位置に取り付けられていることを特徴とする。
【0011】
かかる構成によれば、複数の係留索用警報部が複数の主係留索のそれぞれにおける主係留索が切れたときに海面に到達可能な位置に取り付けられている。そのため、魚礁本体を係留する複数の主係留索のうちの1本が切れた場合には、切れた係留索に取り付けられた係留索用警報部が係留索との連結を維持した状態で浮上して海面に到達し、警報を発することが可能である。これにより、作業者は、浮魚礁が漂流する前に主係留索の切断を知ることが可能になり、早期に浮魚礁の補修を行うことが可能である。
【0012】
また、前記複数の主係留索は、前記魚礁本体から側方に離れる方向に延びるように前記第1端部が前記魚礁本体に取り付けられた複数の横方向索を含むであるのが好ましい。
【0013】
複数の主係留索を構成する複数の横方向索は、魚礁本体から側方に離れる方向に延びるように当該魚礁本体に取り付けられているので、横方向索同士が互いに離間して配置される。そのため、横方索同士がからまるおそれが低減する。また、横方向索は、魚礁本体から側方に延びているので、魚礁本体の周囲を漁網(例えば底引き網など)などの障害物が通過したときに当該障害物に引っ掛かって切れるおそれがあるが、上記の構成のように複数の横方向索のそれぞれに係留索用警報部が取り付けられることにより、複数の主係留索のうちの1本が切れた場合には、切れた係留索に取り付けられた係留索用警報部が浮上して海面に到達し、警報を確実に発することが可能である。よって、複数の横方向索を有する浮魚礁の早期の補修が可能になる。
【0014】
さらに、前記係留索用警報部は、前記主係留索の延びる方向における当該係留索用警報部と前記第1アンカーとの距離が当該第1アンカーが設置された位置の水深以上になるような前記主係留索上の位置において、当該主係留索に取り付けられている、のが好ましい。
【0015】
かかる構成によれば、主係留索は、係留索用警報部と第1アンカーとの間において水深以上の長さが確保されているので、主係留索が係留索用警報部と魚礁本体との間で切れたときに、係留索用警報部は主係留索に取り付けられた状態で浮上して海面に到達し、警報を確実に発することが可能である。このとき、係留索用警報部は、主係留索を介して第1アンカーに係留されているので、漂流するおそれがないので、その第1アンカー付近の位置を維持しながら海面に浮かんで警報を発することが可能である。
【0016】
また、前記係留索用警報部は、前記主係留索の延びる方向における当該係留索用警報部と前記魚礁本体との距離が海面から当該魚礁本体までの距離以上になるような前記主係留索上の位置において、当該主係留索に取り付けられている、のが好ましい。
【0017】
かかる構成によれば、主係留索は、係留索用警報部と魚礁本体との間において海面から当該魚礁本体までの距離以上の長さが確保されているので、主係留索が係留索用警報部と第1アンカーとの間で切れたときに、係留索用警報部は主係留索に取り付けられた状態で浮上して海面に到達し、警報を確実に発することが可能である。このとき、係留索用警報部は、主係留索を介して魚礁本体に係留されているので魚礁本体から離れて漂流するおそれがなく、魚礁本体の近くの位置で海面に浮かんで警報を発することが可能である。
【0018】
さらに、前記主係留索に浮力を与える浮力付与部をさらに備えているのが好ましい。
【0019】
かかる構成によれば、係留索用警報部の浮力だけでは主係留索の重量によって係留索用警報部が浮上しにくい場合でも、浮力付与部から主係留索へ付与される浮力によって主係留索の重みを軽減することが可能であり、係留索用警報部が主係留索につながった状態で確実に浮上することが可能である。
【0020】
また、前記複数の係留索用警報部は、それぞれ固有の警報を発することが可能な構成を有するのが好ましい。
【0021】
かかる構成によれば、複数の係留索用警報部はそれぞれ海面に浮上したときに固有の警報を発することにより、複数の主係留索のうちのどれが切れたかを報知することが可能である。
【0022】
また、前記魚礁本体から下方に延びるように前記魚礁本体の下部に取り付けられた副係留索と、前記副係留索の下端部に取り付けられ、前記副係留索を介して前記魚礁本体を当該海底に係留する第2アンカーと、をさらに備えているのが好ましい。
