特開2017-180087(P2017-180087A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-180087(P2017-180087A)
(43)【公開日】2017年10月5日
(54)【発明の名称】コンクリート構造物の構築方法
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/02 20060101AFI20170908BHJP
   E04G 11/22 20060101ALI20170908BHJP
【FI】
   E04G21/02 103A
   E04G11/22 A
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-96913(P2017-96913)
(22)【出願日】2017年5月16日
(62)【分割の表示】特願2012-231561(P2012-231561)の分割
【原出願日】2012年10月19日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (1)公益社団法人日本コンクリート学会により平成24年6月15日に発行された「コンクリート工学年次論文集第34巻」にて発表 (2)公益社団法人日本コンクリート学会が平成24年7月6日に開催した「コンクリート工学年次大会2012(広島)」にて発表
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(72)【発明者】
【氏名】松元 淳一
(72)【発明者】
【氏名】堀口 賢一
(72)【発明者】
【氏名】梁 俊
(72)【発明者】
【氏名】丸屋 剛
【テーマコード(参考)】
2E150
2E172
【Fターム(参考)】
2E150AA21
2E150AA30
2E150HE00
2E150KA01
2E150KA06
2E172AA05
2E172DD00
2E172DE06
(57)【要約】
【課題】スリップフォーム工法において、簡易かつ安価にコンクリート表面の皺や気泡等を取り除き、ひいては、コンクリート構造物の耐久性の向上を図るコンクリート構造物の構築方法を提案する。
【解決手段】同一断面のコンクリート構造物を連続的に構築するスリップフォーム工法において、型枠の脱型直後のコンクリート表面に対して金コテにより仕上げを行うコンクリート構造物の構築方法であって、コンクリートのプロテクター貫入抵抗値が2.0N/mm以下のときに型枠を脱型する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一断面のコンクリート構造物を複数の区画に分けて連続的に構築するスリップフォーム工法において、
型枠内にコンクリートを打設する打設工程と、
打設された前記コンクリートの側面に沿って前記型枠を上方又は側方に移動させる型枠移動工程と、
前記型枠の移動により露出した脱型直後のコンクリート表面に対して金コテにより仕上げを行う仕上げ工程と、を行うコンクリート構造物の構築方法であって、
前記型枠移動工程では、前記打設工程完了後に前記型枠の移動を開始し、
前記打設工程の際に前記型枠から脱型される直前に位置する区画のコンクリートは、プロクター貫入抵抗値が2.0N/mm2以下のときに前記型枠から脱型されて前記コンクリート表面が露出することを特徴とする、コンクリート構造物の構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート構造物の構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼製型枠内にコンクリートを打設し、締固めを行った後に、鋼製型枠を前進させることにより同一断面のコンクリート構造物を連続的に構築するスリップフォーム工法が知られている。
【0003】
スリップフォーム工法では、型枠をコンクリートの表面に沿って移動させるためにコンクリートの表面に気泡や皺などの乱れが多く残る場合がある。
【0004】
そのため、スリップフォーム工法において、コンクリートの表面の乱れを防止することを目的とした施工方法が多数開示されている。
例えば、特許文献1には、型枠のコンクリート接触面に、コンクリートと型枠との付着力を低減するための表面材を設置する方法が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、予め型枠の表面に、コンクリートと型枠との間に生じるせん断摩擦力を低減させるシート部材を配設しておき、コンクリートが硬化した時点で型枠を移動させることで、コンクリート表面の乱れを減少させる方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平09−195510号公報
【特許文献2】特開2000−96820号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の表面材によりコンクリートと型枠表面との付着力を低減させる方法は、コンクリート表面の乱れや気泡、皺等を完全に取り除くことは難しかった。
また、特許文献2の型枠面にシート部材を配置する方法は、鋼製型枠の大幅な改造を要するため、費用が高くなってしまう。
【0008】
