特開2017-180004(P2017-180004A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特開2017180004-蓄熱床構造 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-180004(P2017-180004A)
(43)【公開日】2017年10月5日
(54)【発明の名称】蓄熱床構造
(51)【国際特許分類】
   E04F 15/18 20060101AFI20170908BHJP
   E04F 15/04 20060101ALI20170908BHJP
【FI】
   E04F15/18 Y
   E04F15/04 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-72118(P2016-72118)
(22)【出願日】2016年3月31日
(71)【出願人】
【識別番号】000204985
【氏名又は名称】大建工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】307042385
【氏名又は名称】ミサワホーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 友紀
(72)【発明者】
【氏名】石黒 成紀
(72)【発明者】
【氏名】水島 邦具
(72)【発明者】
【氏名】太田 勇
(72)【発明者】
【氏名】川上 隆士
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 理人
【テーマコード(参考)】
2E220
【Fターム(参考)】
2E220AA04
2E220AA27
2E220AA51
2E220AB09
2E220AC03
2E220BA01
2E220CA07
2E220CA40
2E220DA02
2E220DA13
2E220DB07
2E220DB15
2E220EA03
2E220GA24Y
2E220GA25X
2E220GA25Y
2E220GB05X
2E220GB33Y
2E220GB39Y
2E220GB40Y
2E220GB44X
2E220GB45X
2E220GB45Y
2E220GB46Y
2E220GB47X
2E220GB47Y
(57)【要約】
【課題】温水パイプ5が収容された床暖房パネル4に蓄熱マット2を組み合わせた蓄熱床構造において、床暖房パネル4から蓄熱マット2への熱伝達効率が高く、施工性に優れ、かつ、歩行者に歩行中の違和感を生じさせないようにする。
【解決手段】床下地1の上に蓄熱マット2が載置され、木質板材3と、温水パイプ5が収容された板状の床暖房パネル4とが、その記載順に積層状態で施工されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
床下地上に蓄熱体が載置され、
前記蓄熱体上に、木質板材と、発熱部が収容された板状の床材とが記載順に重ねられた状態で施工されていることを特徴とする蓄熱床構造。
【請求項2】
請求項1記載された蓄熱床構造において、
前記床材は、凹溝を有する木質基材の該凹溝内に、温水又は冷水が内部を流れる前記発熱部としてのパイプが一体的に収容された一体型の床材である、ことを特徴とする蓄熱床構造。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された蓄熱床構造において、
前記木質板材は、厚みが2mm以上かつ12mm以下であり、かつ、熱伝導率が0.1[W/mK]以上である、ことを特徴とする蓄熱床構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発熱パネルに蓄熱体を組み合わせた蓄熱床構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物内部の床面を暖房するための床暖房構造として、例えば特許文献1に示されるように、ベースボード上に、蓄熱性のある制振遮音板及び合成樹脂発泡シートをこの順に載置し、合成樹脂発泡シート上に複数の面状発熱体を配置し、面状発熱体の上面にフローリング材を設けた暖房床構造が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−106159号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1のものでは、発熱体と制振遮音板との間に合成樹脂発泡シートが施工されている。しかしながら、当該構造は、制振遮音効果を主たる狙いとしていることから、合成樹脂発泡シートとしては、熱伝導率が小さく、発熱体の熱を制振遮音板に十分に伝えることが難しい。同様に、発熱体と制振遮音板との間に合成樹脂発泡シートが介在しているため、制振遮音板に蓄積された熱が表面床材に伝わりにくい。すなわち、制振遮音板の蓄熱性能が十分に発揮されないという問題がある。