【0023】
かかる構成によれば、魚礁本体は、当該魚礁本体から下方に延びる副係留索を介して第2アンカーに取り付けられているので、複数の主係留索のうちの一部または全部が切れた場合であっても、魚礁本体を所定の設置位置に保持することが可能である。
【0024】
さらに、前記海水に浮くことが可能で、かつ、海面に浮上したときに警報を発する構成を有し、前記魚礁本体に取り付けられた本体用警報部をさらに備えているのが好ましい。
【0025】
かかる構成によれば、主係留索に取り付けられた係留索用警報部が浮上しないにもかかわらず魚礁本体が海面に浮上した場合には、当該魚礁本体に取り付けられた本体用警報部が海面に浮かんで警報を発することが可能であり、魚礁本体が浮上したことを確実に知らせることが可能である。
【0026】
さらに、前記本体用警報部は、前記魚礁本体に連結索を介して取り付けられているのが好ましい。
【0027】
かかる構成によれば、本体用警報部は魚礁本体に連結索を介して取り付けられているので、魚礁本体が傾斜した状態で海面に浮上した場合でも、魚礁本体の傾斜の影響を受けずに、本体用警報部は確実に海面に浮上して警報を発することが可能である。
【発明の効果】
【0028】
以上説明したように、本発明の浮魚礁によれば、複数の係留索を有する構造を有していても、個々の係留索の切断を早期に発見することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の実施形態に係る浮魚礁を海中に設置した状態の正面図である。
図2図1の浮魚礁の平面図である。
図3図1の係留索用警報部の拡大図である。
図4図1の主係留索が係留索用警報部と魚礁本体との間で切れたときに係留索用警報部が海面に浮上して警報を発している状態を示す概略説明図である。
図5図1の主係留索が係留索用警報部と第1アンカーとの間で切れたときに係留索用警報部が海面に浮上して警報を発している状態を示す概略説明図である。
図6】本発明の浮魚礁の変形例である係留索用警報部の外周面にフロートが取り付けられた構造を示す図である。
図7】本発明の浮魚礁の他の変形例である電波発信部と複数のフロートとを直列に並べた構造の係留索用警報部を示す図である。
図8】本発明の浮魚礁のさらに他の変形例である本体用警報部が連結索を介して魚礁本体の上部に取り付けられた構造を示す図である。
図9図8の魚礁本体および本体用警報部が海面に浮上するとともに魚礁本体が横転した状態を示す概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照しながら本発明の浮魚礁の実施形態についてさらに詳細に説明する。
【0031】
図1〜2に示される浮魚礁1は、魚礁本体2から側方に延びる複数の主係留索3と当該魚礁本体2から下方向に延びる副係留索6とを組み合わせて、魚礁本体2を多方向から支持するとともに、各主係留索3には当該主係留索3の個々の切断を知らせるための係留索用警報部5が取り付けられたものである。
【0032】
具体的には、浮魚礁1は、図1〜2に示されるように、魚礁本体2と、当該魚礁本体2の側面から側方に延びる複数(図1〜3では2本)の主係留索3と、それぞれの主係留索3の端部に取り付けられた第1アンカー4と、各主係留索3に取り付けられた係留索用警報部5と、当該魚礁本体2の下端部に取り付けられた副係留索6と、副係留索6の下端部に取り付けられた第2アンカー7と、主係留索3に浮力を与える浮力付与部としてそれぞれの主係留索3の途中に取り付けられた中間フロート8とを備えている。
【0033】
魚礁本体2は、海水に浮いて魚を蝟集する構成を有する。魚礁本体2は、海水に浮いて魚を蝟集する構成を有する構成であればいかなる構成であってもよい。魚礁本体2は、例えば、多面体の中空体であって魚の出入りを許容する大きさの開口を有する枠体と、その枠体に浮力を付与するフロートとを備えた構成でよい。
【0034】
複数の主係留索3は、それぞれ、第1端部9と第2端部10とを有し、化学繊維製のロープや鋼製のワイヤなどからなる長尺の線状部材である。主係留索3の第1端部9は、魚礁本体2に取り付けられている。そして、当該主係留索3の第2端部10には、第1アンカー4が取り付けられている。
