(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-18017(P2017-18017A)
(43)【公開日】2017年1月26日
(54)【発明の名称】インスタントライスの製造方法およびインスタントライス
(51)【国際特許分類】
A23L 7/10 20160101AFI20170105BHJP
【FI】
A23L1/10 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2015-137177(P2015-137177)
(22)【出願日】2015年7月8日
(71)【出願人】
【識別番号】591215627
【氏名又は名称】サン印向山食品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100071054
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 高久
(72)【発明者】
【氏名】向山 和雄
【テーマコード(参考)】
4B023
【Fターム(参考)】
4B023LC07
4B023LE12
4B023LK05
4B023LP09
4B023LP10
4B023LP15
4B023LP20
(57)【要約】 (修正有)
【課題】水またはお湯を加えることで通常のご飯に戻して食することができるのはもちろんのこと、水またはお湯を加えない状態のままで食することができ、また通常のご飯の用途のみでなく広範囲な用途に利用できる食品素材の提供。
【解決手段】米を炊飯する前処理工程101と、炊飯された米を少なくとも10℃以下に冷却してベータ化する第1の中間処理工程102と、冷却されてベータ化された米を、ほぐして、一粒づつ分離する第2の中間処理工程103と、一粒づつ分離された米粒群を、170〜200℃の食用油或いはノンオイルで揚げる最終処理工程104とを含むインスタントライスの製造方法。更に第2の中間処理工程103で、米に穀粉及び膨張剤を混入するインスタントライスの製造方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
米を炊飯する前処理工程と、
炊飯された米を少なくとも10℃以下に冷却してベータ化する第1の中間処理工程と、
冷却されてベータ化された米を、ほぐして、一粒づつ分離する第2の中間処理工程と、
一粒づつ分離された米粒群を、食用油あるいはノンオイルで揚げる最終処理工程と
を含むインスタントライスの製造方法。
【請求項2】
前記第2の中間処理工程では、米に穀粉および膨張剤を混入することを特徴とする請求項1記載のインスタントライスの製造方法。
【請求項3】
前記最終処理工程では、170℃〜200℃の範囲の食用油で米粒群を揚げることを特徴とする請求項1または2に記載のインスタントライスの製造方法。
【請求項4】
前記請求項1から3のいずれか一項に記載のインスタントライスの製造方法によって製造されてなるインスタントライス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食材として長期間保存することができ、必要なときに手軽にライス(ご飯)に戻して食することができるインスタントライスおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ご飯のインスタント製品として現在実用化されているものは、いわゆるアルファ化(α化)米である。アルファ化米とは、炊飯または蒸煮などの加水加熱によって米の澱粉をアルファ化(糊化)させたのち、乾燥処理によってその糊化の状態を固定させた乾燥米飯のことである。すなわち、アルファ化米は、炊き上げたライスを乾燥させて製品化したものであり、食すときは水またはお湯を加えて通常のご飯に戻す必要がある。
下記特許文献1には、米を主原料とする食材用衣の製造方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4992058号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したように、アルファ化米は熱湯や冷水を注入することで飯へ復元してはじめて可食の状態となるものであって、水またはお湯を加えない乾燥状態のままでは、通常食することができない。
【0005】
たとえば、震災時等、水を使用できない状況下で、手を加えないでも、そのままの状態でご飯の食感が得られる保存食品が望まれている。
【0006】
また、通常のご飯として食する用途以外に、ご飯、米菓子、クリーム、ジャムなどにミックスしてシリアルスイーツなどとして広範囲の用途に食品素材として利用したいとの要請がある。米を広範囲な用途に利用することができれば、日本の米余り対策になる。
【0007】
なお、上記特許文献1は、食材として油で揚げられることを前提とする食材用衣を開示するが、本発明は、油で揚げることなく通常の米飯として簡易に食することができるインスタントライスを提供するものである。
【0008】
したがって、本発明は、水またはお湯を加えることで通常のご飯に戻して食することができるのはもちろんのこと、水またはお湯を加えない状態のままで食することができ、また通常のご飯の用途のみでなく広範囲な用途に食品素材として利用できるようにすることを解決課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1発明は、米を炊飯する前処理工程と、