一方、本願発明者は、スリップフォーム工法の研究の結果、コンクリート表面の乱れや気泡、皺等が残存していると、構造物の耐久性に何らかの影響が及ぶおそれがあるという見解に至った。
【0009】
本発明は、前記の問題点を解決することを目的とするものであり、スリップフォーム工法において、簡易かつ安価にコンクリート表面の皺や気泡等を取り除き、ひいては、コンクリート構造物の耐久性の向上を図るコンクリート構造物の構築方法を提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために、本発明は、同一断面のコンクリート構造物を複数の区画に分けて連続的に構築するスリップフォーム工法において、型枠内にコンクリートを打設する打設工程と、打設された前記コンクリートの側面に沿って前記型枠を上方又は側方に移動させる型枠移動工程と、前記型枠の移動により露出した脱型直後のコンクリート表面に対して金コテにより仕上げを行う仕上げ工程と、を行うコンクリート構造物の構築方法であって、前記型枠移動工程では、前記打設工程完了後に前記型枠の移動を開始し、
前記打設工程の際に前記型枠から脱型される直前に位置する区画のコンクリートは、プロクター貫入抵抗値が2.0N/mm2以下のときに前記型枠から脱型されて前記コンクリート表面が露出することを特徴としている。
【0011】
かかるコンクリート構造物の構築方法によれば、コンクリートの凝結の始発開始前に脱型を開始し、仕上げを施すため、コンクリート表面の仕上げを確実に行うことができる。また、コンクリート表面の気泡や皺を取り除くことで、コンクリートの耐久性も向上する。
【発明の効果】
【0012】
本発明のコンクリート構造物の構築方法によれば、簡易かつ安価にコンクリート表面の皺や気泡等を取り除き、ひいては、コンクリート構造物の耐久性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態に係るコンクリート構造物の構築方法の示すフローチャートである。
図2】(a)〜(c)は、同コンクリート構造物の構築方法の各施工段階を示す断面図である。
図3】仕上げの有無と透気係数の関係を示すグラフである。
図4】(a)および(b)は促進中性化13週の試験結果を示すグラフである。
図5】電気泳動試験結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態に係るコンクリート構造物の構築方法は、スリップフォーム工法により、同一断面のコンクリート構造物を連続的に構築するものである。
本実施形態では、コンクリート構造物1について、1層高さhが250mmとして複数層に分けて施工を行う場合について説明する(図2参照)。なお、コンクリート構造物1の打ち上がり高さ、1層高さhおよび層数は、限定されるものではなく、適宜設定すればよい。
【0015】
本実施形態のコンクリート構造物の構築方法は、図1に示すように、型枠設置工程S1と、打設工程S2と、型枠移動工程S3と、仕上げ工程S4とを備えている。
【0016】
型枠設置工程S1は、所定の位置に型枠2を設置する工程である。
なお、本実施形態では、型枠2として、全高(全長)Hが1.5mのものを使用するが、型枠2の形状寸法は限定されるものではない。
【0017】
本実施形態では、図2(a)に示すように、既設部材3の側面に沿って、型枠2を設置する。
型枠2は、既設部材3の上面31から上部を上方に突出させた状態で設置しておき、型枠2の下部は既設部材3の下面32から下方に突出している。なお、型枠2の上部の突出長(突出高さ)は、1層の打設高さh(250mm)を確保している。
【0018】
打設工程S2は、所定の位置に設置された型枠2内にフレッシュコンクリートを打設する工程である。
フレッシュコンクリートの打設の後に締固めを行う。なお、フレッシュコンクリートの締固め方法は限定されるものではない。
【0019】
型枠移動工程S3は、図2の(b)に示すように、打設されたコンクリートの側面に沿って、型枠2を上方に移動させる工程であり、打設工程S2の完了後に開始する。
型枠2は、1時間毎に250mm移動させるものとする。なお、本実施形態では、打設工程の開始から型枠2が250mm移動するまでの時間が1時間となるように施工を行う。
【0020】
型枠2を移動させることにより、既設部分4(直下のコンクリート打設済部分)の上面41から上方に型枠2の上部が突出した状態となる。このとき、型枠2の上部の突出長(突出高さ)は、1層の打設高さh(250mm)とする。
【0021】
打設工程S2と型枠移動工程S3を繰り返すことにより、打ち上がり高さ分のコンクリート打設を行う。
【0022】
仕上げ工程S4は、脱型直後のコンクリート表面に対して仕上げを行う工程である。
6層目のコンクリートを打設した後、6回目の型枠移動工程S3を実施すると、図2の(c)に示すように、最下層(1層目)の脱型が行われる。つまり、最下層(1層目)は、打設開始から6時間後(1回目の型枠移動工程S3が完了してから5時間後)に脱型され始める。このとき、最下層のコンクリートは、凝結の始発開始前であり、プロテクター貫入抵抗値が2.0N/mm以下(圧縮強度0.06N/mm以上)となっている。すなわち、本実施形態では、脱型時にプロテクター貫入抵抗値が2.0N/mm以下となるように、コンクリートの配合設計を行っている。
【0023】