【0035】
複数の主係留索3は、魚礁本体2に取り付けられていればよく、取付場所や本数については、とくに限定されない。例えば、本実施形態では、複数の主係留索3は、魚礁本体2から側方に離れる方向に延びるように第1端部9が魚礁本体2に取り付けられた複数の横方向索によって構成されている。そして、これらの主係留索3は、魚礁本体2から側方に離れる方向に延びるように、たとえば、第1端部9が魚礁本体2における側面のうち互いに対向する部分にそれぞれ取り付けられている。
【0036】
本実施形態では、図1〜2に示されるように、一対の主係留索3が潮の流れの方向Bに対してほぼ平行な方向(具体的には、平行な方向または平行な方向から45度傾斜した角度の範囲内の方向)に配置されているので、これら一対の主係留索3は海中Wの潮の流れの影響を受けにくい。
【0037】
なお、主係留索3は、横方向索以外の他の方向に延びるワイヤ(例えば、魚礁本体2から下方向または斜め下方向へ延びる索など)を含んでいてもよい。
【0038】
第1アンカー4は、複数の主係留索3のそれぞれの第2端部10に取り付けられ、魚礁本体2を海中Wに浮いた状態で主係留索3を介して当該魚礁本体2を海底Gに係留する。
【0039】
第1アンカー4は、各々の主係留索3の第2端部10に取り付けられ、海底Gにおける第2アンカー7に対して水平方向に離間した位置に配置されることにより、第1アンカー4は、主係留索3を介して魚礁本体2を海底Gに係留する。第1アンカー4は、例えば、第1アンカー4と第2アンカー7との距離が海底Gから魚礁本体2の下面までの距離の2倍以上(好ましくは3倍以上)になるような位置に配置されれば、浮魚礁1を海中Wに施工する際に、主係留索3と副係留索6との干渉を避けながら、第1アンカー4および主係留索3を容易に設置することが可能である。
【0040】
係留索用警報部5は、海水に浮くことが可能で、かつ、海面Sに浮上したときに警報を発する構成を有する。ここで、「海面Sに浮上したときに警報を発する構成」とは、海面Sに浮上したことを検知したときに警報を発する構成と、海中では警報を発しないが海面Sに浮上したときにはじめて警報を発する構成のいずれの構成を含む
係留索用警報部5は、例えば、図3に示されるように、ステンレスなどの耐圧性を有する材料からなる中空の球形の本体5aと、本体5aの内部に少なくとも一部が収容された電波発信部5bとを有する。電波発信部5bは、海面Sに浮上したときに警報を発するための構成として、例えば、係留索用警報部5が海面Sに浮上したことを検知する水圧センサなどの浮上検知部と、当該浮上検知部が浮上を検知したときに電波を発信する発信機構と、電池とを有する。
【0041】
係留索用警報部5は、複数の主係留索3のそれぞれにおける主係留索3が切れたときに海面Sに到達可能な位置に取り付けられている。本実施形態では、図3に示されるように、本体5aの下部に設けられた突起部分5cがワイヤ11などの固定部材によって主係留索3に固定されることにより、係留索用警報部5は主係留索3の所定の位置に固定されているが、他の固定方法でもよい。
【0042】
係留索用警報部5の主係留索3上における取付位置は、具体的には以下のように設定されている。すなわち、本実施形態の係留索用警報部5は、図1に示されるように、主係留索3の延びる方向における当該係留索用警報部5と第1アンカー4との距離L1が当該第1アンカー4が設置された位置の水深H以上になるような主係留索3上の位置(具体的には、図1における範囲A内または当該範囲Aよりも魚礁本体2に近い範囲内の位置)において、当該主係留索3に取り付けられている。これにより、主係留索3における係留索用警報部5と第1アンカー4との間の部分3bの長さ(すなわち距離L1)は水深H以上に確実に確保される。その結果、当該主係留索3における係留索用警報部5と魚礁本体2との間の部分3aが切断した場合に、係留索用警報部5は、海面Sまで確実に浮上することが可能である。
【0043】