【0005】
さらに、合成樹脂発泡シートは、軟質材であるため、硬質材を使用する場合と比較して施工不備によるフローリング材の不陸が発生しやすい。また、歩行時の床材の沈み込みにより、歩行者に歩行中の違和感が生じる場合がある。
【0006】
本発明は斯かる諸点に鑑みてなされたもので、その目的は、発熱部を有する床材に蓄熱体を組み合わせた蓄熱床構造において、床材から蓄熱体への熱伝達効率が高く、施工性に優れ、かつ、歩行者に歩行中の違和感を生じさせないようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、この発明では、床下地上に蓄熱体と、木質板材と、発熱部が収容された板状の床材とを、その記載順で積層状態に施工するようにした。これにより、床材の発熱部の熱が蓄熱体に伝わりやすくなる。
【0008】
具体的には、第1の発明に係る潜熱蓄熱床構造は、床下地上に蓄熱体が載置され、前記蓄熱体上に、木質板材と、発熱部が収容された板状の床材とが記載順に重ねられた状態で施工されていることを特徴とする。
【0009】
なお、本発明においては、発熱とは温熱に限らず冷熱を生じさせることも含む。
【0010】
この第1の発明では、蓄熱体、木質板材及び床材が積層状態になるように施工している。ここで、木質板材は、従来の蓄熱床構造において用いられている合成樹脂発泡シート等と比較して熱伝導率が大きい。そのため、従来技術と比較して床材の発熱部の熱が蓄熱体に伝わりやすくなる。同様に、蓄熱体から放出された熱も木質板材を介して床材に伝わりやすくなる。すなわち、床材(発熱部)と蓄熱体との間における熱伝導効率が上昇するため、蓄熱体の蓄熱性能を十分に発揮させることができる。したがって、床材つまり床面の温熱又は冷熱の持続効果を高めることができる。
【0011】
また、木質板材上に発熱部が収容された板状の床材を施工するようにしたので、蓄熱体の寸法が熱によって変化した場合においても、蓄熱体の寸法変化による床材への影響を防止することができる。すなわち、上記床材への影響を考慮した施工が不要であり、施工性に優れている。
【0012】
さらに、木質板材は、合成樹脂発泡シート等と比較すると硬度が十分に高いため、本態様によると、歩行者に歩行中の違和感を生じさせないようにすることができる。
【0013】
第2の発明は、前記床材は、凹溝を有する木質基材の該凹溝内に、温水又は冷水が内部を流れる前記発熱部としてのパイプが一体的に収容された一体型の床材である、ことを特徴とする。
【0014】
この第2の発明では、発熱部が木質基材に一体的に収容されたパイプである場合に、蓄熱体の蓄熱性及び蓄熱床構造の施工性を高めることができる。
【0015】
第3の発明は、前記木質板材は、厚みが2mm以上かつ12mm以下であり、かつ、熱伝導率が0.1[W/mK]以上である、ことを特徴とする。
【0016】
この第3の発明では、第1及び第2の発明と同様に、蓄熱体の蓄熱性能を十分に発揮させることができるとともに、蓄熱床構造の施工性を高めることができる。
【0017】
木質板材の厚さは、2mmよりも薄いと、剛性がなく施工しにくくなる場合がある一方、12mmより厚いと、熱抵抗が大きくなり下部の蓄熱体に十分に蓄熱されない場合があるため、2mm以上かつ12mm以下に設定されている。また、熱伝導率は、0.1[W/mK]より小さいと、熱抵抗が大きくなり下部の蓄熱体に十分に蓄熱されない場合があるため、0.1[W/mK]以上に設定されている。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明によると、蓄熱体、木質板材及び床材が積層状態になるように施工したことにより、床材と蓄熱体との間における熱伝導効率が上がるとともに、蓄熱床構造の施工性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本発明の実施形態に係る蓄熱床構造の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
【0021】
図1は本発明の実施形態に係る蓄熱床構造を示している。
【0022】
図1に示すように、建物内部の室内の床面における床下地1の上には、蓄熱材からなる複数の蓄熱マット2,2,…が敷き詰められて施工されている。蓄熱マット2は、例えば、厚さが3mm以上の矩形板状又はシート状であり、例えば、その厚さが15mm以上であってもよい。蓄熱マット2には、合成ゴムを主原料としたもの又はアスファルトを主原料としたもののように顕熱容量の大きな材料が好適に用いられる。或いは、パラフィン、無機塩及び/又はオレフィン等を含んだ潜熱容量の大きな材料が用いられる。図示しないが、蓄熱マット2は、例えば、ステープル等の締結具によって床下地1に固定された状態で施工されている。なお、図示しないが、各蓄熱マット2は、隣接する蓄熱マット2との間に数mmの間隔をあけた状態で敷き詰められていてもよい。