なお、本実施形態では、脱型時のコンクリートの圧縮強度を上載荷重に応じて0.06N/mm以上に設定したが(下記(式1)参照)、脱型時のコンクリートの圧縮強度は限定されるものではなく、上載荷重等に応じて適宜設定すればよい。
2400kg/m×1.25m=3000kg/m(0.03N/mm
0.03N/mm×2=0.06N/mm ・・・ 式1
【0024】
コンクリート表面の仕上げは、金コテを利用して、型枠2の下側においてコンクリート表面の皺や気泡を取り除くことにより行う。
【0025】
6回目の型枠移動工程S3が完了したら、7層目のコンクリートを打設し(7回目の打設工程S2)、所定時間(6回目の型枠移動工程S3の完了から1時間)が経過したら、型枠2を移動させ(7回目の型枠移動工程S3)、2層目のコンクリート表面の仕上げを行う(2回目の仕上げ工程S4)。以後、一連の作業を繰り返す。
【0026】
なお、仕上げは、必要な部分に対して行えばよく、必ずしも露出面の全面に対して行う必要はない。
【0027】
本実施形態のコンクリート構造物の構築方法によれば、コンクリートの凝結の始発開始前に脱型を開始し、仕上げを施すため、コンクリート表面の仕上げを確実に行うことができる。また、コンクリート表面の気泡や皺を取り除くことで、コンクリートの耐久性も向上する。
つまり、品質および美観に優れたコンクリート構造物1を提供することが可能となる。
【0028】
次に、本実施形態のコンクリート構造物の構築方法の効果の確認するために実施した実証実験結果について説明する。
【0029】
本実証実験では、打ち上がり高さH=1.5mを6層に分けて施工を行い、最下層のみについて仕上げを実施した。コンクリートとして、低熱セメントと高炉セメントB種の2種類について施工を行った。
また、比較例として、通常型枠による施工も行った。
【0030】
(1)透気性
図3に、コンクリートの透気性を測定した結果を示す。
図3に示すように、スリップフォーム工法で製作した供試体の透気係数は、仕上げを行っていない2層目できわめて大きいが、仕上げを実施した1層目では、通常型枠と同程度の透気を示していることから、本発明に係るコンクリート構造物の構築方法によれば、通常型枠と同程度の透気性を確保できることがわかる。
【0031】
(2)中性化
図4の(a)および(b)に促進中性化試験の結果を示す。
促進中性化試験は、コンクリート構造物の表面から10cm厚の表層供試体と、表面からの深さ10cm以降から採取した内部供試体に対して実施した。
試験方法は、JIS A 1153の促進中性化試験を、温度20℃±2℃、相対湿度60±5%、CO濃度5±0.2%の環境下で材齢10日後から13週間実施した。
【0032】
図4の(a)および(b)に示すように、内部供試体においては、セメントの種類に関わらず、仕上げを行ったスリップフォーム工法(実施例)と仕上げを行わない通常型枠工法(比較例)は略同程度であり、スリップフォーム工法がコンクリート構造物の内部には影響を及ぼすことはないと考えられる。
【0033】
表層供試体と内部供試体とを比較すると、実施例に係るスリップフォーム工法では表層供試体の方が内部供試体よりも中性化深さが小さくなる傾向を示している。一方、通常型枠では、表層供試体の方が内部供試体よりも中性化深さが大きくなる傾向を示している。これは、脱型直後に実施した仕上げによって、コンクリートの表面が密実になったことによる効果と考えられる。
【0034】
(3)塩化物イオン浸透性
塩化物イオン浸透性は、電気泳動試験にて評価した。
電気泳動試験は、JSCE−G571−2007に準拠し、材齢10日から試験を開始した。試験結果を図5に示す。
【0035】
図5に示すように、スリップフォーム工法(実施例)と通常型枠工法(比較例)を比較すると、セメントの種類に関わらず、スリップフォーム工法の方が、塩化物イオン実行拡散係数が小さくなる結果となった。これは、脱型直後に実施した仕上げによって、コンクリートの表面が密実になったことによる効果と考えられる。
【0036】
このように、本実施形態のコンクリート構造物の構築方法によれば、スリップフォーム工法による施工でも、通常型枠を利用した場合と同等以上の品質を確保することが可能である。
【0037】
以上、本発明に係る実施形態について説明した。しかし、本発明は、前述の実施形態に限られず、前記の各構成要素については、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変更が可能である。
【0038】
例えば、前記実施形態では、型枠2を1時間毎に1層の打設高さh(250mm)分、移動させることとしたが、型枠2の移動は、コンクリートのプロテクター貫入抵抗値が2.0N/mm以下(圧縮強度0.06N/mm以上)となっていれば可能であり、そのタイミングは限定されるものではない。そのため、型枠2の移動速度は、コンクリートの配合(硬化促進剤の添加量等)に応じて適宜設定すればよい。
【0039】
また、前記実施形態では、型枠2を上方に移動させる場合について説明したが、型枠2の移動方向は限定されるものではなく、横方向に移動させてもよい。
【0040】
本発明のコンクリート構造物の構築方法により構築されるコンクリート構造物は限定されるものではなく、例えば、道路構造物であってもよい。
【符号の説明】
【0041】
1 コンクリート構造物
2 型枠
3 既設部材
図1
図2
図3
図4
図5