さらに、本実施形態では、係留索用警報部5は、主係留索3の延びる方向における当該係留索用警報部5と魚礁本体2との距離L2が海面Sから当該魚礁本体2までの距離D以上になるような主係留索3上の位置(具体的には、図1における範囲A内または当該範囲Aよりも第1アンカー4に近い範囲内の位置)において、当該主係留索3に取り付けられている。これにより、主係留索3における係留索用警報部5と魚礁本体2との間の部分3aの長さ(すなわち距離L2)は海面Sから当該魚礁本体2までの距離D以上に確実に確保される。その結果、当該主係留索3における係留索用警報部5と第1アンカー4との間の部分3bが切断した場合には、係留索用警報部5は、海面Sまで確実に浮上することが可能である。
【0044】
以上より、係留索用警報部5は、上記2つの条件を満足する範囲A内の位置、すなわち、主係留索3の延びる方向における当該係留索用警報部5と第1アンカー4との距離L1が当該第1アンカー4が設置された位置の水深H以上になるような主係留索3上の位置で、かつ、主係留索3の延びる方向における当該係留索用警報部5と魚礁本体2との距離L2が海面Sから当該魚礁本体2までの距離D以上になるような主係留索3上の位置に配置されていれば、主係留索3における係留索用警報部5と魚礁本体2との間の部分3aが切断した場合および係留索用警報部5と第1アンカー4との間の部分3bが切断した場合のいずれの場合も、係留索用警報部5は、海面Sまで確実に浮上することが可能であるので、最も好ましい。
【0045】
複数の係留索用警報部5は、それぞれ固有の警報を発することが可能な構成を有するようにすればよい。例えば、個々の係留索用警報部5は、固有の番号を有しており、その番号情報を含む信号を警報として発信すればよい。
【0046】
副係留索6は、魚礁本体2から下方に延びるように魚礁本体2の下部に取り付けられている。副係留索6は、上記の主係留索3と異なり、警報部が取り付けられていない。副係留索6としては、主係留索3と同様の材料、例えば化学繊維製のロープや鋼製のワイヤなどの線状部材が用いられる。
【0047】
第2アンカー7は、副係留索6を介して魚礁本体2を当該海底Gに係留する。第2アンカー7は、副係留索6の下端部に取り付けられる。第2アンカー7は、海底Gに配置されることにより副係留索6を介して魚礁本体2を当該海底Gに係留する。
【0048】
なお、本発明では、副係留索6および第2アンカー7を有する浮魚礁1に限定されるものではなく、副係留索6および第2アンカー7は省略するとともに、複数の主係留索3のうちの1本または数本が魚礁本体2から下方または斜め下方に延びるようにしてもよい。その場合、礁本体2から下方または斜め下方に延びる係留索用警報部5についても、係留索用警報部5が、複数の主係留索3のそれぞれにおける主係留索3が切れたときに海面Sに到達可能な位置に取り付けられていればよい。
【0049】
中間フロート8は、主係留索3に浮力を付与する浮力付与部であり、主係留索3における第1端部9と第2端部10との間の部位に浮力を与える。中間フロート8を主係留索3の途中に設けることにより、主係留索3の緩みを防止することが可能である。
【0050】
中間フロート8は、図1〜2に示されるように、主係留索3において、第1アンカー4に近い位置に配置されている。これにより、海中Wにおける中間フロート8の移動量が制限される。
【0051】
以上のように構成された浮魚礁1では、図4〜5に示されるように、複数の係留索用警報部5は、複数の主係留索3のそれぞれにおける主係留索3が切れたときに海面Sに到達可能な位置に取り付けられているので、魚礁本体2を係留する複数の主係留索3のうちの1本が切れた場合には、切れた主係留索3に取り付けられた係留索用警報部5が係留索との連結を維持した状態で浮上して海面Sに到達し、警報を発することが可能である。
【0052】
具体的には、本実施形態の係留索用警報部5は、図1に示されるように、主係留索3の延びる方向における当該係留索用警報部5と第1アンカー4との距離L1が当該第1アンカー4が設置された位置の水深H以上になるような主係留索3上の位置において、当該主係留索3に取り付けられ、主係留索3における係留索用警報部5と第1アンカー4との間の部分3bの長さ(すなわち、距離L1)が水深H以上に確保されている。したがって、図4に示されるように、主係留索3における係留索用警報部5と魚礁本体2との間の部分3aが点Pの位置で切断した場合には、係留索用警報部5の海面Sまで確実に浮上して、警報を発信することが可能である。