炊飯された米を少なくとも10℃以下に冷却してベータ化する第1の中間処理工程と、
冷却されてベータ化された米を、ほぐして、一粒づつ分離する第2の中間処理工程と、
一粒づつ分離された米粒群を、食用油あるいはノンオイルで揚げる最終処理工程と
を含むインスタントライスの製造方法であることを特徴とする。
【0010】
第2発明は、第1発明において、
前記第2の中間処理工程では、米に穀粉および膨張剤を混入することを特徴とする。
【0011】
第3発明は、第1発明または第2発明において、
前記最終処理工程では、170℃〜200℃の範囲の食用油で米粒群を揚げることを特徴とする。
【0012】
第4発明は、第1発明乃至第3発明のいずれかのインスタントライスの製造方法によって製造されてなるインスタントライスであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、水またはお湯を加えることで通常のご飯に戻して食することができるのはもちろんのこと、水またはお湯を加えない状態のままで食することができ、また通常のご飯の用途のみでなく広範囲な用途に食品素材として利用できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本実施形態におけるインスタントライスの製造方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明に係るインスタントライスの製造方法およびインスタントライスの実施の形態について説明する。
【0016】
図1は、本実施形態のインスタントライスの製造方法をフローチャートで示す。
まず、前処理工程として,従来の炊飯方法と全く同じに、米を炊飯する。すなわち、たとえば重量比が、精白米1に対して水1.2〜1.3の割合に調整し、一般的な炊飯器によって炊飯する(ステップ101)。
【0017】
つぎに中間処理工程(ベータ(β)化工程)を行う。
【0018】
最初の第1の中間処理工程では、炊飯した米を冷却してベータ化(冷却によってデンプンの粒同士の隙間を小さくし、固化した状態に)する。すなわち、一般的な炊飯器によって炊飯された米を熱いうちに、バット(平らな収容容器)に薄く広げて、放冷し、さらに冷蔵室内で約12時間冷蔵する。冷却は、10℃以下、望ましくは、0℃〜10℃の温度で行う(ステップ102)。
【0019】
つぎの第2の中間処理工程では、冷却した米をほぐし、一粒づつ分離させる。
【0020】
すなわち、冷蔵した米を攪拌機などに入れて1粒づつ、分離するようにほぐす。この際に、米がほぐれやすくなるように穀粉と膨張剤(ベーキングパウダー)を、米に混入することが望ましい。米に穀粉を混入する際に、膨張剤(ベーキングパウダー)をさらに混合することで、製品は、よりポーラスでソフトなものとなる。なお、米粒が互いに付着せずに一粒づつ分離された状態であれば、穀粉は必ずしも必要ではない(ステップ103)。
【0021】
つぎの最終処理工程では、一粒づつほぐされた米粒群を、170℃以上、望ましくは170℃〜200℃の範囲(通常は180℃)の食用油で水分が0になるまで、なるべく短時間で揚げる。揚げるときの油温は高いほどよいが、食用油の場合は、200℃以上で劣化が進むため、200℃未満の温度に抑えることが望ましい。なお、油を使用しない「ノンオイルフライ」での処理も可能である。たとえば過熱水蒸気とオーブンレンジ加熱を組み合わせた過熱水蒸気オーブンレンジで、同様にして米粒群を揚げるようにしてもよい。過熱水蒸気オーブンレンジでは、300℃以上に加熱することになるが、この場合も短時間で揚げることが望ましい(ステップ104)。
【0022】
つぎに、揚がった米を常温に戻して、包装して市販に供する(ステップ105)。
【0023】
(実施例)
市販のコシヒカリ米6kgを洗米後、水を足して、全体で13.2kgにして自動炊飯器に入れ、炊飯した。
【0024】
つぎに、炊飯した米飯を、2mmの穴開きコンテナに薄く広げ、常温まで下げた後、5℃に保たれた冷蔵庫に入れて、一晩(約12時間)、米飯を冷却した。
【0025】
翌日に、冷蔵庫から米飯を取り出して、穀粉(上新粉)2kg、ベーキングパウダー200gと一緒に攪拌機に入れて、手で補完しながら、米粒が一粒づつに分離するようにほぐした。
【0026】
ほぐした米粒群を1時間以上放置した後、食用油を180℃に設定したコンベヤ式フライヤに落として、約2分間揚げた。
【0027】
つぎに、揚がった米粒群を、常温に戻した後、所定の市販用の包装を施し、インスタントライスとして出荷する。
【0028】
こうして製造されたインスタントライスに対して、熱湯または冷水を注入することで、通常のご飯に復元された。これを食したところ、チャーハン的な感覚の食感で美味であった。
【0029】
また、上記製造されたインスタントライスに熱湯または冷水の注入などの手を加えず、そのまま食しても、咀嚼が十分可能であり、美味であった。
【0030】
また、上記製造されたインスタントライスを、ご飯、米菓子、クリーム、ジャムなどにミックスしたものを食しても、美味であった。
【0031】
以上のように本発明によれば、長期保存することができ、水またはお湯を加えることで通常のご飯に戻して食することができるのはもちろんのこと、水またはお湯を加えない状態のままで食することができ、また通常のご飯の用途のみでなく広範囲な用途に食品素材として利用できるインスタントライスを製造することができる。
【符号の説明】
【0032】
101 前処理工程、 102 第1の中間処理工程、103 第2の中間処理工程、104 最終工程