【0023】
床下地1上に敷き詰められた蓄熱マット2の上には、木質板材3と、下面に凹溝42を有していて該凹溝42内に温水パイプ5が一体的に収容された一体型の床暖房パネル4とが、その記載順に重ねられた状態で施工されている。
【0024】
木質板材3は、例えば、厚さが2〜12mmであり、かつ、熱伝導率が0.1[W/mK]以上のものが好適に用いられる。例えば、木質板材3の厚さが2mmよりも薄いと、施工に必要な剛性がなく、施工性が低下する場合がある。一方で、木質板材3の厚さが12mmより厚いと、木質板材3の熱抵抗が大きくなり、温水パイプ5の熱が蓄熱マット2に伝わりにくくなり、蓄熱マット2の蓄熱性能が十分に発揮されなくなる場合がある。また、例えば、木質板材3の熱伝導率が0.1[W/mK]より小さいと、木質板材3の熱抵抗が大きくなり、温水パイプ5の熱が蓄熱マット2に伝わりにくくなり、蓄熱マット2の蓄熱性能が十分に発揮されなくなる場合がある。木質板材3として、例えば、合板、MDF(中密度繊維板)、パーティクルボード、OSB(配向性ストランドボード)、ハードボード等が用いられる。
【0025】
床暖房パネル4は、例えば、厚さが10mm程度の合板、単板、MDF等からなる長尺板状のパネル本体41を有し、その裏面(下面)には、短辺方向及び長辺方向に互いに平行な部分を有するように蛇行して延びる凹溝42が形成されている。この凹溝42内にはアルミ箔等の放冷熱材を介して温水パイプ5が収容配置され、この温水パイプ5内を温水が流れるようになっている。また、パネル本体41の一方の短辺には、突条からなる雄実43が形成されており、他方の短辺には雄実43と嵌合可能な条溝からなる雌実44が形成されている。
【0026】
蓄熱床構造を施工する際には、木質板材3上に床冷暖房用接着剤6を塗布し、かつ、床暖房パネル4のパネル本体41の雄実43及び雌実44に接着剤を塗布した後、その雄実43及び雌実44をそれぞれ隣接する床暖房パネル4の雄実43及び雌実44と嵌合した上で、床暖房パネル4を木質板材3上に載置して、接着剤を固化させる。さらに、その後にフローリング用ステープル等を用いて、床暖房パネル4を木質板材3に固定することにより施工すればよい。例えば、パネル本体の表面に、化粧単板等からなる表面材を貼り付けてもよい。
【0027】
以上のように、本実施形態によると、床下地1の上に複数の蓄熱マット2,2,…が敷き詰められて施工されており、蓄熱マット2の上には、木質板材3と、下面の凹溝42内に温水パイプ5が一体的に収容された一体型の床暖房パネル4とが、記載順に重ねられた状態で施工されている。ここで、木質板材3は、従来技術(例えば、合成樹脂発泡シート)と比較して熱伝導率が大きいため、床暖房パネル4の温水パイプ5の熱が蓄熱マット2に伝わりやすくなる。同様に、蓄熱マット2から放出された熱も木質板材3を介して床暖房パネル4に伝わりやすくなる。このように、床暖房パネル4と蓄熱マット2との間の熱伝導効率が上昇するため、蓄熱マット2の蓄熱性能を十分に発揮させることができ、床暖房パネル4の温熱の持続効果を高めることができる。
【0028】
また、蓄熱又は放熱の過程において、温度変化に起因して蓄熱マット2の寸法が変化した場合においても、蓄熱マット2と床暖房パネル4との間に木質板材3が介在しているため、蓄熱マット2の寸法変化による床暖房パネル4への影響を防止することができる。すなわち、上記床暖房パネル4への影響を考慮した施工が不要であり、施工性が優れている。
【0029】
さらに、木質板材3は、従来技術に係る合成樹脂発泡シート等と比較すると硬度が十分に高いため、歩行者に歩行時の床材の沈み込みによる違和感を生じさせないようにすることができる。
【0030】
(その他の実施形態)
なお、上記実施形態は、温水パイプ5を有する床暖房パネル4によって床暖房を行う蓄熱床構造の場合であるが、冷水を流す冷水パイプを有する床冷房パネルによって床冷房を行うようにしてもよく、温水又は冷水を流す配管を有する一体型の床冷暖房パネルによって床暖房及び床冷房を切り換えて行うようにすることもできる。この場合においても、上記実施形態と同様の効果が得られる。すなわち、床冷房パネルの冷熱の持続効果又は床冷暖房パネルの温熱又は冷熱の持続効果を高めることができ、施工性に優れるとともに、歩行者の歩行に違和感がないようにすることができる。
【0031】
また、床暖房を行う場合において、温水パイプ5に代えて電気ヒータを用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、床下地の上に、蓄熱体、木質板材、及び発熱部が収容された床暖房パネルをその順番で積層状態に施工するようにしたため、熱伝達効率が高く、施工性に優れるので、極めて有用である。
【符号の説明】
【0033】
1 床下地
2 蓄熱マット(蓄熱体)
3 木質板材
4 床材(床暖房パネル)
5 温水パイプ(発熱部)
図1