【0053】
また、係留索用警報部5は、図1に示されるように、主係留索3の延びる方向における当該係留索用警報部5と魚礁本体2との距離L2が海面Sから当該魚礁本体2までの距離D以上になるような主係留索3上の位置において、当該主係留索3に取り付けられ、主係留索3における係留索用警報部5と魚礁本体2との間の部分3aの長さ(すなわち、距離L2)を海面Sから当該魚礁本体2までの距離D以上に確保されている。したがって、図5に示されるように、当該主係留索3における係留索用警報部5と第1アンカー4との間の部分3bが点Qの位置で切断した場合には、係留索用警報部5の海面Sまで確実に浮上して、警報を発信することが可能である。
【0054】
(特徴)
(1)
以上のように、本実施形態の浮魚礁1では、係留索用警報部5が複数の主係留索3のそれぞれにおける主係留索3が切れたときに海面Sに到達可能な位置に取り付けられている。そのため、魚礁本体2を係留する複数の主係留索3のうちの1本が切れた場合には、切れた主係留索3に取り付けられた係留索用警報部5が主係留索3との連結を維持した状態で浮上して海面Sに到達し、警報を発することが可能である。これにより、作業者は、浮魚礁1が漂流する前に主係留索3の切断を知ることが可能になり、早期に浮魚礁1の補修を行うことが可能である。
【0055】
(2)
本実施形態の浮魚礁1では、複数の主係留索3を構成する複数の横方向索は、魚礁本体2から側方に離れる方向に延びるように当該魚礁本体2に取り付けられている。そのため、横方向索同士を互いに離間して配置することが可能になり、横方索同士が絡まるおそれが低減する。また、横方向索(主係留索3)は、魚礁本体2から側方に延びているので、魚礁本体2の周囲を漁網(例えば底引き網など)などの障害物が通過したときに当該障害物に引っ掛かって切れやすいが、上記の構成のように複数の横方向索のそれぞれに係留索用警報部5が取り付けられることにより、複数の横方向索のうちの1本が切れた場合には、切れた係留索に取り付けられた係留索用警報部5が浮上して海面Sに到達し、警報を確実に発することが可能である。よって、複数の横方向索を有する浮魚礁1の早期の補修が可能になる。
【0056】
(3)
本実施形態の浮魚礁1では、主係留索3は、係留索用警報部5と第1アンカー4との間において水深以H上の長さL1が確保されているので、主係留索3が係留索用警報部5と魚礁本体2との間で切れたときに、係留索用警報部5は主係留索3に取り付けられた状態で浮上して海面Sに到達し、警報を確実に発することが可能である。このとき、係留索用警報部5は、主係留索3を介して第1アンカー4に係留されているので、漂流するおそれがなく、その結果、その第1アンカー4付近の位置を維持しながら海面Sに浮かんで警報を発することが可能である。
【0057】
(4)
本実施形態の浮魚礁1では、主係留索3は、係留索用警報部5と魚礁本体2との間において海面Sから当該魚礁本体2までの距離D以上の長さL2が確保されているので、主係留索3が係留索用警報部5と第1アンカー4との間で切れたときに、係留索用警報部5は主係留索3に取り付けられた状態で浮上して海面Sに到達し、警報を確実に発することが可能である。このとき、係留索用警報部5は、主係留索3を介して魚礁本体2に係留されているので魚礁本体2から離れて漂流するおそれがなく、魚礁本体2の近くの位置で海面Sに浮かんで警報を発することが可能である。
【0058】
(5)
本実施形態の浮魚礁1では、係留索用警報部5の浮力だけでは主係留索3の重量によって係留索用警報部5が浮上しにくい場合でも、浮力付与部である中間フロート8から主係留索3へ付与される浮力によって主係留索3の重みを軽減することが可能である。これにより、係留索用警報部5が主係留索3につながった状態で確実に浮上することが可能である。
【0059】
なお、 浮力付与部は、上記の中間フロート8の他にも種々の形態が可能であり、例えば、浮力付与部の他の例として、図6に示されるように、係留索用警報部5の本体の外周に取り付けられたフロートでもよい。または、浮力付与部として、主係留索3の全長にわたって浮力を持たせるための海水よりも比重の軽いロープや線材などを採用してもよい。
【0060】
(6)
本実施形態の浮魚礁1では、複数の係留索用警報部5はそれぞれ海面Sに浮上したときに固有の警報を発するので、複数の主係留索3のうちのどれが切れたかを報知することが可能である。
【0061】
(7)
本実施形態の浮魚礁1では、魚礁本体2は、当該魚礁本体2から下方に延びる副係留索6を介して第2アンカー7に取り付けられているので、複数の主係留索3のうちの一部または全部が切れた場合であっても、魚礁本体2を所定の設置位置に保持することが可能である。
【0062】
また、本実施形態の浮魚礁1では、複数の主係留索3と副係留索6とを組み合わせて魚礁本体2を多方向から支持することにより、魚礁本体2の動きを限定しながら各係留索3および6(とくに、下方向に延びる副係留索6)の疲労を軽減することが可能である。
【0063】
(変形例)
(A)
上記実施形態の係留用警報部5は、ステンレス製の本体の内部に電波発信部が収容された形態を有しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、海中で浮いて海水に浮くことが可能で、かつ、海面に浮上したときに警報を発する構成であればよい。したがって、係留用警報部の変形例として、例えば、図7に示される係留用警報部21のように、電波発信部22と、当該電波発信部22の両側に並べられた複数のフロート23と、これら電波発信部22および複数のフロート23をそれぞれ貫通して互いに連結する連結索24と、当該連結索24を主係留索3に連結するワイヤなどの連結部25とを備えた構成を有してもよい。図7に示される係留用警報部21では、複数のフロート23が主係留索3の延びる方向に沿って配置されるので、主係留索3のたわみやゆがみを抑えることが可能である。また、複数のフロート23が電波発信部22の両側から主係留索3に対して均等に浮力を与えるので、電波発信部22を確実に海面に浮上させることが可能である。
【0064】
(B)
本発明の浮魚礁は複数の主係留索にそれぞれ取り付けられた複数の係留用警報部5が取り付けられているが、さらに、図8に示されるように、本体用警報部31が魚礁本体2に取り付けられてもよい。これにより、主係留索3に取り付けられた係留索用警報部5が浮上しないにもかかわらず魚礁本体2が海面Sに浮上した場合には、当該魚礁本体2に取り付けられた本体用警報部31が海面Sに浮かんで警報を発することが可能であり、魚礁本体2が浮上したことを確実に知らせることが可能である。
【0065】
図8に示される本体用警報部31は、海水に浮くことが可能で、かつ、海面に浮上したときに警報を発する構成を有していればよい。本体用警報部31は、例えば、上記の係留索用警報部5と同様な構成を有していればよい。
【0066】
また、この本体用警報部31は、例えば、図8に示されるように、魚礁本体2に連結索32を介して取り付けられているのが好ましい。この構成によれば、本体用警報部31は魚礁本体2に連結索32を介して取り付けられているので、図9に示されるように、例えば、魚礁本体2の下側に延びる副係留索7が切断して魚礁本体2が傾斜した状態で海面Sに浮上した場合でも、魚礁本体2の傾斜の影響を受けずに、本体用警報部31は確実に海面Sに浮上して警報を発することが可能である。
【0067】
また、連結索32は、図8〜9に示されるように、補強索33を介して主係留索3に連結されているのが好ましい。これにより、連結索32が魚礁本体2から外れても本体用警報部31は連結索32および補強索33を介して主係留索3に保持することが可能である。
【0068】
図8に示されるように、浮力を有する本体用警報部31が魚礁本体2の上方に連結索32を介して取り付けられることにより、本体用警報部31の浮力によって魚礁本体2の揺れを抑えて、魚礁本体2の姿勢を維持させることが可能である。
【符号の説明】
【0069】
1 浮魚礁
2 魚礁本体
3 主係留索
4 第1アンカー
5、21 係留索用警報部
6 副係留索
7 第2アンカー
8 中間フロート
9 第1端部
10 第2端部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9